2019年3月30日土曜日

F-117が開いたステルス機の歴史と今後の展望

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Sad Stealth: Was the Lockheed Martin F-117 Nighthawk Retired Too Soon? 悲運のステルス、ロッキード・マーティンF-117ナイトホークの退役は早すぎたのか

Or was it too old to be a threat?
March 24, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-117F-35F-117 Stealth FighterMilitary

空軍で今後の戦力構造の検討が進む中、ステルスの進化過程をふりかえるのに意味があろう。はじまりはロッキード・マーティンF-117ナイトホークだった。同機は2008年に退役したが今日でも有効活用できるだろうか。
中程度の脅威として例えばイランが相手なら可能だ。だがハイエンドのロシア、中国相手では疑わしい。技術はF-117の構想時から相当進歩している。
1970年代に開発が始まり、1983年に極秘裏に作戦投入可能となったF-117が新時代の扉を開き、その後数十年にわたる航空優勢を米国に確保した。皮肉にもナイトホークを実現した理論のルーツはソ連論文「ゆがみの物理理論における末端波形」であった。この論文はロシア人ピョートル・ヤコヴレヴィッチが1962年に発表したもののその後忘れられていた。ロッキードのスカンクワークス技術員デニス・オーヴァーホルサーがロシア物理学者の方程式の潜在可能性に着目した。
オーヴァーホルサーからスカンクワークスが絶望のダイヤモンドと呼ぶコンセプトが生まれた。その形状で驚くほどレーダー断面積減少効果があると判明した。そこでペンタゴンはロッキードに即座に契約を交付し、実証機ハブブルーHave Blueを製造させ高度残存可能試験機Experimental Survivable Testbed (XST)の実現をめざした。ペンタゴンはワルシャワ同盟軍による防空体制の突破方法を模索していた。冷戦が第三次世界大戦になればNATO空軍部隊が大損害を被る予想が現実になりそうだったからだ。
ロッキードは絶望のダイヤモンドでフライ・バイ・ワイヤ技術も投入した。その結果生まれた機体は敵レーダー波を反射するべく多様な面がつき、F-117の縮小版の様相で初飛行は1977年12月だった。試作機2機はともに全損したがハブブルーは成功作とされ空軍は次の段階としてF-117開発を決断した。
F-117の初飛行が1981年で供用開始は1983年だ。ロッキードは利用可能な既存部品を使い短期間で機体を完成させた。フライ・バイ・ワイヤはF-16の流用で、エンジンはF/A-18のジェネラル・エレクトリックF404ターボファンからアフターバーナーを外した。さらにF-117では後のステルス機と異なり、航空機用アルミニウムを多用し製造を容易にした。ロッキードはF-117Aを59機、試作用YF-117Aを5機製造した。
F-117の実戦デビューは1989年のパナマだったが成果はぱっとしなかった。だがF-117は1991年の第一次湾岸戦争のイラクですばらしい成果を示した。その後発生した第二次湾岸戦争、イラクの自由作戦にも投入された。空軍はF-22ラプターの予算捻出を優先し2008年に経費節減のためナイトホークは退役した。空軍はF-22ラプターとF-35が加わればF-117は不要となると説明していた。
F-117の供用期間中で喪失機はデイル・ゼルコ中佐操縦の一機だけで1999年3月ユーゴスラビア上空でコソボ紛争に介入した連合国軍作戦の最中だった。ステルスも無敵ではないとの印象が一般国民に広まったが、安全保障専門家はそんな幻想を一蹴した。ただ1990年代に低視認性機材への過信が生まれたのは確かだ。ステルス機も兵装投下することで姿を探知される。ステルスは魔法の透明マントではない。
だが米空軍はステルスが透明、無敵の存在ではないことを常に意識していた。砂漠の嵐作戦では一般大衆の認識と違い、イラクに最初の一撃を加えたのは米陸軍のAH-64アパッチガンシップ部隊であり、F-117ではない。攻撃ヘリはVHF、UHFを使うイラク軍の低周波早期警戒レーダーの排除を命じられた。こうしたレーダーはC、X、Kuの各バンドでステルス機も探知する。アパッチ隊がF-117に道を開き、探知されずにイラク国内奥深くへ侵入できたのだ。
その後登場したステルス機のF-22やF-35は高周波火器管制レーダーに対して有効な設計だ。第5世代戦闘機の設計思想はF-117戦術ステルス攻撃機をそのまま継承しており、敵はなにかいると認識する状況を前提とする。ただし敵は手が出せないという前提だ。だが公表情報と異なり空軍のステルス機は海軍の電子戦機材のプラウラーなどがいない空域には一度も投入されていない。
これに対してB-2のようなステルス戦略爆撃機は潜水艦と同様の運用で存在を全く認知されない。大型爆撃機には「広帯域全方位」ステルス性能があり、低周波レーダーでも探知されず、ノイズやクラッターに隠れる。それでも空軍はロシアや中国が低周波レーダーでB-2も探知する日が早晩来ると見ている。「こちらはB-2機内で防御統制システム(DMS)で相手の脅威を特定だきる」と空軍関係者は述べる。「だがEW(電子戦)の進歩は待ったなしでDMSを向上させないと対応できない」だがB-2は相手側脅威に合わせた性能向上をしておらず、このため空軍はLRS-BとしてB-21新型爆撃機で低周波探知装備に打ち勝つ必要があるのだ。
だが空軍発表ではF-117がハイエンド戦に耐えられないと強調されている。同機は高周波レーダー対策が主で、F-22やF-35のリアルタイム被探知回避や脅威発生源の探知はできない。また一旦探知され対抗手段が向けられれば生存出来るだけの性能がない。
これがF-22やF-35が有するF-117より有利な点だが、ロシアのPAK-FA(Su-57)や中国のJ-20、J-31も同様だ。F-117は脅威対象を回避する自動飛行経路作成能力に完全依存していた。だがF-22やF-35はリアルタイムで脅威源を把握しパイロット関与を不要としており、さらにF-35がラプターより一歩先を行く機体になったのは技術進歩の恩恵を受けているからと言える。
広範囲の周波数各種でのレーダー断面積でラプターがF-35より小さいと空軍は2014年までは説明していた。だが新型機のほうが電子戦装備の進歩で探知特徴をよりよく管理できる。このため航空戦闘軍団司令官を務めたマイク・ホステジ大将が「F-35ではF-22波の高高度性能や速度は出せないが、ステルスではF-22に勝つことが可能だ」とBreaking Defenseに言ったのだろう。「可能だ」と言う言葉が問題だ。現役のACC司令官ホーク・カーライル大将はNational DefenseでF-35は「相手を探知するパッシブ性能と自機の被探知特徴の管理で一歩先を行く」と述べている。
結局のところ、米国が数十年と巨額の費用を投じて養成したパイロットのインターフェイスがロシアや中国が慌てて整備中の対抗策への優位性を実現する。米国は優位性を維持するためにも新しい技術開発を続けてていかねばならない。■

