2017年6月14日水曜日

中国が開発した高高度ソーラー無人機は米空母攻撃に効果を上げるのか



China Militaryに掲載された写真。太陽光動力無人機CH-T4のがテスト飛行。高度20から30キロに滞空し空中早期警戒偵察任務、災害監視、気象観測、通信中継用途に投入される。5月24日撮影. (Xinhua)

 

衛星より手軽に運用できる長時間滞空無人機の動力が太陽光になるのは論理的必然でしょう。夜間はバッテリーを使うためその分ペイロードも減ります。ただし、機体が軽量化されていると言えどもペイロードが圧倒的に小さいためISR機材も抜本的に小型化する必要があり、既存のISR機材同様の性能は望めないのでは。(少なくとも当面は) ただし電力では制約がありませんね。当面は中国の脅威のシンボルとして出てくるでしょうが、実用化はまだ先でしょうね。


China Might Have a New Way to Sink U.S. Aircraft Carriers 中国は米空母攻撃の新しい手段を手に入れるのか



June 10, 2017


ペンタゴンが恒例の中国軍事力報告を公表し、中国が米空母を狙っていることに再び警鐘を鳴らしている。時同じくして中国から接近阻止領域拒否(A2/AD)戦略の重要な一部になりそうな装備の発表が出ている。
  1. 中国国営メディアが今週発表したのはCaihong-T 4 (CH-T4)の名称の太陽光動力の巨大無人機で高度20千メートル飛行に成功したという。その高度では雲がなく、太陽光で飛ぶ無人機の飛行時間が相当長くなることだ。
  2. どのくらい長くなるのか。China Dailyによれば無限だ。「今後の改良で数か月から数か年の滞空が実現する」
  3. ブログEastern Arsenalの共著者ジェフリー・リンとP.W.シンガーはCH-T4は大きさと軽量の組み合わせに注目している。同機の翼幅は130フィートとボーイング737より大きいが重量は880ポンドから1,100ポンド(約400キロから500キロ)しかない。737の通常の最小空虚重量は70千ポンドだ。CH-T4がここまで軽いのはカーボンファイバーとプラスチックを多用したためだ。
  4. 同機の時速は125マイル(200キロ)だが65千フィート(約20千メートル)上空を巡航し広大な地域を監視できるので速度は必要ない。リンとシンガーはこう指摘している。「高高度を活かして見通し線外まで400千平方マイル(約104万平方キロ)の陸地海面を監視可能だ。これはエジプト全土の面積に等しい。ここまでの範囲を収めることで軍事民生共にも優秀なデータ中継手段となる」
  5. ただしリン、シンガー両名が言及していないのはCH-T4が米空母攻撃に使われる可能性だ。これまでも中国の「空母キラー」DF-21Dが注目を集めているが、ミサイル単体では空母攻撃はできない。高度の「キルチェーン」つまり監視偵察レーダー通信装備一式で標的情報の随時更新があってこそ飛翔中の対艦弾道ミサイルが効力を発揮する。
  6. 入手可能な資料によれば米国は中国のA2/ADへの対抗策として「キルチェーン」の効力を削ぐことに注力している。2013年に当時の海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将と空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が共同でForeign Policy誌上にエアシーバトルでA2/ADに対抗する構想を発表していた。まず敵の指揮統制通信コンピュータ情報収集監視偵察能力(C4ISR)を遮断し、その後敵の武器運用能力(航空機、艦船、ミサイル基地)を破壊する、最後に発射された敵兵器を撃破すると述べていた。
  7. この方式の背景として「こちらを攻撃する前に敵は『キルチェーン』と呼ぶ一連の活動を完了する必要がある。偵察で米軍の位置を把握し、通信ネットワークで標的情報を伝達し、発射装置に入力して米軍に対抗できる。各段階の妨害遮断は容易であり、米軍はチェーンの弱点を狙えばよい」と両大将は述べている。
  8. CH-4Tが投入されると中国のキルチェーンは冗長性を増す分攻撃側が苦労することになる。もしアメリカが中国衛星を妨害あるいは破壊しても北京はこの無人機で米艦船追尾に必要な情報を得られる。CH-T4にはほかの偵察装備にない長所もある。まず低価格と衛星より柔軟運用が可能だ。また通常の機体や艦船より高高度を飛ぶことも利点だ。このため米側からすればキルチェーンの偵察部分の遮断が困難になるが、代わりに通信ネットワークの破壊に注力するのだろう。
  9. ただし以上は米軍には承知済みの内容だ。ペンタゴンの最新中国軍事力報告ではCH-T4の名称こそ触れていないが、「長距離無人航空機(UAVs)の開発調達で中国の長距離ISR能力および攻撃作戦両面が増強する」と述べている。
  10. 幸い米軍には対抗策を考える時間がある。China Dailyでは「設計技術陣が同機を改良し利用事業者に引き渡すのは数年先になる」と報じているためだ。米国におけるこの種の機体の開発期間を目安にすれば、中国はまだ数回の障害に直面するはずだ。NASAの環境調査航空機センサー技術(ERAST)事業はヘリオス試作機を原型に十年以上前から始まっている。同機は2001年に96千フィート(約29千メートル)の高度に達したが、その二年後に墜落している。ヨーロッパでもいわゆる疑似衛星として高高度無人機開発を目指している。■
Zachary Keck is the former managing editor of The National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.

