2014年7月17日木曜日

軍用輸送機でアメリカ製独占は終わったのか。欧州勢がんばる

Europe Leaving U.S. In Military Transport Dust

European airframers gain ground as airlifter market shifts to newer models
Jul 14, 2014Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology
Sales Swing
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ヨーロッパの軍用輸送機メーカー各社の輸出が好調で世界シェアも上がってきた。
  1. このうちエアバス・ディフェンスアンドスペース Airbus Defense and Space によると2014年上半期の中型輸送機市場で受注の大部分は同社が獲得したという。ロッキード・マーティンC-130Jハーキュリーズ含む既存機種の受注が失速しているのは各国政府がA400Mに関心を示しているためとし、マレーシア(2005年)以降成約がない同機の輸出に期待している。
  2. そこで同社は輸出仕様を開発しており、「ITAR(武器国際取引規則)に準拠」とし、通信機材から暗号化機能を取り外し、同様に精密な軍用GPS航法も省いている。
  3. エアバスはA400M生産のピッチを上げており、今年は11機引き渡す予定だ。
  4. エアバスはC295受注も2014年だけで20機確定しており、新型C295W(ウィングレット付き)の型式証明確保に向け作業中だ。W型は航続距離が9%伸び、4トン搭載で2,500 nmになり燃料消費も6.5%改善される。 
  5. 中型輸送機の需要がのびる背景に各国が多用途能力を求める動きがあり、オマーンはC295の海洋監視型を発注し、ヨルダンではC295をガンシップに改装する案がある。イタリアではC-27JをMC-27J情報収集監視偵察機材に改装する。またガンシップ改装案もある。
  6. 今年はC-27Jにまだ受注がないが、メーカーのアレニア・アエルマッキAlenia Aermacchi  はペルー、オーストラリア向けに生産をしており、今年は米特殊作戦軍団と沿岸警備隊向けに各納入する。.
  7. ロッキード・マーティンのC-130J受注が伸び悩んでいる。韓国やイスラエル向けの引き渡しがあったものの、新規受注は低調だが、同社は悠然としている。一定のシェアがあり、受注残も相当残っている。
  8. ただし同社は民間向けの機体改造で型式証明を狙い、LM-100JとしてL-100を導入済みの買い替え需要に期待している。
  9. ボーイングはC-17グローブマスターの生産を終了させようとしている。うち12機は買い取り先が未定だが、インドが発注済み10機の上乗せとして6機を、サウジアラビアも買い増しを表明している。10機のC-17 にFAA機体登録をしており、今後の販売をにらんでいる。
  10. エンブラエルはKC-390試作機を組み立て中で、ブラジル軍から28機受注をうけたところだ。同機は 旧型C-130の後継機種となる。KC-390の初飛行は2015年末の予定で、ブラジル空軍での供用開始は2016年となる。エンブラエルには合計32機のの導入意思表示がアルゼンチン、チリ、コロンビア、チェコ共和国、ボルトガルから寄せられている。■
.コメント なるほど米国製の大型機よりも小型機を各用途に合わせ改装し運用するのは国防予算が厳しい各国の事情があるのでしょうね。その中でC-2の開発にてこずる日本は特異な存在なのでしょうか。C-1に政治的な制約から性能をあえて犠牲にした反動がC-2なのでしょうが、開発がここまで手こずるとは想定外なのでしょうね。C-1の後継機でSTOLかつ省燃費の機体があったら意外に各国の関心を呼んでいたのでは。ところで、米海軍のC-2と自衛隊のC-2は今後どう区別していくのでしょうか。興味深いところですね。

2014年7月16日水曜日

F-35限定つき飛行停止解除へ ファーンボロ行きは未定のまま


F-35 Cleared To Fly, But Not To Farnborough Yet

Jul 15, 2014Amy Butler | AWIN First

米空軍、海軍の耐空証明認証機関がそれぞれF-35に制限付き飛行停止措置を解除したが、ファーンボロ航空ショーでの同機の展示は依然微妙なまま。ショーは7月20日に閉幕する。ペンタゴン関係者はF-35B4機による大西洋横断の実施に希望をつないでいる。
  1. 飛行禁止措置の解除で「エンジン点検と制限付き飛行」が可能となったとジョン・カービー海軍少将 Rear Adm. John Kirbyが発表。制限付き飛行許可は「根本原因が解明されるまで」継続される。
  2. 6月23日にF-35A搭載のプラット&ホイットニー製F135エンジンが発火したのは統合ブレイドローター(IBR)で第三段目のファンが過剰摩擦したためと判明した。ただし、プラット&ホイットニー社、F-35開発室のいずれも飛行制限の内容について情報開示をしていない。
  3. 一方でペンタゴンの調達トップが7月14日に今回の事故の根本原因は各機共通の問題ではないと断言している。
  4. 三段構造のIBRはF135の前方ファンの後方に位置し、高圧コア部分に送る空気を圧縮するのが役目。各段は固定子で分離され、ケーシング内部で回転する。ケーシングは帯状の摩耗物で内貼りされており、ブレイド先端部とコンプレッサーのケーシング内壁のわずかな隙間を維持している。これにより圧力ロスを減らしつつ、隙間の公差を確保し、摩擦が一定程度におさまる設計になっている。
  5. 事故機AF-27のエンジン内部ではブレイドが設計想定以上に摩擦をおこし、過熱したうえブレイド内部で微細亀裂が発生していた。そのため疲労不良となり、同部分が「バラバラに」なったことで火災につながったとF-35開発室ボグデン中将は発表した。■