F-117は退役したことになっていますが、西部に飛行隊分の機材を温存しており、ときおり飛行しているところが目撃されていますし、海外に投入されたとの未確認情報もあります。記事の説明にあるように相手によってはまだまだ有効な攻撃手段になるのでしょうが、支援機材が必要で単独投入できる機材でないこともわかりましたね。しかしその機材維持運用費用はどこから出ているのでしょうか。

2019年3月29日金曜日

複座型F-15EXのみ導入し、後部座席は空のまま運用する米空軍方針が明らかになった

F-15X採用でこのブログ読者に戸惑い、疑問が噴出しましたが、産業構造維持という殺し文句で鎮静したようです。いろいろな意見はでましたがF-35一本ではやはり不安が残るというのが本音でしょう。米空軍もステルス命としていたのは予算の余裕がないことを自覚していたからにほかならなず、バランスを考慮する余地はあったはずです。まして今回の採用は国防総省の意向が大きく働いています。それにしても、1970年代初飛行の機体が進化するとはいえさらに30年供用するのは1940年代のマスタングが1980年代末に派生型になり、2010年代まで供用されるのと同じですね。イーグルがいかに費用対効果が高い設計の機材であることがよくわかります


Aerospace Daily & Defense Report

USAF Plans To Fly New F-15 With Empty Back Seat

新型F-15は後部座席を空のまま運用する米空軍の方針

Mar 27, 2019Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report
F-15 2040C: Boeing


