2022年10月26日水曜日

歴史に残らなかった機体 B-58ハスラーの不幸な生涯、偵察機としても花を咲かせなかった超音速高高度飛行を狙ったコンベアの失敗作

 

U.S. Air Force


米空軍は、マッハ2対応のB-58ハスラー爆撃機を偵察機に転用しようと試みたのだが...

 

ンベアB-58ハスラーは、冷戦時代に米戦略空軍で最も華々しい爆撃機として、今日も広く記憶されている。しかし、核爆弾だけでなく、デルタ翼のハスラーがスパイ機としても採用され、60年前の今月、ポッドに搭載されたレーダー偵察システムでキューバ危機のミッションにも飛行した。

B-58Aハスラー59-2442は、戦略航空軍で使用された後期の代表的な機種。ハスラーは様々な工夫を凝らしながらも、高速偵察機としてのポテンシャルを発揮することはなかった。U.S. Air Force

B-58は最高速度マッハ2.2、高度63,000フィート以上を誇り、戦略空軍の抑止力として核爆弾の自由落下投下を主な任務とし、偵察機としても最適な機体だった。また、「ミッション・ポッド」と呼ばれる、機体中心線上の格納庫に、武器、燃料、防御電子機器、センサーを様々な組み合わせで搭載できるモジュール性も有利な点だった。

YB-58Aハスラー55-0667に2分割のミッションポッドを試験搭載した。B-1-1と書かれた上段には武器と燃料が、B-2-1と書かれた下段に2つの燃料区画が収納され、空になった後に投下すると武器庫が露出し、攻撃時に使用する想定だった。 U.S. Air Force

RB-58Aハスラー 58-1011は2種類のポッド構成で、ハンドリングトロリーに2分割のミッションポッドが搭載されているのが見える。U.S. Air Force

B-58の初飛行の7ヶ月前、1956年4月には早くもRB-58A偵察機用ペイロードが提案されていた。当時、RB-58は爆撃機と同様、高高度を無人飛行すると期待され、そのミッションポッドは当時としては著しく先進的なものだった。光学センサーの代わりにヒューズのAN/APQ-69サイドルッキング・エアボーン・レーダー(SLAR)が搭載されることになった。これは50フィートの巨大アンテナを使い、高周波で航空機の側方の地形をスキャンし、詳細な地上画像を提供するねらいだった。

ハスラー用のAN/APQ-69ポッドの研究は1956年9月に開始されたが、サイズが大きすぎ燃料搭載ができなくなり、航続距離が大幅に短縮されると判明した。同時に、このポッドは標準的なMB-1ストア(燃料と武器)より長く、角ばっていたため、RB-58は亜音速運用に制限されてしまった。

 

 

戦略空軍のB-58Aハスラー乗員がMB-1ポッド搭載機で緊急発進する。 U.S. Air Force.

AN/APQ-69はセンサーとしての可能性が残っていたが、RB-58用ポッドは追求する価値がないと判断され、1958年にキャンセルされた。ヒューズは1959年2月にポッドを完成させ、B-58A 55-0668に搭載し飛行試験した。ポッド搭載のまま25回のテスト飛行が行われた。

ピーター・E・デイヴィスの著書『B-58ハスラーユニット』によると、同ポッドは「50マイルまでの距離で満足のいく結果を得た」という。解像度は10フィートのオーダーであった。これは当時としては印象的なセンサー性能であったが、ポッドを追加した結果、速度と射程距離が低下し、そもそもB-58に搭載するメリットが失われてしまった。

 

 

 

最終組み立て中のB-58Aハスラー60-1116。後方、右側に見えるのが2分割式のミッションポッド。U.S. Air Force

また、1958年には、メルパーのALD-4電子情報(ELINT)装置を搭載したB-58の電子偵察版の開発案もキャンセルされた。これは敵の電子通信を自動収集し、分析する想定であったが、代わりにSACのRB-47爆撃機に搭載されたが、B-58の宇宙時代の性能には及ばなかった。

それでも空軍は、ハスラーを偵察任務に活用する方法を検討し続けた。1958年6月、ライト航空開発センターの航空偵察研究所から全天候型偵察「システム」の要請があり、これを受けてコンベアはグッドイヤー・エアクラフトに提案を持ちかける。このプロジェクトは「クイックチェック」と名付けられた。

