2022年5月1日日曜日

主張 中国共産党体制を内部崩壊させるため中国国民の心をつかめるかが米国西側のこれからの課題だ

 

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中国人の心をつかむ戦いに勝利する

 

経済的自由、法の支配、財産権、宗教の自由などの理念が、党の提示より大きな利益を中国国民にもたらすとアメリカが示せれば、中国共産党の正統性は脆弱になる。

 

国の台頭に対し米国は技術やインフラ投資を拡大し、軍事資産をアジアにシフトし、同盟関係を強化するなど、世界の指導力を維持する措置を講じている。しかし、あくまで防衛的なものであり、米国の立場を弱めたい中国に対抗しているにすぎない。「攻め」の発想はないようだ。つまり中国人民の中国共産党(CCP)への支持を弱め、政権を内部から崩壊させる発想はない。冷戦終結の鍵は、「攻め」の戦略だった。

 

 

冷戦勝利の理由から中国対応を考える

 冷戦時の戦略には、ソビエト政権の最も脆弱な部分、すなわち国内での正当性を損なうねらいがあった。軍事力と同盟関係で侵略は抑止できたが、資本主義、法の支配、民主主義、人権といった概念で鉄のカーテンの向こうの人々の心をつかむのが時間と空間を稼ぐ防御的な手段であった。2つの体制の違いが明らかになり、ソ連のエリート層や国民をゆっくりと魅了していった。やがて、共産主義体制は信頼を失い、体制は内部崩壊した。

 今後数十年間は、中国共産党と長期にわたる戦いが繰り広げられる。中国の経済力、米中の相互依存関係、両国の歴史と文化の隔たりを考えれば、今回の競争の性質が異なるのは必至だ。とはいえ、経済的自由、法の支配、財産権、信仰の自由などの理念が、党より大きな利益を中国国民にもたらすとアメリカが示せれば、中国共産党の正当性が国内で脆弱になる。

 党=国家の経済運営を中国国民は是認しているが、威圧的な姿勢は多くに負担であり、予測不可能な事態を引き起こす原因となっている。例えば、最近のハイテク企業向けの取り締まりは、企業家や経営者を神経質にさせ、精神を鈍らせ、富や活動を海外に移す方が安全だと思わせている。一方、草の根活動で多数が拘束され、何百万人が市民活動の制限を認識し、何千万人が信教の自由で制限を受けている。2012年、習近平が政権についてから、こうした傾向は悪化し、現在の中国は1990年代後半から2000年代より自由度がはるかに低くなっている。

 習近平の積極的な党支配は、党と国民の間に楔を打ち込んだ。楔はどのような形をとるのだろうか。米国は、中国の経済パフォーマンスを低下させ、中国国民に選択肢を伝えることで、CCPの正統性を弱めることができる。米国は、CCPを支える資金の流れを抑制し、抑制を行動に結びつけ、中国のエリート中間層の移住に門戸を開き、中国語メディアを創造的に使い国民に訴えかけるべきだ。国民感情を変えるのは、CCPの情報統制を考えると容易には行かない観があるが、影響力の経路を的確に選択すれば可能だ。党=国家の体制と強さを考えると、短期的には大きな成果は得られないだろう。むしろ民族主義的な反動と抑圧を更に招くかもしれない。だが、不満が広がれば、党は方向転換を迫られ、結束と決意が弱まる。

 

CCPは国内の不満表出を恐れる

 

 中国共産党は、旧ソ連のように自国の統治モデルを世界に普及させる大戦略は持っていないが、自国民の高い支持を維持するため、中国の特色ある社会主義と呼ぶモデルの優位性を国内で証明することに躍起だ。中国共産党はソ連共産党をモデルとし、積極的な援助を受け建設されたマルクス・レーニン主義政党であり、1921年の創立以来、中国国民の心をつかむ戦いを続けてきたが、2012年に習近平が政権をとってから、その努力が一層強まっている。

 中国共産党の立場からすれば、国内で正当性を求める戦いは、党による統治が他より優れている(道徳的に優れる)、より良い成果、特に物質的繁栄をもたらしていると示すことで達成される。民衆のニーズや不満に対し、パフォーマンスなどで党のモデルが最善だと「証明」し、ナショナリズムや反外国感情を利用して人気を高め、情報、教育、娯楽を統制し、社会に流れる物語をコントロールし、強固な規制と安全機構で市民社会さらに集団行動を制限することで、多くのレベルで「勝利」を目指している。過去数十年の間にほぼゼロから数億人規模へ急拡大した都市中産階級の支持を得ることは、こうした層が国際情報に接し、不満表明の能力が高いことを考慮すれば、特に重要と考えられている。