合わせて中国のChinaMilitary英語版の記事を以下にご紹介しますが、ここでは軍事的色彩は全く見せず、携帯電話中継など民生用用途を前面に出しています。確かにペイロードを考えるとここらが現時点では現実的ですね。

Fly high: Chinese solar drone "Rainbow" reaches near space

Xinhuanet Huang Panyue 2017-06-14
BEIJING, June 13 (Xinhua) -- 中国のCaihong (CH)(「虹」)太陽光動力無人機(UAV)が中国初の準宇宙高度到達可能機として高度20km飛行に成功した。
  1. 中国航天科技集団公司(CAAA)を中心にしたチームから13日にCH UAVが15時間滞空し、無事着陸したと発表があった。
  2. 準宇宙空間は海面高度20から100キロの範囲で空気は薄く、通常燃料を利用する航空機エンジンの性能は低下する。
  3. しかしCH UAVをはじめとする太陽光無人機はここでも良好な性能を発揮し、数か月以上の滞空を将来実現すると関係者は述べている。
  4. CH UAVは全幅45メートルで太陽光パネルを主翼上に敷き詰めている。また太陽光発電の長所を生かして大気汚染は発生させない環境にやさしい機体であるといえる。
  5. CH UAVの飛行成功により中国は高高度太陽光無人機技術の実現では英国、英国に次ぐ三番目の国となった。米国は「ヘリオス」はじめとする無人太陽光機を開発しており、英国には「ゼファー」UAVがあり2007年に高度15キロを達成している。
  6. CH UAV開発チームによれば技術上の難関を数回克服している。空力形状、飛行制御、エネルギーの効率利用だ。複雑な気象条件で確実な飛行性能を確保するために一年以上かけたという。その他新素材、高性能太陽光電池、電力貯蔵技術の革新など中国航空工業の進歩に貢献していると関係者は自負。
  7. プロジェクトではCH UAVに「疑似衛星」機能を期待し、通信中継など一部機能を肩代わりさせる。
  8. また「空中Wi-Fiハブ」として移動体通信やインターネット接続を遠隔地や島しょ部向けに提供し、通信インフラ建設費用の節約効果も期待できる。その他森林や農地の測量や自然災害発生時のリアルタイム監視手段や緊急時の通信中継手段にもなる。
(Xinhua)


液体アンテナ技術登場か



すごい、これが実用化されれば設計の自由度も上がりますが、機体を広くアンテナとした画期的な機体が生まれます。民生への活用も可能ですね。可能性が大きく広がる革新的な技術になりそうです。

液体アンテナ用の複合材の試作品。(内部には液体金属は充填していない) 空軍研究実験部門がDoD Lab Dayでペンタゴンにて展示した。(Photo: Oriana Pawlyk)

Air Force Works on Liquid Antennas for Aircraft Adaptability

米空軍が液体アンテナの航空機搭載可能性を模索中


Defensetech POSTED BY: ORIANA PAWLYK JUNE 13, 2017


米空軍研究部門が液状アンテナを開発中で実用化となれば航空機の通信機器で変革が生まれそうだ。   

  1. 「実戦で必要なアンテナの種類が不明だと8-9本のアンテナを立てることになり、それぞれ周波数や用途が違うのです」とクリス・テイバー研究員は言う。
  2. Military.comがペンタゴンで開かれた国防総省技術展示会で研究スタッフに取材している。
  3. 空軍はミッションごとに各種電子機器を対応アンテナをあわせて機体に装着しているとテイバーは説明。しかし「一種類で全部用が足りるなら重量軽減になります」
  4. 空軍研究部門は作戦遂行に必要となる各周波数に対応できるチャンネルシステムを開発中だ。
  5. これを機体に搭載し、液体金属を充填すれば「どの周波数や指向性に対応できるアンテナが生まれます」とテイバーは述べる。
  6. またチャンネルは複数にし複合材内部に封印できる。「液状ですから移動は簡単でチャンネルの中に充填できます
  7. 「70メガヘルツから7ギガヘルツまでテスト済みで、これだけあれば相当の周波数帯をカバーできます」
  8. 機体にアンテナとして搭載するには二つの方法があるという。「液体金属を物理的に移動させれば電子機器の形状も変わります」「もうひとつは液体を柔軟な構造に充填し、電子機器そのものをストレッチできます」とし、柔軟性のあるハイブリッド電子機器NextFlexに言及している。(写真下)

フレキシブルハイブリッド電子部品も液体アンテナ実験に使われている。 (Photo: Oriana Pawlyk)

  1. 2015年に国防総省は「フレキシブル。ハイブリッド電子機器製造のための革新技術研究構想」として企業、大学、非営利団体162機関をまとめたFlexTech Allianceで同様の研究を行わせている。
  2. 「常温で液状になる金属は限られます。水銀はそのひとつですが、水銀はまき散らしたくないですね」と研究員のブレント・ヤング少尉は述べる。
  3. ただしガリウムは華氏87度で溶融する。ガリウム複合材は電子製品では頻繁に使われているとテイバーは指摘する。
  4. 「インジウムなどと合金にすれば溶解点は19度から17度低くなります。室温近くまで持っていけます」(ヤング)
  5. 今までのところ試験研究は実験室限定だが、次の段階は航空機に搭載することでMQ-9リーパー無人機を想定している。
  6. ヤング、テイバー両名は今後7年ないし10年で液体アンテナ技術が実用化されると見ている。■

