2017年11月10日金曜日

米戦略軍核戦争演習の結果から----指揮統制機能は生き残れるのか


核兵器体系の近代化に今後莫大な予算が必要との指摘があり戦略軍からの発信は今後増えるでしょう。トランプ大統領に不安を感じる動きもあり、今回紹介する記事でも意見の違う専門家のやり取りが見えてきます。意見が違っても耳を傾けるのが健全な言論社会のありようと思いますが、実際にはあまりにも短絡的な反応や圧殺に向かうのは異様ですね。このブログをご愛読の皆さんは健全であってほしいと思います。

STRATCOM Wargames Its Own Death; Who Watches The President?

STRATCOM演習で米本土壊滅、だれも大統領を制御できない

"Ivy King" nuclear test,, 1952. Courtesy Los Alamos National Laboratory.
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 09, 2017 at 3:56 PM
WASHINGTON: 今週初め米戦略軍団STRATCOMは核戦争演習の最後で時計をにらみながら(シミュレーションの)ミサイルが米本土基地に着弾し「地面に煙を出す大穴が開く」のを待つしかなかった。
  1. 陸軍准将グレゴリー・ボーウェンBrig. Gen. Gregory BowenはSTRATCOMでグローバル作戦副司令官で10日間のグローバルサンダー2018演習でSTRATCOM司令官ジョン・ハイテン大将の就寝中に指揮代行した。
Army photo
Gregory Bowen takes the oath of office on being promoted to brigadier general.
  1. 「ミサイルの応酬の最後には司令部(ネブラスカ州オマハのオファット空軍基地)が地面の穴になり煙につつまれた」とブラウン准将はDefense One主催カンファレンスで発言している。「時間がゼロになると司令部スクリーン全部が消え照明が落とされみんな座り込み何が起こったのか咀嚼しようとした」
  2. グローバルサンダー演習の第一の目的はSTRATCOMの地球規模での指揮統制通信ネットワークのストレステストだった。「不完全な状況でも運用の必要があります」(ブラウン)報告や命令がすべて届かないことがコンピュータハッキングや通信妨害でありうるし、核兵器によりネットワークが物理的に機能しなくなり通信状況は全般的に悪化する。
  3. シミュレーションの交戦が進行するにつれ、「指揮統制機能は低下し最後はジェット機に頼らざるをえなくなった」とブラウンが言うのはボーイング747を改装し通信電子装置を詰め込んだE-4B別名国家空中作戦センターまたは冷戦時のコードネーム、ルッキンググラスである。極限状況でも「大統領命令を実行できる残存性高い手段が残る」とブラウンは言う。
Air Force photo
E-4B command and control aircraft
  1. だが大統領から誤った命令が出たらどうなるのか。DefenseOneのパネルディスカッションでブラウン准将と並んだジョセフ・シリンシオンJoseph Cirincione(Ploughshares Fund代表)はトランプ大統領の言動に不安を感じ核の指揮統制機能を注視しているという。一発のミサイル発射には将校二名がキーを同時に回す必要があるが、大統領は一人でミサイル全部の発射命令を出せる。ボブ・コーカー上院議員Senator Bob Corkerはトランプに反対する立場から来週の公聴会で大統領の核兵器運用権限を論じるが40年ぶりのこととなる。
  2. 「大統領が命令すればだれも逆らえない。全員が反乱を起こさないかぎり止められない。大統領本人だと検証されればミサイル発射は4分か5分後にだ」「ここまでの権限を一人に与えていいのか」(シリンシオン)
  3. ブラウン准将は現行制度を擁護する。「理由あってこの形になっています。ミサイルが飛来する極限状況で迅速対応する目的で作られています」「実際は極めて厳格な手順になっています」 大統領は国防長官、国務長官、統合参謀本部議長他主要補佐官と連絡する必要があるとブラウンは説明。軍は大統領に選択肢を提示し、静観から通常兵器のみによる反撃さらに核による反抗まで幅がある。
  4. 紙の上ではきれいに聞こえるとシリンシオンは指摘し、大統領に上記の各人と協議することは求められておらず、せいぜい意見を聞くだけだとする。大統領が核先制攻撃の命令を突然出したら、部下は尻込みして法的な根拠を探すだろうとシリンシオンも認める。だが危機のさなかでは敬礼して発射してしまうだろうというのだ。
  5. 危機状況ではエスカレートの可能性が強いとブラウン准将も認める。STRATCOM演習でも通常戦が核保有国同士で発生すれば、ロシアがその例で、核兵器投入は即時あるいはその後になりそうだと判明している。グローバルサンダーのシナリオがまさしくこの例だった。ブラウンは「通常戦で始まったが、状況が悪化して核兵器の応酬になった」と述べた。
  6. ではエスカレーションを食い止められないのか。「あくまでも不確実」とブラウンは発言。「一方が負け始めていると感じれば核兵器投入の誘惑にかられる」
  7. とくに不確実になるのは一方が「事態鎮静化のためにエスカレートさせる」考えを採用している場合だ。ロシア関係者からは通常戦で不利な状況になれば限定的核攻撃で敵軍を後退させる可能性があるとの発言が出ている。ブラウンも「ロシアは勝利をつかむためにエスカレートさせるのであって鎮静化が目的ではない」と述べた。
  8. シリンシオンは一部米専門家にもロシア同様に限定先制攻撃を是認する動きがあり、限定効果でエスカレーションを制御できるというのは錯覚に過ぎないと指摘。この考え方だと「使用可能な」核兵器がもっと必要との主張につながる。物議を醸す空中発射巡航ミサイル(ALCM)の後継モデルがその例だという。
  9. ブラウンはこの考え方に賛同しない。ALCMはB-52やオハイオ級潜水艦、核兵器運用の指揮統制ネットワーク同様に近代化が待ったなしの装備の一例にすぎないという。
  10. 「決定の先送りで、システムが老朽化しています」とブラウンは指摘。「装備すべてが旧式になっており、更新が必要です。たしかに高額の予算が必要ですが、これは国が生き残るための保険なのです」■

