2016年4月28日木曜日

★中国が武装ロボットを公開



今回はまだ電気ショック程度の警備用で遠隔操作ですが、AIとネットワーク技術を投入し重武装する段階に進む可能性もありますね。なんといっても中国では何でもありの世界ですからコピーだろうと使えればいいわけです。また「フランケンシュタイン」からはじまるロボットアレルギーもありませんから導入普及に何も障害はありません。あ、これは日本も同じですか。
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At Tech Fair, China Unveils Armed Robot

POSTED BY: BRYANT JORDAN APRIL 27, 2016


China's National Defense University has designed a security robot that wields a Taser or cattle prod that may be fired remotely by a human controller. Otherwise the system can operate as a surveillance and patrol -bot. It also has a system that citizens may use to summon police.
中国国防大学が制作した警備ロボットはテイザーまたは家畜突き棒を遠隔操作で使用する。監視警備用に投入可能。また警察への通報用にも使える。

シリコンヴァレー企業の地上パトロールロボット構想に中国がとびつき、二年後に次の段階へ進んだ。武装を施したのだ。
  1. K-5の名前でナイトスコープ社(カリフォーニア)が販売するロボットは円柱形の胴体に円錐状頭部がつきTVのドクターフーに登場したダレクに似ているが監視とデータ送信機能がついているだけだ。
  2. これに対し中国人民解放軍国防大学のアンボット Anbot はほぼ同じ胴体だがこちらの方がダレクに似ている。Popular Scienceがテイザーまたは伸縮式家畜突き棒を搭載すると報じており深せん市で開かれたハイテク展示会でデモがあったという。
  3. ナイトスコープ社もアンボットを見た。武装を除けば同社製品のコピーだと副社長ステイシー・ディーン・スティーブンスが憤慨している。
  4. 国防大学側によれば通常警備以外に暴動対策にも導入できる。いずれにせよデレク、いやアンボットは有人制御で武器を使用すると同大学は説明している。
  5. アンボットの写真動画が広まるとスターウォーズのR2D2からロボコップに登場したED-209に至る多様な映画テレビのロボット像と比較する動きが現れ、当然本家のダレクへの言及も目立った。ダレクは1963年に登場し宇宙全体で「駆除活動」を続けている。
  6. 全米で最も有名な内部告発者エドワード・スノウデンはモスクワからアンボットについて「これは破壊能力が高そうだ」とトゥイッターでコメントしている。■


USAF>次期空軍参謀総長の指名を受けたゴールドフェイン大将はこんな人


空軍参謀総長に指名受けたゴールドフェイン大将は今年57歳、戦闘機でキャリアを築いた人のようです。空軍が今後の世界にどう対応するのか、特に無人機、AI、宇宙装備、サイバー、ISRと多様なミッションを抱える組織として組織内価値観も変動する中でどういうリーダーシップを発揮するのかお手並み拝見ですね。
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Battle-tested general tapped to be next Air Force chief of staff

