2014年7月23日水曜日

各国別戦闘機調達の最新動向 予算が厳しい中で新しい潮流が生まれる


Costly Fighters, Cash-Poor Customers Set Fighter Trends

Cost-pressured customers define fighter opportunities
Jul 18, 2014Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
戦闘機市場で今後重要になる要素が二つある。まずF-35を除く現行の欧米の戦闘機各機種は2020年までに生産が終了となる。米国で次世代戦闘機の研究がすすめられ、日本、韓国、トルコで国産化の動きがあるが、各機とも実現は2024年より後の予想でそれまでは市場に影響を与えられない。そうなるとF-35のみが選択肢となってしまう。
  1. 需要が確実でも中東などまだF-35が未採用の国もあり、マレーシアなど米国がステルス機輸出にためらいを見せる国もある。F-35がブラジルやインドで選択対象になっていないのは、それらの国が調達を技術調達の機会ととらえているためで、実際に同機の技術の多くが触れないように密閉されている。他にも現行価格ではF-35を購入できない国もあり、需要規模は今後どれだけ開発が安定化し価格が下げられるかにかかっている。
  2. 二番目の要因は戦略的で、機体価格とは運用コストさらに予算圧縮の環境を組み合わせて理解することである。機体価格と運用コストはインフレ率を適用すると実質上昇を続ける中、各国の空軍は戦闘機の保有数を減らしている。経済発展があれば国防支出の伸びを支えられるが、
  3. 三番目も予算関連で、各国の軍で調達予算と運用予算を一体的に運用する例は少ない。ここがビジネス界と違うところで政府組織ではこの二つを一つの予算項目として一体に扱えないのだ。ビジネスで使われている成果反映型支払performance-based logistics (PBL) 契約を採用すれば効率は大幅に改善され、運用コストへの関心も高まるはずだ。.
  4. これらの市場の動きの影響が現実に出てきた。ボーイングはスーパーホーネット/グラウラー生産ラインを2020年代に入っても米国および国際受注で維持すると発表。現時点でも同機はデンマークと中東の一部で受注を争い、2015年度国防予算最終案でEA-19Gグラウラー生産の延長が決まりそうだ。また性能改良型スーパーホーネットAdvanced Super Hornet が2020年以降に登場すると海軍は現行機材の改修を進めるだろう。その時点で一部機材は機齢40年になる。
  5. ボーイングはスーパーホーネットの一時間当たり運用コストは17千ドルで、米国の戦術戦闘機中最低水準だとする。最新型F-15でも24千ドルとし、F-15C/D型では45千ドルになるという。大幅なコスト低下の理由としてボーイングは新型フライバイワイヤによる飛行制御システムで保守費用を8割下げたのが大きいという。
  6. ヨーロッパ各社も戦闘機の改修で輸出機会を探っている。ひとつ注目すべき事項は技術ではなく、販売方法だ。サーブリース方式を提示している。戦闘機調達・運用は長期間にわたり政府予算を使うことが多いので、リースはあながち無謀な方法とは言えない。ここにPBLを組み込んで、サーブはチェコ共和国とハンガリーに機体を提供している。スイスにもJAS 39C/Dの事前リースをしており、同様にブラジルでも現在交渉中だ。サーブはマレーシアにもリース提案したといわれる。
  7. また第三国による性能改修にも関心が集まっている。イスラエル航空宇宙工業はクフィールのブロック60を売込み中で、1950年代まで設計の基礎が遡れる同機は低価格機に近代的エイビオニクスを搭載したものと宣伝している。同社はF-16改修を手掛ける予定がないというが、もしシンガポールが同国保有機の改修入札を公示すれば、ボーイング、BAEシステムズとともに商機をねらうことになろう。

Aviaition Weekによる地域別各国別の新型戦闘機導入の見込み
米州
現況
機数
候補機種
決定時期
アルゼンチン
検討中
18
Kfir Block 60
2014
ブラジル
商談中
36-100
JAS 39E
2014
カナダ
調査中
65
F-35, Typhoon, Rafale, F/A-18E/F
2014
チリ
調査中
未定
F-16 upgrade, Kfir Block 60
未定
コロンビア
調査中
未定
F-16 upgrade
未定
ペルー
調査中
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Typhoon (used), MiG-29 upgrade
未定
欧州地区
現況
機数
候補機種
決定時期
ベルギー
競技中
30+
F-35, JAS 39E, F/A-18/F
未定
デンマーク
競技中
30
F-35, JAS 39E, F/A-18/F, Typhoon
2015
フィンランド
調査中
40+
未定
未定
ギリシア
競技中
100+
F-16 upgrade
2015
イタリア
交渉中
45-90
F-35
2014-15
オランダ
決定済み
37
F-35
2012
ポーランド
調査中
40
未定
未定
ルーマニア
発注
12
F-16A
2014
スロヴァキア
検討中
12
JAS 39C
未定
トルコ
検討中
未定
F-35, F-16 upgrade
2015
英国
検討中
48+
F-35
2015
アジア太平洋地区
現況
機数
候補機種
決定時期
オーストラリア
交渉中
58
F-35
2014
インド
交渉中
126
Rafale
未定
日本
発注
40
F-35
2011
マレーシア
競技中
20+
JAS 39, Typhoon, F/A-18, Su-35
2015
フィリピン
発注
12
F/A-50
2014
シンガポール
競技中
70+
F-16 upgrade
2015
韓国
交渉中
40
F-35
2013
韓国
発注
134
F-16 upgrade
2014
台湾
発注
146
F-16 upgrade
2012
中東地区
現況
機数
候補機種
決定時期
バーレイン
調査中
未定
Typhoon
未定
オマーン
発注
30
Typhoon, F-16
2012
カタール
競技中
72
Rafale, Typhoon, Super Hornet, Eagle
2014
サウジアラビア
発注
154
F-15A, F-15A upgrade
未定
UAE
競技中
60
Rafale, Super Hornet
未定