クイックチェックの結果、9番目に製造されたハスラー55-0668がテストベッドに改造された。この機体はYB-58A試作機として製造され、後にTB-58A練習機となったが、この試験作業のためRB-58Aとされ、愛称のピーピング・トムにふさわしい機体となった。

 

 

TB-58A練習機に改造された後、クイックチェック計画のテストベッドとなった55-0668 Peeping Tom。 U.S. Air Force

1960年6月、RB-58Aピーピング・トムはクイック・チェック・プロジェクトで改造され、大幅に改良されたMB-1ポッドの前面にグッドイヤーAN/APS-73というXバンドの合成開口レーダー(SAR)が搭載された。これは、最大80海里の範囲で航空機の両側をスキャンするものです。ポッドからの画像は5インチのフィルムに収められ、後で解析できた。AN/APQ-69ポッドと異なり、燃料搭載スペースも確保された。機体では、機首レドームが改修され、その後ろにレイセオンの前方監視レーダーが設置され、ナビゲーターのコックピット上に恒星追跡装置が新たに設置された。

ピーピング・トムがクイック・チェック・コンフィギュレーションで唯一の作戦行動に投入されたのは、二つの超大国が核紛争の瀬戸際に立たされたキューバ・ミサイル危機の際であった(知られている限りでは)。1962年10月30日、コンベアとジェネラル・ダイナミクスの共同クルーは、キューバの北海岸に沿い特別に改造されたハスラーを操縦し、AN/APS-73でカリブ海に浮かぶ島の地形をマッピングした。

 

1962年10月現在のキューバを基点としたIL-28ビーグル、SS-4サンダル(R-12 MRBM)、R-14(SS-5 スケアンIRBM)の有効射程距離Defense Intelligence Agency

「AN/APS-73は、超音速飛行中に80マイル範囲で詳細な全天候型地形図を提供するのに有効であり、キューバでの飛行も高速で行われた」とデイヴィスは書いている。「しかし、ポッドは亜音速の方がより良い結果をもたらすと証明された」。

キューバ危機でのあまり知られていない活躍にもかかわらず、空軍は年内にクイック・チェック・プロジェクトを放棄することを決定した。その後戦略偵察の任務は、より専門的な他機種が担当した。各機はハスラーの性能には及ばないものの(少なくとも1960年代末にSR-71が登場するまでは)、当時のレーダーセンサーは一般に亜音速プラットフォームから運用する方が有効だったようだ。ソ連への偵察飛行が中止されると、RC-135のような大型機体もソ連国境沿いで運用されるようになった。このようなスタンドオフ・プラットフォームは、より多様な情報収集機器を搭載するスペースに加え、「製品」をリアルタイムで監視する専任オペレーターが搭乗できる重要な利点を備えていた。

B-58A爆撃機がSACに定着した1963年、空軍はキューバ沖での性能に触発されたのか、ハスラー偵察機のアイデアに再び目を向ける。プロジェクト・メインラインでは、既存のMB-1Cミッション・ポッド10機に、低空撮影用の前方パノラマ・カメラ1台を搭載した。このポッドを使用するためB-58Aの45機が改造され、高度500フィート、マッハ1で飛行するミッション・プロファイルが設定された。訓練された乗員は良い結果を出せたが、その他のB-58は戦略偵察任務には真剣に考慮されることはなかった。その代わり、主に自然災害の監視に使用され、カメラは第2コックピットのナビゲーターが操作した。

なお、YB-58Aは偵察ポッドを搭載する予定で17機の就役試験機がRB-58Aとして完成したが、ほとんどはXB-58やYB-58Aとともに各種試験計画に使用された。その後、B-58A量産型に改修され、運用部隊に配備された。

 

 

 

1960年4月13日、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地で離陸時に右主脚が故障したRB-58A ハスラー 58-1015。. U.S. Air Force

偵察機としてのハスラーは短命に終わる運命にあった。B-58爆撃機でさえ、運用コストの高さとソ連の防空技術の進歩、大陸間弾道ミサイルの出現により、わずか10年の就役で退役している。

RB-58Aハスラーのマニュアルの表紙。 Public Domain

B-58は、性能と技術において画期的な機体だったが、同時に「こうなっていたかもしれない」という可能性にも目を向けるべきだろう。1950年代後半、B-58のさらに高性能でエキゾチックな派生型、いわゆる「スーパーハスラー」の研究が進められていた。9万フィートで4,000マイルの距離を飛行するコンセプトは、CIAの要請を受けてコンベアーが考案したもので、当然ながら、戦略的偵察プラットフォームとなるはずだったが、攻撃型も構想されていたようだ。