 中国におけるな正統性の歴史的概念(王朝がどれだけ効果的に統治したかにより、統治を保持あるいは喪失するのが天命)、現代の物質的繁栄の概念、さらに共産主義の理想を反映し、ブルース・ディクソンBruce Dicksonは、CCPの正統性は「被治者の同意ではなく、国内を近代化する能力に基づく」と確信している。近代化とは安定して力強い経済成長、生活水準の向上、貧困の減少の実現を意味する。近年、中国共産党の目標は、より良い環境、より強い国際的地位、さらに中産階級の3つの懸念事項つまり腐敗の減少、格差の縮小、道徳水準の向上に広がっている。

 

情報統制の背景

 

 CCPは人気を高めるため、教育、報道、映画でナショナリズムのメッセージを吹き込み、国民が党を「最高の愛国的勢力、民族の誇りの保護者」だと認識させるように仕向けている。学校では中国共産党が独立を確保し、屈辱の世紀(1839-1949)を終わらせ、国家統一に果たした役割を強調する愛国教育を取り入れている。映画も同様の役割を担っている。趙馬Zhao Ma が言うように 

 中国共産党は長い間、映画によるプロパガンダの重要性を認識してきた。映画は、怒りや思いやりといった感情を呼び起こし、教訓的なメッセージを伝える絶大な力を有する。映画は教育し、興奮させる。党による「情緒活動」の促進に不可欠な道具だ。

 しかし、民族主義勢力の扱いを誤れば、あるいは党の利益に反する行動に駆り立てられれば、危険であることをCCPは認識している。

 情報統制は、ソ連共産党のように、党の成功例を強調し、失敗例や党の立場を損なう真実や物語の報道を制限することにより、党の立場を強化するねらいがある。この手法は、COVID-19パンデミックにも見られた。CCPは、まず地方当局への批判を許し、危機に対処できるようになると、情報の独占を利用して、米国や西側諸国と比較して、自らのCOVID-19への対処が成功したと喧伝した。さらに国民が党による対応を肯定的にとらえるように、本やテレビ番組が制作された。異なる見解、あるいは複雑な描写は封じられた。

 蕭強Xiao Qiangは次のように説明する。

 中国には政治兵器になった検閲システムがあり、洗練され、組織化され、調整され、国家によってサポートされている。単に何かを削除するためだけではない。また、物語を構築し、巨大な規模であらゆるターゲットに照準を合わせる強力な装置もある...非常に大きく、他の国にはない機能だ。

 習近平が政権を握る前の10数年間、新聞は政策に批判的な調査記事を掲載し、弁護士は法律と国民の力を使い市民の権利を拡大し、知識人は政治改革をオープンに議論できていた。

 党は早くから世論管理におけるサイバースペースの重要性を認識し、世界と全く異なる道を歩んできた。欧米がグローバルなインターネット統合を勝ち取ったのに対し、中国共産党は外部からの情報流入を規制するためグレートファイアウォールという独立ゾーンを設け、外国企業の関与を制限した。これにより、中国共産党はネット上で言論を操作し、自分たちの真理を強制し、世論を形成できるようになっている。アメリカの巨大インターネット企業フェイスブック、ツイッター、アマゾン、グーグルは、いずれも中国で存在感を示していない(アップルは自社でコンテンツを制作せず、例外的存在だ)。中国のインターネット規制機関、中国サイバースペース管理局のある官僚が「インターネット上に流出したり、社会に深刻な悪影響を与えないよう、情報を常時コントロールするのが目的」と述べているのがハッカーグループが流出させたメッセージで見つかっている。

 こうしたツールはすべて、中国の強固な規制と内部セキュリティ機構が支えており、言論の自由を制限し、市民や組織を監視し、抗議活動を局地的にとどめ、大規模かつ組織化された活動に発展しないようにしている。これにより、集団行動は常時制約される。たとえ地方レベルの特定の問題(汚染工場や特に腐敗した役人に対する動員)でも、脅威に発展することは許されない。香港をコントロールする党の能力と波及効果への懸念から、中国共産党は2020年に香港にも同じ対応を導入した。

