2016年2月21日日曜日

★★シンガポール航空ショーにて>戦闘機の新潮流に乗り遅れるな



これを見ると日米の第一線配備戦闘機は相当遅れている気がします。特に日本の場合は深刻では。攻撃、防御ともにバランスが必要ですが、中でもジャミングなど機体防御の能力が決定的に足りないのではないかと思います。相当先を行かれている感じがしますね。米空軍の場合は言ってみれば唯我独尊で世界の動向と無関係の世界に安住しかつF-35に相当の予算を取られたことが痛いのでしょう。なんといってもF-15/F-16コンビには今後20年近くがんばってもらわねばなりませんので改修へ相当のの投資が必要です。だったらヨーロッパの新型機材を導入したほうが安上がりという計算も成り立つでしょう。
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New World Ordnance At Singapore Airshow

Feb 17, 2016 Bill Sweetman | ShowNews

 
シンガポールのF-15SGは攻撃用兵装、レーダー、電子防御で先を行く機体だ。

これからのアジアでの空対空戦の姿をシンガポール航空ショーの航空展示・地上展示で垣間見ることができる。マレーシア空軍所属のSu-30MKMの姿は同機がSu-35S登場までは大きな存在であったことを思い出させてくれる。Su-35Sはまもなくアジアにも登場するだろう。ラファールが戻ってきた。地上ではシンガポール空軍のF-15SGとF-16はおなじみの機体だが、搭載性能は改めてよく観察する価値がある。
  1. ロッキード・マーティンのF-35共用打撃戦闘機は非ステルス機に対し6対1の航空優勢があるとの触れ込みだが、米空軍が額面通り信じているのなら供用開始後35年のF-15Cで性能改修に何十億ドルも投入しないはずだ。
  2. アジア太平洋でステルス機が大きな存在だが、スホイ各機を見れば戦闘機に二つの分野で整備が必要なのがわかる。電子戦と搭載兵器だ。
  3. 2012年10月にUSSジョージ・ワシントンがマレーシアに寄港し、スーパーホーネットとSu-30MKMが編隊飛行している。スホイの翼端の円筒形のポッドはロシア製KNIRTI SAP-518ジャミングシステムと判明した。SAP-518は高出力であり最新のデジタル無線周波数メモリー(DRFM)機能を利用している。おそらくAIM-120C高性能中距離空対空(AMRAAM)ミサイルを妨害できるはずだ。
  4. DRFM方式ジャミングが普及する中、ロシアはDRFMチップ各種を開発し米国はこれまで軽視してきたEW防御システムにあわてて注目している。スーパーホーネットが搭載するALQ-214を除くと戦闘機用の新型ジャマーは1980年代から開発されていない。
  5. イスラエル、シンガポールその他はこのギャップに以前から気付いており、だからこそシンガポール空軍所属の機体の表面には突出物が多数あり検分が必要だ。F-16Dにはエルビット子会社のエリスラElisraが開発した防御用装置が搭載されている。F-15SGにはデジタル電子戦装備があり、これもイスラエル製だといわれる。
  6. F-15SGにはジャミングに強いアクティブ電子スキャン方式アレイ(AESA)レーダーが搭載され、敵のEWが強力なら赤外線探知追跡 (IRST) を使えばよい。米空軍は今になってAESA、IRST、新型EW装置の予算をF-15用に確保しようとしている。ラファールの展示もダッソー、Saab、タイフーン提携企業がEW装備の重要性を最初から認識していることを思い起こさせる。
  7. スホイ戦闘機の機動性も課題だ。同機はAmrramでも簡単に捕捉撃破できない相手だ。Amraamの威力は距離が延びると劇的に低下するし、相手が機動性に富むと対応が困難だ。このためMBDAメテオミサイルが開発されている。
  8. ヨーロッパ製カナード翼付き戦闘機にはすべてメテオが搭載され、グリペンが先陣を切って実戦化される。AAM分野ではラファエルがI-Derby長距離ミサイルを開発中でAmraamに代わるDerbyミサイルの系列だ。またMBDAには高性能単距離AAMがある。新型Amraamでは地上発射、海上発射ミサイルと共通部品を採用してコストを下げるラファエルと同じ方法が採用されている。
  9. 米国のAAM開発は混乱をきたしているようだ。Amraamで制約になっているのはモーターの大きさでもとをたどるとF-16の主翼に搭載する設定のためだ。同様にAIM-9Xも旧型サイドワインダーのモーターを流用している。空軍はAmraam、海軍はAIM-9Xを推しており、国防高等研究プロジェクト庁も別案件を開発中だが、ばらばらで、一方でブラックの世界で別の進展があるようだ。
  10. その結果、長距離対応AIM-9XブロックIIIや統合両用モード航空優勢ミサイル事業などが現れては消えていったし、研究には最低限の予算しかついていない。レイセオンはこの一月に機体防御用ミサイル二種の開発契約を14百万ドルで取得している。だがAIM-120Dの先が見えない。ブラック世界のミサイルは同盟国には供与されず、米軍機に海外製ミサイルの搭載もない。2017年予算でMBDAのブリムストーンをスーパーホーネットで運用試験するため大変な議会対策が必要だった。
  11. F-16運用国は機体性能改修後もこういった制約を受け入れざるを得ないが、中期的にはEWや兵装の見地からヨーロッパ製機材が魅力的に映る可能性があり、センサー融合機能、IRST、機内搭載EW装備、広い兵装搭載の選択幅が訴求力を持つだろう。■


2016年2月20日土曜日

★ウッディ島への対空ミサイル持ち込みへの批判に反論する中国の論理は歪んでいる



中国人の考え方がよくわかる内容になっています。南シナ海は昔から中国の固有の領土、領土を守るため軍の装備を持ち込むことに何ら問題はないし、前からやっている。防御兵器なので軍事化とは別。人工島問題は南沙諸島だ。今回は西沙諸島の一部であり状況が違う。米国から干渉されるのは心外だ、問題は域内当事国と一対一で解決すべき。さあ突っ込みどころがいっぱいなのですが、ひとつひとつ論理で対抗していかなければなりません。そのためにも大統領が交代する時期は極めて米国西側には不利な時期です。規制実の積み上げをどう阻止できるのかが問われます。
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Defense Ministry: China's defense facilities on Xisha Islands have existed for years

