2019年4月3日水曜日

EMP攻撃の悪夢 北朝鮮の小型核爆発で米本土は壊滅的被害を受ける では日本は?

コメントは下にあります。




North Korean EMP Weapons: Is America Vulnerable?

北朝鮮のEMP攻撃に米国は脆弱なのか

Or is this a myth?
March 20, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldEMP

ャック・リューやジェフリー・ルイスのような優れたアナリストのおかげで北朝鮮のミサイル、核開発の現状を一般大衆は知ることができている。また「情報量豊かな解説」にも触れている。
ただし両名は北朝鮮による電磁パルス(EMP)攻撃は、「ありえない」「SFの世界だ」として解説していない。両名は10キロトンないし20キロトンの北朝鮮保有の核弾頭では効果あるEMP攻撃実施は不可能と見ている。だがEMPによる電子装置への影響を調べるテストは1963年から実施されている。
米議会は電磁パルス攻撃による米国への脅威度評価委員会を2001年に諮問機関として設置し、議会、大統領、国防総省等に核爆発によるEMP攻撃の軍事装備、民間重要インフラへの影響を調査させた。同委員会は2015年に再結成され、太陽嵐のような自然現象のEMP効果、人為的EMP効果全て、サイバー襲撃、妨害工作、統合サイバー戦も検討対象に含めた。EMP委員会は極秘データへのアクセスを許され国防総省に勧告する権限を与えられた。
以下、読者各位にEMP脅威の実態を伝え、流布している説明、分析あるいは俗説を正したい。
初歩的核爆弾、「スーパーEMP」の核爆発はともにEMP脅威を生む
EMP委員会がみつけたのは初歩的低出力核兵器でもEMP脅威を十分生むことができ、北朝鮮のような無法者国家あるいはテロリストがEMP攻撃を実施することは可能と言う点だ。[1] 2004年版報告書では「比較的低出力核兵器で破滅的効果につながるEMP効果を広範囲の地上にもたらすことは可能で過去25年にそうのような兵器が悪意ある勢力の手に渡った可能性がある」と同委員会は指摘していた。
2004年にロシア人EMP専門家将官二名がロシアのスーパーEMP弾頭は1メーターあたり20万ボルトのEMP場を生む能力があり、「誤って」北朝鮮に運ばれたとEMP委員会へ注意喚起した。搬送されたのは「頭脳流出」が理由だったという。北朝鮮にはロシア科学者がおり、ミサイル、核開発を支援している。韓国軍情報部は北朝鮮内のロシア科学者がEMP核弾頭の開発を助けていると報道陣に語っている。2013年には中国の軍事評論家が北朝鮮がスーパーEMP核兵器をすでに保有していると語っている。 [2]
スーパーEMP兵器とは低出力で爆発威力を追求せず、を高レベルガンマ光線を放出し高周波E1 EMPを生むねらいに特化した兵器で、電子製品を広範囲で損傷させるのが目的だ。北朝鮮の核実験では2006年の初回からこのスーパーEMP兵器と同じ出力を一貫して試している。上記ロシア将官は北朝鮮核実験の開始を正確に予言し、出力についても同様だったので北朝鮮がスーパーEMP兵器を保有中との指摘を真剣に受け止めるべきだ。
衛星からのEMP脅威
アナリスト陣では北朝鮮がいつ信頼性の高い大陸間弾道ミサイル、誘導装置、再突入体を完成し米本土をねらう戦力を整備するかに気を取らる傾向が強く、EMP脅威は概ね無視されている。EMP攻撃には精密誘導装置は不要だ。効果範囲は数百、数千キロと広大なためだ。再突入体も不要で弾頭は大気圏外の高高度で爆発させればよい。ミサイルの信頼性も関係ない。EMP攻撃にはミサイル一本あればよい。
例として北朝鮮が米国へのEMP攻撃で短距離ミサイルを沖合の貨物船、あるいは潜水艦から、あるいは気球を使い高度3万メートルから発射したとしよう。低高度EMP攻撃で米本土全てを攻撃対象にできないが、東部の配電網を使用不能にできれば、米国の電力需要75パーセントを占める人口稠密地帯が影響を受ける。
さらに北朝鮮衛星でEMP攻撃が実施できる。EMPあるいはスーパーEMP兵器は小型軽量にでき、形状は米W-79核砲弾に似る。この大きさなら北朝鮮の光明星3号Kwangmyongsong-3 (KMS-3)あるいは光明星4号に搭載できる。両衛星は地球周回軌道上にあり、極周回軌道のため米弾道ミサイル早期警戒レーダーや国家ミサイル防衛体制の探知を逃れる。これはロシアが冷戦中に極秘開発した部分軌道周回爆撃システムFractional Orbital Bombardment System (FOBS)に類似し核弾頭を搭載した衛星で米国を奇襲攻撃する構想だった。 [3]
金正恩は「核の雷電」で米国を「灰燼」に帰すと恫喝し、米国の外交軍事圧力には「衛星発射を可及的速やかに実施させる」と発言したのは「敵勢力がこちらの息の根を止めようと厳しい制裁措置を加えている」さなかでのことである。[4]
誤った理解を正す
ジェフリー・ルイス、ジャック・リューによる北朝鮮EMP能力評価は根本的に誤っている。[5]
まずルイスは「ホノルルで街灯一系統が点灯しなくなっただけだ」と1962年のスターフィッシュ・プライム高高度核爆発テストについて述べEMPは無害とする証拠にしている。[6] 事実は36系統で街灯が消え、電話通信の高周波中継局がダウンし、高周波無線リンク(長距離通信用)が消え、盗難警報が使えなくなり、その他にも損害が生まれた。ハワイ諸島で壊滅的な長期停電が発生しなかったのはEMP界の外縁部分に位置したためで、かつ当時は真空管中心だったためだ。ゆっくり到達するE3パルスはハワイ事件では少なかったが、長距離配電系統へ大きな影響を与えていたはずだ。
スターフィッシュ・プライム以外の実験もあった。ロシアは1961年から62年にかけ高高度核爆発を連続実施しEMP効果をカザフスタンでテストした。この面積はほぼ西欧に等しい。 [7] テストでカザフの配電網に被害が生まれた。[8] さらに今日の電子装置は低電圧作動の設計が中心のためEMP効果に脆弱で、スターフィッシュ・プライムやカザフスタン実験の1962年当時と異なる。米本土上空で同様のEMPが発生すれば相当の脅威となる。 [9]
ルイスによればEMP発生時でも自動車は影響を受けないとあり、その根拠として車両対象のEMPシミュレーションで55台中動けなくなったのは6台だけだからとする。[10] だが、EMP委員会のテストでは自動車に損害を与える効果は想定しなかった。修理費用を計上していなかったためだ。この際でさえ一台が破損し、少なくとも2パーセントの車両が大きく損傷した。50年に渡るEMP実験では完全効果のEMPなら2パーセントでは済まないと判明している。現在の自動車ははEMPにさらに脆弱だ。電子装備が当時より広範囲に搭載されている。さらに自動車の走行にはガソリンスタンドでの燃料補給が必要だが、停電となればガソリンを出せない。ポンプ自体がEMP被害を受けている可能性もある。
ジャック・リューはネヴァダ州上空核実験で発生したEMPでラスベガスが停電にならず、EMPは脅威でないと記している。ただしリューが触れた核実験は大気圏内で行われ、発生したEMPは5マイルにとどまっていた。高高度EMP(HEMP)は高度30キロ以上の大気圏外爆発を意味し、範囲は数百キロ数千キロに及ぶ。
リューは計算間違いもしている。「20キロトン爆発が適正高度で発生すれば最大EMP効果は20キロ地点までとなる」とし、「15千ボルト/メートル以上」のE1要素がないと損傷が発生しないからとする。この数字はシステム被害を発生させる閾値を過大評価している。電子システムの損傷や妨害を発生させるE1界強度はリューのいう「15千ボルト/メートル以上」よりはるかに低い。半導体デバイスに1メートル電線をつなぐ、つまりマウスのコードや接続コードは低出力核爆発の場合数百マイル離れても数千ポルトの電流をマイクロエレクトロニクス部品に与える。EMP実験に繰り返し立ち会った経験でいうと半導体の作動は数ボルトでも作動範囲を超えれば破損し、さらに接続部分の破損につながる。