2017年6月13日火曜日

ボーイングCEOムイレインバーグに聞く




ボーイングが民間、軍用、宇宙と多様な製品群を持っているため、ブログもターミナル1、ターミナル2共用記事とします。

Aviation Week & Space Technology

Boeing CEO’s $50 Billion Target

ボーイングCEOのめざす500億ドル目標とは

Jun 9, 2017 Joe Anselmo and Guy Norris | Aviation Week & Space Technology

巨大企業の変身
従業員145千名、年間売上1,000億ドルの企業を未来に向けどう率いていったらいいのか。新型機、軍用練習機、戦闘機や前例のないサービス事業がボーイングの最優先事項だ。会長兼社長兼CEOのデニス・ムイレンバーグが同社シカゴの本社でAviation Week編集長ジョー・アンセルモと上席編集者ガイ・ノリスの取材を受けた。
AW&ST:ボーイングが立ちあげたボーイング・グローバル・サービシズは7月1日に業務を開始し、年商500億ドルの目標だ。大規模事業だ
Muilenburg: 今後10年間の航空宇宙事業は7.5兆ドル規模と見ている。そのうち2.5兆ドルがサービス関連だ。当社の機材はセクター別では50パーセントのシェアだが、サービス関連では7-9パーセントしかない。そのため成長の余地があるとみている。当社にしかないOEM関連知識と技術により他にはない価値を顧客に提供できる機会が生まれる。500億ドルは相当の規模であり、大胆な成長目標だが達成の道筋が視野に入っている。
あなたはサウジアラビアからもどったばかりで、ボーイングはチヌークヘリコプター、誘導兵器他P-8哨戒機への関心表明も取り付けている
今後10年間で500億ドルのハードウェア、サービスの発注となる。商用軍用双方にまたがりサウジアラビアと米国で雇用数万名分が生まれる。グローバリゼーションの進め方としては秀逸だと思う。グローバル化すれば米国にも恩恵が生まれる。今回の事例もこの例だ。
商用機部門では日程、コスト両面で目標を達成しているようだ。ボーイングの強みが復活したのか
大変強い勢いを感じている。多くは過去の教訓から得ている。(前CEOの)ジム・マクナーニーと一緒に開発面で優秀事例確立を数年前に始め、その成果が出てきた。787-10は予定より早く完成し飛行性能も極めて良い。737Maxファミリーの引き渡しは想定費用以内かつ日程も若干早くなっている。残念ながら(KC-46A)空中給油機では工程改善が当初うまくいっていなかったので現在は同機が課題になっているが、それでも今後活かせる教訓を得ている。
提案中のNMA(新型中型機)はどうなっているのか
顧客各社との実のある対話から絞り込みつつある。737と787の中間に市場可能性を見ており、この機体は5千カイリを飛び、250席規模と想定している。757より大きく航続距離も長い。だが事業化が意味があるかを吟味する必要がある。開発開始を決定すれば、機体の技術面とともに製造面で大きな変化となる。市場需要があれば新型機開発に乗り出す。就役開始を2024年から25年とみており、時間はある。現在は777X開発が活況だ。新型機はこれと並行して進めることになろう。
双通路型のNMA構想ではコスト課題が難しいと思えるが
機体設計製造のやり方を変革中だ。デジタル設計でスマートイノベーションや自動化を製造工程に組み込んでいく。航空機製造の工数や費用を大幅に下げることができ市場への提供が早まる。
777X開発はうまく行っているのか
エンジン稼働中といったところだ。詳細設計に入っており、部品製造が始まった。エヴァレットにある複合材主翼生産センターを最近訪問した。各部品が工場内を流れウィングボックスになっていた。詳細設計段階から生産開始に移りつつある。2018年のフライトテスト、2020年の引き渡し開始に向かう。事業は順調に進んでいる。着実に成果がうまれつつある。ワイドボディ機の需要で伸びがなくなっているが、これは予想しどおりで、今後は更新需要でワイドボディ9,000機の新規需要が今後10年で生まれると見ている。777Xは787と完璧なタイミングになっている。
イランのエアライン数社向けに200億ドル相当の機材販売をボーイングが商談中だが、米イ間の緊張を考えると販売の可能性はどうなるのか
機材販売は続ける。各段階で政府認可が必要な仕組みになっている。おっしゃる通り政治面を考えると難易度は高いがこのことは最初から承知している。なんといっても商談規模が大きい。販売が成約すれば米国内に大量の仕事が生まれる。特にイランエアは80機発注と大きい。引渡しは2018年から開始したい。米政府の認証手続きは確実に遵守する。
ドナルド・トランプ大統領とのボーイングの関係は昨年12月に次期エアフォースワンで納税者に多大な負担となると大統領が非難したのと比べると改善の観がある
あの一言から対話が生まれ、顔を合わせ中身のある自由な話し合いが多彩な話題で可能となった。トランプ大統領はビジネス界の意見を歓迎する政権を作った。通商政策、税制改革、規制緩和、国防予算の強化安定化などを一緒に考える席に招かれてうれしく思っている。大統領は対話により考えや意見を取り入れるのがうまい。航空宇宙産業は米国最大の貿易黒字およそ900億ドルを稼いでいる。そのうちボーイングが大きな部分を構成している。サウスカロライナでは787-10(の生産ラインに)大規模投資している。大統領が訪問し一般従業員に声をかけてもらったことを名誉に思う。大統領に非常によい反応が返ってきた。
商用機のほぼ四機に一機が中国向けだ。新政権と中国との相互通商関係の重要性を話しているのか
している。対話から非常に意味のある米中関係が生まれている。習(金平)主席が訪米しトランプ大統領と非常に協力的な会話が生まれた。世界全体で今後20年間で新型機39千機が必要となり、そのうち中国向けが6,800機となる。737完成センターをZhoushan浙江省船山に開設し中国向けにもっと多くの機材を供給できる。また737を国内で月産が現在42機なのを今年中に47機へ来年は52機で2019年に57機に増産する。この件は大統領に報告しており、中国と良好な通商関係があれば相互恩恵が生まれると政権関係者にも伝えている。
ボンバルディアがCシリーズの米国販売でダンピングしているとの不服申し立てについて説明してほしい
公表資料によればCシリーズの製造原価は33百万ドルだが(ボンバルディアは)およそ20百万ドルで販売しようとしている。カナダ向けには(デルタエアラインズ向けよりも)高く販売するというので問題視している。古典的なダンピングだ。当社は公平で格差のない貿易条件を支持する。この原則でエアバスが不公平な政府補助金を受けている点を指摘した。将来の航空宇宙産業では競争相手がたくさん出ると見ているが当社は超競争的な環境での運用に備えている。
米空軍のT-X練習機競作に加わるが設計製造は米国内で行うとしている。これが有利に働くと見ているのか
機体での米国内製造比率はサプライチェーンも含め90パーセント超だ。これに対し競合各社は既存機種を外国から導入する案だ。当社のT-X案は完全新型機として設計し次世代の訓練用途を正面から考えているので独特だと自負している。他社は過去の設計を元にした既存機を改修あるいは改造して将来の用途に投入しようとしている。当社では二機が飛行中で非常に良好な成績を示している。選定が最終段階に入るが当社は自制心を保つ。この事業は当社の将来を左右するものではない。あくまでも当社の付加価値を高め、株主にも同様の効果が生まれるように万全を尽くす。
宇宙分野はボーイングの将来にどんな意味があるのか
当社は当初から宇宙ビジネスに携わっており、今後も当社の製品群で重要分野だと見ている。CST-100(ボーイング製有人宇宙輸送カプセル)により国際宇宙ステーションへのアクセスをNASAに提供する。低地球周回軌道は当社にも重要な分野となっており、微重力、ものづくり、宇宙観光に注目している。深宇宙探査向けにはNASAと打ち上げシステムを作成中の他有人宇宙探査で重要部分を担当している。衛星ビジネスでは電気推進方式に投資している。ユナイテッド・ローンチ・アライアンスは打ち上げを119回成功しており当社に極めて重要だ。一方でコスト拡大傾向を打破した宇宙アクセス方法の検討もしており、次世代ロケット開発ではブルーオリジンのような他社提携もいとわない。
ボーイングの有する強力な製造基盤に対して革新的な新企業といてスペースXやブル―オリジンとの提携が最良の選択肢と見ているのか
提携話は多数進行中だ。当社には技術の深みがあり技術力もある。だが重要なのは宇宙アクセスのコスト削減を新しいビジネスモデルで実現することだ。この分野では急速に変化が生まれている。関心度が高くなり、大量の資金が入ってくる。当社もホライゾンX(社内ヴェンチャーキャピタル部門)を立ち上げた。その目的の一つは新規提携先を見つけながら技術モデル、ビジネスモデルで阻害要因を取り除くことだ。今後も競合他社よりもイノベーションで先行する必要がありる。当然新しいビジネスモデルや提携先を求めていく。
今後の航空宇宙分野で最大の阻害要因は何か
製品面、工程面双方でいろいろある。ズナムアエロZunum Aero (ワシントン州カークランド)への共同投資を発表したばかりであるが、同社は小型機の電気推進を開発中だ。この技術がどこまでの大きさの機体に応用できるのかで疑問もあるが電気推進式航空機は実現しそうだ。手の届く運賃での超高速商用飛行を世界各地に二時間以内に移動するのを阻害するのは技術問題であり当社はこの分野にも投資をしている。
低地球周回軌道上の宇宙旅行をあたりまえにするには技術面で課題解決が必要でこの努力は続いている。防衛部門でも障害要因の解決にあたっており、電子製品に重点投資している。だが設計製造段階で課題につきあたることがある。モジュラー化、自動化、オンデマンド個別製造といった方面に努力している。付加製造additive manufacturing(3Dプリンターの利用)や設計から製造までのサプライチェーン全体のデジタル化を目指している。
X-51実験機でボーイングは世界初の極超音速機製造ラインを立ち上げた。それ以降大きな進展がないが、中国やロシアが極超音速飛行に向け大きく進展している
X-51は極超音速飛行技術の実証が目的で実施可能とわかった。超音速、極超音速飛行の事業化に向けて活動中だ。今後も投資を続ける分野であり、顧客向けにはあと一歩まで来たと伝えている。どこかの段階でこの技術は経済的に意味のある水準になる。当社が今後も技術面でリードするため続けている努力の一環だ。■


