2024年2月23日金曜日

シンガポール航空ショーに出展した防衛省、防衛産業は日本の軍事装備品輸出へ向けた一歩を踏み出した----官主導のビジネス開拓が効果を示すか注目。

 

The Japanese Defense Ministry made its first appearance at the 2024 Singapore Airshow, hoping to boost arms exports and encourage Japanese small and medium enterprises. (Colin Clark/Breaking Defense)

日本の防衛省、武器輸出を求め海外の航空ショーに初出展

日本はシンガポール航空ショーに14社を招待した。日本以外の航空ショーに武器が展示されるのは、輸出規制を緩和して以来初めてである。



日本の防衛省は2024年のシンガポール航空ショーに初出展し、武器輸出を促進し、日本の中小企業を奨励することを期待した。(コリン・クラーク/Breaking Defense)


器輸出の禁止から数十年後、日本の武器輸出ビジネスを構築する明確な兆候として、防衛省が海外の航空ショーに出展企業を引き連れ初出展した。

 防衛省の府川秀樹防衛装備品協力企画室長は本誌取材に対し、「シンガポール航空ショーは、日本が武器輸出ビジネスを立ち上げようとしていることの明らかな表れだ。シンガポール航空ショーは、この地域で最大級の航空ショーであり、シンガポールは日本にとって非常に重要なパートナーである。なぜなら、シンガポールはインド太平洋地域の中心に位置しており、日本政府は自由で開かれたインド太平洋地域を示したいと考えているからである」と述べた。

 もちろん、「自由で開かれたインド太平洋」という語句は、南シナ海全域での中国の野心や台湾に対する好戦的な扱いに立ち向かう姿勢を表すために、アメリカとそのパートナーによって使われている。日本は2021年の防衛白書で、台湾の安定が日本の重要な利益であると初めて宣言した。

 日本は武器輸出規制を昨年末に緩和し、殺傷能力を有する武器の譲渡を可能にしたが、売却に関するニュースはほとんどなかった。日本代表団の数名は、日本の保守的な文化と、この変更がもたらす新しさとの組み合わせによるものだと語った。日本は昨年11月、推定400万ドル相当のレーダーをフィリピンに提供することに同意したが、これは売却ではなかった。

 出展企業には、人工知能エッジコンピューティング・チップを開発する新興企業EdgeCortixが含まれる。同社は日本に本社を置くが、多くの技術系新興企業と同様、従業員は多くの国から来ている。元米国防総省の技術専門家であるスタン・クロウが同社の防衛・宇宙技術担当副社長を務めている。注目すべきは、日本政府が同社に接触し、シンガポールに招待したことだ。

 2月15日の同社の発表によると、このチップはSAKURA-Iチップであり、同社の「フラッグシップ」製品であると説明されている。

 巨大自動車会社SUBARUは、UH-2ヘリコプターの輸出の可能性を高めるため参加している。日本軍は2022年に初飛行した同機を100機以上購入する予定だが、海外の購入者はまだいない。同社の防衛ヘリコプター販売担当マネージャーである藤田泰典は、台湾、オーストラリア、アメリカなどが興味を示していると述べた。

 メトロ・ウェザー・アメリカは、超小型のドップラーライダー風速計を販売している。駐車スペースに収まる大きさで、最大30キロの天候をモニターするだけでなく、ウィンドシアーも検出できる。古本淳一CEOによれば、同社はシンガポールに進出ずみの企業で、米国を含む3カ国から問い合わせがあったという。

 本誌が14社を調査したところ、会期3日間を通して、ほとんどの企業が3〜5カ国から引き合いを聞いていることがわかった。最も多かったのはアメリカ、台湾、インドネシア、マレーシアだった。

 

その他の企業は以下の通り:

  • 旭金属工業は航空機の複合部品を製造

  • ジュピターコーポレーションは、C-130ハーキュリーズやC-2輸送機に搭載するコンテナ型医療外傷治療センターを製造

  • NTKJは「高精度」光学レンズとミラーを提供

  • NECは、配備可能な長距離防空レーダーと他の2つのレーダーシステムを製造・販

  • 沖電気工業はコックピットディスプレイを製造

  • P-1哨戒機、C-2輸送機、ターボファンエンジンを製造する川崎重工業

  • 栗本工業はエンジン部品の金属積層造形を行う

  • スカパーJSATは衛星通信サービスを提供する

  • 高木鐵鋼は航空機用金属を供給する

  • 日本無線株式会社プッシュ・ツー・トークやビデオストリーミングに対応する携帯戦術無線を製造

  • ミツフジは、電磁波やその他の干渉から電子機器を保護する耐電磁・耐火織物を格納庫用に製造


Japanese MoD makes first appearance at foreign airshow, seeking arms exports - Breaking Defense

By   COLIN CLARK

on February 22, 2024 at 12:05 PM


トルコの次世代戦闘機「カーン」が初飛行に成功(2024年2月)

 


トルコの航空宇宙産業の進展には注目を集めるだけの理由があります。また同国の地政学上の位置づけを考えると、リージョナルパワーとしてトルコがこれからさらに発展剃る可能性があります。日本にとっても無視できない存在のはずです。The War Zone記事がこのたび、初飛行にこぎつけた第5世代新型戦闘機の初飛行の様子を伝えていますのでご紹介します。