さらにリューはシステム上の混乱も弱みとなることを無視している。デジタル電子部品に数ボルトでも高いパルスが流れれば作動異常となる。給配電網の無人制御装置、長距離通信リピーター施設、ガスパイプラインのいずれでも電子的に混乱が発生すれば永続的損傷につながる。一時的に電子装置の作動が乱れても軍では決定的な結果につながる。いかなる電子装置も強化措置を受けたり試験検証されないかぎりEMPの影響を受けないとは言えない。高度に重要ながら防護されていない電子装置がEMPシミュレーションテストで破損あるいは妨害をうけており、「15千ボルト/メートル以上」ではなく1,000ボルト/メーターが脅威だ。
このため10-20キロトン低出力核兵器でもEMPは未防護装備に危険な事態を引き起こす。EMP委員会の2004年報告書は米軍で民生品利用が広がっていることに警句を述べ、EMP防護措置がないことを特記している。「高性能電子装備への依存度が高まる一方で高性能装備はEMPへの脆弱性が一層高まっており、放置すれば敵勢力にとって訴求力のある攻撃手段となる」[11] 北朝鮮の2017年4月29日ミサイルテストの爆発地点は高度72キロで10キロトン弾頭によるEMP攻撃の最適高度だった。この場合に実際に損害を与えるEMP界は推定半径930キロとなり、リューのいう20キロ半径は計算ミスだ。
米国はEMPにどこまで脆弱なのか
米軍や民間重要インフラのEMP脆弱性を見れば、高度にネットワーク化された装備の複雑な相互依存関係を意識する必要がある。EMPでその一部でも損傷・妨害すれば全体のシステムが作動しなくなる。 [12]
現実には給配電網で各種要因で機能停止が発生しており、EMP委員会、国防総省、連邦エネルギー規制委員会、国土保全省、国防脅威削減疔はすべてEMP攻撃で壊滅的効果が生まれると見ている点で正しい。一地点で電力網が被害を受ければカスケード効果で多方面にひろがり給配電網全体が使えなくなり、全体の1パーセント未満の損害から影響が拡散する。[13]
一地点での停電や小規模事故による停電とちがい、核EMP攻撃による広範囲障害が給配電網で発生すると被害が数百万地点に広がる。米国の給配電網は大部分が強化措置を受けておらずまた核EMP効果に耐えられるかテストも受けていない。米本土が核EMP攻撃を受けた場合、広範囲の停電が長期間続くことは避けられない。[14]
そのため北朝鮮保有の核兵器が初歩的かつ低威力だとしても、また別の国家やテロ集団が同様の兵器を高度30キロ以上で爆発させれば、EMP委員会の2004年報告書で警告したように「損害レベルは壊滅的効果を国家に与える。現在の脆弱性が攻撃を招きかねない」のだ。■
William R. Graham served as President Ronald Wilson Reagan's Science Advisor, Acting Administrator of the National Aeronautics and Space Administration (NASA), and Chairman of the Congressional EMP Commission.
[1] John S. Foster, Jr., Earl Gjelde, William R. Graham, Robert J. Hermann, Henry M. Kluepfel, Richard L. Lawson, Gordon K. Soper, Lowell L. Wood, Jr., and Joan B. Woodard, Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack, Volume. 1: Executive Report (Washington DC: EMP Commission, 2004), 2.
[2] Peter V. Pry, Statement Before the United States Senate Subcommittee on Terrorism, Technology, and Homeland Security Hearing on Terrorism and the EMP Threat to Homeland Security: “Foreign Views of Electromagnetic Pulse (EMP) Attack,” March 8, 2005, https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CHRG-109shrg21324/pdf/CHRG-109shrg21324.pdf.; Min-sek Kim and Jee-ho Yoo, “Military Source Warns of North’s EMP Bomb” JoonAng Daily, September 2, 2009; Daguang Li, “North Korean Electromagnetic Attack Threatens South Korea’s Information Warfare Capabilities” Tzu Chin, June 1, 2012, 44-45.
[3] Miroslav Gyűrösi, “The Soviet Fractional Orbital Bombardment System Program,” Air Power Australia, January 27, 2014, http://www.ausairpower.net/APA-Sov-FOBS-Program.html.
[4] Alex Lockie, “North Korea threatens ‘nuclear thunderbolts’ as US And China finally work together,” Business Insider, April 14, 2017, http://www.businessinsider.com/north-korea-us-china-nuclear-thunderbolt-cooperation-war-2017-4; “US General: North Korea ‘will’ develop nuclear capabilities to hit America,” Fox News, September 20, 2016, www.foxnews.com/world/2016/09/20/north-korea-says-successfully-ground-tests-new-rocket-engine.html.