ルークAFBのF-35A飛行停止措置が延長


よくわからない現象ですが一刻も早い原因究明を望みたいですね。低酸素症と言い切らず、似た症状と表現がトーンダウンしていることに注目です。


Luke Air Force Base extends cancellation of F-35 flight operations ルーク空軍基地がF-35飛行停止措置を延長

 By: Valerie Insinna, June 12, 2017
(Photo Credit: Staff Sgt. Staci Miller/US Air Force)

WASHINGTON — ルーク空軍基地(アリゾナ)でのF-35の飛行運用中止措置が延長される。パイロットから低酸素症に似た症状を訴える事例が5件発生したことの調査が未完了と同基地報道官が6月12日月曜日に発表した。
  1. 第56戦闘機飛行隊で5月2日以降5名のパイロットから酸素不足の症状が報告されており、うち二件は先週に発生している。各事例で予備酸素が起動しパイロットは無事機体を着陸させたが、訓練は停止されF-35合同開発管理室JPOが調査に入っていた。
  2. 第56飛行隊報道官レベッカ・ヘイス少佐からはJPO調査チームが日曜日に同基地に到着し、現在インシデントの原因可能性を狭めていると発表した。あと数日中に根本原因が見つかる期待があるが飛行再開の暫定日程も発表できる状態ではないとDefense Newsに伝えてきた。
  3. 「第56戦闘機飛行隊は当地でのF-35A飛行を引き続き停止中でパイロット、整備陣、航空医官含む軍民共同チームの調査を待つ。この間に生理現象の技術的裏付けをとりリスク低減策を模索し飛行運用の再開を図りたい。
  4. 「F-35Aパイロット養成を通じ将来の空軍力整備にあたる当飛行隊で飛行再開に向け専門チームが全力を挙げ調査中。パイロットの安全は最優先であり、安全のためには時間をかけることは惜しくない」との声明を少佐が発表した。
  5. 飛行停止中にパイロット全員は集合教育を受けており、飛行停止の影響はパイロット49名55機に出ている。
  6. 現時点では何が起こったのかよくわからない。機内酸素発生装置が故障をしたのかも不明。5件すべては別の機材で発生しており、所属飛行隊・生産バッチも異なるとヘイス少佐は確認。しかしながら、低酸素症に似た症状が発生しているのはルーク空軍基地のみで空軍当局は当地のみで発生した現象と理解したいという。
  7. 第56飛行隊司令のブルック・レオナード准将が飛行再開の日程を最終的に決める。■

金正恩暗殺未遂を公表した北朝鮮の狙いは何か


北朝鮮内部が相当に動揺していることがうかがわれますが、仮に暗殺されても誰も憐憫の念を示さないことは想像に難くありません。プロパガンダ戦争はすでに始まっているわけですね。

North Korea Releases Details of Alleged Assassination Attempt On Kim Jong-un 北朝鮮が金正恩暗殺の企みがあったと発表