当初の「スーパーハスラー」は、ラムジェットエンジンを搭載したパラサイト2段目と、同じくラムジェットエンジンを搭載した無人3段目を、ほぼ標準的なB-58Aで運搬する3段構えのコンセプトが採用されていたようだ。

最終的には、B-58のDNAをほとんど残さず、ロッキードのA-12と同じJ58ターボジェットエンジンを搭載した単段機のキングフィッシュの設計が行われた。偵察機として開発されたキングフィッシュは、高度12万5千フィートでマッハ6という驚異的な速度を記録すると期待された。

 

 

1959年頃、キングフィッシュの最終コンセプトデザインの図面。コンベアーのデザインは、ロッキードA-12に敗れた。 Lockheed Martin

A-12の登場により、キングフィッシュは行き詰まり、コンベアはCIAや空軍に高高度・高マッハ偵察機を提供できなくなった。

しかし、ハスラー偵察機の物語は、ある意味で一周することになる。空軍が戦略偵察機SR-71を導入し始めると、それにふさわしい乗組員が必要になった。SR-71クルーには、U-2クルーもいれば、B-58クルーで高速飛行に適した飛行士もいた。実際、第9戦略偵察飛行隊に配属された26名のSR-71乗組員のうち、半数はB-58の経験者だった。ハスラーは間もなくお蔵入りになってしまうが、ハスラーを操縦した者の中には、その後何年もの間、戦略偵察の世界で重要な役割を果たした者もいたのである。■

 

The Convair RB-58 Recce Hustler’s Short But Fascinating Career

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED OCT 21, 2022 4:22 PM

THE WAR ZONE

 


2022年10月25日火曜日

鹿屋基地に米空軍MQ-9リーパー部隊が展開中。1年間同基地からISR活動にあたる。

 






2022年7月21日、カリフォーニア州トゥエンティナインパームスの海兵隊航空地上戦闘センターで、第163攻撃飛行隊のクルーチーフがMQ-9リーパーをマーシャリングする。(Joseph Pagan/U.S. Air National Guard)

 

米当局によると、米空軍のMQ-9リーパー8機と隊員150人以上が1年にわたる南日本への派遣を開始しており、数週間以内に監視飛行を開始する。

第319遠征偵察飛行隊は日曜日に鹿屋基地で指揮権継承式を行い、任務を開始したと、米軍日本部報道官のトーマス・バーガー空軍大佐が月曜日に電話で語った。鹿屋は、九州の南端に近い海上自衛隊の基地である。

九州防衛局の広報担当者が月曜日に電話で語ったところによると、無人機は今月末以降に鹿屋から飛行を開始する予定だという。日本では、一部の政府関係者が身元を明かさずにメディアに発言することが慣例となっている。

「この戦略的立地とMQ-9の能力により、日米同盟は広大な地域を見渡し監視することができる」と、319部隊のアレクサンダー・ケリー中佐は、防衛省がオンライン公開した式典のビデオで、飛行士や地元関係者、海上自衛隊の隊員たちに語った。

新しく活動する部隊は、第二次世界大戦中の第319戦闘機隊の系譜を汲んでいる。1977年にフロリダ州ティンダル空軍基地の第319戦闘機迎撃飛行隊として不活性化された。第374作戦群司令官オウ・ジュン大佐は式典の別のビデオでこう述べた。

鹿屋への配備は、日米両国が相互の課題を克服するため技術を共有する機会になると、彼は言った。

「MQ-9はインド太平洋全域で日米の情報、監視、偵察の優先順位をサポートする」と述べた。

空軍によると、リーパーは偵察機だが、ヘルファイアミサイルやペイブウェイ・レーザー誘導爆弾などの武器を搭載することができる。

鹿屋市のウェブサイトに掲載された防衛省文書によると、鹿屋のリーパーは「監視仕様で、武器は搭載できない」とある。

鹿屋市の中西茂市長は7月、米軍関係者が関わる事故や犯罪の可能性に対する住民の懸念にもかかわらず、国防上の重要性を理由に無人機の配備に署名した。

鹿屋にはすでに、海上自衛隊のP-3Cオライオン海上偵察機やUH-60Jブラックホーク、SH-60Kシーホークヘリコプターが配備されている。海兵隊のKC-130タンカーやオスプレイなど米軍機が訓練で基地を訪れる。

