2017年11月18日土曜日

中国の台湾侵攻等野望を止めるのは周辺国のA2/AD戦略だ



うーん、この通りなら中国の軍拡が進んでも日本含む周辺国がA2/ADを独自に整備すれば、中国はさらに軍事支出をふやしいつか破綻するのではないでしょうか。もちろん周辺国も侵攻を受けるリスクが増えるわけですし、中国の既得権も認めることになるわけですが。一種の開き治り戦略ともいえるでしょうね。両陣営が戦わずに勝利をそれぞれめざすことになります。それにしても中国に同盟国がないことが救いで、それだけにふらふらする韓国の動向が非常に気になるところです。


Why China Can't Conquer Taiwan in a War

中国が台湾を背圧武力制圧できない理由
November 17, 2017


第19回党大会で権力基盤を固めた習近平主席が内向きになる米国を見てアジア太平洋を中国の思いのままにする好機と見ているかもしれない。この度発表された研究成果ではこの点に触れつつ、北京に周辺国を敗退させる軍事力はないと分析し、とくに台湾占領は無理だとする。
  1. 研究をまとめたのはマイケル・ベックリー Michael Beckley(タフツ大准教授(政治学))で学術誌International Securityに掲載した。ベックリーは米軍支援が最小限でも中国周辺国が各国で接近阻止領域拒否戦略を取れば中国軍の阻害は可能と主張。
  2. 「東アジアで新しい軍事力バランスが出現の兆候があり、米国は中程度のリスクで兵力増強が可能だ」「このバランスは今後も安定したままとなる。各国のA2/AD効果を打ち破る兵力投射能力は中国に実現しないためだ。根拠は兵力投射部隊の整備はA2/AD部隊整備よりはるかに大規模な予算が必要となるからだ」と述べている。
  3. A2/ADは米国の介入をさせない中国戦略として語られているが、ジェイムズ・ホームズ、トシ・ヨシハラ、アンドリュー・クレピネヴィッチ等は米国はアジア同盟国とともにこの戦略を中国相手に展開すべきと主張している。中国を困難にさせればよいというのだ。ベックリーは「この戦略では米国は東アジア制海権は断念するかわりに周辺国を助けて中国の制海権制空権確立を困難にすればよい」と説明。
  4. ベックリーは新戦略を想定される軍事衝突シナリオ数点で試した。その一つが台湾海峡からの中国侵攻だ。そもそも揚陸侵攻作戦は難易度が一番高いが、侵攻部隊の移動途中を狙える精密誘導兵器の時代では一層困難になる。
  5. 台湾侵攻作戦の成功には中国は航空優勢、海上制圧の完璧な確立が必須だ。「台湾に防空体制や攻撃手段が温存されれば中国の侵攻は不可能となる。台湾海峡を移動中の中国艦艇を攻撃できる制海権を台湾が維持するからだ」とし、中国にはミサイル相当数があり開戦直後に台湾防空体制を破壊するといわれるが、台湾を無力化するには完全な奇襲攻撃でない限り無理とする。台湾の早期警戒が有効なら作戦機材を国内36箇所の航空基地、民間空港さらに高速道路に分散させ緊急運用体制を整えるだろう。台湾には移動式ミサイル発射機、対空兵器もあり艦船潜水艦も巡航ミサイルで中国部隊を攻撃するだろう。
  6. ベックリーが指摘するように中国が防衛体制を先制攻撃ですべて壊滅させるとは考えにくい。まず台湾には高性能早期警戒防空体制がある。米国でさえ第一湾岸戦争でここまでの実力がないイラク防空網や1999年のセルビアで完全破壊できなかったではないか。
  7. 当時の米国を上回る実力を中国が示したとしても揚陸作戦の成功は確実とは言えない。例えばベックリーは上陸に適した地点は台湾海岸線の1割しかないと指摘し、台湾は一部地点に重点的に防御態勢を敷けばよく中国上陸部隊は数の上でも劣勢になるという。
  8. そうなると最大限に楽観的な評価(北京の視点)をつかってまでも中国は台湾占領に躍起となるだろう。ベックリーは「米国は侵攻部隊を失敗させ戦況を一変させるべく米軍艦船や非ステルス機を中国のA2/ADに晒せる必要のない対応方法多数がある」と述べている。具体的には米軍による試算では「台湾の沿岸部に1万ないし2万ポンドを投下してPLA侵攻部隊をなぶり殺しにする」必要がある。この役目にはB-2爆撃機一機あるいはオハイオ級潜水艦一隻を投入すればよい。
  9. さらにベックリーは東シナ海、南シナ海の制海権を中国は簡単に確立すできないと指摘する。ヴィエトナムや日本の抵抗をその理由にあげる。中国が地域内で軍事優位性を手に入れる可能性がは一般に考えられるより低い。このため中国は戦わずに勝利する戦略をとっているのであり、今までのところ比較的成功していると言える。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of The National Interest.
Image: Reuters


新型英空母クイーン・エリザベスの就航は12月7日に


Queen Elizabeth to formally join fleet

クイーン・エリザベスの就役近づく

  
Source: Crown Copyright

Tim Ripley - IHS Jane's Defence Weekly
17 November 2017
英海軍クイーン・エリザベス級空母一号艦が建造業者による海上試験をこの度終了し、12月7日に艦隊編入される。
国防相ギャビン・ウィリアムソン Gavin Williamson が11月16日にイングランド南西海上で公試中の同艦を訪れ発表した。
就役式典にはエリザベス女王が参列しポーツマス海軍基地で行う。同艦の建造はエアクラフトアライアンスが行った。式典後に正式HMSクイーン・エリザベスとなる。
同艦は10月30日出港し建造者公試験第二段階を開始している。狙いは通信機能、レーダー等のセンサー機能だ。オープンソースAISトランスポンダー追跡によれば同艦はランズエンド周辺からコーンウォール北海岸を航行していたのがわかる。■