June 12, 2017


  1. 北朝鮮国営通信社が金正恩暗殺の企ての詳細を明らかにしている。
  2. 北朝鮮政府はCIA中央情報局と韓国のNIS国家情報院が5月の軍事パレードで生物化学兵器を使った暗殺を謀ったと非難した。
  3. 公表されたビデオでは外国情報機関の命を受けたKim Song Ilが北朝鮮指導者の殺害を企てたとし、計画が数案あったとする。そのひとつが「エアコンにナノ毒性物質」を隠すことで、金正恩に放射性プルトニウムを注射する案もあった。実行案に採用されたのは「最高指導者の座る椅子に毒物を付着させる」ことだった。
  4. 「テロリスト」と非難される暗殺未遂犯は祝賀会場の詳細情報を極力多く集めるよう指示されたと語っており、とくに北朝鮮独裁者の使う椅子、机のまわりの保安体制の詳細が求められたという。KimによればDo Hui-yun(拉致被害者の人権を考える市民連合CHNK)の幹部から接触を受けたのは2014年にロシア・ハバロフスクで木材伐採に従事している際だったと米 NK News は伝えている。
  5. CHNKはNGO団体だが北朝鮮は韓国情報機関の一部あるいは実行機関と見ている。
  6. Doは「Kimに金品を渡した」うえ、北朝鮮関連の偽情報と「反国家プロパガンダ」を与えた。Kimによれば2014年8月にNIS上層部に会い金正恩暗殺案の詳細内容を教えられたという。
  7. こうした物質を準備できるのはCIAだけだと北朝鮮国営通信は伝えている。
  8. 「生化学物質を使ったテロ襲撃案を作るよう求められ、現金1万ドル、Doogeeのスマートフォン、衛星送受信機を与えられた」とKimはビデオで自白している。なおビデオはUriminzokkiri北朝鮮公式宣伝サイトが制作した。
  9. Kimは2016年にHanと名乗る男が中国・丹東に「海外連絡センター」設立を試みたと述べている。センターでは韓国情報院工作員が大量の現金や武器を準備し襲撃準備をしていたという。金正恩暗殺用の「装備物質」は韓国工作員経由で2017年3月に入手したが、国家保安省が事前摘発し実施できなかった。
  10. 公表されたビデオは驚くほど詳細で内容は「国家支援によるテロ活動」に極めて批判的だ。
  11. CIAとNISを非難する今回の動きは米議会が北朝鮮を再度テロ支援国家に指定する審議が進む中で出てきた。北朝鮮工作員が金正恩の腹違いの兄金正男の今年2月のマレーシアでの暗殺に関与しているとの報道も出ている。
  12. 北朝鮮がこのタイミングで公表したのは米韓両国の批判をかわす目的もあるのだろう。■

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歴史残る機体12 ツボレフTu-95ベア




The Tu-95 Bear: The 60-Year-Old Russian Bomber America Still Chases All Over the World

Tu-95ベアは60年にわたりロシアが世界各地で運用する爆撃機

June 11, 2017


  1. 巨大なツボレフTu-95「ベア」ほど特徴のある機体は少ない。四発の同機はロシアが戦略爆撃機や海上哨戒機として供用中で、一角獣のような長い燃料補給管が特徴的でまるで太古の怪物のように見えるが事実第二次大戦直後に現れた機体なのだ。
  2. だが外観に惑わされてはいけない。登場以後60年ほどが経つTu-95は今でも供用中でこれだけのペイロードを有する機体がこれだけ長く長距離を飛行している例は少ない。Tu-95はロシアのB-52と言ってもよいが、ヨーロッパ、アジア、北米の各地で防空体制を試すことが多く、海洋上空の飛行も多い。

冷戦時の核爆撃機
  1. ベアが生まれた背景には第二次大戦後にソ連が米国に対抗して自前の戦略爆撃機部隊の整備を急いだことがある。ソ連は1950年に四発爆撃機で5千マイル飛行させ米国内の目標地点を爆弾12トンで攻撃する構想をまとめた。
  2. 当時のジェットエンジンは大量の燃料を短時間で燃やしていた。そこでアンドレイ・ツポレフ設計局はNK-12ターボプロップエンジン四発に二重反転プロペラの搭載を想定した。
  3. NK-12エンジンにプロペラ二つが取り付けれれ、それぞれ逆回転させてトルクを打ち消しながら高速力を引き出す。二重反転プロペラは効率こそ高いが製造整備は大変で、信じられないほどの騒音を出し、広く普及していない。Tu-95のエンジン音は潜水艦やジェット機から探知されたという。
  4. ただしTu-95のエンジンは効果を発揮している。時速500マイルと世界最速のプロペラ機だ。プロペラは直径18フィートで先端部は音速をわずかに上回る速度で回転する。またベアはプロペラ機ながら後退翼を搭載した数少ない例で高速飛行に寄与している。
  5. Tu-95の燃料搭載量はものすごく大きく、機内燃料だけで9千マイル飛行できる。後期生産型からは特徴的な空中給油用装置がつき、飛行距離はさらに伸びた。冷戦時には一回10時間の飛行につくことが多く、一部の機体ではほぼその倍飛ぶものもあらわれた。
  6. Tu-95の乗員は型式により6名から8名で、パイロット二名、航法士二名を中心に機銃操作やセンサー操作にあたった。当初のベアには23ミリ二門の砲塔が機体下部と尾部についた。敵戦闘機を排除する構想は長距離空対空ミサイル登場で意味がなくなり後期型は尾部を除き機銃を廃止した。(公平のため記すとB-52の尾部機銃で撃墜二例あるいは三例がヴィエトナム戦争時に記録されている)
  7. ベアの当初任務は明確だった。冷戦が本当の戦争になれば、ベア数十機を北極越えで送り込み、核爆弾を米国各地に投下するはずだった。途中多数がミサイルや防空戦闘機の餌食になるのは覚悟のうえで、数機が侵入に成功すればよいとしていた。
  8. これは映画「博士の異常な愛情」が描いた米空軍の戦闘実施構想をまねたものだったが、ソ連には核装備爆撃機を二十四時間空中待機させず、米国とは違っていた。
  9. Tu-95は核兵器実験にも使用された。Tu-95Vが世界最大の核兵器を1961年にセヴェルニ島に50メガトンの「爆弾の帝王」をパラシュートで落下させ地上4キロ地点で爆発したキノコ雲は40マイル先からも目視された。衝撃波でベアは高度を千メートル失ったがパイロットは機体制御を取り戻し帰還させた。乗員は生存の可能性は50パーセントしかないと事前説明を受けていた。