ーイングの複座F-15EXは現在単座F-15Cを運用中の飛行隊が後部座席を空のまま飛ばす方針を米空軍がAerospace DAILYに認めた。
米空軍はすくなくとも144機のF-15EXを導入し、うち80機は今後5年以内に調達しF-15Cの老朽化に対応する。
F-15EXはF-15Cと同じ制空任務、F-15Eの戦闘爆撃機任務の双方をこなす設計で、うち後者では後部座席で兵装システム士官が地上攻撃を担当し、パイロットは操縦や空対空戦に専念する。
F-15EXには操縦席がふたつつくがパイロットが空対空戦、空対地戦を一人で担当すると空軍は説明。F-15EXは現在F-15Cを運用中の飛行隊に納入されるが、兵装システム士官は搭乗せず後席は空とする。
「F-15EXを受領する飛行隊は現行任務を現行の搭乗員体制で行う」と空軍広報官がAerospace DAILY照会に回答した。
F-15CパイロットはF-15EXで期待される役割が拡大になるが転換訓練コストは増えないと空軍は見ている。「搭乗員訓練の要求項目は増えない」(空軍広報)
ボーイングはF-15C後継機としてのF-15Xで単座型はF-15CXとして提示している。だが空軍は複座F-15EXのみ導入することで導入関連経費を最小限とする。

F-15EXはカタール空軍発注のF-15QAの派生型だ。主翼を軽量化しつつF-15Eと同じ量の兵装とセンサーを搭載する。F-15EXにはその他にも2001年のF-15E登場後に利用可能となった性能改修が施されており、、フライバイワイヤ機体制御、イーグル・パッシブ・アクティブ警報装置、高性能ディスプレイコアプロセッサーIIミッションコンピュータ、大型ディスプレイ付き新型コックピットなどを採用している。■

北朝鮮が旧式機を温存するのは有人巡航ミサイルのカミカゼ攻撃をするため?


Would North Korea's Air Force Go "Kamikaze" In a War? 北朝鮮空軍が「カミカゼ」攻撃をしかける?

A scary thought.
March 20, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorld



朝鮮の朝鮮人民空軍(KPAAF)を韓国防空司令部は世界トップレベルの戦力とみなしていない。
とはいえ、北朝鮮軍が狂信的といえるほど金正恩、金政権に仕えている様子を見ると、ソ連時代の共産体制というよりも儒教とスターリン主義の合体のようであり、現政権の存続はそのまま軍の存続につながるので、休戦状態が終了すれば朝鮮人民軍は最高指導者あってこその組織として猛烈な戦闘態勢に入りそうだ。
KPAAF保有の機材が古色蒼然たる装備でも狂信的な決意を有する敵が運用すれば相当の効果をあげることもありうる。
北朝鮮の保有機材でも最古参は瀋陽J-5で、1950年代のミコヤングレヴィッチMiG-17フレスコのコピー機だ。もう一つ古い機材に瀋陽J-6がありこれはMiG-19ファーマーの派生型で、北朝鮮は97機を保有している。
J-5、J-6ともにどうしようもなく旧式で普通に投入されれば米軍や韓国軍の格好の標的となる。だが標的になることで効果が生まれそうだ。地対空ミサイルやAIM-120AMRAAMは高価かつ在庫が少ない。こんな旧式機を相手にこうした装備を投入すればミサイルの無駄遣いだ。
北朝鮮のJ-5が韓国空域に侵入し地上目標の攻撃を目指した場合、連合軍側に撃墜されるのは必至だが、ペイトリオットPAC-3ミサイルの単価は3百万ドルである。さらに迎撃ミサイルは通常連続発射される。そうなると北朝鮮の旧式J-5一機に米国は6百万ドルを使い、もっと重要な標的に投じるべきミサイルを消費してしまう。AMRAAMも一発百万ドルを軽く超えており、とくに後期型AIM-120Dが高価だ。.
だが有事となれば米国韓国ともに空中での標的排除を避けて通れない。さらに北朝鮮が相手なので生物化学兵器が攻撃機に搭載されていないといいきれず、そのまま撃墜しても問題となる。

