2024年9月20日金曜日

中国の先制攻撃からインド太平洋の空軍基地を守れ  (Air & Space Forces Magazine) ―同じことは日本の前線基地についても言えるはず。



砲火の下で米空軍の戦闘出撃を確実に遂行するため必要な方法をミッチェル研究所主任研究員が解説。


J. Michael Dahm is a Senior Resident Fellow for Aerospace and China Studies at the Mitchell Institute for Aerospace Studies.

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http://MitchellAerospacePower.org.


前線の空軍基地は敵の砲火の下で機能できなければ、効果を発揮できない。インド太平洋地域、ヨーロッパ、その他の地域における前線に位置する空軍基地は、複雑に統合された航空およびミサイル攻撃を撃退し、損害を受けた場合でも迅速に作戦能力を回復し、戦闘効果を継続的に生み出さなければならない。

 空軍は、冷戦末期に直面していたのと同じ空軍基地防衛の課題に多く直面している。しかし、今日、空軍基地への脅威に対抗するための準備や装備は整っていない。過去30年間にわたる資金とリソース投入の不足により、空軍基地の防衛能力は衰え、米国の利益を確保し侵略を撃退するために統合司令官が必要とする出撃や攻撃オプションの生成能力が危機に瀕している。


将来の紛争において、米国は同盟国やパートナー諸国とともに「内側から」戦う必要がある。時間、空間、戦闘力において圧倒的な優位性を持つ敵に対して、前線で戦うのだ。もし敵が米国の航空戦力を効果的に抑え込めれば、中国軍やロシア軍とのほぼ同等の戦力による紛争において、統合軍事作戦は作戦目標や戦略目標を達成できなくなる。中国は相当な偵察能力と長距離攻撃能力を有しており、空中戦を交えることなく地上のインフラや航空機を破壊することで、潜在的に航空戦に勝利できる可能性がある。

 空軍参謀総長のデビッド・W・オールビン大将は、今年の上院公聴会で、空軍基地防衛の必要性を強調した。「攻撃を受けている間でも、出撃を継続できるだけの十分な耐久性を持つ前方基地の構築にも取り組んでいます。効果的な抑止力となり、敵の意思決定に影響を与えるためには、空軍基地の防衛は単に軍を守る以上のことをしなければなりません。空軍が戦闘空間の最前線で戦力を投射する能力を維持できるようにしなければなりません」。

 空軍基地の効果的な防衛は、特に大国間の衝突においては、3つの作戦目標を支援する。

  • 効果的な戦闘出撃の編成

  • 戦力の保全

  • 敵の攻撃に対するコストの負担


 今日の脅威に関する情報を踏まえた評価により、費用対効果の高い基地防衛によって空軍がこれらの目標を達成する方法が明らかになる。

 欧米では、中国は戦闘を回避しようとしているという、広く浸透した神話が信じられているようだ。つまり、古代中国の軍事戦略家、孫子の伝統に従い、戦わずして勝つことを目指しているというのだ。これは、戦闘が始まる前に敵軍が降伏せざるを得ない状況に追い込むという、事実上の戦略といわれる。しかし、歴史的な文脈において、孫子の格言は、敵兵が隊列を整え反撃する前に撃破するという意味で解釈されるべきである。つまり、準備ができていない敵に先制攻撃を仕掛ける方が、戦闘を交えることなく勝利を収めることができる、という意味である。 イタリアの航空戦略家ジュリオ・ドゥーエ将軍も1921年に同じことを指摘している。「敵の鳥を空中で狩るよりも、敵の巣や卵を地上で破壊する方が、敵の航空戦力を破壊する上でより容易で効果的である。」  


第7007爆発物処理飛行隊が運用する装甲ブルドーザーが、SALTY DEMO '85演習中の模擬空襲後の滑走路から瓦礫や不発弾を撤去する。空軍基地の生存能力演習では、受動的および能動的防御、航空機運用および生成、基地復旧システムを評価する。米空軍


未来への回帰 - 1985年-2024年 

 今日の空軍は、ベトナム戦争終結時の状況と似た状況に置かれている。数十年にわたる投資不足により、基地防衛に重大な欠陥が生じている。しかし、1980年代初頭までに、ソビエト連邦は戦力投射能力と精密攻撃能力を開発し、西ヨーロッパの基地防衛を圧倒する脅威となっていた。ペイトリオット地対空ミサイルシステムや空軍のコロケート・オペレーティング・ベース・プログラムなど、ヨーロッパの防空能力を強化する取り組みにもかかわらず、コンピューター・シミュレーションでは、ソ連の攻撃開始から1週間以内に米空軍基地が攻撃された場合、空軍の航空機出撃数は40パーセント減少し、配備中の航空機の40パーセントが地上で破壊される可能性が高いという結果が示されていた。

 1985年春に数週間にわたり実施された「ソルティ・デモ」という空軍力の演習では、西ドイツのシュパンダハレム空軍基地に対するソ連の攻撃がシミュレーションされた。 

 攻撃のシミュレーションでは、航空機、建物、設備が「破壊」され、公共施設や通信網が麻痺した。 

 空軍の戦闘工兵隊は、代替滑走路を修理できるようにするため、実弾を使ってクレーターを作った。この演習はすべてが同時に機能不全に陥った場合の相乗的な混乱を如実に示すものだった。

 同年に空軍指導部は、基地防衛の優先事項が「緊急」から「重要」へと進展したと発表した。新たな取り組みには、インフラ強化や、カモフラージュ、隠蔽、欺瞞などの受動的防衛策の採用が含まれていた。被害管理と滑走路の迅速な修理が優先事項となった。これらの取り組みに先立ち、空軍と陸軍は、空軍基地の地上配備防空システムを陸軍が提供するという覚書に署名した。

 空軍の指導者たちは「基地防空」について話し合い、基地を兵器システムのように効果的に運用し始めた。

 その後、冷戦が終結した。その後30年間は、西南アジアやバルカン半島を含む地域紛争が軍事作戦と計画を支配した。米空軍は、戦場から遠く離れた聖域の基地から作戦を展開し、事実上、航空優勢を享受していた。1984年に締結された、空軍基地に対する地上配備型防空を提供する陸軍の責任を定めた協定は、1990年代に注目されることなく失効した。 対反乱作戦に気を取られ、ロシアや中国が開発した新世代の長距離精密攻撃兵器が前方航空基地に新たな脅威をもたらすことを認識する軍事計画立案者はほとんどいなかった。