 国内で党が強い立場を保持しているのは1978年以来、中国が生活水準の向上に多大な成功を収めているためだ。調査では一貫して国民は高い満足度を示しているが、慢性的な食糧不足、貧弱なインフラ、政情不安の記憶のない世代は、快適さを当然と考え、継続的な改善を期待するだろう。これは、高度な学位を持ち、国際的な経験を積み、物質的なニーズが容易に満たされる、増え続ける都市部の中国人に特に顕著だ。中国の民意を長期間追跡する著者が結論づけるように、「効果的な政策で政府高官を賞賛する市民は、政策の失敗が自分や家族に直接影響を与えれば、政府高官を非難する」。あるいは、Dingxin Zhaoが言うように、「パフォーマンスの正統性がパフォーマンスに依存しすぎている。国民との関係は......取引的なものだ。人々は......一日一日、一件一件判断している」。

 

中国国民の意見を把握できるか

 

 中国の環境下で市民の意見を推し量るのは困難なため、米国アナリストは中国共産党のメッセージを観察する方が早いとする。実績が悪化し、疑問視する考えが出回れば、CCPは脆弱性を感じ、西側からの代替的な真実が脅威となるとを積極的に警告してきた。2013年、中国共産党中央委員会総局は、立憲民主体制、普遍的価値、市民社会、報道の自由、経済自由主義など「誤った思想傾向」で公職者に警告を発するため、内部機密文書「思想圏の現況に関する通知」、通称9号文書を回覧した。同文書では、敵対思想が党のイデオロギーを破壊する方法として、直接通じるメディア、文化製品、教育交流、他国での共産体制崩壊の情報、近代化が民主化につながるとの考え方、多様な価値観の推進など幅広く挙げている。

 中国共産党の正統性を高める包括的な内部戦略を外部からサポートしているのは、党の地位を守り、脅威とみなす国家や組織を弱体化させる措置だ。

 こうした努力の最も明確な表れが、党によるパブリックメッセージの「統制と抑制」だ。過去20年間、中国政府と国営メディアは世界に巨大なグローバル・メディア・インフラを構築してきた。通信技術でメディアの風景が一変した時代に、中国共産党はソ連共産党(CPSU)よりはるかに容易に国際メディアと関われるようになった。中国共産党は非常に巧妙に国際的メディアとの関わり、時には素人的であったり、手際が悪かったり、失敗もあるが、党のばくだいな資金力、国家機構、多くの党員と関連組織が支える規模で、ソビエトより広く多様な網をかけている。多くの場合中国共産党は「都市を包囲するためまず地方を利用する」発想で、ライバルが無視したり、投資を控える地域や対象(例えば、発展途上国、非英語メディア、地方自治体、小国)を包囲している。これは、中国共産党が中国内戦で弱い立場から出発し勝利できた戦略を世界的に応用したものだ。

 中国共産党は、多くの地域で中国語メディアを支配しており、米国、カナダ、オーストラリア、その他の地域に暮らす中国語話者数百万人に毎日直接接触できる。このようなアクセスは、ソビエト連邦が夢見たものだ。中国の海外居住者と海外旅行者の規模は党に同意しつつ、米国の影響を否定する存在となる。

 米国で毎日2000万人近いが利用するWeChatは、中国系アメリカ人にとって海外の家族とつながるため不可欠かもしれないが、Alex Joskeらが書くように、「検閲、情報統制、監視の実績があり、北京の目的と一致しているため懸念される」。ソーシャルメディアの支配と登録により、北京との連携を避けたいメディアも、党の利益のために行動することを余儀なくされている。

 より広範には、党はレーニン主義理論から着想を得た統一戦線United Front活動を通じ、米国やその他の地域で中国を好意的に見せる影響工作を広範に実施している。統一戦線は、ビジネス・エリートから学者、政治家に至るまで、あらゆる人々を取り込み、「党機関や党とつながった組織で構成する広大なインフラで実施し」、「党の海外影響力と干渉活動の中核」だと。Clive HamiltonとMareike Ohlbergが書いている。

 

...中国の文化に関わりたい、あるいは中国のビジネスマンと知り合いになりたいと思う影響力のある西洋人は、相手の組織が党の統一戦線の秘密の一部で、自分が働きかけられていることに気づくかもしれません。

 

中国国内に直接アクセスできるか

 