さらに大日本帝国の第二次大戦時同様に北朝鮮が狂信的な行動に出る可能性がないわけではない。北朝鮮が東欧共産国家よりアジア的王権国家に似ていると上に述べたが、大戦中の日本のカミカゼ攻撃のように操縦士が最高の誘導装置になるかもしれない。J-5およびJ-6は戦闘機としては使いみちがない機体なので片道飛行の巡航ミサイルになる。数機が防空体制をくぐり抜け標的に到達すれば北朝鮮としても攻撃効果と損失を比較して後悔はないはずだ。■

金正恩暗殺は実施可能な選択肢なのか

本当に面倒くさいので誰かこのデブを抹殺してくれれば気持ちが生成するという方は多いのでは。しかし、物事はそんなに単純ではないというお話です


Worst North Korea Idea Ever: Assassinating Kim Jong Un To "Solve" The Problem 金正恩暗殺は最悪の北朝鮮問題の解決策

This would make things far worse.

March 22, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaKim Jong-unDonald TrumpAmericaNuclear

リンガスを使った襲撃の画像がホワイトハウスのシチュエーションルームに届いた。ドナルド・トランプ大統領は国家安全保障会議に具体的選択肢を翌日提示するよう命じた。国防長官ジェイムズ・マティス、国家安全保障担当補佐官H・R・マクマスター、統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォードが国家安全保障の原則に則り打ち合わせ、トランプ大統領が巡航ミサイル59発をアサド政権の航空基地にあるガス攻撃拠点に打ち込む命令を米海軍に下した。
並行してNSCは対北朝鮮方針も微調整した。シリア化学兵器には攻撃を選択したがトランプ大統領は安全保障関連で長期かつ柔軟度が高い助言を求めていた。政策検討がはじまるとK・T・マクファーランド副補佐官が「通常策以外の選択肢」も含めるよう部下に指示した。
その内容は判明している。韓国への核兵器再配備、抑止力を高める、金正恩及び上級司令官の暗殺もその一部だ。「20年間におよぶ外交活動、制裁措置でも北朝鮮活動は止められなかった」と当時この検討に加わった情報機関高官がNBCニュースで語っている。行間を読めばトランプ政権のメッセージが浮かび上がる。「北朝鮮はあまりにも長く米国にとって問題となっており、現在の権力構造をひっくり返し新しい選択肢を選ぶ時期が来た」
外国指導層暗殺が米国の安全保障手段の一部だった時期がある。冷戦時には米国の政策目標に対する支持が低いリーダー、あるいはソ連と親しくなったリーダーは除去対象となった。キューバのフィデル・カストロ、コンゴのパトリース・ルムンバ、ドミニカ共和国のラファエル・トルヒーヨ、グアテマラのハコボ・アブレンツはすべてCIAの殺害リストに載った。リビヤのムアマル・カダフィは国際テロ活動を支援し何度も命を狙われた。1986年にはロナルド・レーガン大統領がカダフィ住居の攻撃を許可し、カダフィ暗殺がリビヤ空爆の第一目標と後に判明している。
冷戦は25年も続いたが、今日では外国政治家の殺害は推奨されずむしろ冷笑される。フォード大統領以降は米国が暗殺の企てに直接関与することは許されないというのが米国政策の基調である。フォード大統領の命令は明確で、「米国政府職員はいかなる政治人物の暗殺に関与、あるいは企ててならない」とある。レーガン大統領は大統領令12333でこれを再確認、拡大し、「米国政府職員あるいはその代理たるものは何人も暗殺の企てあるいは実行に携わってはならない」とした。
したがって金正恩暗殺につながる政策選択あるいは北朝鮮指導部の除去は米政策の大変更となり51年間に及ぶ路線からの脱却になる。もちろん政策に変更があってもよく、大統領令には修正変更の余地がある。また米国大統領に外国指導者殺害の命令を禁じる条項もない。米国憲法第18条1116条項で外国指導者殺害の企てをした米国民は訴追されるが、これは米国内での犯罪あるいは海外指導者が「自国外で」標的となる場合に適用される。トランプ大統領が大統領令を改定すれば金正恩を標的にしても刑法は適用されなくなる。
金正恩や北朝鮮高官で核開発や弾道ミサイル事業に従事するもの、情報機関のトップ等を暗殺しても賢明な政策選択のかも考える必要がある。トップの座にある悪者を除去すれば残る悪者たちは怖気づき政権は人権を優先する民主体制になると思いがちだ。イラク軍事介入の直前まで同じように考えていたものだ。だが結局この仮説の有効性は不明のままとなったのはサダム・フセインが攻撃を生き延び、バース党指導部が翌日にも連合軍に降伏するはずとの虫の良い想定と逆ににその後も戦闘は続いたからだ。
北朝鮮は2003年のイラクと全く違う状況だ。金正恩は権力基盤を固め、自身に脅威と見れば親族でさえ抹殺してきた。イラク軍は1991年の湾岸戦争で士気喪失し戦力も低下したが、北朝鮮は核兵器で武装しソウルはおろか地域内の米軍基地も攻撃な可能だ。金正恩を殺害すれば政権がまともになると考えてその通りにならないと高い代償を払わされる。北朝鮮は人的情報収集活動のブラックホールで米情報機関も北朝鮮高官の評価に苦労している。たとえば金正恩の妹が同様に腹黒く予測不可能な人物なのか見極められない。国家元首を暗殺すれば戦争行為と解釈され、北朝鮮の新指導者が冷静さを失っても報復に走らないと断言できない。
NSCは金正恩を亡き者にする選択肢もトランプ大統領に提出するだろう。現段階では通常範囲を外れた選択肢であり、補佐官も大統領に検討を勧められないかもしれない。実施すれば中国がただちに頑なに反応し、韓国や日本の各政府も北朝鮮にはもっと予測可能な行動を期待しているはずなので、金正恩暗殺を目標達成手段とは考えていないだろう。
結局この話題は中国を米国に協力させる政治ゲーム以外の何物でもない。
Daniel DePetris is a fellow at Defense Priorities.