Stephen Losey and Phillip Swarts, Air Force Times 5:29 p.m. EDT April 26, 2016
Gen. David Goldfein(Photo: Air Force)
デイヴィッド・ゴールドフェイン空軍大将は戦場で鍛えられた戦闘機パイロットで湾岸戦争、アフガニスタン、コソボ紛争で戦闘ミッションをこなしてきた。同大将が空軍の次期参謀総長に指名されたとペンタゴンが26日発表した。
  1. 議会承認を受ければ、ゴールドフェインは7月1日にマーク・ウェルシュ大将の後任となる。ゴールドフェインは2015年8月から空軍参謀次長の職責にあった。
  2. 「空軍第二十一代参謀総長の指名を受け恐縮の至り」とゴールドフェインは語っている。「承認受ければ空軍隊員、その家族にしっかりと仕え、空軍の伝統と団結の遺産を守ることを誓いたい」
  3. 空軍長官デボラ・リー・ジェイムズはウェルシュ大将とこの人選を称賛している。
  4. 「ゴールドフェイン大将には経験と構想力が備わり、揺れ動く世界での課題の中で増大する軍事力への期待にこたえる必要な資質がある。大将は重要な協力関係の構築と維持の仕方がわかっており、戦闘経験もあり、空軍の人員と資源のバランスの中で必要かつ的確な判断を下し、明日の空軍づくりに貢献できる。空軍力の優位性を次世紀へつなぐためにこれ以上優れた人物はいない」(ジェイムズ長官)
  5. 「ゴールドフェインは空軍兵士として戦場でのリーダーの模範であり、だからこそ空軍に必要な人物だ。空軍隊員と深く結ばれており、家族もともに応援することをためらわず、正しく空軍の任務の重要性を理解している。だがなんといっても本人は妻のドーンとともに国に尽くす大きな名誉の意味を理解している」(ウェルシュ大将)
  6. ゴールドフェインは飛行時間4,200時間超でF-16ファイティング・ファルコンのC型D型、F-117Aナイトホーク、無人機MQ-9リーパーを飛行させており、そのほかにT-37、T-38、MC-12Wの操縦経験がある。
  7. セルビア上空を飛行中の1999年には乗機F-16に地対空ミサイルが命中し撃墜されている。
  8. ゴールドフェインは機外脱出し、農地を横断し敵のパトロール部隊から逃れ救難ヘリコプターを待った。だがヘリの救難隊員が地上に降りゴールドフェインを機内に収容するところで発砲を受けている。機体に5発の銃弾が帰還後に見つかった。
  9. 2007年にエルパソタイムズ紙に当時の救難隊員には毎年スコッチウィスキー瓶を送り敬意を表していると語っている。「シングルモルトの極上品」だという。
  10. 今回の人選は国防長官アシュ・カーターが戦闘機での従軍体験がある人物に参謀総長の職を希望した事で実現した。イスラム国過激派に集中的な空爆作戦を実施中だからこその人選だろう。
  11. 2月にMilitary Timesの取材でゴールドフェインは空軍の中核任務は技術が進歩して世界情勢の変化があっても不変だと語っている。
  12. 「1947年の国家安全保障法で与えられたミッションは五つ。それぞれ時間がたったが大きく変わっていない。形は変わっても意味を改めてよく考えていく必要があるが、空と宇宙で優位性を確保するのが空軍の中核的な任務でありそれにより国に仕えるのだ」
  13. またゴールドフェイン人事でA-10ウォートホグにはISIS戦で耐用年数を伸ばすことになりそうだ。
  14. 「A-10全機退役の決定時はISIL出現の前でした。イラクから撤退し、アフガニスタンで大幅な兵力削減に取り掛かっていた時点です。ロシアが力を盛り返す前で、A-10退役を話題にしていたのですが、前提が変わり、素早い状況対応を迫られています」とゴールドフェインはMilitary Timesに語っている。
  15. ゴールドフェインが最初に直面するのはジョン・マケイン上院議員だろう。強力な上院軍事委員会の委員長のマケインは空軍上層部とは空軍上層部とはぎくしゃくした関係で知られており、先月もA-10退役案で空軍を叱責していた。
  16. だがゴールドフェインもマケイン議員も戦闘中に撃墜された経験で共通し友好的な関係が生まれるもしれない。
  17. 上院軍事委員会はゴールドフェイン指名の公聴会日程を決めていないが、マケイン議員は大きな問題や遅延は発生しないだろうと述べている。「本人の経歴には非の打ち所がないし、評判もすこぶるよい。耳にした派内ではきわめてすごい経歴の持ち主のようだ」
  18. ゴールドフェインは空軍士官学校を1983年に卒業し、パイロット養成課程をシェパード空軍基地(テキサス)で受けている。順調に昇進し第555戦闘機隊の指揮官をアヴィアノ航空基地(イタリア)で、第366作戦集団の指揮をマウンテンホーム空軍基地(アイダホ)で、第52戦闘機団司令をスパンダレム基地(ドイツ)、さらに第49戦闘機団をホローマン空軍基地(ニューメキシコ)の司令を務めた。
  19. 戦闘航空軍団の作戦立案責任者をラングレー・ユースティス共用基地(ヴァージニア)で2009年に、空軍中央軍の指揮を南西アジアで2011年から2013年にかけて、さらにこの二年間はペンタゴンの統合参謀本部で統括官を務めてきた。
  20. 昨夏に大将に昇進し空軍ナンバー2となった。国防功労章、勲功章、殊勲飛行十字章他を受けている。
  21. ゴールドフェインは軍人の家系で父は空軍、兄も空軍中将で退役している。娘が一人おり、現在は空軍勤務中。妻ドーンは学校教師で世界各地の空軍基地でで将校配偶者クラブの運営に携わった。
  22. 2001年には著書"Sharing Success, Owning Failure: Preparing to Command in the 21st Century Air Force."「成功を共有し、失敗を受け入れる。21世紀の空軍の指揮に備える」(空軍大学出版会)を刊行している。■

2016年4月27日水曜日

★★X-2テストフライトは50回程度で一年を想定、初飛行写真をお楽しみください



とても一年でテストが完了するとは思えませんので、防衛装備庁も予算構造を意識した説明に終始しているのでしょう。今後は航空自衛隊岐阜基地が同機のホームグランドですね。着実なデータ収集に期待しましょう。写真はすべて航空自衛隊撮影のものです。
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PICTURES: Tokyo plans 50 X-2 flights in coming year

