2018年4月23日月曜日

★★★F-22/F-35ハイブリッド構想の実現可能性はない

先にご紹介したthe War Zone記事と反対の評価でこちらではF-22生産再開を日本に許しても米空軍が欲しい次世代戦闘機に及びもつかず、結局買い手がない、したがってロッキード案は絵に描いた餅になると見ています。さてどちらに軍配が下るのでしょうか。しかしながら爆撃機エスコート構想と言うのは何となくアナクロに聞こえるのですが。PCAまで作るよりもB-21だけでミッションが可能となればいいのでは。将来の戦闘機が今と同じ機体サイズである必要があるのでしょうか。そうなると航続距離・ペイロードで不満があってもF-22の活躍範囲は依然としてあるのでは。もちろん日本の求める制空任務にはF-22改があれば十分と思います。


Lockheed Martin Wants to Merge an F-22 and F-35 Into 1 Fighter for Japan. It Won't Happen.ロッキード・マーティンがねらうF-22/F-35を一つにまとめた日本向け戦闘機構想は実現可能性なし




April 20, 2018

ロイターが伝えたところによればロッキード・マーティンがF-22とF-35を一つにした機体を日本のめざす次世代航空優勢戦闘機として売り込もうとしている。

ロイター記事では同社はハイブリッド機を日本のF-3事業の情報提供に盛り込み、米国政府が技術移転を認めるのが条件としているという。1997年の改正によりF-22の輸出は厳しく制限されている。なお同機生産は2012年終了した。

提案内容の詳細は不明だが、ロッキードはF-35の高性能センサー、エイビオニクス技術をラプター改に搭載し圧倒的な空力性能(JSFとの比較で)を実現するのだろう。

新型機が仮に実現すれば日本製のF-35用プラット&ホイットニーF135アフターバーナー付きターボファン双発を搭載するのだろう。同エンジンはF-22用エンジンの派生型であり、F119エンジンも生産終了している。ロイター記事では構想では「F-22とF-35を組み合わせて双方より優秀な機体が生まれる」とうたっているとの匿名筋を引用している。

ただし提案にある機体はF-22・F-35の技術を応用するとはいえ、各種技術の統合、フライトテストは全く別の機体扱いとなるはずでハイブリッド機の実現には高費用かつ長期間を要するはずだ。そこに追い打ちをかけるのが米空軍が侵攻型制空戦闘機の要求水準からみて同機を採用する可能性が極めて低いことだ。

米空軍航空戦闘軍団からは次世代侵攻型制空戦闘機(PCA)の要求性能水準が示されており、それによればF-22、F-35のいずれの派生型でも達成は不可能な内容だ。中でも航続距離、ペイロード、ステルス、電子戦のいずれも大幅に現行機より伸びている。

たしかにステルス性能をとってもPCAには広帯域で全アスペクトでの低視認性が求められ、低周波レーダーにとらえられない想定がある。新型低周波レーダーでは現行のステルス機も探知可能だ。そうなると全翼機形状で垂直水平尾翼がない設計が有利だ。

空軍関係者PCAをノースロップ・グラマンB-21レイダー戦略爆撃機を援護する戦闘機だと公言し、防空体制の整備された敵地奥深くに侵攻する機体だとする。そうなると、設計では超音速飛行性能と戦闘機としての操縦性を兼ね備えた機体にしB-21の爆撃行をエスコートできる性能が必要となる。

航続距離の延長に加え空軍はPCAではペイロードの大幅増加を期待しそうで、F-22の規模を超える規模になるだろう。ラプターのパイロットから出る不満にはステルスやセンサー性能を生かせるだけのミサイル本数を搭載できないことがある。PCAが太平洋地区の広大な空域で活躍することを考えれば、機体には現行以上のペイロード搭載が必要となる。

PCAがペイロード、航続距離ともに拡大するとして将来の米空軍向け制空戦闘機にアダプティブサイクルエンジンの採用は必至だろう。空軍は米海軍とともにこの技術開発を進めており、実現すれば燃料消費は現行エンジン比で35%減となる。そうなると爆撃機よりは小さい機体のPCAには次世代エンジンがないと空軍の求める性能の実現は不可能と思われる。

