2016年8月1日月曜日

もし戦わば① 駆逐艦ズムワルト 対 巡洋戦艦キーロフ

キーロフ級は排水量24千トン、ズムワルトは15千トンです。


Navy Zumwalt Destroyer vs Russian Battleship - Could the US Navy and Russian Wind Up in Combat on the High Seas?

KYLE MIZOKAMI
3:49 AM

  1. ズムワルト級新型駆逐艦とロシアの巡洋戦艦が戦闘したらどちらが勝つか。両艦が公海上で対決する仮定で、それぞれの対艦ミサイルのうち最大射程の300マイルの距離があるとしよう。キーロフ搭載グラニットミサイルの有効射程だ。両艦とも相手の位置は把握していない想定で、その後突き止めるとする。キーロフにはレジェンダ・レーダー衛星システムがあり、ズムワルトはステルスでレーダー上ではちっぽけな漁船のように映る。
  2. まず両艦とも必死に相手を探るだろう。ヘリコプターで水平線の先を探索させる。この状況ではステルスのズムワルトに圧倒的な優位性があり、ズムワルトのヘリコプターがキーロフをまず発見すし、位置データを母艦に送る。キーロフも米ヘリコプターを探知するがズムワルトの位置はつかめない。
  3. ズムワルトがステルス性を保てれば、理論上は主砲射程まで接近できるはずだ。一方、ロシア巡洋戦艦は接近せず長距離からズムワルトを攻撃したがるはずだ。ロシアには不幸ながらキーロフの搭載するシステムは全てレーダー誘導方式である。キーロフはミサイルをズムワルトの推定位置に発射する。グラニットミサイルのホーミングレーダーはズムワルトの僅かなレーダー反射を捉えルノに苦労するだろう。
  4. グラニットがズムワルトを補足しても、ズムワルトの防空装備が相手となる。SM-2中距離対空ミサイルが少なくとも18発あり、さらに改良型シースパロウ短距離防空ミサイルがある。ズムワルトはグラニットの殆どを撃墜する。
  5. ズムワルトが主砲を使う可能性はあるだろうか。状況次第だ。最大射程の83マイル(134キロ)で高性能主砲システム(AGS)が長距離陸上攻撃弾を発射すると161.89秒で標的に到達する。もしズムワルトがキーロフの正確な位置を把握できれば、砲弾の飛翔速度を落とし巡洋戦艦に命中させるだろう。GPS誘導方式によりキーロフの速度と方向が一定でないと修正が加えられない。そこでキーロフはジグザグ航行を開始し、方位を把握されないようにする。

  1. 結局、この対戦は引き分けになる。どちも正確な相手の位置を把握できない。将来に新型の長距離対艦ミサイルが導入されればズムワルトが優位になる。あるいは155ミリ砲の砲弾が無人機から最終誘導を受ければ大きな効果を上げる。
  2. ズムワルトは主砲の標的を合わせるだけの接近できず、キーロフもレーダー誘導兵装を活用できず、両艦は次回対決に決着を預けるだろう。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.