 太平洋空軍(PACAF)は、B-2とF-22を保護するために、グアムのアンダーセン空軍基地に18億ドルを投じて強固なシェルターを建設し、2008年の完成を目指すと提唱したが、空軍は資金不足を理由にこの提案を却下した。

 2023年、フランク・ケンドール空軍長官の5つ目の業務命令である「レジリエント・フォワード・ベース(OI-5)」により、一巡して、冷戦時代の「エアベース・オペラビリティ(ABO)」プログラムが「アジャイル・コンバット・エンプロイメント(ACE)」として再パッケージ化された。ABOとACEの両方とも、航空機を分散させ、主要な作戦基地に敵が攻撃しやすいように戦力を集中させるのではなく、既存の基地と遠隔地の基地に作戦を分散させるというものだ。ACEはABOと同様に、より積極的な防空およびミサイル防衛を必要とし、空軍は基地防衛の責任を共有する陸軍との合意を再び求めることになる。


内向きな軍隊であり続ける

米空軍は、同盟国やパートナー国の既存・分散型前方航空基地が敵攻撃を受けている状況下でも、戦闘任務を遂行できなければならない。太平洋空軍戦略2030が述べているように、同盟国やパートナー国を強化することは、戦略上の最重要事項だ。有志国と連合軍として前進することは、米国の同盟協定および地域軍事戦略の基盤だ。実際、現在の兵力構成と基地配置では、米国が単独で対応することは不可能だ。米国は、欧州、中東、太平洋のいずれでも、同盟国や連合軍の一員として戦わなければならない。

 さらに重要なことは、前方展開部隊を可能にする航空基地防衛がなければ、ほぼ同等の敵対勢力との紛争において、米国空軍は深刻な不利な立場に置かれるということだ。現在の米国の爆撃機部隊は、ロシアや中国のような広大な国々に対して必要な規模の攻撃を行う能力を欠いている。空軍の規模縮小により、大規模な紛争に勝利するために必要な出撃率と戦力を生み出すのに十分な戦闘機と兵器が不足している。これは特に東アジアで顕著だ。グアムやオーストラリア北部から戦闘機を国東シナ海や南シナ海に飛ばすために、給油機のデイジーチェーンに頼っていると、ほとんどの航空機では1日1回の長距離出撃しかできない可能性がある。しかし、第一列島線沿いの前方基地から出撃する戦闘機であれば、その数は3倍になる。 

 敵対国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力の範囲内で、効果的な基地防衛能力を備えて運用することは、作戦上および戦略上の重要な目標を達成することにつながる。 これには以下が含まれる。

  • 効果的な戦闘任務の遂行。前方基地を防衛し、そこから作戦を展開することは、必要な空爆を実施し、その他の戦闘に関連する効果をもたらすための唯一の現実的な方法だ。長距離からの攻撃能力では、必要な攻撃をすべて実施することは不可能なためだ。

  • 戦力の維持:貴重な戦闘機、支援機、人員、整備施設、燃料は、特に数週間から数か月にわたる危機においては、交換が困難、あるいは不可能になる可能性がある。

  • 敵対勢力にコストを負担させる。空軍およびそのパートナーが効果的な基地防衛を実施した場合、敵対勢力は、最小限の作戦効果を得るために、貴重で高価な兵器を消費しなければならなくなる。

 これら3つの基地防衛目標を認識することは、「平和のための強さ」抑止戦略の中核的能力として基地防衛を認識することを意味する。


複雑かつ統合された脅威

将来のいかなる紛争においても、中国の人民解放軍は米国および同盟国の空軍基地にとって最大の潜在的軍事的脅威となる。人民解放軍のインテリジェンス、監視、偵察(ISR)能力は、長距離精密兵器の膨大な兵器庫を可能にしている。中国との大規模な紛争においては、空軍は航空機、弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機による空軍基地への持続的かつ複雑な統合攻撃に直面することになる。

 中国による東アジアでの情報、監視、偵察(ISR)活動は、電子光学、赤外線、ハイパースペクトラル画像、合成開口レーダー画像、およびさまざまな信号情報を生成する、多様な宇宙および空中センサーによる重層的かつ重複的な監視を特徴としている。サイバーおよび人的情報収集と組み合わせることで、中国は恐らく、米軍の航空機や装備が駐機する基地の位置を特定し、航空機の離着陸に関する情報を収集することができるだろう。迷彩、隠蔽、欺瞞策を含む強固な受動的防衛は、中国軍のISRおよび長距離キルチェーンを打ち負かすために極めて重要となる。

 中国軍による米軍基地への攻撃は、能動的および受動的防衛を圧倒しようとするだろう。

 想定される攻撃には、多数の低コスト巡航ミサイルや無人機と、より高価な弾道ミサイルや極超音速滑空体が組み合わされる。

 弾道ミサイルは、高高度から攻撃し、飛行の最終段階で機動を行う可能性がある。

 極超音速滑空機は高速かつ比較的低空から侵入し、警告時間の余裕を短縮する。

 巡航ミサイルは亜音速または超音速で攻撃する可能性がある。さらに、プロペラ駆動の神風ドローンや、標的に衝突するように改造された第3世代の遠隔操作戦闘機も攻撃に加わる。異なる方向から異なる高度と速度で同時に飛来する、複数の航空機やミサイルの脅威を追跡し、迎撃することは、米国の防空システムにとって大きな課題となる。

 中国本土から1,500~2,000海里(約2,700~3,290km)の範囲、すなわちグアム、その他の第二列島線、南シナ海の最南端にまで、PLAの運動打撃能力は及んでいる。

 このような攻撃は、米国の軍事介入を阻止することはできなくとも、深刻な妨げとなる可能性がある。2020年代後半には、中国海軍の水上艦艇や潜水艦が、陸上攻撃巡航ミサイル(LACM)や通常型の艦船発射弾道ミサイルで、アラスカ、ハワイ、カリフォルニア、ワシントン州の米軍基地、さらにはディエゴ・ガルシアやオーストラリア北部をも脅かす可能性がある。