26 APRIL, 2016
BY: GREG WALDRON
SINGAPORE
日本は三菱重工X-2技術実証機のテストに一年間合計50回程度のフライトを想定している。
  1. 同機の初飛行は4月22日に約25分間行われ高度12,000ftまで到達し最高速度は200ktだったと防衛装備庁(ALTA)が明らかにしている。
  2. 天候によるが二回目の飛行が今週実施されそうだ。次回は降着装置を引き込ませ高速度へ加速する。
Asset ImageJapan Air Self-Defense Force
  1. 予定通り一年間のテスト期間となれば防衛装備庁はステルス性、推力偏向、データリンク他の高性能技術のデータ収集が可能となる。テスト期間は必要により延長もありうる。
  2. 同機では斜めにとりつけた尾翼や空気取り入れ口の工夫などで低視認性を目指しているが、機体表面にステルス塗装は施されていない。ただしキャノピー表面のみに特殊ステルス加工がしてあると防衛装備庁は述べている。
Asset ImageJapan Air Self-Defense Force
  1. X-2は旧称ATD-Xとして1990年代から日本が進めてきた第五世代あるいは第六世代戦闘機に必要な技術を確立する事業の一部分である。合計15の案件あるうちでX-2が一番目立つ存在だ。その他には兵装庫の形状、データリンクなど高性能戦闘機に求められる要素に関連する技術の研究がある。
  2. 最終目標は得られた成果をF-3(仮称)新型戦闘機につなげることだ。新型機の製造決定は2018年に予定され、国産開発あるいは国際共同開発にするかの分かれ道となる。
Asset ImageJapan Air Self-Defense Force
  1. 日本がF-3を外国と共同開発すると決めた場合、共同開発国はX-2で集めたデータやほかの研究成果を共有できる。単独開発、国際開発と関係なく、F-3は相当高額な機体になりそうだが、それだけの価値はあると防衛装備庁担当官はみている。
  2. 日本はロッキード・マーティンF-35の導入を決めており、三菱重工業がライセンス生産するが、最も重要な戦闘機技術そのものは移転されない。このため国内開発により技術力の向上、製造技術の進展を図ろうとしている。■


無人水中機を巡り中国の技術スパイ事件が摘発されました 


中国関連のスパイ事件がまた摘発されました。今回は中国の国立大学が意外なところで米海軍とつながっていたという皮肉な話になっています。
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Details Emerge in Secretive Chinese Drone Case

Wendell Minnick, Defense News1:25 p.m. EDT April 26, 2016

A US and a Chinese flag wave outside a c(Photo: Th Eng Koon/AFP via Getty Images)
TAIPEI — フロリダ州在住の中国国籍女性が非合法活動計18件の嫌疑で起訴された。マネーロンダリングや無人水中機(UUV)の技術を中国に非合法に持ち出したためだ。起訴内容は4月21日にフロリダの連邦検察局が公表している。
それによるとアミン・「エイミー」・ユーはフロリダに本社を置くIFour International Inc.で2009年から2014年にかけて、オハイオにあるAmin Internationalで2002年から2009年に勤務し人民解放軍海軍(PLAN)および哈爾浜工程大学(HEU)のため装備品・システムを入手した。
ユーは米国に来る前にHEUの海洋制御装置システム研究部で部門長だった。
起訴状ではユーに協力者5名があり多くはHEUに勤務していた。ユーはカナダ、ヨーロッパ、米国内の企業から各種装置を入手し、輸出した装置はHEUよびPLANでUUVに使われているほか、遠隔操作水中機(ROV)や自律運用水中機(AUV)にも取り付けられた。
起訴状によれば共犯「A」がHEUとの窓口で、本人はHEU自動化研究学部の教授だ。「A」はHEUの海洋装備研究部長、海洋制御装置システム研究所長も務め、2002年に「A」はUUV開発研究国家プロジェクトの主任技術者に任命されている。
HEUのホームページを見ると同校は「基礎応用両面で艦船研究関連で科学技術の中心的存在で、PLANの高度技術装備開発の中核施設であり、高水準の海洋技術の開発役」と自らを表現している。
さらにHEUは「科学研究の方向の焦点を合わせ、イノベーション実施能力を引き上げ、国家の科学技術課題の解決、『973』構想(国家基礎研究事業)および『863』構想(国家ハイテク開発事業)、高度国防研究科学調査プロジェクトのいずれでも国家防衛戦略に沿って貢献していく」のだという。
HEUの学生は国際ロボサブコンテストに2011年から出場している。毎年恒例の公開学生競技はAUVSI財団が主催している。財団を設立したのは国際無人機システム協会(AUVSI)だ。コンテストが目指すのは自律型水中機の開発を早めることで次世代の技術陣に厳しい水中環境で現実的なミッションを達成する課題を与えている。学生チームはAUVを入手可能な技術を使い自製する。この競技大会では出場チーム、使用したAUV技術含めすべて公開している。
競技大会には米海軍宇宙海洋戦システムズ本部(SPAWAR)所属のトランスデューサー評価センター≪サンディエゴ)も主催者に名を連ねている。HEUチームは「北海龍王」“Aoming”の名称でAUVにはカメラ二基と音波発射装置がつき、魚雷発射やマーカー投下が可能だとHEUホームページは説明している。
起訴状では以下の物品を列挙している。
  • 水中聴音位置探知機、品番不詳の「出力発射装置」含む
  • 水中ケーブルおよびコネクター、AWQ/XSLとMSSK/MINLの各水中ケーブル含む
  • PC104コンピュータ処理ユニットを「ペンシルヴェイニア州の某企業」から入手、同ユニットはミッション、移動、画像誘導コンピュータ用に使うもの
  • マルチプレクサー907個、デジタル信号用に「カナダの某企業」より入手。
  • 水中プロセッサーセンサー、導電性・温度センサーで「ミニCT]センサーおよび「ミニIPS」センサー含む
  • 制御用スティック、ボタンとして「HG-XX制御スティック機構」含む
この記事に対しユーからは反応はない。■