ロシア、中国の長距離空対空ミサイルに狙われる米空軍支援機材


 長距離空対空ミサイルが進歩していますが、センサーやレーダー技術がマッチしているのでしょうか。敵に命中するまで照射し続けるのであればいい標的になりますね。したがって単純に装備が優れていても実戦での効果は別の話だと思うのですが。ともあれ、AAMの長距離化がすすみそうですね。J-20は長槍の名称があるようですが、記事の指摘する作戦構想とともに日本国内の基地攻撃にも投入されるのではないでしょうか。
 


Russia and China Could Crush the U.S. Air Force in a War Using This Trick

ロシア、中国は米空軍をこうして撃破する
November 8, 2017

新世代のロシアや中国製の長距離空対空ミサイルは米航空作戦の実施で不可欠な機材への脅威になる。対象はAWACSや各種情報集偵察監視(ISR)機材、給油機、電子戦機材だ。
  • 接近拒否領域拒否(A2/AD)を取るロシアや中国を見るときには対艦ミサイルや地対空ミサイルに関心が集まりがちだが超距離迎撃手段が正しい戦闘機に搭載されるとアジア太平洋、欧州の両方で米空軍力の航空作戦継続が困難となりかねない。ロシアのMiG-31、Su-57や中国の成都J-20が空対空ミサイルで米AWACS、JSTARSや給油機に使われるKC-135や今後登場するKC-46ペガサスを狙う。太平洋は広大だが航空基地はまばらなので給油機がアキレス腱になり、ここを北京は狙ってくる。注意が必要なミサイル開発が三件あり、ロシアのヴィンペルR-37M RVV-BD、ノヴァタKS-172 (別名 K-100)と中国のPL-15だ。
  • このうちR-37M RVV-BD は新型長距離空対空ミサイルですでに初期作戦能力(IOC)段階にありMiG-31BMフォックスハウンドに搭載されている。最終的にスホイSu-35SフランカーEやSu-57 PAK-FAステルス戦闘機に搭載されるはずだ。RVV-8DはNATOがAA-13と呼び160カイリ以上から標的に命中させたといわれる。
  • 「改良型R-37M(RVV-BD,イズデリ610M)ミサイルは2014年から量産中で、いまやIOC段階にありMiG-31BM迎撃機飛行隊に配備されている」とミハイル・バラバノフMikhail Barabanov,(Moscow Defense Brief主筆)が述べる。「RVV-BDミサイルはSu-57にも搭載の予定がある」
  • R-37原型はソ連時代にNATOの重要機材のE-3セントリーAWACS、E-8JSTARS、RC-135V/Wリベットジョイント攻撃を想定した。高速戦闘機MiG-31などから発射しNATO機材を掃討する構想だった。MiG-31はマッハ2.35飛行が可能でステルスのSu-57はミサイル発射に理想的な機体で、速度と高度を武器にすれば迎撃を回避できる。
  • 「R-37はこちらのISR機材排除を目的に1990年代からテストされてきた専用ミサイルです」とマイク・コフマンMike Kofman(ロシア装備研究を専門とするCNAコーポレーション研究員)は解説する。「さらにノヴァタのプロジェクトには続きがあり、KS-172とかK-100と呼ばれるものがあります」
  • 1991年のソ連崩壊を受けR-37開発を続けたものの進まず1990年代が特に大変な時期でロシア国防産業は資金不足に悩まされた。ソ連時代のR-37原型は開発中止となりRVV-BDとして復活した。バラバノフはR-37原型の開発取りやめは1997年と述べる。
  • R-37Mは慣性航法と戦闘機からの飛翔経路修正を併用しアクティブレーダー誘導を最終段階で使う。戦闘状況ではMiG-31が高速ダッシュ飛行で標的に向かいR-37Mを一斉発射するだろう。フォックスハウンドは自機の大型ザスロン-Mフェイズドアレイレーダーを照射しデータをミサイル自身のレーダーがアクティブになるまで持続する。米製AIM-120DAMRAAMのホーム-オン-ジャム機能と同様の機能がついておりボーイングEA-18Gグラウラーのような電子攻撃機に対抗するかもしれない。