Source: China Military Online Editor: Yao Jianing
2016-02-18 16:030

BEIJING, February 18 (ChinaMil) -- 中国国防省は2月17日いわゆる「中国の脅威」を再び西側メディアが誇大報道していることに反論した。同日に米国メディアが衛星写真から「中国が地対空ミサイルを南シナ海の永興島(ウッディー島)に配備した」と報じていた。
  1. 米報道では中国がそれぞれ8発のHQ-9地対空ミサイル発射台を有するミサイル部隊二個をレーダー装備とともに永興島に配備したとしている。中国国防省情報局はこの問題について質問に答える形で2月17日午後に西沙諸島は中国固有の領土であり、中国は正当な権利を行使して防衛装備を自国領土内に配備しているのであり、国家の領土主権を守る手段であると回答した。
  2. 該当島しょ部、環礁部の海空の防衛手段はこれまで長年にわたり配備されており、西側メディアがこの問題を取り上げて騒ぐのはいわゆる「中国の脅威」を蒸し返しているに過ぎないと国防省は論評した。
  3. 米フォックスニュースは2月16日にミサイルは前週に到着したと報じている。衛星画像を見ると同島の海浜は2月3日には何もなかったが、2月14日にミサイルが視認できる。
  4. 米政府関係者からは画像からHQ-9防空装備のようだと発言があったとフォックスにユースは伝えた。HQ-9の有効射程は125マイルで付近を飛行する航空機への脅威となるとフォックスニュースは述べている。
  5. 人民解放軍海軍の付属シンクタンク中国海軍学術研究所の研究員張軍社Zhang Junsheは西沙諸島は太古の昔から中国の主権下にあり、人民共和国建国の1949年以降は西沙、南沙、中沙の各諸島に行政事務所ができたほか、兵員が駐屯していると指摘。
  6. 西沙諸島、永興島が自然島であり人工島ではないことに議論の余地はないとZhangは述べている。米国は意図的に西沙諸島で問題を引き起こしており、中国が自国領土の保全のため防衛兵器を展開するのは当然だとZhangは発言。
  7. 自国領土の島しょ部分に兵器を配備するのはごく当たり前のことで多数の国家が実施しており、米国も信託統治領のグアム島に戦略爆撃機や原子力潜水艦を配備しているではないか、したがって米国にこの問題を批判する資格はないというのがZhangの論点だ。
  8. 西沙諸島に中国は1949年以降は各種防衛装備を展開しており、米国が意図的に西沙諸島を南沙諸島問題に関連させるのは不純な動機があるためだとZhang は付け加えた。■


クルーズ候補の国防政策提言は極めて健全かつ現実的な内容


今のところ予想が立てにくい大統領候補の乱立ですが、次第に淘汰されていくはずです。その際に決め手となるのが政策内容で、いよいよ各候補が考え方を示す時期が来たという感じですね。その中でクルーズ候補の国防政策は根拠がある内容になっているようですが、経済成長の加速が前提で、インフレを招きかねません。とはいえ、これまでの中では傑出した内容のようで、同候補に注目の価値はあるようです。クルーズ候補はカナダ出生のため国籍問題を攻撃されていますが、本人は米国人から生まれたので自分も米国人と主張しています。
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Cruz Wants $750B For Defense: Boost Services, Not Special Ops

