2023年4月18日火曜日

兵力投射の新しい手段、トルコ海軍の「ドローン空母」はコスパに優れた戦闘艦になれば追随する動きが各国に現れそうだ

 Turkey’s ‘Drone Carrier’ Amphibious Assault Ship Enters Service

Photo by Serhat Cagdas/Anadolu Agency via Getty Images


トルコ海軍に引き渡された水陸両用強襲揚陸艦TCG Anadoluは、同国最大の艦艇で艦隊旗艦となる



ルコ海軍は4月10日月曜日、同国最大の新しい旗艦、TCG Anadoluの就役を祝い、スケジュールの都合で実際の引き渡しから約3ヶ月後となった就役式を祝った。「アナドル」は水陸両用強襲揚陸艦に分類されるが、トルコ関係者によると、各種武装ドローン空母として使用する計画もあるという。

 スペインの水陸両用強襲艦「フアン・カルロス1世」の設計に基づき、アナドルは2018年からイスタンブール市内のセデフ造船所で建造された。わずか1年後で進水し、2022年に予備試験が完了した。セデフでの引き渡し式で、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、武器、戦闘システム、レーダー、赤外線捜索・追跡能力、電子戦スイートなど、アナドルの70%がトルコ製部品とコンポーネントを使用し建造されたことに言及した。

「この艦は、必要なときに世界のあらゆる場所で軍事・人道活動を行うことを可能にする」とエルドアンは述べた。「この艦を、トルコの地域指導的地位を強固にするシンボルと見ている」。

 アナドルは、上部に大きな飛行甲板、後部にウェルデッキを備えた典型的な上陸用ヘリコプタードック(LHD)構成となっている。ヘリコプターや上陸用舟艇、軽装甲車や重装甲車を使い、水陸両用攻撃で戦力を投入することが目的だ。エルドアンは、指揮統制、医療支援、人道支援など、アナドルが提供できる追加能力についても語った。


2023年4月10日、イスタンブールのトゥズラで開催されたTCG Anadolu。Photo by Ozan Guzelce/via Getty Images


エルドアンはまた、トルコが以前から構想していたコンセプトとして、各種武装ドローンを搭載・展開できるアナドルの能力も大きくアピールした。2015年の発注以来、アナドルは無人航空機の運用もできるユニークな多目的艦へと進化を遂げた。従来の有人回転翼機運用を超えて、戦闘用ドローンの軽空母として機能するはずだ。

 すべての能力がミックスされることで、同艦は非常に高い柔軟性を持つことになる。

 今年2月、アナドルの航空部門への移行を実現するため、ドローン運用をよりよくサポートするためインフラを小規模改修すると報告された。内容は、長距離接続用の衛星端末を備えたドローンコントロールステーションの導入、無人航空機の発進を助ける船首の「ローラーシステム」の設置、無人戦闘機(UCAV)の着陸を容易にするデッキのアレスティングギアシステムの追加、小型ドローン回収用の安全ネットの設置などだ。

 トルコ国防省発表の数値によると、アナドルは全長758フィート、幅約105フィート、排気量27,436トン。航続距離は9,000海里で、最大90日間、海上活動できる.。同省のプレスリリースによると、乗組員約400人に加え、一個大隊1,400人を運べる。

 搭載車両については、プレスリリースによると、「戦車13両、水陸両用襲撃車27両、装甲兵員輸送車6台、(各種)軽重装甲車33台の、トレーラー15台のが車両デッキで輸送できる」とある。また、アナドルはウェルドックに様々なタイプの上陸用舟艇を6隻まで搭載でき、前述の地上車両や兵員を展開する重要な役割を果たす。


式典後、TCG Anadoluの格納庫で見られる装甲水陸両用強襲車。クレジット:Photo by Serhat Cagdas/Anadolu Agency via Getty Images

アナドルの航空団に関する議論が最も注目されている。Daily Sabahの記事によると、58,600平方メートルの飛行甲板を持ち、 スキージャンプ形式で、中量輸送、突撃、または汎用ヘリコプター用の着陸地点6つと、大型輸送タイプ用に2つの追加スポットがある。


トルコの新旗艦の後姿。(tolgaozbekcom/ウィキコモンズ)