 アメリカの政治家やシンクタンクがこの問題への理解が低いのは驚くほどだ。中国や中国の戦略文化を熟知する者は皆無に近い。また、中国や中国の戦略文化に精通した者もほとんどおらず、中国語を話す者もいなければ、中国に長期滞在した経験もない。多少知識があっても、学者やシンクタンクは、自国の利益を図ること(そのためには通常、中国や中国の当局者に接触する必要がある)と真実を知ることの間の微妙なバランスで調整を迫られる。あまりにも対立的なアプローチをとると、入国ビザが下りず、中国当局から排斥される。

 その結果、学界では、議論を呼ぶ問題を避ける傾向がある。ワシントンでは、安全保障問題や中国の第三国政策(一帯一路、借款など)を研究するアナリストや学者が多く、中国の影響力行使を研究する者はわずかだ。米国議会も同様で、中国との競争に備える中国競争力法案では、産業競争と一帯一路対策の必要性を強調しているが、議会は中国メディアに言及しておらず、統一戦線の国内浸透にもっと対応できるはずだ。

 CCPの正統性を損なおうとするなら、冷戦時の成功要因を考えるべきだ。冷戦の大半の期間を通じ、この問題は焦点ではなかったが、最終的には、ソ連民衆の意見をめぐる戦いが勝利の鍵だった。ソ連、そして共産圏指導者たちは、一貫して自らの権威を、自分たちの事業の道徳性に基づかせようとした。ソ連の戦略は、共産党の体制が道徳的に優れており(例えば、貧しい人々や労働者階級の利益をよりよく代表し、よりよく奉仕する)、物質的に競争力がある(例えば、技術的、軍事的に強く、生活水準を引き上げることができる)と説得し主張できる限りは、うまく機能した。しかし、世代が過ぎ、外部から情報が入り、経済的進歩が停滞すると、イデオロギーの保持力は弱まっていった。

 ソ連のエリート層は、「力の相関関係」(双方の長所と短所の計算)が自国に有利に働くと考え、アメリカの長所(経済的活力、法の支配、財産権制度、自由、機会の広がり)を無視できたが、1980年代に相対的衰退と停滞が起こると、これらの長所が無視できないほど明白になった。軍事や設備投資に資金を振り向けたため、もともと大きかった生活水準の格差が、著しく拡大し、政治・法体系の弱点も目立ってきた。一方、アジア諸国では、資本主義や自由と権利の導入が優れた成果を上げた。こうした動きが明らかになるにつれ、ソ連共産党のシナリオは崩れ、ソ連国内で反対運動が活性化した。

 米国は、共産主義のシナリオに挑戦し、ソ連の正当性を弱めるため、さまざまなコミュニケーション・チャンネルを構築した。国際放送、パブリックディプロマシー、書籍配布、文化交流、反全体主義組織への秘密資金提供など、表向きと裏向きあわせた幅広い活動によって、ソ連の物語に代わるものを多くの人々に伝えようとした。レーガンは、1987年にベルリンでゴルバチョフに「ベルリンの壁を壊せ」と挑発し、共産主義の正統性に挑戦する演説を繰り返し、こうした活動を活性化させた。

 攻勢に転じるため、米国は中国共産党の正当性の源泉であるパフォーマンス、ナショナリズム、情報、市民社会の限界それぞれをターゲットにするべきだ。冷戦時代同様に、米国(およびその同盟国)と中国の違いを明確にする必要がある。自由と不自由、法治と人治、権利の平等と民族・性別・地理・家柄による差別、民間企業中心の経済と国家の利益促進が中心の経済の違いだ。中国共産党が米国の自己批判を利用しプロパガンダを行っているように、米国の指導者は米国の成果を誇らしく語るべきで、欠点に固執してはならない。より多くの中国人が高等教育、国際経験、物質的な快適さを身につけるにつれて、目でわかる違いがますます重要になる。党とその政策へ不満を煽ることが党内外のエリートに習主席の政策へ反発を抱かせる上で重要だ。