 中国海軍の保有する長距離精密攻撃兵器の数は多く、また増え続けているため、航空基地に対する脅威は深刻であるが、克服できないものではない。中国軍のような敵対勢力が同時に発射できる高度な兵器の数には、現実的な物理的な限界がある。防衛アナリストの一般的な見解では、中国は米国の航空基地を攻撃するために「数百発のミサイル」を保有しているが、米国の地域防空、指揮統制通信、ISR能力、海軍基地、艦船、後方支援など、同等の価値またはそれ以上の価値を持つ他の標的も保有している。

 さらに、 中国軍のミサイル備蓄の増加分は、DF-11、DF-15、DF-21といった旧式のミサイルを、より新しく、より正確で、より射程の長いシステムDF-17極超音速滑空体(HGV)や中距離DF-26に置き換えることで相殺されている。

 さらに、中国軍の地上発射ミサイル発射機とミサイル再装填弾の数によって、その攻撃能力は制限される。国防総省の年次中国軍事力報告書によると、主要な長距離ミサイルDF-26の大隊は、250基の発射機に対して1基の再装填弾しか用意されていない可能性があり、ミサイルの数は約500発である。中距離弾道ミサイルであるDF-17極超音速滑空機は、再装填可能弾頭を2~3個備えている可能性があり、2028年までに合計500~600発のミサイルが配備されるかもしれない。

 ミサイル発射後に発射機を迅速に移動させる人民解放軍の「撃ちながら移動する」戦術により、一度に発射できるミサイルの数はさらに制限される。さらに、中国軍は限られた兵器の在庫を、この地域における米国および同盟国の軍事能力の増え続けるリストを標的に使用する必要がある。

 これらの制約要因と中国軍の増え続ける標的リストが組み合わさることで、米国の空軍基地への攻撃に使用できるハイエンドミサイルの数が制限される。米国および同盟国の空軍部隊を複数の作戦地域に分散させることは、中国軍に第一列島線(約2,000~3,000海里)全域に攻撃を集中させることを強いることになる。


攻撃下での作戦継続

 ミッチェル研究所とその分析パートナーは、最近の空軍基地防衛研究において、東アジアにおける仮想の「レッド」対「ブルー」の紛争における出撃率を調査した。そのシナリオでは、敵レッド軍が、第一列島線沿いに位置する米軍および同盟国のブルー軍の空軍基地に対して、持続的なミサイル攻撃を実施した。分析では、統合防衛システムの組み合わせにより、ブルー空軍が敵の攻撃下でも作戦を継続できることが示された。複数場所に分散した航空機の運用、中程度の有効性を持つ能動的および受動的なミサイル防衛、滑走路の修理などの復元能力により、レッド軍の攻撃を受けながらも、ブルー軍の戦闘機および空中給油機は、戦闘に関連する出撃率を迅速に回復することができた。この評価では、防空システムがレッドのミサイル攻撃を50パーセントしか阻止できないと想定した。

 ACEのハブ・アンド・スポーク方式による航空基地分散は、レッドの攻撃を5倍の数の場所に分散させるため、脅威への対抗策として最も大きな影響を与えることが判明した。

 今後の航空基地防衛および戦闘出撃に関する評価では、ACE分散コンセプトの実行に内在する装備、兵站、人員負担の増加を考慮すべきである。ACEが攻撃を受けた場合、すべてのハブ・アンド・スポーク基地に存在する能動的防衛システムだけでなく、滑走路の修理要員も必要となる。さらに、より精度の高いモデリングと評価を行うことで、空軍は基地防衛要件をさらに改善することができる。 


Operational Concept for Base Defense



基地防衛の運用コンセプト

ここで概説した、想定される脅威の組み合わせの分析と概念実証評価は、基地防衛の運用コンセプトを定義する上で、3つの主要な原則と優先事項を指摘している。

  1. 機敏な戦闘配備は、紛争時の出撃と再出撃を大幅に改善する。

  2. 生存性を生む分散型能動・受動センサー、運動および非運動効果器を含む、多様で重層的な能動防衛兵器は、コスト効率の高い攻撃に対する防御を提供する。

  3. 硬化、カモフラージュ、隠蔽、欺瞞などの受動的防御は、最も費用対効果が高く持続可能な防御策のひとつだ。また、滑走路の迅速な修理などの大幅な再編成能力は、攻撃後の戦闘能力の回復に不可欠です。

 複数の航空基地や代替の作戦地域に航空機を分散配置することで、敵の標的設定を複雑化すると同時に、空軍は複数の前方地域から標的を危険にさらすことができる。東アジアでの紛争シナリオでは、米空軍は2,000~3,000海里にわたる前線に点在する複数の空軍基地から作戦行動を行う可能性がある。 その場合、中国のような敵対国は、ISRおよび攻撃能力をその前線全体に分散させることを余儀なくされ、追加コストが発生し、いずれかの基地に対する攻撃規模が縮小される可能性がある。

 現実的で効果的、かつ持続可能な空軍基地防衛には、組織的なアプローチが必要だ。空軍が直面する航空基地防衛の課題をすべて解決する魔法の武器は存在しない。長距離探知能力と、密集した近接キル・ウェブは、高価で数が限られている長距離防空システム(THAADやペイトリオット地対空ミサイルなど)を補完すべきである。ペイトリオット1基の価格は380万ドル、THAADは840万ドルである。このようなシステムは、最も高度で、打ち負かすのが困難な敵対勢力に対する脅威に備えて確保しておくべきだ。

 空軍およびそれを支援する陸軍防空部隊は、電子戦や指向性エナジー兵器など、より費用対効果が高く、戦闘に関連性の高い防空能力を必要としている。無人機含む空中戦力は、低空飛行の脅威の一部に対処できるだけでなく、空軍基地への接近中の脅威に対する早期警戒も提供する。地上配備の防空システムには、地上配備のAMRAAMやAIM-9X、砲弾誘導弾などの短距離ミサイルを含む、中距離および短距離の兵器を大量に配備すべきである。

 航空基地の司令官は、費用対効果の高い短距離システムで迎撃する前に、低レベルの脅威を意図的に航空基地に接近させる必要があるかもしれない。長距離迎撃戦略では、比較的安価な敵兵器に対して長距離迎撃機をすぐに使い果たしてしまう可能性がある。脅威に空軍基地への接近を許せばリスクを伴うが、低コストの短距離防空システムで迎撃すれば、長期的には運用リスクを軽減できる。これは、ハイエンドとローエンドの脅威が混在する持続的な攻撃に直面した場合に非常に有益である。