2019年3月28日木曜日

台湾海峡を米海軍、沿岸警備隊が無害通航:中国が例によって猛烈抗議したが国際社会に受け入れられず

中国にとって国際規範、国際法、国際慣行は意味がないのでしょう。自国の権益、メンツがすべてなので平気で台湾海峡を無害通航する外国艦船に対して恫喝してくるのでしょう。沿岸警備隊が今回からこの地域に配備されてきたのは北朝鮮制裁の執行を強化する狙いがあり、北朝鮮はともかくシンパシーを全面に出す韓国にも状況は刻一刻と厳しくなってきたようです。

U.S. Navy Destroyer, Coast Guard Cutter Transit Taiwan Strait

米海軍駆逐艦、沿岸警備隊カッターが台湾海峡を通行


March 25, 2019 12:58 PM

USS カーティス・ウィルバー (DDG-54), USCGC バーソルフ (WSML-750)



海軍のアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦、沿岸警備隊の大型カッター各一隻が3月25日台湾海峡を縦断した。同海峡の米艦船通行は半年で5回目。この動きに中国が即座に反応した。

USSカーティス・ウィルバー(DDG-54)と沿岸警備隊USCGCバーソルフ(WSML-750)が約110マイル幅の同海峡を月曜日早朝に航行したと The Japan Timesがまっさきに報じた。

第7艦隊報道官クレイ・ドス中佐は「台湾海峡通行を3月24日-25日(現地時間)に国際法に則り実施した。今回の台湾海峡通行は米国が進める自由で開かれたインド太平洋の堅持に向けた取組の一環」と発表。


2013年東シナ海を通行するUSS カーティス・ウィルバー (DDG 54). US Navy Photo



中国関係者は米艦船の台湾海峡通行に異議を唱えた。

「中国は事態を注視し米軍艦の台湾海峡をはじめから終わりまで監視した。我が国は米国内の代表部を通じ一つの中国原則および中米共同声明三原則の遵守を守り、台湾関連問題に対し慎重かつ適正な対応を求め、中米関係への悪影響を回避し両岸の平和安定を妨げないよう求めたところである」と中国外務省報道官耿爽Geng Shuangが月曜日の定例記者会見で述べたと同省英語公表資料にある。