★中国が超大国になれない5つの理由




中国の経済崩壊がいつになるのか、しびれを切らしている方もいるでしょうが、永久に今の虚偽は続けられないはずです。その日が来た時になんとか世界に影響を最小限にしてもらいたいものですが、そうはいかないでしょう。北朝鮮崩壊どころの話ではありません。以下の記事を読むと中国指導部の悩みがわかるはずですが、そんな悩みは顔に出さず強硬姿勢を貫くのは共産党独裁体制で培われた能力なのでしょうか。いつまで張り子のトラを維持できるのでしょうか。

These 5 Things Could Challenge China's Rise

中国の台頭を阻む5つの要素
China’s fear of domestic fracture persists even as Chinese focus on the outside world increases.
対外世界への関心が高まっても中国は国内分断に恐れを抱く
November 14, 2017


ジョージ・W・ブッシュ大統領が胡錦涛主席(当時)に夜眠れなくなる悩みがあるのか聞いたところ雇用創出と答えたそうである。毎年中国に加わる25百万人に仕事を提供するにはどうしたらいいか。
 胡錦涛時代の中国と今は違う。「平和理に中国を発展させる」は「偉大な中華国家の再生」に道を譲り、先月の第19回共産党大会で習近平は中国は「世界の中央舞台に進みつつある」と堂々と宣言した。
 今日の中華人民共和国(PRC)は自信たっぷりで南シナ海、初の海外基地、アジアインフラ投資銀行、一帯一路まで世界規模で中国の足場構築を進めている。では中国指導部はどれだけ変化しているか。外向きの自信と裏腹に最高指導部には心配が絶えないのである。
 中国共産党(CCP)はの脳裏を離れない問題を取り上げてみた。地理、米国、他勢力の動向、「分離主義」、経済安定の五つだ。

地理
中国の拡張主義と自信の強さの背景で触れていないが戦略的地理条件は中国に不利だ。
 中国は世界最大の交易国であり、繁栄の持続のために開かれた海上交通路が必要だ。だが中国の海洋アクセスは大きく制限され敵に回りそうな日本、台湾に挟まれた海峡を通過する必要がある。南シナ海へのアクセスはマラッカ海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡を通らないといけない。
 この戦略的弱点を克服するべく中国は海軍力を整備し、人工島を南シナ海で建設し、一帯一路を提唱しているが、これらはまとめて一つの政策と見るべきだ。エネルギーを例に挙げると中国の2016年エネルギー需要の64%が輸入だったが2035年には80パーセントに上昇する見込みと国際エネルギー機関は予測している。一帯一路の目玉プロジェクトが中国-パキスタン経済回廊で輸送とエネルギーインフラをグワダールから新疆まで延ばすのは中国のエネルギー供給源が多様化している証だ。中国の海外投資に軍がついてくる。人民解放軍(PLA)が初の海外基地を開設したジブチは戦略的な通過地点でPLAはインド洋展開で海賊対策に使うと説明している。「動的防衛」に政府あげて取り組み始めている。
 中国の目指すグローバル展開を国力増大の印と受け止めがちだが、世界各地に権益を有して危険度が高まっているためと理解することも可能だ。習近平の「中国の夢」の成功はひとえに戦略地点数か所の制圧にかかっており、これが実現して中国指導層は初めて安心できる。

米国
「いつの日か、米国が西太平洋から手を引く時が来る。世界その他地区でも同じことが起こっているように」---毛沢東
 CCPはアジアから米国の排斥を目指している。今日の中国はアジアの大国である以上にグローバル大国である。先に述べたように中国が必要とする資源は国境付近だけでは調達不可能だ。中国軍事力の増強は中国の交易と軌を一にしており、ゆくゆくはグローバル規模に拡大するだろう。ただし中国の経済、軍事両面の整備は圧倒的な超大国である米国の影の下で進めざるを得ず、あくまでも中国の発展を妨げるような挑発はできない。
 米国は実質GDP、軍事力、グローバルな同盟関係、提携関係、兵力投射の経験で中国に対して優勢だ。だが米国は各地に目を配る必要があり、優先順位を巡り各案件が競い合うのが現状だ。中国指導部はパックスアメリカーナ下で国力を慎重に増進させる必要があり、中国の台頭を米国が不快に感じ、米国の指導力に真っ向から挑戦していると受け止められるのを恐れる。ここから中国に厄介な事態二つが出てくる。ミサイル防衛と経済報復措置だ。
 中国指導部は現在を「戦略的好機の期間」だとし誰にも邪魔されず国力が増進できるとみている。南シナ海から一帯一路まで中国は強気だが実は計算ずみリスクの上で米国を挑発せずPRCとして可能な範囲で野望を推し進めているのだ。