F-22/F-35ハイブリッド構想が米空軍のPCAの要求水準を満足させるのは不可能だが日本の要求水準には合致することがありうる。そうなると日本は開発、テスト、製造の全般的費用を負担するのみならず、機体の買い手を米国で見つけることにもならず、費用の回収に困るはずだ。F-22/F-35ハイブリッド機の現実的なシナリオはあくまでも空想の世界だ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

2018年4月22日日曜日

★★★F-3開発:急浮上したF-22生産再開提案は日本に費用負担大半を求める内容

降ってわいたようなこの話ですが、前からF-22生産再開の話はあり、日本の影もちらちらしていました。虫のいい話に聞こえますが、日本にはF-2事案でも苦い思いをした経験もあり、F-3国産開発で進んできたのですが、いよいよ今年中ともいわれる方針決定の段階で考慮すべき点は多く、以下の内容にも一定の長所はあるように思われます。実現するかは微妙ですが、貿易収支、米国の動向もにらむと可能性が皆無とも思われません。実現するとすればイスラエルも関与すべきと考えますが、皆さんはどう思いますか。


Lockheed Should Restart the Raptor Line If Japan Wants An F-22-F-35 Hybrid  日本向けF-22-F-35ハイブリッド新型機が実現すればロッキードはラプター生産ラインを再開する構えGeopolitical trends, security concerns, and industrial and combat aircraft capability needs, could give birth to an American-Japanese Raptor 2.地政学、安全保障、産業構造、戦闘機ニーズを考慮すると日米共同のラプター2.0が実現する可能性が浮上