海洋上空の襲撃者として
  1. 1960年代に入るとソ連も戦略爆撃機で核爆弾を米国上空から重力落下させても装備の無駄使いと理解するに至る。これには防空装備の進歩と弾道ミサイルの費用対効果が向上したことがある。以後のTu-95には別の任務想定で開発が進んだ。
  2. 迎撃戦闘機に弱い爆撃機の特性から長距離巡航ミサイルの母機に転用することとした。Tu-95K型は大型Kh-20核巡航ミサイル(NATO名AS-3カンガルー)を搭載した。ミサイルの射程は300キロから600キロで形状は航空機から主翼を取ったように見えた。実はMiG-19の胴体を原型としたせいだった。
  3. もう一つミッションがベアに与えられた。米空母戦闘群の追尾であった。高性能センサーを使っても広大な海洋上で艦船を探知追尾するのは容易ではない。ただし、空母群の位置が判明すれば、陸上から爆撃機多数を向けて攻撃できた。ベアは海上を長時間飛行できるので米艦隊探知に最適と思われた。
  4. Tu-95RT海洋偵察機型が専用に製造された。海面探知レーダーを機体下部につみ、尾部銃座後方にガラス張り観測室も追加した。
  5. 有事の際に敵艦隊追尾は有益だが、同時に米海軍に空爆を受ける脆弱性の危険を心理的に与える意味もあった。米空母から戦闘機がスクランブル発進しベアを追い払うことがよくあった。ベアが米戦闘機と一緒に写る写真多数は冷戦時代の象徴だ。

Tu-95の各型
  1. その他試験実験用のベアもあり、Tu-85LALは原子炉を搭載、Tu-95KはMiG-19戦闘機を搭載し空中発進させる構想だった。
  2. 実際に生産されたその他の形式にTu-95MR写真偵察機、Tu-95K改良型とKM型があり、センサー性能を向上しKh-22ミサイルを発進させた。
  3. ソ連では対潜偵察機型をベアから開発しTu-142が生まれた。背景には新型ポラリス潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)への恐怖があった。Tu-142は洋上探査目標捕捉レーダー「ベルクート」(金鷲)で識別可を図った。また尾部ブームにMAD磁気異常探知機を搭載し、潜水艦探知に使う。Tu-142はストレッチされセンサー類を全部機内に搭載している。
  4. 冷戦中は米潜水艦の性能向上に呼応した改修を受けている。現在供用中のTu-142MZは高性能化したソノブイRGB-16、RGB-26を搭載し、エンジンも強化している。Tu-142が米潜水艦探知に成功する事例が多数あり、長時間にわたり追尾もしている。Tu-142MRでは二機がロシア潜水艦向け通信中継用に製造されている。
  5. ロシア海軍航空隊はTu-142を現在も15機運用中だ。うち一機がシリアで目撃されている。シリア反乱勢力なのか米艦隊なのかわからないが動きを探知しているのだろう。
  6. インド海軍にはTu-142MK-E型が8機あり、1988年から供用中だが、ゆくゆくはP-8Iポセイドンにバトンを渡す。
  7. ベアからロシア初のAWACS、Tu-126も生まれた。Tu-114旅客機は1959年にフルシチョフを乗せモスクワからニューヨークにノンストップ11時間で運んだ。ただし両型とも現在は運航されていない。
  8. Tu-142以外に現在運航中のTu-95はTu-95MS型50機余である。機体はTu-142が原型で巡航ミサイル発射母機としてKh-55(NATO名AS-15)を運用する。近年にさらに改修を受け、巡航ミサイル16発を運用できるようになった。また航法目標捕捉装備も更改された。Kh-55は各種型式があり、核・非核両用で射程は最大3,000キロ、最短300キロだ。
  9. Tu-95MSM型はKh-101を運用でき、核つきKh-102ステルスミサイルも発射できる。これは低高度を飛び、レーダー断面積も減らしている。射程は5,500キロといわれる。
  10. こうした恐ろしいペイロードがあるが、ベアの敵は機体寿命だ。2015年夏には短期ながら飛行停止した。二年で二機で事故があったためだ。
現況
  1. ペアは太平洋大西洋上空を今も飛んでいる。現時点の主要任務は他国付近を遊弋飛行することだ。
  2. Tu-95が英国沿岸付近を飛ぶところを見つかり、カリフォーニア州から50マイル西を飛び、アラスカ防空識別圏内に入り、日本の領空も侵犯している。そこまで接近して飛ぶのは迎撃態勢を挑発するためだ。他国の領空に入ることは普通はない。
  3. 冷戦期はこのパターンの飛行が普通だったが2007年にプーチンが復活させた。理屈の上では監視飛行だが真意はロシアが核兵器運用爆撃機をその気になれば各国の近くまで飛ばせると思い知らせることにある。
  4. 米RC-135スパイ機も中国やロシアの戦闘機を刺激するがRC-135は非武装だ。
  5. 無論、ベアはステルス性とは程遠く、最新の対空兵器を前に生き残ることはできないが、巡航ミサイルを搭載するベアは防空網のはるか手前でミサイル発射すればよい。
  6. 2015年11月にベアは供用開始後59年で初の戦闘を行った。ロシア国防省発表のビデオによれば巡航ミサイルを発射し、シリア反乱勢力の陣地を攻撃している。巡航ミサイルを発射したロシアは自国の軍事力を世界に見せつける意図があったと解釈された。
  7. ロシア軍にはもっと重装備で超音速飛行可能な爆撃機も別途あるが、長年稼働してきたベアは大型巡航ミサイルを搭載し太平洋大西洋で監視の目を光らせる任務に適合している。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Creative Commons.