 中国国民への繊細なアプローチで、そのような努力を支援できる。過去にアメリカが過度なまで自己主張したことで、反米感情を刺激し、CCPがメディアやエンターテインメントの支配を通じて厳格なナショナリズムを助長したのに対し、中国国民に直接語りかけるアプローチは、改革を活性化させるだろう。この微妙なアプローチと同時に、米国は中国共産党の最大の弱点である、経済パフォーマンスに狙いを定めるべきだ。抗議行動の多くは、党の全体的なパフォーマンスよりも、公害や土地占有といった特定の不満に的を絞っている。中国への投資や中国からの購入でコストとリスクを段階的に高めていけば、中国の経済成長を抑えつつ、米国経済を混乱させずに、中国への依存を減らすことができる。その方法とは、軍事やウイグル虐殺に関連する企業から始め、対象を徐々に拡大し、広範な権利侵害や二重使用技術を対象にした制裁、時間をかけ関税を増加させ、監視と投資制限を強化することだ。アメリカの輸入品の約半分を対象としたトランプ政権の関税措置は、COVID-19以前だが「中国の輸入品が激減し...購入先が他国にシフトしている」と指摘されていた。

 制裁や関税を人権や企業統治に関する基準と結びつけることで、中国共産党の政策とアメリカの行動の関連性を明確にし、中国共産党の政策がいかに中国の企業や中産階級、国家の利益に反しているかを浮き彫りにできる。バイデン政権が、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、インドなどアメリカの同盟国に、アメリカに同調した並行法案を通すよう説得できれば、効果はさらに大きくなる。共産主義国との貿易関係を人権記録と結びつけた1974年のジャクソン=ヴァニック修正条項Jackson-Vanik Amendmentを復活させれば、対ソ連冷戦時代のように貿易特権を一部問題と結びつけることができる。中国への適用は、1970年代後半から米中関係の進展に伴い毎年免除され、2002年の世界貿易機関(WTO)加盟を機に終了したが、更新の過程で中国の人権問題が注目された。特に1989年の天安門事件の後、中国の人権問題が議論を呼び、議会で権利放棄を覆すという声が出てきた。

 これと並行して、米国は中国投資にかかるコストとリスクを高める必要がある。急速に拡大する環境・社会・ガバナンスの分野を、大量虐殺行為、宗教の自由の制限、市民社会の制限なども包含するように規制すれば、投資家は中国を投資先として敬遠するようになる。現在、投資機関は中国共産党の弾圧を是認し、何の懸念もなく中国に集まっている。

 中国共産党が情報源を遮断しても、こうした措置は中国の中流階級と上流階級に伝わるはずだ。たとえ党が自分勝手なシナリオで情報を包み込もうとしても、否定するのは難しいだろう。

 中国国内の視聴者に到達する最良の方法の一つは、国外の中国語メディアを利用することであり、党の直接的な支配の及ばないメディアを使うことだ。そのため、米国と同盟国では、中国共産党がメディアに及ぼす影響力を排除することが不可欠となっている。つまり、党や統一戦線と関係がある個人や団体の所有を制限すること、WeChatへは方針を変えない限り禁止すると脅し、変えない場合は実行すること、民間企業による中国政府関連の放送や記事の使用を停止すること、強力な独立系媒体(BBC中国語、Apple Dailyなど)に市場拡大や参入を奨励すること、などが挙げられる。中国共産党の情報源に代わる信頼に足る情報源の記事配信を助成すること、中国語メディアに独立資金源を確立すること、中国語ソーシャルメディアを積極的に活用すること、メディア空間で働く組織や個人を党や工作員が脅迫しないようセクター全体を綿密に監視すること、などがある。市場がこうした解決策を提供する可能性は低いため、政府の行動が必要だ。台湾はかつて中国の在外華人社会で重要な役割を果たし、中国共産党によるメディア潜入で影響を及ぼす試みへの対抗手段について、経験から必要知識をすべて有しているので、有用なパートナーとなり得る。同盟国にも同様の措置を奨励するべきだ。

 たとえば、ラジオ・フリー・アジアを強化し、短波ラジオ(中国国境のすぐ外側にある国から放送している「希望の歌」など)、仮想プライベート・ネットワーク、各種の秘密チャネルなど新しい手法を活用して、党による外部情報の妨害・遮断の努力を克服可能な方法で中国国民に到達できる。メディアの状況が大きく変化し、中国共産党が情報をコントロールできるようになったため、冷戦時代とは到達範囲が異なるものの、十分なクオリティがあれば、主要な視聴者(たとえば都市の中間層)に対して、フィルターを通さないニュースや別の真実を伝えることが可能だ。これによって、虐待(汚職、官僚による虐待など)や行動(ストライキなど)の報告や、国外の別の意見(ジョー・バイデン大統領、反体制派など)が、はるかに多くの読者に届き、現政権へ不満が広がる。