[5] Jeffrey Lewis, “Would A North Korean Space Nuke Really Lay Waste to the U.S.?” New Scientist, www.newscientist.com/article/2129618; Lewis quoted in Cheyenne MacDonald, “A North Korean ‘Space Nuke’ Wouldn’t Lay Waste To America” Daily Mail, May 3, 2017, http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-4471120/A-North-Korean-space-nuke-WOULDN-T-lay-waste-America.html.; Lewis interviewed by National Public Radio, “The North Korean Electromagnetic Pulse Threat, Or Lack Thereof,” NPR, April 27, 2017, www.npr.org/2017/04/27/525833275.; “NPR hosts laugh hysterically while America remains in the cross hairs of a North Korean nuclear warhead EMP apocalypse,” Natural News, May 1, 2017, www.naturalnews.com/2017-05-01-npr-laughs-hysterically-north-korean-emp-nuclear-attack.html.
[6] Lewis, “Would A North Korean Space Nuke Really Lay Waste to the U.S.?”
[7] 高高度EMP(HEMP)は高度30キロ以上での核爆発で発生する。広島型原爆でもHEMPの発生は可能で広範囲で電子装置が破壊される。
[8] Electric Infrastructure Security Councilの報告書Report: USSR Nuclear EMP Upper Atmosphere Kazakhstan Test 184, ( www.eiscouncil.org/APP_Data/upload/a4ce4b06-1a77-44d-83eb-842bb2a56fc6.pdf), によればOak Ridge National Laboratoryでの研究内容を引用しており, 同様のEMP攻撃が現時点で米本土に行われれば「全米365地点の変圧器が損傷し、米人口4割が電気のない生活を4年から10年強いられる」
[9] Foster, et al., Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack, Volume. 1: Executive Report, 4-8.
[10] Lewis, “Would A North Korean Space Nuke Really Lay Waste to the U.S.?”
[11] Ibid., 47.
[12] John S. Foster, Jr., Earl Gjelde, William R. Graham, Robert J. Hermann, Henry M. Kluepfel, Richard L. Lawson, Gordon K. Soper, Lowell L. Wood, Jr., and Joan B. Woodard, Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack: Critical National Infrastructures (Washington, D.C.: EMP Commission, April 2008), http://www.empcommission.org/docs/A2473-EMP_Commission-7MB.pdf.
[13] 例として the Great Northeast Blackout of 2003では 50 百万人が丸一日電気がない生活を強いられ、少なくとも11名が死亡し推定$6 の損害が発生したが、きっかけは電力ケーブルが木に接触した1件だったのでシステムの0.00001%が影響を与えたことになる。ニューヨーク市のBlackout of 1977では4,500件の強奪、警察官550名の負傷となったがきっかけは変圧所への落雷で回路遮断器が作動したことだった。インドの2012年全国停電は 670百万人に影響が出た最大規模の事件で高圧電線の過負荷が原因だった。
[14] US FERCのモデルではテロリスト攻撃で2,000箇所ある EHV 変圧所のうち9箇所つまり0.45%がダウンすれば全国規模の長期停電になると推定している。議会EMP委員会ではテロリストによるEMP攻撃で10キロトン核兵器が使われた想定でEHV変圧器十数箇所が破壊されると給配電網は壊滅し米東部が停電し数百万人の生命が危険となるとした。 For the best unclassified modeling assessment of likely damage to the US national electric grid from nuclear EMP attack see: US Federal Energy Regulatory Commission (FERC) Interagency Report, coordinated with the Department of Defense and Oak Ridge National Laboratory: Electromagnetic Pulse: Effects on the U.S. Power Grid, Executive Summary (2010); FERC Interagency Report by Edward Savage, James Gilbert and William Radasky, The Early-Time (E1) High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) and Its Impact on the U.S. Power Grid (Meta-R-320) Metatech Corporation (January 2010); FERC Interagency Report by James Gilbert, John Kappenman, William Radasky, and Edward Savage, The Late-Time (E3) High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) and Its Impact on the U.S. Power Grid (Meta-R-321) Metatech Corporation (January 2010).
コメント EMP攻撃で影響を受ける範囲は広大です。電力、通信、データが消滅した社会は想像もできません。光ファイバーは影響を受けなくても両端のデバイスは被害を免れませんし、現在の社会では現金より電子上の決済が多いためEMPでこれが消えれば経済は大損害を受けます。電気が止まれば水道も使えなくなり、自動車の点火装置が破壊されれば用をなさなくなります。航空機は飛行できず次々に墜落するでしょう。震災には影響を受けない地域から援助ができましたが、全国規模で電気通信が使えなくなればなにもできません。自衛隊がどこまで防護措置をしているかわかりませんが、国防どころではなくなります。つまり一瞬にして私達の今の社会が明治初期に戻ることになり、復旧まで数十年かかるでしょう。ではこんな攻撃をして北朝鮮になんの得があるのか。米本土へのEMP攻撃には米軍がもっと強靭なEMP攻撃を加えますが、旧式装備中心の北朝鮮社会には以外に影響は少ないかもしれません。EMP攻撃が悪夢と言われるのはわかる気がします。