対応する回転翼機には、T129 ATAKやAH-1Wスーパーコブラ攻撃ヘリコプター、SH-60B対潜水艦戦ヘリコプターなどがある。AS532クーガー、S-70/UH-60ブラックホーク、CH-47Fチヌークで中・重戦術をサポートする。エルドアンは、固定翼のTAI Hürjet練習機/軽戦闘機も、アナドルで離着陸できるようになると付け加えた。この検討とシミュレーションもされているようですが、トルコ海軍が実現しようとしているコンセプトなのかどうかはわからない。とはいえ興味深い話であることは間違いない。


同省プレスリリースによると、アナドルは「航空機輸送能力の範囲内で、実施する作戦に応じ12機の有人・無人戦闘機、21種類のヘリコプター、UCAVを配備できる」という。

 現時点では、トルコのドローンメーカー、バイカルBaykarの折りたたみ翼TB3が、アナドルの主要武装ドローンとして期待されている。TB3は、同社の戦闘用ドローンTB2を海軍用に進化させたもので、ウクライナ紛争が続く中、人気が高まり、注目されている。TB3は、滑走路の短い空母や水陸両用攻撃艦の離着艦に特 化した設計だ。


 

TCG AnadoluのデッキでBayraktar TB3ドローンの後ろに立つトルコ政府関係者。クレジット:Photo by Murat Kula/Anadolu Agency via Getty Images


 バイカルは今年3月下旬にTB3の画像を初めて公開し、4月27日から5月1日にイスタンブールのアタテュルク空港で開催されるトルコのTEKNOFEST 2023で同機を正式発表する。TB3は今年中に飛行テストを開始する予定と同社は述べている。

 同社のジェットドローン「キジレルマKizilelma」も、同様に短距離離陸を想定しており、アナドル航空団の一部にするねらいがある。同機は昨年12月に初飛行したばかりで、開発は初期段階だが、同社は同機をトルコ初の戦闘UCAVと位置づけている。

同社によれば、キジレルマの飛行時間は5~6時間、戦闘半径は500海里、運用上限高度は35,000フィート、最大速度はマッハ1に近い。また、バイカルは、このドローンの最大離陸重量を13,228ポンド、積載重量を3,000ポンドと公表している。

 着艦にはアレスティングギアシステムが必要となり、発艦におそらく飛行甲板全体を使う高速ジェット機ドローンが加わると、甲板スペースが限られた同艦が、現実の状況下でどのように異機種を運用できるかは興味深いところだ。

 ただし、アナドルをドローン母艦にすることは、当初はF-35BやAV-8Bが重要な役割を果たすと想定されていたため、開発の主眼ではなっていなかった。2019年、トルコがロシア製S-400防空システムを購入したことを受け、米国はトルコをF-35プログラムから追い出した。トルコはすでにF-35プログラムに約14億ドル投資しており、トルコ企業数社がステルスジェット用の部品何百点も作っていた。

 トルコは、米海兵隊の余剰ハリアーの取得も議論していた。しかし、前進しているという話は聞いていない。ハリアーの中古品購入の可能性は別として、F-35計画から追放されたトルコは、新型艦に搭載する空母対応の短距離離陸・垂直着陸(STOVL)戦闘機F-35Bを持てなくなった。さらに、国産無人戦闘機の性能が急速に向上していることもあり、トルコは艦船の空白を埋めるために、最終的に自国の無人機産業に目を向けた。これら無人航空機は、米国やその他の外国の部品サプライヤーに依存することもない。


ヘリコプターやUCAVを搭載したTCGアナドルの飛行甲板。クレジット:Photo by Serhat Cagdas/Anadolu Agency via Getty Images


アナドルは、地域を超えグローバルに兵力投射する能力を高めるトルコの野望を強調している。今年2月にトルコを襲った大地震の後、アナドルが提供する人道的救済能力も期待される。

 アナドルがトルコ海軍に正式に加わった今、この艦が複数種類のドローン機に非常に大きく依存するマルチロール作戦コンセプトをどのように実現するのか、確かに興味深いところだ。世界各国の軍が無人航空機を作戦に組み込む動きを強める中、トルコが道を切り開くことになるかもしれない。特に、戦闘機のようなドローンを、有人機よりはるかに低いコストで効果を提供しながら運用することが実現できれば、なおさらだ。■