 最後に、中国エリート層の移住を促進するべく協調努力が必要だ。移住は最も強い不満の表れで、優秀な人材を国外に流出させる可能性がある。米国は、高度技術を有する人々のために、ボーナス、住宅補助、家族支援などを提供し、同様に高度な技術を持つ外国人の移住を誘致する中国の制度に似たプログラムを開発すべきだ。このような機会を利用するエリートが増えれば、国内では海外の方が暮らしやすいという意識が高まり、党のメッセージの正統性が損なわれていく。一部分野では安全保障上の懸念のため、制限や監視が必要かもしれないが、大半は機密性のない分野で働き、その才能で米国は豊かになる。

 

米国、西側の課題

 

 米国も成功をめざすべきだ。アメリカの努力が実を結び、中国共産党が中国国民から支持を失うことを恐れるようになれば、どのようなことが起こるだろうか。中国共産党は、上記の4つの戦略を(戦術を変えながらも)長い間堅持してきたことから、おそらく倍返しするだろう。一方で、民間部門に経済的自由を与える改革や、外国の要求(例えば、選択的人権問題)を満たす改革、価格を制限したり企業に国益(あるいは党益)を強制する統制などを通じて、生活の安全を確保するため必要な措置を取るだろう。後者については、不平等を助長し、生活コストを上昇させる方法で利益を上げているとみなされる民間企業(例えば教育分野)への集中的な攻撃がすでに見られており、習近平政権下で実行の可能性が高い。

 一方、中国共産党の対応としては、現在すでに実施しているようにメディアを通じた民族主義的な感情の扇情、あるいは海外で行動を起こすことが考えられる。後者では、日本(常に格好の敵)やオーストラリア(アメリカの手先)との緊張を煽ったり、インドや南シナ海など国境紛争で攻撃的な態度を取るなど、リスクは限定的でも国内で最大限の効果を発揮するものになりそうだ。一方、中国政府はソーシャルメディアなどで情報統制や市民社会への統制を強めるだろう。

 米国にとって最大のリスクは過剰反応や中国に突発的な行動(不必要な紛争を誘発する可能性)を強いる、妥協するのいずれかだろう。中国共産党が弱体化すれば、暴挙に出るか、交渉方法を見直すか(中国は経済を利用して、野心的な対話、枠組み、合意を作り出してきた)、いずれかになると思われる。米国は、粘り強さ、忍耐力、自制心を駆使し戦略を完遂すべきだ。

 米国が中国の挑戦に立ち向かい、世界各国や中国人を取り込んだ幅広い連合体を構築するためには、CCPの正統性を弱めることに焦点を当てることが攻撃で重要な要素となる。経済的相互依存関係を考えれば、政策の変更は短期的に一部の利益を犠牲にし、最大の利益を得ている層(ウォール街の銀行や中国から調達中の企業など)の抵抗を克服する必要がある。しかし、中国へ挑戦するのは、米国の大きな国益のためであり、これからの米国と世界の安全保障のため不可欠と考えるべきだ。■

 

Winning the Battle for Chinese Hearts and Minds | The National Interest

by Seth D. Kaplan

April 30, 2022  

Topic: China  Region: Asia  Tags: People's Republic Of ChinaPeople's Liberation ArmyTaiwanXi JinpingGreat FirewallPropagandaInformation Warfare

 

Seth D. Kaplan, a lecturer in the Paul H. Nitze School of Advanced International Studies (SAIS) at Johns Hopkins University, lived in China for seven years and is an expert on political transitions.


ウクライナ行きのM113装甲兵員輸送車は州軍部隊の現役装備。かなり年季が入っているがまだまだ使用に耐えるようだが.....州軍と言ってもあなどれない。

 

ドイツ、ホヘンフェルスの統合多国間即応性センターでの演習に投入した第四歩兵連隊第一大隊のM113装甲兵員輸送車Jan. 31, 2022. (Spc. Nathaniel Gayle/Army)

 

 

防総省はウクライナへの装備品送付で、州軍に目をつけ、少なくとも5州が旧式M113装甲兵員輸送車を移動中だ。

 

4月29日時点で、インディアナ、ミズーリ、ノースカロライナ、オハイオ、ウェストバージニアの各州知事は、国防総省の要請をうけ、各州で保有するM113をウクライナに引き渡すと発表している。この援助は、ジョー・バイデン大統領が4月13日に発表した、M113(200両)を含む8億ドルのパッケージの一部となる。