2014年7月22日火曜日

ウソつきはどっち ロシア軍がMH17 撃墜はウクライナ軍と主張



Russia Shares MH17 Radar Data

Jul 21, 2014Maxim Pyadushkin | AWIN First
.
ロシア軍はくりかえしマレーシア航空機事故に無関係と主張しており、レーダー記録から犯人はウクライナ軍だと指摘している。
  1. MH17便は少なくともウクライナ軍の三基のBuk-M1(SA-11 ガッドフライ)が配備された交戦地帯上空を飛行しており、最終的にドネツク付近に墜落したとロシア国防省が提供した情報である。
  2. ロシア軍が公開した飛行経路図と航空管制データではMH17便は国際航空路上で東ウクライナを通過しようとしていたが、ドネツク付近で飛行回廊から北寄りに14 km逸脱したのち、右寄りに方向を変え、航空路にもどろうとしたが結局できなかった。ロシア国防省によるとレーダーは同機の飛行速度低下を17:20(モスクワ時間)に探知し、17:23に接触を失っている。.
  3. ドネツク付近のウクライナの防空体制は7月17日に強化されているとロシア軍参謀本部のアンドレイ・カルタポロフ中将 Lt. Gen. Andrey Kartapolov (作戦部長)は説明している。衛星画像ではブク装備一個がザロシュチンスコエZaroshchinskoe近郊(ドネツクから50 km地点)に展開したが、翌18日撮影の衛星画像では同地点を退去していると判明。
  4. 中将は同時にKupol-M1レーダー(NATO呼称チューブ・アーム)の活動が増加している事実も指摘する。同レーダーはブクに目標探知データを送るもの。同地域内で稼働するレーダー装備の数も7から9と7月17日にかけて増えていたが、18日には4へ激減したち、19日には2つになったという。
  5. ロシア軍は17:21に一機が高度を上げてマレーシア航空機に近づくのを探知していると発表。両機の距離は3から5 kmだったという。レーダー基地二つが4分間にわたり捕捉しているが、二次的な識別装置がなかったという。カルタポロフ中将は接近したのはウクライナ空軍のスホイSu-25地上攻撃機だったとした。中将は「Su-25は高度1万メートルまで短時間で上昇できる」と発言したが、同機の実用上昇限度は7,000メートルである。また同機はR-60(AA-8アフィッド)空対空ミサイルを搭載し、12 kmの射程範囲があると軍事関係者は言う。

  1. レーダー記録ではこのSu-25はボーイング777の墜落後も同区域を哨戒している。ウクライナ関係者は同日にウクライナ軍機が該当地区を飛行していた事実はないと否定している。■


2014年7月21日月曜日

☆ 韓国KF-Xは双発仕様に決定



S. Korea Opts for Twin-Engine Fighter Development

Jul. 19, 2014 - 03:41PM   |  
By JUNG SUNG-KI   |   Comments

韓国軍は次期戦闘機を双発機仕様に決定したが、経済性と開発面で懸念が残ったままだ。
  1. 韓国統合参謀本部(JCS)は18日、最高決定会議でKF-Xのエンジン数を決定した。KF-Xは海外提携先の支援を受け開発を目指す国産機である。
  2. 韓国は合計120機以上を2025年以降に生産し、F-4とF-5の代替とする予定で、F-16高性能型にハイエンドのエイビオニクスを搭載したものと同等の性能になる。
  3. JCSは8ヶ月に渡りコスト、要求性能、開発日程を検討したが、双発機こそ将来の運用要求に合い、近隣諸国の戦闘機開発に対抗できる選択との結論に達した、とJCS報道官が発表。
  4. その仕様でKF-X開発を進めた場合の初期作戦能力獲得は2025年となり、当初予定から2年遅れる。
  5. 国防調達計画庁Defense Acquisition Program Administration (DAPA) がエンジン選定契約の入札を早ければ来月に公示し、候補にはGEのF414とユーロジェットEJ200があがっている。
  6. 今回双発機案が採択されたが、これまで熱い論議があった。韓国国防解析研究所Korea Institute for Defense Analysis (KIDA) は高価格と技術上のハードルの高さから双発機に終始反対していた。KIDA試算ではKF-X開発費用は9.6兆ウォン(930億ドル)とされるが、双発機では二倍になるという。またF-16級の機体寸法を双発機にしても輸出につながる利点が生まれず、双発機案を現実乖離としている。
  7. また開発費用の予算超過で国産エイビオニクス開発が妨げられることを心配するのは民間シンクタンク韓国国防安全保障フォーラムKorea Defense and Security Forum,だ。「原案ではアクティブ電子スキャンレーダー等を国産開発することになっていたが開発費用が増えれば海外製品の採用になるのは避けられない」という。
  8. メーカーの韓国航空宇宙産業Korea Aerospace Industries (KAI) も単発機案を希望してT-50ゴールデン・イーグル超音速練習機(ロッキード・、マーティンと共同開発)を原型とするつもりだった。T-50の軽戦闘機版FA-50の開発にも成功しており、同機はインドネシアとフィリピンへの輸出が進む。昨年秋の航空国防フェアでKAIは 29,000ポンドクラスのエンジン案を展示しており、FA-50を発展させるのが価格と性能の両面で有効だと主張していた。
  9. これに対し空軍は国防開発庁 Agency for Defense Development (ADD) の後ろ盾もあり、予算超過や技術課題の懸念を否定する動きに出た。
  10. 「KF-Xは4.5世代機で兵装20,000 ポンド搭載可能。インドネシアが共同開発国になっており、相当数の同機を買うものと想定している。生産量が増えればコストも下がるだろう」と空軍報道官は述べている。.
  11. また同報道官はKF-16を上回る機体寸法は将来の性能向上に対応するもので同時に近隣諸国(日本と中国)の空軍力整備にも対抗できる、としている。
  12. これに対しADDは新しいコンセプトの戦闘機だからこそライフサイクルコストの検討が必要だと反論している。さらにADDではKF-Xに必要な技術のおよそ9割を確保ずみで、あとはエンジンおよびエイビオニクスだけだとしている。足りない技術はF-X III戦闘機開発案件を受注したロッキード・マーティン他海外メーカーから入手できるとADDは期待している。
  13. ADDはKF-Xブロック2で内部兵装庫を、ブロック3でステルス改良を逐次実施し、B-2爆撃機またはF-35共用打撃戦闘機と同じステルス性を実現する目論見だ。
  14. 現時点でインドネシアはKF-Xで唯一のパートナー国であり、開発費の2割を負担する。韓国政府は6割を負担し、残りの2割がどうなるのか不明だが、KAIが一部負担するとみられる。■
コメント なんとなく大丈夫なのか、かなり適当だな、と心配になる今回の決定ですが、計画は修正されながら実現に向かうのでしょうね。ただし時間がかかりそうです。そもそも戦闘機開発そのものが相当ハードルが高くなっている中で、日本と韓国こそ本来は共同開発しなければならないのに、仮想敵国扱いされるのはいかがなものかとは思います。(同国の複雑な国内事情があるにせよ) はやく 相互に自由にモノがいえる時代が来るといいですね。