国務省によれば中国の台湾関連の主張に米外交政策は異議を唱えていない。中国は外国海軍艦船の同海峡通行では事前通告を求めているが国際海洋法で根拠がない要求だ。


米海軍は艦船通行は国際法に則っており中国の要請は無視している。国際法では艦船は領海内でも軍事行為をしないかぎり通行を認めているからだ。

カーティス・ウィルバーは前方配備駆逐艦戦隊15に所属し、横須賀を母港としているバーソルフは母港カリフォーニア州アラメダから西太平洋に長期展開中だ。

バーソフルは一週間前に東シナ海哨戒を終えており、国連安保理決議に基づき北朝鮮向け物品の海上での船舶間移送を防止した。沿岸警備隊総監カール・シュルツ大将は沿岸警備隊年次活動報告で以下延べていた。

バーソフルの現地展開は「重要な国家活動で、国際的にも重要」とシュルツ総監は述べ、同カッターが米インド太平洋司令部のもとに活動する様子を伝えた。「海軍が活用している。暦年の2019年一杯は支援を続け、その後どうするかは別途お知らせする」とした。■

中国・ロシアに勝利できる米空軍の機材構成はどうあるべきか----シンクタンクCSBAの提言


シンクタンクCSBAの報告書の紹介です。予算法案を通過させながら外部シンクタンクに精査を依頼し提言に耳を傾けるのが米国式なら、国会で好き放題に空理空論を提示シアとは知らん顔というのが日本です。日本のシンクタンクも安全保障問題をしっかり提言出来る実力があると思うのですが、耳を傾ける度量が官庁にあるかが問題ですね。


What aircraft does the US Air Force need to beat China and Russia? This new study has an answer. 
中露に勝利すべく米空軍で必要な機体を新規報告書が提言


By: Valerie Insinna    
B-21は2020年代中頃までに実用化されるが極秘機材の詳細は不明のままだ(Design by Devan Feeny/Staff; Image by U.S. Air Force and Getty Images)


来の中国やロシアの脅威への対抗上386個飛行隊が必要と米空軍が昨年9月発表した。だが議会の求めで検討した結果ではこの規模では不十分と推定している。
シンクタンク戦略予算評価センター(CSBA)の検討結果をこのたびDefense Newsは独占的に入手し、新規技術としてステルス戦闘無人機、新型無人偵察機を敵領空に侵入可能な機体として、さらに全く新型の給油機の開発開始を空軍に提言していることを見つけた。
今回の検討結果は2018年国防方針法案我に求めていた調査機関MITRE Corp、CSBAとともに空軍にようる将来の戦力構造提言の一環だ。
CSBAは給油機、爆撃機、戦闘機、戦闘偵察無人機、指揮統制・情報収集監視偵察機が致命的な機材不足だとし、特に爆撃機、給油機、無人機で機数増加が必要と見ている。
爆撃機についてCSBAは現有の実戦飛行隊9個を24個体制に将来増やすべきとしている。(CSBA提言では特定年を上げていない。将来の空軍部隊の姿の仮定に空軍で想定しない機体が含まれるため)
戦闘機部隊は現行55隊を65隊に増やし、給油機は40隊を58隊にすべきとする。攻撃・偵察無人機はMQ-9リーパー中心の25隊を43に急増すべきとしている。
C2/ISR機は現在E-8JSTARS、RC-135各型、RQ-4グローバルホークの40飛行隊があるが33隊にできるという。ただしCSBAは老朽化している戦闘統制機材を各種システムで構成する高性能戦闘統制装備に統合し、対象範囲とリンクを拡大すべきとしている。
CSBAは議会審査前のためこれ以上詳細に触れられないとしている。
報告書は国防総省ウェブサイトで閲覧可能だったがその後削除されている。


米空軍が必要と(考える)内容とは


CSBA評価は空軍独自の分析と対照的だ。空軍は現状の312飛行隊の386への増加を中心に据えている。空軍による「必要な空軍像」はCSBA研究内容と異なり宇宙、サイバー、ミサイル、空輸、戦闘救難等のCSBAが触れていない機材を盛り込んだ。
空軍は爆撃機14個飛行隊、戦闘機62飛行隊、給油機54個飛行隊、無人攻撃偵察27飛行隊、C2/ISRで62飛行隊が2030年までに必要と独自検討ではじき出した。ただし空軍はこれを実現した場合の調達業務への影響や現行事業を継続して目標達成できるかは明示していない。
もう一つの相違点は空軍、CSBAが別々の脅威をもとに提言していることだ。空軍参謀総長デイヴ・ゴールドフェイン大将は386隊体制は「互角戦力を有する大国を打倒する一方でやや戦力の劣る脅威を抑止する」のに必要と述べた。


This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.来の戦力構造での提言内容。This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.