By MARK CANCIAN on February 19, 2016 at 4:01 AM

Ted Cruz the family version 2016 presidential election
テッド・クルーズが一部世論調査ではドナルド・トランプを抑え共和党候補のトップになっている。同候補は詳細な国防政策案を今週発表している。CSISの国防予算アナリストであるマーク・カンシアンが早速その内容を精査しクルーズ構想の数字、前提をCSISの国防戦力計算ソフトに入力した。その結果は以下のとおりである。編集部
共和党大統領候補のテキサス州選出上院議員テッド・クルーズが国防政策の具体的提言を発表した。これまでの選挙戦では国防の拡充や海外の脅威など言葉が先行していたが、各候補もいよいよ具体策を提示すべき時期だと認識しているようだ
提言骨子は以下の通り。
  • 陸軍正規部隊は525千名とし「訓練を積んだ完全装備の兵員」とする。【現行の目標は450千名である。】
  • 海軍は空母打撃群12個体制と「最低でも350隻体制を維持」する。【現行は空母11隻、合計308隻。】
  • 空軍では「最低で6千機で、うち少なくとも1,500機の戦術戦闘機」だが、無人機の配備数とISRパイロットを増やす。【現行の目標は5,500機、うち戦闘攻撃機が1,100機。】
  • 海兵隊を拡充し、海兵隊から要求が出ている「戦闘部隊への女性隊員の配備要求を免除する」を検討する。(クルーズ陣営スタッフに一言。この提言を行った司令官が現在の統合参謀本部議長で、現在の司令官はオバマ政権方針に従う意向だ)
  • 総兵力は150万人体制 【現行の目標は127万名】
  • 特殊作戦部隊には変更なし
  • 核三本柱には必要予算全額を充当し、近代化を進める 【現行案でもこれをめざすが、2020年代に必要となる巨額資金投入の必要性は無視している】
  • ミサイル防衛能力を引き上げる 【予算は実質的にこの数年横ばい】
正確を記すと、クルーズ議員は他人のアイディアをそのまま利用するタイプではない。昨年10月にカーリー・フィオリーナが国防政策案を発表していたがほとんどすべてはヘリテージ財団の提言そのものだった。クルーズは自ら考える提言を発表した。
提言内容に大きな現状から逸脱はなく、アナリストや専門家多数と事前検討をすませているのは明らか。とくに昨年その前年の現状を反映している。つまりイラク、アフガニスタンの後に平和な時代が来ると思ったが中国の強圧的態度、ロシアの横暴さ、ISILが戦闘に勝利を収めて一挙に期待を裏切られた事態だ。
ただし提言にある陸軍、海兵隊を拡充するが、特殊作戦部隊はそのままという内容は比較的新奇といってよい。クルーズは「特殊作戦部隊は通常部隊の不足への回答にならない」と主張する。ヘリテージ財団のジェイムズ・カラファーノも同じ視点を主張している。特殊作戦部隊は具体的な行動を実施する部隊で、特別な標的の殺害や拉致がその例だが、通常の陸上部隊でこれを実施するのは適任ではない。政治家が特殊部隊を好むのは能力の高さや特定の戦略目標の実施を最低限の部隊投入で実施できる点を買っているのだが、実際には単独で効果を出しているわけではない。
もう一つ興味をそそられる提言内容がある。「【サイバー】報復政策を宣言し、必要なら強烈な反撃を加える」としている点だ。クルーズの主張は米国にはサイバー抑止力の整備を核抑止力と同様に検討する必要があるとする。これはサイバー専門家の間で議論を呼びそうだ。なぜならサイバー空間を「軍事化」すること、極秘戦時能力が明らかになってしまうからだ。だが防衛体制が機能していない現状を見ると議論の必要は感じられる。
新規装備や部隊整備はすべて相当の予算が必要だ。クルーズ候補もこのことは認めており、米国は現状のGDP3.3パーセント相当の国防予算を4.1パーセントに引き上げる必要を提言する。この数字で国防予算は7.500億ドル相当になるが、DoD予算だけでなく戦闘継続予算(OCO)やエネルギー省所管の核兵器関連予算以外にFBIはじめとする各省庁の国家安全保障関連予算も全部含めるのだろう。そこで提言内容を戦略国際問題研究センター(CSIS)の国防経費計算ソフトウェアに入力し、提言にある表現(「高い即応性」など)を数字に置き換えると、確かにその予算規模になった。若干低くなるが、他の候補とは一線を画しているのは確かで、クルーズ提言が意図的に数字を低く見積もっているとは言えない。(これだけの仕事をしたクルーズ陣営のスタッフに金星を進呈したい)
総額7,500億ドルというと2017年度用にオバマ政権が設定した予算が6,100億ドルで1,400億ドルも増える計算になる。これは現行の予算規模からみれば大きな増額だ。2012年時点のDoD試算よりさらに500億ドル国防に上乗せすることになる。当時の国防長官ロバート・ゲイツが考えた最低源の要求水準が2011年予算管理法でその後10年にわたり数千億ドル分カットされてしまった。反面、冷戦時代を思えばこの予算規模でも経済は圧迫されないといえる。当時の国防予算はGDP比で6から7パーセントだった。
もちろん問題はこれだけの予算をどうやって確保するかだ。クルーズ議員の提言では「アメリカ経済を5パーセント成長に乗せる」のを「税制、規制改革を通じ、支出を削減し、連邦資産等を売却する」事で実現するとしている。果たしてこの提言が成功するのかはエコノミストの判断に任せたい。
クルーズとバーニー・サンダースが一つ共通している内容がある。ペンタゴン内部の無駄と不要事業の削減だ。両議員は「ペンタゴン監査法案」の共同提案者である。前回のサンダース提言の分析で記しているが、無駄や重複の排除は考え方として健全とはいえ、実施は相当困難だ。真の改革は基地閉鎖(BRAC)で可能だが、総じて一方で不要な事業は他方で必要とするものがあるのが通例で、例として退役軍人向けの健康保険は大盤振る舞いで無駄なのか、国に尽くしてくれた1%の国民に何もしない残り99%が与えるべき恩典なのか。効率を追求し予算を節約することは無駄の排除ではなく何かを交換して実現できるものだ。
共和党候補がおしなべてオバマ政権が一方的に兵力を削減し国防予算を減額してきたと主張しているがこれには抗議すべきだ。近年の大きな削減は2011年予算管理法によるもので、この法案を成立させたのは下院に成立した共和党多数派だ。たしかにオバマ大統領は法案に署名したが、すべては共和党が作り、支援してきたからこそ継続してきたのだ。
ではその他の大統領候補への課題を伝えよう。共和、民主両党の候補者ともに国防政策に関して具体策を提示してほしい。それでこそ陳腐な言葉の羅列ではない真の議論が成立する。今から一年後にはいずれかが大統領になっている。国民ならびに首都の『評論家部隊」には世界で最も強力な軍事力をどうするつもりなのか各候補に聞く権利がある。■
記事を書いたマーク・カンシアンはオバマ政権の予算管理局で国防予算アナリストを務めた経験があり、現在は戦略国際問題研究センターで国防アナリストを務めている


★ビジネスジェットの軍用転用にトレンドあり どこまでの機能をどれだけ安価に実現できるのか



技術の進歩でもう大型機は不要、ビジネスジェットを改装すればお手軽に新型機能が手に入るということですね。もはや737でさえ大型機の範疇に入るのでしょうか。防衛省がこのトレンドに乗るのか見ものですが、C-2やP-1などただでさえ生産数が小規模の国産開発機を抱え込んでいるので母機としての活用を求められそうですね。MRJという可能性もあり、考えてみると日本ではビジネスジェットの活用にはおいそれとは進まない感じですね。
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Bizjets Finding Front-Line Role