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 20, 2018
OSAKABE YASUO


ロッキード・マーティンと日本産業界共同でF-35ライトニングとF-22ラプターの長所を組み合わせた準国産戦闘機を開発する構想に関心が日本の関心を集めていいるとのロイター報道にThe War Zoneはさして驚かされていない。
以下ロイター電の抜粋だ。
「ロッキードは日本防衛省と協議を終え日本の情報開示請求(RFI)に対応した正式提案を機微軍事技術公開に関する米政府承認の後に提出する準備に入った。提案内容に詳しい筋から直接この内容が判明した。
高度機密航空機設計内容・ソフトウェアの公開を認める決定が下れば日本は中国軍事力に対する優位性を実現し、ドナルド・トランプ大統領は米軍事輸出政策の見直し約束の試金石となる。
提案の航空機は「F-22とF-35を組み合わせていずれの機体を上回る性能になる」と上記筋は述べている」
日本もラプターに似た次期戦闘機設計構想を進めているが、優秀な運動性能と低視認性を組み合わせてF-22とF-35の特徴を兼ね備えた機体の構想も並行して浮上している。エイビオニクスの改良、ミッションコンピュータの性能向上、センサーの更新のうえ整備性の高い機体表面塗装を施すことだ。The War Zoneはまさしくこの可能性を2016年に予測していた。(以下同記事'Just Allow The F-22 To Be Exported To Japan Already'より)
「日本はF-22取得を切望していた。だがほぼ20年前に米議会が超高性能戦闘機輸出を相手を問わず禁止してしまった。このためF-22取得の夢は日本で消えたが、その後も希望は表明されている。
これに北朝鮮の脅威が加わり、新しい情勢を日本は深刻に受け止める中、既存戦闘機材の性能を改修中だ。
F-22の技術は試験段階をとうに過ぎている。事実、数十年前の代物になっている。輸出もおこなわれるF-35の方が多くの面で技術的にF-22を上回る。この点でF-22の輸出禁止はもはや保護主義の意味しかなくむしろF-35の生産数を増やす効果しかない。
だが400億ドル規模の次期超高性能戦闘機を日本が国内開発あるいは輸入の形で調達しようとしている。三菱重工のX-2技術実証機が飛行したばかりだが、ただ技術実証の域は越えなかった。報道一部にX-2を試作機と誤って伝えるものがあるが、同機が今後生産される保証はどこにもない。同機はYF-22というよりBird Of Preyの存在だ。
米空軍はついにラプター生産ライン再開の検討をはじめたが、実現の可能性はゼロに等しい。なぜなら実現すればF-35へ影響がでるためだ。またF-22が日本の求める400億ドル規模の戦闘機選定で唯一の候補であるとしても、ロッキード、米空軍、米議会が認めないだろう。一方で、日本はF-35導入を決めており、42機を発注中だ。
常軌を逸しているように聞こえるかもしれないが日本にF-22生産再開の費用負担させるのも一策で、USAFがラプター追加調達に踏み切れないのもコストが原因だ。ただし、現実は新型F-22に投じる予算はF-35生産を削ることで実現する。そうなるとUSAF関係者がF-22追加調達を希望する声を上げても政治的にはそのまま実現するとは考えにくい。
とにかくF-35を守ることが最優先なのだ。
では今後どうなるのか。大手米防衛産業企業が日本の鉄の三角形で守られた防衛産業基盤とF-22に酷似しながら完全なコピーではない機材を生産した場合、単純な生産ライン再開より費用が高くなるが、これならF-35の予算を脅かすことなく、USAFやペンタゴン全体としても安心できるはずだ。
似たような事例は前もあった。三菱とロッキードがF-16から準国産と言えるF-2を作り、100機ほどが日本に納入され、機体単価は100百万ドル超となり直接高性能版F-16を輸入した場合の三倍となり、性能面も決して高くない結果になった。
こう書くとおかしな話に聞こえないだろうか。今回はF-22生産を再開し、性能向上版に高性能かつ整備性の高いエイビオニクス他部品を搭載し、おそらく日本側負担で調達する可能性がある。USAFはJASDF発注に便乗し現在183機しかないF-22(このうち実戦仕様は125機のみ)を増やすことが可能となる。こんなにチャンスはめったになく今後二度と発生しない可能性が高い」
時を現在に進めると、F-35開発はもう戻れない段階まで来ており、トランプ大統領は同盟各国向け武器販売拡大を目指している。これを念頭に入れると、今回の提案が成立する確率が増えている。最大の疑問は日本にそれだけの財政負担の余裕があるのかで、特に同国にはほかにも重要な案件があることを考慮する必要がある。イージスアショア弾道ミサイル防衛やF-35Bのヘリコプター空母への搭載だ。
336百万ドルを投じた三菱X-2技術実証機は初飛行後、比較的短い間しか稼働しなかった。技術的な課題に直面したのは明らかで、海外企業との提携がないとステルス戦闘機の配備は困難と日本も学んだはずで、日本企業にも恩恵がある形での提携を模索するのではないか。
新たに判明したのはUSAFがF-22改修版の生産再開時のコスト試算作業を完了した事実だ。主な内容は以下の通り。
-194機の追加生産した場合の総予算は約500億ドル
-内訳に生産再開時の初期コストが70から100億ドル。機体調達コストが404億ドル
-機体単価は206-216百万ドル(F-22最終号機の単価は137百万ドルだった)
この規模ではUSAFもそのまま負担できないが、日本にはF-22性能向上版に近い機材をこれいかの金額で配備することは不可能だろう。ラプター生産再開を米軍のみの想定とする政治判断が撤廃されれば費用も下がりそうだ。
もし日本が自国開発機の代わりに改修型ラプター導入に踏み切れば日米両国に良い効果が生まれる。もし米国がF-22生産再開の一部費用負担ですめば、USAFはF-22機数をテコ入れでき、両国に望ましい結果が生まれそうだ。
ふたたびF-35支持勢力がこの動きを阻みそうだ。たとえF-35の将来が保証されても妨害してくるだろう。戦闘機予算が別の機体に投じられればそれだけ既存機種の予算が減ることになる。だがUSAFがラプター2.0を巨額の初期投入コストや開発費用の負担なしで調達できるとしたら願ってもない機会だ。日本が二百機ほどを購入し、米側も追加購入すれば機体単価も低下するだろう。
日本からすれば単価が下がり、技術移転が行われ、また一部部品の製造元となれれば恩恵は大きい。また機体の輸出が実現すれば効果を上乗せできるが、これにはF-35の海外販売への影響を恐れ米側が抑制するだろう。だがなんといっても既存かつ実証済み機材の導入は日本にとってリスク低下効果があり、米政府、米産業界が全面支援するとあれば恩恵が大きい。
日本が準国産機に高額な費用を喜んで負担するはずがないとは考えるべきでない。F-2は今日のF-35程度の機体単価になったあげく、搭載レーダーには問題が多い。日本はF-16後期型を購入しておけばF-2の三分の一程度で問題は最小限の機体を導入できたはずだ。
だがドナルド・トランプ大統領が安倍晋三首相と極めて親しい関係にあることも考慮すべきだ。日本に「最高性能」の機材調達を許しながら国防大手企業のポケットも潤せるなら大統領には望ましい提案に写るはずだ。日本向け防衛装備輸出ではトランプが安倍の求める装備を喜んで売るはずだ。