2016年7月31日日曜日

SCOローパー室長インタビュー後編 ポケモンGO、グーグルカーと将来の戦場




Google Cars, Pokemon Go, & The Future Of War: Roper Interview Part II

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 19, 2016 at 4:00 AM

A Navy patrol boat converted to operate unmanned as part of an Office of Naval Research experiment in autonomous "swarms."
通常型哨戒艇が無人運用型にされた。海軍研究所の自律型大量同時運用構想の一環。
ウィリアム・ローパーは「ペンタゴン全体に時間を稼いでいる」と貴重なインタビューの機会に話してくれた。率いる戦略能力整備室SCOは近未来で全体を買えそうな効果を既存兵器の手直しで実現することで、アメリカの技術優位を守ろうとしている。一方、DARPAや国防総省の既存研究部門は新世代のブレイクスルー技術を開発中だ。前編に続きローパー取材を元にしているが、後編では個別具体的な内容を聞いてみた。
自動舟艇とグーグルカー
  1. 無人装備はローパーの言う直近の実現案の例であり長期的な第三相殺戦略の一部だ。DARPAは全長130フィートのシーハンターACTUVを完成させた。戦略能力整備室は海軍と「自律キット」の完成を目指しており、既存艦艇に取り付ければ無人運行が可能にする。無人ミッションが終わりキットを外せば、再び有人操艦できる。
  2. SCOは小型艦艇に手を加えようとしており、ローパーは「現在稼働中の艦船から手を付ける」と述べている。
Sydney J. Freedberg Jr. photo
カーター長官と、海軍水中戦センターで。
  1. 最初から無人艇として建造されているシーハンターはじめ設計技術は成熟してきた。一方で海軍は自律キットを稼働中の艦船に装着して新しい用途を模索する。キットをつけても専用無人艇より機能は落ちるが、今すぐ投入できるのが魅力だ。ゆくゆくは完全なロボット艦艇が稼働するだろうが、海軍は自律キットの運用経験をそれまでに十分確保しているはずで、無人艦艇の能力を十分発揮できる人員の厚みが生まれる。
  2. 同じ理屈が無人地上車両にも当てはまる。DARPAが米陸軍ともう十年近くも自律ロボット車両の実現をめぐり苦労しているのは地上経路を自律的に選択して進む機能だ。これは何もない空中を飛行するよりも難易度が高い。グーグル、テスラなどの企業は自律運転車に数十億ドル単位の資金を投入している。
  3. 民間向け車両で高速道路を平時に自動運転できても戦火の下でオフロードを走行させるのは不可能だ。それでも民生部門で大規模な投資があり、情報技術が急速に進んでいることもあり、軍も利用可能なはずだ。「望ましいのは」とローパーはCSIS戦略国際研究所で述べている。「今ある技術で手を付けられるスィートスポットを見つけることで、将来の技術が可能になればオフロード自動運転車両へすすめるだろう」
CSIS photoCSISで話すローパーとアンドリュー・ハンター
ソフトウェアとビッグデータ
  1. 技術すべてが今あるわけではない。ソフトウェアを既存プラットフォームに追加すれば当初の想定を超えた用途が実現する。これがSCOの方法論でその成果に海軍を支援してSM-6ミサイル迎撃ミサイルを対水上艦攻撃用に転用したことがある。見た目は同じミサイルだがソフトウェアが新しくなったことで運用方法が変わり、効果が変わったのが大きい。ソフトウェアの改定だけですむので両用型SM-6は簡単に配備できる。
  2. 指揮統制で今の軍の考え方は物理的な脅威を追尾するもので、戦車、艦船、航空機、ミサイルを個別に対象にする。だが目に見えない政治、社会、経済活動は対象にならないが、実はこれが事態を形成する。幸いに民生部門のマーケティング活動が巨額を投じて「ビッグデータ」ソフトウェアで解明しようとしている。
  3. 「作戦指揮センターに行けば眼に入るのは空の状況、海上、陸上の画面だ」つまり物理的な存在だ。「情報画面はない」と紛争には目に見えない要素があることを言及している。「ソーシャルメディアから定期刊行物まで関連してきます。科学記事から社会面、株式市場まで」
  4. SCO自身で技術開発の必要がない。手を入れればいい。民生部門では個人の支出傾向やソーシャルメディアの活用法を24時間把握している。(ローパーは収集した情報は匿名扱いにして個人情報を保護すると述べている。)「マーケティングの世界では活発にデータを解析し、合成し、パターンを見つけようとしています。リアルタイムで商機が生まれるからです。これは当方にも当てはまる考え方です」
Navy photoAITT(拡張没入技術チーム訓練)用のヘルメットをで試す海兵隊員
ハイテクを地上部隊へ
  1. ビッグデータを巨大司令部に導入するのは第一歩にすぎない。もう少し長い目ではローパーは民生部門の拡張現実技術(例 ポケモンGO)でビッグデータを最前線の地上部隊用に表示することを考えている。
  2. 海兵隊隊員がハンドヘルドデバイスを使う、あるいは引き下げ式ヴァイザーでどの建物に友軍がいるのか、安全が確保されていない建物はどれか、どの地区に反米感情が強く現れているのか、さらに怪しい電子信号が発信されている場所を把握できる。ネットワークで情報を各所のセンサーから集め、ビッグデータ・ソフトウェアで関係分だけを選別し、隊員のディスプレイにわかりやすく表示するだろう。
  3. 「拡張現実ですべてが変わると見ています」とローバーは述べている。「まだ成熟化していない技術ですが、ゲーム業界ビデオ業界の応用事例では大量の複雑な情報を直感的に把握できる画面に表示し、アクションにつなげています。わざわざ新しく方法を模索しなくてもにこの流れを利用するほうが賢いでしょう」
  4. 拡張現実でビッグデータを示すのは特に市街地で有効で、住民、建築物、技術が多様に詰まった環境で社会、物理、電子的にも複雑な状況で危険が高いからだ。「市街地戦の難易度は一番高いと言っていいでしょう。これがビッグデータを重点的に使おうとする理由です」(ローパー)
Army field manual urban objectives image080