★オーストラリア潜水艦案件、続報、フランスの反応から何を読み取るか



今回のフランス受注は日本にとって痛い結果になりましたね。Defense Newsは以下、オーストラリアとフランスから伝えています。まずオーストラリアから


Australia Chooses French Design for Future Submarine

Nigel Pittaway, Defense News7:12 p.m. EDT April 26, 2016

DCNS Shortfin Barracude submarine(Photo: DCNS)
MELBOURNE, Australia – フランスのDCNSがオーストラリアの次期潜水艦建造契約を勝ち取った。マルコム・ターンブル首相が26日発表した。
  1. ショートフィン・バラクーダ型の選択に本件を見守ってきた外部関係者の多くが驚かされた。DCNSはドイツのティッセン・クルップマリンシステムズや日本政府に対して劣勢だった。だがここにきて日本案が負けたとの情報がリークされていた。
  2. ショートフィン・バラクーダ・ブロック1Aはフランス海軍で就役中の原子力潜水艦バラクーダ攻撃潜水艦をやや小型化する構想だが詳細設計はこれから開始する。
  3. ターンブル首相は「DCNSを国際パートナーとして選定し次期潜水艦12隻の設計案鵜を進める。取引諸条件は今後協議する」と発表し、選定の大きな要素はオーストラリアの求める長距離航行、通常動力型潜水艦の要求内容に一番合致したからと述べた。
  4. ターンブル首相は同時に「オーストラリア国内でまず1,100名相当の雇用が実現し、サプライチェーン含めるとさらに1,700名分の雇用が生まれる」と発表。
  5. 12隻はすべてアデレードのASC造船所で建造する。DCNSは当初一号艦だけあるいは二号艦まではフランス国内で建造する提案をしていた。
  6. 日本政府は不採択理由の説明を求めており、オーストラリア政府はこれに応じる構えだ。

一方、フランスはもちろん今回の受注を大歓迎していますが、その裏でこれまであれやこれやの政府支援があったことがうかがえます。

France Celebrates ‘Historic’ Submarine Win in Australia

Pierre Tran, Defense News7:10 p.m. EDT April 26, 2016
PARIS – フランスはDCNSが387億ドル相当の次期潜水艦建造で事業者に選定されたのを歓迎してフランソワ・オランド大統領自らがパリの同社本社を訪問した。オランド大統領は統合参謀総長、内務相、外務相を伴いDCNSを訪れ本件が政治的にも経済的にも重要な成果であることを示した。
  1. 「これは歴史的な事業、我が国歴史上最大の武器輸出だ」と大統領府は声明を発表。選定の理由として両国政府間の意思疎通がこの五十年間で「戦略的水準」になったことを挙げた。
  2. フランス国防相ジャン-イブ-ルドゥリアンはオーストラリア兵士が倒れたソンムの戦い(第一世界大戦)のアンザック記念日をオーストラリア総督とともに迎えたと伝えている。
  3. 選定により設計業務を期間三年で行う契約の協議がはじまり、2017年早々には締結されるとDCNS幹部は述べている。
  4. 今回の選定はタレスにとっても朗報だ。タレスはDCNSの株式35パーセントを保有する。(残り65パーセントはフランス政府保有 タレスの作業量は今回の事業で10億ユーロ相当になる。
  5. DCNS会長エルヴェ・ジローは仏政府兵器調達本部、海軍参謀総長ベルナール・ロジェル提督、シュナイダーエレクトリック(オーストラリアに相当のビジネス拠点を置くフランスエネルギー関連企業)に謝意を伝えている。
  6. 12隻建造契約によりDCNSは協力企業も含めて4千名の雇用につながり、ブレスト、シェルブール、ロリアンの各事業所が関与するとDCNSは発表。なお、ブレスト、ロリアンはそれぞれブリタニー地方にあり、ルドゥリアンは地域協議会の会長を務めている。
  7. 総選挙が来年に控えるフランスでは雇用は大きな要素で、失業率は10パーセントのまま推移しているからだ。■


