2020年6月11日木曜日

台湾海峡上空で、台湾機がPRC機を追い払う。その前に米海軍機が台湾島を南北縦断飛行していた

USN

湾空軍戦闘機が中国のSu-30フランカー編隊を「追い払った」。中国機が短時間ながら台湾の防空識別圏に入ったためだ。この事件は米海軍のC-40クリッパー人員輸送機が台湾西海岸上空という異例の航路を飛行した後に発生している。台湾を中国の主権が及ぶ領土とみなす北京政府から見れば反発を呼ぶのは必至のフライトだ。

台湾国防部の発表では事件は2020年6月9日に台湾党南西部で発生した。台湾の声明文では機種不明の台湾空軍戦闘機部隊が中国のフランカー編隊を迎撃し、強制排除する前に空域を去るよう警告したとある。

中国軍用機が台湾島周辺を飛行する事例がここ数年増える傾向にあるが、台湾の蔡英文総統は台湾機は中国軍用機が台湾海峡の「中間線」を超え進入した場合は「強制排除」を辞さないと発言していた。中間線が事実上の台湾とPRCの境界線となっており、後者は台湾を不可分の領土の一部とみなしている。

ROCAF
台湾空軍のF-16A/B戦闘機。台湾国防部は6月9日発生した中国のSu-30迎撃に投入された機種を明示していない。


人民解放軍は台湾南東部から先の南シナ海で新鋭空母山東も動員し大規模演習を展開しており、台湾へ無言の圧力をかけていると見る専門家も多い。北京政府からは台湾が正式に独立をめざせば、軍事力行使も辞さないとの発言が繰り返し出ている。PLA最大の陸上軍事演習地ズリヘに台湾総統府の正確な模型があり、台湾外交部など実寸大の建物も再現されている。

北京と台北の言葉の応酬は蔡総統再選で熱くなっていたが、二期目の任期開始でまた加熱してきた。蔡総統は政治面で大陸から一層距離を取ると公言。国民の支持を頼りに同総統は米トランプ政権と強い関係を維持している。前例のない規模の武器購入が成立しており、F-16C/Dのブロック70機材は一例だ。北京から見ればこれは「レッドライン」を超えることになる。

米国はPRCを中国で唯一の合法政権と認めているが、台湾との関係維持を権利として主張し、最終的解決までの間は台湾防衛を助けるとしている。そのため中台間で緊張が高まると米軍は航行の自由パトロール(FONOP)を強化し、台湾海峡を艦船、航空機に通過させ、米国の台湾支援を誇示している。

C-40Aフライトが台湾とPRCの戦闘機部隊の緊張を生み出した格好だが、クリッパーは台湾領空を通過しており、米軍機の常として危険は冒していない。

USN

これと同じ米海軍C-40Aが台湾上空を6月9日に通過飛行した。機体マニアはオンラインフライト追跡ソフトでC-40Aが嘉手納航空基地から台湾へ向かい、その後南東部へ移動したことを気づいた。機体は海軍機体番号169036で海軍予備隊補給支援飛行隊61(VR-61)の所属でワシントン州ウィドベイアイランド海軍航空基地に配属されており、台湾島の北部から台北近くを飛行し、海岸線沿いに南方へ移動した。

CNV7642(C-40A 169036) is flying over West coast line of Taiwan.
It's a rare flight course...🤔
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フライト追跡データを見ると、機体はさらに南方へ移動し、タイのウタパオ空港に着陸している。その後、同空港からグアムに移動したようだ。
It seems they flew a little inland from the coastline of Taiwan.🤔
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CNV7642(C-40A 169036) is approaching to U-Tapao AB Thailand.
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ADS-B EXCHANGE
A full look at the recorded flight tracking data regarding the Navy C-40A's flight on June 9.