 最終的に最善のアクティブ防衛システムを突破する脅威に対処するには、空軍基地の強化、カモフラージュ、隠蔽、欺瞞が重要な受動的防空の要素となる。100万ドルの強化航空機格納庫は数十年間使用可能であり、100万ドルのデコイは1億ドルの航空機に対する破格の保険と言える。また、予備の燃料や発電設備、迅速な滑走路修理能力も不可欠だ。 


提言

ウクライナでの戦争や東アジアでの紛争の可能性の高まりは、米国の空軍基地の能動的および受動的防衛の両方における重大な欠陥に対処する必要性を浮き彫りにしている。議会、国防総省、空軍は以下の事項を検討すべきである。

  • アジャイル・コンバット・エンプロイメント(ACE)構想を開発、体系化、実施する。ACEは効果的な空軍基地防衛の中核となる要素で、前方地域における運用部隊を分散させることで変更することは、受動的な防空の重要な要素である。空軍は、将来の能動的および受動的防空への投資と予算要求の指針となるよう、レジリエントな前方基地化の基準を定義すべきである。また、空軍は、基地のレジリエンスを評価するために必要なパフォーマンスと有効性の測定基準を特定しなければならない。

  • 専用の基地防衛プログラムに資金投入する。敵対勢力の脅威が大幅に増大している状況下では、これらの要件を既存の予算から単に切り出すことはできない。米国の空軍基地防衛のための緊急の運用要件に対応するには、追加資金が必要である。議会は、航空戦力が地域作戦計画、同盟およびパートナーシップ、抑止力に提供する価値に見合ったレベルで、これらの能力に資金を提供しなければならない。

  • 空軍基地防衛に関し統合軍間協定を締結する。空軍が自らの地上配備防空能力を提供できるよう、人員、訓練、装備を整えない限り、空軍はこれらの能力について、他軍に頼らざるを得ない。陸軍(および沿岸地域の海軍)は、地域全体にわたる高高度防空およびミサイル防衛を提供すべきである。また陸軍は、航空基地の近辺に中距離および短距離の地上配備防空システムを配備すべきである。このような体制が非現実的であることが判明した場合は、議会は空軍の基地防衛に資源を再配分すべきである。

  • 十分な受動的基地防空システムに資金を提供し、構築し、配備する。予算を重視する議会は、硬化、カモフラージュ、隠蔽、欺瞞などの受動的防衛が、航空機およびミサイル攻撃に対する最も費用対効果の高い対策であることを考慮すべきである。受動的防衛策は敵の攻撃コストを押し上げ、目に見える抑止力を生み出す。

  • 滑走路の迅速な修理と空軍基地の再編能力に投資する。滑走路に対する敵の継続的な攻撃は、空軍基地を長期間閉鎖し、戦闘出撃を事実上抑制する恐れがある。受動的防衛策に分類される迅速な滑走路修理は、空軍基地を運用可能な状態に戻すために不可欠で費用対効果の高い能力でもある。

  • 航空基地防衛のために、宇宙および空中早期警戒、および空中での長距離運動能力および非運動能力に投資する。効果的な航空基地防衛の運用コンセプトには、極超音速滑空機、巡航ミサイル、無人機などの低空侵入の脅威に対する早期警戒が必要である。 早期警戒は、地対空ミサイル、電子攻撃、指向性エナジー兵器などの防衛手段に利点をもたらし、航空機を迅速に避難させたり、爆風ドアを閉鎖するなどの迅速な対応策を可能にする可能性がある。早期警戒と空中での空対空交戦能力を組み合わせることで、航空基地への脅威に対して長距離防御の外輪を形成することも可能となる。

  • 費用対効果の高い航空基地防空センサーおよびC2能力への投資を大幅に増やす。攻撃に対する効果的な対応を調整することは、効果的な航空基地防衛の決定的な要素である。防空能力は、持続的な敵の攻撃から防御するために、適切な範囲で適切な防御能力と兵器を配備するための冗長性と生存性のあるセンサーおよびC2能力を備えていなければならない。

  • 統合された能動的防衛能力の多様な武器庫への投資を大幅に増やす。特に費用対効果の高い短距離防衛能力に重点投資する。空軍および陸軍は、THAADやペイトリオット地対空ミサイルシステムのようなシステムを補完するため、中距離および短距離能力に投資しなければならない。より多数配備される短距離システムには、地対空ミサイル、機動弾頭付き防空砲、指向性エナジー兵器、電子戦能力を含めるべきである。

  • 追加の研究、モデリング、実験、および航空基地防衛演習を実施する。 空軍は、受動的および能動的防空の最も能力が高く、費用対効果の高い組み合わせについて、引き続き研究および開発を行うべきである。 最前線の航空基地から戦うことは、将来の紛争において勝敗を分ける可能性がある。 

 米空軍は、堅固な前進基地から作戦行動を行う能力を備えていなければならない。そうでなければ、米国が潜在的な敵対者を抑止し、思いとどませる能力に同盟国やパートナー諸国が疑問を抱くかもしれない。米国と同盟国の戦争のやり方では、敵の脅威の範囲内で活動し、潜在的な攻撃から回復できる能力を備えた空軍が必要だ。これは絶対に失敗が許されない任務である。能力があり、費用対効果に優れ、戦闘に関連した空軍基地防衛に必要な投資を行うことは、米国の国家安全保障にとって不可欠だ。■


Fighting the Air Base

Sept. 6, 2024


https://www.airandspaceforces.com/article/fighting-the-air-base/


なぜロシアはイランの弾道ミサイルが必要なのか?戦術と産業上の課題を専門家が指摘(Breaking Defense)

 


「国境地帯で見られるロシア軍とウクライナ軍の戦闘、つまりウクライナ軍を疲弊させる戦術的なレベルにおいて、ロシアにとってイラン製弾道ミサイルは適切なのだろう」と、アナリストのジャン・ルー・サマーンは見ている

国がロシアとイランを新たに非難した。クレムリンがイランの弾道ミサイルを初めて受け取り、ウクライナ戦争で「数週間以内に」使用する可能性があるとしている。

イランが否定したこの動きは、ワシントンとヨーロッパの同盟国から非難を浴びたが、モスクワの戦術的思考や、クレムリンの戦争マシンが直面している、より深い能力の課題を垣間見せている、政府関係者や専門家は語っている。