  1. 同時にこれがローパーが陸軍へ注目する理由でもある。SCOの高度技術案件はこれまで空軍、海軍向けが主だった。SM-6の対艦攻撃への流用もその例で、空軍には「重武装機」があり、ミサイルを有人無人の偵察機データと連結して長距離から攻撃を加える構想だ。さらにその先にローパーはローテク装備で知られる地上部隊にこそ大きな可能性があると見ている。
  2. 「陸軍、海兵隊には大きく飛躍する可能性があると見ています。民生技術を応用しながら、どうしても完璧な仕組みを作ろうとする欲求を抑えればですが。そこそこの性能でもすでに完成している技術を買ってこればいいのです」
  3. 陸軍、海兵隊には民生技術から恩恵を受ける大きな可能性があるとローバーが述べる理由は何か。各社ともより良く強力な技術をどんどん進めているので、隊員が簡単に背負ったり身に付ける技術の実現が期待できるからだという。「地上部隊にこそ新技術の効果が最大に期待できるのです」■

南シナ海: 中国の動きは9月以降が要注意


今年の秋に何らかの軍事行動に中国が出るだろうということですか。人民解放軍が党の軍隊であるのは事実ですが、棒給引き上げがないまま民間との給与水準の乖離で人員に不満が高まる中で、下手に部隊が実弾発射してリスクを増やす命令をそのまま実行に移すでしょうか。中国の最大の弱点は「人財」だと思います。

 China Will Hold its Fire in the South China Sea — Until September

Creative Commons
July 30, 2016

  1. ワシントン・ポスト紙上で著名コラムニストのデイヴィッド・イグナティウスが波荒い南シナ海を取り上げている。国際法廷判断でここまでひどく中国が負けるとは世界は思っていなかった。「法の支配の下の国際秩序」にまず一点入ったということか。
  2. だがこれから発生することが重要だ。中国がこのまま黙っているはずがない。復讐心に燃えた対応を出してくるはずだ。
  3. ただしイグナティウスが指摘するように北京政府は言葉の応酬や南シナ海で爆撃機を飛ばして自分撮り写真を取ることで今のところ終始している。飛行地点はこれから埋立工事を狙うスカーボロ礁上空だった。現時点で中国は反応をしていないが、9月になればタイミングが絶好となり大きな動きがでてきても世界が注意を払わないかもしれない。
G-20 サミット+ 大統領選= アジアでトラブル発生
  1. なぜ反応がすぐ出ないのかと聞かれるがタイミングは理想どおりには実現しないものだ。
  2. 中国はG-20サミットを9月4-5日に杭州で開催する。台頭する超大国としての地位を示す機会を絶えず狙う中国は理想的な協調的態度でトラブルは全く起こさない国として演技し、南シナ海でも注意深く筋書きを書いているはずだ。確かに発言や行動の暗示は激しくなるが、当面はエスカレーションを自制する。中国は国際会合の檜舞台で舟を揺らすことはしないはずだ。サミットが終わるまで中国が軍事力行使に向かわないことは賭けてもいい。
  3. だがそのあとで事態は急展開するはずだ。米大統領戦で報道が加熱して南シナ海問題への関心が薄れる状況を利用するのだ。
  4. その時が南シナ海で一悶着起こす最良の機会となる。中国を抑止できる唯一の国米国が次期最高司令官選びに夢中になって米国並びに各国の報道も大統領選挙一色で、討論会あるいは別のスキャンダルが見出しを飾っているはずだ。
  5. 中国が南シナ海で防空識別圏 (ADIZ) を設定したり、スカボロー礁で埋立工事を開始しても世界がホワイトハウスを目指す両陣営の一言一句に関心を寄せる中、さほど関心を集めないだろう。中国には絶好のタイミングとなる。
  6. もう一つ考慮すべき材料がある。次期大統領次第でアジアへの姿勢がどう変わるか見えない間が行動の好機だと中国は賭けに出るかもしれない。オバマ政権も任期の終わりに近づきアジア危機の発生は望まないはずで中国が揺さぶりをかけても米国の妨害は受けないと思うかもしれない。中国のいいぶりではないがタイミングが全てなのだ。
今は準備期間か
  1. そうなると南シナ海で緊張を高め自国主張を固める絶好の機会となる。中国はどんな行動に出るだろうか。その答えにはこう聞けばいい。南シナ海周辺国さらにインド太平洋各国は準備できているのか。■

Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor at The National Interest Magazine. You can follow him on Twitter: @Grecianformula.