対照的にCSBAは現実的かつ高い目標から空軍像を検討した。まず空軍は互角に近い相手との大規模戦闘に直面するはずとし、その例に「南シナ海での中国軍との大規模戦」を上げた。またその10ないし20日後に、別の互角に近い相手として「ロシアによるバルト海諸国侵攻」のような動きに対応を迫られると想定した。
将来のロシアや中国は手強い相手になり、現在でも対応が難しい状況が「高度なまで対応困難」になるとし、移動式かつ相互関連式の地対空ミサイル装備がパッシブセンサー他で米軍機を探知可能となる事態を想定した。
「こうした装備の威力が高まり、各地に配備されたところに新鋭戦闘機、電子戦機、サイバー攻撃他の脅威が加われば米軍機には全方面で多様な範囲で難易度が上がる」とある。
現時点ではこの想定に対応可能な機材は米空軍にないとCSBAは指摘している。B-21爆撃機の生産がノースロップ・グラマンにより始まったが実戦投入は2020年代なかごろの目標だ。
中国、ロシアが高性能かつ広範囲の防空体制を構築するなか、長距離ステルス爆撃機で防空網をかいくぐり、地対空ミサイル陣地を粉砕し重要施設を破壊し僚機に進入路をつくりスタンドオフ攻撃させさらに深部攻撃をさせることが米国で重要性を増している。
だがCSBA分析では空軍のB-21導入規模は不十分とある。
「空軍想定のB-21の100機配備では大国相手のハイエンド戦ひとつだけでも不足」とし、B-21レイダー288機の導入を提言した。
CSBAはB-21調達のペースを早め「年間生産を2020年代末で10ないし20機に増やせば2030年までに55機のB-21が揃う」としている。
一方でB-52およびB-2は維持し、B-1はB-21就役と交換で退役させるべきとある。
This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.2030年時点の米空軍機材整備提言。This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.


戦闘機部隊


F-15Xをボーイングから調達すべきか


研究報告は明確に「ノー」とし、新規製造F-15に予算を使えば次世代戦闘機予算を消費する、空軍には新型機の早期実現の予算が必要だとする。
F-15Xは「第四世代プラス機材」で高性能だが将来の過酷な環境下で生存の可能性なしと評価し、「空軍はF-15C/Dの退役後はF-35A改装型を今後登場する航空優勢用のシステムファミリーへのつなぎとすべき」とする。
研究では第六世代戦闘機(侵攻型制空戦闘機PCA)の開発を優先すべきでF-35Aの年間70機調達を急ぐべきとしている。
PCAの実態は不明だが、極秘事業として開発は初期段階にある。研究では高速長距離性能のシステムファミリーとして敵領空深くに侵攻し防空体制を無力化し僚機に侵入口を開く機材と想定している。
PCA開発を促進すれば2030年までに最低50機の導入は可能で、B-21開発事業を範とすべきとする。「成熟技術を最大限活用し他機で開発ずみのミッションシステムを採用すれば時間と費用を短縮してPCAが実現できる」とあり、「同機の性能はいますぐにでも必要であり、開発に最高度の優先順位をつけるべき」としている。
CSBAはF-35の運用機数が増えることを前提にF-16の順次退役も提言する。またF-22ラプターおよびF-15Eの近代化改修も提言。A-10ウォートホッグ10個飛行隊は2030年代までに予定通り退役させるが近接航空支援の専用機材は整備すべきでないとしている。
「将来の精密攻撃可能な機材で近接航空支援能力も可能となるので空軍はA-10後継機として航空優勢が確保された環境でしか運用できない機材は開発すべきでない」