全米州軍協会のジョン・ゴヒーン John Goheen報道官は金曜日、「州知事は州軍の最高司令官として、実施を誇りに思っている」と述べた。

米陸軍は、ベトナム戦争の戦場タクシーM113は時代遅れと考え、2006年に購入を中止した。ドンバスでの戦闘は雨と泥の多い春を迎えるが、M113は軌道式で、かつエイブラムス戦車より軽量なため、ウクライナ軍に輸送と防御を同時に提供できる。

「戦場では機動性が必要で、防御つきの機動性はさらに優れています」(ゴヒーン)。

インディアナ州軍は要請を受け、キャンプ・アタベリーでM113の点検、修理、ロードテストを行った。その後車両はトラックに乗せられ移動した。

インディアナ州軍幕僚長であるジャスティン・マン准将Brig. Gen. Justin Mannはビデオの中で、「大統領の指示で、ウクライナに軍事装備を提供するため輸送を命じられた」と述べた。「完全点検を行い、すべての準備を5日未満で整えた。メンテナンス担当が素晴らしい仕事をし、準備できたのは、記念碑的で、至難の業だった」

木曜日にノースカロライナ州のロイ・クーパー知事Gov. Roy CooperがM113に関し最新の発表をした。

「ウクライナへ攻撃を続けるロシア軍の戦争犯罪の報告には、心を痛めており、真剣な行動が求められている」「ノースカロライナはウクライナの人々と共にあり、民主主義と自由の戦う彼らを支援する」。

ノースカロライナ州軍は、M113は万能かつ実用的な車両で、州警備隊がイラクに展開したこともあり、今も使われていると発表。

マット・ハンドリー中佐 Lt. Col. Matt Handleyは、「全車両が稼働している」と語った。「M113は長年かけてアップグレードされており、まだ機能しています」

オハイオ州のマイク・デワイン知事Gov. Mike DeWineは、M113を寄贈するだけでなく、州の法執行機関が非営利団体「ウクライナ支援基金」を通じ、弾道・暴動用ヘルメット75個、防護服840個もあわせて送ると発表した。

これとは別に国防総省は、2月にウクライナを離れたフロリダ州軍部隊が、ドイツおよび非公開の国で、ウクライナ軍にレーダーや戦術車両取扱の訓練を続けていることを認めた。

「州軍は装備や訓練を迅速に支援できる」と州軍局のウェイン・ホールWayne Hall報道官は電子メールで述べている。「4月13日の大統領の承認の2日後に、装備品の出荷が始まった」。■

 

National Guard’s aging battle taxis find new use in Ukraine fight

By Joe Gould

 Apr 30, 06:50 AM

https://www.defensenews.com/pentagon/2022/04/29/national-guards-aging-battle-taxis-find-new-use-in-ukraine-fight/

2022年4月30日土曜日

スウェーデン、フィンランド両国のNATO加盟を招いたのはプーチンの誤算、それとも織り込み済みのリスク?

 

 

 

 

 

ィンランドとスウェーデンのNATO加盟は可能性が高い。ロシアのウクライナ侵攻は、両国で世論を一変させ、2004年にバルト三国とバルカン諸国が加盟して以来、初の大幅拡大となる政治プロセスが開始された。NATOは、プロセス開始にオープンで、意欲的にも見える。ではなぜここにたどり着いて、どこへ進むのだろうか。

 

 

 

歴史の経緯  

フィンランドとスウェーデンは、それぞれ独自に中立の道を歩んできた。ナポレオン戦争終結後、スウェーデンはヨーロッパの勢力均衡政治に深く関与するのを避けてきた。第一次世界大戦、第二次世界大戦双方で、西側連合国、枢軸国双方から脅威を受けても、スウェーデンは参戦を回避した。スウェーデンの中立へのこだわりは、NATOとの関係が深まった現在でも根強く残ったままだ。

 一方、フィンランドは、1809年のフィンランド戦争でロシアがスウェーデンに勝利した後、ロシア帝国に帰属することになった。大公国としてのフィンランドは、ロシア帝国の一部として準自治権を長く享受した。第一次世界大戦末期にロシアが崩壊すると、フィンランドは独立を宣言した。フィンランドはドイツ皇太子を君主に選出したが、ドイツが間もなく連合国に降伏したため、協定は終了した。その後20年間にわたりフィンランドは独立を保ち、ソビエト連邦を警戒しながら平和を保っていたが、1939年、ロシア侵攻で冬戦争が始まった。1941年6月、敗れたフィンランドはナチスドイツのソ連攻撃に加わったが、最終的にはソ連軍が勝利し、1944年に降伏を余儀なくされた。フィンランドは民主制度の維持を許されたが、外交政策は大きな制約を受けることになった。