★オーストラリア潜水艦建造でフランス案が採択された理由



今回の結果には驚かされましたが国内では、中国の意図が裏にあったのではとの意見(ターンブル首相は中国と近い)、面倒な国外生産にならなくてよかったという安堵の両論が見られますが、選考の仕組みを考えると中国云々を言うのはいかがなものでしょうか。むしろ艦の設計でフランス艦に米系装備を取り入れさらに通常動力化する技術上の課題、国内造船業の救済として国内生産を選択したオーストラリアが予定通りの建造ができるのか、就航したあとの作戦運用が果たしてオーストラリアが想定する広大な海域で円滑に実施できるのかがポイントになるでしょう。日本側は熱意がないと見られていたことがわかりますね。きちんとした選定がされているのがわかりますので負け惜しみはやめましょう。
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French Design Wins Australia’s Next Generation Submarine Competition

By: Mike Yeo
April 26, 2016 9:06 AM

DCNS Shortfin Barracuda Block 1A. DCNS Photo
DCNSのショートフィン・バラクーダ・ブロック1A DCNS Photo

MELBOURNE, AUSTRALIA — フランスのDCNSが注目のオーストラリア総額385億ドル相当のプロジェクトSEA1000新型潜水艦建造計画で受注に成功した。オーストラリア海軍(RAN)のコリンズ級6隻の後継艦となる12隻の建造が始まる。
  1. オーストラリアのマルコム・ターンブル首相はマライズ・ペイン防衛相と並んで発表に臨みフランスのショートフィン・バラクーダ・ブロック1A案がドイツのティッセン・クルップ・マリンシステムズ(TKMS)および三菱重工業が代表の共同事業体を破り採択されたと明らかにした。ペイン国防相は競争評価手順 Competitive Evaluation Process (CEP) に従い厳正かつ規定通りに選考したと述べた。
  2. フランスの支援の下でオーストラリアのASCが南オーストラリア州の造船所で合計12隻を建造する。同社はコリンズ級潜水艦を建造しており、現在は稼働中の各艦の補修契約を受けている。
  3. ターンブル首相は談話で選定チームはDCNS提案がオーストラリアの求める航続距離と航続性で「疑いなく」一番近い内容だと結論を出し、またセンサー性能も優秀でステルス性にも優れ、同時に「価格、日程、実施面、可動期間中の支援および「オーストラリア産業の参画度合」が優秀だったと述べた。
  4. CEPは15か月におよび、新型潜水艦調達事業を率いるグレッグ・サムット少将を主査とし退役米海軍少将スティーブン・ジョンソンが総括役となった。後者はオハイオ級後継艦となる弾道ミサイル潜水艦SSBN(X)も担当している。
  5. 選考過程は中立の立場の専門委員会が監視し、ここに元米海軍長官ドナルド・ウィンター教授が入り、同時にポール・サリバン退役海軍中将およびトーマス・エクレス退役米海軍少将も加わっている。
  6. 入札参加三社にはオーストラリア国内で完全建造、海外で完全建造、海外建造と国内建造の組み合わせの三案をそれぞれ提案するよう求められた。
  7. DCNS案のショートフィン・バラクーダ・ブロック1Aはフランスのバラクーダ原子力攻撃潜水艦を通常動力にしたもので、同社は今年中にも最終設計案でオーストラリア政府の承認をうけたいとするが、実務上の話し合いの行方次第だという。
  8. 新型艦は「全長90メートル超、潜水時排水量4,000トン」とDCNSオーストラリア法人のCEOショーン・コステロは述べた。フランス提案では最新ステルス技術も完全公開するとしている。
  9. オーストラリアは米豪共同開発Mk48 Mod7共用広帯域高性能ソナーシステムCommon Broadband Advanced Sonar System (CBASS)を搭載した魚雷の運用を求めており、戦闘関連のシステムは米国製とし、ジェネラルダイナミクスのAN/BYG-1(コリンズ級で搭載)の発展形の搭載を想定している。
  10. そこでショートフィン・バラクーダ・ブロック1Aが採択されたことで多少のリスクがないわけではない。特に技術面では原子力推進を前提にした艦体に通常動力を搭載することになる。オーストラリア戦略研究所専務理事のペーター・ジェニングスはそれでも「ドイツの新型艦や日本提案にあった大幅な改修」に比べれば大した問題ではないとする。
  11. 今回の結果は日本には特に打撃だろう。安倍晋三首相は日本案に相当の力を入れて、これまでの平和主義から転じて動的な役割を安全保障や防衛面で示す政策の一部ととらえていたからだ。またオーストラリアとの戦略的なつながりを強化して中国の一層の域内拡大を抑えたいねらいもあった。
  12. ロイターによれば中谷元防衛相は今回の選定結果を「大変残念」と述べ、「オーストラリア側へは不採択理由の説明を求めていく」と発言したという。
  13. ただし外部には日本の行政官と民間防衛企業は本国政府の熱意を共有せず、フランスやドイツに比べて営業積極性に欠けていたとの評がある。多分に防衛装備の海外輸出契約の経験がないためだったのだろう。
  14. TKMSからは結果は残念だが、同社としては「誠実かつプロ意識」で行われた選考過程を尊重するとの発言が出ている。■