  • ソ連はNATOや米空軍の優位性はAWACSを使った調整型航空作戦の実施能力によるものと見ていた。ソ連はAWACS対抗策としてパッシブホーミング方式長距離空対空ミサイルを開発していた。「知る限りでは空対空ミサイルにパッシブレーダーでホーミングさせるのがソ連の1980年代で主流だったが今では効果がないと見られている」(バラバノフ)
  • RVV-BDは恐ろしい兵器だがモスクワはもっと高性能のミサイルをノヴァタKS-172別名K-100として開発している可能性がある。RVV-BDは最大射程が200カイリと見られるが、新型は250カイリだとみられる。「200カイリを超える射程はR-37Mでは無理だろう」とコフマンは見る。「ここまで長距離対応の装備を作れるのはノヴァタしかない。KS-172は200マイル超で打ちっぱなしミサイルの想定だったが似たようなものだろう」
  • ただしKS-172/K-100ミサイルがいつ開発を終了し生産に入るのか不明だ。K-100は結局実用化されないとの見方もある。「K-100ではインド資金がないと開発完了できないようです。ノヴァタ製の優秀なミサイルなのですが、実用化されるか不明です。長さがかなりあり第五世代機に搭載できないのでは」(コフマン)
  • バラバノフもK-100は開発中止の可能性があると述べる。「K-100ミサイルでは今も生きている事業か疑わしいと見ています。かなり前に中止しているのでは」
  • 世界の反対側では中国がラムジェット動力のPL-15の開発中で、射程は120マイルといわれる。PL-15は米空軍でも警戒しており航空戦闘軍団司令官ハーバート・「ホーク」・カーライル大将が米国も採用後数十年が経過しているAIM-120AMRAAMの後継ミサイル開発に進むべきと提唱していた。
  • 「どうしたら対抗できるか」とカーライル大将は戦略国際研究センター主催の会場で問題提起していた。その後、Flightglobal,の取材でカーライルは新型中国ミサイルへの対抗は「きわめて上位の優先事項」だと米空軍内部の取り組み方を紹介していた。「PL-15の射程距離以上のミサイルがこちらに必要だ」
  • PL-15がAMRAAMより射程が長いことだけが問題ではない。J-20戦闘機に搭載すれば中国は給油機、ISR機材を掃討し太平洋の戦闘で不可欠な機材が使えなくなる。2008年のRAND研究所のまとめではF-22をグアムから発進させ台湾上空に投入する米空軍は毎時給油機を3ないし4ソーティー発進させ260万ガロンの空中給油が必要と指摘している。この事実に北京が気付かないはずがない。
  • J-20ではっきりしたデータがないが高速長距離ステルス機で相当の機内搭載量があるようだ。レーダー断面積が減って超音速飛行をし、内部にPL-15ミサイルを搭載すればJ-20は米空軍空中給油機やISR機に脅威となる。同じく2008年RAND研究では中国のSu-27フランカー派生型が米給油機、ISR、海上哨戒機さらに指揮統制機を長距離空対空ミサイルで全滅させるシミュレーション結果だった。
  • 米空軍の対応策は基地分散と補給体制強化で遠隔地の不完全な基地に補給を絶やさず中国A2/ADに対抗するというものだ。ただし空軍は給油機、ISR機、指揮統制機を敵攻撃から防御する手段は開発に着手していないようだ。この課題への解決策はこうした機材を安全圏内に退避させることだけだ。だがそうすれば戦術機の行動半径も短くなり、中国内部への攻撃ができなくなる。
  • そうなると、ロシアや中国の長距離空対空ミサイルを第五世代戦闘機に搭載させる構想はペンタゴンに頭の痛い問題になりそうだ。今後数年間にわたり注視すべき問題だ。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.
This first appeared earlier in the year.
Image: Reuters.