給油機


空軍の給油機457機で機齢平均が53年となっているように給油機は旧式化しており、将来の脅威環境に対応できない。そのため空軍は最新の給油機ボーイングKC-46調達を継続しKC-10の全機退役から始めKC-135も順次退役させるべきとCSBAは説明。
2030年までにKC-10は全機KC-46に置き換え、KC-135で最古参の50機を退役させる。KC-46が179機そろうと給油機は合計520機になる。
その時点でKC-46は改修し「通信状況認識中継点として多ドメイン運用の支援ならびに脅威への対抗手段機能の実施」を可能にすべきと提言している。
さらにKC-46に続く給油機を早期開発し630機体制を確立すべきとする。CSBAの考える将来の給油機は米国内でKC-46等有人機を運用し、国外では小型無人機を任意有人操縦機として厳しい空域で運用するもので戦闘機等の燃料需要に分散型の「オフロードポイント」を確保する。
小型無人給油機を制空権が未確保だが低脅威度の空域にも進出させれば「侵攻機の飛行距離を延長させ」つつパイロット等の人命を危険にしない方法が実現できると報告書は指摘。


ISR/軽攻撃無人機の将来像
2030年時点の米空軍はMQ-9リーパーを今日同様に供用するが、使用用途はかわり、本土防空任務にもあてる。だがCSBAは「喫緊の必要」としてステルス戦闘UAVのMQ-X開発をあげ、攻撃、電子攻撃、叡空任務をこなし他の無人機有人機との共同作戦もできる機体を想定する。


各種ステルスUCAVの開発が中途で挫折している。一例が海軍が進めていた空母運用型攻撃偵察機UCLASSで、2016年に中止となり、その後MQ-25給油無人機として復活した。
CSBAは空軍はこうした経験をもとに「敵の強固な防空体制の中に侵入し残存可能なUCAVをMQ-Xとして至急開発すべき」と述べている。MQ-Xは68機必要とし、すぐ開発開始すれば2030年頃には40機がそろうと述べた。
An MQ-9 Reaper at Nigerien Air Base 101, Niger. (Joshua R. M. Dewberry/U.S. Air Force)
An MQ-9 Reaper at Nigerien Air Base 101, Niger. (Joshua R. M. Dewberry/U.S. Air Force)


空軍はファミリー構成の無人機をMM-UASつまり多任務無人航空システムとして配備し現行無人機各種と2030年代に交代させるのがよいとCSBAは述べている。MM-UASは既存技術をもとにするか現行機材を発展させてもよいとある。
新型機は航空優勢が確保ずみ空域、未確保空域双方に投入され偵察、空爆、通信中継等各種ミッションをこなす。


ISR とBMC2 機材
空軍の全装備中でもISR機材および戦闘管理統制指揮機材ほど革新的変化が2030年代に必要となる機材はないとCSBAは考察。
U-2スパイ機、RQ-4グローバルホーク無人機、E-3早期警戒機はそれぞれ2030年まで運用を続けるべきとある。RC-135ファミリーの特殊任務機材リヴェットジョイント、コブラボール等は2040年代にかけ供用可能だ。ただしE-8CJSTARS地上監視機は2020年代中頃に退役が必要となり、そこで生まれる能力ギャップは他機種で埋めるべきと同シンクタンクは考えた。
CSBA予測で空軍に高性能戦闘管理システムが登場するのは2030年代初期とし、21組のシステム導入を提言。
空軍が考える高性能戦闘管理システムは各種システムの組み合わせファミリー構造で指揮統制機能だけでなく偵察監視機能を対地、対空で分散型で実現し、制空権の未確立空域への投入も想定する。ただし、空軍は統合するセンサー、機体、通信機器の種類を明示していない。
これに対しCSBA提言はは大きく異なり、敵地侵攻型ISR無人機P-ISR)を2030年代中に開発し、「空軍の状況認識機能の将来像として最大の優先順位をつけるべき存在」としている。
現時点で空軍にそのような機材の開発構想はない、少なくとも公表ずみの案はない。だがCSBA報告書は無人スパイ機が将来のロシア、中国との武力衝突で大きな役割を果たすと予見する。
「長距離侵攻型ISR機材は北大西洋条約加盟同盟国へ侵攻する装甲車両部隊等の阻止攻撃に不可欠になる」としロシア想定の戦闘を想定している。「また移動式地対空ミサイルの探知、把握、追尾、捕捉にも必要な装備となり、中国、ロシアの接近阻止領域拒否用ハイエンド装備への対応にもつながる」■