第五第四世代機混合運用を想定すると機体間の通信方法の確立が真剣な問題になる


Air Force Fifth-to-Fourth Plan Questioned

U.S. Air Force lacks clear plan to link F-22 and F-35 operationally
Jul 17, 2014Amy Butler | Aviation Week & Space Technology

F-35の配備が予定より遅れ、F-22は183機に留まる中、新規予算は先細りとなり、このままでは第五世代戦闘機のみの編成を目指す米空軍構想の実現に数十年かかりそうだ。.
  1. その一方で、主力ステルス戦闘機ニ型式は単価1億ドル以上をかけたステルス性を犠牲にしなければその他機種と有効なデータ交換ができないという皮肉な状況になっている。

  1. そこで空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が「第五から第四へ」の能力開発を課題として提唱している。つまりF-22やF-35のセンサーで集めた情報を第四世代のF-15およびF-16への転送する。作戦運用ではステルス機を前面に配備し、敵の防空網の「バブル」の外側を飛行する友軍にデータ送信し、敵の脅威状況を伝えることにある。旧型機はLink 16でデータ共有を広げる。

  1. ただし、データリンクの取り扱いががこれまで適当だったのが災いしている。F-22が飛行中データリンクin-flight data link (IFDL)で交信できるのはF-22間のみと設計されている。冷戦期にはF-22を100機単位で運用する構想だった。したがって交信は制限付きでもよく、むしろ正確さが重視された。

  1. F-35では多機能高性能データリンク Multi-function Advanced Data Link (MADL) が採用され、指向性アンテナと波形を都度変えることで傍受可能性・方向探知性を低く low probability of intercept/low probability of detection (LPI/LPD) 抑えている。なお、空軍でのF-35供用開始は最短で2016年8月だ。

  1. F-22は Link 16 でデータ受信のみ、F-35は送受信が可能だが、専門家によれば Link 16 でデータをやりとりするのは「空中に大型照明灯を点灯するみたい」なものだという。

  1. その中でF-22の制約が障害になっている。2011年にリビア作戦に投入するだったが、F-22で収集したデータを友軍に送信できないことがわかり取りやめている。

  1. そこでRQ-180ステルス情報収集機が早くて来年には供用開始となると言われる中、F-22およびF-35とデータのやりとりができるのかがはっきりしない。すべてのステルス機が敵の防空体制の中で通信できることが理想的だ。

  1. 空軍にはMADLを全機に装備する構想があったが、費用が莫大であると判明した。戦闘航空団関係者への取材が拒否され、書面による回答のみ得られたが、それによるとステルス機同士の交信ではなく、第五世代機から第四世代機への通信が中心になっていると判明した。

  1. 空軍がとりかかっているのは多機種間対応型処理システム Multi-Domain Adaptable Processing System (MAPS) でゲイトウェイ機能が中心のようだ。2015年度第2四半期までに提案要求書を発出し、第四世代機向けのポッド開発を目指す。

  1. MAPSでは赤外線探知追跡センサーinfrared search and track sensor (IRST) の実現も目標だという。空軍の目論見は1億ドル以下でMAPSを開発することだが、最終費用はまだ不明だ。製造数は予算次第だ。
.
  1. ただしMAPSに求められる性能内容が問題だ。ゲイトウェイ機能で機種間の接続を実現するが、運用コストが高い戦闘機を敵防空体制の外で待機させしつつステルス機が内部に侵入する構想ではゲイトウェイ役の機体は本来のミッションに制約が生じ、結果として作戦費用が高くなる。第五から第四世代機間の接続に役立つが、直接の接続にはならない。

  1. MAPSそのものは短期間で作成したタロンヘイト Talon Hate ・ゲイトウェイからの発展型である。タロンヘイトは2015年度内にポッド4基を完成させIFDLの接続をF-22と第四世代機間で実現する。ボーイングがF-15C仕様で製作中である。

  1. タロンヘイトのポッドは 全長17 ft.、重量1,800 lb.でIRST機能、多機能情報伝達システム Multifunctional Information Distribution System を含み、後者はLink 16に類似しているが、衛星通信および空対地リンク機能がある。