Turkey's 'Drone Carrier’ Amphibious Assault Ship Enters Service


BYEMMA HELFRICH|PUBLISHED APR 11, 2023 4:05 PM EDT

THE WAR ZONE


2023年4月17日月曜日

中国が戦争への備えを進める中、実は相手は中国ではなく、中共だ。中共の崩壊を招く巧妙な戦略が必要だが、中共は米国の崩壊をまねこうとしている。(ヒント ソ連の終焉)

 

(SAUL LOEB/AFP via Getty Images)


中国共産党が台湾攻撃の準備を今後数年間で整えようとしているが、インド太平洋での紛争で米国が手薄になる事態を懸念する専門家は多い

薬は底をつき、死傷者は膨大で、医薬品など重要物資は数週間も届かず、アメリカ本土への核攻撃が間近に迫る....

この半世紀、米国が経験したいかなる実戦よりハリウッドドラマに近い劇的な光景だ。しかし、今後10年間で米国と共産中国間で起こりうる戦争は、このような姿になると多くが予想している。

米中両国が軍事力強化に記録的な巨額を投じている。両国指導者は、衝突は不可避と考えるようになっている。

中国共産党が民主化された台湾は中国のものと主張し、習近平は数年以内に統一を実現させたいと考えているからだ。

習近平は、政権の軍事部門に戦争準備を命じ、2027年までに台湾侵攻の準備を整えようとしている。

歴史上最も野心的な水陸両用攻撃への準備と、実際の作戦実施は同じではない。しかし、最悪の事態が発生したら、バイデン政権や後継者は、戦いに参加するか、台湾を自立させ自由のため戦わせるかのどちらかを決めなければならないだろう。

だが米国指導者は、決断の前に、根本的な問いに答えなければならない。そもそも米国は対中戦に勝てるのだろうか?

Chairman Mike Gallagher (

2023年2月28日、ワシントンのキャノンハウスオフィスビルにて、米国と中国共産党の戦略的競争に関する米下院特別委員会の第1回公聴会を主宰するマイク・ギャラガー議長(ウィスコンシン州選出)。(Kevin Dietsch/Getty Images)

「最大危険の窓」

マイク・ギャラガー下院議員(共、ウィスコンシン州)は、米中間の新冷戦に誰より深く関与している。

中国共産党との戦略的競合に関する新しい下院特別委員会のリーダーを任された同議員は、中国共産党の侵略から米国民とその経済、価値を守るための行動計画の策定に直接携わる立法府の数少ない有力者の1人である。

ロシアがウクライナを征服し、米国が抑止できなかった事実に、台湾で次に起こることに備える教訓がすべて含んでいるとギャラガー議員は言う。

「ウクライナでの抑止力の失敗から正しい教訓を学ばなければ、権威主義による侵略と中国共産党の悪しき影響力がインド太平洋に広がり、中国共産党との新冷戦が一気に熱くなる可能性があります」とギャラガー議員はThe Epoch Timesに語った。

「これを防ぐため、危機感を持って行動し、中国共産党の台湾侵攻を抑止するため全力を尽くさなければならない」。

id5183289-china-drill2023年4月10日、北京のレストラン。中国軍東部戦域司令部隷下の航空機が戦闘準備哨戒や台湾周辺の「共同剣」演習に参加するニュース映像を放送する巨大スクリーン近くで食事する客たち。 (Tingshu Wang/Reuters)


計画は、米国が台湾関係法を成立させ、自衛を維持するため必要な武器を台湾に提供することに同意した1979年以来、ほとんど変化はない。

しかし、現在は44年前の戦略的状況と全く異なるもので、中国共産党が投入できる武器やシステムの数は膨大なものとなっている。

ギャラガーの考えでは、台湾米国ともに中国との戦争の可能性に備えていない。

2021年11月、ギャラガーは「もし明日、台湾海峡で戦争になれば、おそらく負ける」と警告した。

現在のギャラガーは当時の破滅論は避けるよう注意しているが、以前の評価にまだ同意するか尋ねられると、中国との戦争における米国のパフォーマンスで楽観的な見解は明らかに限定的だ。