戦術的には、米政府高官は射程75マイルのFath-360ミサイルが近接戦闘で使用されることを示唆し、ロシアが「戦場全体で使用するため長距離能力を保持し、ロシアの兵器庫を深化させている」とパット・ライダー国防総省報道官は指摘。

中東研究所の上級研究員ジャン・ループ・サマーンも同意する。

「過去20年間にわたりイランは先進的な弾道弾兵器を開発してきたが、その大部分は短距離か中距離だ」とサマーンは本誌に語った。「ロシアにとっては、ロシア軍とウクライナ軍の国境地帯で見られるような戦闘に関連するものであり、戦術レベルでは、ウクライナ軍を疲弊させるために使用されるのだろう」。

しかし、サマーンは、モスクワのイランへの働きかけは、国内兵器生産の苦境を伝える最新の手がかりになると述べた。

「ロシアの背後にある北朝鮮の関与と同様に、ロシアの防衛産業がロシア軍で使用される兵器の生産ペースを維持するのに苦労していることを示しているのかもしれない」。

イスラエルとその同盟国は、4月中旬の劇的な弾幕でイスラエルに向けて発射された脅威のほぼすべてを撃ち落とすことができたので、クレムリンはイラン製ミサイルの有効性を心配する理由があるかもしれない。しかし、民主主義防衛財団シンクタンクのベン・タレブルーは、見かけほど適切な例ではないと述べた。

「Fath-360は、イランで最も精密な弾道ミサイルである単段式固体推進短距離弾道ミサイルFatehシリーズの派生型です。「イランが4月13日に発射した弾道ミサイルの多くは、地域の軍事作戦で使用されたことのない液体燃料の中距離弾道ミサイルでした。この2つのシステムの実績にはかなりの差があるのです」。

ハドソン研究所の上級研究員カン・カサポウルは、今日の分析で、ファス-360は「教科書的な戦術弾道ミサイル」であり、「迅速な発射サイクルと低単価により、特に一斉発射された場合、手ごわい選択肢となる」と書いている。

制裁と懐疑

イランのミサイルがロシアに譲渡されたとされる事件を受けて、フランス、ドイツ、イギリスは、イラン航空、イランのミサイル計画に関与する団体や個人への制裁に加え、「イランとの二国間航空サービス協定の取り消しに向けた措置を直ちに講じる」と発表した。米国も これに続いた

制裁と経済関係は重要だが、専門家にはテヘランを抑止するには十分ではないとの見解がある。

「制裁が核開発や弾道ミサイル開発を遅らせ効果を示したが、過去数十年間、IRGC(イスラム革命防衛隊)は常に制裁を回避する方法を見つけてきた。イランには弾道ミサイル開発で強力な国産防衛産業があり、また北朝鮮などアジアのパートナーに依存しているため、制裁の影響も弱まっている」とサマーンは本誌に語った。

ベン・タレブルーは、「どちらかといえば、この罰則は、2年前のイランの無人機(ロシアへの)移転の後、より最近のミサイル移転を阻止するために課されるべきだったものだ」と述べた。

「しかし、国連制裁の撤回と組み合わされれば、より首尾一貫した欧州の対テヘラン政策の構成要素として機能することになる」と付け加えた。

ロシアとイランの結びつきは強まる一方だ。イランとロシアはともに、軍事協力を強化する防衛「包括協定」の調印に近づいており、またそれを正式なものにするという声明を何度も発表している。

「イランが武器拡散の半径を広げているのは、もっと大きな問題の徴候だ」とベン・タレブルーは言う。「イランとロシアは、ゆっくりと着実に、地域のパワーバランスを自分たちに有利なように修正し、軍事協力を深め、対立を区分けしながら敵対国に対してサラミ戦術をとっている。これらの脅威の一方に対抗するためには、もう一方の脅威に対する政策を改善する必要がある」。■

Why would Russia need Iranian ballistic missiles? Experts point to tactics, industrial challenges

"I assume for Russia they are relevant for the kind of battles we see in the border area between Russian and Ukrainian troops so at tactical level to exhaust the Ukrainians," analyst Jean Loup Samaan told Breaking Defense.

By   Agnes Helou

on September 11, 2024 at 12:45 PM

https://breakingdefense.com/2024/09/why-would-russia-need-iranian-ballistic-missiles-experts-point-to-tactics-defense-industrial-challenges/


2024年9月19日木曜日

9月18日第二波攻撃でヒズボラの電子機器が広範に爆発して死傷者が出ている。

 

イスラエルがどんな技術を使って電子機器を爆発させているのか不明ですが、爆発の対象はどんどん広がっている模様です。右往左往するレバノン国内の状況を見ると、ハイテク機器を使っていても基本的に技術に踊らされている観がありますね。侵攻の前にこうした攻撃が一般社会を襲えば相当の混乱を巻き起こすことができるだけでなく、国の指揮命令系統の機能をマヒさせることができます。

Walkie Talkie exploded in Lebanon  

X screen cap


レバノンでさらなる電子機器が爆発。イスラエルは戦争の「新段階」を宣言する中、ヒズボラとイスラエルの直接対決が近づいている(The War Zone)


電子機器数千個の爆発とその他の動きは、ヒズボラに対するイスラエルの全面的な軍事作戦の前兆かもしれない

  

日、数千人のヒズボラ・メンバーのポケベルを狙った前代未聞の爆発が発生した。第二の爆発は、イランの支援を受ける過激派グループが使用するトランシーバーを狙ったようだが、それ以外に各種の電子機器が被害を受けた可能性が指摘されている。イスラエルはこの2日間の攻撃について犯行声明を出していないが、ヨアヴ・ギャラント国防相は本日、北部戦線に焦点を当てた戦争の「新局面」の開始を宣言した。


レバノン保健省の最新報告によれば、本日レバノン全土の各地を襲った爆発で14人が死亡、450人以上が負傷した。死者のうち3人はレバノン東部のベカー地方で死亡したという。負傷者の多くは、昨日と同様、腹部と手であった。