2016年7月30日土曜日

戦略能力整備室は何を目指す部署なのか 前編


オバマ政権で唯一評価できるのがカーター長官率いる国防総省の技術政策で、その中でもスカンクワークスのようにこれまでの官僚制度、慣例から自由に動いている観のあるのがSCO戦略能力整備室です。Breaking Defenseが室長のローパー氏に貴重な取材を行い概要を限定的ですが明らかにしています。これは前編です。

Strategic Capabilities Office Is ‘Buying Time’ For Offset: William Roper

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 18, 2016 at 4:00 AM
WASHINGTON: ウィリアム・ローパー率いる戦略能力整備室 Strategic Capabilities Officeは米軍向けに最先端イノヴェーションを模索しているポケモンGOの軍事版で陸軍兵士が脅威の所在を探る姿が想像できるだろうかあるいはロボット頭脳の箱を海軍水兵が哨戒艇に取り付け無人航行させる様子を想像してほしい海兵隊がマーケティング用ソフトウェアの「ビッグデータ」から反米感情の傾向を探り危険な段階に発展する可能性を予測する姿を想像してもらいたい
「ビッグデータ用のツールはベータテスト中ですが1年以内に実用化するでしょう」とローパーは記者に珍しい単独インタビューで語ってくれた。戦闘用の拡張現実augmented reality(ポケモンGO)はもっと早く出現する。
ただしローパーは自分自身を革命家とは見ていない。むしろ冒険野郎マクガイバーのようにそばにあるものからガジェットを作り、悪者の動きを止めようとしている。アメリカの敵が急速に実力をつけており米軍の優位性が消えつつある中で、広く利用可能な技術でローパーは時間を稼いでいるとも言える。
Sydney J. Freedberg Jr.Defense Secretary Ash Carter talks to Strategic Capabilities Office director William Roper at Submarine Base New London.
相殺戦略に時間を稼ぐ
DARPAや国防総省の実験部門は第三相殺戦略の一環でブレイクスルー技術を開発中だ。中心テーマは自律人工知能で、現実世界のロボットから仮想空間まで広く応用され、極超音速ミサイルや3-Dプリント技術など有望分野もある。問題が一つある。時間だ。
「各チームが取り組んでいる技術は感動的といえるほどですが、実用化が早くなるのも事実です」とローバーは記者に語ってくれた。敵に回る可能性のある側もすぐ追いついてくるだろう、とし、「SCOは省の前面で時間を稼いでいるのです」
米軍の優位性の源泉は1970年代技術であるステルス、スマート爆弾、ワイヤレスデジタルネットワークにあり、次世代の革命的技術の開発に取り組むべき時はとっくに終わっているというのが第三相殺戦略の考え方だ。戦略能力整備室は現時点の技術に多大の改善余地があることと認識する。
「一兆ドルを超える隠れたコストが運用中の各システムに潜んでおり、改良の余地は大きいのです」とローパーは説明した。「まだ出現していない未来技術ではなく、今使っているシステムを遡って検討しているところです」
「この2つはピッタリと合うのです」とローパーは続けた。「国防総省が10年から15年の期間で調達するとしましょう。現有装備はその後も十分な効果があり将来の戦争でも勝利につながる想定外の性能があるとします。でも15年間にわたる技術調達の間に敵も急いで開発して第一線に投入してくるでしょうから、それまでにこちらの発想は追いつかれてしまいますね、そこでまた新しい発想が必要になります」
ローパーは第二次大戦の例が好きなようだ。当時の主力装備は航空機、戦車、潜水艦、無線とそれぞれ20年前から登場している。ドイツがヨーロッパを席巻したのは各技術が優秀だったというよりも技術組み合わせに成功したためだ。ロシアもドイツのやり方を真似て逆に電撃戦を仕掛けドイツを撤退させている。
主要国で基礎技術には大差なかったとローバーは主張し、米国が原子爆弾を開発するまで基本的に動きはなかったとする。それでも1939年から1945年にかけて戦闘力が飛躍的に進歩したのは苦労して手にした実経験や技術面の試行錯誤から同じ基本技術で効果的な使用方法がわかったためだとする。
「第二次大戦でほぼすべての発想が試され優位を確保しようとしていました」とローパーは述べる。ただし1945年以降の米軍事技術はそこまでの試練を経験していません。そこで成功の副産物が問題で、ソ連と戦うのではなくソ連を抑止してきましたが、ソ連が消えてから米国の存続を危うくする敵がまだあらわれておりませんがそれでも問題であることにかわりありません。
「第二次大戦では技術淘汰が自然に行われましたが、今は機能していません」とし、SCOの役目は各軍に「現有装備の細部までメスを入れ有効活用をすすめる一方で新技術の必要性を訴えること」なのだという。
SCOはどう機能するのか
スピードが優先項目になれば既存技術の新用途への応用が可能だ。急速に進歩している民生技術を動きが遅い軍事技術に投入することができる。
SCOが手掛けるプロジェクトは23あり、多くが極秘だが、ローパーは多くが着手から完成まで三年だという。これはペンタゴンがこれまで手がけてきた主要開発事業から見れば光速といってよい。
「当室で扱う内容はほとんどが一年から4年で完成しています。5年でもとんでもなく長い感じはしません」とローパーは記者に語る。「素晴らしい発想があり六年かかったとしましょう」、国防総省では誰も手がけていない内容だとして「実施にとりかかってもいいが、実証は大変でしょう」
SCOには対象プロジェクトの厳格な定義を決めた取り決めはないとローパーは強調する。またペンタゴンでは権威あるとされる正式な仕様要求文書も発行しない。
「一年目は500回も同じ質問に答えていますよ。『要求仕様は何ですか』というものです」とローバーは戦略国際研究所(CSIS)で述べている。「この部署を一番効率的に運営するために要求内容は作成されていないのです」
要求内容が重要となるあまり拘束条件となり、知的な、知的な条件検討を妨げることになる。
「失敗で多いのは願望で数字を書くことですが、『要求』ならその通りに実現しないといけません」とローパーはCSISで語っている。現行制度ではスペックを初期段階で下方固定する傾向がある。航続距離、速度、精度などだが、実は何かを犠牲にすれば実現できるのだ。
ローパーには予算枠もない。SCOは年間16百万ドルを一括受け取り、解析とテスト統括を行うが、個別プロジェクトは都度ペンタゴン予算から獲得しているとCSISで語っている。「新しいコンセプトが入っていないと、結果として実施できずそのまま消えてしまいます」
ではローパーはどんな新コンセプトを希求しているのだろうか。ロボットボート、ビッグデータ、拡張現実を次回お伝えしたい。■