2017年6月11日日曜日

★★空母キティ・ホーク、ペリー級フリゲート艦の現役復帰案が浮上中



うーんこれはどうなんでしょう。モスボール係留中の劣化を克服し、新装備を搭載しても乗員が旧式艦の装備に習熟するのに時間がかかりその間にも供用期間が減ります。数合わせにしかならないのでは。ペリー級フリゲートは使い勝手はよさそうですが、VLS搭載の必要はないのでは。低水準の脅威環境なら十分現状でも対応できそうですね。LCS沿海域戦闘艦支持派にはフリゲート艦復帰は都合悪いでしょう。日本にはモスボール保存がないのでわかりませんが、たしかに米海軍はベトナム戦争、湾岸戦争にアイオワ級戦艦を復帰させていましたね。独特の技術水準を維持しているようです。


Last Stop for USS Kitty HawkMC3 KYLE D. GAHLAU—U.S. NAVY

US Navy Looking At Bringing Retired Carrier USS Kitty Hawk Out Of Mothballs

米海軍が退役空母USSキティー・ホークの現役復帰を検討か

Bringing back its last operational conventionally powered supercarrier would help the Navy make its 12 carrier fleet goal a reality.

最後の通常動力大型空母の復帰は海軍が求める空母12隻体制の実現の近道になるか

 BY TYLER ROGOWAY JUNE 8, 2017



  1. 米海軍が目標とする355隻体制の実現に向かう中で(現状は275隻)一つの方策は現役艦船の耐用年数を延長することである。さらにモスボール保存中の艦船を現役復帰させる案も検討している。その中で可能性が高いのが最後の通常動力大型空母USSキティー・ホーク(CV-63)だ。
  2. 海軍の海上システムズ司令部を率いるトーマス・ムーア中将は保存中艦船は大部分が復帰もままならない状態であるが、USSキティー・ホークは違うと述べている。「保存中の空母でキティー・ホークは真剣に検討対象となる艦だ。エンタープライズ退役の際は艦体が老朽化していた」
  3. たしかに空母一隻を現役復帰させるのは「空母ギャップ」を埋める有効な解決方法であり、トランプ大統領が求めるスーパー空母12隻体制実現への近道のように映る。現在の米海軍はスーパー空母10隻を運航中で、USSジェラルド・フォード(CVN-78)が就役に一番近い位置にあるとはいえ、目標の隻数にするには数年かかる見込みだ。
  4. キティー・ホーク現役復帰案はフロリダ州メイポート関係者には心地よく聞こえるかもしれない。同地はスーパー空母の同地配備再開を米海軍に長年求めてきた。同地施設は原子力空母の支援用に改修を受けておらず、USSジョン・F・ケネディ(CV-67)が2007年に退役後は常駐のスーパー空母がないままで地元経済にも打撃となっており、戦略的な穴にもなっていた。キティー・ホークが配備されれば大幅施設改修も必要なく理想的な母港になる。
  5. その他にも現役復帰の対象になる艦がある。まずタイコンデロガ級巡洋艦の初期建造5隻がデラウェア河に係留されたままだ。各艦はマーク41垂直発射管を搭載せず、二本式のマーク26ミサイル発射装置が搭載されている。だがこのまま予備艦艇としておくのは水上戦闘力を有効活用していないとよく言われる。ただしムーア中将は別の理由があると見ている。
  6. 各艦は現役の同級他艦と比べると旧式化が目立ち、艦隊で活躍中の各艦に近い実力に整備するには多額の予算が必要だ。それ以外に艦内の部品は流用のため撤去されている。「戦闘力の観点からするとこれらの艦は陳腐化著しい。現役復帰は多分ないだろう。ここ数年は部品取りに使われているのが現状だ」
BIGBIRD78/WIKICOMMONS
USSタイコンデロガ(CG-47)はフィラデルフィア海軍工廠で悲惨な状態で保管中だ。
  1. 旧式艦の再生では復帰コストと提供可能となる戦力をよく比較する必要がある。また機能がどこまで劣化しているのかを現役の最新艦と比較せざるを得ない。また仮に再復帰に予算を投じても果たしてあと何年供用可能かを見極める必要がある。
  2. そうなるとキティー・ホーク以外の復帰艦候補は下位の任務をこなす艦であり、巨額の技術投資が不要な艦となる。海軍にはモスボール保存中の補給支援艦の他にオリヴァー・ハザード・ペリー級誘導ミサイルフリゲート(FFG)がある。早すぎる退役が悔やまれた艦であり、各国に供与され大幅に受けた改修を同じく応用できるはずだ。例えばマーク41垂直発射装備の搭載やセンサー類、戦闘指揮システムのアップグレードが考えられる。
USN
ペルシア湾をパトロールするオリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲート艦USSサッチ。2009年
  1. FFGでは有効に使える可能性を検討し、戦闘支援艦でも有効活用の可能性を見る。全体として保存艦艇の活用は限られるが、個別の艦の状況を見て決めていくという。
  2. ドナルド・トランプ大統領がこの構想を支持する可能性は十分ある。トランプには旧式でも改装を加えた機体を活用してきた経歴もある。選挙運動中にトランプはアイオワ級戦艦の復帰さえ言及していた。ただしこの案は以下に政治的に後押しがあっても実現は極めて可能性が低い。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com



2017年6月10日土曜日

ルーク空軍基地のF-35Aが全機飛行停止措置に


これは変ですね。供用中のF-35Bではこのトラブルは聞こえてきませんし、5月に入ってから5機(にしか)発生していないというのはばらつきであり、部品製造レベルの品質管理が悪いためなのでしょうか。F-22の事例もありましたので原因究明が早くできるといいですね。