  1. タロンヘイトの開発所管は空軍内の国家装備戦術利用Tactical Exploitation of National Capabilities (Tencap) 室で、これは議会の求めで創設された各軍向け技術普及組織である。Tencapでは「国家」装備と呼称される非公開の衛星や航空機からのデータ配信方法も検討している。

  1. 航空戦闘団はタロンヘイトの取材には応じなかったが、一部情報を提供してくれた。ボーイングはすべての質問を空軍に転送した。

  1. ただし第四世代戦闘機向けのポッドがMAPSの解決策になるのかと疑問を呈する向きがある。ステルス機同士は外部ゲイトウェイを介さずに交信が可能となるはずだが、タロンヘイトの機能を小型化する検討もしているという。その解決策がポッドになるのか全く違う形になるのか不明だという。

  1. MAPSはF-22とF-35間の直接交信には使えない。ウェルシュ大将が提示した課題は第五と第四世代機関の接続だが、空軍の一部と議会内部で今こそデータリンク戦略をしっかりと構築すべきとの主張がある。これに対し「提唱するのはいいが、内容を理解していないのではないか」と業界筋は冷淡だ。「要求内容がまだ決まっておらず、ほんとうに必要な内容を整理する時間をかけていない」という。MAPSのPは現時点ではプロセシングのPとなっているが一時はポッドのPだったことがある事自体が空軍内部で考え方がまとまっていないことのあらわれだ。

  1. ボーイング、ノースロップ・グラマンロッキード・マーティンの各社がMAPS構想の提案を出してくるとみられる。このうちノースロップ・グラマンはゲイトウェイの実証実験をすでにおこなっており、F-22とF-35のデータをLink 16のメッセージに転換し外部パッドを使わずに第四世代戦闘機に配信している。

  1. ロッキード・マーティンはL-3 Communicationsが開発した新しい波形カメレオンでF-22とF-35を直接リンクして、ステルス機の位置が探知されることを回避している。カメレオンの実証実験は昨年12月に実施しており、Lバンドアンテナ(両機種に搭載済み)で交信できたという。ロッキードは自社資金で開発しており、これをプロジェクト・ミズーリと呼称している。
.
  1. カメレオン波形がLink 16で伝える信号データは背景ノイズにまぎれて「伝搬」される。専用受信機でないと「引き出せない」とされ、妨害対策が60通り開発されているという。
.
  1. ロッキードとL-3は地点間接続の実証を行っており、最終的には「マルチモード」のカメレオン接続も実証する。F-22とF-35同士でカメレオンで「会話」するコンセプトでデータをF-18,F-16やU-2(高高度でRQ-180の代役を務める)へデータ送信する。バブル後方を飛行するF-35一機がLink 16で他機に送信する。■


2014年7月20日日曜日

リムパックに参加しながらスパイ船を別途派遣する中国の不可解な動き



China Sends Uninvited Spy Ship to RIMPAC

By: Sam LaGrone
Published: July 18, 2014 9:19 PM
Updated: July 18, 2014 9:19 PM
Chinese People's Liberation Army Navy electronic surveillance ship Beijixing (pennant number 851). A ship of this class is currently off the coast of Oahu, monitoring RIMPAC 2014.
Chinese People’s Liberation Army Navy electronic surveillance ship Beijixing (pennant number 851). A ship of this class is currently off the coast of Oahu, monitoring RIMPAC 2014.

世界最大の海軍演習に中国が招かざる客を潜り込ませている。

  1. 中国人民解放軍海軍(PLAN)はリムパックに4隻を米国招待により派遣し、軍組織間の関係改善の証と受け止められていた。

  1. しかし中国はこれとは別に電子監視船一隻を派遣し、演習海域の端で交信・電子情報を盗聴している。

  1. 米太平洋艦隊から18日にUSNI Newsへ連絡があったもので、太平洋艦隊はハワイ近海の公海上でこの中国艦艇の動きを監視している。

  1. 太平洋艦隊によると同艦は今も海域にあり、米領海の外にとどま演習の妨害はしないだろうと見ている。

  1. 艦隊司令部によれば同艦は演習に参加しておらず、その目的も推測の域を出ないが、ハワイ付近に一週間前から姿を表している。艦隊司令部からリムパックに参加中のPLAN代表部に同艦の意図等を照会したが未回答だという。

  1. 18日時点で同艦はオアフ島南方にあり、USSロナルド・レーガン (CVN-76) 空母打撃群および演習参加中の50隻に近い位置にいるとUSNI Newsは複数筋から確認を得た。

  1. 同艦は東調級Dongdiao-classの情報収集艦 auxiliary general intelligence (AGI) でPLANが電子通信データの収集用に使う専用艦であると複数筋がUSNI Newsに確認してきた。


  1. 海軍大学校の准教授であり中国ウォッチャーのアンドリュー・エリクソンによれば今回見つかった艦は東調級のBeijixing(艦番号851)で東海艦隊所属だという。

  1. BeijixingはPLANのAGI艦艇のうちでも経験を深く積んでいる艦で、日本の排他的経済水域に進入しているところがくりかえし目撃されている。

  1. 艦隊司令部によると同艦は米国の排他的経済水域内だが国際法上に則り航行の自由は尊重されるという。

  1. 演習中の海軍艦艇が発する交信等を傍受することはよくあることで、冷戦時には米ソがそれぞれ演習海域に忍び寄ることは普通だった。中国は南シナ海等で行う演習に米国が艦艇を送ることに抗議している。

  1. 敵味方問わず、電子信号を艦船・航空機から傍受することで防空レーダーの周波数など作戦の実施方法を知ることができる。.ただ同艦に関し腑に落ちないのは中国の別の4隻がリムパックに参加しており、演習の大部分に関与を許されている点だ。
.
  1. 「演習に参加することで中国の運用技術が劣ることが明らかになるリスク、また自国の排他的経済水域内の権利を主張してきたのを台無しにするリスクを意識して、各国に全て見られてしまう環境の中で失態を示しても好奇の目で見られないように同艦を配備したのはではないか」というのがエリクソンの見解だ。