台湾島上空を飛行し台湾の事実上の独立を示す効果とともに、台湾が自国空域を実行支配していることを改めて示し、FONOPSの一部にもなった。現地紙 Taiwan Times は台湾国防部報道官Shih Shun Wenの発言として「わが軍が台湾空域を完全に統制しており、現状は通常の状態であると言える」を伝えている。ただし、報道官はC-40Aが台湾西海岸上空を飛行したことでは確認を避けた。台湾の China Times はクリッパーがChing Chuan Kang 航空基地(台中市)に緊急着陸したと伝えたが、裏付けとなる証拠はない。

今回のC-40Aフライトに先立ち、太平洋で前例のない航空活動が展開されていることに注目すべきだ。一つには米空軍B-1B爆撃機編隊が長距離展開したが、中国へのメッセージであることはあきらかだ。

近い将来に台北と北京の緊張が消える兆候はない。両国関係は今年になりCOVID-19大流行でとげとげしさをましており、PRCは台湾当局による国際的舞台での活動を阻止し、香港では数ヶ月に渡り住民の反対運動が続いている。蔡英文政権は香港住民を支援する方策を模索するとし、北京政府が香港で国家治安法を施行するのに対抗している。

台湾海峡を挟む両当事者に米国が加わり、近い将来に空の上で予想外の対峙やFONOPSがいっそう激しくなりそうだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

Taiwanese Fighters Drive Off Chinese Jets After Navy Transport Plane Flies Over The Island

The unusual flight certainly caught the attention of Beijing, which appears to be more focused on Taiwan's independence than ever before.




2020年6月10日水曜日

FB-22が実現していればこんな機体になっていた.....



F-22ラプターは世界最高性能のステルス戦闘機だ。米空軍での供用は15年前から始まったが、生産機数は190機に満たず、冷戦終結後の予算削減の犠牲になった。だが生産規模は当初はもっと多くする想定で、ロッキード・マーティンは派生機種として爆撃機型を設計し、FB-22の名称がついたが、結局実現しなかった。

開発費用、生産費用を低く抑えようと同社はF-22の原設計や部品を可能な限り流用しようとした。胴体部はやや延長され、コパイロット兼航法士の席を確保したが、外観上で違いを見つけるのは難しかった。▶一つ変更されたのが主翼だった。主翼面積は大幅に拡張され、デルタ翼形状になったことで長距離飛行性能を実現した。いわゆるウェットウィングで燃料を内部搭載できた。航続距離はF-22の三倍超の3千キロとなった。それでもB-2の11千キロより相当短い。

FB-22もステルス機であり、F-22の水準を上回ったはずだ。特筆すべき技術開発はF-22で兵装を機体、主翼の下に装着しながらステルス性を維持する点だ。▶ステルス機のF-22やF-35は兵装を機内搭載するのが常だ。そのための機内兵装庫に搭載し、機体のレーダー探知を避ける。だがFB-22では兵装を収めたステルスポッドを主翼下に搭載しステルス度の劣化を防ぐ設計だった。

機内兵装庫は大型化され、FB-22はF-22の4倍もの兵装を搭載できた。250ポンド小直径爆弾なら35発でF-22は8発だ。最大5千ポンドまでと大重量の武装も運用でき、各種ミッションに投入されただろう。▶実現していてもFB-22の作戦行動半径は通常の爆撃機より短いままだったはずだ。▶開発は2006年に正式に打ち切られた。F-22爆撃機型構想はここに終わりを告げた。■

この記事は以下を再構成したものです。

June 9, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: FB-22F-22StealthStealth BomberU.S. Air ForceMilitaryDefense

Meet the FB-22 Stealth Bomber that Never Was

You’ve heard of the F-22 Raptor—but what about the bomber that Lockheed designed using the same airframe?


2020年6月9日火曜日

F-35は戦闘機よりもセンサーノードとして真価を発揮する



航ミサイルが脆弱な標的複数に飛翔してくる。飛行中のF-35が探知し、各地のレーダー施設が一斉に警戒体制を強める。F-35が標的情報を地上の米陸軍ペイトリオット迎撃ミサイル部隊に伝え、ミサイルを撃破し脅威は取り除かれた。

このような戦闘形態ではセンサーノード複数が標的を追尾しながら各ドメインで情報を共有することになる。これが陸軍が目指す統合戦闘指揮命令システム Integrated Battle Command System(IBCS)である。

IBCSとはノースロップ・グラマンが開発中のレーダー/センサーノードのネットワーク集合体で空中、地上、海上の各作戦環境に対応した新しい防空体制となる。

「IBCSは各種センサーをつないだ防空システムです。現状ではペイトリオットはペイトリオット用レーダー、THAADの場合はTPY-2THAADレーダーを使っています。つまり各装備別にレーダーがありますが、IBCSでは各種センサーをつなぎ防空体制を構築します」とジョン・マレイ大将(陸軍将来装備整備本部長)がインタビューで答えている。