リーパーはサンディエゴのジェネラル・アトミックス製で、兵装3000ポンドを搭載でき、2007年にアフガニスタンで、翌年にはイラクで初めて戦闘に参加した。中東やアフリカで数多くの任務に就いています。

空軍は2014年に三沢基地に偵察機RQ-4グローバルホークの配備を開始し、近年は東京西部の横田基地から飛行させている。海軍のMQ-4Cトライトン海上偵察機は昨年、三沢に配備され、今年は海兵隊岩国航空基地に展開している。■

 

Air Force Reaper drones to begin surveillance flights out of Japan within weeks | Stars and Stripes


By SETH ROBSON

STARS AND STRIPES • October 24, 2022

 

SETH ROBSON

Seth Robson is a Tokyo-based reporter who has been with Stars and Stripes since 2003. He has been stationed in Japan, South Korea and Germany, with frequent assignments to Iraq, Afghanistan, Haiti, Australia and the Philippines.


ウクライナ戦に米軍は100万発超の砲弾を提供ずみ。その他国も積極的に協力中。ウクライナ戦であらためて野砲の威力が実証された格好だ。

  



US Army


ウクライナは対ロシア戦で、信じられないほどの量の砲弾を食い尽くしており、米国だけで100万発以上を提供している

防総省が発表した最新数字によると、対ロシア戦を支援するためウクライナにこれまで100万発以上の榴弾砲を提供している。

内訳には標準的な155mm榴弾砲の弾丸90万3000発のほか、M982エクスカリバー誘導弾3000発、遠隔対機雷システム(RAAMS)弾7000発、105mm榴弾砲弾18万発が含まれている。

ウクライナ北東部ハルキウ州で、M777榴弾砲を発射するウクライナ軍兵士。(Vyacheslav Madiyevskyy/ Ukrinform/Future Publishing via Getty Images)

合計すると109万発以上、重量は5万トンを優に超える。

弾丸は、バイデン政権がウクライナへ提供してきた182億ドル以上の安全保障支援の一部で、2月24日のロシアの全面侵攻開始以降が約176億ドルとなっている。

M795弾は、米陸軍と米海兵隊が使用する155mm M777牽引榴弾砲の標準弾だ。製造元のジェネラル・ダイナミクスによると、「23.8ポンドのTNTまたはIMX-101を充填した103ポンドの155mm高破片鋼(HF1)弾で、現在および将来のすべての牽引および自走式155mm榴弾砲と互換性のある金メッキ金属回転バンドを備えています」。

 

M795 155mm標準榴弾砲弾。 (General Dynamics photo)

M982エクスカリバーは、GPSと慣性誘導で目標を発見し、攻撃可能な距離を伸ばした155mm弾。

この誘導弾を使用するには、兵士が銃の誘導ユニットに位置情報を入力し、弾丸にアップロードしてから射程距離内で発射する。複雑な一斉射撃もプログラムできる。

M982エクスカリバー精密誘導155mm榴弾砲の弾丸。 (U.S. Army photo)

The RAAMS is a 155mm artillery shell that contains nine individual anti-tank mines that are released along a portion of the terminal phase of the round's flight path. These shells can be used to rapidly emplace minefields to complicate the movements of enemy armored vehicles.

Though the introduction of multiple launch rocket systems like M142 High Mobility Artillery Rocket Systems, or HIMARS, and guided 227mm M31 rockets for them to fire have given Ukraine extended reach on the battlefield, howitzers have been and remain absolutely critical and a mainstay of its fight.

While the U.S. has provided 20 HIMARS to Ukraine with another 18 promised — M270 multiple-launch rocket systems (MLRS) that are capable of firing the same rounds have also been donated by NATO allies — it has provided 142 M777A2 towed Howitzers and 36 105mm howitzers. Other nations have contributed howitzers as well.

With so many standard howitzer rounds shipped off to Ukraine, there is growing concern about whether enough ammunition exists for the U.S. should it get into a major conflict of its own.