★理解できない韓国のSSN取得希望



なぜ原子力潜水艦を韓国が希望するのか理解に苦しみます。北朝鮮相手なら戦術面、費用面で通常型で十分なはずで、もし真剣にSSNを整備するのなら全く別の動機があるからでしょう。まさかSSN保有が大国の条件だとは考えていないと思いますが。


Will South Korea Build Nuclear Attack Subs?

韓国は原子力潜水艦を建造するつもりなのか

The leaders have reportedly discussed the acquisition of nuclear-powered submarines during their recent summit.
米韓首脳会談で原子力潜水艦の取得をとりあげたといわれるが...

November 08, 2017
ドナルド・トランプ大統領と文在寅大統領は韓国むけ原子力攻撃潜水艦(SSN)の開発あるいは調達を首脳会談でとりあげたと韓国(ROK)政府関係者が明らかにした。
  • 文大統領が原子力潜水艦取得あるいは開発の関心ぶりををトップ会議で表明したことからROK政府がSSN取得をめざしていることがあきらかになった。
  • 文政権がSSN調達に熱意を示すのは北朝鮮の潜水艦部隊に通常動力型弾道ミサイル潜水艦複数が加わったことも理由のひとつといわれる。北朝鮮艦はKN-11北極星-1号潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載する。原子力潜水艦は通常型とちがい、海中に長期間待機でき北朝鮮ミサイル原潜追尾を効果的に行える。
  • とはいえSSN部隊を小規模と言えROK海軍が運用して意味があるのだろうか。
  • 米国が保有するヴァージニア級や退役近づくロサンジェルス級を韓国へ売却・リースするるとは非常に考えにくい。理由として核拡散の恐れ以外に潜水艦技術の機密を同盟国と言えども共有したくないことがあるし、米国建造の各艦はROK海軍での運用はあまりにも高価になる。
  • 「米国が原子力潜水艦を外国販売した実績はない」とROK政府関係者も認める。そのため「(原潜を)取得する選択をしたら国産建造しかない」という。ROK海軍はSSNを三隻調達し常時一隻をパトロールさせたいとする。三隻調達の総費用は支援設備調達も含め90億ドルで、運航経費は別都の試算が出ている。
  • 韓国現地報道では2003年に極秘研究が軍で「362構想」として始まり国産原子力潜水艦建造をめざしていた。だが事業が2004年に中止されたのは構想が世に漏れて国際原子力エネルギー機関(IAEA)の注意を引いたためだ。ただそれ以前に韓国原子力エネルギー庁がSSN用小型原子炉の設計を完成させている。
  • 政治技術両面で数々の障害がありひとつひとつ克服しないと文政権の夢である原子力推進潜水艦部隊の実現は無理だ。なかでも核燃料の取得が一番の障害だ。米韓原子力合意の枠組みで韓国は軍事目的のウラニウム濃縮並びに使用済み核燃料の再処理は禁じられている。ただし民生用にはウラニウム濃縮は将来認められる。SSNでは低濃度ウラニウムがあれば十分だが、米国が核拡散の恐れからROK海軍が米国が制約を課すのは必至だ。
  • 「米韓両国は内容を手直しして韓国に原子力潜水艦用核燃料の確保をさせるか決めていない」とROK国防省関係者はは2016年にThe Korea Timesに語っていた。韓国は核不拡散条約に1975年批准しており以後枠内にとどまっている。
  • 韓国が原子力潜水艦開発に踏み切れば最低でも5年かかるはずでしかもこれは外部支援が前提だ。国産SSNを海外援助なしで開発するのは非現実的だ。考えられる海外提携先はインド、フランス、米国だろう。
  • だがSSNを使いこなせるかとなると議論が分かれる。
  • ROK海軍は基本的に沿海部戦闘が主任務で2019年までにディーゼル電気推進潜水艦18隻を就航させ各艦に高性能ソナーと大気非依存型推進を搭載する。各艦は二週間程度潜航したままでいられる。通常型潜水艦を追加すれば北朝鮮潜水艦基地の哨戒活動が充実する。
  • さらにディーゼル電気推進方式潜水艦は静粛性に優れ探知も原子力潜水艦より困難だ。建造価格も低いので隻数を増やせる。ROK海軍は潜水艦以外にも対潜航空機を充実させれば北朝鮮潜水艦の追尾は可能なはずだ。■