People and first responders gather at the scene of a reported device explosion in Saida in southern Lebanon on September 18, 2024. A second wave of device explosions killed three people in Hezbollah strongholds of Lebanon on September 18, raising fears of an all-out war between Israel and the Iran-backed militants. (Photo by Mahmoud ZAYYAT / AFP) (Photo by MAHMOUD ZAYYAT/AFP via Getty Images)

2024年9月18日、レバノン南部サイダで発生した爆発現場に集まる人々と救急隊員。写真:Mahmoud ZAYYAT / AFP MAHMOUD ZAYYAT 


 レバノン赤十字によると、レバノン南部と東部で「複数の爆発」が発生したため、30台以上の救急車が出動し、さらに50台の救急車が救助と避難活動を支援するため警戒態勢に入った。 

 ヒズボラ筋は、今のところ、イスラエルによるものと広く言われている昨日の一連の爆発の特徴の多くを持つ攻撃の性質を確認した。

 ポケベルが狙われ、2800人以上が負傷、12人が死亡した昨日と同様、今日の爆発は「小規模」であったと伝えられている。


TOPSHOT - A photo taken on September 18, 2024, in Beirut's southern suburbs shows the remains of exploded pagers on display at an undisclosed location. Hundreds of pagers used by Hezbollah members exploded across Lebanon on September 17, killing at least nine people and wounding around 2,800 in blasts the Iran-backed militant group blamed on Israel. (Photo by AFP) (Photo by -/AFP via Getty Images)

2024年9月18日、ベイルートで撮影された写真は、非公開の場所に展示されている爆発したポケベルの残骸。写真:AFP=時事】


 今日の爆発で撮影された写真やビデオには、様々な壊れたり燃えたりした通信機器が写っており、その中には日本製の双方向トランシーバー無線機ICOM IC-V82が複数あった。 

 爆発の一つは、昨日殺害されたヒズボラ・メンバーの葬儀がベイルート南部で行われている最中に起こった。 

 昨日の爆発の後、イスラエルがヒズボラが購入した数千台のポケベルに小型爆発物を仕込むことに成功したとの報告があった。 

 本日、レバノン国営通信によると、レバノン全土の人々の家で複数の太陽光発電システムも爆発したと報じられており、少なくともそのような爆発が1件あり、レバノン南部のアル・ザハラニという町で少女が負傷した。 

 また、上のツイートにあるような、爆発した指紋読み取り機の写真もある。 

 追加の報告によれば、今日レバノンで爆発したトランシーバーの少なくとも1機種は製造中止になっていたが、ヒズボラは5ヶ月前、昨日の爆発に関与したポケベルを受け取ったのと同じ頃に、その出荷を受けたという。どのような方法であれ、今日の出来事は少なくとも、より多くの種類の電子機器が爆発物に改造された可能性を示唆している。

 このディストピア的な展開の深い意味については、イスラエルがさまざまな種類の電子機器を使ってヒズボラのメンバーや関係者を標的にできるようになったとすれば、この2日間の攻撃は、イスラエルが過激派組織に対して大規模な作戦を開始する用意があることを暗示しているのかもしれない。

 これらの爆発は、ヒズボラの重要人物を方程式から排除するのに役立つだけでなく、グループのコミュニケーション能力や指揮系統を維持する能力を大幅に低下させる。さらに、ヒズボラ内部だけでなく、より広くレバノン国内に恐怖と混乱をまき散らし、グループがより自由に活動できるようになるという重大な要因もある。病院が負傷者であふれかえっていることも、作戦前の敵対勢力に有利な起爆の影響だろう。 

 爆破による混乱を反映して、爆発していないトランシーバーから電池を抜き取り、爆発に備えて部品を金属製の樽に入れているヒズボラ・メンバーの姿が今日、報告された。

 イスラエルがこのようなエキゾチックなスパイ能力に多額の投資をした場合、それが危険にさらされる差し迫った危険があれば、可能な限り迅速に最大限の利用をせざるを得なかったのかもしれない。理想的な状況下であれば、このような手段は、前述したように、相手の戦力を低下させるために、大規模な軍事作戦の開始前か開始直後に利用されるだろう。

 イスラエルがまさにそのような作戦を開始しようとしている兆候がある。また、作戦が発覚することを恐れて、これらの装置の爆発を急いだという報告もある。 

 国際的な懸念も高まっている。国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、今日の爆発以前から、民生品が武器化されないことが「非常に重要」だと述べていた。 国連事務総長は、昨日の爆発は「レバノンで劇的なエスカレーションが起こる深刻なリスク」を示しているとし、それを避けるために「あらゆることをしなければならない」と警告した。レバノンでの爆発について、欧州連合(EU)トップのジョゼップ・ボレルは「極めて憂慮すべき事態だ」とし、「市民を巻き添えにした無差別の大きな被害」をもたらしたと指摘した。


 イスラエルには現在、ヒズボラに対してより協調的な作戦を開始する準備が整っている可能性があることを示す他の兆候がある。イスラエル国防軍(IDF)のトップであるハレヴィ中将は、国がヒズボラに対する追加行動の計画を策定し、攻撃する準備ができていると述べた。 

 ハレヴィはまた、イスラエルにはまだ使用されていない「より多くの能力」があると警告した。「我々はまだ起動していない多くの能力を持っている...我々はこれらのもののいくつかを見てきた、それは我々が十分に準備されているように私には思われ、我々は今後、これらの計画を準備している。各段階において、ヒズボラに対する代償は高額である必要がある」とハレヴィは付け加えた。 


 今日の声明で、イスラエルのネタニヤフ首相は、ヒズボラがロケット攻撃のキャンペーンを強化した際、レバノンとの北部国境沿いの町から避難していた数万人のイスラエル人を帰還させることを誓った。

 電子機器の爆発を急ぐ必要性に駆られた可能性もあるが、これらの動きを総合すると、ここ数カ月で劇的に高まっている緊張の中でイスラエルとヒズボラの大規模衝突が間近に迫っている可能性がある。■



More Electronics Explode In Lebanon As Israel Declares ‘New Phase’ Of War

The detonation of thousands of devices along with other developments may be a precursor to a full-on Israeli military operation against Hezbollah in Lebanon.

