(ターミナル1、2共通投稿です)
熱狂的な結果も一夜空けると冷静な分析が出てきますね。新政権が生まれるのは来年1月20日のはずですから、今はいろいろ観測したり考える時期なのでしょうね。航空業界とくに民間航空が大きな影響を受けそうです。航空管制の民営化の話題は米国の動向次第では日本にも飛び火しそうですね。(国交省は当然反対の立場でしょう)
Trump Win Brings Change, Uncertainty
http://aviationweek.com/defense/trump-win-brings-change-uncertainty
WASHINGTON—ドナルド・トランプが大統領に就任すると航空宇宙防衛産業(A&D)は変貌を遂げる。
- 政権に癒着して契約を受注している企業をトランプが批判していたことからこの先に起こることは予想がつくし、貿易・安全保障上の条約関係は大部分を再交渉するとの公約もあり、NATO加盟国、北米の各国がここに含まれる。また安全保障分野では本人がまだ詳細を理解していないこともあるものの、中国にボーイング737の完成施設を設ける案件が急に出てきたが、トランプの思考から同案件も大きく影響を受けるだろう。
- 西側A&D産業部門はトランプ政権の方向性をつかむまではショック状態のまま、立ち位置の調整が必要となるのは確実だ。英国のブレグジット同様に米国の選挙結果で全員が来春にかけてスリルを感じることになる。
- 自由貿易、開かれた国境線、グローバル規模の安全保障の責務から米国を後退させるとの公約により債券市場は早くからトランプ政権誕生はリスク要因と考えてきた。
- 債券市場は民主党候補ヒラリー・クリントンを望ましい候補としつつ、投票日直前でクリントン当選の見通しを55%まで引き下げていたが、アナリスト陣は民主党が議会多数派になるとは見ていなかった。投票日前のA&D業界の集まりではクリントン当選を前提とし大統領選はほとんど話題になっていなかった。
- 投票日翌日に共和党が議会の主導権を握ったことが明らかになった。A&Dに重要な共和党上院議員としてジョン・マケイン(アリゾナ)やレイ・ブラント(モンタナ)が再選され、下院ではビル・シャスター(ペンシルヴェニア)、マイク・コフマン(コロラド)、バーバラ・コムストック(ヴァージニア)も当選。
- 選挙前は議会はクリントン政権下で両党が競い合う状況を予想していた。トランプ当選はこれを覆したが、その程度はどこまでだろうか。トランプ支持者の楽観主義は急速に衰えるだろう。新構想には議会内外の抵抗が待ち構え、人口構成の変化にともなう連邦予算編成の圧力もあり、対外脅威の増大、世界規模での企業活動の低迷が立ちふさがる。議会が分断されれば急速な変革の足を引っ張り、トランプは選挙公約の実現に困難を感じるはずだ。
- 選挙結果で防衛部門に不確実性が立ちふさがるが、投資分野では未知の課題が生まれるはずで今後半年は熟考が必要になる、勝者が誰になるかは関係なく、とキャピタル・アルファで防衛アナリストを務めるブライアン・キャランが11月6日にまとめている。
- 「投資機関は選挙結果を米欧の防衛企業に朗報と受け取るはず」とヴァーティカル・リサーチ・パートナーズで防衛分野のアナリストを務めるロバート・ストラードは11月9日に述べている。「両候補とも防衛産業寄りの政策を表明し、とくに予算管理法に基づく強制予算削減策の撤回を上げていた。また外交政策でも強い立場を表明していた。トランプ選挙運動の国家安全保障分野顧問ジェフ・セッションズ上院議員(共、アラバマ)からトランプ政権の防衛政策方針が発表されている」
- とは言えトランプ政権誕生でNASAの有人宇宙飛行からロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機に至るあらゆる事業が不確実性の雲に入るのは最善の場合で、最悪の場合は打ち切りになるだろう。米企業活動にとって国外での事業拡大はリスク要因とり、米外交政策は変更を余儀なくされる。
- その例としてキャピタル・アルファは11月7日に国防企業、航空会社、無人機メーカー各社を共和党勝利の場合の「勝者」と位置づけ、各業界と共和党間の歴史上のつながりを理由に上げた。だがトランプは伝統的な共和党候補ではない。軍の規模と装備を拡充すると本人は言うが、政官癒着の兵器調達を非難し、偏狭な見方をとる政治家と共謀していると攻撃している。キャランは今年の夏以来トランプ当選は国内志向の企業には朗報だとしても多国籍に多様な事業を展開する大企業には悪い結果と指摘していた。
- 後者の範疇に防衛産業、航空機エンジンメーカー、OEM事業者の殆どが入り、2008年の不況から予算上限を定めた政策の影響を2013年から受けている。
- 「トランプ当選で防衛株は値下がりせず、まず歓迎されるだろうが、投資機関としては国防総省の支出規模は5パーセント強で増えるとの見方が強まるのではないか」とキャランは見る。
- 「当初の熱狂ぶりも2016年末や2017年になれば一層慎重な政策がロシアのプーチンに向けて立案され、その時点でトランプ政権は防衛政策を固め、ドルは強くなり金利は上昇しているはずだ。米国製国防装備品の輸出条件は悪化する」とし、さらに「トランプが同盟各国へ防衛支出増を求めればヨーロッパ、アジアの地元防衛企業にもチャンスが増える」
- もう一つの変化は実施の難易度が高い。クリントント、トランプ両候補とも選挙期間中はA&Dで詳細は多く発表しておらず、有権者、有識者は防衛分野の今後を見通せず置いてきぼりの格好だ。