「もし今日、中国共産党が台湾に侵攻してきたら、インド太平洋における友好国、アメリカの国益、価値観を守る体制は整わないだろう」とギャラガーは言う。

米国は、台湾を徹底的に武装させるか、それとも、もっと大きな犠牲を払ってでも台湾を助けるか、どちらかを選ぶときだとギャラガーは考えている。

いずれにせよ、いま時点での米国の選択が、後日の勝利と敗北の条件を大きく左右することになるという。そのため、議会が一丸となり台湾を武装させ、あらゆる機会で中国共産党の悪しき影響力に組織的に対抗しなければならない。

「21世紀のルールを中国共産党ではなく米国が決めるため、超党派で一致団結し中国共産党の侵略に対抗する必要がある」とギャラガーは言う。


2023年1月12日、台湾の高雄の軍事基地で、台湾の軍隊が旧正月休暇を前に戦闘態勢を示す2日間の定期訓練を行う。(アナベル・チー/ゲッティイメージズ)

核の「ハルマゲドン」を防げ

「最大限の危険」という言葉自体が最上級だが、中国共産党の核兵器増強の深刻さと、あらゆる紛争で果たす役割を印象づけるには、それでも不十分かもしれない。

中国共産党の軍事部門である人民解放軍は核兵器を拡大・強化し、米国本土を脅威にさらそうと努力を続けている。

2030年までに核兵器1000発を保有し、多くが複数弾頭になると予想されている。さらに先制攻撃兵器として使用する想定が明らかな極超音速砲撃システムの実用化に取り組んでいる。

このような能力は、戦争において米国を重大な危険にさらすことになり、冷戦以来見られなかった両軍の意思決定のダイナミズムを提示することになろう。

Epoch Times Photo

ロバート・スポルディング将軍(Samira Bouaou/The Epoch Times)

ロバート・スポルディング退役米空軍准将は、PLAの意思決定を理解している。

大使館付き武官として北京勤務し、重要な出来事でPLA将校と交渉し、戦略的競争の管理で輪郭を確立した。

台湾の将来をめぐる中国との戦争に米国が勝てるかとの質問に対して、スポルディングは明快かつシンプルに答えた。

「できない」と、スポルディングは言う。「中国は武器が多すぎるし、身近にありすぎる。米国は中国を止める戦闘力を発揮できない」。

太平洋の3,000マイルを越え戦力を投射する米国の能力は、ひどく足りないと言うのだ。

中国共産党のミサイルやロケット部隊に脅かされつつ、この地域で戦闘力を完全に維持すると、あらゆる瞬間に核がエスカレートする危険性がある。

簡単に言えば、インド太平洋の紛争で、米国は中国に圧倒され、劣勢に立たされる。このシナリオでは、戦略核兵器が米国にとって最も明確な利点となり、世界にとって最も明確な脅威となる。

スポルディングは、当然ながら、核兵器使用は勝ち目のないシナリオと考える。しかし、米国の核抑止力強化は、中国が台湾を越え侵略を拡大するのを抑止するため不可欠な要素だと考えている。

「中国の通常兵力に対抗できる唯一の兵器は核兵器だ」とスポルディングは言う。「核兵器は米国に戦うチャンスを与えるが、米国、中国、そして世界に壊滅的な打撃を与えるだろう」。

「それでも、弱く映れば戦争への最も確実な道になる。だからこそ、米国には力の発揮が不可欠なのだ。今日、その方法は核兵器しかない。それ以外のことをやっている暇はない」。

医薬品や技術資源を含む重要サプライチェーンで中国からの移行を米国は直ちに開始する必要があると、スポルディングは言う。配送を中国に任せたままでは、どんな戦争でも確実に敗北することになる。

「時間はないが、それでも、ある程度コントロールできるうちに、米国は産業基盤を再構築する必要がある」とスポルディングは言う。

スポルディングの考えには、今日多くの人が持っているある種の二面性がある。一方で、中国共産党の侵攻は避けられないと信じている。しかし、そのような事態になったとき、米国の台湾支援は軍事介入にとどめるべきであり、核兵器によるホロコーストを引き起こす危険性があると考えているのだ。