2016年4月26日火曜日

★楽しみな次世代垂直離着陸機、ベルV-280の機体が姿を見せる



この記事だとベル案の方が優位に見えますが、実は両案それぞれ欠点もあるのでしょうね。米陸軍は大変な決断を迫られそう。でも敗者も民間向けに大きな需要が狙えるかもしれません。ちょっと待ってください、ではオスプレイはあだ花になってしまうのでしょうか。それにしてもSB>1という呼称は落ち着きませんね。
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Rites of Spring: Mating V-280 Wing And Fuselage

By RICHARD WHITTLE on April 21, 2016 at 4:01 AM

V-280 wing mating April 2016 - 1V-280 Valor wing mating at Bell Helicopter Amarillo

ベルヘリコプターのアマリロ工場(テキサス)は春も真っ盛りだ。新しい生命が順調にいけば9月に生まれる。V-280ヴァラー中型ティルトローター輸送機の主翼部とナセルが胴体部分につながれた。ナセルとはV-280のローター二つを支えるポッドのことでローターを離着陸時に方向転換させる部材だ。
「3月にナセルを主翼に接合させました」と語るのはヴィンス・トービン(ベル高性能ティルトローター機およびV-280事業統括副社長)だ。「4月は各部を機体と同色に塗装しました。主翼と胴体の接合の前段取りをしています」 主翼-胴体の接合で配線、油圧系統、複合材表皮をすべてつなげるのは4月末になると米陸軍航空協会の総会(4月28日-30日、アトランタ)にちょうど間に合う形で大きな進展となる。
V-280はV-22オスプレイより小型だがベルがJMR-TD共用多用途技術実証機として参入を目指す重要な機体だ。JMR-TDは陸軍主導で進める国防総省のFVL次世代垂直離着陸輸送機の第一弾となる。FVLは回転翼機の速力上限と関係なく運航できる垂直離着陸機だ。V-280の巡航速度は280ノットと通常のヘリコプターの二倍以上になる。
SB1-Sikorsky-Boeing-JMR artist conceptionArtist’s conception of SB>1 Defiant
ロッキード・マーティンの子会社になったシコルスキーボーイングと組み別のJMR-TDを自社開発X2(2010年に非公式速度記録290マイル時を樹立)を元に製作中だ。シコルスキー=ボーイングチームはSB>1ディファイアントの最終組み立てを今夏に開始する。同機は同軸ローターと推進プロペラの複合ヘリコプターで高速を狙う。ディファイアント、ヴァラーの両機は2017年中にフライトテストを開始する。
各社とも陸軍UH-60ブラックホークはじめ派生型多数が各軍で運用中の機体の後継機種としての採用ををめざしている。ベルV-280ではまず陸軍採用を期待し、その後海兵隊はじめ各軍への導入を期待するとトービンは語る。
陸軍はV-22となった開発事業から1982年開始直後に抜け、オスプレイは海兵隊、空軍特殊部隊が運用中で、海軍と日本自衛隊がここに間もなく加わるが、高コストと仕様内容から陸軍は関心を示していない。だがベルはあえてティルトローターのV-280で陸軍に目を向けさせようとしている。
V-280 Army with tanksArtist’s conception of Army V-280
オスプレイでは翼端のナセルがエンジン、ローターを回転させるが、ヴァラーのエンジンは翼端に水平方向に固定する。V-280は地上に駐機するとローターは上方を向き、艦上の甲板を排気で傷つけたりガス発火を起こさない。V-22ではこれが発生している。エンジンを水平方向に固定したV-280では機体側面にブラックホーク同様のスライドドアが付き、兵員は楽に移動できる。オスプレイは後部ランプ方式で異なる。またオスプレイのハリケーン並みのローター吹きおろし突風はV-280では発生しない。一方、ヴァラーの最大機体重量は38,000 lbs.でオスプレイの52,600 lbs.と差があるが、V-280ではローター径は35フィートとオスプレイの38フィートとほぼ同じだ。大口径ローターで機体重量が軽いことでローター回転面の風圧はオスプレイの三分の二となり、吹きおろし効果も相応に低くなる。
主翼と胴体が接合したことで、トービンは次は尾部構造の接合だとする。ヴァラーではV字型でオスプレイのH字型と異なる。来年の今ごろはエイビオニクス、飛行制御系コンピュータ、ジェネラルエレクトリックT64-GE-419エンジン二基を装着しているだろうとする。「来年4月に地上走行、9月に初飛行となるでしょう」とトービンは述べた。■