その他有力国の興隆や復帰
ヘンリー・キッシンジャーが米中の今後をドイツの興隆が引き起こした英国との第一次大戦時の関係と比較している。だが自身も同じ興隆と言っても中国とドイツで決定的な違いがあると説明している。ドイツはヨーロッパで諸帝国が崩壊した中で大国になったが中国は有力国が取り巻く中で大国にのし上がった。
 中国の登場は力の真空で発生したわけではない。PRCは米国のみならず有力国多数と競う必要があり、各国が結束してPRCに対抗する動きが見えてきた。さらに各国はPRCより地理面で優位で中国のジレンマはさらに深まりそうだ。
 中国は交易エネルギー資源の輸送をインド洋に依存しているが、インドが着々と力をつけており、米国、オーストラリア、日本等と連携して軍事力経済力を放射するだろう。日本は急成長こそないが大国であることに変わりなく米国との同盟関係がある中でPRCとの一戦を我慢できるかを問われそうだ。インドネシアはGDPが一兆ドルの大台に近づく急成長国であり、海軍力を整備し中国への対抗勢力になりうる。ロシアは人口問題を抱え経済も停滞中だが軍事大国であることに変わりはない。中露軍事・経済協力関係が現在は実を結んでいるが、ロシアが長期的に中国の利益と同調したままでいられるかはわからない。中国の台頭が既存大国の中で実現していること、他の大国がPRCには危険な存在になる可能性があることを改めて想起させられる。
 米主導の「包囲網」や「封じ込め」はPRC発足後直後から存在しており、米国がアジアの他国と画策するのを「冷戦思考」と中国で官民あげて非難しているが中国自身の行動と領土主張がPRCへの反感と行動を招いていることは理解していないようだ。CCPは各国が団結して立ち上がることを重大問題と認識している。

分離主義
「台湾、澎湖諸島、東北四省(満州)、内外蒙古、新疆、チベットはそれぞれが砦で国防に役立つ。一つでも分離独立すれば国防に支障をきたす」--蒋介石
 中国の国内治安維持予算は国防予算とほぼ同額だ。つまり国内安定の確保が重要課題であることを示している。新疆からチベットへ、香港から台湾へと中国の恐れる国内分断の可能性は国外への関心が強まっても変化がない。2015年版の中国国防方針では「政治的保安体制と社会秩序」の維持は「難易度の高い任務」だと強調し、チベット、ウイグルの独立運動に言及している。さらにCCPは「分離主義」を引き続き警戒し、「反中勢力は国内で『色の革命』の扇動を断念していない」と述べていた。
 中でもある地域でCCPが行っていることが参考になる。「一国二制度」を香港で実施することに失敗したことは台湾にもあてはまる。台湾は「香港化」を恐れ本土による統一で自由が奪われることを警戒している。
 香港には「雨傘運動」でアイデンティティーに目覚める動きがある。2016年調査では59パーセントが台湾人だと自認したが、中国人と認識しているのは3パーセントしかなかった。CCPは経済統合が進む一方で政治面での同化はまだ道途中だと見ている。
 政治面で「国家再生」に統一は避けて通れない課題だ。また戦略的意義もある。台湾は第一列島線の要所であり台湾を手中に収めれば中国は近海を支配できる。中国軍教本では「台湾を中国本土に統合すれば日本の海上交通路は中国軍用機の攻撃範囲に完全に収まる」とあり政治、戦略双方の目標が一致している。
 新疆でも国内治安と国防は一致している。中国-パキスタン経済回廊がインド洋に対する陸上アクセスとなり、困窮するパキスタンを助けるだけでなく中国の北西地方の支配を継続する手段となる。新疆やチベットに漢族が大量移住したとはいえ中国西半分の各省は全国人口の6パーセントにすぎず、漢族以外の民族は弾圧を受けつつも強いままだ。
経済安定度
中国経済は減速中だ。CCPは経済学者が呼ぶ「経済再バランス」過程にあり、輸出から国内消費に経済成長の主役を移そうとしている。だが中国は増え続ける巨額債務にも直面している。とくに国営企業に集中している。政府には財政金融対策があるが、信用危機と資産バブルの破裂を経験するのはまもなくかもしれないし、債務も維持できない規模になりそうだ。景気刺激策より変革を求める声があるが、真の構造改革が実施されていない。ゴースト都市、非効率な企業への支援、不良債権や要注意先債権の存在がその証だ。このままだと刺激効果が減り債務が増えるだけで移行が困難になるだけだ。
 「Made in China 202」のような運動で中国のヴァリューチェーンを引き上げようとするものだしているが、欧米で技術取得に奔走している姿からCCPが経済構造の移行に執心していることがわかり、生産性を引き上げながら経済不況を避けようとしているのは明らかだ。ただしCCPの全能力をもってしても実現には数年かかるほど巨大規模の事業だ。
結語
中国の台頭は深刻な問題と並行しており、CCPがめざす「国家再生」の実現は困難になる。中国が大国になり力のバランスが歴史的な変化となったが、習近平の「中国の夢」の意味を一層多くの諸国が悟るにつれて力のバランスがPRCに逆作用になる可能性もある。中国の軍拡や経済力の増大に対して中国のイデオロギー輸出に各国が反感を感じ始めている。PRCが恐れる事態が生まれつつあると言えよう。中国の野望への対処で厳しい選択に迫られる各国があらわれており中国の「総合国力」で世界が包まれるのを防ぐ動き、警戒する動きが出ているのは中国に恐怖を感じさせている。CCPが恐れるのは「戦略機会の時期」が終わり世界が目覚めることなのだ。■
Dr. Jonathan Ward is the founder of Atlas Organization, a consultancy on China, India and the Indo-Pacific Region. He received his PhD in China-India relations from the University of Oxford and his undergraduate degree from Columbia University. He speaks Chinese, Russian, and Arabic, and has traveled widely in China, India, and the Indo-Pacific Region.
Reed Simmons is an officer in the U.S Navy. He is a graduate of Harvard University. The views and opinions expressed herein by the author do not represent the policies or position of the U.S Department of Defense or the U.S Navy, and are the sole responsibility of the authors.