Air forces are turning to business jets to meet special mission needs
Feb 11, 2016Tony Osborne and Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
特殊用途機special mission aircraft (SMA)でトレンドが二つある。SMAとは民間機あるいは軍用輸送機を改装して情報収集・監視・偵察(ISR)任務に転用した機種を指す。
  1. これまでボーイング737はじめとする民間ジェット旅客機原型の機体が行ってきたミッションが支線用旅客機やビジネスジェット機で十分実施できるようになっている。反対にSMAとしてもっと小型のテキストロン・ビーチクラフトのキングエアなどで実施してきたものが大型の多機能センサー搭載機に移行しつつある。速度、航続時間、なんといっても高高度性能が魅力だ。
  2. 予算に余裕がない小国の空軍部隊はビジネスジェットを多用途任務に投入することの経済効果を簡単に理解できるが、大国もこの事実に気付き始めている。
  3. 1980年代にデンマークはガルフストリームIIIを改装し海上哨戒に投入していた。その後ボンバルディアのチャレンジャーCL604で環境汚染監視や領土哨戒任務をさせた。
  4. チャレンジャーの成功を見たボーイングはP-8ポセイドンのミッションシステムをチャレンジャーCL605に搭載した海洋監視機の製作を決断した。
  5. 米空軍は老朽化し運航に多額の経費が必要になってきたボーイング707を原型とするE-8Cジョイントスターズ (J-Stars) の後継機種にビジネスジェットによる二案を検討中だ。ノースロップ・グラマンのガルフストリームG550とロッキード・マーティンはボンバルディアのグローバル6000の各案だが、ここにボーイングが737転用案を持ち込んできた。また空軍はEC-130コンパスコールジャミング機の次期機種をビジネスジェット転用で実現できないか検討中といわれる。
  6. 今年に入りオーストラリアが情報収集・監視・偵察・電子戦 (Isrew)装備を乗せたガルフストリームG550二機を発注し、これまでP-3オライオン哨戒機が実施してきた任務に当たらせるとの報道が出た。新型機はL-3が改装を加え、米空軍のビッグサファリ管理室が契約を交付している。
IAIはボンバルディアグローバル5000を海洋哨戒機に大幅に改装する案を提示している。Credit: Israel Aerospace Industries
  1. またトルコはビジネスジェットをジャミング機に改装する案を検討中だ。これはゴルチェ(シャドー)の呼称がついている。高高度を飛行させれば地上の防空力を400キロ離れてもジャミングできるとトルコの業界筋は述べている。
  2. イスラエル航空宇宙工業(IAI)は小型ビジネスジェット案は経済効果の面で訴求力があると述べる。
  3. NATOの合同AWACS部隊は3,000名で17機のE-3を運用しているとIAI-Eltaの空中システムズ部のアヴィシャイ・イザキアンは指摘する。これに対しイスラエルはG550を改装した一体型空中早期警戒機 Conformal Airborne Early Warning (CAEW)を2機運用するが、支援要員は全部で36名程度だという。
  4. CAEWはシンガポールにも納入されており、イタリア向けも受領するが、もともとは2000年台当初にG550原型のISR機材三案の一つとして構想されたもの。イスラエルは二番目の案の侵攻情報収集機材も運航しており、三番目の多機能空中偵察監視 (MARS2)用の地上監視用機材の開発も国名非開示からの注文にこたえ進行中だ。MARS2では新型アクティブ電子式スキャンアレイレーダーに回転的アンテナと360度連続スキャンを搭載する。これに対しJ-スターズやセンティネルでは固定アジマス方式アレイでスキャン範囲は240度にとどまっている。
  5. IAI-Eltaはボンバルディア・グローバル5000を改造した海上哨戒機(MPA)で「多くの顧客と商談を」進行中だとイザキアンは述べている。「ボーイングP-8Aを除けば最も高性能な市販機材になる」.
  6. イザキアンは「機体構造の強化が重要だ」と指摘する。例としてエアバスディフェンスアンドスペースのC295のAEW用機材はC295を導入済みの国を狙う。
  7. スペイン空軍がこの例だ。C295を次期多用途機材ととらえ、海上哨戒ミッションでP-3の後継機、またElta製レーダーを搭載した機種をAEW任務に投入できると期待している。
トルコはガルフストリームまたはグローバルエキスプレスの機体に長距離ジャミング機材を問う愛するゴルチェ事業を企画中。 Credit: Tony Osborne/AW&ST
  1. ボンバルディアのグローバルエキスプレスにSMA機材として需要が高まっている。その理由の一つとしてレイセオンの空中スタンドオフレーダー (Astor) の搭載がある。Astor開発用のテスト機はその後ノースロップ・グラマンが戦場空中通信中継機のテスト機に転用されている。さらに民間登録のグローバルエキスプレスの4機が同システムを搭載し、空軍にE-11A として転籍された。
  2. このグローバルエキスプレスにはDARPA国防高等プロジェクト庁が開発したlidarセンサーを搭載している。
  3. IAI-Eltaはインドにグローバル5000を原型とするISR機を2機納入している。合成開口レーダー(ASR)と長距離電子光学センサーを搭載している。これより小型のガルフストリームG150にSAR装備を搭載した機材一機がインドで運行されている。この例が新しくG280をもとにした多機能情報収集機の提案につながっている。
  4. Saabはアラブ首長国連邦軍向けグローバルエキスプレスとを原型にしたSMA開発に取り組んでいる。UAEはグローバル6000を空中早期警戒任務に加え地上監視任務、また海上哨戒任務をすべて実施できる機材として期待。
  5. UAEの狙いは指揮命令機能の強化に加え弾道ミサイルへの対抗措置の強化だ。機体は大幅に改造され、Erieyeを背部アレイに格納し、主翼前方のフェアリングに情報非公開の地表水面捜索レーダーを搭載し、機首下には電子光学カメラシステムが付き、長距離画像識別を可能とする。
  6. UAE軍はさらにグローバル6000を少なくとも二機調達しており、イギリスのケンブリッジで改装作業に当たらせている。二機はマン島で機体登録しており、2013年に改装に入ったままなのは大幅な遅延の発生を示す。消息筋によれば二機は信号情報収集 (Sigint) 用のペイロードを搭載するという。
  7. イタリアはP.180アヴァンティ高速ターボプロップを自国軍およびUAEに軍用に売却しているが、同機を原型とした多用途パトロール機の製造に乗り出す。主翼幅を広げるなど機体改良で長時間ISRミッションを可能にする。
  8. 一方、米国で重要な案件が11月に開始された。LeidosがL-3/ノースロップ・グラマンを破り米陸軍向け5か年総額662百万ドルの空中低高度高性能偵察機(ARL-E) 契約を受注成功している。LeidosはARL-E装備を開発、統合、試験し、その後ボンバルディアのダッシュ8-300に搭載し、初期ロジスティックス支援を提供する。Leidosの開発チームにはボーイングのArgon-ST部門が加わりSigint機能を提供する。またDynamic Aviationが機体の改修に当たる。
  9. ARL-Eは現行のEO-5C型式ARL-多機能装備に代わるもので、以前に陸軍がSMAで積んだ経験を活用する。中東その他で民生用の機体を使ったところ機体が軍の基準に合わないことが判明した。
  10. ARL-E主契約企業の選定前に米陸軍は機体を取得し、コックピット改修および機体生存用の装備取り付けの契約を交付している。これとは別に陸軍のセンサー・情報収集機器部門はノースロップ・グラマンを選定し、これまでで最大規模のセンサー、地上探知レーダーの開発およびLeidos社向け契約の管理業務の契約を交付した。
  11. 一方でFunny-Looking King Air (FLKA) と呼ばれる派生型がアフガニスタン戦以降多用されている。アフガニスタンでは迅速なISR機材の投入が必要となり、双発ターボプロップ機が好まれた。そこでキングエアを偵察用にした同型がマルタ、ナイジェリアでも採用され、英国はレイセオン・シャドウを追加発注するとみられる。■