2014年7月15日火曜日

F-35のファーンボロ航空ショー出展はまだ微妙なまま

F-35 Misses Farnborough Kickoff

Jul 13, 2014Tony Osborne | AWIN First
F-35はファーンボロ航空ショーの初日に姿を現すことはなくなったと主催者側から発表があった。
  1. 主催者側からは米国から出発する許可を軍耐空証明機関から待っている状態であるが、「週末までに飛来できると期待」しているという。

  1. 飛行停止措置なければF-35は英国で国際デビューをしていたはずだが、HMSクイーン・エリザベス命名式会場上空の飛行(7月4日)、RAFフェアフォード基地でのロイヤルインターナショナルエアタトゥー(7月11日)が中止されている。米海兵隊VMFA-121教育隊のF-35B三機はパタクセントリヴァー(メリーランド州)で大西洋横断飛行の許可を待っているが、英国登録のBK-3はまだエグリン空軍基地(フロリダ州)で待機中でパタクセントリヴァーまでまず移動する必要がある。

  1. 仮に各機がファーンボロ―に間に合ってもフェアフォード基地から発進しての飛行展示するだけしか想定されていない。

  1. 「今週の航空ショーに参加できるよう関係者各位が努力していますが、一方でパイロットとともにショー来場者の安全を一切妥協することはできません」とショー関係者が7月13日に報道発表している。■

2014年7月14日月曜日

F-35Aエンジン開催事故の原因はファンブレイドの「摩擦」



ファンブレイドの異常な摩擦とは一体?かえって謎が深まるような事故原因についてのコメントがペンタゴン高官から出ています。


Kendall: Fan-Blade Rubbing Cause of F-35 Fire

Jul. 13, 2014 - 05:25PM   |  
By AARON MEHTA   
An F-35A flies a flight test at sunset at Edwards Air Force Base, California.
An F-35A flies a flight test at sunset at Edwards Air Force Base, California. (Lockheed Martin)

6月23日に発生したF-35A火災事故の原因が判明してきたが、調査陣はそもそもなぜ発生したのかを引き続き調査中。
火災原因はF135エンジン内部のファンブレイド部の「過剰な」摩擦だとフランク・ケンドール国防次官補(調達)がロンドンで記者団に語っている。
ケンドールはファーンボロ国際航空ショーの公開の場でより詳細な発表を14日月曜日に行うとみられる。
ただし今回が一回きりの事象なのか、全機で発生しうる問題なのかがわからない。全機共通の不良ではないとの見方もあるが、調査は引き続き行われている。
火災発生の機体はF-35A(AF-27)で、これが契機にF-35全機が飛行停止措置を受けている。その結果、ロイヤルインタナショナルエアタトゥーでの国際デビューも流れてしまった。
地上待機が続く中ファーンボロでの機体展示も危うくなっており、最終的には月曜日に主催者側が判断する。
ブラットアンドホイットニー製F135エンジンでファン関連の事故はこれが二件目だが、前回はエンジンの別の場所で発生しており、二件の関連は少ない。■


2014年7月13日日曜日

逆転 G・ワシントンの核燃料再補給実施の見込み、同艦の保持へ



Stackley: Navy Plans to Refuel Carrier George Washington

By: Sam LaGrone
Published: July 10, 2014 6:06 PM
Updated: July 10, 2014 9:06 PM
An E/A-18G Growler from the Scorpions of Electronic Attack Squadron (VAQ) 132 flies by the Nimitz-class aircraft carrier USS George Washington (CVN-73).
An E/A-18G Growler from the Scorpions of Electronic Attack Squadron (VAQ) 132 flies by the Nimitz-class aircraft carrier USS George Washington (CVN-73).