もしペンタゴンが賢明なら改修版F-22を日本と生産再開する案を歓迎するはずだし、日本政府が費用の大半を負担する覚悟がありながら、USAFがこの話に乗ってこないとしたら愚鈍といわれてもしかたがない。■

2018年4月19日木曜日

ロッキード案のMQ-25登場、でもUCLASSを取りやめた海軍が構想した給油機は必要なのか

Lockheed Is Already Pushing A Stealthy Version Of Its MQ-25 Stingray Tanker Drone MQ-25スティングレイ無人給油機のロッキード案の概要が明らかに

The sad thing is, the whole idea originally was for the Navy to get a stealth drone, but it ended up getting a flying gas can. 残念なのはもともとは海軍が想定したステルス無人機が空飛ぶガソリンタンクになったこと

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 11, 2018
LOCKHEED MARTIN VIDEO SCREENCAP


ロッキードがMQ-25空母運用給油機競作で自社案を発表したが全翼機形状無人機に低視認性で兵装運用能力を付け加える構想と判明した。
同社が制作した派手な映像がメリーランドで開催されたシーエアスペース展示会で公開された。動画で同機の活躍場面を示し、最後の部分でMQ-25には給油タンクではなく共用スタンドオフミサイル兵器(JSOWs)が搭載されている。タイトルには「これからのミッションでの柔軟性が残存性につながる」とある。
LOCKHEED MARTIN


映像でロッキード版MQ-25の特徴が分かる。例えば電子光学センサータレットが左主翼下に格納される様子がわかる。
VIDEO SCREENCAP


また実にクールなエアブレーキがついており、機体中央部の円錐状形状に溶け込んでいる。
VIDEO SCREENCAP


だが何と言っても興味を感じるのはMQ-25が飛行甲板上でどう運用されるかだ。機体の移動状況は地上管制装置でモニターできるようで広角ビデオカメラ数個がついている。機体自体も機首のLEDライトと前脚扉につけた表示で今どんな動きをしているかを周囲に示すとともにこれからの動作も表示するようだ。実に格好いいではないか。
MQ-25は半自律運航を目指し、従来のような人員による飛行制御は必要ない。ただ空母艦上で機体を位置につけるため手の動きを認識するソフトウェアが必要なのか、それとも管制官が位置を指示するインターフェイスやほかのコマンド方法で機体を動かす方式なのか不明だ。
VIDEO SCREENCAP
VIDEO SCREENCAP

ロッキードが低視認性版スティングレイを追加する可能性があるとしても驚くべきことではない。同社スカンクワークスには数々の全翼機製造の実績があるが、ロッキード本社の説明と食い違う点もある。
Aviation Weekのジェイムズ・ドリューがロッキードで無人給油機の設計を世界に伝える役を与えられた、MQ-25事業を統括するジョン・ヴィンソンにインタビューしている。
「ステルスは全面的に信頼できない。効率を追求して全翼機形状に落ち着いた。給油機では燃料を主翼で運び燃料重量と主翼揚力を分散させることが多いが、ペイロードが燃料のため当方は全翼機設計とした」
機体表面の追加塗装、アンテナ処理、その他小改良で低視認性が実現するのであれば、ステルスを念頭にMQ-25を設計したのだろう。実際にスカンクワークスはこの作業をしたようだ。ボーイングのMQ-25試作機が途中で挫折した無人空母運用偵察攻撃機(UCLASS) から生れたのであれば、UCLASSの低視認性要求から将来の改良でステルス機に発展する可能性がある。
ここで話題にしているのは高性能低視認性かつ深度侵攻機ではなく、高い残存性を敵の高度防空体制で発揮でき、場合によってはそのまま敵領空内に侵入可能な機体だ。
他方でジェネラルアトミックス案は低視認性機材に発展する可能性が低い。だが同機は他社よりも燃料搭載量が多くなりそうで、エンジンが強力なのでペイロードに対応できそうだ。
このことから三社がUCLASSの影響を引き継いでいることが分からう。ロッキードは「完全新型」設計というが同社のシーゴーストUCLASS構想との強い関連を示している。シーゴーストとはRQ-170センティネルを原型としていた。
LOCKHEED MARTIN
Sea Ghost concept based on the RQ-170 Sentinel.