  1. スパイ船が演習海域近くに遊弋している事実があきらかになって議会には次回リムパックに中国を招待すべきではないと主張する議員が現れた。下院軍事委員会の海洋・兵力投射小委員会委員長のランディ・フォーブス議員(共 ヴァージニア)である。「中国が航行の自由を否定し、領土問題の平和的解決も否定していることに鑑み、リムパックに中国を招待するのは不要だと考える」
 
  1. 「情報収集艦を演習海域に派遣することで合計20カ国の善意を裏切ったのが判明した。中国が責任あるパートナーではないことが明白になり、リムパック招待は今回かぎりにすべきである」とUSN Newsに伝えてきた。

  1. リムパックは隔年で実施される演習で今回は50隻、200機、25千名の軍関係者が23カ国から参加しており、8月まで実施中。■


2014年7月19日土曜日

ファーンボロ航空ショー前のボーイング・マクナーニ会長に聞く(ターミナル1共通記事)



An Interview With Boeing CEO Jim McNerney

Jul 14, 2014Joe Anselmo and Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
ボーイングCEOジム・マクナーニが今年はじめに新方針として“no more Moonshots”超難題な挑戦は避ける、を発表し注目を集めた。マクナーニはその真意はボーイングは新技術開発と革新への投資であともどりすることはできないのだと、AW&ST編集長ジョセフ・アンセルモと技術担当主筆グラハム・ウォーウィックに同社シカゴ本社で語っている。同時にボーイング757後継機、スペースXを起業したイーロン・マスク、そして自身の引退についても語っている
AW&ST: ボーイングはもう“Moonshots”を新規事業で狙わないとのことだが、戦略を変更したのか。
McNerney: 技術の民生化で戦略を変換しているが、技術戦略の話ではない。当社が技術革新を軽視していると誤解があるようなので正しておきたい。市場差別化を実現できる技術には投資を続け優位性を保つ。業界には技術を一度に使って劇的に性能を向上させる一方リスクを無視する傾向がある。当社の787がその例だ。
技術開発投資を削減するということではないのか。
技術へのR&D投資も続けるが、リスクを意識しながら螺旋状に向上させていき、顧客が本当に求めているものと将来に必要となるものを区別する。各製品の位置づけを明確にし、開発工数も短縮する。
だがそもそも787はボーイングがというより顧客が求める性能を実現したものだったが。
技術目標の7割を実現して顧客の95%が満足することが目標だ。そのため短縮化でコストも下げる。この例が5つ6つあり、それぞれ性能はそんなに向上jしなかった、あるいは効率が向上しなかった例がある。
同じ発想は軍用製品にも応用されるのか。
その通り。利用可能な技術がひろがれば、理論上は開発リスクを減らセル一方、自ら傷を広げる可能性も増える。F-35と787がその例で、当初に過大な期待を寄せすぎたと思う。開発が遅れ費用は予想を上回った。反対にうまく言った例がF-18で最初から実施可能な想定を追求し、その後20年をかけて性能を向上していった。737もこの例だね。
787は失敗例だったというのか。
そういうつもりではない。787は大成功だ。非常に魅力的な機体を作ったが、もう数年前に就航させられたはずだ。そうだったら経費は節約でき、顧客ももう少し早く性能の95%を享受できていたはず。事業開始時に興奮しても、設計に緩みが出てこないように自制がいつも必要だ。このことは肝に念じている。
737はあとどのくらい訴求力を維持できるだろうか。エアバスは新型ナロウボディ機は2030年まで必要ないと言っているが。
おそらくそれは正しいと思う。 737 MAX、 A320neoはそれぞれ予想以上の成功になりつつある。一時は真剣にNSA(新型単通路機)を検討し、社内チームに競作させてみた。だが、一発勝負対螺旋状改良の比較で顧客はNSA開発まで待てないと判断した。顧客には大きな効果が短時間で提供できる。その意味で2030年というのは間違いではないと思うし、顧客からも同じ意見を聞いており、実際に 737 MAX、 A320neoの大量発注を受けている。
ということは737も改良の余地があるということか。
そう、改良の余地は残っているが、ここでその発表をするつもりはない。MAXがベースとなる。
757後継機をいつ市場が求めてくるのか。
ナロウボディ機ファミリーの評価次第だと思う。今言えることは当社はこの点を注意深く見つつ市場の意見が重要との点では賛成だ。対応策には選択肢があるが、いつになるのかについては発言を遠慮したい。
ボーイングはNASA有人宇宙機競作に参加している。仮に受注失敗の場合、開発を断念するのか。ボーイングは政府資金がある場合において宇宙関連で進展をあげているようだ。スペースXも政府資金を得ているが、あの会社には「とにかく成果をあげようぜ」という考え方がある。ボーイングももう少し積極性を示していいのではないか。
良い質問だね。スペースXのCEOイーロン・マスクは良い仕事をしている。当社もアメリカ国民に再び宇宙へ関心を示してもらうため何ができるかを検討しているが、マスクはこれに成功しているし、その功績を認めてあげたい。有人宇宙船には四社が競合しており、当社が敗退することはないと思うが、受注できなければ宇宙の商用利用には厳しい見方をしないといけなくなるだろう。NASAからの大型契約がないと事業としてなりたたないからね。
宇宙への関心を再度喚起するというのであれば、「超難易度の課題は避ける」というのはおかしいのではないか。
だからこそ先に技術戦略と事業戦略は異なると説明申し上げた。当社はIR&D(自社資金によるR&D)に資金を投入して技術革新を実現しようとしている。一分たりとも後退したことはない。問題は技術成熟度が高まってから活用することであり、その前ではないし、顧客の要求内容が明確になっていることが必要だ。現在の世界は少ない金額でもっと多くの成果を求めており、それだからこそ賢く大胆に技術へ投資をして、螺旋状に向上させていかねばならない。
その螺旋が早くなれば、技術革新の内容も早く実用化できるのでは。
機体価格の問題はあるが、ご質問のとおりだ。市場投入を早める事が可能となる場合がある。
ボーイングは商用機事業が順調であることにより防衛事業でも大手担っている点がユニークだ。国防分野でも IR&Dを増やして市場が低迷している今だからこそ主導権を握れるのではないか。
ボーイングコマーシャルエアプレインズの財務状況が好調なことで合理的な判断も可能となっている。国防宇宙部門だけだったら、判断が非合理的になっていただろう、特に現今の国防部門のように厳しい時には。国防宇宙部門での合理的な意思決定とは短期的中期的にコスト構造を引き下げつつ、将来の中核となる投資を維持・増加させることだ。IR&Dを縮小するつもりはない。これが次代の競争力強化につながる。
ボーイングは他社と連携する例が多くなっている。空軍の長距離打撃爆撃機ではロッキード・マーティンと、T-X練習機ではサーブと、陸軍の次世代垂直輸送機ではシコルスキーとと言う具合だ。これはボーイングが単独で新規案件を最近は手がけておらず、リスクを分散しようということなのか。
国防部門が好調だったとしても連携案件はやはり存在していただろう。ともすれば単独で入札に望みたくなるものだが、今のように先のことが不確かな環境では共同事業をもう少し厳しく精査しなければならない。技術能力でほんとうの意味の補完関係があり、売上をどう分配するのかが明確になっていないと。また単独で実施するよりも良い結果が本当に得られるのかも確認事項だ。これができなければ、市場環境とは関係なく、共同事業はしないほうがよい。
C-17,F-15,F-18の後継機種は検討しているのか。
当社の戦略はニ方面で、ひとつはF-15、F-18それぞれの寿命延長化だ。F-35の就役がはじまってもグラウラー電子攻撃機は有益な機体となり、同機の海外営業の可能性も高いので数年間は生産ラインを維持できるだろう。さらにその先ということだと当社の技術陣、生産現場はUclass(米海軍向け艦載監視偵察攻撃機)、長距離打撃機材、T-Xに期待をつなぐ。各案件の受注には自信があり、これが長期計画になる。
ボーイングが下請企業に提唱している成功のための提携関係Partnering for Success はボーイングが一方的に利益を享受する構造だという向きがあるが。
当社から受注して事業規模を拡大している協力企業の例は多い。ただし各企業も当社がこれまで経験したように生産効率を劇的に向上させ経営管理の構造を合理化する努力をしている。当社もシステムインテグレーターとしてリスクを負うので、各社にも同じ経験を求めているわけだ。協力企業の中には当社以上の利益率を確保している例もある。当社から各社に目標を設定はしていない。単に当社と提携することで全社一丸となりサプライチェーンの競争力があがると言っている。逆にサプライチェーンにリスク負担を大幅に求めているわけではない。各社には生産性、効率性を妥当な期間をかけて向上してもらいたいとお願いしているのだ。
777X生産拠点をワシントン州以外の地点に移すと言っていたのはどこまで真剣な話だったのか。
とても真剣だった。生産拠点の移動は前にも行っている。提案を伝えることで社の評判が下がることも覚悟していた。合計23地点を検討したが、ピュージェット・サウンド地区に落ち着いてよかった。
今回のファーンボロがCEOとして最後の航空ショーになるのか。ボーイングはデニス・ミュイレンバーグ Dennis Muilenburgを社長に昇格しており、あなたの後継者にするのは明白なようだが。
その決定はまだしておらず、予定は未定だ。今年65歳になるが、まだ頑健だ。デニスには新しいポストで仕事をする機会を与えた。ただし当社の副会長はレイ・コナー Ray Connerであるのはご承知のとおり。幅広い人材が当社にはある。■