「中国共産党は、好きな時に侵略してくるだろう」とスポルディングは言う。「我々は、台湾が必要とする必然的な援助に備えなければならない」。

「アメリカが攻撃されれば、戦うでしょう。とはいえ、中国共産党を消耗させるような広範囲の戦争を中国は恐れ、アメリカを直接攻撃することはないと思います。我々が力を示せばハルマゲドンを防ぐことができる」。

Epoch Times Photo2022年8月17日(水)、台湾南東部花蓮県の花蓮基地で、F16V戦闘機の前で武器搭載訓練に備えたハープーンA-84、対艦ミサイル、AIM-120、AIM-9空対空ミサイルの横に立つ軍関係者。(AP Photo/Johnson Lai)


対中戦に「準備不十分の」防衛産業基盤

しかし、米国が台湾を防衛し、中国共産党の核ミサイル発射を抑止できても、勝利は確実といえない。

前線への補給だけでなく、実際に太平洋を横断しライフルに弾薬を、銃に弾薬を届ける問題もあり、米国には短期間、数週間の作戦に必要な備蓄がない。

3月30日の上院軍事委員会の公聴会で、クリスティン・ウォーマス陸軍長官はこのように述べ、ウクライナ支援により国内の弾薬備蓄が急速に枯渇しており、代替が可能になるまで何年もかかるだろうと説明した。

「ウクライナから学んだ重要な点は、強固な防衛産業基盤の必要性だ」とウォーマス長官は述べた。

「現在は防衛産業能力の絶対的な限界点で調達しているのです」。

Epoch Times Photo2022年5月10日、ワシントンのキャピトル・ヒルで行われた上院歳出防衛小委員会の公聴会で証言するクリスティン・ウォルムス米陸軍長官(左)とジェームズ・マコンビル陸軍参謀総長(右)。(Kevin Dietsch/Getty Images)


そのため、陸軍は新しい軍需品の迅速な増産と「有機的な供給基地」を作るためのデポに15億ドルを費やしているとウォーマス長官は述べた。

しかし、サプライチェーンの複雑さと装備の特殊性のため、生産・調達の取り組みの立ち上げには何年もかかる。軍関係者多数が台湾侵攻シナリオが実現になると考える2025年から2027年には間に合わない。

「新しく生産ラインを立ち上げるのに必要な非常に大型で複雑な機械設備で製造や設置に時間がかかるんです」とウォーマス長官は言う。

米国が現在ウクライナに使わせている弾薬のすべてが、台湾での戦いで必ずしも役に立つとは限らない。

例えば、ウクライナで使われている155ミリ弾は、長距離対艦ミサイル(LRASM)に優位性が劣る。

しかし、ここでも米国には戦争へ備えていない。

シンクタンク戦略国際問題研究所が1月発表した報告書では、ウォーゲームで米国は中国との戦闘で1週間以内にLRASMを全弾使い切るという。

「台湾海峡での中国との戦争のような大規模な地域紛争では、米国の弾薬使用量は米国国防総省(DoD)の現在の備蓄量を超える可能性が高く、『弾切れ』に発展する」。

「問題は、米国は長距離対艦ミサイルの備蓄数が非常に少なく、ウォーゲームでは、1週間未満で(LRASMを)使い果たした」と著者のひとりセス・ジョーンズは述べている。「その場合、十分な弾薬の供給がなく、長期戦は戦えない」。

この問題に関して、軍事調達プログラムは今のところほとんど価値がないことが証明されている。ウォームス含む陸軍指導者は、大砲への投資を再開し、国家備蓄を増やすと主張するかもしれないが、重大で不都合な事実がひとつ残っている。

米軍の精密弾薬のほぼ全量が、民間企業によって製造されているのだ。

ダグラス・ブッシュ陸軍次官補は3月3日、シンクタンク「戦略国際問題研究所」での講演で、この問題を語った。

ブッシュは「中国との戦いは精密弾薬の戦いになるというのが、よ共同見解であることは言うまでもない」と述べた。

製造能力の差を克服するため、米陸軍は民間企業に資金を提供し、精密弾薬の製造を実質的に補助している、とブッシュは付け加えた。しかし、そのような企業にとってもサプライチェーンは複雑で、機能するようになるまで何年もかかると予想される。