MQ-25の要求性能にステルスはなく、これが原因でノースロップ・グラマンに有望視されていたX-47B実証機がありながら同社は競合から降りたといわれる。米海軍がそもそもUCLASS競合の時点で給油能力の優先度を高くしておけば各社がより競合した形で提案を出し、敵地深く侵入しながら低視認性の戦闘航空機材で必要に応じ給油能力も発揮できる機材が生まれていたのではないか。空母から500マイル地点で14千ポンドの給油用燃料を搭載する性能が実現できないのであればもう一機を発進させて任務を達成させればよい。
いいかえれば、UCLASSのまま給油能力を付与していれば、海軍は給油能力は限定されてもその他ミッション多数をこなせる機材を実現できていたはずだ。また海軍がスーパーホーネット多数の調達に動いており、コンフォーマル燃料タンクを各機が搭載することを考えるとスーパーホーネットが現在課せられている空中給油任務は今後大きく減ることが予想できる。
そうなると海軍がUCLASSの時点で四社あった入札業者のうち最良の無人戦闘航空機(UCAV)を調達していれば、現状の有人機の二倍三倍の航続距離を有する艦載戦術機材を入手していたのではないか。またそもそも給油機支援など不要だったはずである。そこでMQ-25給油機のかわりに108機保存中のS-3ヴァイキングを砂漠から呼び戻せば足りたのではないか。
また戦闘機パイロットが多数派の海軍と議会内の愚かな議員連の決定でステルスの空母運用UCAVが息の根を止められていなければ、無人機で半分以下の費用で三倍四倍の距離まで飛びパイロットの生命を危険にさらさず運用できるのにF-35Cが本当に必要なのかとの疑問がうまれていたはずだ。
だが将来の姿を見通して最適なUCAVを導入する代わりに海軍は予算を給油無人機に投入しながら本当に必要な機能は実現せず、制空権が不完全な空域では中途半端な機能しか果たせない機材を手に入れようとしている。海軍は今後の改良型の開発配備を必要と感じているのか。
結局のところ、UCLASSを葬り、無人艦載機を空飛ぶガソリンスタンドに変えたのはあまりにも近視眼的と笑うしかないし、いかにも腹黒い動きだ。無人機にパイロットがしたくない仕事をさせ、UCLASS開発取り消しのために生れた仕事をさせるのは有人戦闘機開発を温存させるための策略なのだろうか。
残念ながらすべて事実なのである。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

2018年4月18日水曜日

連合軍シリア攻撃をシリア(ロシア)が迎撃できなかった理由

今回のミサイル攻撃にあたり、米側は巧妙な多方面発射作戦を実施したのですね。シリア(ロシア)は対応できなかったわけですか。それでも平気で嘘を発表するシリア、ロシアの神経が分かりませんが、事実を認めないのは世の東西を問わず敗色の濃い側の共通行動ですね。
台湾や日本のように防御側に回る国には今回のスタンドオフ攻撃は格好の研究材料ですね。

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(U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Trey Fowler)

How the Navy fooled the Russians before the US struck Syria シリア攻撃に先立ち米海軍に騙されたロシア軍