東京オリンピックまでにペイトリオット部隊の性能改修を実施へ



Exclusive:

Japan to upgrade Patriot batteries for Olympics as North Korean missile

threat grows: sources

TOKYO | BY TIM KELLY AND NOBUHIRO KUBO
防衛省でペイトリオット高性能改修-3(PAC-3)装備の傍に立つ自衛隊員。
December 7, 2012. REUTERS/ISSEI KATO/FILE PHOTO
  1. 日本がペイトリオットPAC-3ミサイル防衛装備を2020年東京オリンピックまでに改修し、有効距離拡大に加えて精度を上げ北朝鮮弾道ミサイルの高性能化に対応させるとわかった。
  2. 性能向上策でPAC-3ミサイルの射程は30キロと現行の二倍近くに伸び、改修は来年開始と関係筋が明かしている。
  3. 「性能改修型PAC-3はムスダンに対応するため必要」と別の筋は語り、北朝鮮の中距離弾道ミサイルを名指しした。
  4. 北朝鮮は今年六月にムスダンを二発試射し、一本目は失敗したが二発目は400キロ飛翔し、高度1,000キロと弾頭を装着した場合3,000キロ先まで到達できる能力を示した。
  5. 北朝鮮は実用化に一歩近づき、毎秒数キロの速度で飛翔すれば防衛の最後の砦PAC-3部隊が対応ができなくなる。
  6. 旧型PAC-2を保有する韓国は2018年までにPAC-3に更改すると韓国国防部関係者が述べている。在韓米軍も首都ソウルを防衛範囲に入れている現有PAC-3を改修する
  7. なお日本防衛省の報道官はPAC-3性能向上について「何も決まっていない」と述べた。
  8. 東京オリンピック開催でPAC-3改修は厳しい予算でも優先実施しやすくなったと関係筋は語っている。
  9. 約1,000億円を平成29年度予算概算で要求すると関係筋は述べている。予算提案は内閣承認を経て正式に予算化され、追加費用は後年に都度承認される。
  10. 日本はより高性能な最終段階地域防衛装備、THAADミサイル迎撃システムの導入を検討している。米韓両国が同装備の導入を今年決めているが、中国をいらだたせる結果が生まれている。中国は安全保障のバランスを崩す装備だと評している。
  11. だがペイトリオット改修は弾道ミサイル防衛能力を直接引き上げる効果があり、THAAD他の導入より優れている。
  12. 日本にはイージス装備駆逐艦部隊もあり、米国とスタンダードミサイル 3(SM-3)を開発中で弾道ミサイル弾頭を宇宙空間で撃破するのをめざす。ただし同ミサイル投入はまだ決定されていない。
  13. PAC-3の開発元はロッキード・マーティンレイセオン日本最大の防衛企業三菱重工業(MHI)で日本向け改修作業は来年4月からライセンス方式で始まる
  14. MHIは初年度に12隊、次年度も12隊、三年目に4隊の改修作業を実施すると消息筋が明かしている。東京防衛にあたる隊を優先し、訓練隊は改修の対象外とする。
  15. 「防衛省は本件をまだ公表していません。当社はコメントする立場にありません」とMHI広報は述べている。
  16. レイセオンもコメントを出さない中でロッキード広報から同社が「日本側との長い成功の実績の一部としてPAC-3ミサイル装備のライセンス生産をおこなってきた」と述べている。■