TF-X FIRST FLIGHT

Via X



TFカーンは、トルコの野心的な軍事航空宇宙産業で最新かつ最も印象的な存在だ


前はTF-Xとして知られ、現在はTFカーンKaanとして知られるトルコの次世代戦闘機が、初飛行に成功した。試作機の飛行開始は遅れたが、急成長中のトルコ航空宇宙産業にとって非常に重要なマイルストーンであることに変わりはない。


A screencap from the official video showing the first flight of the TF Kaan. <em>@halukgorgun/via X</em>

A screencap from the official video showing the first flight of the TF Kaan. @halukgorgun/via X


トルコ航空宇宙産業のテストパイロット、バルバロス・デミルバシュは、今朝初飛行を行ったカーン試作機のコックピットにいた。追撃機としてトルコ空軍のF-16Dが同行した。最初の報告によると、カーンは13分間飛行し、高度8,000フィート、速度230ノットに達した。初飛行の慣例として、飛行中はランディングギアが展開されていたようで、着陸時にはブレーキシュートが展開された。

 初飛行の最初の画像は、新型ジェット機の姿を示している。全体的な大きさと内部の容積が明らかになった。カーンは第5世代戦闘機のラインを持っており、低観測性にある程度は最適化されているが、どの程度ステルス性を持っているかは不明だ。

 また、このプロジェクトの目標が、レーダーシグネチャーを低減し、高性能と最新のエイビオニクスなどのシステムを備えた先進的な戦闘機を開発することであったことも忘れてならない。この分野でのトルコの経験を念頭に置けば、多くは達成可能と思われる。一方、F-35含む第5世代戦闘機の特徴であるハイエンドセンサー、そして何よりもデータフュージョンと相互運用性は、トルコの手の届かないところにある可能性が高い。米国製戦闘機に見られるステルスレベルも同様だ。それでも、レーダー・リターンの大幅な低減は、重要な前面半球からのレーダー・リターンを考えれば大歓迎だ。

 ざっと見たところ、機体前面は観測可能性が低いことを示唆しているが、これも推測の域を出ない。試験飛行では、コックピット前方の赤外線サーチ&トラック・センサー・システム(IRST)と前方胴体下部の多目的電気光学照準システム(EOTS)と思われるファセット・エンクロージャーが取り外されていた。


A close-up of the front end of the Kaan prototype, as seen in 2023. What appears to be a fixed faceted low-observable enclosure for a dedicated IRST sensor on top of the nose in front of the cockpit, as well as a multi-purpose EOTS underneath the fuselage, have now been temporarily removed.&nbsp;<em>SSB</em>

A close-up of the front end of the Kaan prototype, as seen in 2023. What appears to be a fixed faceted low-observable enclosure for a dedicated IRST sensor on top of the nose in front of the cockpit, as well as a multi-purpose EOTS underneath the fuselage, have now been temporarily removed. SSB


また、現在は、カーンが標準的な(非ステルス性の)排気ノズルを備えた米国が供給するジェネラル・エレクトリック製F110ターボファンを搭載していることも注目に値する。機体後部は、水平安定板が搭載される目立つ尾翼ブームで占められており、内部容積をさらに拡大しているように見える。

 2023年1月、トルコ航空宇宙産業のテメル・コティルCEOは、同年に初飛行が可能だと述べていたが、そのスケジュールは明らかにずれ込み、2023年半ばには初飛行は12月27日に計画されていた。とはいえ、まだ未完成だった昨年3月にロールアウトされたばかりの航空機を、1年足らずで飛行させたことは非常に印象的だ。


The rollout of the Kaan prototype on May 1, 2023, in Ankara, Turkey. <em>Photo by Yavuz Ozden/ dia images via Getty Images</em>

The rollout of the Kaan prototype on May 1, 2023, in Ankara, Turkey. Photo by Yavuz Ozden/ dia images via Getty Images



 現在、TFカーン(experimentalのXは削除された)として知られる同機は、MMU(Milli Muharip Uçak)(国家戦闘機)の正式名称で知られるプログラムで構想され、2010年に開始された。

 それ以来、トルコの戦闘機計画はかなりの激変を遂げている。

 2019年のパリ航空ショーでは、TF-Xの実物大モックアップが初めて登場した。これは、トルコがF-35統合打撃戦闘機計画から追い出されることが明らかになった直後のことで、トルコはこのステルス戦闘機を約100機購入する計画で、産業レベルも含めて深く関与していた。トルコがロシア製防空システムS-400の購入計画を拒否した後、ワシントンはこの決定を下した。


F-35計画からの離脱で、F-16戦闘機の追加購入というアンカラの要請も断られ、米トルコ関係における広範な断絶が明らかだ。トルコ政府関係者はアメリカ以外の外国製戦闘機の調達先を探す可能性を示唆していた。ロシアはSu-57を提供し、トルコはユーロファイター・コンソーシアムからのタイフーン購入の承認を得ようとしたが、ドイツにより阻止されたようだ。


 だが最近、特にトルコがスウェーデンのNATO加盟を最終的に承認した後、ワシントンとの関係が改善され、バイデン政権はトルコへの新型F-16とアップグレードキットの販売を推進しようとしている。トルコにとってF-35が再び検討対象になる可能性さえ指摘されている。