マレーシア航空機撃墜事故で当面米海軍艦艇の黒海派遣は予定なし



Navy: No Ship Moves to Black Sea Following Airliner Crash, Plans Could Change

By: Sam LaGrone
Published: July 18, 2014 12:42 PM
Updated: July 18, 2014 12:42 PM

マレーシア航空17便が撃墜されたと見られる中、米海軍はウクライナ近くへ水上艦船を移動させる予定はないと海軍がUSNI Newsへ知らせてきた。

  1. 誘導ミサイル巡洋艦USSヴェラガルフ(CG-72)が火曜日にボスポラス海峡を通過し、黒海に米海軍艦艇は皆無となっている。

  1. ただしNATOフリゲート数隻、電子監視船、水雷艇数隻は機雷対策演習の後も黒海に残っている。
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  1. 海軍によれば誘導ミサイル駆逐艦USSドナルド・クック(DDG-75)がヴェラ・ガルフ付近に航行中という。

  1. 状況によっては両艦は黒海に派遣される可能性があるという。

  1. ただし黒海沿岸に領土を有しない諸国は1936年のモントルー条約により黒海内に21日以上軍艦を配置できない。

  1. NATOと米海軍の艦船はソチ冬季五輪から黒海に交代で派遣んされており、この示威ミッションはさらにロシアがクリミア半島を占拠したことで拡大されている。

  1. 米情報機関によればマレーシア航空機はウクライナ上空ロシア国境近くで木曜日に撃墜されている。■

米空軍にISR機能特化の第25空軍が発足へ


USAF Announces New Numbered Air Force

Air Force Magazine
—MARC V. SCHANZ7/15/2014
Air Force file photo.
米空軍は7月14日に分散していた情報収集監視偵察機能を統合し、第25空軍を新設すると発表した。正式発足は本年秋になるという。