F-35s at Luke Air Force Base grounded after pilots suffered oxygen deprivation

ルーク空軍基地のF-35が飛行停止措置へ、酸素供給問題が発生。
By: Stephen Losey and Valerie Insinna, June 9, 2017 (Photo Credit: Air Force)
ルーク空軍基地(アリゾナ州)の第56戦闘機隊が6月9日にF-35AライトニングII戦闘機の飛行停止措置をとった。低酸素症が5月から計5件も発生したためだ。
  1. 米空軍は同日の報道発表でパイロット5名で低酸素症が先月から発生したと述べている。予備酸素が毎回稼働されパイロットは手順通り安全に着陸させている。
  2. 「安全な飛行運用に向け整備と運用を同調させるべく、当地でのF-35A飛行を停止することとした」と第56隊の指揮官ブルック・レオナード准将が報道資料で述べている。「空軍は今回の事象を深刻に受け止め、パイロットの安全と体調管理を最優先する。根本原因を調査するべく必要な措置を取る」
  3. F-35管理室JPOが技術、整備、航空医学の各専門家によるチームを立ち上げ、調査を開始する。現時点では機内の酸素発生装置(OBOGS)が故障したかは不明だ。                    
  4. 「F-35事業では多方面アプローチで機材で見られる生理現象を監視追跡しており、結果はウェポンシステム改善に使い、作戦時の戦術、技量、手順に応用する」とJPOは声明を発表。「進行中のJPO検討には政府関係機関と民間の技術、整備、航空宇宙生理学専門家がチームで対応している」
  5. 第56隊の広報係レベッカ・ヘイス少佐は飛行停止は今のところ一日のみと強調し、来週月曜日に再開するとしている。飛行停止の影響を受けるパイロットは49名ほどで当日は低酸素症の概略説明を受け先のパイロットがどう対処したかを学ぶ。航空医官からも症状の説明があり、現時点での分析内容を聞く。
  6. 56飛行隊はパイロット向けオープンフォーラムで懸念事項の解消に努める予定だ。
  7. ヘイス少佐はDefense Newsに対し今回の事態に遭遇したF-35Aは計5機で異なる飛行隊所属の機体だと説明している。事件遭遇のたび航空医学専門職が該当パイロットの生理学的データを集め、整備陣が機体からデータを回収している。情報の分析がまだ途中だがJPOチームに回し根本原因の把握に使うという。
  8. F-35Aではパリ航空ショーへの出発が今回の措置から一週間もしないうちに控えている。ロッキード・マーティン社パイロットが飛行展示する予定でヒル空軍基地所属の機体を使う。飛行展示は予定通り行うとロッキードの広報係マイク・レインは述べている。「予定は変更ありません。当社のパイロットにこの症状は出ていません」
  9. F-22ラプターでも酸素供給問題が発生しパイロット数名が低酸素症んいなったため空軍は同機を五か月間にわたり飛行停止したことが2011年にあった。2012年7月に空軍はF-22の低酸素症の原因はパイロットの生命維持ベストのバルブの締め付け不十分のため呼吸が制限されたと判明している。■

ISIS戦は新たな局面に入ったのか、無人機から攻撃を受けた米軍特殊部隊


イラク、シリアでは敵対勢力が空軍力を持たない前提で作戦を実施した来たため今回の無人機襲撃事例はショックでしょう。無人機を有効に活用すれば効果を上げるのも可能だと示しています。さらに無人機の製造元がイランであり、イランへの警戒をあらためて強める効果も生まれそうです。


U.S. F-15E Downs Iranian-Built Syrian Drone After Airstrike on U.S. Led Forces 米F-15Eがシリア無人機を撃墜したが、イラン製無人機は米軍主導の地上部隊を空爆していた

By Tom Demerly Jun 09 2017

 

  1. ストライクイーグルがシリアの無人機を撃墜したがその前に同無人機は反アサド地上部隊を攻撃していた。ストライクイーグルの撃墜例は湾岸戦争終結後二件目になった。
  2. 反アサド勢力のシリア軍を補佐中の米特殊部隊軍事顧問団がシリア政府に近い勢力が操作するイラン製シャヘド129型無人機の攻撃を受けた。6月8日に発生したと米陸軍が発表した。
  3. これに対し米空軍F-15Eストライクイーグルが同無人機を撃墜した。
  4. 現場はアル-タンフ、シリア南部でヨルダン国境に近い地点。アル-タンフには前線基地があり英米特殊部隊がISISに対抗するシリアゲリラ部隊マガウィル-アル-タウラ(「革命戦士部隊」)を援助している。同部隊はシリア地元の特殊作戦部隊で連合国勢力から訓練支援を受けながらアサド政権を相手に戦っている。
  5. 米軍はF-15Eストライクイーグル一機に無人機の探知撃破を命じた。米軍が敵対勢力による攻撃を空から受けるのはほぼ20年ではじめてで、ストライクイーグルが空対空戦で撃墜したのは1991年にイラクの武装ヘリコプターの撃墜事例以来二件目となった。
  6. 不朽の決意作戦の統合共同タスクフォース広報官ライアン・ディロン米陸軍大佐によればアサド政権所属の無人機が米顧問団とシリア革命戦隊を攻撃したが「連合軍部隊に被害は発生していない」
  7. 「政権側のUAVは米MQ-1プレデターに類似し、米空軍機が撃墜する前に搭載兵装の一部をISISに対抗する地上部隊の訓練支援にあたる連合軍人員の近くに投下した」との声明文を発表。「今回の撃墜の前に同日には連合軍が政権側テクニカル車両二台を破壊している。車両は武装衝突回避地帯内部に侵入し連合軍・提携勢力部隊の脅威となっていた」
  1. ペンタゴン担当記者タラ・コップは米軍機が無人機を撃墜したとツィッターで真っ先に報じた一人である。
  2. アル-タンフ周辺の34マイルにわたる地帯は「武装衝突回避地帯」として連合軍が設定している。緩衝地帯とし英米が支援する反アサド部隊の安全を図るのが目的だ。だが同地帯内部で事件数件が発生しており米軍による対応が必要とされてきた。6月6日火曜日には米海軍F/A-18ホーネットが爆弾四発を投下し推定10名の親アサド勢力戦闘員が死亡し、車両数台を破壊している。
  3. 親アサド勢力がイラン製シャヘド129無人機を近辺から操作した可能性がある。
  4. 注目されるのは、同地域での米陸上部隊がはじめて航空攻撃を受けたことだ。イラン製シャヘド129はヒズボラも2012年にイスラエル戦に投入している。イスラエルも無人機を撃墜していたが、テロ集団の運用能力が危険なエスカレーションをしたことが話題になっていた。■
イラン製シャヘド129武装無人機 (Iranian News Media)