 老朽化したF-4E-2020ターミネーターを置き換える必要があるトルコにとって、新型戦闘機が必要なことは明らかだ。


このような混乱にもかかわらずTF-X計画は推進されているが、試作機の動力源であるF110ターボファンを米国が利用可能にするかどうかについては、繰り返し疑問が投げかけられている。F110はトルコのTUSAS Engine Industries(TEI)がライセンス生産しているが、米国の輸出規制の対象となっている。トルコ政府関係者は、新型戦闘機のエンジンを最終的に国産に切り替えたいと表明しているが、どれほどの時間がかかるかはともかく、どこまで現実的なのかは不明だ。

 ロシアのパワープラントやイギリスのロールス・ロイスとのエンジン提携の可能性など、他の外国製エンジンのオプションも議論されている。英国との提携については、技術移転と知的財産権の問題で最初の契約は決裂した。一方、ロシアのオプションは、モスクワのウクライナ侵攻以来、構想から外れているようだ。


将来の有人戦闘機の選択肢を検討するだけでなく、トルコは先進的な戦闘ドローンの開発にも余念がない。

 最も注目すべき開発中の無人機には、低視認性飛行翼無人戦闘機(UCAV)のANKA-3や、戦闘機のようなBayraktar Kizilelmaがある。これらのうちの1つまたは両方がKaanの補助として使用される可能性がある一方で、これらが成功した場合、アンカラはよりコストのかかる有人戦闘機を犠牲にして無人機の大規模な編成を選択する可能性もある。 


The ANKA-3 made its first flight in December 2023. <em>via X</em>

The ANKA-3 made its first flight in December 2023. via X

Kizilelma_TOPSHOP

Ground tests of the Bayraktar Kizilelma. This innovative drone took to the air in December 2022. Baykar Baykar


一方、トルコ政府関係者は、カーンについて楽観的な姿勢を崩していない。カーンは今や同国の軍事航空宇宙の旗艦であるだけでなく、国家全体の誇りでもある。

 実際、カーンに続く有人戦闘機の議論もある。トルコは現在、人工知能(AI)がもたらす利点を活用した第6世代戦闘機の開発に取り組んでいるとの報道が最近あった。

 過去にも述べたように、第6世代戦闘機を追求することは、カーンに多くの焦点と投資が吸収されている現時点では、途方もない到達点のように思える。


The Kaan taxis to the runway ahead of its first flight today. <em>@halukgorgun/via X</em>

The Kaan taxis to the runway ahead of its first flight today. @halukgorgun/via X


輸出の可能性もある。カーンは、低視認性と先進的なエイビオニクスを特徴とする中量級戦闘機に加わる。中国のFC-31や韓国のKF-21がここに含まれる。これらの機体が国際的な戦闘機市場を破壊する可能性があるとして注目されている。自慢の戦闘機を輸出するというトルコの野望については、現時点では明確になっていない。

 新型戦闘機の実戦投入はトルコにとって非常に大きな問題であることは明らかだが、この先に多くの試験やハードルが待ち受けている。2030年ごろの就役目標まで、カまだ長い道のりがある。

 報道によれば、トルコは3機の試作機を完成させ、その後さまざまな改良を加えながら250機の量産機を完成させる計画だという。

 カーンが飛行試験を開始した今、その性能と能力、そして将来のトルコ空軍にどう適合するかで、多くが今後判明するはずである。■


Turkey’s Kaan Next-Generation Fighter Has Flown | The War Zone


BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED FEB 21, 2024 12:19 PM EST


2024年2月22日木曜日

紅海で米海軍はスタンダードミサイル100発超をフーシの安価な脅威に発射していた----安全はすべてにも優先するというが、この数式は維持できるのだろうか

 安価な無人兵器に高価な迎撃ミサイルを発射することの計算は明らかで、攻撃側からすればまさしくこの計算の効果を狙えるわけですが、記事で米海軍の艦長が言っているように生命のことを考えれば金額など問題ではないのでしょう。防空装備がここまで進化している一方で、防御手段がない民間商船が狙われ、現実に大被害がひろがっており、スエズ運河ルートが実質上使えなくなっていることの影響はこれからじわりじわりと出てきます。The War Zone記事からのご紹介です。

A file photo showing the launch of an SM-6 missile from a US Navy warship. <em>USN</em>

A file photo showing the launch of an SM-6 missile from a US Navy warship. USN


海軍、フーシの無人機とミサイルに約100発の標準シリーズミサイルを発射: レポート

海軍が一発数百万ドルのミサイルを多数発射していたことは、中国との戦いで要因となり得るコストと能力の懸念を浮き彫りにしている


海軍は昨年10月以来、イエメンから発射されたフーシ派のミサイルやドローンに対し、スタンダード・ファミリー地対空ミサイル約100発を発射した。この多大な資源の支出は、米海軍の将来のコンステレーション級フリゲート艦の弾倉の深さ全般についてと同様の、懸念を感じさせるものだ。

 海軍艦艇がフーシ派の攻撃にどう対応してきたかで新たな詳細が、先週末のCBSニュースの「60 Minutes」で明らかになった。イランの支援を受けたイエメンの武装勢力は、昨年10月以来、紅海周辺で対艦攻撃を展開している。また、イスラエルに向けミサイルやドローンを発射している。