2017年11月17日金曜日

歴史に残らなかった機体(11)コンベアB-58ハスラー


歴史に残らなかった機体(11)はコンベアB-58ハスラーです。外観と高性能と裏腹に使えない機体になってしまったのですね。システム構築が誤ったというより時代の変化についていけなかったので全員の熱意が無駄になった例です。進化の木の変な枝に入り込んだような機体ですね。そういえば同社の前作B-36も結局使えない装備になってしまいましたね。

The B-58 Hustler Was a Beautiful Mistake

B-58は美しい失敗作だった

Blazing-fast nuclear bomber had many problems

高速核爆撃機には多くの問題があった

The B-58 Hustler Was a Beautiful Mistake
November 16, 2017 Robert Beckhusen


1956年11月11日、B-58ハスラーが初飛行した。高速飛行で核攻撃を目的に作られた独特の美しさを備えた爆撃機だがソ連の戦術変更や技術開発がハスラーの運命も変わった。B-47ストラトジェットの後継機の想定だったが実戦には投入されなかった。
  1. コンベア製デルタ翼のハスラーはマッハ2.0超音速飛行が可能でB-52ストラトフォートレスやB-47より大幅に高速で上昇限度も63,400フィートと他機より高高度だった。
  2. ハスラーは爆撃機としては小ぶりでB-52より全長で64フィート、翼幅で128フィートも小さい。
  3. ハスラーではスピードがすべてで、空軍は9メガトンB53核爆弾一発あるいはB43あるいはB61核爆弾4発を搭載させソ連や中国に飛び込ませ迎撃態勢が届かない高速と高高度を活用するつもりだった。
  4. 1964年にCIAは同機を迎撃可能な中国機はMiG-21フィッシュベッドのみで、迎撃成功の確率は「わずか」と評価した。
B-58A Hustler in 1968. U.S. Air Force photo

  1. それを可能にしたのは四基のJ79-GE-5Aターボジェットで各10,400ポンドの推力を発揮した。デルタ翼で抗力が生まれたため機体形状は再設計で「コークボトル」形にした。大型爆弾ポッドと燃料ポッドは機体下に取り付けた。
  2. 耐熱対策でコンベアはB-58の表皮をはにかむハニカム構造ファイバーグラスをアルミ、鋼板の上にリベットではなく接着剤で貼り付けた。この工法はその後の民間航空機に応用された。
  3. ただしハスラーの小型外寸がソ連領空への侵入機として決定的な欠陥を生んだ。空中給油なしでは行動半径が1,740マイルしかなかった。このためハスラーはヨーロッパに配置するか、相当数の給油機を配置する必要があった。
  4. 短距離性能が空軍内部でも深刻に受け止められていたことが2012年刊行のRearming for the Cold War, 1945-1960 でわかる。著者は米空軍退役大佐エリオット・V・コンヴァースIIIである。
  5. 戦略航空軍団司令カーティス・ルメイ中将は同機を忌み嫌い、SACから排除したがっていた。「1955年に作戦担当のジョン・P・マッコネル少将はカナダならまだしもソ連が敵なら距離が肝心だと皮肉を込め発言していた」とコンヴァースが記している。
B-58 Hustler. U.S. Air Force photo

  1. 構造が複雑なことが事態を悪くしたし、運用費用はB-52の三倍で開発も手間取った。機体を「コークボトル」形状に変更したため開発が遅れ費用が増大した。
  2. 調達機数も変更され、116機と当初の三分の一に削減された。高速性能のため航法、爆撃照準装備もスぺリー AN/ASQ-42を新たに導入したがこれが開発の足を引っ張った。
  3. J79エンジンもトラブルが続き、ブレーキ、射出座席も同様で後者は射出可能ポッドに変えられた。「スピード記録こそ樹立したがB-58は支出の価値があるのか疑問だった」(コンヴァース)
  4. ハスラーの運命を決めたのは二つの要素だった。まずソ連が地対空ミサイル性能を向上し1960年5月に高高度飛行中のU-2スパイ機を撃墜した。使われたS-75(NATO名SA-2ガイドライン)はB-58の上昇限度を数千フィート上回る性能があった。
  5. 解決策として低空飛行があったが空気密度が高いため高速飛行ができない。またハスラーは高速飛行を想定したので低速では機体制御が難しい。これで機体の2割を喪失した。
  6. 次に空軍が開発を同時並行で求めたことがある。
  7. 「中心にシステムは最初から統合された形で企画すべしとの考えがあり、これに基づいて各要素がシステム、サブシステムとして成り立ち、その他支援装備、訓練内容まで同時に準備するものとされた」(コンヴァース)
  8. だがいざ着手すると問題が洪水のように全体事業に影響した。「技術問題が出現するたびに事業全体の見直しが必要となるか問題解決まで待たされた。このため開発が遅れ、せっかく準備した生産体制を廃棄する事態も発生し、費用が上昇し、展開が先延ばしされた」
  9. どこかで聞いたような話に聞こえるのはF-35のためだ。空軍は同時並行方式で費用を抑えられるとステルス戦闘機事業で公約していたが事実はその真逆だ。
  10. B-58は一回も実戦投入されず、非核任務も想定外だった。1970年1月に全機が退役し、空軍の核攻撃ミッションはB-52、B-1、F-111、ステルスB-2、弾道ミサイルに引き継がれた。なお、ミサイルは同時並列開発の成功例である。
  11. B-58の失敗例は画期的な新型機開発で同時並列手法を誤る危険性を包み隠していたのだ。■

★日本向けE-2D初号機が初飛行に成功



以下、ノースロップ・グラマンの社外広報資料からのご紹介です。ホークアイはもともと艦載機で機内も狭く電子機器の発熱ですごい環境なのでしょうね。30年以上もたって装置も能力向上しながら小型化が進んでいるはずで、新旧の電子性能の比較が楽しみです。