沖縄4,000ha演習地の返還は本当にいいことなのか



沖縄の皆さんには申し訳ないのですが、日米同盟がある限り米軍基地がすべてなくなる日は訪れないと思います。では日米同盟がなくなればどうなるのか。当然触手を伸ばしてくる国がありますね。日本政府はそこまで甘くありませんが、問題は地元自治体です。基地返還をした後の経済振興策には一定の資金が必要で、これこそ政治の知恵の出しどころではないですか。またグアムやオーストラリアへ一部米軍部隊が移動したのは決して声高な反米感情をそそのかしている勢力の勝利ではなく、単に弾道ミサイルの格好の標的になっているからにすぎません。


US To Return Land to Japan Used for Jungle Training

Wendell Minnick, Defense News6:44 a.m. EDT July 29, 2016
TAIPEI, Taiwan — 米軍は沖縄北部の演習地4,000haを日本政府に返還するこれだけで米軍占有の土地面積は17パーセント一気に減ると29日在日米軍司令部横田空軍基地の広報部発表で判明した
  1. 返還対象は北部演習地の一部でジャングル戦演習に使われてきた。条件付き土地返還は沖縄に関する特別行動委員会(SACO)による1996年報告書で盛り込まれていた。沖縄返還(1972年)以来最大規模の返還事業と広報資料が述べている。
  2. 北部演習地の部分返還は米軍使用地の整理を目指す日米の政策の一環で、最終的には嘉手納航空基地より南の米軍施設大部分を返還する。嘉手納は第18航空団の基地でF-15C/D戦闘機二個飛行隊が駐留している。
  3. 「日米相互防衛援助協定で米国は土地施設の使用権を認められており、日本の防衛と極東の平和安全維持が目的だ」と在日米軍副司令官チャールズ・チアロッティ少将が述べている。
  4. 「取り決めでは施設又は土地が不要となれば日本政府へ返還されることになっている。今回の事例では代替ヘリコプター発着場新設で残る演習地内での訓練が効率化することで約4,000ha返還が可能となった」(チアロッティ少将)
  5. 今回の返還は両国が合意したヘリコプター発着場六か所と連絡道路を返還対象外の北部演習地内に建設することが条件だ。
  6. 「沖縄演習地が減るとはいえ日本政府、自衛隊部隊との共同歩調には影響はない」とローレンス・ニコルソン第三海兵遠征部隊並びに在日海兵隊司令官は述べている。「太平洋での作戦能力はこれまで通りで単に面積が減るだけだ。演習地ではオスプレイ他機材の安全に留意して今後も運用する。SACOでは今後の返還予定地があり、沖縄住民の感情に米軍施設削減を求める声があることを理解している」
People hold up placards as they protest against the
米軍基地の存在に抗議する人たちがプラカードを掲げ、海兵隊キャンプシュワブ正門前に陣取る。 June 17, 2016. (Photo: Toru Yamanaka/AFP via Getty Images)
  1. 普天間海兵隊航空基地返還も両国間の長年の課題と広報資料は述べている。普天間には第一海兵隊航空部隊があり、MV-22オスプレイ、F/A-18スーパーホーネット戦闘機、AH-1Wスーパーコブラ攻撃ヘリコプター、AV-8Bハリヤーを運用している。
  2. 米軍は一部装備施設をグアムへ移転しており、その他でも兵力を削減している。
  3. 沖縄の戦略的価値は大きい。尖閣諸島からは250マイルしか離れておらず、台湾へも350マイルとともに中国が領有あるいは侵攻を主張している地点だ。■


2016年7月29日金曜日

中国-ロシアが9月に南シナ海で海軍演習を実施へ


予想通り中国はますます唯我独尊状態に入り、その動きは予想しにくくなっています。面子がつぶれたと感じればどうなるかわからないので、そもそも国際司法判断そのものを無意味と論じ、全く違うロジックを作り、アフリカや一部アジア諸国を応援団に国際社会の主流意見はこちら、と主張しています。プロパガンダだけでなく軍事力も注目を集めるので効果は高いですね。そのためロシアとの演習を実施するぞと公表したわけです。これらの動きが世界からどう見られるかは関係ないのでしょうかね。しかしTHAADに抗議してなぜミサイル迎撃テストをするのでしょうか。どこで実施するのでしょうか。