2019年4月2日火曜日

歴史に残らなかった機体(14)ノースロップYB-49全翼機はB-2の先祖

歴史に残らなかった機体(14)と呼ぶのがいいのかわかりませんが、制式採用もされていないので一応この分類にしておきます。コメントは下にもあります。




Meet the YB-49 Bomber: It Looks Like a Stealth B-2 (But Built in the 1940s) B-2そっくりのYB-49爆撃機は1940年代に生まれた機体

An amazing bomber ahead of its time. 時代の先に行き過ぎた驚異の爆撃機
March 27, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: YB-49MilitaryTechnologyWorldB-2Air Force


二次大戦に近づく米国には革新的な航空機製造会社が多数あり、潤沢な予算と言う贅沢さがあり、戦闘機、攻撃機、長距離爆撃機が生まれた。この内最後の分野から米航空産業で最も興味を引く失敗作が生まれた。ノースロップYB-49「全翼機」だ。
全翼機
 航空技術陣は「全翼機」の可能性に早い段階から注目していた。胴体を最小限にし尾翼を廃して通常機に見られる空力特性の妥協と無関係となる。ただし飛行安定性が犠牲になった。このため操縦が困難で当時はフライバイワイヤ技術も確立されていなかった。また機内に充分な空間を確保できず、ペイロードや武装を搭載すれば空力特性が犠牲になった。
 それでもドイツ、ソ連の技術陣は第二次大戦前に全翼機の製造を試み、輸送機あるいは軍用機への応用を目指した。ここから有益なデータが得られたが実用化されなかった。第二次大戦末期にドイツがジェット推進の全翼機を開発したが本格生産できなかった。
XB-35 から YB-49へ
 第二次大戦初期に米戦略部門は英国が陥落した場合、米本国から直接ドイツ爆撃をする事態を想定した。米陸軍航空隊の要求でボーイング=コンソリデーテッド共同事業(後のコンベア)とノースロップからそれぞれ提案が出た。前者はコンベアB-36ピースメイカーとなり、後者はXB-35だった。B-36は通常型設計の延長であり、多少の新規趣向はあったが当時の爆撃機の大型版といってよい。これに対しXB-35は軍用機として全く新設計の全翼機で、B-36より小型ながら性能諸元の多くは同程度であった。
 1944年までにXB-35はB-36に差をつけられていたが両機ともに問題を抱えていた。同時に大西洋横断爆撃の必要性も消えた。陸軍航空軍はB-36、XB-35は旧式化と判断したが後者を開発中止とした。それはB-36のほうが問題解決が容易と判断したためだった。だが空軍は全翼機構想への関心を捨てず、XB-35をジェット機に再設計する要望を出した。ノースロップは未完のXB-35機体にジェットエンジンを搭載しまず三機を改装した。
 ジェット化で最高速度は493マイルとピストン時代より2割伸びた。YB-49の名称がつき実用上昇限度も伸びソ連迎撃機の追撃を逃れる性能を期待された。ただし燃料消費が著しいエンジンのため戦闘行動半径は縮小し、長距離飛行性能を有するB-36より見劣りがした。YB-49はB-36に速度で勝っていたもののボーイングのB-47ストラトジェット中型爆撃機にかなわなかった。
妨害工作だったのか?
 YB-49試作機各機は悪運がついてまわった。一機は五名の搭乗員とともに1948年6月に空中分解で墜落した。もう一機はタキシー中に機首降着装置が折れ、火災全損した。この事故の直後、空軍はYB-49開発を1950年5月に取り消し、残る試作機は偵察型として1951年まで飛行したが1953年にスクラップ処分された。
 YB-49推進派は空軍が意図的に同機開発を妨害しB-36などを優遇したとの疑いを長く持っていた。ノースロップ社を設立したジャック・ノースロップはコンベアとの合併を拒んだためYB-49は空軍により採用されなかったと信じ込んでいた。YB-49試作機が相次いで事故喪失となって出回った暗い噂では事故ではなく妨害工作だとしていた。ただし今に至るまでこの裏付けとなる証拠は出ていない。
B-2
 その後数十年にわたりノースロップには全翼機が実現する日が来るとは思いもできなかった。B-2スピリットは投入技術こそ大幅に刷新したものの外観にYB-49との強い類似性が見える。実際に両機の翼幅は全く同じだ。ノースロップがB-2で全翼機形状を採用したのはレーダー断面積を小さくできるためだった。フライ・バイ・ワイヤ技術の進歩でB-2の操縦はYB-49,YB-35よりはるかに容易になった。ノースロップ・グラマンB-21レイダーも同様の機体形状といわれ、西安H-20戦略爆撃機やツポレフPAK DAも同様だ。
 YB-49は本格生産に移らなかったが、同機の知見から戦略爆撃機の設計を決定づけた構想の有効性が確立されたのである。■
Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