米海軍の建艦最高責任者が議会に対して海軍は70億ドルの予算を組みなおし原子力空母USSジョージ・ワシントン(CVN-73)の燃料交換を実施し同艦を維持する予定と述べた。同空母の運命は軍事予算環境が厳しい中で今年初めから議論の的となっていた。


  1. 「70億ドルを確保して核燃料交換を実施し、同艦の航空隊、兵員、支援体制を維持します」と海軍次官補(研究開発調達)ショーン・スタッキーSean Stackley, Assistant Secretary of the Navy for Research, Development & Acquisition (RDA)が下院軍事員会のシーパワー・兵力投射小委員会の聴聞会で7月10日に発言している。

  1. 「2014年度先行調達予算の残高を発表しており、引き続き熟練作業員を造船の現場で確保する一方、議会が2016年度の強制予算削減をどう取り扱うのかを待っているところでですが、その間に他の事業が圧迫されてきます」

  1. 今回の動きはそもそも海軍がジョージ・ワシントンの燃料交換を2015年度予算に計上しなかったことに対し、議会内の委員会三つが予算計上を求める意見を上申してきたことへの対応だ。
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  1. 国防総省も同艦を保持しようとしつつ、燃料交換および大規模修繕refueling and complex overhaul (RCOH)要に2016年度に40億ドルを議会が承認するかは不確定だと一貫して表明していた。議会が2011年予算管理法を根拠とする強制削減による予算制限を解除するとは思えないとしていた。
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  1. これに対し国防長官チャック・ヘイゲルは2月に強制削減が解除されない限り、ジョージ・ワシントンおよび空母航空隊は現役艦艇から外されると発言していた。
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  1. 「海軍は米太平洋軍司令官の言葉を借りれば悲惨な結果を生みかねなず、米国の安全保障を危うくしようとしている」と小委員会議長ランディー・フォーブス議員(共、ヴァージニア)はUSNI News充てに書面で意見を表明している。

  1. 「合衆国が世界を支配できる海軍力を主力艦たる空母を解体しても維持できると信じるのは妄想である」、

  1. スタックリー次官補はヘイゲル長官の2月発言を受け議会からは海軍にRCOHを2016年度予算の一部として実施を許す動きがみられると言っていた。16年度予算要求は現在海軍が編成中である。

  1. 「この件に関し前に進め予算配分し、造船所と予定を詰めるべき段階に来ていると考える」とスタッキー次官補はUSNI News取材に答えている。

  1. 「2016年度予算案編成中では議会が予算管理法および強制削減に手を付ける予測で予算を作っているが、議会が実際に行動するのを待ってから予算を編成する余裕がないのが現状」

  1. 議会と国防総省の間で国防予算を巡る駆け引きの中で、ペンタゴンは同艦の燃料交換をしないと脅かしたのが最大の効果を上げている。
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  1. 海軍は2014年度にRCOHの先行調達分として243百万ドルを計上していた。直近の2015年度予算要求でも796百万ドルが長納期対象費目に796百万ドルを計上していた。


  1. RCOHを工期四年間で請け負うハンティントン・インガルス工業 Huntington Ingalls Industriesは今回の発言を慎重に受け止めつつ楽観視している。

  1. 「RCOH予算によい動きが出てきましたが、非常に複雑な工程なので引き続き状況を注視していきます」と同社はUSNI News充てに書面で回答している。■

2014年7月12日土曜日

イラク軍はISILに勝てるのか---勝てないとイラクはどうなるのか


What if Iraqi Military Can't Defeat ISIL?

Jul. 9, 2014 - 03:45AM   |  
By JOHN T. BENNETT   |   Comments
Senate Armed Services Committee Holds Closed Heari
.カール・レヴィン上院議員によればイラク陸軍の能力評価が米国の取る最初の一歩でその後に追加行動を選択すべきだという。 (Mark Wilson / Getty Images)

合衆国にとって最悪のシナリオはこうだ。イラクの各民族が統合政権の樹立に失敗(あるいは放棄)、軍が崩壊する。
  1. ある上院議員はCongressWatchにほとんどの関係者はその可能性を「排除」していると告げた。ただし専門家はその可能性はあると言っている。

  1. 米軍上層部は「評価チーム」をイラクに送り、バラク・オバマ大統領と政府上層部に状況を正確に理解させようとしている。

  1. 政権内部と議員は派遣計6チームから解体状態のイラク軍の状況、軍再建の必要条件を聞こうと待ち受けている。

  1. ホワイトハウス関係者、議員、専門家からはイラク・レヴァント・イスラム国家 (ISIL)が占拠した地点を奪回するには二つ条件があるという。ISILはこの数週間でイラク西部北部各地を占拠している。

  1. 一つがイラク軍がISILの戦闘部隊を打破すること。ISILはイラク可国内で米軍部隊と、またシリア内線でも戦闘経験が豊かだ。

  1. もう一つは政治枠組みを変え、マリキ首相とシーア派優遇をあらため、残る主要民族集団スンニ派とクルド族への締め付けを改めることだ。

  1. 上院軍事委員会委員長カール・レヴィン議員(民、ミシガン)に記者団が8日にイラク派遣部隊を300人から780人に引き上げている米国はこれから大規模なイラク派兵に向かうのかと言う質問を浴びている。