Article by Alex Lockie
ナルド・トランプ大統領がシリアへのミサイル攻撃の構えを見せた際、ロシアは反撃の構えをさっそく示し、すべての目は米海軍が同海域に展開中の唯一の駆逐艦に向かった。だがこれは策略だった。
2017年4月に米海軍駆逐艦部隊が東地中海から同じくミサイル攻撃に踏み切り、59本の巡航ミサイルがガス攻撃を実施したシリア政府に向け発射されていた。
シリア政府が民間人を対象に再び化学攻撃をしたことを米国は深く受け止める中、ロシアが米ミサイルは撃ち落とすとし、ミサイル発射艦も例外ではないと豪語していた。退役ロシア提督は同地域に留まる唯一の米艦USSドナルド・クックを撃沈すると公言していた。
2018年4月14日(現地時間)に攻撃が始まると、クックは一発も発射せず、実は巧妙な策略だったと判明した。
アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSドナルド・クックが黒海を通過した際の様子。(U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Edward Guttierrez III)
かわりに米潜水艦USSジョン・ワーナーがミサイル数本を東地中海で潜航中に発射し、水上の駆逐艦より探知を難しくさせた。
だがもっと多くのミサイルが全く違く場所から発射された。紅海だ。
エジプト近くからタイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USSモンテレーがトマホーク30本を、USSラブーンが7本発射し、合計105本がシリアに向け飛翔したと米側が発表した。
さらにB-1Bランサー爆撃機と英仏戦闘爆撃機からの攻撃が続き今回は2017年の懲罰的攻撃と全く違う様相を示した。
A U.S. Air Force B-1B Lancer.(U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Peter Reft)
攻撃時の現地画像を見るとシリア防空軍は無誘導で迎撃ミサイルを発射したことがわかる。つまりシリアは飛来するミサイルを捕捉していなかった。
「シリア側兵装による影響は皆無だった」とケネス・マッケンジー中将が4月14日に記者団に語っている。攻撃は「精密、圧倒的かつ効果的」だった発言。

シリアはミサイル71本を撃破したと発表したが、その裏付けとなる証拠はどこにもない。米側は昨年の攻撃時にトマホーク一本がミサイル本体の故障で標的に到達できなかったと発表していた。■

2018年4月17日火曜日

ボーイングMQ-25案に見られる不可解な設計内容の意味

Here's Our First Good Look At The Crazy Air Inlet Design On Boeing's MQ-25 Tanker Drone ボーイングのMQ-25無人給油機の特異な空気取り入れ口の詳細が初めて公表された

Boeing's MQ-25 has a classically problematic but low-observable flush-mounted intake, yet there are no low-observable requirements for the program.同機の空気取り入れ口は低探知性だが問題になりかねない形状。だが同機の要求性能に低探知性は入っていない

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 9, 2018
VIDEO SCREENCAP

ーイング案のMQ-25スティングレイで新たな画像が公開されたが、ボート形状の艦載無人機が地上取り扱いテストを受ける場面で模擬カタパルトもある。また同機がブロックIII型スーパーホーネットに空中給油する様子のコンセプト映像も入手した。だがなんといっても同機の空気取入れ口の形状に目が行くのはそれが2017年12月末に存在を公表した同機の中で一番謎の部分だからだ。
ボーイングのMQ-25案には前身のステルス無人っ空母運用偵察攻撃機(UCLASS)構想の名残ともいえる特徴が残り、空気取り入れ口がそれにあたる。ボーイングのUCLASS試作機は2014年に完成しており、その後UCLASSは難易度を下げた給油機の空母搭載空中給油機(CBARS)事業に変わった。CBARSが現在はMQ-25スティングレイ事業になっているわけだ。同社が先に完成した試作機をどう改造して新しい仕様に対応させたのかは不明だ。
BOEING VIDEO SCREENCAP

ボーイングのMQ-25案に見られる空気取り入れ口は問題を起こしそうに見える。この形状では特に高迎え角飛行時に問題となることが知られ、空母着艦時もそのひとつだ。境界層の空流も問題になりどの場面でも安定して十分な量の空気をエンジンに供給できるかが大きな課題に見える。

ボーイングはMQ-25案ではロールスロイスAE3007Nを搭載すると先週発表している。このエンジンはノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク、MQ-4Cトライトンでも採用されている実績があるエンジンだ。だが高高度を飛行する両機ならエンジンへの空気供給は十分に確保できるが、ボーイング案ではそうはいかないのではないか。
NORTHROP GRUMMAN