戦争する世界

台湾をめぐる戦争が破滅的な核戦争に発展するリスク、あるいは米国の重要兵器が枯渇し、西太平洋で無力化するリスクは高い。

しかし、それを克服できたら、どうなるか。

サム・ケスラーは、国際的なリスクアドバイザリー企業North Star Support Groupの国家安全保障と地政学的リスクアナリストで、このようなシナリオでも勝利は可能だが、あくまでも狭き門だと考えている。

ケスラーによれば、核兵器のエスカレーションを防ぎ、国家備蓄を維持し、世界2大経済大国の対決で世界経済が無に帰することのないよう、戦争は迅速に行い、勝利する必要があるという。

そのため米国は同盟国の支援を得て、人材や物資の流出を食い止める必要がある、と彼は言う。

「米国は自由に使える強力な能力を有しているものの、台湾防衛をめぐる戦争は、短期間で戦い、勝利する必要がある」とケスラーは言う。「米中間で戦争が起きた場合、米国は長年の同盟国を巻き込み、統一旗印のもとコミットする必要があります」。

そのため、同盟国の必要性は、グローバルサプライチェーンの確保、米国経済の強化、宇宙やサイバーなどの領域における重要な非軍事的防衛・安全保障支援の提供まで広まるだろうとケスラーは述べている。

「サプライチェーン、物流、製造拠点が現実の変化に合わせ再評価され、再構築される世界では、結局のところ、潜在的な戦争は、台湾の海岸での直接的な戦闘だけでなく、国内外での米国の地位と兵力投射に大きく影響するその他戦争領域にでも、世界のパートナーや同盟国に影響を与える可能性があります」。

技術的、経済的な相互接続性の観点から、中立を保とうとするかにかかわらず、ほとんどの国が何らかの形で戦争に巻き込まれることになると彼は言う。

そこでケスラーは、湾岸戦争で展開したような多国間の有志連合を提案する。

この点では、重大な問題が一つある。米国は自らの意思で戦争に突入すれば、NATOの集団防衛条項の恩恵を受けられないのである。

したがって、日本やオーストラリアといった地域の同盟国が参戦する可能性はあるが、米国の欧州パートナーは戦闘に参加しない可能性が高い。

実際、エマニュエル・マクロン大統領は4月上旬、台湾問題で欧州が「アメリカの追随者」になることを避けなければならないと発言している。

そこでケスラーは、米国の立場を強化するため、今すぐ外交努力を開始し、有事に安全保障上の援助やその他の利益を米国がパートナー国から受けられるようにする必要があるという。

「遅かれ早かれ、各国はこの問題に関し立場を表明せざるを得ない状況に追い込まれる可能性が高い」とケスラーは言う。「戦争が起こるか起こらないかにかかわらず、米国は長年のパートナーや同盟国から支持されることを完全保証してもらう必要があり、その逆もまた然りです」。

「この実現のためには、積極的かつ積極的な外交に加え、有志連合を作るべき強力かつ合理的な事例を提示しなくてはなりません」。

同盟国を持つのは米国だけではない

中国共産党政権はNATOのような同盟関係を結んでいないが、世界各地に、米国の戦争努力を直接支援したり、米国が気を取られている間に自国の不安定な利益を追求したりすることを厭わないパートナーがいる。

「同盟とパートナーシップは、中国と米国の双方にとって極めて重要だが、実施方法はそれぞれ異なる」とケスラーは言う。

「中国共産党は、国際システムにおけるアメリカのリーダーシップを不安定化させる役割を果たす顧客国の形でパートナーを認識し、一方で、彼ら自身が主導し影響力を行使できる多極化システムを先導している」。

中国共産党が多極化を推し進めた結果、パートナーが自ら不安定な紛争を起こす可能性がある。

Epoch Times Photo

2023年3月21日、モスクワのクレムリンで行われた夕食会で乾杯する中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領。(パヴェル・バーキン、スプートニク、クレムリン・プール・フォト via AP)

例えば、シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」の報告書では、北朝鮮が中国共産党の台湾侵攻を利用して、韓国を攻撃する可能性を仮定している。