  1. レヴィン委員長はこの問題に直接答えず、まずペンタゴンによるイラク軍事情勢評価結果を見てみたいと答えている。「今この段階で必要なのはイラク陸軍の戦闘能力を正しく評価すること」

  1. 米国の軍事評価は「イラク国内に団結して共通の敵とたたく意思があるのか」との問いへの答えとなるだろう。

  1. 「イラク軍がISILの動きを止める力があるのかどうかの評価が出るまで、下手に動くわけにいかない」

  1. では評価結果でイラク軍再建が無理でISILを打ち破り国境の外まで追い返す能力がないと判定されたらどうなるのか。

  1. 「その場合、政治指導者がイラクで共同戦線を張り、政権基盤を強くし、これまで同国政府がしてこなかったことをするかどうか、つまりスンニ派をもっと巻き込んで国を政治的に統一出来るかどうか、と言う点だな」(レヴィン)

  1. CongressWatchはレヴィン議員に米国の見直しにイラク軍がまだその任務ができる状態でなく、スンニ、シーア、クルド間の政治再建にも失敗した場合どうなるのかを尋ねてみた。「みんなその可能性は最初から除外しているよ」

  1. だが真の意味の挙国一致政権がイラクで生まれるかは微妙だ。カーネギー平和財団のマーワン・ムアシャーMarwan Muasher からイラクでそんな形の政権を作ること、社会を変えることには「苦痛が伴い、スピードは遅い」ものになると警鐘を鳴らしている。「イラク情勢は好転するよりも悪化する可能性が高いが、最終的には排他主義的政策ではちゃんとした社会を構築できません」

  1. ブルッキングス研究所のマイケル・オハントンMichael O’Hanlon 、ジョンズホプキンス大のエドワード・ジョセフ Edward Joseph はもう一歩先を行き、イラクを三つの自治区に分割しそれぞれの出身民族別にする構想を提唱している。そのいわんとする点は全民族を統合する政権は成立しえないという点だ。

  1. この二人は社説欄に共同投稿し、「連邦制でも機能しないだろう。合衆国と欧州がイラクで目指しているのはイラクの弱体化でもなければ分割した姿でもないが、そのどちらにでも結果を受け入れることは可能だ。それよりも大事な目標はISIL打倒である」

  1. イラク陸軍が問題だ。ISILの6月進攻ではたびたび武器を放棄し、戦線を離れている。

  1. 国際戦略研究所による直近の報告書ではイラク軍への期待は見られないと総括している。「イラク軍は引き続き兵站、情報収集能力を欠いている。政治が指揮命令系統に介入し、指揮官の職位が売買されているほか内部汚職が多数見られる。米軍から委譲受けた施設やシステムの維持ができておらず、他にも問題が多数ある状態だ」としている。■


2014年7月11日金曜日

F-35のエアタトゥー出展中止、来週のファーンボロショーも微妙


F-35s Will Not Fly At Air Tattoo; Farnborough Appearance In Jeopardy

Jul 10, 2014Tony Osborne | AWIN First
F-35が予定されていたRIAT(ロイヤルインターナショナルエアタトゥー)航空ショーでの国際デビューをできなくなったことが主催者から発表された。
  1. 主催者によれば7月10日にこの決定がロッキード・マーティン、米英の国防省と協議して決まったという。会期中(7月11日―13日)の同機飛行展示はなくまった。
  2. 米海兵隊仕様のF-35B3機と英軍仕様のF-35B1機は現時点で米国を出発していない。.
  3. 7月3日にペンタゴンからF-35全機の飛行停止措置が発表されており、4機は大西洋横断飛行ができなくなっていた。
  4. ファーンボロ航空ショーでの展示はまだ可能性が排除されていないが、ますます困難になっている。また機体展示がなくなったため、エアタトゥー会場で予定されていた英国防相フィリップ・ハモンドの訓示も中止となった。
  5. 中止決定と並行しF-35開発室長クリストファー・ボグデン中将がフェアフォード基地で報道陣に背景説明をしている。中将は各機を英国へ飛来させる可能性に期待している。
  6. 「現時点で耐空証明認証機関から証拠提出を求められており、現在それに対応中。昼夜連続で安全な飛行が再開できるように努めている。米国と英国の各機体はパックス・リバーに駐機中で最後のぎりぎりまで飛.
  7. 飛行停止措置はF-35Aでエグリン空軍基地から離陸前に火災事故が発生したため。ペンタゴンから7月3日付で100機を超える全機の飛行停止命令が発出された。
  8. 「新型軍用機の開発で遅延が発生するのは珍しくありませんが、エアタトゥーはロッキード・マーティン、米海兵隊、米国防総省、英国防省と一緒にショー出展のためフェアフォードまで同機を移動させようと努力してきました。残念ながら今回は時間切れです」(ショーのCEOティム・プリンス)
  9. 英国防省はパイロットと機体の安全を最優先に考えていると発表。「ライトニングIIがエアタトゥーにあわせ英国に飛来できないのは残念ですが、エンジン異常問題の原因調査が完了するまで大西洋横断飛行を延期するとの今回の決定を全面的に支持します」■
コメント:いろいろな意味で不運と言うか、期待通りにトラブルを起こしてくれるF-35ですが、史上最大の防衛装備での期待外れ、にならないことを祈るばかりです。プロジェクトマネジメント上も教科書事例になるのではないでしょうか。エンジン問題など個別には論評がありますが、全体を見る視点での分析はまだないようですね。ここまでくれば(予定より大幅遅れ)あわてて「デビュー」することにあたふたしなくてもいい気がします。