トライトンとグローバルホークは空気を大量に取り入れる形になっている。空気はそのままエンジンに連続で入る
9千ポンド級の同エンジンはサイテーションXやエンブラエル145にも搭載されている。ジェネラルアトミックスのMQ-25案ではプラット&ホイットニーPW815ターボファンで16千ポンドの推力を得る構想を特筆すべきだ。ボーイングは43%も低い推力のエンジンで同じミッションを本当に実現できるのだろうか不明だが、ジェネラルアトミックスは余裕を持たせた設計にしたと発表している。それでもこれだけエンジン出力に差がある。ロッキードは全翼機形状の構想機に搭載するエンジンを発表していない。

BOEING
ボーイングのUCLASS想像図ではそこまで奇妙な形のステルス型取り入れ口になっていなかった。逆に想像図ではむしろ大型の機体上部取り入れ口とS字形状のダクトがみられる。

ボーイングとしては当然こうした問題の解決策を考慮したのだろう。このような形状で空母搭載機の運用に支障が生まれないのであれば革命的な解決策となる。同社がこの設計をどう説明するのか興味を惹かれるし、MQ-25給油機の仕様では低視認性やレーダー反射の低減はまったく想定されていないのにこの案で同社がどう売り込むつもりなのかも知りたいところだ。
ボーイングのスティングレイ案がどう運用されるかも映像で見ることができる。映像に登場する機体が同社のMQ-25試作機にほぼ同じかたちになっているのも興味深い。ボーイングのMQ-25最終設計案が一度完成させた試作機から異なる形になるとしたら驚くことになる。一部にはこれで要求水準にある相当の航空燃料を搭載できるのかいぶかる向きもある。要求性能では燃料を満載して空母から500マイル地点に進出し、14千ポンドを給油してから自分で空母に帰ることとある。ボーイングが試作二号機の完成を急いでおり、同機が最終案になるとの観測もある。ただ同社が公開したコンセプト案を見るとこうした報道は的外れに終わる可能性もある。

BOEING VIDEO SCREENCAP
MQ-25がブロックIIIのスーパーホーネットに給油を開始するところの図。機首下のセンサーボールと外部燃料タンクに注意。
.コバムの給油ポッドが外部燃料タンクの横に搭載できるのかを確認する必要もある。

BOEING SCREENCAP
ボーイングのMQ-25案の前面はこうなる。UHF衛星通信アンテナが空気取り入れ口の後方につくことに注意。

ボーイングMQ-25案ではKuバンドやマイクロ波衛星通信装備がどこに搭載されるのか不明だ。ジェネラルアトミックス、ロッキード・マーティン両社の構想ではその搭載が明確に示されているのだが、ボーイング案でははっきりしない。機体胴部の前方に大きな膨らみを付けると空流がさらに複雑となり空気取り入れ口問題がさらに複雑になる。
一部には同機主翼上の「こぶ」が衛星通信アンテナを格納する場所ではと見る向きがある。これは可能性が低い、と言うのはこのふくらみは主翼折り畳み機構用だからだ。おそらくボーイングは空気取入れ口後方にアンテナ用のふくらみを受注決定後に追加するのではないか。
BOEING VIDEO SCREENCAP
.これが未来の姿なのか。MQ-25がブロックIIIのF7A-18Fに給油中

ボーイングのスティングレイ設計案にはまだ不明点があるが、同社としては試作機を完成させたのは同社だけであり受注につなげたいとする。ボーイングファントムワークスのドン・キャディス Don Gaddis(MQ-25事業主査)はFlightglobal取材で以下述べている。
「当社が特別の存在になっているのは実際に期待を製造したためだ。性能の多くはすでに実施済みだ。飛行甲板上の取り回し、ソフトウェア、ミッションコンピュータ、ロールスロイスエンジン等で実証済みのものが多い。飛行を除けばすでにほぼすべてが実施済みだ」.
そのとおりなのだろうが、設計案に関する疑問を考えると、いかにもすぐにでも飛びそうな試作機が飛行していないのは何か問題があるのだろう。望むらくはボーイングが方針を変更して同社設計案が飛行可能だと実証してもらいたいものだ。
MQ-25契約獲得を巡る三社競争から多くの事実が今後あきらかになるだろうが、公式な発表はまだ一社も行っていない。ただMQ-25事業をめぐっては一番大きな疑問はそもそも海軍内部で同機事業はどこまで支持を確保しているのかであり、本当にもっと費用対効果の高い代替策がないのかも釈然としない。■

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