YB-49の映像は映画「宇宙戦争」(1953)で垣間見ることもできますが、その時点で実機はもう存在していなかったのですね。おもしろいことにリメイクといってもいい「インディペンデンスデー」(1996)にB-2が登場していたのはオマージュでしょうか。それよりも病床のジャック・ノースロップがB-2の模型を見て今まで余生をもらったのはこの日のためだったのかと神に感謝してその後逝去したエピソードのほうが感動を呼ぶのですが。あと、試作機で最初に死亡した機長の名前をからエドワーズ基地になったのでしたっけ

2019年4月1日月曜日

次期エアフォースワン予算はトランプ直々の交渉結果と逆に膨張していた

(コメントは下にあります)


The Two Sort Of New Air Force One Jets Now To Cost Nearly The Price Of A Nimitz Class Carrier 次期エアフォースワン機材2機の合計価格がニミッツ級空母一隻と同程度に

The total price tag for the program, which includes just two aircraft, has leaped by nearly a third to $5.3B.

事業費合計が当初より三割近く増え53億ドルに


BY TYLER ROGOWAYMARCH 24, 2019
MATT HARTMAN/SHOREALONEFILMS.COM


防事業は数々あるがエアフォースワン機材更新ほどここ数年関心を集めているものはない。トランプ大統領が自らボーイングに掛け合い大幅な予算節約を実現したと主張してきたからだ。だがその主張は中身がなく今や事業費合計が大幅増加している。
Defense Oneのマーカス・ワイズガーバーが事業経費がなんと53億ドルになったと明らかにした。ここには機材以外に必要な施設調達等を含む。これは空軍が以前公表していた事業費より三分の一程度ふくらんでいる。もっと心配になるのは機材そのものの価格とVC-25Bへの軍仕様改修で46.8億ドルになることだ。
空軍は約39億ドルとしていたので780百万ドルほど増えたことになる。また空軍からDefense Oneに伝えてきた53億ドルと言う数字自体が関心を集める。
2018年、ホワイトハウスはトランプが喧伝したボーイングとの交渉で15億ドル節約できたと発表したが、The War Zone 他は最終価格は空軍が以前発表していた試算と変化ないと述べている。ただし39億ドル+15億ドルは54億ドルであり、関係装備すべて含むVC-25B2機の合計価格に近く、トランプ政権が主張してきた価格引き下げの信憑性が怪しくなる。
46.8億ドルは機材2機分であり、ともに新造機材ではなく、モハーヴェ砂漠で太陽の下におかれている747-8の2機で、倒産したロシアのエアラインTransero向けに製造されたもの。同社が2015年k,倒産しアエロフロートが同社資産の大部分を買い上げたが747-8の2機に関心を示さなかった。そこでボーイングは2機をカリフォーニアへ移動させずっと屋外保管してきた。


MATT HARTMAN/SHOREALONEFILMS.COM
買い手がなくなった747-8がエアフォースワンになる。2019年3月24日撮影。一機の周囲で動きが見える。
MATT HARTMAN/SHOREALONEFILMS.COM