ノースロップが公開した報告書ではIBCSの実証試験でF-35がセンサーを作動させ、標的データを取得、追尾、共有し地上レーダーと連携し、統合防空体制が連続追尾して最適の防空装備を選択し脅威を排除できたとある。ホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)の上空でF-35がミサイル二基を追尾し、自機のセンサーデータを海兵隊のTPS-59レーダー、陸軍のセンティネル、ペイトリオット地上配備装備にそれぞれ送ったという。

「センサーのひとつが失探したが他のセンサーがICBS統合火器管制ネットワークで捕捉した。兵装担当員は両ミサイルの高度、進路変更を逐次把握でき、各画面に情報が表示された」

F-35ではこのように利用から大きな意味が生まれる。多用途戦闘機を空対地攻撃機でなく空中センサーノードとして使うのだ。分散開口システムDASで機体全周で電子光学式センサーデータを得られる。データは整理統合され「センサー融合」機能と呼ぶ機内搭載のコンピュータ処理でパイロットに提示される。F-35にはDASと合わせ電子光学標的捕捉装備も搭載されており、「ミッションデータファイル」と呼ぶ脅威データーベースで照合する。つまり、実戦でF-35は長距離センサーで敵を探知し、データを敵装備データベースに送り込むと、接近してくる敵の種類が即座に把握できる。ここに大きな作戦上の意味があり、F-35から地上配備レーダーや防空装備に水平線の向こうにあるうちから敵攻撃を警告できる。

マレイ大将から統合火器管制ネットワークから大きな戦略的な意義が陸軍に生まれ、マルチドメイン作戦が実現すると説明があった。長距離兵器に加え敵の対艦対地攻撃が協調された形で実施されると全く新しい形の脅威となる。そこでF-35に近辺を飛ぶ無人機や衛星を加え、敵の追尾情報をネットワークで水上艦や地上部隊に伝える。陸軍上層部からは「砲撃部隊には標的が地上だろうと水上だろうと違いはない」との発言があり、地上配備部隊で対水上、対地、あるいは対空攻撃のいずれも可能となることを意味している。

「マルチドメイン作戦構想からエアランド戦闘(冷戦時の対空対地攻撃教義)に代わる新しい教義が生まれる。構想はあくまでも構想であり、作戦実施に関連する未実現の装備もある。今のペースで技術が進歩していけば、今から将来に備えておく必要がある。準備しないと、手遅れになるし、対応できなくなる」とマレイ大将は語った。■

この記事は以下を再構成したものです


Kris Osborn is the new Defense Editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.
Image: Reuters.

2020年6月8日月曜日

北朝鮮はOH-6民生型多数を25年前から密輸で入手----北朝鮮禁輸措置が必要な理由




クダネル・ダグラスの偵察ヘリコプター100機近くが米国との戦争状態が未終結の国に持ち込まれ同社は裏をかかれた思いだった。

2013年7月27日、金正恩が見守る前を装甲歩兵輸送車両や戦車が行進し、米国との血なまぐさい戦争終結を祝っていた。そこに米国製MD 500Eヘリコプター4機が低空通過した。この時初めて米製ヘリコプター87機が北朝鮮に密輸入されていたことが明らかになった。しかも25年以上前に。

MD 500は米陸軍が採用したOH-6カイユース軽観測ヘリコプターの民生型で陸軍は1960年代から運用している。「空飛ぶ卵」の愛称がつくすっきりした外形の同機は負傷者搬送、輸送ヘリ護衛、偵察任務はては地上部隊への軽火力支援でミニガンやロケットポッドを搭載するなど各種任務に投入された。非常に安価で1962年にわずか2万ドルで納入され、機動性に優れ、小型形状を活かし、他のヘリコプターでは運用不可能な場所に着陸できた。

ただし、敵火力を大量に浴びヴィエトナム戦では1,400機投入されたOH-6Aの842機を喪失した。その後進化したMH-6、AH-6「リトルバード」特殊作戦用ミニガンシップはアフリカ、中東で米軍が使用している。

話は1980年代に遡る。マクダネル・ダグラスに102機の発注が届いた。発注元は西ドイツの輸出業者デルタ-アヴィア航空機でクルト・ベーレンスが経営者だった。1983年から1985年にかけ米企業アソシエイテッドインダストリーズがデルタ-アヴィア向けに86機のMD 500D、E型、ヒューズ300(二人乗り小型機)一機を6回に分け、日本、ナイジェリア、ポルトガル、スペインへ輸出した。