Thomas Newdick

Posted on Sep 18, 2024 5:22 PM EDT


https://www.twz.com/news-features/more-electronics-explode-in-lebanon-as-israel-declares-new-phase-of-war


韓国国内の核兵器論争の行方。第三の道を模索するのか?(National Interest)

 South Korea


韓国が核抑止力を独自に開発するのではなく、あるいは米国の「核の傘」に依存し続けるのではなく、閾値国家threshold stateとなることが、韓国にとって最善の選択肢であるかもしれない。


国における核武装をめぐる議論は、ますます重要性を増しながら、二極化が進んでいる。主に2つの戦略が議論を支配している。

 1つ目は、独自の核開発プログラムを通じて北朝鮮に対する独自の抑止力を達成するというもの。2つ目の戦略は、核共有、戦術核兵器の再配備、拡大抑止の深化などの措置を含む、米国の「核の傘」の強化に重点を置くものである。

 この戦略は、NATOサミットで合意された米韓共同核抑止ガイドライン「通常戦力統合(CNI)」でさらに明確化された。

 最近の世論調査では、北朝鮮の核能力とロシアとの軍事協力の拡大に対する懸念から、韓国人の71パーセントが国内での核兵器開発を支持している。

 同時に、保守派の政治家、例えば、キョン・ウォン・ナ知事などが、核開発を主張している。この意見によると、韓国は国家安全保障を確保し、潜在的な脅威に独自対応するために、核兵器を保有しなければならない。

 しかし、依然として多くの戦略エリートや政策立案者たちが、防衛体制の強化と米国の安全保障体制への依存を支持しており、大きな反対意見が残っている。彼らは、韓国の通常戦力と米国の支援があれば、十分な抑止力を確保できると考えており、核開発は国際的な制裁につながり、米韓同盟を妨げ、地域的な軍拡競争を引き起こす可能性があると警告している。


韓国にとってより受け入れやすい代替案 

韓国で現在行われている議論を踏まえ、私は第3の選択肢を提案したい。それは、より強固なウラン濃縮および核再処理技術(ENR)を獲得し、潜在的な核戦力を高めるというものである。高い抑止力を有するENRによって潜在的な核戦力を高めるという選択肢を、韓国は真剣に検討すべきである。これにより、実際に核兵器を製造することなく、その潜在的な製造能力を開発することが可能となり、核拡散防止条約(NPT)に違反することなく、日本が成功裏に実施している戦略と同様の戦略を韓国も採用できる。


ENR自体が、大きな抑止力を発揮する 

核兵器を製造する部品や知識をすでに保有しているにもかかわらず、まだ組み立てや配備を行っていないという事実は、その潜在的な能力の大きさを浮き彫りにしている。 

 潜在的な核潜在力を有する国家は、「遅延」核報復戦略を実施することができる。つまり、そのような国家が攻撃された場合、数週間から数ヶ月以内に核攻撃を行うことで、最初の侵略を抑止することができる。遅延は伴うものの、このアプローチは、完全な核武装国が用いる抑止メカニズムと類似した機能を発揮する。さらに、北朝鮮のような敵対国は、韓国の核開発の完成を早めることを恐れて、潜在的な核保有国への攻撃をためらう可能性がある。

 こうした抑止メカニズムが機能するためには、明確性と曖昧性のバランスを取る必要がある。北朝鮮を含む敵対国は、韓国のENR能力を認識していなければならない。ENRを秘密裏に確保し、その存在を極秘にしても抑止効果は得られない。しかし、敵対国は、その国家が最終的に核兵器を開発するかどうかを確信できない状態になければならない。核兵器を開発しない、あるいは確実に開発するという絶対的な明確性は、抑止メカニズムを損なう。ENRプログラムを確実に実施する一方で、国家が核兵器を完全に開発するかどうかについてはあいまいな態度を維持し、その決定が相手の行動に依存することを示すことが不可欠である。したがって、韓国が北朝鮮に潜在的な核保有国であることを示すことは極めて重要であるが、同時に米国とのバランスを取り、韓国のENR施設の透明性と査察を強化することが必要である。

しかし、核潜在化を達成する過程における現実的な制限や困難、そして軍備後の外交方針に課題がある。それは、制裁や圧力による経済的ダメージを回避することだけでなく、新しい外交政策の枠組みを開発することでもある。


米国と中国の間で細い綱渡り

懸念材料のひとつは、韓国の外交政策の一貫性のなさを踏まえると、米国と中国のバランスをうまく調整できるだけの準備が韓国にあるかどうかという点である。韓国のアプローチは、政権によって変化してきた。保守政権は通常、米国および同様の考えを持つ国家との関係を強化する。一方、進歩政権は、米国との同盟関係を維持し、北朝鮮と関与しながら、中国との関係を改善することで、関係のバランスを取ろうとする。こうした一貫性のなさは、米国との関係において、長期的な戦略計画を立てる際に課題を生じさせる可能性がある。米国が韓国の核潜在力を容認する場合には、中国政策に従うことを条件として提示する可能性が高い。韓国は、それが受け入れられるかどうかを検討すべきである。

さらに、韓国政府の政策に対する国民の信頼度はOECD平均を下回り、国内の議論は大きく分かれている。韓国では政治が極端に二極化しているため、いかなる政権も、抜本的な外交政策や核政策を国民に受け入れさせるのは非常に難しいだろう。同時に、原子力施設の計画や建設にあたっては住民との対立が予想されるため、法的枠組みを確立することが重要である。現在、韓国には高レベル放射性廃棄物の貯蔵に関する法律が存在しない。

 ENR能力を獲得するためには、「高レベル放射性廃棄物管理特別法」のような高レベル放射性廃棄物の輸送や貯蔵に関する法律が必要である。韓国の生存に直結する北朝鮮への抑止力を強化することは重要であるが、現在の原子力政策に関する議論では、これらの問題が考慮されていないことが懸念される。

 こうした懸念を踏まえ、韓国政府は、ENRを通じて効果的な核潜在力を備えるレベルに達するために、慎重かつ大胆な2段階の措置を取るべきである。現在、韓国政府の核体制は「平和的核協力協定」に該当する。

 米国は当初、韓国におけるウラン濃縮を完全に禁止していた。しかし、2015年の米韓原子力協力協定の改正により、韓国は米国の同意を得た上で20%未満のウラン濃縮を行うことが認められたが、使用済み核燃料や高濃縮ウランの再処理は依然として禁止されている。しかし、兵器級ウランには90%の濃縮が必要であることを考えると、これは核潜在力を獲得するには十分ではない。したがって、韓国がより積極的なENR能力を獲得するには、米韓核協定を改正して20%以上の濃縮度を認めることが必要となる。