China, Russia to Conduct Joint Military Drills in South China Sea

Beijing will also deploy anti-missile defense tests to counter U.S. system in South Korea


China's Harbin (112) guided missile destroyer takes part in a week-long China-Russia "Joint Sea-2014" navy exercise at the East China Sea off Shanghai, China May 24, 2014 / AP
     
July 28, 2016 12:32 pm
中国国防部は28日ロシアと共同海軍演習を南シナ海で9月に実施すると発表した。中国がかねてから主張していた同海域の主権は国際仲裁裁判所により否定されている。
  1. 国防部報道官楊宇軍Yang Yujun上級大佐は演習を「通常のもの」と報道会見で述べ、特定の国を想定した演習ではないと説明した。
  2. 予定通り実施すれば南シナ海で中ロ合同演習は初めてになる。両国は以前のライバル意識を捨て米国等の圧力に対抗するべく提携を深めている。
  3. 「両国軍には全く通例の演習でさり、中ロ戦略互恵関係の強化を狙うものである」と楊は説明した。
  4. 実施となれば7月12日の常設仲裁裁判所の判断で中国の領有権主張が覆され他後を受けての演習となる。中国は仲裁裁定を無効活法適温居がない司法判断として遵守するつもりはないとしている。
  5. ロシアは中国と2014年に大型天然ガス案件を成約し、エネルギー面での協力を強めた他、東シナ海で共同海軍演習を同年から開始した。2015年5月には地中海で共同演習も行っている他、同年に日本海でも演習を展開した。
  6. また中国国防部は韓国が高性能米国製ミサイル迎撃装備導入を決めたことへ対抗し、ミサイル迎撃テストを行うと発表。
  7. 米国と韓国は先月末に最終段階高高度地域防衛装備(THAAD)の導入を発表し、中国はこれに対し地域の安定を損なうものと警告していた。
  8. 「中国がミサイル防衛能力を整備するのは中国固有の防衛のためであり、特定の国を狙ったものでもなく、国際間の安定を損なうものでもない」と楊は述べている。■

オープンスカイズ査察OC-135機がロシア内で緊急着陸し、嘉手納で修理中


オープン・スカイズ条約には日本も中国も加盟していません。米ロと欧州の間の取り決めですね。KC-135系の機体は使い勝手がいいのかたくさんモデルがありますが、機齢を考えても物理的にいろいろ不具合が発生してくる時期なのでしょうね。


US Monitoring Plane Makes Emergency Landing in Russia

Aaron Mehta, Defense News5:30 p.m. EDT July 28, 2016

Open Skies aircraft(Photo: US Air Force)
WASHINGTON — 米査察機が機体故障で27日にロシアで緊急着陸した
  1. ペンタゴン報道官ミシェル・バルダンザ中佐がDefense Newsに同機はロシア国内ウラン‣ウデ空港を離陸し、国内査察飛行に入ったが飛行中に着陸装置が機内に完全に引き込まれていないと分かったと述べた。
  2. 「乗員は機内のロシア側クルーとともに条約に基づく査察飛行を中止し、行き先をハバロフスクへ変更し、同地でロシア側人員を降機させロシア領空を抜け最も短い空路を飛び在日米軍基地で点検修理を行うことにしました」と中佐は述べ、「ハバロフスクはオープンスカイズ指定空港としてよく利用されており、ロシアが条約で指定していますが、条約での『国外出発地』としては普通使われていません」
  3. 中佐はミッションが途中で中止されたため、フライトで画像は収集できなかったと述べた。同機はハバロフスク(中国国境からおよそ77キロのロシア南東部)から嘉手納空軍基地に移動して点検中で、完了次第ネブラスカのオファット空軍基地に戻る。
  4. 第一報は英国のExpress紙で機体はボーイングOC-135Bと判明した。
  5. 2002年締結のオープン・スカイズ条約により米ロ含む34カ国が非武装の他国偵察機に国内上空を査察飛行させ軍事部隊に関する情報収集を許している。条約は軍縮協定の遵守条項を確認できる情報公開をめざす。
  6. ただし条約で米国内に懸念が今年2月に浮上した。ロシアからオープンスカイズ飛行に投入するツボレフTu-154に新型デジタル電子光学センサーを搭載すると通告してきたためだ。ペンタゴンと議会からそろって新型センサーでロシアに情報面の優位性が生まれると警戒心があらわになった。
  7. 空軍公表資料によればOC-135はKS-87Eフレーミングカメラ一台は垂直方向、二台を斜め配置で低高度撮影用に、KA-91Cパノラマカメラ一台が高度35千フィートから全体撮影用に搭載している。乗員は最大35名。■