Northrop Grumman Completes First Flight of Japan’s E-2D Advanced Hawkeye

ノースロップグラマンが日本向けE-2D高性能ホークアイ初飛行に成功
Northrop Grumman Completes First Flight of Japan’s E-2D Advanced Hawkeye
日本向けE-2D初号機が初飛行の準備に入っていた。Japan’s First E-2D prepares to take flight at the Northrop Grumman Aircraft Integration Center of Excellence in St. Augustine, Florida.
November 15, 2017

ST. AUGUSTINE, Fla.– Nov. 13, 2017 –
ノースロップ・グラマンコーポレーション(NYSE: NOC)は日本向けE-2Dアドバンストホークアイ(AHE)の初飛行に同社のセントオーガスティン(フロリダ)航空機管制施設で成功した。
「日本向けE-2Dアドバンストホークアイの初飛行は同国の空中早期警戒監視能力の向上で大きな一歩になります」とE-2D事業を担当する同社副社長ジェーン・ビショップが語った。「航空自衛隊(JASDF) の現行ホークアイ部隊にE-2DAHEが加われば日本の安全保障や情報収集面の要望にさらに応えることが可能となります」
防衛省はE-2Dを2014年に選定していた。ノースロップ・グラマンは2016年に製造を開始し現在二機が最終製造段階にある。
米海軍除き最大規模のホークアイ運航者がJASDFでE-2C13機が1983年から稼働している。■


2017年11月16日木曜日

北朝鮮崩壊後のシナリオ、朝鮮半島再統一か北に新体制出現か


さすがにCatoの研究員ですね。日本のチンピラ時事評論家と考えの範囲と規模が違います。どうしたらここまで思考をひろげられるでしょうか。現状維持の方がいいとは思っていないはずですが、やはり統一朝鮮が出現してほしくないという思いが日本にあるのでしょうか。朝鮮半島が面倒だからかかわりたくない、というのはミニ孤立主義みたいですね。むしろ事実を見つめてどうあるべきかを考える(未来はデザインするものです)思考作業が我々には欠けていませんか。


Who Swallows North Korea after Its Collapse?