2017年11月9日木曜日

ドイツ空軍がF-35採用に向かう可能性濃厚へ


トーネード後継機ですから戦闘攻撃能力を重視するとしてもライトニングの機内搭載だけでは攻撃力が減りますが、やはりステルス性能を重視しているのでしょうか。F-35受注数が増えて単価が本当に下がれば各国にも朗報なのですが。生産はイタリアで行うのでしょうか。まだ正式採用ではないですが採用は決まった感じですね。ドイツ空軍のトーネードは90機ほどですからそのままなら大量発注にならないのですが。


Germany declares preference for F-35 to replace Tornado

ドイツがトーネード後継機にF-35を有力候補にあげている

トーネード後継機導入までリードタイムが短いためドイツ空軍はロッキード・マーティンF-35を有力候補にあげている。 Source: Lockheed Martin

 Gareth Jennings - IHS Jane's Defence Weekly
08 November 2017
  • ドイツ空軍は現行パナヴィア・トーネードの更新が2025年から20230年に近づく中でロッキード・マーティンF-35ライトニングII共用打撃戦闘機が「望ましい選択肢」と見ていると上層部が11月8日明らかにした。
  • チャタムハウスルールで発言した幹部はF-35はルフトヴァッフェの要求内容をほとんど満足しておりそれ以外の効果ももたらすと述べた。
  • 「トーネード後継機は第五世代機で探知されにくくする必要がある。遠距離で目標捕捉しながら迅速に照準を合わす能力も必要だ。
  • 「ドイツ国防省は数機種検討中だがF-35もそのひとつで現時点で購入可能な機体が条件で採用国が他にあること、実際に供用中であることも条件にしながら要求性能を実現するかを最重要視している」
  • ドイツはエアバスディフェンスアンドスペース(DS)とトーネード後継機を次世代戦闘航空機システム(FCAS)として検討してきたが、トーネード退役時期の2030年は動かせず、ルフトヴァッフェは既存機種採用に切り替えた。
  • 同上関係者は「時間の成約から後継機種は2025年ごろから導入しないとトーネード退役完了の2030年に間にあわない。移行期間は5年と想定している。これはあと7年先で、それまでに新型機の開発・導入が業界で可能とは思えない。ユーロファイター事例では一号機の実戦配備まで25年かかっている」と説明した。■

トランプ大統領の各地訪問はこれだけの支援体制で実現している


The Presidential Motorcade Is on Full Display as Trump Tours Asia

トランプアジア歴訪で大統領車列の偉容を見せつける

With tensions simmering between the US and North Korea, the Secret Service has clearly spared no expense for the trip.