 「60ミニッツ」によれば、「海軍はこれまでに、1発400万ドルもするスタンダード地対空ミサイルを約100発発射していることがわかった」。

 報道では、米海軍が具体的にどの種類のスタンダード・ミサイル(SM)を使用したのか、また100発のミサイルの種類別の内訳は明らかにされていない。過去の報告書やこれまでに出てきたその他の証拠によれば、米海軍はフーシに対してSM-2やSM-6を発射している。海軍の予算文書によれば、最新の生産型SM-2ブロックIIICとSM-6ブロックIAのコストは、それぞれ約200万ドルと400万ドルである。SM-6ブロックIAの単価は、『60ミニッツ』の記事の価格帯と一致している。

 SM-2は中長距離の地対空ミサイルで、二次的な地表攻撃能力もある。SM-6は射程が長く、対空迎撃能力、対弾道ミサイル迎撃能力、艦船や陸上の標的を攻撃する能力を備えた多目的兵器である。米軍はまた、SM-6改良型は、高度な機動力を有する極超音速兵器の脅威に対する米軍艦の現在の唯一の防衛手段だとしている。

 フーシ派のおかげで艦船の対弾道ミサイル能力が新たな話題となっている。イエメンの武装勢力は、怒りに任せ対艦弾道ミサイルを初めて使用した。弾道ミサイルは、飛行の最終段階で到達する速度が速いため、防衛側にとっては難題となる。

 「対艦弾道ミサイルが発射された場合、マッハ5、時速約3000マイルで移動する」と、米中央軍CENTCOMの副司令官であるブラッド・クーパー海軍中将は、『60ミニッツ』のインタビューで語った。「もしミサイルが向かってきたら、駆逐艦の艦長の立場になって考えてみてください。9秒から15秒で撃墜を決断しなければならない」。

 フーシ派はまた、対艦弾道ミサイルに巡航ミサイルや無人偵察機を重ね、脅威の全体像をさらに複雑にしている。イエメン武装勢力はまた、爆発物を積んだ無乗員水上艦艇(USV)を使用している。CENTCOMによれば、米軍は最近、フーシ派の無人水中装備(UUV)を破壊したという。

 さらに、『60ミニッツ』によれば、「取材班が(アーレイ・バーク級駆逐艦)USSメイソンを訪問する前日、約100マイル離れたところで、別の米駆逐艦が最後の手段であるCIWS(マーク15ファランクス近接武器システム)と呼ばれる防御砲を必要とし、1マイル先から急速に接近してきたフーシの巡航ミサイルを撃墜した」。

 CNNが1月下旬に報じたUSSグレイブリーの事件と同じかどうかは不明だが、その事件では、向かってきたフーシの巡航ミサイルが同駆逐艦から1マイル(約1.6キロ)以内に迫っていたという詳細も含まれていた。もし別の駆逐艦が同じような苦境に陥っているとしたら、これも非常に気になることだ。The War Zoneがグレイブリーに関する事件のニュースが出たときに報じたように、当時、ファランクスは一般的に「最後の切り札」の防衛ラインとみなされており、フーシの脅威が撃墜される前にどのようにその駆逐艦に接近できたのかは不明のままだ。

 『60ミニッツ』が報じたスタンダード・ミサイルの発射とCIWSは、紅海とその周辺に配備されている海軍の軍艦のミサイル弾倉に負担がかかっていること、また中国との紛争など将来の大規模紛争の可能性についての懸念を強調している。また、フーシの対艦作戦は、さまざまな種類の脅威を含む複雑な攻撃が既存の艦船防御を圧倒するリスクについての議論を再燃させている。

 CENTCOMの発表によれば、昨年10月19日以来、海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦は、少なくとも21発のフーシの弾道ミサイルと巡航ミサイル、67機の無人機を撃墜している。USSカーニーだけで、少なくとも43機の迎撃に成功している。米軍機だけでなく、外国の軍艦もフーシの脅威を撃墜している。

 アーレイ・バーク級駆逐艦は、Mk41垂直発射システム(VLS)アレイを搭載している。しかし、標準的な運用手順では、これらのセルにはSM-2やSM-6のような地対空ミサイルだけでなく、さまざまな兵器が混在している。たとえば、バーク級は陸上攻撃巡航ミサイルのトマホークを陸上のフーシの標的に向けて発射することもある。さらに、1つの空中の脅威に対して少なくとも2発の迎撃ミサイルを発射し、撃墜に成功する確率を高めるのが一般的な手順である。

 RIM-162進化型シースパロー・ミサイル(ESSM)は、Mk41 VLSセル1個に4発装填できる短・中距離地対空ミサイルで、海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦にもよく採用されている。紅海とその周辺におけるフーシの脅威に対するアメリカの対応についての議論でESSMについての言及がないのが不思議だ。

 何があろうと、過去24時間で明らかになったように、紅海とその周辺にいる米軍と他の外国軍は、フーシの脅威を100%阻止することはできない。昨日の攻撃による貨物船ルビマーの被害は、乗組員が船を放棄せざるを得ないほど深刻なものだった。

 『60ミニッツ』のノラ・オドネルは、紅海からの最近の報告のために、USSメイソンの艦長ジャスティン・スミス中佐に尋ねた。「1万ドルの無人機を撃墜するために、それを使うのですか?その価値はあるのか?」