国際社会への訴え

同時に、米国との交渉を円滑に進めるためには、透明性を高め、国際規範を順守することで、二国間の信頼関係を構築し続けることが重要である。15年から20年という日本のアプローチは、透明性向上と核技術の継続的な改善を特徴としており、韓国にとって貴重なモデルとなる。日本は、東海再処理施設における遠心分離技術と再処理技術に関連する能力を公に議論し、改善することで、国際的な同盟国を確保し、信頼を築いており、透明性と戦略的計画の重要性を示している。

 ソウルも、米韓原子力協議グループ(NCG)や国際原子力機関(IAEA)の追加議定書モデルを通じて情報を入手し、更新することで、同様の措置を実施できる。長期的な信頼構築プロセスが適切に確立されれば、韓国はさらなる核開発を要請し始めることができる。

 核不拡散を優先する国家として、米国にはすでに韓国の要請を拒否する正当な理由がある。しかし、現在の地政学的な緊張関係は、米国が支援する現状に課題を突きつけている。国防総省(DoD)が2023年に発表した中国の軍事力に関する年次報告書では、中国の現在の核近代化の取り組みは「規模と複雑性の両面で、これまでの試みを凌駕している」と指摘している。

 中国の核近代化の方向性は現在も議論の的で、質的・量的な拡大は紛れもなく核の脅威の複雑性を高めている。こうした新たな核の脅威や北朝鮮とロシアの軍事協力により、米国のインド太平洋地域における新たな核抑止戦略の必要性が高まっている。そこで必要となるのが、米国の同盟国との協力である。

 韓国の核潜在能力は、戦略的深みを加え、自律的な抑止能力を確保することで、米国との同盟関係を強化することができる。これは、北朝鮮や潜在的な米国の敵対国の核の脅威に対する抑止態勢全体を強化するだけでなく、韓国が安全保障を完全に米国に依存しているわけではないことを示し、それによって地域の防衛負担を分担することにもなる。

 ソウルは、効果的なENR能力を確保するために濃縮上限を20パーセント以上に引き上げるという単純な発想を超えて、変化する核地政学情勢の中で同盟関係の信頼性と透明性を高める長期的かつ一貫した計画を策定する必要がある。ENR能力に関する長期的戦略を採用することは、自国の核抑止力に対する二国間および国際的な信頼を構築しながら、国家安全保障上の利益を最大限に高める上で韓国に多大な利益をもたらすだろう。■



著者について 

SeungHwan (Shane) Kimは、ワシントンDCに拠点を置く韓国国際交流財団の研究員であり、Vanguard Think Tankの研究員でもある。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)の修士課程を修了し、安全保障、国家政策、東アジアを専門としている。これまでに、East-West Center、Maureen and Mike Mansfield Foundation、Korea Economic Institute、Korea Studies Institute、韓国国会などで勤務した経験を持つ。彼の論文は、The Diplomat、East Asia Forum、Asia Times、Pacific Forumなど多数の出版物に掲載されている。本記事は著者の個人的な見解であり、韓国国際交流財団の見解を代表するものではない。


South Korea's Nuclear Weapons Debate: A Third Way Forward?

by SeungHwan Kim

September 7, 2024  

https://nationalinterest.org/feature/south-koreas-nuclear-weapons-debate-third-way-forward-212637


コメント:イマイチわかりにくいエッセイですが、北朝鮮が統一を断念し、今後核兵器を増強する方針に傾いており、(通常兵力では抑止効果が全く期待できないのでこれは理にかなった選択でしょう)、脅威を感じる韓国が核武装を選択しようとしているのですが、韓国も核不拡散条約の加盟国であり、条約を脱退する意思があるのかを聞きたいところです。脱退すれば南北朝鮮がともにNPT体制から外れることになり、「無法地帯」になってしまいますね


B-21のテスト飛行は週2回のペースで順調に進行中とノースロップが報告、米空軍は爆撃機の飛行映像を初めて公開(Defense One)

 


ステルス爆撃機B-21レイダーRaiderの飛行テストは順調に進んでいると関係者は報告し、高度なまで機密化されたプログラムでの最新情報を提供した。 


に順調で1週間で試験飛行を2回行うことができる」と、ノースロップのアエロナバル・システムズ社長であるトム・ジョーンズTom Jones, president of Northrop’s Aeronautics Systemsは語った。「米国のにとって日常的な戦闘航空機となりうる資産を提供する道を順調に進んでいると思う。ジンクスを言いたくはないが、試験品よりも試験治具や試験要員の訓練に問題がある」。 

 空軍の迅速戦力整備室のディレクター、ウィリアム・ベイリーWilliam Bailey, director of the Air Force’s Rapid Capabilities Officeによれば、プログラムは航空機の構造を証明するために使用される地上試験機の静的試験を完了した。 

 一方、ノースロップは量産機の製造を開始している。同社は、B-21が11月に初飛行した後、低レートの初期生産の許可を得た。 

 空軍はB-1とB-2爆撃機の後継機として、少なくとも100機のB-21を購入する。レイダーが就役すると、まずエルズワース空軍基地に配備される。空軍は最近、B-21の2番目と3番目の運用基地を発表した:ミズーリ州のホワイトマン空軍基地とテキサス州のダイス空軍基地である。 

 空軍グローバル・ストライク司令部司令官トーマス・ブシエール大将Air Force Global Strike Commander Gen. Thomas Bussiereは水曜日に語った。「我々はB-1とB-2からB-21に移行し、B-52HからB-52Jに移行すると、爆撃機タスクフォースは各地域戦闘コマンドからの需要に答えられる」。「新型機への移行に伴い、B-21は同盟国に大きな安堵を与え、潜在的な敵対国には大きな間隙を与えるはずだ」と述べた。■


Test B-21 flying up to twice a week, Northrop reports

Meanwhile, the Air Force has released its first-ever footage of the bomber in flight.


BY AUDREY DECKER

STAFF WRITER

SEPTEMBER 18, 2024 04:37 PM ET


https://www.defenseone.com/threats/2024/09/test-b-21s-flying-twice-week-northrop-reports/399641/