(米軍撮影)

RAAMSは、155mm砲弾に対戦車地雷9個を内蔵し、弾道終盤の一部で放出する。この砲弾で地雷原を迅速に設置し、敵の装甲車の動きを複雑化させることができる。

M142高機動砲ロケットシステム(HIMARS)のような多連装ロケットシステムと誘導式227mmM31ロケットの導入により、ウクライナは戦場を拡大したが、榴弾砲は絶対に必要で、今も戦いの主軸であることに変わりはない。

米国はウクライナにHIMARS20基を提供し、さらにHIMARSと同じ弾丸を発射できるM270多連装ロケットシステム(MLRS)18基をNATO加盟国が寄贈し、M777A2牽引榴弾砲142基、105mm榴弾砲36基も提供した。その他の国も榴弾砲を寄贈している。

ウクライナにこれだけ多くの標準的な榴弾砲が出荷されたことで、米国が独自の大規模な紛争に巻き込まれた場合、十分な弾薬備蓄があるのか懸念が高まっている。

ハリコフ地方の前線で、米国製M777榴弾砲の装填前に火薬を準備するウクライナ人兵士 (Photo by SERGEY BOBOK / AFP) (Photo by SERGEY BOBOK/AFP via Getty Images)

今年8月にウォール・ストリート・ジャーナル紙は、軍が現在、「自らの供給ニーズ」を守りつつウクライナを支援する方法を決定するため、「弾薬産業基盤の深堀り」を行っていると報じた。

陸軍は、弾薬工場のアップグレードで年間5億ドルを議会に要求したとも、同紙は報じた。

「陸軍は弾薬増産を既存の契約に頼るが、陸軍当局によれば、在庫補充を考慮した新規契約は結んでいない 」。

戦略国際問題研究所(CSIS)によると、2023年度、陸軍は基本的な高爆発弾(M795)を2万9000発購入する予定があっただけだった。CSISは先月、「48ヶ月のリードタイムがあるものの、サージ能力は年間28万8000発であった」と書いている。

ウクライナに朗報なのは、榴弾砲と関連弾薬を提供しているのが米国だけではないことだ。米国と同盟国は現在、防衛コンタクトグループ会合を6回開いており、欧州での戦争の拡大や中国との敵対関係の勃発の可能性を考慮し、自国の供給量を十分に確保しつつウクライナに武器を提供するため50カ国ほどが協力して取り組んでいる。パキスタンもウクライナに砲弾を供給するため活用されている。

「NATOの標準弾薬であるため、12カ国が弾丸を供給できる」とCSISは書いている。「したがって、世界市場を考慮すれば、ウクライナへの移転が制約されることはないだろう」。■


Ukraine Has Received Over A Million Artillery Rounds From The U.S.


BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED OCT 21, 2022 6:10 PM

THE WAR ZONE

 

 


エイブラムズXについて。新技術とウクライナ戦のフィードバックはどこまで有効なのか。

 




General Dynamics Land Systems
が米国陸軍協会の年次シンポジウムで発表した新型エイブラムズXは、戦闘で実証ずみの重装甲戦車の主要要素と、パラダイムを変える可能性のある革新的技術を融合している。

 

 

 

地上ロボット、無人プラットフォーム、攻撃ドローンの制御、ステルス戦闘機や前方部隊との目標データのネットワーク化、精密誘導および軌道修正式弾薬による敵車両の破壊、大量の各種データの受信を瞬時に処理するなど、陸軍の未来の主力戦車が高度な敵に対して行うべきことはすべ備えている。

 

エイブラムズX

360度サーマルサイト、次世代弾薬、殺傷力の高い無人砲塔を備えた、重量60トン、AI搭載、低燃費のハイブリッド電気主戦戦車が、米陸軍の「デモンストレーション」用として登場した。

 


エイブラムズX

 

GDLSの新型エイブラムズの出現は、エイブラムズXのようなテクノロジー、無人システム、機動陣形、高い生存力の重機械化プラットフォームを新しい脅威環境に適合させる最善の方法に関する陸軍の進行中の分析および実験と密接に関連している。疑問も残る一方で、陸軍が大きな熱意と決意を持って歓迎する明確なものは技術革新だ。

 「陸軍の戦闘戦車の未来がどうなるかを語るのは時期尚早です。お伝えできるのは、我々は道を探している、ことはご存知のとおりで、我々が行う必要がある投資はご存知の通りで、可能性の芸術であり、AFCが次世代戦闘車両CFTを通じて実験を継続し、教訓を抽出し始めるだろうと見ている」と陸軍次官Gabe Camarilloはインタビューでウォーリアーに語った。