速報 米空軍が次期ステルス爆撃機の提案を依頼



Air Force Releases Request for Proposal for Secretive Long Range Bomber

By: Dave Majumdar
Published: July 10, 2014 11:45 AM
Updated: July 10, 2014 11:45 AM
An artists conception of Boeing and Lockheed Martin's 2009 bid for the Next Generation Bomber (NGB). Boeing Photo
ボーイングとロッキード・マーティン共同提案の次世代爆撃機(NGB)の想像図(2009年) Boeing Photo

秘密のベールに覆われたステルス長距離打撃爆撃機(LRS-B)の提案依頼書 (RFP) を米空軍が7月9日に発出していたと明らかになった。
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  1. RFPは2015年春までに新型爆撃機開発の契約会社を「競争選定」で選ぶ作業の第一歩になる。

  1. 「LRS-Bは空軍の機材近代化の中でも最優先事項です。同機は状況に適合可能な高性能システムとなり、成熟技術を基に生まれます」と空軍長官デボラ・リー・ジェイムスDeborah Lee James はUSNI Newsが10日に入手した文書で発言している。「この国家安全保障上で重要な機体の実現に業界が尽力することを期待します」

  1. 同機開発は2011年から秘匿扱いとなっており、今回も空軍は提案書締切がいつなのか、その他の情報は一切明らかにしていない。
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  1. 空軍の調達想定は80機から100機で単価550百万ドル。
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  1. LRS-Bについてわかっていることはごくわずかで、超長距離飛行可能な亜音速機で広範囲ステルス性能を備え、低周波レーダー/高周波レーダーともに探知を無効にできる、だけが判明している。

  1. 同機にはゆくゆくは核兵器運搬も認証されるもとみられ、長距離打撃機ファミリーをシステム構成するが、そもそも強固に防衛された敵領空に単独進入する想定はない。
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  1. LRS-Bは「有人操縦が選択可能」な爆撃機として想定されていたが、空軍によれば当初は有人機になるという。