トランプは大統領に就任するとこの事業に関心を示した。説明ではこの2機を次期エアフォースワンに改装すべくボーイングから未だ未公表の相当の金額で買い上げたとあった。
エアフォースワンのミッションは大切であるが、ニミッツ級原子力超大型空母一隻に匹敵する価格で2機調達と聞くと考えさせられる。全くの新造機体でないし、重要機能が予算節減で削除されている、たとえばVC-25Bで空中給油能力が省略されたが30年近いVC-25Aで当たり前だった機能だ。
機体調達価格を下げても、改装費用と供用開始費用を足せば史上最高額といわれたB-2Aスピリットステルス爆撃機の値札を越しそうだ。Defense Oneによれば施設整備他関連費用を入れれば海軍発表のニミッツ級原子力空母の空母史上最高額45億ドルを超える。
ニミッツ級の建造費用で一番高い試算でも62億ドルと次期エアフォースワン取得費用と10億ドル未満しか違わない。Defense Oneが報じた数字で高い方には施設他関連経費が含まれるがヴァージニア級原子力高速攻撃型潜水艦二隻分に近い。


BOEING
VC-25B想像図


大統領の乗り物に安物はない。とくに空を飛ぶ際はそうだ。機体は電磁パルスに耐え、最新の防御装備や通信装置の搭載が必要だ。特別仕様のハードウェアや各種システムを統合する電源や冷却装置も必要だ。すべて適切に搭載し大統領の通話秘匿性を守る必要があり、同時に米国の核戦略を展開する能力を適切に発揮する必要もある。危機に際しエアフォースワン機上から大統領が最高軍事権限者として核使用を命令する。
それでもこれだけの予算規模は気になる。真水経費は53億ドルとなっている。2機と支援設備分だ。ボーイング747-8iの新機価格は4億ドル程度なのでVC-25A2機の6.5倍もの予算で機体艤装、転換作業をすることになる。しかもUSAFは全てをゼロから取得するわけではない。真反対の話だ。


AP
VC-25A「エアフォースワン」がアラバマにトランプ大統領を運んだ
.
たしかに747-8iは第1世代ジャンボの747-200と大きく異なる。だがUSAFはVC-25A改修を継続してきた。通信装置、防御装備は近代化され747による大統領移動の細部を空軍は把握している。したがって未体験業務になるわけでもなくサブシステムに至るまで全部更新されるわけではない。
747-8iを選択することで特有のコストも発生する。例えば専用の退避壕のような六角形格納庫がアンドリュース空軍基地にあるがVC-25A用で新型機に使えない。機体が僅かに大型化するため施設を新規建築する必要がある
GOOGLE EARTH.
アンドリュースAFBのVC-25A専用格納庫


DOD

現時点でUSAFが支出するVC-25B開発が別事業に応用される可能性は皆無に近い。また747-8i生産は2020年代に終了する見込みだ。現在の受注残24機は作業量として2年分だ。今後の大幅受注は考えにくい。そうなると新型エアフォースワンが就航するころに747生産ラインは閉鎖になっていておかしくない。
USAFはC-32A、E-6B、E-4B各機の後継機を共通化できないか検討中で、機体サイズは747-8iより小型化できる。KC-46が767派生型として軍用仕様になったため候補となる。VC-25B開発費用はすべて一回きり支出となる。しかもたった2機のために。Defense Oneの数字を借り一機あたり経費が26.8億ドルあるいは低い方の数字を使えば23.4億ドルとなる。
これだけの規模の支出を空軍はどう正当化するのか、その内訳に大いに興味を惹かれる。だがエアフォースワンと搭載装備には秘匿情報が多く、ニミッツ級超大型空母一隻に匹敵する規模の費用が発生する理由を一般国民が理解できる説明は出てこないだろう。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

トランプは不動産ビジネスで名を遂げたビジネスパーソンですが、国防分野のからくりはそれでも理解に苦しんでいるのでしょうね。あまりにも民間分野とことなるためです。大幅値下げに成功したと大見得を切っていましたが蓋をあければ他に潰しが効かない巨額事業になっていましたというのは笑いごとで済まされません。本人がどのようにコメントするか見ものです。

2019年3月31日日曜日

アジア太平洋初のF-35A実戦部隊が日本で誕生 航空自衛隊302空

Japan declares F-35A squadron initial-operation capable

日本がF-35A飛行隊の初期作戦能力獲得を宣言

Japanese F-35A
F-35 Joint Program Office


29 MARCH, 2019
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: GARRETT REIM
LOS ANGELES

空自衛隊初のF-35A運用部隊として302戦術飛行隊が3月29日新体制で発足した。
同隊は第3世代三菱F-4EJ改をF-35に機種転換した。三沢航空基地で運用する。
F-35の実戦飛行隊は米海兵隊、米海軍、米空軍、イスラエル空軍、イタリア空軍、英空軍、英海軍で運用中でここに日本が加わった。
「F-35事業で大きな一歩になった。インド太平洋でIOCを獲得した初のF-35部隊だ」とF-35事業統括のマット・ウィンター中将が語る。「今回の成果は事業がグローバル化している証拠であり、F-35共同事業推進室(JPO)は同盟国日本との長年に渡る絆を重視する。当JPO、日本側F-35事業推進体制、産業界協力企業、航空自衛隊の間の協力関係あってこそ今回の達成となった」
302飛行隊配属の初号機は三菱重工業がF-35向け最終組立点検施設がある名古屋で製造した二号機だ。日本はイスラエル、韓国、ベルギーとならび海外軍事販売制度による同機導入国である。
JPOによれば生産型F-35は360機生産され世界各地に納入されている。各機合計で177千時間を飛行しており、養成パイロットは760名、整備要員6,900名が訓練を修了し機材支援にあたっている。■
Asset Image
Japanese F-35A
F-35 Joint Program Office