- 国防分野ではトランプ当選で強制削減策の求める上限を超えた予算規模が生まれるはずだ。議会がトランプ政権と協調するか対立するのか、民主党側が国内政策でも同様の予算増を求めてくるかかは見えてこない。
- その他の問題で解決が必要なものにいわゆるアジア太平洋重視政策、イラン核合意があり、後者についてはトランプは廃案にすると公約している。またイスラエルへの安全保障援助もある。またペンタゴンの支出調達形態をオバマ政権から引き継いでどう変えていくのか。ビジネスマンとしてのトランプはビジネス世界のやり方を持ち込んでくるだろうが、軍産複合体はアウトサイダーに過ぎないトランプを冷遇するかもしれない。
- 中でも米ロ関係がどうなるかが注目の的でA&Dには悲喜こもごもの結果になるだろう。ロシアとの間に緊張緩和が生まれれば米陸軍が進める装備近代化には痛手となるが、国際宇宙ステーション事業のリスクは下がり、民間人乗員と補給物資が円滑に運ばれる。緊張が下がればロシア製ロケットエンジンに依存するユナイテッド・ローンチ・アライアンスのアトラス打ち上げ機をめぐる論争も下火になるだろう。
- その他にも全国の航空管制の民営化案の議論が再燃し、議会でも大きな話題となると全国ビジネス航空協会のエド・ボーレン会長が述べている。FAAの組織権限が一年未満に満期を迎えるが、新議会は更新を認めない可能性がある。そうなれば米エアライン業界は民営化を求めロビー活動をはじめるはずだ。
- 新議会と新政権がこの問題にどんな姿勢を示すのかが問題だ。オバマ政権は中立だった。クリントン、トランプ両候補ともにこの問題はとりあげていなかった。
- もう一つ不透明なのは今後のマクロ経済成長で、民間航空業界に重要な要素であり、サプライチェーンでも同様だ。航空管制の民営化とは別に民間航空分野は今後もオープンスカイズ協定や貿易自由化の継続を期待している。エアライン需要に追い風となり、部品・サービスの供給を増やす効果がある。
- オープンスカイは選挙運動中も言及されなかったが国際貿易とグローバリゼーションは注目を浴びた。トランプは業界関係者を震え上がらせたのは環太平洋パートナーシップ協定、北米自由貿易合意をともに葬るとの公言で、アジア太平洋はエアバス、ボーイング両社に成長の源泉であり受注残多数がある。メキシコやカナダはサプライチェーンの重要要素だ。中国との貿易戦争が発生する、あるいは日本が同盟国でなくなれば、民間航空分野は顧客面でも供給面でも大きな痛手を感じるはずだ。
- 「エアライン利用客の伸びが経済見通しや信頼度のゆらぎで大きく悪影響を受けることは実証ずみで、ブレグジットで英国のエアライン業界がどうなったかを見たばかりで、迅速に効果は発生する」とストラードは指摘している。「ただし、ブレグジットの先例から当初の悪い影響は比較的短期のうちに終わると見ている。トランプ政権による本当の影響は世界規模のエアライン業界に生まれてくるはずで新規機材発注がどうなるかが注目だ」
- 今回の大統領候補は両名ともビジネス航空需要の重要性を改めて示したことに注目されると航空コンサルタントのローランド・ヴィンセントは指摘。投票の前日にトランプは五ヶ所を飛び回り、自家用機の機動性を発揮した。
- 「ビズジェットのOEM事業はこれまで見通しがきかないことを新規ビズジェット機の需要がなかなか増えない理由に上げてきたが、この不確実性の水準がまた一段あがることになる」とストラードは指摘している。「ただし、『ビジネス寄り』の施策が米国で増えて新規ジェット機の節税策がドル安と一緒になれば海外需要を喚起し、長期間にわたる需要を下支えし新型機が登場するのではないか」
- だがここでもトランプは大統領としてビジネス航空業界にも多数の不確実性をもちこむことになる。「今後の心配のたねがなにになるかがわからない」とコンサルタントのヴィンセントは述べている。「状況に応じた政策となる可能性が高い。先が見えないだけに怖くなる。政策の詳細面は見えてこない」
- 不確実性のため各業界や企業が大規模な投資に踏み切れなくなる。この影響は大きいとヴィンセントは指摘する。それでも「良い結果になるかもしれない」とする。■
>FAAの組織権限が一年未満に満期を迎えるが、新議会は更新を認めない可能性がある。
返信削除えっ、そんな噂ってありましたっけ。
いえ、話自体は結構聞きますけど、NHKの受信料が天引きされるようになる!くらいの陰謀論じみたお茶目ですかね。
蓋然性は低いと思いますけど、わざわざ挙げられた意味ははてさて
陰謀論ではないと思いますよ。
返信削除FAAの組織権限は2017年9月までの制限付きで今年7月に議会が認めています。異例に短い期限は大統領選挙を見越してのものらしいです。選挙後に協議という構えでしょうか。
FAAが一元管理する航空管制官を新たに作る非営利企業体に統合するという構想があるようです。この民営化を推進する側が現行のままのFAA組織を認めない可能性があるということでしょうか。
ただ議会内でもこの民営化に全員が賛同しているわけでなく、行方は見えてきませんが、ビジネス思考のトランプ大統領となれば民営化論に追い風となるでしょう。
Wall Street Journal 記事をご参照ください。
http://www.wsj.com/articles/senate-passes-faa-reauthorization-bill-1468437144