発表では情報収集監視偵察部門は第25空軍として再編され、航空戦闘司令部Air Combat Command(ACC)隷下に置かれるが、「各戦闘司令官向け支援を改善し、既存の部局を作戦用に再編し、同様のミッションを行う組織を統合し、不要部門を廃止する」一環との説明だ。

これによりACCは戦術、戦域、全国レベルのいずれでもISRの実施が可能となり、「一層効率的になる」とACC司令官マイケル・ホステジ大将Gen. Michael Hostage が7月14日付発表で述べている。ISR要員は単一司令統制構造one-command structure に置かれることは空軍が目指すISRミッションの戦闘部隊での正規化と同様に重要な位置づけ。

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ISR部門を統括しているジャック・シャナハン少将Maj. Gen. Jack Shanahan,が第25空軍司令官に就任する。現在の空軍ISR局に所属する組織の大部分が新設空軍の一部となるが、国家航空宇宙情報センター National Air and Space Intelligence Center (ライトパターソン空軍基地内)は空軍幕僚部直属のまま変更なしと説明されている。新設空軍の司令部はラックランド共用基地(テキサス州)に置かれる。


2014年7月18日金曜日

ファーンボロショー:低コスト新型攻撃・ISR機スコーピオンは時間かけて熟成していくのか


ファーンボロでテキストロンが自社開発したスコーピオン攻撃・偵察機が展示されているようです。Aviation WeekのAresブログでその内容が紹介されていますが、なかなかよくできた機体のようです。今後要注意の機体になるかもしれません。

Sting In The Tail

Jul 17, 2014by Bill Sweetman in Ares

テキストロン・エアランド Textron Airland のスコーピオンを初めて写真で見ての印象は芳しくなかった。タンデムコックピット、傾斜つき尾翼2枚、細い直線主翼はまるでセスナ・サイテーションがスーパーホーネットのコスチュームをかぶったようだったハロウィーンのようだった。
  1. 同機はふたつの機種の中間に埋没するのではと思った。軽攻撃機AT-6やトゥカーノに比べて生存可能性がすば抜けて高いとはいえず、偵察用では特殊任務用キングエアと同じセンサーを搭載するが機体価格・運用費用は高くなり、後席の兵装システム運用員は相当忙しくなるはずだ。

  1. ファーンボロ訪問前にテキストロン・エアランド社長ビル・アンダーソンBill Anderson と設計主任デイル・タット Dale Tuttと話す機会を作った。スコーピオンは以下の点を考慮して生まれた機体だ。スリップストリームが迎角が大きい時に尾翼を覆う問題から胴体は幅広とし、二枚の尾翼は合計重量が一枚構造より軽量にしてある。

  1. スコーピオンは決して小型機ではない。最大離陸重量が21,250 lb.(約9.6トン)で機体寸法はアレニア・アエルマッキM-346あるいはセスナ・サイテーション・エクセルと同程度、9,300 ポンド(約4.2トン)を搭載でき、地上高も確保している。ジェット機なので速度と高度飛行能力はAT-6やキングエアの比ではないとアンダーソンは指摘する。

  1. キングエアやAT-6もテキストロン製品だが、スコーピオンは競合しないという。まずスコーピオンの機体価格は目標が20百万ドルで飛行時間コストは3,000ドルである。現在は戦闘機を投入しているすき間的ミッションがあるが、高価な費用を投入した空対空戦闘能力や生存力はまったく使う余地がないままになっている。

  1. テキストロン・エアランドでは「軽攻撃」という呼称は避けている。アンダーソンによればミッションはあくまでも情報収集監視偵察(ISR)および攻撃となる。むしろ「従来とは異なるISR」“non-traditional ISR” だとし、イラクやアフガニスタンで戦闘機が投入されていたミッションだという。「帰国したA-10パイロットに聞いてみた。被弾したか。なし。兵装を投下したか。95%のケースでなし、だった」とアンダーソンは言う。「A-10やF-16を投入すれば、一時間1万8千ドルかけて、高性能機の寿命を浪費するだけだ」

  1. アンダーソンはミッション例を列挙する。いわく、麻薬密輸対策、武装偵察、国境警備。搭載センサーが新型であり以上のミッションを高度15千フィートから実施できるので、通常の対空火砲から安全に飛行できる。スコーピオンは被弾しても耐えられるが、そもそも強固な防空体制に侵入する設計ではない。

  1. 機体は容積82cu ft.(約2,300リットル)の冷房・電源装備の兵装庫を中心に設計している。広胴型の機体は断面積は洋ナシ型で兵装庫の両側に竜骨が通り、下方の機体表面は自由に変更できる構造だ。兵装庫の扉が同機のISR-攻撃ミッションのカギとなり、大型特殊センサーを搭載可能で樹海透視型レーダーや広範囲監視システムが搭載できる。コックピットではタレス製低価格ヘルメット搭載型ディスプレイを採用し、このディスプレイもスコーピオンと呼称される。

  1. 胴体中央部はビーバーの尻尾のようにエンジンナセルの間で先細くなっている。空気取り入れ部のタクトは十分長くとってあり、異物の混入から守り、ジェット噴射口も長いため赤外線探知をしにくくしている。降着装置は全長を長くとってあり、兵装庫の搭載物入れ替えに便利だ。主翼には差左右各3か所にパイロンがあるが、不都合なほど高い位置にはならない。生産型の機体には空中給油装置もつけられる。
  2. タンデム構造のコックピットは国際市場で並列型より人気が高いとアンダーソンは言うが、タットからここにスコーピオンのもう一つの特長があると説明があった。コックピットがモジュラー構造になっており、タンデム式を単座に簡単に変えることができ、将来は無人型にもなる。その際は主翼を延長し、エンジンは小型化できるという。それとは別に量産型機体には尾部にスピードブレーキがつくが、かわりにアンテナを増設することを希望する顧客もあるだろう。