崩壊後の北朝鮮を飲み込むのはは誰か

November 12, 2017


北朝鮮は世界で最も不安定な国家だ。貧しく孤立した小国だが核兵器、大陸間弾道ミサイルを開発し米国でも核戦争の危険が感じられるようになってきた。
  • 朝鮮民主人民共和国(DPRK)を何とかしなければとほぼ全員が思うものの実際に何をすべきかでコンセンサスがない。軍事行動は破滅的な戦闘に発展し、制裁措置は政権崩壊しか結果を生まない、また交渉で朝鮮半島非核化が実現する見通しが立たない。
  • そうなると現在の危機状況に解決策がないように見える。暗い見通ししかない現状のまま未来が見通せない。予測困難な同国政権は核兵力を保有しており唯一の解決策は64年同様の戦争しかないようだ。
  • 現状の脅威で手一杯とはいえDPRKの隣国は未来を見通す必要がある。もし金正恩政権が倒れ、北朝鮮が内部崩壊し国家として分解すればどうなるのか。
  • よくある考え方は朝鮮半島が再統一され、南朝鮮が北を「飲み込む」ことで拡大版韓国が出現するとの見方だ。この方向を韓国、米国さらに日本も望んでいるはずだが、中国や日本には統一され力をつけた新たな競争相手の出現を望ましくないとする見方が多い。つまり分断状態が理想で、北には別の形で統治機構が残る方がいいという。
  • それでも交渉による再統一が最良の結果であり、外部干渉なしで南北朝鮮が共通の未来を決められれば良い。だが可能性はわずかで筆者が訪朝した際も関係者は「併合される」のは望まないと強調していた。また強権主義の共産体制が自主的に資本主義の南と統合の道を選ぶとは考えにくい。全くの空想の世界だ。
  • だが中華人民共和国がより強硬な制裁措置を躊躇せずに実施したら、北は混乱し動揺するのではないか。可能性の一つとして政権が権力基盤を失い、国家として破たんすることがある。ただその過程は醜悪、高価かつ流血さえ伴う可能性がある。内戦、抗争に加え核兵器流出、経済崩壊と大量飢餓から南北朝鮮からの難民の波が生まれるかもしれない。
  • 最終結果も同様に惨憺たるものになる。南主導の再統一はドイツ再統一のように円滑に進まないだろう。南北の経済政治社会の格差がとんでもなく大きいためで再統一は「征服」の形になるはずと北朝鮮研究者アンドレ・ランコフAndrei Lankovは見る。歴史・民族が共通とはいえ、南北は発展様式が異なる。金正恩の独裁体制から逃れても北朝鮮国民は生まれてからたたき込まれた南は米帝国主義の「傀儡」との教えを払しょくできないだろう。
  • ランコフは言う。「征服されて喜ぶ人民など存在しない。部隊や統治機構が進駐してみんなが狂喜乱舞すると思わないほうがよい。花を贈られる代わりに銃弾を浴びることになるだろう」
  • 最良の場合でも再統一は長期にわたる複雑かつ高価な過程になる。韓国の費用負担は莫大になる。元社会主義の票が加われば韓国の政治地図も変わる。南は南北のあまりにも異なる事情を統一することに忙殺されるだろう。
  • さらに朝鮮再統一が必然との見方では中国を無視している。中華人民共和国(PRC)は鴨緑江の北に構える巨大な傍観者と見ているようなものだ。だが北京は再統一が現実になる日は見たくない。国境の向こうに協力で独立し国家主義傾向を強めた相手は出現してほしくない。朝鮮族が居住する中国国内領の国境線書き換えを主張され、米国との同盟関係を保持する国が出てきては困るのだ。国境近くに基地を構築されれば中国封じ込め効果が実現となり中国にとって悪夢となる。
  • つまりPRCが介入してくる可能性がある。西側には中国に北侵攻で金政権駆逐を期待する向きがあるがこの可能性は限りなく低い。北朝鮮は頑強に抵抗し、交戦は悲惨になる。結局中国はDPRKを占領し再建する嫌な仕事につくことになる。現体制がこの選択を真剣に検討するとは思えない。
  • 逆に北朝鮮の弱体化はPRCの好機となる。金正恩が駆逐されても体制が崩壊しなかったら、中国が介入し親中国派を起用し中国寄り政権を樹立するだろう。北が中国の地方省になる可能性は低い。歴代の金一族は北を周辺国に依存しない体制にしており、北の住民がこのナショナリズムを南と共有するだろう。DPRKは小国だが中国でさえ同国の併合は無理だろう。
  • もっと可能性が高いのがミニPRCの樹立で、北が経済改革を採用しながら核兵器は廃止し中国の安全保障に頼ることだ。この場合はもっと深刻な事態が北に発生する。混乱が悪化すれば国境線を監視する中国は軍事介入で秩序回復し臨時政府樹立を狙うだろう。PRCは緩衝国家を得で国境線は安泰でいられる。
  • これではソウルやワシントンが考える理想は実現せず、北朝鮮崩壊に付け込み介入すれば対立が生まれるだけだ。武装した北朝鮮内勢力、米、中、韓の各軍は一触即発の状態となる。偶発的な衝突が深刻な結果につながる。長期予測は不可能だが北朝鮮が分断されるのと敵意に満ちた中国が生まれるのではないか。
  • それでも北朝鮮が中国の影響下で存続できれば前進といえる。核危機は終わる。南への通常兵器による脅威も終わる。中国の影響力はますます増えるが米国や同盟国への脅威ではない。また新生北朝鮮は今よりリベラルな方向に進み、最終的に南北統一に向かうだろう。
  • にもかかわらず中国の軍事介入の可能性は低く、中国としても最後の手段と見るはずだ。だが予測不可能で常軌を逸した北朝鮮を恐れる理由は多い。最近の出来事を見ると事態は悪化しておりもっと悪化することもありうる。
  • ワシントンとソウルは最低でも中国と北朝鮮事態について対話を試みるべきだ。現政権後の体制は他国に検討してもらいたくない平壌と面倒になるため北京は対話をこれまでは公式に拒絶している。ただし関係国としては危機が進展しようが各軍が交戦し北の領土、兵器、国民を奪い合う事態だけは避けられるようにしたいはずだ。
  • この方法が気に入らなければ韓国と米国は中国介入の可能性を最小限にすべく中国の求める権益に触れるべきだ。つまり再統合後の朝鮮半島と対米関係だ。PRCが1950年に参戦したのは国境に米軍を近づけないためだった。朝鮮半島全土に米軍基地が出現すれば米中戦の場合には有益だろう。つまり再統一後の朝鮮が米国と同盟関係にあればPRCに不利な情勢が生まれる。北京がこれを阻止すべく開戦することはないだろうが、わざわざこの実現を助ける理由もない。
  • 中国の不安を解消するためにも米国は朝鮮再統一が実現すれば米軍撤退を表明すべきだ。中国が統一朝鮮を受け入れるのであれば、米国は軍事基地に使用しないようにすればよい。
  • ソウルは軍事中立性を守ると約束すればよい。(釜山国大のロバート・ケリーRobert Kellyはこれを「フィンランド化」と呼び、冷戦中の対ソ連政策でフィンランドが示した慎重な対応に言及している) 韓国はあらゆる国と貿易をしており、米国との文化・人的つながりは残るだろう。韓国は軍事面で独立意思で動くことを選択しても米外交政策の道具とはなりたくないはずだ。
  • 最良かつ「唯一の道」はカーネギー財団のマイケル・D・スウェインMichael D. Swaineがいうように「中国に隣国への影響力をフルに使える道を残す」ことなのかもしれない。つまり非核化の代償として米国案の安全保障、経済発展、政治統一を押し付けることだ。取引の才能を自慢する大統領としては一世一代の仕事になるのではないか。朝鮮を対象に腕前を見せてもらいたいところだ。
  • これでは次善の解決策かもしれないが反対はないはずだ。韓国の将来について事実上の拒否権をPRCへ与えるのはフェアではない。韓国は不良隣国と暮らしており、敵意を隠さない三大国に囲まれている。地政学上で調和は不可避だ。
  • 再統一後の韓国は米軍の朝鮮半島駐留を求めるべきではない。米韓同盟の存続はソウルの命題だが米国にとって不可欠ではない。現在でも南は通常兵力による自国防衛能力を有している。米国の財政事情からみて米軍は駐留していても防衛上の責務を全部果たす状態にはない。もちろん再統一後の朝鮮半島には中国の存在が目障りになるはずだが、米国の軍事政策はあくまでも自国事情を反映するものであり、他国の慈善事業ではない。韓国には選択肢があり、核抑止力の整備(北核装備をそのまま使えばよい)ことに加え日本やロシアと関係を改善し可能な限りでPRCに対抗することがあるはずだ。
  • 未来で確実なことはないが、北朝鮮ほどこれが当てはまる例はない。米国・韓国は北朝鮮が敵意を隠さず核兵器を拡充している中で独創的に選択肢を模索すべきだ。北を中国に任せるのもその一つで次善の策といえるが、それでも現状よりはるかに良い。■
Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute. A former special assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World (Cato Institute) and The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea (coauthor, Palgrave/MacMillan).
Image: Reuter