 陸軍は、エイブラムズXのような特定製品について特定の立場を取らないように注意することがよくあるが、エイブラムズXでは陸軍はイノベーションに強くコミットしている。

 目標の一部と概念的な焦点は、激戦時における生存能力と、主力戦車の機動性、遠征作戦、速度、殺傷力の最適なバランスを見つけることに集中している。軽量装甲複合材、アクティブ・プロテクション・システム、AI搭載コンピューティング、エレクトロニクス、センシング、長距離殺傷力など、パラダイムを変える新技術を活用して、敵の激しい攻撃から最高の防御力を発揮する最適点はどこにあるのか?

 GDLSのエイブラムズXは、重要な重装甲技術を、新世代のイノベーションで構築した新しい戦車設計に織り込み、これらの疑問に対する画期的な道筋と答えを提供する取り組みを行っている。GDLSが「Katalyst」と呼ぶ共通規格とIPプロトコルを用いた技術構成で構築したオープンアーキテクチャのプラットフォームになったエイブラムズXは、今後数年間の継続的な近代化プラットフォームであると同時に、現在の戦闘にパラダイムを変える殺傷能力をもたらす設計になっている。このように、エイブラムズXは、重装甲プラットフォームの最適な技術構成に関する課題を解決するとともに、急速に変化する脅威環境に適応するべく、今後数年間で進化、成熟、アップグレードする位置付けがなされている。

 GDLSは、エイブラムズやストライカーなど主要戦闘プラットフォームの製造元として長年知られていますが、特に近年は、イノベーションと社内資金による「破壊的」または「画期的」技術の研究、実験、分析にも重点を置いている。同社の兵器開発担当者は、これらの技術の多くがエイブラムズXに組み込まれており、新世代の戦闘の可能性をもたらすと述べています。GDLS社が陸軍境界イベントで発表したストライカーXの技術実証車両も同様だ。

 General Dynamics Land Systems の米国ビジネス開発ディレクター、ティム・リースTim Reeseは、Warriorインタビューで、「より軽量で、より効率的なハイブリッド電気パワーパックを持っているので、燃料消費量が少なく、車両のサブシステムの連携機能に関してAIと機械学習を使用した高度な電子アーキテクチャを持っています」と述べている。「当社の社内投資とパートナーの投資であり、まだ陸軍の正式事業ではありません。これは、技術実証車両です。当社は、現在の問題を解決したり、今はない新しい能力を提供する技術を、陸軍にデモしています」。

 エイブラムズXに搭載された技術に関する詳細の多くは、保安上の理由で非公開のようだが、軽量化に関するリースのコメントは非常に重要で、エイブラムズXは60トンで機能し、既存の72トン級エイブラムズよりおよそ12トン少ない。このため、機動性、展開性、戦闘速度が大幅に向上し、さらに、脅威の状況に応じ追加の重装甲を装備できる。

 「燃料消費を約50%削減できると考えています」とリースは述べている。

 未来の戦場では、より高速で、より分散した編成で戦わなければならないため、重装甲車両は操縦性、速度、燃料効率、長距離展開の能力を向上させる必要がある。そのため、橋を渡り、戦術車両と歩調を合わせ、燃料を節約し、物流負担を小さくする必要がある戦闘力にとって、脅威に合わせて保護を調整できるモジュール式の重量調整機能は非常に重要だ。

 「当社ではある程度の装甲があれば60トンで維持できると考えていますし、陸軍が望めばそれ以上にもできます。砲塔から乗組員を取り出して車体に格納すると、重装甲砲塔が無人状態になります。そこが軽量化のポイントかもしれません。当社が軍に伝えているのは、無人砲塔に想定する保護レベルを教えてもらえれば、重量をお知らせしますよ、ということです」とリースは言う。

 この方程式の一部として、軽量複合材料の分野における次世代技術革新が、現在可能な範囲よりも軽い重量で極めて高いレベルの防護を実現する可能性があることは確かだ。このような疑問は、陸軍の科学者が分析されており、エイブラムズXの有望性や成功に関わるかもしれない。しかし、新しい軽量装甲複合材料の成熟度や準備に関する技術的な詳細について高官は当然のことながら、話してくれない。また、陸軍研究所の長年の焦点であった画期的な装甲複合材に関する質問だが、エイブラムズXは必要に応じて装甲構成を「アップスケール」または「増加」する能力で運用される。エイブラムズXはまた、無人砲塔と乗組員3人名で構成され、軽量で最適な機能性と生存性を実現できるとリースは述べている。