米朝間の緊張高まる中、シークレットサービスはすべての対策を惜しまない

SUH MYUNG-GUN/YONHAP VIA AP
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 7, 2017

米大統領の海外訪問では警備要員が大量に随行し緊急時に最高司令官および政府上層部を安全な場所まで誘導できるよう待機する。朝鮮半島の緊張が過去最大限に高まる中でもいつもどおりアジア歴訪では大統領車列の偉容を見せつけている。
トランプの歴訪は11月3日にハワイから開始した。日本へ11月5日移動し、韓国へ二日後に到着。その後中国、ヴィエトナム、フィリピンを訪問する。
韓国でトランプは首都ソウルを警察大部隊の護衛の下で移動した。ロイター記者ジェイムズ・ピアソンが車列をまじかから撮影しているので下を参照してほしい。ピアソンによれば朴槿恵前大統領の支持派と反対派が混在したが警察が後者を車道から排除したという。支持派はトランプを好意的を見ているといわれる。
ピアソンの画像で主要車両がよくわかる。まず警察の「掃除屋さん」が先導し、その後を米側車両が続く。
Trump motorcade passes through central Seoul and group of former president Park Geun-hye supporters. Anti-Trump demo blocked by police buses
その後に大統領専用リムジン二両が続き、うちニックネーム「ビースト」にトランプが乗り、もう一台は予備・おとり車だ。シークレットサービスは大統領が乗る方を「駅馬車」、予備車を「スペア」と呼ぶ。タイラー・ロゴウェイが以前まとめた記事では二台はジェイムズ・ボンド顔負けの性能で大統領の身を守るが制約もあるという。
「ビーストには最高級の防弾装甲、暗視赤外線操縦装備、完全閉鎖型車内で核生物学化学(NBC)攻撃に耐えるほか大統領と同じ血液型の予備まで備える。うわさでは赤外線煙幕、油膜散布、催涙ガス放出もできるというのはトム・クランシー小説の世界だ。さらに高性能通信装備でインターネットと秘話交信が可能だ。
「『ビースト』は2009年にオバマ大統領就任に合わせて登場し、一見キャディラックSTSとMRAP(対地震車両)のあいの子に見える。だが実は乗用車というより強襲トラックに近い。ただし強襲トラックの地上高はない。狭い市街地での運転にはコツがいるといわれ、車重が極めて大きく海外運用で故障したこともある。ちなみに旧型専用車では故障事例はなかった。」
その後に続く黒塗りSUV数台は大統領警護の対応強襲チームCounter Assault Teams (CAT)、指揮統制部隊、通信用車両(「ロードランナー」)、情報機関要員、防御手段各種を搭載した車両で後者は電子戦ジャミングで道路わきの爆発物や小型無人機の妨害も想定する。
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In case you were wondering... The Beast and our special agents made it to the next stop with #POTUSinAsia #Japan
ただし目に入らないのが有毒物質中和処理部隊を運ぶ大型トラックだ。もう一台白塗りのヴァンが加わるがおそらく救急車だろう。随行報道陣はバスに乗り、銀色SUV数台は韓国治安部隊等を乗せているのだろう。
車列は相当の偉容だ。201711月4日にシークレットサービスが今回のアジア歴訪の支援体制をツィートしており、車列の規模を強調していた。
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With #POTUSinAsia we couldn't very well leave The Beast behind!
「#POTUSinAsia(大統領アジア歴訪)に随行するビーストは本国に置いていけない」と伝えている。米空軍C-5ギャラクシー輸送機内に専用車両含め10台ほどが見える。大型車両は写っていないが別の軍用輸送機で同時に搬送されたのだろう。