 イラン設計の神風ドローンのコストは、議論の的となっているが、1万ドルより高いことは注目に値する。フーシが採用しているミサイルと同様に、これらの無人偵察機の価格帯は、海軍が対応策として採用している標準ミサイルの亜種のコストの数分の一である可能性が高い。何十億ドルもの価値があり、乗組員の命がかかっている軍艦に対するリアルタイムの脅威を伴う現実の作戦状況では、このようなことはほとんど無意味である。

 スミスはオドネルの質問に答え、このような交戦に伴う実際のコストについて語った。「安全や乗員の生命を考えれば値段のことはいてられない。

「あなたは常に100%正しくなければならない。

「そして、彼らは一度だけ正しいことをすればよいのだ」。

 民間商船ルビマールへの攻撃は、フーシの脅威を阻止しない場合の代償を明確に示している。このような計算は、米軍がさらに多くの脅威に直面し、より深刻な消耗が予想される将来のハイエンドな紛争において、他の要因と同様に、より顕著になるだけだろう。

 そして何よりも、海軍が過去4カ月ほどで約100発のスタンダードミサイルを消費したというニュースは、フーシの深刻かつ継続的な対艦作戦に対処するためだけで必要な資源を示している。太平洋における中国との紛争など、将来のハイエンド紛争における脅威の規模が、紅海とその周辺の状況をはるかに凌駕することを考えれば、これはさらに重要なことである。■


https://www.twz.com/sea/navy-has-fired-around-100-standard-series-missiles-at-houthi-drones-missiles-report


Navy Has Fired Around 100 Standard Series Missiles At Houthi Drones, Missiles: Report

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED FEB 19, 2024 7:34 PM EST



2024年2月21日水曜日

シンガポール空軍がグアムへ展開。F-15SGがアンダーセン空軍基地を拠点に活動する姿が見られそうだ

 


Military personnel prepare a Singaporean Air Force F15SG fighter jet for display on the tarmac ahead of the Singapore Airshow in Singapore on Feb.18, 2024. (Roslan Rahman/AFP via Getty Images)

太平洋の重要拠点グアムで米軍とシンガポール空軍が提携

アムにある米アンダーセン空軍基地が、シンガポールのF-15戦闘機隊に門戸を開くことになった。

フィリピン海の縁に位置する米軍施設に航空兵力を集中させる動きは、米空軍が提案する近代化計画の一環だ。

過去数年間、北朝鮮は同島を攻撃すると繰り返し脅してきた。2017年にアメリカの爆撃機が同盟国である韓国の空をパトロールするためにこの島から離陸したときもそうだった。

「アンダーセン基地は、インド太平洋の前方端から航空戦力を投射し、戦闘能力を拡大するために使用される戦略的な場所であり、私たちの意図は、この場所をさらに資源化することです」と、米太平洋空軍(PACAF)の広報担当者は、電子メールでDefense Newsに語った。

「提案されている措置の目的は、国際日付変更線の西側で米国の態勢を強化する重要なインフラを提供することです」と声明は述べている。

シンガポール関連では、最大12機のシンガポールのF-15SG航空機のベッドダウンと任務支援を伴うもので、パイロットの訓練施設を提供する計画もある。

また、飛行場と弾薬のインフラを増強する。この工事は209エーカーに影響を及ぼし、3年から7年かけて行われる予想がある。

ただし工事の開始時期は未定である。PACAFの管轄下にある10の基地のひとつのグアム基地は、西太平洋で唯一、重爆撃機を継続的にオーバーホールできる基地である。

またグアムは比較的空域が限定されていないことで知られ、北朝鮮による軍事行動の際には不可欠となると分析されているため、米空軍はこのプロジェクトのためにグアムを選んだのだろう。

さらに、爆撃訓練場として使用されている長さ1.75マイル(2.8km)の無人島、ファラロン・デ・メディニラの近くでもある。

PACAFの声明によれば、アメリカ空軍は「インド太平洋地域における戦略的能力の要件を検討し、太平洋空軍の責任範囲内にある他の5つの代替候補地を検討から除外し、能力強化のためにアンダーセン基地を特定した」という。

シンガポール空軍(RSAF)のケルビン・コン司令官は、2月20日から25日までシンガポールで開催されるシンガポール・エアショーに先立ち、声明で「F-15SGは戦闘機隊の重要な戦力として、2009年以来我々によく貢献してくれており、今後も作戦上のニーズを満たすことが期待されている」と述べた。

RSAFはまた、2030年半ば以降に退役させる計画で、2016年に中期アップグレードを開始したF-16を運用しており、まもなくロッキード・マーチンから最初のF-35Bを受領する予定だ。

「RSAFの次世代フリートはF-35とF-15SGで構成され、我々は2026年までに最初の4機のF-35Bの引き渡しを受け、翌年に残りの8機の引き渡しを受けることを期待している」とコンは述べた。

同政府関係者は、両国間の協力を強化するため、米国で最初のF-35パイロットの訓練を開始する予定であると付け加えた。■

US, Singapore air forces to team up at vital Pacific base in Guam

By Elisabeth Gosselin-Malo

 Feb 20, 05:32 AM

https://www.defensenews.com/global/asia-pacific/2024/02/19/us-singapore-air-forces-to-team-up-at-vital-pacific-base-in-guam/



2024年2月20日火曜日

米海軍のアイオワ級戦艦の復帰?戦艦への期待が消えない理由とは

 Iowa-Class Battleship U.S. Navy

National Interest記事からですが、読者の要望が強く過去記事を再掲載したようです。


艦を復活させる時が来たのだろうか?何十年にわたり、海軍設計者たちは、往時の世界大戦の基準からすれば驚くほど脆い艦船の建造に集中してきた。これらの艦船は、20世紀初頭の艦船に比べれば、はるかに大きな距離で攻撃を与えることができるが、打撃を受ける余裕がない。戦略を再考し、再び防護艦を建造する時が来たのだろうか?この記事では、こうした傾向がどのようにして生まれたのか、そして今後何が変わる可能性があるのかを検証する。


戦艦を復活させる時か?