しかし1985年2月に、米商務省は輸出仕向地に虚偽申告がを見つけた。例えばロッテルダムでおろされた15機はソ連貨物船プロロコフに移動された。同船は北朝鮮でヘリコプターを荷揚げした。同様に日本に到着した貨物船から香港で2機が北朝鮮貨物船に転送された。そしてアソシエイテッド・インダストリーズを経営するセムラー兄弟がデルタ-アヴィアの大株主だと判明した。

結局87機が北朝鮮の手に渡ったが、残る15機は差し押さえられ、セムラー兄弟は北朝鮮禁輸措置を破った容疑で訴追された。デルタ-アヴィアはダミー企業で、取引完了で10百万ドルが手渡される約束だったと判明した。またロンドンの保険代理店が本件に絡み、スイスの銀行口座で資金洗浄されていた。

マクダネル・ダグラスはだまされ米国と交戦状態を解除していない国家に偵察ヘリコプター100機近くを送ってしまった。ただし、セムラー兄弟は罪を認める代わりに軽微な懲罰をうけただけで、ベーレンスからヘリコプターの仕向地について虚偽情報を受けていたと主張。支払った罰金は兄弟が手にした報酬よりはるかに低い金額だった。ベーレンスに至ってはMD 500は軍用機ではないので禁輸対象にあたらないとの疑わしい主張も陳述した始末だった。

その後、CIAがこの密輸取引に気づいていたと判明した。全体を取り仕切ったは北朝鮮のベルリン大使館付武官で西ドイツ内のソ連企業を表向き使用していた。ただしCIAは民間刑事当局に本件を通知しなかった。大使館を盗聴した事実が明るみに出るのを恐れたためだ。

北朝鮮はがMD 500をなぜ求めたのか。民生型には高度技術や特殊軍用装備はつかず、北朝鮮どころかソ連もこうした装備を喉から手が出るほど欲しがったはずだ。

民生型と軍用型MD 500を合法的に入手した国は多数ある。なんといっても低価格が魅力であり、ガンポッドやロケットを搭載すれば軍で使用できる。そうした国のひとつが南朝鮮で、大韓航空はライセンス生産でMD 500を270機以上同国の陸軍、空軍向けに納入した。

そうしてみると北朝鮮がMD 500を入手したのは南朝鮮の標識をつけ軍事境界線から侵入する狙いがあるためだろう。奇襲攻撃や工作員の潜入で破壊工作をするためか。北朝鮮は特殊作戦部隊に20万名と世界最大規模の隊員がいると述べており、ここまでの規模は世界にない。南と開戦となれば、北はトンネル、潜水艦、モーターボートの他ヘリコプターで隊員数千名を南に潜り込ませ、混乱とパニックを巻き起こすだろう。事実、全斗煥大統領(当時)は潜入を容易にしたと米国へ不満を表明していた。

北朝鮮はMD 500機材を長年に渡り温存しており、稼働状態を維持するべく部品確保に苦労しているはずだ。2013年に機体を公開したが、2016年の元山航空ショーにも4機が登場していた。

平壌で目撃されたMD 500は対戦車ミサイル4発を搭載し、旧式のロシア製マリュートカ-P(NATO呼称AT-3 サガーC)の国産化装備で、有線誘導による半自動攻撃手段だ。AT-3の旧型は1973年のヨム・キッパー戦(第4時中東戦争)でイスラエルのパットン戦車を血祭りに上げ一躍その名を知られた。つまり北朝鮮は小型ヘリコプターでお手軽な対戦車攻撃も想定しているのか。

ダミー企業を使う装備品密輸は北朝鮮だけの専売特許ではない。イランは米国でF-14トムキャット用の部品を買い集めている。1992年には英国がダミー企業を立ち上げ、モロッコ向けT-80戦車数台をロシアから単価5百万ドルという高価格で購入し、英国で解体評価したのち米国に移動した。近年では2015年に米国市民アレクサンダー・ブラジニコフが逮捕されている。アイルランド、ラトビア、パナマ、他五カ国のダミー企業を使い、65百万ドル相当の電子製品をロシア国防省、情報機関、核開発事業に密輸したためだ。

だがこうした事例も新品ヘリコプター87機を米国から入手した北朝鮮の前では色があせる。■

この記事は以下を再構成したものです。

June 7, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldU.S.History

How North Korea Got It's Hands On 87 U.S. MD 500 Helicopters

Pyongyang is not the only nation to attempt such shenanigans using shell companies.