2016年2月19日金曜日

3月にLRS-Bで米空軍が情報開示?


ボーイングの不服申し立てが却下され、これで正式にノースロップが次期爆撃機の開発に向かえるようになったことから空軍ももうすこしだけ情報を開示するつもりのようです。ただしどこまでの開示になるのかが気になりますね。
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US Air Force Promises More Details on Long Range Strike-Bomber

By Lara Seligman, Defense News7:08 p.m. EST February 18, 2016

635913979124195298-635908761896218813-635653871875131810-DFN-US-bomber-northrop.jpg(Photo: Northrop Grumman)
WASHINGTON — 米空軍はノースロップ・グラマンへの長距離打撃爆撃機契約交付を政府監査部門が承認したため、極秘とされてきた同機の追加詳細情報を三月に公開する。
  1. おそらく三月第一週に情報開示するとマイク・ホームズ中将(参謀次長戦略開発調達部門)がミッチェル研究所開催の会合で2月18日に述べた。ホームズは情報開示の内容については言及を避けている。
  2. 情報秘匿度次第だが、まずどの情報を開示するかを決め、慎重にすすめていく、とホームズは述べている。
  3. 政府会計検査院(GAO)は2月16日にボーイングの不服申し立てを却下し、LRS-B契約でノースロップ・グラマンが正式に主契約交付先になった。ただし、空軍がどう機体開発を進めるのか疑問が残ったままだ。
  4. 空軍はまだ同機の詳細情報を公開しておらず、契約額も不明だ。ノースロップには10月27日付でエンジニアリング・製造・開発契約が交付された。LRS-Bの機体寸法、重量、ペイロードは不明のままで、ステルス性能も同様だ。最上層部は同機の主要部品メーカー名についても口を閉ざしているが、プラット&ホイットニーがエンジン開発にあたる可能性が高い。
  5. ホームズのプレゼンテーション内容に対してジョン・マイケル・ロー退役大将(航空戦闘軍団司令官)がLRS-Bで透明性が足りないと批判している。ローは空軍に対し追加詳細情報の開示を求めている。とくに製造にあたる企業名の開示は非常に高額な開発を議会や一般国民が支持するためにも必要だという。
  6. 「LRS-B実現のため毎日、毎週、毎月、毎年奮闘する必要があるだろう。各方面から中止を求める声がでるはずだ。空軍が業界チームの企業名を早く公表すればそれだけ支援の輪が広がる。逆に公表しなければ事業は継続できない」
  7. ローによれば空軍参謀総長マーク・ウォルシュ大将はGAO裁定でボーイングの不服申し立てを却下次第追加情報の開示をすると確約したという。
  8. 「議会の支持をとりつけたければ、業界の支持を確保したいのであれば、行動が必要だ。RCOに秘匿扱いを任せていてはいけない」とローは空軍の調達部門で秘密扱いの事業を切り盛りする迅速戦力整備室の名前を言及している。
  9. ボーイングと提携先ロッキードが不服申し立てを11月6日にGAOへ提出したことで空軍と産業界のチームはLRS-B関連の事業を停止していた。だが今回GAOがボーイングの主張を却下したことでノースロップは空軍と事業を先に進め、エンジニアリングおよび開発業務を実施できることになった。初期作戦能力獲得の目標を2025年に設定している。
  10. 「今回の決定は米空軍が異例なまで完璧な選定手続きを経て最高の性能を妥当な価格で提供する事業案を採択したことを意味するもの」とノースロップ副社長ランディ・ベロートが声明を出した。
  11. 空軍はLRS-B開発、試験、評価ように121億ドルを用意し今後5年を費やすと空軍の2017年度予算要求説明書が述べている。この金額は空軍が昨年想定したものより35億ドルほど低くなっており、ノースロップに交付した契約での新しい積算を反映しているのだろう。
  12. ボーイングはGAO裁定を精査し、次の手段をとるかを数日以内に決定するとしている。GAO裁定自体は覆すことができないが、同社は連邦裁判所に案件を持ち込むことができる。
  13. 「現在も当社提案内容が空軍及び国家にとって最良の内容だと信じており、政府選定手順には根本的かつとりかえしのつかない欠陥があったと考えている」(同社声明)
  14. 不服申し立てを出した時点でボーイングとロッキードはLRS-B選定手順は「根本的に間違っている」と共同声明で述べ、政府による費用評価を問題にしていた。だが両社は不服が通る可能性は低いと判断。近年の国防調達で不服申し立てが認められたのは最新の2013年でも2%しかない。連邦政府の契約行為全体ではこれより高いがそれでも4%を下回る。
  15. 空軍は空中給油機を巡る混乱が10年近く続き、やはり不服申し立てをしたボーイングが当初のエアバス向け契約を覆した苦い経験からLRS-B契約交付については慎重に守っている。■