 「戦艦」というレッテルは、海軍の最大艦船が「戦列」編成に参加し、敵陣に広角砲火を浴びせることができるという意味で、古い「戦列艦」の概念から生まれた。「戦艦」は敵の「戦艦」と戦うことが期待されていた。近代的な戦艦の形態は、1890年頃のイギリス・ロイヤル・ソブリン級に落ち着く。前部と後部の砲塔に各2門の重砲を備え、鋼鉄製の装甲を持つ、総トン数約15,000トンの艦であった。世界中の海軍がこの基本設計パラメータを採用したことで、懲罰を与えることも吸収することもできる艦船が誕生した。初期の戦艦では、脅威の予測可能性によって生存性を確保するプロセスが単純化された。1890年代後半には、他の艦船が搭載する大型の海軍砲から攻撃を受ける可能性が最も高く、その結果、防御計画はその脅威に集中することができた。

 15年後に建造されたHMSロード・ネルソンの排水量は、わずか2000トンしが増加しなかった。しかし、ほぼ同じ大きさの船体で、HMSドレッドノートはその後数年間で開発された数々の技術革新を活用し、10門の重砲を搭載して、それまでの艦とほぼ同じコストではるかに殺傷力の高いプラットフォームとなった。その結果、小型戦艦の生存率は、海軍大砲に対してさえも大幅に低下した。

 それ以降、殺傷力と生存性は艦の大きさとともに劇的に向上し、世界の海軍はそれに対応した。1915年までにイギリス海軍の第一線戦艦は27,000トンになり、1920年までに世界最大の戦艦(HMSフッド)は45,000トンになった。 1921年には国際協定によって軍艦の大きさが制限されることになるが、ドイツと日本は特に驚異的な大きさの戦艦を想像していた。


大型艦が廃れた理由


 航空戦力(およびミサイル戦力)の時代の到来により、もはや水上戦艦の大きさが劇的に殺傷力を高めることはなくなった。同時に、脅威の拡散により、生存性を確保することが難しくなった。第二次世界大戦時の巨大戦艦は、航空攻撃や潜水艦の一斉攻撃に耐えられず、主兵装の長射程距離で反撃できなかった。空母を除けば、大きければ大きいほど殺傷力は増すのだが、海軍艦艇は一転して小柄になった。今日のアメリカ海軍(USN)の主要な水上艦艇の排水量は、第二次世界大戦時の戦艦の4分の1以下しかない。

 第二次世界大戦後の艦船はまた、大雑把に言えば、生存性を確保する手段としての装甲を捨てた。伝統的な戦艦のベルト(側面)装甲が巡航ミサイルに抵抗できるかについては、かなりの議論が残っている。巡航ミサイルには他の利点もあるが、一般的に最大の海軍砲よりも貫通力が低い。甲板装甲はより深刻な問題であることが判明し、爆弾、ポップアップ巡航ミサイル、そして(最近では)弾道ミサイルからの生存性を確保するという要求は、大型重装甲艦の改善された殺傷力をすぐに上回ってしまった。 そしておそらく最も重要なことは、水中攻撃の問題を(改善するのではなく)なくす方法を誰も考え出していないことである。魚雷は、最も重装甲の軍艦にさえ致命的な脅威を与え続けた。

 魚雷は、最も重装甲の軍艦にとってさえ致命的な脅威であり続けた。第二次世界大戦終結後、いくつかの海軍が大型水上戦艦の構想に翻弄された。イギリス海軍は、1939年に放棄されたライオン級の少なくとも1隻の再設計と完成を検討した。最終的には、爆弾から艦船を守るために必要な甲板装甲のレベルが法外であることが判明した。ソ連は、スターリンの死によってそのような空想が終わった1950年代まで、従来の砲を搭載した戦艦を建造する計画を維持していた。フランスは1952年にジャン・バルトを完成させ、1960年代まで練習艦兼宿泊艦として部分的に就役させた。

新しい波は1970年代に始まった。ソ連がキーロフ級重ミサイル巡洋艦の建造を開始した。アメリカ海軍は、アイオワ級戦艦4隻の改修でこれに応え、長距離ミサイルを獲得したが、就役期間はわずか数年だった。

 最近では、ロシア、アメリカ、中国が大型水上艦の建造を検討している。 ロシアは定期的に新型キーロフの建造を約束しているが、これはロシアが新型戦略爆撃機Tu-160を建造するという提案と同じくらい真剣に受け止めるべき主張である。CG(X)計画の提案の1つには、2万5,000トンに近い原子力軍艦が含まれていた。メディアは、中国の055型巡洋艦を同様の大型艦として扱ってきたが、現在の報道によれば、この艦の排水量は12000~14000トン程度で、米国のズムウォルト級駆逐艦よりやや小さい程度だ。


何が変わったのか?