北朝鮮がムスダンミサイル発射体制のまま待機中の模様




North Korea puts midrange missile on standby, report says

Associated Press
Published: April 26, 2016
korea defectorAP
脱北者が金正恩の写真に着色水入り風船を投げつけている。ソウルでの抗議集会にて、4月26日撮影。LEE JIN-MAN/AP
SEOUL, South Korea — 北朝鮮が新型中距離ミサイルを即発射できる体制に置いているとの報道が26日出た。
  1. 報道は北朝鮮が潜水艦から弾道ミサイル発射に成功したと発表して二日後にあたり、米韓合同演習はまだ継続中だ。
  2. 韓国の聯合通信によれば北朝鮮が中距離ムスダンミサイルの発射体制に入っている証拠を軍がつかんだと氏名不詳の韓国政府関係者が述べている。
  3. これに対し韓国国防省は情報は把握していないと述べた。韓国政府関係者が北朝鮮の軍事装備の話題を回避することはよくある。軍事極秘情報がからんでいるためだ。
  4. 聯合通信によればムスダンミサイル二発が待機状態にあり、北朝鮮は北東部に配置し、今月初めに一発を発射したという。
  5. 韓米両国の関係者からは4月15日建国の父故金日成の誕生日に北朝鮮がミサイル一発を発射したが、この際のミサイルがムスダンだったか公式に確認されていない。米関係者によれば発射は失敗に終わったという。
  6. ムスダンの射程距離は3,500キロと米軍のアジア内各基地を標的にできる。
  7. 北朝鮮は米韓の毎年恒例の春季演習の際にこれまでも軍事テストを繰り返してきている。北朝鮮は米韓演習を侵攻作戦のリハーサルと受け止めている。今回の演習は今週末終了する。
  8. 韓国大統領は北朝鮮が第五回目の核実験を準備中と発言しており、核実験場で活動が盛んになっているとの報道も出ている。
  9. 五月早々に労働党大会があり、核実験はその前に実施されると見るアナリストは多い。これにより金正恩が権力基盤を強固にし、国内を威圧することができるためだ。■

2016年4月25日月曜日

★F-22生産再開>本当に実施したらどうなるのか 専門家による検討結果



政治家の発想から始まった今回の案件ですが、どこまで真剣な議論なのかわかりません。とりあえず専門家の見地から実施できるのか、実施するとしたらどうなるのかを手短にまとめていますのでご参考に供します。ゲイツ長官がせっかく正しい結論を出していたのにここにきて戦闘機万能主義がまた出てきたのでは航空戦力の正常な進化が数十年後退しませんかね。とはいえ日本、イスラエルが生産に参加できる条件なら検討してみるのもいいかもしれません。
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Want More F-22s? Here’s What That Would Take

APRIL 22, 2016 BY MARCUS WEISGERBER

Lockheed Martin F-22 Raptors line up on a runway in 2006.LOCKHEED MARTIN

ラプター生産ラインは閉鎖から5年近くたっている


米議会がF-22ラプター戦闘機の生産再開の検討を空軍に求めているが、これは小切手を切って照明を再点灯するような簡単な話ではない。

2017年度国防予算認可法案の審議で下院軍事委員会から空軍に194機のラプターを新規製造した際の検討を求めている。実現すれば空軍が算定した必要機数381機に十分となる。同委員会の委員長マック・ソーンべリー議員(共、テキサス)他は世界は2009年から変化したと主張。ロバート・ゲイツ国防長官(当時)がF-22製造を187機で打ち切り、F-35共用打撃戦闘機に比重を移したのがその年だ。ステルスで超音速巡航飛行が可能なラプターは敵となる相手のない制空戦闘機としての地位を数十年は保持すると見られていたがこれは楽観的過ぎると判明した。
「ロシア、中国両国が予想を上回る高速の機体を開発しています」とジェイムズ・ホームズ中将(空軍参謀次長、立案要求部門担当)が上院軍事委員会の公聴会で3月8日に話している。
「増産が有効な回答になるのかわからないが、選挙区の住民会合で支持者からこの件が持ち出された」とソーンベリー議員は国防記者朝食会で述べている。「当時から議会ではあの決断には疑問があり、今回もペンタゴンがどう言うかが関心の的だ。答えは『つじつまが合わない』になるかもしれない。わからないがこの質問は出していく」

答えは想像がつく。言うは易し、だ

資金はどこから確保するのか

まず空軍は予算を見つけなければならない。現時点で予算はない。すでにF-35の調達機数を削り予算削減に対応しているくらいだ。さらに空中給油機、ステルス爆撃機、レーダー搭載機、捜索救難ヘリコプター、ジェット練習機、新型エアフォースワン、ICBM運航用のヘリコプター調達が決まっている。「F-22生産再開となれば他の機材が犠牲になる」と戦略国際研究所でペンタゴン予算を専門に見ているトッド・ハリソンは言う。

ロッキードがF-22最終組み立てラインを閉鎖する2年前、RAND研究所が75機を追加生産した場合の試算で170億ドルが必要とはじき出した。インフレを加味し、194機まで拡大した場合の最終費用は300億ドル近くになるだろう。