北朝鮮のKN08ICBMはどこまで戦力化しているのか


記事が指摘するように発射テスト未実施のままでは信頼性に欠けるので北朝鮮が次回発射するのがこのミサイルなら、実戦配備に一歩近づくことになりますね。それまではこけおどしの道具になるのではないでしょうか。

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North Korea making progress toward fielding KN08 ICBM

Richard D Fisher Jr, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
16 February 2016

  
KN08 ICBMの最新版はロシア製マカエフR-29潜水艦発射弾道ミサイルの影響が大きいことを示している。Source: Via Chinese internet

韓国と米国の情報筋によれば北朝鮮がKN08(Hwasong-13火星)道路移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)の配備に向けて進展を示している。
  1. 韓国の聯合通信は「韓国の複数政府筋」が北朝鮮が戦略ロケット軍で「新部隊」を編成しKN08の配備に備えていると明かしたと2月14日に報じている。
  2. 一方、米国会情報長官ジェイムズ・R・クラッパーは「脅威内容評価」の証言で「北朝鮮はすでにKN08配備の初期段階に入っているが、同システムはまだ発射実験をおこなっていない」と証言。
A close-up of the redesigned warhead stage of the North Korean KN08 ICBM. (Via Chinese internet)
KN08 ICBMの再設計弾頭部分がよくわかる写真. (Via Chinese internet)
  1. ペンタゴンは恒例の北朝鮮軍事力報告を2月12日に刊行しており、「設計開発に成功すれば、KN08は米国大陸部のほとんどを射程に入れる」と記述している。ただし同報告書では同ミサイルが「きわめて複雑な構造で数回の発射テストを経て設計上の瑕疵や製造上の欠陥を除去すべきものだ。テスト実施がなければKN08のウェポンシステムとしての信頼度は低いまま」と指摘している。
  2. 2012年4月の軍事パレードで北朝鮮は三段式KN08ミサイル6発を公開したがモックアップだったとの評価が出ている。とはいえ、搬送車両は16輪の運搬発射台で製造元は万山特殊車両製造Wanshan Special Vehicle Corporationで同社は中国航天技集団 China Aerospace Science and Industry Corporation (CASIC)の傘下にある。
  3. 2015年10月の軍事パレードではKN08の派生型二段式ミサイルが新型弾頭部分をつけているのが目撃されている。弾頭の形状はロシアのマカエフR-29/RSM-40潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の多弾頭発射部分に似ていた。■

2016年2月18日木曜日

★中国・南シナ海>対空ミサイルの持ち込みは防空識別圏の設定につながるののか



既成事実の積み上げで自分の主張を固めていくのはいかにも中国的ですが、国際社会の反発は必至で不信を招き、最終的に破滅に至る可能性を認識しているのでしょうか。いないからこういうことができるのでしょうね。米軍は各島の施設はGrapesつまり簡単に除去できると言っているようですが、軍事行動にエスカレートすればそれこそ中国の思うつぼでしょう。

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Chinese Foreign Minister Wang Defends South China Sea Anti-Air Missile Deployment, PACOM CO Harris Expresses Concern

By: Sam LaGrone
February 17, 2016 12:17 PM • Updated: February 17, 2016 2:07 PM
Chinese Foreign Minister Wang Yi.
Chinese Foreign Minister Wang Yi.
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中国の王外相は南シナ海に対空ミサイル32発を人民解放軍が配備したのは自国主権の範囲内だと発言した。

  1. 毅外相はウッディ島にHQ-9ミサイルを配備したのは「国際法で許された自国防衛の権利の一環であり、何ら問題はない」と北京で報道陣に語った。報道会見はオーストラリアのジュリー・ビショップ外相と南シナ海問題で会談した直後だった。毅は「西側報道がネタを作ろうとしている」とした。
  2. 2月16日にフォックスニュースがウッディ島へのミサイル配備を報じている。
  3. 米太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将は東京で報道陣に同島へのミサイル配備は南シナ海の軍事化の象徴であり習近平主席が軍事化はしないと発言していたのと矛盾すると発言。ペンタゴン関係者は繰り返し南シナ海問題は外交で解決すべきと述べている。「米国はすべての関係国に埋め立て工事、その他建設工事、および軍事施設の建設の中止を引き続き求めていく」と声明を発表した。
  4. 上院軍事委員会のジョン・マケイン(共、アリゾナ)委員長は声明文を出し、「中国の南シナ海での今週の動きは北京が引き続き軍事手段で海洋を支配しようとしていることの表れであり、習近平主席が訪米中に発言した内容とあいいれないものだ」「以前には埋め立て工事は中止している、南シナ海の軍事化はない、と主張していたことを考えると北京の発表がいかに事実に反するかがわかる」
  5. フォックスニュースが報じた衛星画像ではHQ-9移動式防空ミサイルの発射装置トレーダーが見える。HQ-9はロシアのS-300PMU(NATO呼称SA-10グランブル)を原型とし、有効射程は120マイル、速度はマッハ4.2だ。
  6. 「画像で判明した発射車両は北京郊外の製造工場でグーグルアースがとらえたものと同じだ」と海軍関係アナリストのクリス・カールソン海軍大佐(退役)がUSNI Newsに16日語っている。「各4発のミサイル部隊二個はこの数週間の間にウッディ島に搬入されたようだ」
  7. 今回のHQ-9配備の前に人民解放軍空軍が瀋陽J-11戦闘機編隊をウッディ島に11月に展開して懸念を招いており、南シナ海で中国が防空識別圏(ADIZ) を設定する動きとの観測を呼んでいる。2013年には東シナ海で中国がADIZを設定し、米国他への挑戦と受け止められた。直後にPLAは東シナ海で戦闘機を運用しADIZの実効性を示した。
  8. 南シナ海でも同様の動きに出れば、主権・領有権が複雑に絡み合った地域であり、中国は国際法に違反することになる。
  9. 自国領土内に防衛装備を配置することは国際法に違反しないが、この装備で国際空域や水域に「明白な脅威」を加えることは国際法に反すると海軍大学校の国際法教授ジェイムズ・クラスカはUSNI Newsに開設してくれた。「もし中国がこのミサイルを使って防空識別圏を設定する、あるいはその他の制約を航空に加えれば法への違反になる」
  10. HQ-9搬入は米国がFONop航行の自由作戦として誘導ミサイル駆逐艦一隻をパラセル諸島のトライトン島から12カイリ以内を航行させて一か月もたたない中、中国が島しょ部分で軍事施設を拡大中との報道が出て一週間後の動きとなった。■