 

Tim Reese, Director, US Business Development, General Dynamics Land Systems

Tim Reese, Director, US Business Development, General Dynamics Land Systems

 

 

「無人砲塔で、乗員はすべて車体にいて、コックピットスタイルのコントロール画面を共有し、戦車内のすべての電子機器を支えるこのアーキテクチャによって、地上車両や航空車両との有人無人チーム編成を可能にします。もうひとつの革新的技術は、120mm砲の自動装填技術です。ハイブリッド電気パワーパックは、エンジンを作動しない長時間の無音監視能力と、ちょっとした無音移動能力を与えてくれます」(リース氏)。

 この車両は、上部独立したサーマルビューワー2個を備え、車長と砲手の両方が、受信したターゲットデータを収集するための360度カメラを持ち、データをAI対応のKatalyst車両電子アーキテクチャで分析し送信できる。

 GDLSは、軽量車両で生存性を維持・向上させ、重防御を可能にするため、パートナーと協力して、向かってくる敵のRPGや対戦車ミサイルを感知、追跡、迎撃できる「半球型」アクティブ保護システムの構築に取り組んでいる。興味深いことに、GDLSのAPSは、トップダウンの対装甲攻撃から戦車を保護する能力を備える。ウクライナでは、戦車上部を狙ったトップダウン・ミサイル攻撃がロシア軍戦車を撃破した。

 「私たちは、地上車両に対する脅威が日々高まっていることを世界各地の活動から学んでいます。そこで、パートナー企業と協力し、現行のAPSシステムを使用して、レーダーとランチャーシステムを正しい方向へ導き、上部をカバーし、上部攻撃の脅威への防御を実証しました」(リース)。■

 

New Abrams X -- AI-Enabled, Fuel-Efficient, Unmanned Turret & "Silent" Attack - Warrior Maven: Center for Military Modernization

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION

OCT 20, 2022

U.S. ARMY | MARINES NEWS

By Kris Osborn, President, Center for Military Modernization


AIで飛行制御する新世代無人機構想が登場。有人機殿組み合わせ運用を狙う。

 

Fury UASFury UASは、AdAir-UXプログラムでAI操縦機への文化的抵抗感の打破を試みる

Credit: Blue Force Technologies

 

在および将来の米空軍戦闘機と一緒に飛行する選択肢として、人工知能によって操縦される3種の機体が浮上してきた。候補には、消耗品から精巧なシステムまであり、自動車産業からヒントを得たモジュール設計機能を活用した消耗品扱いの機体も考えられる。

 

各コンセプトは米空軍の創設75周年を記念した空軍協会の年次会議「Air, Space and Cyber Conference」で展示された。

ノースロップ・グラマンのブースでは、SG-101のコンセプトモデルが展示され、同社の最新鋭機を紹介していた。ロッキード・マーチンは、スカンク・ワークスの「スピード・レーサー」コンセプトを展示した。これは消耗品波の安価な無人航空機システム(UAS)で、F-35と組み合わせた「プロジェクト・カレラ」というデモンストレーションが予定されている。

GA-ASI、クレイトス両社の幹部は、空軍長官フランク・ケンドールが構想するコラボレーティブ・コンバット・エアクラフト(CCA)への提案を初めて発表した。GA-ASIのガンビットGambitとクレイトスのデミゴルゴンDemigorgonは、キール、着陸装置、動力システム、ミッションコンピュータ、エイビオニクスを共有し、ミッションに応じ別の機体、翼、インレット、エンジン、積載物を統合する1万ポンドクラスのUASファミリーになる。

ボーイングブースでは、オーストラリア製MQ-28ゴーストバット Ghost Bat UASを画像展示した。MQ-28は、ミッションに応じて異なるペイロードに対応するために、機首に取り付けられたレドームを交換する。最後に、ノースカロライナ州の小企業であるBlue Force Technologiesは、人工知能(AI)操縦の敵航空プラットフォームとして実証するため製造中のFury UASを初めて展示した。フューリーは機首部分が取り外し可能で、各種ペイロードを搭載する。