  1. ノースロップ・グラマンボーイング/ロッキード・マーティン・チームが競合する見込みだ。■

2014年7月10日木曜日

ロッキードCEOに国防事業、宇宙事業について聞く


Lockheed CEO On Defense And Space Endeavors

Jul 7, 2014Joe Anselmo and Amy Butler | Aviation Week & Space Technology
開発に13年を費やしているロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機にもついに国際デビューが近づいてきた。ロイヤルインターナショナルエアタトゥーとファーンボロ航空ショーで飛行展示を予定し、ショーに合わせ大西洋横断出張する前にロッキード・マーティンCEO兼社長マリリン・ヒューソンをAW&ST編集長ジョセフ・アンセルモとペンタゴン担当上級編集者エイミー・バトラーがワシントン郊外で取材し同社の近況と課題について尋ねた。
F-35の経験で得られた教訓は多数ある中でもっとも重要な教訓はなにか。
ヒューソン: まったくの新型機開発で複雑な要素がたくさんあり、三軍に8か国も加わり、開発意外でも性能などで他に例がない事業である。過去の事業とまったく違う。教訓として連絡を強化し、要求内容を完全理解し、各工程をしっかりとこなしていくことだ。もう一つ重要な教訓は良い仕事だ。複雑な開発過程をこなし、増産し、維持し、全体通していい仕事をすることだ。
教訓をロッキード・マーティンは将来の事業にどう反映させるのか。
各事業担当は組織的な訓練を受けており、顧客に焦点を合わせ次のような疑問に答えられるよう強化している。「顧客に耳を傾けているか、また正しく対応しているか。顧客の目的を正しく理解しているか」 ただしこれは当社事業では当たり前のことだ。そこにあえて優先順位を付ける。顧客とはオープンで透明性のある意思疎通が重要と考えるし、ちゃんと聴いて顧客の要求にこたえ、顧客のニーズにあわせることが肝要だ
あなたのCEO就任前にペンタゴンの調達トップのアシュトン・カーターがロッキードの出す結果が一定の基準以下なら同社のJSF責任者は更迭されるべきだと発言している。部下の責任者たちの功績をどう評価し、F-35他事業に応用できる教訓が得られたと考えているのか。
おっしゃる意味での教訓についてはお話しできない。事業は2010年に再構成されてからうまく動いてきた。当社の事業責任者には要求内容の完全理解を求め、顧客と密接に動くことで各変動要因つまり性能、費用、日程、品質、技術面それぞれで対応させてきた。その代償として当社は契約金、奨励金等を受け取っているが、目的に対してはこれらは二次的な成果にすぎない。
あなたがCEOに就任してからロッキード・マーティン株価は85%も上昇しており、ダウジョーンズ工業株価平均より3倍も大きな変化を指名している。国防関連が不況に入る中、この結果をどう説明するのか。
当社担当チームの成果だ。当社の売り上げは減少しているが、予想した程度までの悪化ではない。ひと株あたり収益、利益率は増加しており、その主な原因は事業単位の業績内容だ。現在当社が実施中の事業は6,000件になり、好業績で過去最高を更新している。製品群は強力で投資拡大を続けている。当社の経営陣は業績の上下を経験してきたので、不況期をどう乗り切るのか、好調時をさらに利用する方法を熟知している。ひとことでいえば、適正価格を重視し、事業構造を正しく維持することだ。
現在の国防ビジネス下降は周期的なものか、それとも費用面で圧力が強いため構造的にビジネスが低調になっているのか。
今回の下降局面はこれまでと違っている。1980年代末から1990年代初めの不況時にはレーガン軍拡が終了にさしかかっていたが、この国は国防にすでに大規模投資をしていた。そこで「平和の配当」が生まれたが、2008年発生の世界規模での金融システムメルトダウンと言う構造的な問題もまだ存在していなかった。現在はというと、二つの戦役が終了し、需要が後退している。しかし世界規模の緊張は解消しておらず、むしろ拡大している。予算圧力と合わせると環境がこれまでと違っていることになる。
国防高等研究プロジェクト庁(Darpa)長官アラティ・プラバカーArati Prabhakarが大規模兵器システムの調達にかかる時間と費用に失望し、商用技術を国防製品開発に流用していないことも遺憾に感じている。このとおりなら国防体制が危うくならないか。
今の段階で投資を怠ると回復できない格差が生まれる。そこで国家として技術の主導権を維持し、新しい次元の性能に投資していく必要がある。一休みして、そのあとで追いつくのは不可能だ。研究開発への投資を維持する必要がある。これこそ当社の生命線だ。当社の顧客は技術開発や革新的技術の成果を求めて当社にやってくるのであり、そこで停滞は許されない。同じことが国家安全保障にも言えるだろう。
プラバカー長官は投資以外にも言及しており、システムがあまりにも低速で、柔軟性が欠け、システム開発そのものがあまりにも高額になっていると指摘しているが。
長官がみんなと一緒になって工程を改善できる立場だといいのに。Darpaは本当にいい仕事をして、インキュベーター式にハードルの高い問題や時短的に結果を出す課題の解決を助けている。当社のスカンクワークスは別のモデルだ。各社からどうやったらそんなにはやくイノベーションができるのかとよく聞かれる。
ロッキード・マーティンがIRAD(独立型研究開発)に投資を拡大しているというが、総売り上げ比率ではこれまでの標準を下回っているのでは。昨年実績ではわずか1.5%だった。
これまでの標準以下だとは思っていない。IRADだけでなくR&D支出全体を見てもらいたい。各開発案件の初期段階には相当の投資をしており、これが開発費用の相当を占め、縮小しているとは思わない。
IRADを活用して近い将来にビジネスの機会が生まれるのか、あるいは政府に自主的な提案ができるのか
今はまだお話しできない案件に注力しているところ。これは近い将来に当社の事業拡大につながるとみている。長期的には極超音速、指向性エネルギー、自律型ロボット工学、高機能素材としてのナノテクノロジー、3-Dプリント技術や高度加工技術を重視している。それぞれが業界地図を変える可能性がある技術。
米海軍のUclass(無人艦載監視攻撃機)の要求性能を見るとステルス性が軽視されているようだが、このままならロッキード・マーティンは入札を見送るか。
要求性能全般を見て判断する。スカンクワークの設計で大きな成果を上げており、米政府が求める内容にあわせることはできるだろう。すでに事業にとりくんでいるが、精査し当社ができることを決める必要がある。入札への対応にはこまかい手順を確立している。勝算があれば当然入札する。
ロシアからRD-180ロケットの対米販売を停止すると通告があった。もし新型エンジンが数年後に実用化されないとアトラスV打ち上げ機がたちゆかなくなる。そのなかでロッキード・マーティンとしてはUnited Launch Alliance (ULA) 合弁事業にボーイングとともに引き続き参画することに意味はあるのか
アトラスの在庫は2年分あるし、デルタIVもあり、数年先というご質問であればこれが答えだ。その先に打ち上げ事業が維持できなくなるかは誰にもわからない。別のエンジンが実用化される公算があるかと言えば、たぶんある、と言えるが、米政府が新型エンジンに投資をすれば当社も支援したい。