29 MARCH, 2019
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: GARRETT REIM
LOS ANGELES

日本が開発中の超音速対艦攻撃ミサイルに注目


Japanese MoD Moves Closer to Operationalization of ASM 3 Anti Ship Missile 2
Two XASM-3 missiles fitted on a Japan Air Self-Defense Force F-2 Fighter during recent tests (May 2017). Picture via twitter user @MR2AW11SP

Supersonic Strike: Japan Has Some Big Plans to Sink China's Navy In a War 超音速攻撃で中国艦を撃破する日本の遠大な計画

March 23, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanChinaSupersonic WeaponsAnti-ship MissilesPLAN

本が空中発射式長距離対艦巡航ミサイルの開発を進めている。中国が長距離空対空ミサイルミサイルを開発中のため日本側機材は対艦兵器を遠距離地点で発射しないと撃墜されるリスクが増すためだ。
岩屋毅防衛大臣は「一部諸国」の艦船で長距離防御力 が整備されていると発言したが大臣の真意が特定国であるのは疑う余地がない。
毎日新聞は「超音速ASM-3空対艦ミサイルの射程を現在の200キロ未満から400キロ超にし、南西島しょ部の防衛力を増強する案」を伝えている。
「F-2が2030年代に退役となるが岩屋防衛相は後継機に射程距離を伸ばしたミサイルを搭載すると述べた」(毎日新聞)。日本は国産ステルス戦闘機F-3の開発中だ。
ここで興味を惹かれるのは日本はASM-3開発を昨年完了したばかりで新ミサイルを開発することだ。ASM-3はF-2からの発射想定で低高度で標的艦船に直進する、または低空で発射し標的直前で「ポップアップ」して突入することが可能だ。
Japanese MoD Moves Closer to Operationalization of ASM 3 Anti Ship Missile 1
A “concept of use” infographic published by Japanese MOD (Ben Rimland/Navy Recognition translation)
日本はノルウェイ製共用打撃ミサイルで長距離対艦攻撃手段導入を決めており、F-35に搭載し350マイルまでの射程が手に入る。
ASM-3はマッハ3で有効射程は100マイル超で10年前なら中国海軍に大打撃を与えただろうが、PLANは新世代艦艇を就役させており、052D型誘導ミサイル駆逐艦などはHHQ-9対空ミサイルを搭載する。これは陸上配備型のHQ-9の派生型だ。HQ-9の射程が75-125マイルなのでASM-3を搭載した日本機も楽に中国の防空の盾に入れない。
だが日本が長距離対艦ミサイルの開発に向かう別の理由もある。中国が空母群の整備に向かっており艦載ジェット機により防空範囲が更に伸びるためだ。
この状況には冷戦時を思い起こさせるものがある。当時はミサイル装備のソ連爆撃機のTu-22Mバックファイヤなどが米空母のF-14トムキャットと対決する想定で、米戦闘機はソ連爆撃機のミサイル発射前に迎撃を目指した。冷戦が熱い戦闘に変わっていれば、バックファイヤがミサイル攻撃で米空母部隊を圧倒するのを防ぐのが課題になっていただろう。
もう一つ興味を引くのは日本が各種装備の有効射程範囲をのばそうといていることだ。第二次大戦の惨禍を経て、極端なまで平和主義となった日本は防衛力を着々と整備しつつ日本本土を遥か離れた地点での作戦実施は目指してこなかった。だが平和主義は後退しつつあるようだ。
安倍晋三首相は昨年の国会答弁で長距離巡航ミサイルは憲法違反ではないとの考えを開示したと毎日は伝えている。
日本はF-35Bを空母そっくりの「ヘリコプター駆逐艦」で運用する方針を定めている。新規の航空戦戦略では米製スタンドオフ空対地ミサイルの導入を想定している。長距離対艦ミサイルはその延長となる。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

2019年3月30日土曜日

★時代の先を行き過ぎたYF-23がF-3として復活する可能性はあるのか

コメントは下にあります。

Study This Plane: It Could Be Japan's New Stealth Fighter

この機体に注目 日本の新型ステルス戦闘機の原型になるかも
March 29, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarJetsYF-23