各コンセプトは、空軍がCCAに何を求めるものを具体的に説明するには及ばないことから、宣伝されている。空軍は2024年度予算でCCAプログラムを開始する準備中だが、空軍上層部は、2030年代初めと期待する実戦配備までにAI操縦のCCAにどんな能力が可能になるか、全体機数または飛行隊あたり何機必要になるか正確に把握できていない。

こうした不確実性の中、ACC航空戦闘軍団(Air Combat Command)のトップ、マーク・ケリー大将Gen. Mark Kellyは、柔軟性を最大限に高める設計哲学の採用を業界関係者に助言している。

GA-ASIは10,000ポンド級のガンビットUASファミリーのスケッチを発表し、ミッションごとに異なるバリエーションが「コア」ハードウェアとアビオニクス・アーキテクチャを共有する。General Atomics Aeronautical Systems Inc.

Xバンドレーダーで飛行した次の日はジャマー任務で飛行できるCCAが望ましいとケリー大将は言う。また、積載量や航続距離で、より多くの能力を「ボルトオン」できる機体がほしいという。

「他に何もできないセンサーや、他に何もできないジャマーに縛り付けられたくない」とケリー大将は述べ、「『この大きさでなければならない、この距離でなければならない、この仕事をしなければならない、この価格でなければならない』といった条件で自分自身を縛り付けたまま、ゴールまで競争すれば、間違いに気付くかもしれない」。

その代わりに、空軍はCCA開発で反復アプローチを好み、AI操縦システムの能力が理解され、急速に進化し続ける中で適応できる航空機設計を重要視する。

空軍指導部は、CCAプログラムのビジネスケースを開発中で、要求が航空機タイプ一機種なのか、複数機からなるファミリーなのかも決定していない。

空軍省の取得・技術・兵站担当次官補アンドリュー・ハンターAndrew Hunter, assistant secretary of the Air Force for acquisition, technology and logisticは、会議席上で記者団に対し、「時間をかけて解明していく」と述べた。 

一方、空軍は、有人戦闘機とのチームとして任務を遂行するなど、CCAを実戦配備する際の非技術的障害への対処が必要とも理解している。空軍はGA-ASIのMQ-9AとノースロップのRQ-4B UASを数十年にわたり運用しているが、ほとんどは単独で運用されている。だがCCAは戦闘時に有人戦闘機や爆撃機と直接リンクする。

「無人航空機に関しては、文化的な障壁を克服するため、強力なリーダーシップのサポートが必要と言えるでしょう」と、ハンターは言う。

ACCは、AI操縦機をまず敵航空(ADAIR)プラットフォームとして導入することで、文化的な問題に対処する。2021年3月、Blue Force Technologiesは、バンディットプログラムとも呼ばれるADAIR--Unmanned Experimental(ADAIR-UX)デモンストレーション用に4機のフューリーの製造が決まった。実証実験が成功すれば、後続の生産プログラムもあり得る。

ADAIR-UXの目標は、空軍パイロットが比較的安全な環境で、同じ空域でAI操縦機と快適に操作できるようにすることだ。例えば、ネバダ州ネリス空軍基地での敵航空ミッションは、高度なまで制限された空域内で行われ、航空機は指定された空域のブロック内で目視範囲外での迎撃でーゲット」の役割を担う。人間のパイロットがAI操縦のUASの挙動や能力に慣れてくれば、共同チームとして戦闘訓練ミッションを実施できるようになるかもしれない。

ADAIR-UXのコンセプトをACCに提案したBlue Force Technologiesは、中小企業向けイノベーション研究プロジェクトの一環として、生産プログラム競争に参加するが、おそらくはるかに大きな企業との競争に直面することになるだろう。

GA-ASIの先進プログラム担当テクニカル・ディレクターであるマイケル・アトウッドMichael Atwoodは、Aviation Weekに対し、同社はGambitシリーズの新型UASでADAIR-UXの生産受注に「非常に興味がある」と語った。Kratos Unmanned Systems Division社長スティーブ・フェンドレイSteve Fendleyは、同社が 10,000 ポンド級の Demigorgon UAS を同プログラムに投入すると Aviation Week に語った。■

AI-Piloted Concepts Emerge As U.S. Air Force Ponders Options | Aviation Week Network


Steve Trimble September 23, 2022

 

Steve Trimble

Steve covers military aviation, missiles and space for the Aviation Week Network, based in Washington DC.