さらにヘリコプター部隊やその他必要機材の輸送が日本に向け必要となり、その後も移動する。日本では海兵隊VH-3D大統領専用ヘリコプター(マリーンワン)がトランプ大統領を各地に移動した。
韓国ではレックス・ティラーソン国務長官、在韓米軍司令官米陸軍ビンセント・ブルックス大将が海兵隊VH-60N「ホワイトホーク」に同乗している。運用は海兵隊第一ヘリコプター飛行隊(HMX-1)だ。
THE WHITE HOUSE
President Donald Trump, along with Rex Tillerson and U.S. Army General Vincent Brooks prepare to board a VH-60N "White Hawk" in South Korea.
大統領がVC-25Aに大統領が搭乗するとエアフォースワンと呼ばれるが、実際に乗るのは二機のうち一機だ。随行機は整備上で何らかの必要が生じた際やその他緊急時の予備機だ。
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En route to Japan, 5hrs - 40min left...
それで終わりではない。本国や海外で米軍及び連邦政府法執行機関が完全体制で大統領外遊を支援する。2016年12月にタイラー・ロゴウェイが以下伝えている。
「大統領の移動にはマリーンワンのヘリコプター一組をC-17で、各車両をC-5ないしC-17数機で移動させるのが常だ。これを訪問地すべてで行う。マリーンワンが地上車両の代わりに使われる場合は、MV-22オスプレイも自力移動ないし輸送機で搬送される。さらに関連ホワイトハウス職員やシークレットサービス要員が民間機あるいは政府機材で移動する。予備の指揮命令機材(通常はC-20C)も付近の飛行場で待機する。これだけの移動となると訪問するたびに数十万ドル数百万ドルの経費が移動だけで発生する。
「海外移動では機材はさらに増え、あたかも空軍全体がエアフォースワンと移動するようなものだ。C-5、C-17、MV-22、VH-3D、VH-60N、C-20、C-32、C-37に加えE-4Bが移動する。E-6Bマーキュリーが支援する場合もある。機材の大部分は大衆の目に触れることはない」
北朝鮮がミサイル発射の挑発を繰り返し水爆爆発まで明示してているためE-4Bナイトウォッチ指揮統制機がトランプに寄り添って移動しているのは驚くべきことではない。同機は嘉手納航空基地に移動し大統領ミッションを支援中だ。E-4Bは大統領到着空港を決して使用せず、通常は数百マイル以内の地点で待機する。
地域大ではおそらくもっと多数の機材が待機中だろう。いわゆる「政府機能継続」手順に従い、緊急時対応も意識しているはずだ。大統領同行機材にはC-40やC-32が加わり、ホワイトハウス職員の残り、保安要員、報道陣他を乗せている。
大統領歴訪の間に北朝鮮が挑発行動をとる可能性は十分あると関係者等は指摘している。また突如武力衝突になる可能性もある。今のところ、金正恩に軍事力を行使する動きがないのが何よりだ。
大統領は非武装地帯(DMZ)訪問を中止したため力の誇示の機会を逸したが、マイク・ペンス副大統領がDMZへ赴き境界線の彼方を注視した。
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White Senior Staff stand outside the limo as @realDonaldTrumpattempted to make a surprise, unscheduled visit to the Demilitarized Zone separating North and South Korea this morning. The trip was foiled by a bad weather call and his helicopter could not fly.
11月14日までの日程中に突発事件が発生することなく、警備隊が特段の行動をとる必要がないよう祈ろう。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