米空軍2017年度予算のあらまし:F-35調達は5年で45機削減する苦しい台所事情


要はF-35で予算をやりくりしている、つまりF-35はバッファーにされているわけですね。それだけF-35の戦力化はまだ先が見えないということでしょうか。機体価格が上昇するのは必至で日本も高い買い物をすることになるのでは。
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US Air Force Defers 45 F-35As Over Next Five Years

By Lara Seligman, Defense News6:32 p.m. EST February 9, 2016

WASHINGTON – 空軍の2017年度予算要求は1,669億ドルと16年度の1,679億ドルからわずかな差しかない。内訳で最初に来るのが作戦・維持点検予算の469億ドルで次が調達の224億ドル、研究開発技術評価の196億ドル、123億ドルが海外展開作戦用に計上されている。
F-35
今後5年で計45機の取得を先送りし、生産期間も同時に伸びる。
空軍が三軍で最大の調整幅を吸収する形だが、ペンタゴン全体の購入機数も今後五年間で削減されると国防総省の管理官マイク・マッコードが報道陣に2月9日に話している。ペンタゴンが大幅に生産機数を引きあげようと準備する最中での発表になった。
その結果三軍が今後五年間で導入するF-35は404機になり、この範囲では機体単価には大きな変化は生じないとマッコードは言うものの、ペンタゴンが以前予定していた生産数を実施するかは不明だとする。「なんとか以前期待していた水準に戻れるようFYDPを通じ準備は怠らない」マッコードは後年度国防整備計画(FYDP)について言及している。「だが相当の金額になり、以前期待していた生産増が実現するか見えてこない」。
空軍の予算説明書ではF-35A生産の増産ピッチは以前の想定より相当ゆっくりになる。Defense Newsが最初に報道したように、空軍は今年分はF-35Aで5機受領を先送りし、43機の要求にとどめる。2018年度から年間60機に引き上げる当初の予定は、2017年度予算では年間60機の引き渡し実施は2021年になりそうだ。なお、年間ごとの機体調達は以下の通り。2017年 43機、2018年44機、2019年および2020年は各48機、2020年度から60機に急増する。
増産の遅れで、最終目標の1,763機生産が空軍には「厳しい選択」になり予算折衝の苦労が報われなくなると説明書は述べている。空軍はブロック4ソフトウェア改修に一部予算を拠出しており、核兵器運用能力の研究開発も開始している。
ペンタゴン全体の調達規模からすれば今回の空軍の調達削減は小さい存在だが、機体単価に少なからぬ影響が出る。アナリストの中にはドミノ効果の発生を見る向きがあり、海外参加国にも動揺が出るだろう。
ミッチェル研究所のダグ・バーキー専務理事はペンタゴンがF-35の機数をもてあそぶことに警句を鳴らしている。「いったん生産機数を下げたら、あるいは予定を遅らせたら、価格は直ちに上昇し、リスクが増えます」
それでもペンタゴンがFYDPで削減をしても事業全体に悪いニュースにならない。ロッキード・マーティンは予定通りの生産日程で世界各国の顧客に交渉することが可能とキャピタルアルファのバイロン・カランは指摘する。米空軍がF-35Aの購入機数を削減すれば、各国がその分を埋めてくれるというのだ。
その他機種
Defense Newsが報じたように空軍の17年度予算要求では長距離打撃爆撃機とKC-46 給油機15機は満額要求していると伝えている。要求案ではさらに共用監視標的攻撃用レーダー(JSTARS)の機材更新、戦闘捜索救難ヘリコプター、T-X高等練習機の更新、エアフォースワンの機材更改も入っている。JSTARSの初期作戦能力獲得は2024年設定と予算説明書で読める。
また長距離スタンドオフ兵器開発も継続する。空中発射式巡航ミサイルの後継装備としてLRSBへの搭載を予定している。
ロッキード・マーティンC-130Jスーパーハーキュリーズ輸送機の調達も遅らせる。17年度予算ではC-130Jが3機、HC-130Jも三機、MC-130Jが六機当初から削減されている。ただしEC-130 コンパスコールは電子攻撃能力のかなめとして維持している。一方で空軍はコンパスコールの装備を新型ビジネスジェットに搭載する事業費を要求している。
その他、予想通り空軍はA-10ウォートホグ退役を2022年まで先送りし、機体維持管理用の追加予算を求めている。A-10は飛行隊単位でF-35に更改される予定だ。一方で、A-10を2020年代でも飛行可能に維持する改修作業を開始している。機体近代化ではF-16とF-15の既存機材で複合攻撃防御能力改修を行う。17年度要求ではF-15のC/D型が対象で、新型アクティブ電子式スキャンアレイ (AESA) レーダーを搭載し、新型赤外線捜索追尾装置を装着して2040年代まで供用させる。旧型のF-16にも新型AESA レーダーや電子戦装備を搭載し、ソフトウェアを交換する。
弾薬補充
イスラム国対策でイラク、シリアで消費した分の弾薬類の補充もすすめる。JDAM共用直接攻撃弾、AGM-114ヘルファイヤー、小口径爆弾の調達は海外作戦勘定で要求すると予算説明書は記している。
ISR
ISR情報収集監視偵察関連では、ロッキード・マーティンU-2 の2019年度退役は変更なしと空軍は説明。他方でノースロップ・グラマンのRQ-4グローバルホークに新型センサーやペイロードアダプターを搭載し、U-2退役後のISR活動に穴が出ないよう工夫する。
宇宙システム
また宇宙空間での優位性維持も17年度予算で継続しており、GPS衛星の調達は17年度予定が18年度になった。またGPS III競争入札で浮いた予算を次世代作戦指揮統制システム(OCX)に流用する。■