ドバイ航空ショーでレイセオンがペイトリオット迎撃100回成功と豪語


いくら航空ショーだからと言ってこういう発言をすると虚実区別できなくなる伝説になり独り歩きしそうです。ミサイル防衛の効果そのものが機密情報になっていないと敵に手の内を読まれますからね。とはいえ、確認も否定もできないのであれば言ったもん勝ちですね。レイセオンは商売上手なのでしょうか。


Raytheon: Saudi-based Patriots intercepted over 100 tactical ballistic missiles since 2015

レイセオンがサウジ配備ペイトリオットで2015年以降で戦術弾道ミサイル100発超を迎撃成功と発表

サウジアラビア配備のペイトリオット部隊がイエメンから発射された戦術弾道ミサイル(TBM)100発以上の迎撃に成功しているとレイセオンが発表した。サウジ主導でイエメンではイラン支援を受けるフーシ派への攻撃が2015年から続いている。(Raytheon)

By: Barbara Opall-Rome    16 hours ago

DUBAI, United Arab Emirates —
サウジアラビア国内に展開するペイトリオット部隊が迎撃したイエメンから発射された戦術弾道ミサイルはサウジ主導のイラン支援を受けたフーシ派への介入が始まった2015年以来100発を超えたとレイセオンが発表している。
  1. 同社ウェブサイトにこの数字が掲載されているが確認不可能であり、各種シンクタンク、サウジ政府他各国の公表数字よりはるかに大きい。
  2. 戦略国際研究所のミサイル防衛プロジェクトでは迎撃40回、命中18回と同時期に計上されている。ただしここには11月4日にイエメンから発射されたミサイルへのペイトリオット迎撃事例は含まれていない。
  3. イエメン反乱勢力に近い筋は算術ミサイル発射回数を93としているが、今数字には迎撃の成功失敗は区別せず水増し数字との見方が一般だ。
  4. にもかかわらずレイセオン幹部はドバイ航空ショー会場で取材に答え再び2015年以降で100発超の戦術ミサイルの迎撃に成功していると語り、性能向上を続ける同装備の効果を強調している。「当社は脅威に対応して常時改良を加えている。中東の最重要相手国が弾道ミサイル攻撃を受けている。全部で100回以上も迎撃に成功しており、ペイトリオットミサイルで飛来するミサイルを撃破している」
  5. その100発超というイエメンから発射されたミサイルについてレイセオン幹部はPAC-2改良型迎撃ミサイル-T(GEM-T)が強力な破片炸裂弾頭でミサイル脅威を解決したと述べている。サウジアラビアはPAC-2とあわせロッキード・マーティン製の直撃型PAC-3も配備している。
  6. レイセオン製品でPAC-3並みの好成績を残したのかとの問いに、ロッキード・マーティン統合防空ミサイル防衛担当副社長のティモシー・ケイヒルTimothy Cahillは同社の新型装備は今夏からサウジアラビア搬入がはじまったばかりだと述べた。
  7. 「正確な数字はわからないが、わかったとしても、口には出せない。なぜなら米政府はこの情報を固く守るべきと見ているからだ。言えるのはPAC-3はまだ完全配備されていないということだけだ。今使える装備で迎撃しているのだろう」(ケイヒル)
  8. ロッキード幹部は数字の違いからロッキード・マーティン製PAC-3に欠陥装備だとか問題があるとかいわれたくないとする。ケイヒルはリヤドのサウジ政府はまだペイトリオットPAC-3の初期作戦能力獲得宣言がいつになるか明言しなかった。
  9. ワシントンはサウジアラビア向けにPAC-3を300発に付属支援装備付けて54億ドルで売却する承認を2015年7月に下した。同年10月にワシントンはロッキード・マーティン製高高度広域防衛(THAAD)命中迎撃ミサイル発射機44セットと管制装置とレーダー合わせ150億ドルで売却を承認した。
  10. さらに今年10月初めにモスクワをサルマン・ビン・アブドゥル-アジズ・アル・サウド・サルマン国王が訪問し、サウジアラビアはロシアとS400対空対ミサイル迎撃装備の調達で合意形成したと発表。ドバイで取材した米ロ企業幹部はこの取引は正式に未締結と述べていた。■

MiG-35は完成したが、その先はあるのか


なるほど一世を風靡したミグが消える可能性があるわけですね。スホイと一緒になれば完全消失ではないでしょうか。中国に技術が流出しないためにもなんとしてもロシアはミグの知見をかこっておきたいのでしょうね。重厚長大のスホイにロシア軍の関心が向いているのは大は小を兼ねるという発想なのでしょうか。


Russia's MiG-35 Is Almost Done with Flight Testing (But There Is a Problem)

ロシアのMiG-35はフライトテストほぼ完了(だが問題が残っている)