「数百億ドル規模で新型機を買うというが空軍は近代化改修が必要な機材が多数あり、正気を疑う話だ」(ハリソン)

一方でペンタゴン予算の上限が2021年まで設定されており、議会と次期大統領がこれを反故にするのなら他の予算費目を削って予算を確保する必要があるということだ。

生産再開の費用を海外販売で外国に負担させるのはどうか。日本、イスラエル、オーストラリアはそれぞれラプター導入の希望を表明していた。だがここには落とし穴がある。同機の海外販売は違法だ。その根拠となる法案を作成したデイヴ・オベイ下院議員(民、オハイオ)で2011年に引退している。だが今回検討を求めている議員連はオベイ修正法案が足かせになるとは見ておらず、空軍には海外需要の評価も同時に求めている。

機体装備の再設計をどうする

次の問題はチャンスになるかもしれない。新型ラプターに新型電子装備を装備することだ。原型の電子装備仕様は陳腐化している。何しろ初飛行が1997年で配備開始が2005年である。空軍は現存する183機のラプターに15億ドルでソフトウェア、ハードウェアの更新の真っ最中だ。

新型電子装備でF-22に新しい息吹を加え、耐用年数を延長することができる。生産を再開するとしても初号機の完成は5年以上先のことで、現時点の標準で作りこめば完成した時点ですでに数年前の技術となってしまう。これとは別に機体内部のハードウェア各部が旧式化しており、新型に切り替える必要もある。

そこでF-22Bの名称で高性能コンピュータ処理能力やレーダーをF-35から流用すればよいとの主張がある。

「F-35の優秀なミッション装備には優秀な機体が必要で、F-22は優れた機体だが優秀なミッション装備が必要だ」とTeal Groupのリチャード・アブラフィアは指摘する。双発のラプターはライトニングIIよりはるかに敏捷性ですぐれている。

F-22Bにはプラット&ホイットニーが開発中の新型B-21ステルス爆撃機用の極秘ジェットエンジンを搭載すれば一気に次世代エンジン技術が利用できるとアブラフィアは言う。

F-22内部の装備でアップグレードは必要だが、機体構造は十分実用に耐えるとアブラフィアは見る。

どこで生産するのか

次にどこで機体や数々の専用部品を製造するかが問題だ。F-22ではロッキード、ボーイング、プラット&ホイットニーの三社が主要契約企業だったが、同時に全米44州で1千社超の企業がF-22の各種部品製造に携わっていたと議会調査部がまとめている。ロッキードによれば全部で25千名相当の雇用が同機から生まれていた。

同機の組み立て場所だったところは別事業で使用中だ。ボーイングのシアトル工場はラプターの主翼部分や機体後部を製作していたが、今は民生用で稼働中だ。プラットもラプター向けにF119エンジンを生産していたが、現在はティンカー空軍基地(オクラホマ)で同エンジンの点検修理を行っているだけだ。

最終機体組み立ては空軍の第六工場内で行っていた。ジョージアのドビンス空軍予備基地内の施設だが、ロッキードは現在はそこでC-130Jを生産し、F-35共用打撃戦闘機の中央主翼部分を製造するほかC-5ギャラクシー貨物機のオーバーホールを行っている。

F-22最終号機が空軍へ納入されたのは2012年初めのことで、すべての治工具類、生産設備は梱包されシエラ陸軍保管施設(カリフォーニア)へ送られた。

仮に生産用のスペースが見つかり、治工具類を再度可動開始させても、F-22製造に必要な技術技能を新規作業員に体得させるのは並大抵ではない。ロッキードは生産終了前に可能な限りの知識情報を集めており、「F-22組み立て工程はそれぞれ録画、写真撮影、記録し保管してある」と同社は2012年に発表していた。

だがハリソンはそれは一部にすぎないとする。「映像は助けになるが、技能習得の効率はそれだけでは高くならない。結局、新規採用の各自が一から学ぶことになるのではないか」

すべてを勘案すると空軍が生産再開を提言する検討結果を出し、資金のめどがついて、設計に手を入れて、サプライチェーンが再建され、生産用のスペースを確保し、新規の作業者が訓練を受けて初めてラプター新型が実現するが、その完成は2020年より先のことだ。

「10年近く閉鎖したままの状態を再起動するわけですから」とハリソンは言う。

だが安全保障を真剣に考えれば、時間と労力をかける価値があると見る向きもあろう。F-22を巡りゲイツ長官と対立した当時の空軍参謀総長T・マイケル・モズレーは今でも空軍はもっと多くのラプターが必要だと信じている。「生産再開は絶対必要だ。これで空軍戦力は新しく向上できる」という。■


本稿の執筆者マーカス・ワイスガーバーは Defense One のビジネス記事編集者で、ビジネスと国家安全保障の接点が専門。国防、安全保障関連の記事を多数執筆しており、Defense Newsでペンタゴン特派員を務めたこともある。