 大型艦には、依然として殺傷能力上の利点がある。 例えば、大型艦はより大きなミサイル弾倉を搭載でき、攻撃と防御の両方に使用できる。 砲技術の進歩(ズムウォルト級駆逐艦に搭載される155ミリ先進砲システムなど)は、大型の海軍大砲でこれまで以上に遠くまで正確に攻撃できることを意味する。

 しかし、最も重要な進歩は生存性だろう。大型艦を建造する最大の理由は、発電容量かもしれない。海軍技術における最も興味深い技術革新は、センサー、無人技術、レーザー、レールガンに関わるものだが、ほとんどは電力を必要とする。大型艦はより多くの発電ができ、殺傷能力(レールガン、センサー)だけでなく、生存能力(対ミサイルレーザー、防御センサー技術、近接防御システム)も向上させることができる。大型艦が搭載できるミサイル弾倉は、小型艦よりもこれらの要素や殺傷力、生存力を引き出すことができる。

 古典的な戦艦の真の後継艦はどうだろうか? 素材設計の進歩で、他の軍事システム(特に戦車)の防御能力は確実に向上しており、装甲艦を作ろうと真剣に取り組めば、間違いなく十分に保護された艦船が誕生するだろう。問題は、パッシブ・システムは、巡航ミサイル、魚雷、弾道ミサイル、長距離砲など、さまざまな攻撃から艦船を守る必要があるということだ。艦船をこれらの脅威から十分に保護し続けることは、反アクセス/領域拒否(A2/AD)状況で直面することが予想されるすべての脅威から艦船を保護することになり、コスト高になる可能性が高い。また、かつての戦艦は、さまざまな部品に大きなダメージを受けても航行を続け、戦い続けることができたが、現代の戦艦は、はるかに繊細で、深く統合された技術を搭載している。


結語


 重装甲大型艦がA2/ADのジレンマを解決する可能性は低い。 しかし、効果的な防御システムを備えた大型艦船は、極めて致命的な攻撃システムを多数組み合わせることで、対アクセス・システムのシステムを打ち負かすことができる。この意味で、「戦艦」が復活する可能性はあるが、それは戦列艦というよりは、古典的なモニター艦(陸上システムと戦うことを目的とした)に近い役割を果たすだろう。そして、これら新しい「戦艦」は、被弾を完全に避けるというよりも、被弾を吸収する能力で残ることになるだろう。■


Bring Back the U.S. Navy's Iowa-Class Battleships? The Idea That Won't Go Away | The National Interest

by Robert Farley 

February 17, 2024  Topic: Security  Region: Americas 


2024年2月19日月曜日

フーシは無人水中機も準備していた。米軍の事前攻撃で実行は阻止したものの、紅海方面の海上交通には依然として不安が消えない。世界経済への影響も無視できない

 


Houthi

The Navy USS Carney defeats a combination of Houthi missiles and drones in the Red Sea, Oct. 19. (Mass Communication Specialist 2nd Class Aaron Lau/U.S. Navy).


米軍がイエメンのフーシ支配地域を攻撃、ミサイルと水中ドローンを破壊

イエメン人グループが攻撃用に水中ドローンを用意したのは初の例だ 

 

軍はイエメンにおいて5つの標的を攻撃し、フーシ派が使用する武器を破壊したとCENTCOMが本日発表した。CENTCOMは、これまでの行動と同様、紅海を航行する船舶を守るための「自衛攻撃」と称した。▼今回の攻撃は、対艦弾を搭載した3基の移動式ミサイル砲台と、2種類の海軍ドローン(無人の水中機と水上機)を標的とした。▼CENTCOMによれば、フーシ派は複数形式のUSVを保有しており、何度か民間船に発射する構えを見せていたが、10月に船舶への攻撃が始まって以来、UUVを準備したのは今回が初めてだという。▼「CENTCOMは、対艦巡航ミサイル、無人水中装備、無人水上装備をイエメンのフーシ支配地域で確認し、それらがこの地域の米海軍艦船と商船に差し迫った脅威をもたらすと判断した」とCENTCOMはソーシャルメディアに投稿した声明で述べた。▼イエメンのどこを攻撃したのか、どのような軍備で攻撃したのかは発表がない。▼この攻撃は、フーシ派がイギリスの民間船を攻撃したと主張した後に行われた。▼英国海事貿易運行本部は、同船がミサイルで攻撃され、至近距離で爆発したが、乗組員は全員無事であることを確認した。▼CENTCOMによれば、この船はMTポルックスで、デンマーク所有だが、パナマ船籍で、パナマ国旗で航行していた。▼火曜日、フーシはイランに穀物を運ぶギリシャ船にミサイルを撃ち込んだ。攻撃が小康状態になって以来、イエメンへの攻撃とイエメンからのミサイル発射が再開されている。▼フーシ派は、無人機、巡航ミサイル、装甲車、F-5タイガー戦闘機など、多種多様な兵器を保有しているが、無人水中艦船が確認されたのは今回が初めてだ。▼その性質上、いったん発射されると探知が難しくなる。▼紅海とアデン湾でアメリカ軍が阻止したフーシ派の攻撃のほとんどは、空中からのものだった。▼フーシ派は、首都サヌアなど主要都市を含むイエメンの大部分を実効支配している。米英両国はこの2ヶ月間、サヌアなどを空爆している。▼米国を含む世界中の海軍は、海上ドローン能力を拡大している。ドローンは偵察に使用され、米海軍のドローンの場合、拿捕の対象となることもあるが、米国がテストしているように攻撃行動にも使用できる。▼USVやUUVのような海上ドローンは非常に効果的である。▼ウクライナは、黒海でロシア船舶に対する航空ドローンとの連携攻撃でそれらをうまく利用し、複数の船舶に大損害を与えた。■ 