2016年2月17日水曜日

★シンガポール空軍で唯一不足している分野は...戦闘機ではなく....



東南アジアでずば抜けた軍事力を有するシンガポールの空軍力で唯一不足しているのが海上哨戒能力だという指摘で、なんとなくP-8の採用を期待する論調ですが、同国が導入するのはビジネスジェットを改装した機材になるのではないでしょうか。P-1の選択は期待できないでしょうが、商戦には日本も参加すべきでしょう。空軍力というと戦闘機ばかりに目が向かいがちですが、状況に応じてバランスの取れた視点が必要ですね。
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Opinion: Singapore Air Force’s Missing Puzzle Piece

Feb 15, 2016 Richard Aboulafia | Aviation Week & Space Technology

http://aviationweek.com/defense/opinion-singapore-air-force-s-missing-puzzle-piece



軍事航空で必要な能力を整備するのは簡単ではない。大部分の国が予算の制約や更新が必要な機材が多数あることで苦労している。シンガポールの場合は独特な能力ギャップがあり短期間で大幅な手を打つ必要がある。
  1. 人口は6百万人に満たず、およそ20マイルx10マイルの島に集中しているシンガポールだが、世界有数の空軍力を保持し、国力以上の威力を発揮できる。シンガポール共和国空軍 (RSAF)はF-15SG60機とF-16C/D40機を保有し、旧型だがF-5も若干数ある。F-35国際開発にSCP安全保障協力国として関与しており、域内でいち早く同機を導入しそうだ。戦闘機には強力な空中早期警戒 (AEW) 能力が裏付けとなる。従来のノースロップ・グラマンE-2Cに代わりガルフストリーム550をもとにした新型機にEltaのEL/W-2085機体一体型AEW装備を積む。
  2. シンガポールは軍の巨大ショッピングモールにたとえられる。しかし同国が強力な軍備を保有するのは理解できる。シンガポールの国民一人当たり所得は米国を上回るが、周囲は裕福でない国ばかりで、政府統治能力は低く、不安定化しやすい。また非政府勢力の脅威も存在する。
  3. この現実の中で防衛上の最優先事項は自国存続の維持だ。現地ではこんな言い方がある。「魚の小骨でも飲み込めば喉に届く」。その結果、近隣のマレーシア、インドネシア他がシンガポールを強力な兵力で制圧する可能性は低い。
  4. だがこの都市国家の軍事力は自国主権の維持の範囲を明らかに超えた威力になっている。シンガポールは小国ながら空中給油能力を有し、KC-135Rの運用実績は数10年にわたる。2014年にはエアバスA330多用途給油輸送機を6機発注しており、機材を更新する。またKC-130給油機も運用中だ。
  5. だがなんといっても世界貿易に大きく依存する同国にとって海洋上の脅威に目を光らせる必要がある。2011年にシンガポールは初の海洋哨戒機(MPA)展開としてフォッカー50を一機38名の人員とともにアデン湾に派遣し、国際海賊対策に参加した。マラッカ海峡でも安全対策を実施している。
  6. 現在フォッカー50ターボプロップMPAは5機あり、ハープーンミサイルまたはユーロトープA244魚雷を搭載する。だが各機は1990年代初頭の取得機材であり、長距離対潜戦の実施には能力不足は否めない。航行の自由の維持に並外れた関心を有するシンガポールでは、防衛装備調達上これは大きなギャップとなる。
  7. 対照的に同国の回転翼MPA機材ははるかに近代的でシコルスキーS-70Bシーホーク6機を2011年に導入しており、2機が今年中に納入される。ただし短距離しかカバーせず、速度も固定翼MPA機材にはかなわない。
  8. このためシンガポールは新型MPAの候補を模索している。選択肢は広く、ビジネスジェットをMPAに改装する案、リージョナル用ターボプロップ機の改装案(ボンバルディアのダッシュ8 Q400がフォッカー50に相当する)もある。また米海軍で使用ずみのロッキード・マーティンP-3Cを購入する案も浮上したが、最新機体でも30年が経過しており、中古機の導入は実現していない。
  9. さらに最新装備がシンガポールの好みであることを考えると、また長距離海上哨戒飛行の安全を考えると、大型ジェット機を元にした機材が候補になる。ここではボーイングのP-8ポセイドンに加え、可能性だけだが川崎重工のP-1四発ジェット機もある。
  10. P-8をシンガポールが発注すれば同機の輸出先が増える。同機は優秀とはいえ、今のところ輸出で成約したのオーストラリアとインドだけだ。これに対しP-3は15か国に輸出されていた。
  11. P-1の選定は可能性が低いが、日本が2014年に武器輸出を解禁して日本産業界に輸出を目指す動きが増えており、まったく排除することはできない。
  12. シンガポールにとってP-8あるいはP-1の選定は非常に整備された域内軍事大国として最後のステップを完了することを意味する。また世界有数の船舶航路をそばに有する同国のプレゼンスを大きく伸ばすことにつながるだろう。■