東アジアにとどまらない

イランはシリアで米軍とさらに敵対し、隣国イラクに侵攻する可能性もある。ロシアはウクライナからモルドバまで敵対行為を拡大し、中国を直接軍事支援する可能性もある。ブラジル、ニカラグア、南アフリカは、この機会に中国やロシアとの関係を強化し、自らは交戦を回避することができる。

その結果、世界大戦とまではいかなくても、世界は戦争状態になるだろう。

「こうした国々は気をそらすゲームに長けており、台湾防衛戦争は、米国を油断させながら勝利や利益を得る、絶好の機会になる」とケスラーは言う。「このような地域紛争が勃発する可能性は非常に高い」。

ケスラーは、各国が米中戦争をどの程度利用するかは、中国との関係だけでなく、それぞれの国の能力、目標、政治経済的現実にも左右されると考えている。

例えば、ロシアには戦争が似合うとしても、南アフリカやブラジルのような小規模の経済パートナーは、貿易拡大や制裁措置の廃止に取り組む可能性が高い。

その結果、政治的な混乱が生じ、不安定さと混乱が常態化となった世界が生まれる。

米国は「ヘッジ」すべき

しかし、もし私たちがすべて誤解したらどうなるか。台湾が次の世界的な大災害の発生を待っているのではないとしたら、そして米国が戦って勝つことができても、その必要さえないとしたら。

元国防長官代理のクリストファー・ミラーは、このように考えている。

軍の意思決定装置は、見たいものしか見ない傾向がある。金づちには釘が刺さったように見える、とはよく言ったものである。

ミラーは、4月4日、リバタリアン系シンクタンクのCATO研究所での講演で、「私たちが間違えるのは、次の大規模紛争の予測を誤ることです」と語った。

ミラーは、ウクライナへの本格的な侵攻前のロシアと同じように、米国が中国共産党政権の能力や専門知識を過大評価しているのではないかという。

中国共産党は、軍事的な競争相手とは言い難く、冷戦時代に米国が表立った対立なしにソ連を打ち負かしたのと同じ戦略を展開している可能性がある、とミラーは指摘する。

中国共産党は、米国を騙し戦争が迫っていると思わせることで、実際には米国を誘導し、軍事プラットフォームへの過剰投資で経済を破壊している可能性がある、とミラーは言う。

「彼らは我々を煽り、我々はそれを(額面通りに)受け止めているのではないか」とミラーは言う。

そのため、ミラーは、台湾の独立を維持する脅威は現実のものであるが、米国は戦闘機や空母のような超高額で、容易に標的となるシステムに多額投資をすることで実は中国共産党の計画に加担している恐れがあると述べたのだ。

ミラーは、国力の4要素である外交、情報、軍事、経済に言及した。中国に勝利し、世界の自由を守るため、米国が進むべき道は、非軍事的要素を活用することだ、と彼は言う。

「中国の脅威に対し、非正規戦つまり非常に繊細で間接的なアプローチが必要だ。

「外交、情報、経済を活用し、軍事面はしばらく控えることにしましょう。時間があるからだ。もし間違っていても、事態は好転できる」。

エポック・タイムズは将来の中国との戦争を想定した国の軍事開発でアドバイスを求めたところ、ミラーは、ヘッジすることが最善の策であると述べた。

「もしあなたがビジネスパーソンで、予測不可能なビジネス環境の中にいたら、どうしますか?ヘッジするのです。

「何か1つに全力投球することはないんです。幅広い能力を持つ必要があります」。

アジアで戦争の惨禍を回避し、政権打倒を同時に実現するため米国で最高の武器は中国共産党の真実を示すことであると彼は言った。政権が日々行っている残虐行為に冷徹な光を当て、残虐行為を中国国民に見せ理解できるようにすれば、政権は内部圧力で崩壊していくだろう。

「権威主義的、全体主義的な政府が恐れるものはひとつ、民衆の不満と蜂起です。最も恐れるのは情報です。そして、それが非正規戦の重要な構成要素の1つなのです。

「ひたすら真実を語ればよいのです。それでうまくいくはずです」。■


China is Preparing for War; Is the US Ready?

By Andrew Thornebrooke

April 12, 2023Updated: April 12, 2023