気になる展開:中印国境事態の緊張が高まっている



  • 中国が最新装備を展開しているのは戦力をインドに示威する狙いもあるとの説明がある。
  • 西部では未決着の国境線をめぐり両国で摩擦が広がっている。東側のドクラムで2017年に対立があった。

印間の緊張が高まっている。両国が国境地帯に兵力を集結させているが、中国人民解放軍(PLA)は高性能装備の高地テスト、訓練の機会ととらえているようだ。

両国が動員中の部隊規模で公表数字はないが、報道を総合するとPLAはチベット高原用に改装したジェット戦闘機部隊など高性能兵装システム数点を動員している。

インド陸軍も国境地帯近くのレー地方に駐屯する歩兵師団から数個連隊を国境地帯に移動させ兵力を増強している。

香港在住の軍事専門家Liang Guoliang によれば中国は少なくとも複合武装旅団9個に高地訓練済み歩兵部隊、砲兵隊、防空部隊、航空隊、化学核電子戦専門要員をインドとの国境紛争に備えるチベット軍区に派遣した。

India China Disputed Borders
REUTERS GRAPHICS/REUTERS

国境地帯ではここ数ヶ月に渡り緊張が高まっており、両国の部隊が素手で殴り合ったり、投石の事態が発生していた。

両国の国境紛争は2017年に高まり、インド軍とPLAの対立は中国がドクラムで道路建設を進めて強まっている。

ドクラムでのにらみ合いを受けPLAは兵力を増強し、15式戦車、Z-20軍用ヘリ、GJ-2攻撃用無人機、PCL-181高性能車載迫撃砲をチベットに送り込んだと中国共産党の宣伝媒体の環球時報が伝えている。

衛星画像では中国軍はチベットのNagari Gunsa航空基地から多用途戦闘機J-16を運用しているのがわかった。 

「J-16は通常訓練で同基地に展開していたようだが、情勢悪化で現地に残ったのだろう」と軍事観測筋が述べている。「インド空軍が国境地帯に多数の機体を展開し、PLAはJ-16の投入が必要と判断したようだ。同機はインドのSu-30MKIの性能を上回る」

India China border Arunachal Pradesh
インド中国国境地帯でインド側に立つ看板。インド北東ブのアルナチャル・プラデシュ州ブムラ。November 11, 2009. REUTERS/Adnan Abidi

北京の軍事専門家Zhou Chenmingによれば2017年の映像と今週の映像を公開しているのはインド軍に対しPLAの戦力増強を伝える意図があるという。「中国は性能向上型新装備を次々に投入し、Z-20ヘリコプター、J-10C、J-11など海抜5千メートルのチベット高原で訓練や試験してきた。

「PLAに戦力誇示の狙いがあるが、インド軍と直接対決の意図はない、というのは中国はインドを真の敵国とみなしていないからだ。ただし、米国はインドをインド太平洋戦略に組み入れ中国の台頭に対抗させようとしている」

中国インドの国境線は3,488 kmに及び、PLAは70千名部隊を展開し、インドは40万名を維持している。

ただし、ニューデリーのシンクタンク、オブザーバー研究財団の国防アナリスト、ラジェスワリ・ラジャゴパランによれば実際にインドが展開しているのは225千名以下だという。

「MIT専門家の最新試算では中国の西部戦域司令部に230千から250千名が配備されている」とし、PLAでチベット・新疆地区防衛に当たる同司令部について言及している。「注目したいのはインド軍の多くは中国と対峙するよりも治安維持目的で駐屯していることだ。インド軍は国境地帯には集結しておらず、地形条件が悪く部隊移動もままならない」

Liangによれば国境地帯に展開する中国軍は通常は40千名未満だ隣接する青海省、甘粛省、はては必要に迫られれば新疆や四川省から増派部隊を送り込むという。

デリーの軍事解説者ラジブ・チャトゥヴェディは両国間の緊張の根源に中国が国境地帯付近でインフラ工事を増やしていることにインドが警戒していることがあるという。

「中国のインフラは大規模で最新鋭だ。中国は戦略的アクセスの開発、改良を続けているが、インドも国境地帯へのアクセス改善をめざしており、国境地帯のインフラ改良に中国の了承は不要だ」■

この記事は以下を再構成したものです。

China is showing off its military hardware during its latest border showdown with India