北朝鮮非核化を断念し封じ込め戦略の採用を勧める考え方


悪の体制でも共存しなければならないのでしょうか。一部で期待するのは軍事力で北朝鮮を崩壊させることですが、米国ではこの封じ込め対策が抑止力の裏付けとともに主張されるようになっていますね。翻って日本ではまだその視点はすくないようですが。戦争がないほうがいいのですが、後の世代に禍根を残しても困りますし、北朝鮮の体制が永遠に続くとも思えませんが、封じ込めとなれば長期を覚悟し陸の国境線は中国だけに任せておけないでしょうし、海上封鎖や臨検となれば海軍力を常時朝鮮半島両岸に配置することになり、日本も参加を求められるでしょう。それにしても米国シンクタンクの人材は厚く色々考えていますね。熟考というか視点がちがいますね。

Getting Real on North Korea
北朝鮮に現実的対応が必要だ


By Daniel DePetris
November 08, 2017

  1. ロナルド・レーガン大統領時代から繰り返された光景だ。国防長官あるいは大統領が非武装地帯を訪問し、分断された朝鮮半島を目の前に双眼鏡で北を覗き、米韓同盟の団結と力は鉄壁と自慢する。米韓両国のつながりは60年にわたり維持されてきた。
  2. トランプ大統領は今回の韓国訪問ではDMZに行かないが、文在寅大統領との会見は重要だ。トランプの手中には北朝鮮の核問題に現実的な対処ができる機会がある。だが核放棄を金正恩に求めるのは断念すべきだ。
  3. 米国の対北朝鮮政策は歴代政権通じ平壌に核兵器開発を断念させるかわりに経済政治上の恩恵を国際社会通じ提供しようとした点で一貫している。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が1991年に韓国国内から戦術核兵器撤去を命じたのは朝鮮半島の非核化をめざす一歩だったが、結果的にこれは効果をあげなかった。
  4. 1994年にはクリントン政権が平壌と直接交渉を試み、重油を提供し、核拡散効果のない軽水炉建設を認めて北朝鮮のプルトニウム炉を閉鎖させる代償に関係正常化を使おうとした。プルトニウム炉はたしかにその後8年間停止されたが、米情報機関はウラニウム濃縮活動を探知し、合意はあっというまに消えた。
  5. ジョージ・W・ブッシュ大統領は5年近くを六か国協議の枠組みに使い合意を迫った。ただし透明性、アクセス、検証の技術問題のため外交が行き詰まりこれも挫折。
    バラク・オバマ大統領も外交を中心にしたが新たに登場した金正恩が合意内容を反故にした。
  6. トランプは過去四代の政権が平壌にあまりにもソフトすぎ米国の利益を最大化すできなかったとみているようだ。前任者が北朝鮮核問題の解決に失敗してきたが問題は解決可能だと繰り返し主張している。
  7. 端的に言えばその見方は間違っている。
  8. この段階で北朝鮮を御せるのは非核化政策そのものが非現実的で金正恩が権力の座についている限り実施不可能と米政権が理解した場合のみだ。北朝鮮は初歩的な第一回地下核実験から核クラブにかれこれ10年も加入している。CIA長官マイク・ポンぺオMike Pompeoの推定では北朝鮮が核弾頭付き弾道ミサイルで米本土を攻撃する能力を入手するまで数か月のところにきている。ワシントンの圧力の有無にかかわらず金正恩が核放棄する可能性は皆無に近い。
  9. そうなるとトランプ政権で実行可能な唯一の選択肢は現実を受け入れることだ。開戦となれば皆が認めるように極めて血なまぐさい展開になるのは必至でこれを避けて抑止と封じ込めをはかることだ。
  10. 抑止力戦略の効果は過去72年間で証明済みだ。数万発の核弾頭を有するソ連の封じ込めに成功した冷戦時の事実からすれば、はるかに少ない弾頭しか保有しない北朝鮮を封じ込めできない理由はない。
  11. 金正恩にはジョセフ・スターリンやニキータ・フルシチョフを思わせるものがあり、常軌を逸した発言や自国民を虐げもしているが、ソ連や中国の過去の指導者同様に自らの権力維持に取りつかれた側面がある。祖父が築いた基盤が崩壊するのは見たくないはずだ。
  12. 米主導の封じ込め抑止戦略では過去9代の大統領が冷戦を通じ70年間堅持した戦略と一面で類似しながら微妙に異なる点がある。
  13. まず平壌と意思疎通を確立確保し、核兵器を米韓さらに日本に向ければ金政権の終焉になると明瞭に理解させる。金正恩がソウルを攻撃しようとすれば、米軍援助部隊が韓国に駆け付ける前に片を付けようとするはずで、米国の同盟国への責務を誤算した場合だろう。
  14. 二番目にトランプ政権はこれまで以上に北朝鮮への外交努力を強化すべきだ。過去と違うのは対話は広範囲の非核化交渉の開始にはつながらない点だ。逆に両陣営の誤解誤算を防ぐために対話を利用する。レッドラインの概念は明瞭に伝えるべきだ。その意味で米朝の軍組織間の通信手段が強化されれば政治面の正常化につながり緊張緩和が訪れる日が将来来ないとは限らない。
  15. 三番目にペンタゴンは米太平洋軍に迅速に北朝鮮の挑発に対応できる海空軍力を配備しつづける必要がある。情報機関同士の関係も中国も含め平壌の軍事技術輸出の動向を監視する体制を強化すべきだ。国連安保理決議の実行に懐疑的になってはいけない。武器密輸や軍民両用技術の輸出を平壌が試み外貨収入を得る動きは封じる必要がある。
  16. 国防部門上層部は現実を反映してこそ米政策の意味が生まれる事実を受け入れるべきだ。抑止は先制攻撃で大規模で悲惨な核戦争にエスカレートするよりはるかに安全かつ効果を上げる選択肢になる。■

Daniel DePetris is a fellow at Defense Priorities.