ではデルタIV以降についてロッキードは検討を始めているのか。スペースXが市場をかき回す要因にならないか。価格体系も変化しはじみており、顧客の要望も同様に変化しているのではないか。
スペースXが認可を受ければ、当社としても当然対抗する準備に入る。当社の実績はULA通じ打ち上げ成功83回、当社単体でのアトラスで115回ほどある。将来の競争がどうなるかは絶えず検討している。当社の提示価格は十分に競争力があると思うが、相手方の価格帯がどうなるか見てみたい。その一方で当社の仕事はお値打ちな価格で打ち上げを提供することで、これがULAの仕事にもなる。
前任者のボブ・スティーブンスはサイバーを「開拓分野」“Wild West”だと言っていた。そこで現在のロッキード・マーティンはサイバーで十分な収入を得る目標はどこまでできているのか。
現時点でサイバーは年商10億ドル規模の事業で、今後もサイバー安全保障関連は延ばしていく。これは国内と国外の双方で。各国政府多数をこの分野で支援しているし、民間大企業についても同様。総売り上げ450億ドルの当社としては小規模になるが、サイバー安全保障は多くの事業に関連するものであることが要注意だ。
プーチン大統領のウクライナ対応で東ヨーロッパはロッキード・マーティンにとって魅力あふれる市場になってきたか。
ミサイル防衛他で関心が高まっている。ポーランドでは50億ドルで防空システム構築をしようとしており、当社は期待している。当社の提案はMEADS(中規模防空システムズ)でドイツ、イタリア、ポーランドの関係者と意見交換して、それぞれMEADSへの関心が高く、高性能かつ全方位対応能力で各国ニーズにこたえられることが分かった。またNATOとの共同運用能力があり、NATO標準と指定採用される可能性もある。その他当社製品への引き合いもある。世界いたるとところで当社製品への需要があり、ぜひ当社製品を採用していただきたい。■

マリリン・ヒューソン (60)略歴

アラバマ大で経営管理学修士号
ロッキード・マーティンに1983年上級生産技術職として入社。以後19回の昇進を経て、2013年1月1日より同社トップへ。

2014年7月8日火曜日

日豪が潜水艦建造で協力関係を強化 総理はオーストラリア訪問中


Japan and Australia to Cooperate on New Submarine Design

By: Sam LaGrone
Published: July 7, 2014 11:53 AM
Updated: July 7, 2014 11:54 AM
Japanese Soryu-class class submarine. JSDF Photo
Japanese Soryu-class class submarine. JSDF Photo

日本とオーストラリアは7月8日火曜日にも潜水艦開発の二国間協力に合意する見通しで、日本は中国の台頭を横目に見ながら自国軍事技術の輸出につながると期待する。
  1. 憲法解釈の見直しも受け、日本とオーストラリアは「海洋流体力学研究」で共同合意し、新型潜水艦の建造につながる情報共有を進める。オーストラリア海軍Royal Australian Navy (RAN)はコリンズ級ディーゼル攻撃型潜水艦(SSK)を6隻運用中。かねてからRANは高性能潜水艦でこの六隻を更新しようとしていた。
  2. オーストラリアからはそうりゅう型SSKに関心が寄せられている。そうりゅう型は世界最大級かつ高性能SSKで排水量は4,200トンで非大気依存推進力air-independent propulsion (AIP) を有し、潜水したままこれまでよりも長距離を航行できる。
  3. そこで豪国防相デイビッド・ジョンストン David Johnston が6月に実際にそうりゅう型を視察している。
  4. 防衛協力(防衛装備品・技術の院展に関する合意)が成立すれば三菱重工業はじめとする企業には自社製品を海外半版する道が開ける。
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  1. 合意内容が実施されれば防衛装備・技術の共同事業も可能となり、二国間で技術移転、共同開発が可能になると、安部晋三総理はオーストラリア新聞に寄稿している。
  2. 日豪間の協力が緊密になると西太平洋各国ではこれまでも報道され、論説の中心は中国がこれにどう反応するかだった。
  3. 6月に中国外務省報道官華春瑩Hua Chunying から「中国はアジア太平洋諸国と常に友好的協力関係を第三国の権益を損なわない形で維持しており、共同で地域内の安定と繁栄を維持する所信である」と発表している。.
  4. 在オーストラリア中国大使館はこの発言を繰り返し引用し、オーストリアン紙に中国は貿易と防衛でつながりを強化すると発表してきた。
Royal Australian Navy Collins-class submarine HMAS Sheean (SSG-77) near the Sydney Opera House. RAN Photo
Royal Australian Navy Collins-class submarine HMAS Sheean (SSG-77) near the Sydney Opera House. RAN Photo