  1. 大きなフラップにより短距離離着陸が可能だ。スコーピオンは2,000フィート(約600メートル)あれば不完全な滑走路でも最大離陸重量で運用可能だ。飛行制御系はサイテーションXと似ており、二重油圧系とサーボタブを使った手動復帰がある。全体としてシステム設計はサイテーションと「99パーセント」同じだという。専用の地上支援設備は不要で、機内に酸素発生装置を搭載し、機体左側に搭乗用はしごも折りたたんで搭載している。

  1. 賢明にもアンダーソンは同機の販売予定を期日を未設定のままとしている。「初期段階ですでに照会があり、順調に進んでいる」とし、来年のパリ航空ショーまでにどこまで具体化するか関心あるところだ。■


2014年7月17日木曜日

黒海から米巡洋艦退去 NATO艦艇は引き続き残留


U.S. Cruiser Leaves Black Sea, Several NATO Ships Remain

By: Sam LaGrone
Published: July 15, 2014 3:00 PM
Updated: July 15, 2014 3:00 PM
USS Vella Gulf (CG 72) transits the Aegean Sea on July, 6 2014. US Navy Photo
USS Vella Gulf (CG 72) transits the Aegean Sea on July, 6 2014. US Navy Photo

米海軍の誘導ミサイル巡洋艦一隻が黒海から15日退去したが、NATO所属艦船数隻はひきつづき残りロシアへの示威任務についている。
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  1. USSヴェラガルフ(CG-72)がブルガリア主導の海軍演習のあと、黒海から出たと海軍関係者がUSNI Newsに16日伝えている。
  2. 同艦が黒海から出たことで米国籍艦船は黒海に皆無となったが、NATO加盟国艦船は3月から増えている。
  3. 7月9日現在でNATO艦船は合計9隻が黒海内に展開しているとロシア国営通信RIAノーボスティが伝えている。.
  4. その構成はイタリアのフリゲートITSアヴィエル(F583),同じくイタリアの掃海艇ITSリミニ(M 5561)、トルコの掃海艇TCGアクチャイ(M270)、英海軍掃海艇HMSチディングフォールド(M37)を含む。.
  5. その他フランスのラファイエット級フリゲート・スルクフ(F711)、同じく情報収集艦デュピュイ・ド・ローム(A759)、イタリアの情報収集艦ITSエレットラ(A5340)も黒海内に残る。
  6. 黒海に自国沿岸を有しない各国籍の艦艇は1936年のモントルー条約の通航制度に従うことになり、黒海から21日以内に退去することになる。■

F-35 ファーンボロ航空ショー展示も断念 当面国際デビュー予定なし


F-35 Lightning II Will Not Strike At Farnborough

Jul 15, 2014Amy Butler and Tony Osborne | AWIN First
ペンタゴンからF-35は結局ファーンボロ航空ショーに出展しないとの発表が出た。
  1. 6月23日に発生したF-35A離陸前のエンジン出火事故をうけ全機が飛行停止になっていた。この事故がなければ事故の数日後に4機のF-35Bが大西洋横断飛行に出発するはずだった。

  1. エンジンメーカーのプラット&ホイットニーにとって出展中止は不名誉な結果になった。なお、ボンバルディアのCシリーズもプラット製エンジンからのオイル漏れのため飛行展示を取りやめている。

  1. 事故機意外に運用中98機のエンジンを調べたところ、事故機とおなじ不良現象は見つかっていないと判明、とF-35開発室長のクリストファー・ボグデン中将が発表している。

  1. ペンタゴンを代表しジョン・カービー海軍少将から7月15日遅くに「英国と協議の上、ファーンボロショーへの海兵隊および英軍F-35Bの派遣を取りやめることにした」と報道陣に明らかにした。

  1. この発表はファーンボロ会場では午後7時に明らかになったが、その時点で来場者は退去していた。会場では空軍長官デボラ・リー・ジェイムズDebora Lee Jamesはじめカービー提督などが相次いで同機の飛行展示が可能となる希望を表明していた。ジェイムズ長官はU.S.パビリオンで「飛行の可能性は高くなってきた」とまで語っていた。

  1. 会場では飛来するとの知らせに高揚したムードが一転して失望に変わった。

  1. 米軍の耐空証明認証機関が同機の飛行再開を許す一方、英国の航空当局はリスクを嫌うことで知られており今回の飛行展示を避けようとしていたが、両国協議の上で決定されたとの発表があった。

  1. 「ライトニングIIの飛行再開はうれしいが、英国に飛来できないことは残念」と英国防省報道官は発言している。「ただし、パイロットと機体の安全が常に優先事項であり、限定つき飛行再開のため大西洋横断飛行を実施しないという決定を完全に支持する。F-35開発に引き続き関与していき、英国仕様の機体が初期作戦能力を2018年に獲得できるよう努力していく」 なお、F-35開発では英国は第一級共同開発のステータスを有する唯一の存在である。
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  1. 海軍・空軍から同機の飛行再開を条件付きで認める措置が7月14日に発表されたが、具体的には性能のどこを制限するのかは明らかにされていない。ただし情報筋によれば調査継続中はgの制限となるらしい。

  1. またエグリン基地で発火した機体を全損扱いにするのかも不明だ。F-35の直近の目標単価は98百万ドルである。

  1. 「今回の決定は残念だが、開発配備はしっかり進めていくので、再度同機の性能を同盟各国、協力各国にお見せできる機会が生まれることを期待している」とカービー少将が述べた。

  1. 来年はパリ航空ショーがあるが、同機をフランス国内に持ち込むことには米関係者が消極的でもあり、他国を拠点にしない限りパリでの展示飛行は実現しそうにない。■