T-Xで高性能機体を求める米空軍の狙いは成功するのか




これだけの高性能を要求する米空軍はT-Xで別の狙いがあるのか、あるいは単に高性能を希求したらこうなったのでしょうか。果たして調達が成功するのか、あるいはロッキード=KAI案がこれで本当に有利になるのか、答えはボーイングノースロップの新型機体案が出てくると判明するでしょう。

Aerospace Daily & Defense Report

High-Performance T-X Could Edge Out Low-Cost Bid

Jul 27, 2016 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

T-38: USAF

T-38練習機で老朽化が目立つ中、米空軍が後継機T-Xの提案要求 (RFP)案を各社に公開し、要求水準以上の性能へ誘導しようとしている。
  1. 空軍は今回T-XのRFPを公開する前から個別に業界に要求内容を示しコメントを求めていた。違うのは要求以上の性能へ追加支払いすることで、高G操縦性、高迎え角操縦性や空中給油能力を想定している。
  2. このうちG性能が議論になっており、上限7.5gで閾値要求6.5gを超える0.1gごとに奨励金を出すと7月26日付のRFP原案は述べている。言い換えれば二案が同価格なら、高G設計案が高く評価される。あるいは価格差があっても高G対応案が有利だ。
  3. この評価方式に落ち着くまで空軍は業界と基本性能と要求内容の議論を重ねており、コストと性能の解析とトレードオフでT-Xの全体調達費用を下げるのが空軍の狙いだ。
  4. 「業界との協議を経て、空軍は閾値以上の性能を実現する意義を深く理解できるようになりました」と空軍報道官ロブ・リース少佐が7月27日に語っている。「したがって提案審査では特定性能を重視し、一定以上の場合には追加支払いし、今後数十年に渡るパイロット養成の効果と効率を引き上げたい」
  5. RFP案で総計350機のT-X並びに関連装備採用を企業チーム4組が競う。T-XはF-22やF-35を飛ばす次世代空軍パイロットを養成し、採用となればF-35導入国への販売の道も開く。RFP最終版は年末に出る。空軍は契約交付を2017年、初期作戦能力獲得を2024年ともくろむ。
  6. 契約交付までまだ一年あるとはいえ、競合は激しくなっている。ボーイング・Saabチーム、ノースロップ・グラマン主導のBAEシステムズL-3はともに新型機を、韓国航空宇宙工業(KAI)とロッキード・マーティンはT-50Aを原型に、さらにレイセオンレオナルドCAE連合はT-100を元に提案する。テキストロン・エアランドはスコーピオン原型で参入意向だったがT-X要求内容では価格面で競合できないと今年早々に判断した。
  7. RFP案のシステム要求は空軍が昨年公表した要求と酷似し性能要求3点を重視する。高G持続、シミュレーターの視覚鋭敏性と性能、並びに機体の長期間稼働だ。
  8. このうち高G持続性能が物議を醸しだしている。通常のG持続は速度、高度を一定の条件とするが、T-Xでは具体的な飛行状況を設定し最低6.5gで140度の旋回飛行だ。空軍は6.5gを旋回中最後まで求め、条件は高度15,000フィートで燃料残80パーセント以上とする。また7.5gに耐えることが望ましいとしている。機体制御は高度15,000フィートで開始して13,000フィート以下にせず、速度も開始時から10パーセント以上下がらないことと想定。
  9. この要求以上の性能を実現すれば報奨金を出すとの空軍発表で有利になりそうなのがロッキード=KAI連合のT-50Aだ。レイセオン=レオナルドのT-100は要求を一応満たすものの「合格線ぎりぎり」と主任テストパイロットのエンリコ・スカラボットがAviation Weekに昨年語っている。ただし、レイセオンのダン・ダーネルからはその後、g最低水準を「容易に達成しそれ以上も耐えられる」と言及している。
  10. ロッキード広報のロブ・フラーからはRFP原案は予想通りとのコメントが出ている。
  11. 稼働性も2015年案と同じで最低80パーセントとしている。空中給油はKC-135およびKC-10を想定。燃料消費はT-35比10パーセント減、向かい風10ノット高度7,464フィートの8,000フィート滑走路で6,400フィートで離陸し、同じ条件の滑走路でタッチダウンから機体停止までの距離は7,000フィート以下としている。
  12. 飛行時間合計は8,000時間で22年間稼働とし、月当たりの飛行時間を30.3とRFP案は記載している。■