  1. 日豪協力により中国が反発するとの専門家意見もある。
  2. 「潜水艦技術で日豪関係が緊密化すると中国が日豪同盟を阻害する動きに出る可能性がある。オーストラリアにとっても30年他って日本がどうなるのかは未知数だ」(オーストラリア国立大教授ヒュー・ホワイトHugh White、戦略研究論)
  3. 今回の協力が実現したのは日本の憲法解釈の変更によるものが大きい。米国により作られた1947年憲法では自国に対する明白な侵略があった場合のみ防衛行動が可能とされてきた。7月1日の閣議決定で決まった新しい解釈では集団的な自衛行動が可能となる。
  4. 7月6日日曜日には安部総理は法制整備を専門に統括する閣僚級ポストの創設を検討していると Jane’s Defence Weekly.が伝えている。「例として、自衛隊法改正により防衛装備を米軍車両が偵察行動にあたる際に使用する、あるいは平時の共同訓練で使用するようにすることがあります」
  5. 「中国政府は日本が中国脅威論を誇大に宣伝することに反対する」と中国外務省報道官 洪磊Hong Lei はAP通信に語っており、7月の閣議決定は「日本が平和的な発展に真剣に取り組む意思があるのか疑念を持たざるを得ない」としていた。■

2014年7月6日日曜日

イラク情勢に注目が必要 イラク軍は反攻しても失地回復は不可能との米国防トップの見方


Dempsey: Iraqi Forces Will ‘Probably Not’ Be Able to Retake Lost Territory Alone

By: Sam LaGrone
Published: July 3, 2014 1:41 PM
Updated: July 3, 2014 3:05 PM
An undated photo of Iraqi Security Forces
An undated photo of Iraqi Security Forces


米統合参謀本部議長からイラク治安維持隊Iraqi Security Forces (ISF)によるバグダッド防衛は可能だが、イラク・シリアイスラム国家が占拠中の各地点の奪還は不可能との見通しが明らかになった。

  1. 「イラク軍が反攻に出て失地を回復できるかどうか。これは大規模な作戦になります」とマーティン・デンプシー大将はペンタゴン内の記者会見で話している。

  1. 「おそらく単独では不可能だろうが、だからといって当方から動的な支援をすぐに提供することにはならない。ただし、これは既定の方針ではありません」

  1. 同議長によればISFはイラク北部で再編成中だが、ISIS部隊の前に後退していた。「ISFは戦力を強化している。バグダッドは防衛できるだろうが、攻勢に回のは困難だろう。物資補給がネックだ」

  1. 物資補給はISISにも課題で、現在占拠中の地区から南進しバグダッド包囲網を形成する狙いがあるとみられる。

  1. 「反乱分子は現在はスンニ派と協力して急速に進軍している」「現在は広い範囲に広がっており、占領地区の統制にかかりきりになっている間、補給線・連絡回廊も伸びきっている」

  1. ただし米国が国内治安回復ならびにイラクへの義務をどう果たすのかはまだ見えてきていない。

  1. デンプシー議長とチャック・ヘイゲル国防長官からは米国の義務はアメリカ国民の生命と財産の保護であり、イラク軍へは助言を与えることとの認識が示されている。
  2. 「約200名の軍事顧問団が現地入りしており、イラクと合同作戦本部をバグダッドで立ち上げている。第二本部はエルビルにおき、すでに初期作戦能力を獲得している」(ヘイゲル長官)

  1. 軍事顧問団は戦闘に参加していないが、今後の関与方針は未定のままだ。

  1. デンプシー議長はISISを地域内安全保障上の懸念事項とし、世界規模にまで脅威が発展する可能性があると指摘する。その場合、合衆国の戦闘介入まで事態がエスカレートする可能性を排除していない。

  1. 「仮に検討結果で介入の価値が認められ、アメリカの安全保障上も有益と分かれば顧問団に今と違う役割を与えることになる。まず長官と協議の上、大統領に選択肢を提示するが、まだそこまでの展開になっていない」(デンプシー議長)

  1. ただし、同議長は軍事行動を実行するためには「信頼に足るイラク政府が発足し、全国民が参画する状況になっていることが前提条件だが、これが成立しないとイラクの将来は暗いものになる」(デンプシー議長)■