空任務に主眼を置く航空自衛隊向けステルス戦闘機F-3の開発で日本が海外提携先を模索している。ロッキード・マーティン提案のF-22ラプターとF-35ライトニングIIのハイブリッド版に注目が寄せられたが、一部にF-22のライバルで採用に敗れたノースロップYF-23ブラック・ウィドウIIが復活すると見る向きがある。同機は性能面でラプターを凌駕していたといわれる。
1981年、ペンタゴンは高性能戦術戦闘機(ATF)競作を開始しソ連Su-27フランカーやMiG-29フルクラムにドッグファイトで勝利できる次世代ステルス戦闘機の実現を目指した。当時ステルス機といえばF-117ナイトホークもまだ開発中であり、同機に空対空戦の想定や超音速飛行高性能はなかったので新型機の想定は大きく飛躍した内容だった。米空軍はATFにスーパークルーズ機能も盛り込み、技術的な課題にもなった。
1986年、ATF競作はロッキード・マーティンとノースロップに絞り込まれYF-22およびYF-23試作機を4年以内に完成させることとした。その時点で両社はステルス機の知見をある程度蓄積しており、ロッキードはF-117、ノースロップにはB-2爆撃機があった。ノースロップはマクダネル-ダグラスを請負企業に巻き込んだ。.
ロッキードYF-22も印象深い外観となったがYF-23はブラック・ウィドウIIの名称がつき別世界の機体の漢があり、主翼はダイヤモンド形状でステルス性能を確保し、細長くした機体側面はSR-71ブラックバードを想起させた。大型尾部フィンはフライバイワイヤで回転させ、ヨー、ロール、ピッチを調整した。
ノースロップは試作機を2機制作し、まず暗灰色のPAV-1「スパイダー」が1990年6月に、明灰色のPAV-2「グレイゴースト」が同年10月に進空した。前者はラプターと同じプラット&ホイットニーF119ターボファンを採用し、後者はジェネラル・エレクトリックYF120可変サイクルエンジンでターボジェット、ターボファンのモード切替で低速、高速域それぞれ最適性能をめざした。空気取り入れ口はS字状でレーダー断面積の縮小を図った。熱発生を減らすため排気は熱吸収タイル経由で温度を下げて放出された。
YF-23試作機のテスト飛行は65時間で、空中給油装備、兵装庫をそなえAIM-120長距離空対空ミサイル4本を搭載できた。生産型では20ミリヴァルカン砲と短距離用サイドワインダー2本を追加搭載の予定だった。一点ラプターにあってYF-23にない点があった。ラプターの推力偏向エンジン2基は水平方向に回転し、低速域で機敏な操縦性能を実現した。このためラプターが操縦性で優れると考えられたが、実際はYF-23が敏捷性で劣っていたわけでなない。迎え角60度70度を推力偏向なしで実現できたが空軍の評価時では25度制御しか見せなかった。
評価項目の大部分でYF-23はラプターより高得点で、超音速スーパークルーズ性能や航続距離性能を見せつけた。さらにレーダー断面積も小さく、とくに側面と後方の差は大きく被探知距離を短くした。
選考過程に詳しい筋によればロッキード・マーティンはYF-22の敏捷性をドッグファイトに詳しいパイロット中心の評価チームに見せつけた。またYF-23の機体価格が高額かつリスクが大きいと信じられていたが、ラプターでも137百万ドルから150百万ドルと非常に高額の値札がついていた。YF-22が洗練された印象を与えたのに対しペンタゴンはノースロップの事業管理能力に疑いの目を向けていた。B-2で遅延と価格上昇が著しかったためだ。契約をロッキードに交付して同社存続を図ったと見る向きもある。
空軍がこの時点で選考するとしたら、操縦性、航続距離、ステルス性能の違いからYF-23に傾くはずというのはなんとも皮肉だ。将来は視界外交戦が主流となり、機敏な操縦性より探知能力が最重要となる。さらに長距離性能がない機体は前方基地から運用となり敵ミサイル攻撃に脆弱だし、今日の空軍は広大な太平洋地区での作戦運用に必要に迫られているのだ。
空軍が構想中の第六世代戦闘機は侵攻制空航空機と呼称され長距離性能を操縦性より優先させる中、ロッキード案は不気味なほどYF-23と似ている。
選定に破れたもののノースロップがYF-23で盛り込んだ技術は消えたわけではない。10年以上たちノースロップはYF-23をもとに中距離ステルス爆撃機の売り込みをはかったものの空軍は同じノースロップのB-21に絞り込んだ。PAV-1はデイトンにある米空軍博物館で、PAV-2はカリフォーニアの航空博物館Western Museum of Flightに展示されている。
2018年、日本はF-3ステルス戦闘機の共同開発先を求め、ノースロップ・グラマンが熱意ある回答を出してきたと伝えられる。同社はYF-23復活をめざしたのか、いやもっと可能性のあるのは同機の機体構造とエンジン設計の一部を日本の技術と統合することだったのではないか。
その理由としてノースロップの原設計は1980年代で近代化が必要で、とくに当時のレーダー波吸収材塗布はF-22でも後から登場したF-35に比べ非常に高価だし、エイビオニクスも成熟化ないまま終わっていた。ただし自衛隊は完全新型機より既存機種や実証済み機体を原型とし改良を加える開発を好むはずだ。つまり三十年近く経過してブラック・ウィドウとラプターが二回目の対決に臨むかもしれない。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .

うーん 火の気のないところに煙は立たない、というものの、流石に今回はどうでしょう。マニアック、偏執狂的ともいえる内容なのですが、YF-23は時代を先取りしていたとはいえ、試作機のままで終わった未完の機体ですし、日本が製造元の戦闘機ビジネス継続に手を貸す必要もないでしょう。むしろ中国が同機をパクった(?)といわれる超音速中型爆撃機の存在に気をとられますけど、みなさんはいかが?