https://taskandpurpose.com/news/us-forces-yemen-houthis-drones-uuv-usv/


米連邦議会の議員が目を通す中国海軍力の整備状況レポートから要約をご紹介。週刊誌記事で政府を追求するどこかの国の議員とレベルが違ってくるのは当然か。

 いつも思うのですが、米国連邦議会の議員にはこうした調査報告が定期的に提供され、判断の材料となっているのですね。週刊誌ネタで政府を追求できる日本の国会とは大違いですね。では、日本にも専門の調査部門が必要でしょうか。残念ながら現在の国会議員の資質をながめると、どんな形の報告であれ、受け入れがたいものについては拒絶し、事実を事実として受け止められる方は極めて少ない気がします。指導者の資質が国民の資質を反映するという指導者原理が正しく働いている気がします。USNI Newsの記事のご紹介です。

以下は、2024 年 1 月 30 日付の米国議会調査局の報告書「中国海軍の近代化: Implications for U.S. Navy Capabilities - Background and Issues for Congress」の抜粋である。

報告書より

海軍近代化を含む中国の軍事近代化は、米国の国防計画と予算編成上の最重要課題である。中国の海軍近代化努力は、1990年代初期から約30年間進められており、中国海軍ははるかに近代的で能力の高い部隊へ変貌してきた。中国海軍は、中国近海地域で強大な軍事力であり、西太平洋、インド洋、ヨーロッパ周辺海域の広範な海域で、多数の作戦を展開している。

中国の海軍は、東アジアで最大で、2015年から2020年にかけて、戦闘艦艇数で米海軍を上回った。DODは、中国海軍は「主要な水上戦闘艦、潜水艦、外洋水陸両用艦、水雷戦艦、航空母艦、艦隊補助艦を含む370隻以上からなる戦闘力を持つ世界最大の海軍である」と述べている。特筆すべきは、この数字には対艦巡航ミサイル(ASCM)を搭載する約60隻の紅稗級哨戒艇が含まれていないことだ。中国海軍の戦闘艦艇は、2025年までに395隻、2030年までに435隻に増加すると予想される。

これに対して米海軍は、2024年1月29日現在、292隻の戦闘艦艇を保有しており、2024年度予算提出案では、2030年度末までに290隻を保有すると予測している。米軍当局者やその他のオブザーバーは、米国の造船産業の能力と比較した中国の造船産業の能力、そしてその結果としての中国海軍と米海軍の相対的な規模と能力に関する傾向で懸念や警戒を表明している。

中国の海軍近代化努力は、艦船、航空機、兵器、C4ISR(指揮統制、通信、コンピュータ、情報、監視、偵察)取得プログラムのほか、兵站、ドクトリン、人材の質、教育訓練、演習の改善など多岐にわたる。中国海軍には一定の限界と弱点があり、その克服に取り組んでいる。海軍近代化含む中国の軍事力近代化は、とりわけ、必要とあらば台湾情勢に軍事的に対処すること、中国の近海地域、特に南シナ海をより高度にコントロールまたは支配すること、中国の商業海上連絡線(SLOC)、特に中国とペルシャ湾を結ぶSLOCを防衛すること、西太平洋における米国の影響力を排除すること、地域の主要国および世界の主要国としての中国の地位を主張するための能力を開発することが目的と評価されている。台湾やその他の問題をめぐる中国近海での紛争への米国の介入を抑止したり、そうでなければ、介入してくる米軍の到着を遅らせたり、その効果を低下させる力である。

米海軍は中国の海軍近代化努力に対抗すべく、多くの行動をとってきた。また、一般的なプレゼンス作戦、訓練および開発演習、インド太平洋における同盟国およびその他国の海軍との関与および協力を維持または増加させ、海軍の将来的な規模を拡大した。新しい軍事技術を開発し、新型艦船、航空機、無人装備、兵器の調達をめざし複数のプログラムを開始、増加、または加速させ、中国の海上A2/AD勢力に対抗する新しい作戦コンセプトを開発し、今後数年間、無人装備の使用を大幅に拡大することを特徴とし、分散型の艦隊構造への移行を示唆している。議会にとっての課題は、バイデン政権が提案した、中国の海軍近代化努力に対応する米海軍の計画、予算、プログラムを承認するか、拒否するか、修正するかの選択である。■

報告書原文のダウンロードはこちらから。

Report to Congress on Chinese Naval Modernization

https://news.usni.org/2024/02/01/report-to-congress-on-chinese-naval-modernization-20

U.S. NAVAL INSTITUTE STAFF

FEBRUARY 1, 2024 3:41 PM