November 14, 2017


RSK-MiGは新型Mig-35フルクラム-F戦闘機のフライトテストを年末までに完了する。
  1. 同社はロシア国防省からの契約交付を待ち量産を始めたいとする。ロシア空軍が第一期分24機を購入する期待がある。MiG-35はMiG-29の改良型だ。
  2. MiG広報のアナスタシア・クラブチェンコはTASS通信にドバイで「MiG-35の工場内テストは今年完了します。契約が成立次第、バッチ生産をルホヴィツィ工場で開始します。現時点では国防省待ちです」と語っている。
  3. ロシアの言い方はペンタゴンの低率初期生産に相当し量産と異なり、検定試験が量産開始後も並行実施される。
  4. MiG-35はロシア軍に納入されるだろうが、基本的に輸出を狙う。ロシア空軍はスホイのフランカーシリーズの方が高性能で使い勝手がいいとしてMiG-35への関心は低い。
  5. 現時点のMiG-35は2011年にインドがフランスのダッソー・ラファールに軍配を上げた当時の性能より向上している。新型MiG-35はMiG-29KR艦載型フルクラムを改良した機体と言ってよい。推力偏向制御はついておらずアクティブ電子スキャンアレイレーダーも装備していない。
  6. 「MIG-35事業の意義はいまやRSK-MiGの生産ライン温存と輸出だけだ」とロシア軍事産業筋がThe National Interest に今年初めに語っていた。「技術諸元は二の次で、MoDはAESAレーダーがほしいというが、MiG-35は低価格にしたいという。MiG購入は可能な海外顧客は多いがやはりAESAは価格から不要だと言っている」
  7. 海外発注をなんとか確定したいためロシアはMiG-35をドバイで展示中だ。MiG-35が成功するかは時がたたないとわからないが、フルクラム-FはRSK-MiGにとって海外市場の奪回で最後のチャンスだ。さらに国際市場でのMiG-35の成否でMiGが合同航空機企業体内で独立事業体として生き残れるかが決まる。だめなら同社はライバルのスホイに吸収合併されるだろう。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.
Image: Reuters.

2017年11月15日水曜日

北朝鮮の次の手は何か- ゲームを仕切るのはどちら側なのか


 


EMP Detonation, Nuclear Blast or ICBM Test? What is North Korea's Next Move?

北朝鮮の次の手は何か。大気圏内核爆発かICBM発射あるいはEMP実験か。
November 13, 2017


ドナルド・トランプが金正恩を「ちびのロケットマン」とエルトン・ジョンの1975年のヒット曲にちなんで呼び笑いを買ったが、大統領も金正恩の導火線にまだ火が残っていることを知っている。北朝鮮情勢分析での大きな話題は平壌が再度長距離ミサイルテスト準備に入っているのかだ。
  1. 狙いは核兵器小型化、大気圏再突入と有効射程の実現を米国に見せつけることだろう。だがアナリストの中にはワシントンがテストを誤解すれば戦争の引き金になりかねないと見る向きがある。
  2. 実験が近づくとの観測に火を注ぐのが北朝鮮が9月15日の火星-12中距離弾道弾の発射以来八週間にわたり動きを示していないことだ。
  3. 戦略国際研究センター(CSIS)の太平洋フォーラムを主宰するラルフ・コッサRalph Cossaは北朝鮮が再度ミサイル発射実験で長距離攻撃能力を米国に誇示する可能性があると先週木曜日にUPI通信に語っていた。
  4. 「ワシントンやニューヨークの攻撃能力があるとこちらが理解したと分かれば、北朝鮮は核戦力を実用化したことになり核凍結交渉にも同意するだろう」「だが中国等が提唱する凍結のための当家ではなく、凍結は援助あるいは制裁の解除を交換条件とするものだ」
  5. コッサの評価の裏付けとして38 Northがベテラン朝鮮ウォッチャーのロバート・カーリンRobert Carlinによる分析を掲載した。カーリンは北朝鮮は7月に長距離ミサイル発射に立て続けに成功したことで躍り上がり、対米戦略立場は堅固になったと見る節があると指摘。このことから北朝鮮政権は戦争瀬戸際から一歩後退し米国と「実務的均衡」を定着させようとするだろうというのだ。
  6. ただしその前にカーリンは北朝鮮が「再度、危険な一歩」をとり平壌の意図を理解できない米大統領が軍事対応に踏み切らないとは限らないと警告する。「ワシントンでの出来事を見て北朝鮮が米大統領は弱腰で決定的対応はとれないと判断していてもおかしくない」と前国務相情報分析主幹は38 Northに書いている。
  7. では「危険な一歩」とはなにか。カーリンは解説しないが、核実験か別型式のミサイル発射のどちらかなのは明らかだ。火星-14長距離ミサイルなのか大気圏内水爆実験なのか。平壌がインフラをマヒさせる電磁パルス(EMP)装置を試すのではとの観測もある。
  8. ミドルベリー国際研究所で核不拡散問題の専門家ジョー・ブラツダJoe Brazdaは北朝鮮で最高性能を誇る火星-14ICBMはシカゴから東海岸まで到達できるのではと見ている。金正恩がめざすのはニューヨークやワシントンまで到達可能なミサイルだろう。
  9. トランプは金正恩を侮辱する戦術が機能していると自信があるようだが北朝鮮がこの動きを示せば唖然としたあまり軍事行動に走りかねないとカーリンは見ている。
  10. 金正恩は先例に倣うだろう。1960年代にペンタゴンは中国の核兵器開発能力を軽視し、核兵器運搬能力もないと見ていた。だが中国は1966年に核兵器実弾ミサイルを発射しゴビ砂漠で爆発させた。これで中国の核兵器能力への疑いは消えた。
  11. 北朝鮮は核兵器に自信を感じさらに別のテストに踏み切るのだろうか。そうならないことを祈るしかない。
  12. 別の可能性もある。あと一二回のテストでレッドラインぎりぎりで動きを止め米軍の先制攻撃を待つことだ。次のミサイル実験は北朝鮮に核抑止力が備わったことを示すものになる。いかにも狂気じみた政治芝居だが北朝鮮は巧みに計算した動きを示す合理性も証明している。金正恩はエルトン・ジョンの歌詞を借りれば「ずっと長い時」を目指し次の手を考えているのだ。■
Doug Tsuruoka is Editor-at-Large of Asia Times where this first appeared.
Image: Reuters.