  

変化

中立は、領土拡張戦争に反対する規範がある限り、機能する。だが規範が破綻すると、各国は別の選択肢の模索を迫られる。この問題に対するロシア外交は軍事的、政治的な脅威でフィンランドとスウェーデンをNATOにさらに接近させてしまった。

 フィンランドとスウェーデンは、過去20年間、NATOと幅広く協力してきた。両国の軍事組織はNATO諸国の軍事組織と連携し、経験を積み、装備はその他NATO加盟候補国の装備よりも適合性が高く効果的であることは間違いない。スウェーデンとフィンランドは、スカンジナビアの中立性に関して長く協力関係を築いており、NATO加盟の機会が生まれるかを予想していたほどである。従って、両国が足並みを揃えて前進することには全く違和感がない。

 

資産か負債か

エコノミスト誌が指摘しているが、フィンランドのNATO加盟は、ロシアとの陸上国境線を一気に倍増させることになる。これにより、極北のロシアの立場は、相当脆弱になる。スウェーデンの加盟は、ゴットランド島を同盟の責任範囲とし、バルト海におけるロシアの海軍作戦を大きく狭める効果を生む。スウェーデンもフィンランドも大規模かつ近代的な軍を保有しており、スウェーデンの場合は欧州最大かつ最も洗練された防衛産業基盤に支えられている。スウェーデン国防省は、欧州全域の防衛ネットワークに緊密に統合されているが、NATO同盟に直接参加することで、統合度をさらに深めるだろう。 

 問題はすべて機会になる。フィンランドとスウェーデンが同盟に加われば、ロシアの脅威を受ける地域が増えると指摘するアナリストもいる。しかし、ウクライナでのロシア軍の活動ぶりを見る限り、フィンランドとスウェーデンは「資産」の側にしっかりと立っている観がある。フィンランドがF-35Aの64機導入を決定したことで、ロシアは北方における脆弱性が大幅増加した。また、有事にはフィンランド国内飛行場にNATO加盟国の航空機を投入する可能性もあり、ロシアは大きなリスクにさらされる。

 最後に、フィンランドの完全加盟で、NATOはロシア北方へのアクセスを現在より拡大する。 NATOは今でもノルウェーの北極圏を利用しているが、フィンランドへのアクセスにより、北部のロシア軍の配置、特にロシア北方艦隊の基地や弾道ミサイル潜水艦部隊の情報を入手する可能性が増える。 

 

NATOがやってくる

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟の決定は、重大だが驚くべきことでもない。モスクワがこの動きをウクライナ侵攻の結果として予期していたかは不明だが、お決まりの脅しはしても、ウクライナ加盟の可能性のときほど攻撃的な反応は見せていない。ロシアはフィンランドとスウェーデン両国の加盟を、ウクライナとの戦争に伴う、必要コストとして「織り込み済み」にしているのかもしれない。またロシアは軍事力を行使する明白な意志を示すことで、両国への抑止効果を期待していたのかもしれない。スカンジナビアでNATOが陣容を完成すると、ロシアとの長期的な対立が確実になっても、現時点で、将来の関係が大きく暗転するとは想像しがたい。

 底流からは逃れられない。プーチンの侵攻により、ウクライナで決定的に勝利しても解決できないほどロシアの安全保障を低下させている。■ 

 

The Price Of Putin’s Ukraine Invasion: Sweden And Finland Join NATO

https://www.19fortyfive.com/2022/04/the-price-of-putins-ukraine-invasion-sweden-and-finland-join-nato/

ByRobert FarleyPublished8 mins ago

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).

In this article:featured, Finland, NATO, NATO Expansion, Putin, Russia, Sweden, Ukraine


ウクライナ戦:黒海のロシア海軍はイルカで特殊部隊の水中侵入を阻止?動物愛護勢力が黙っていていいのか?

 


H I Sutton Illustration for USNI News

 

シアが訓練されたイルカを黒海の海軍基地に配備して防御させていることがわかった。

 

 

 ロシア海軍は、セヴァストポリ港の入り口にイルカの檻を2つ設置した。衛星画像を調べたところ、イルカ檻はウクライナ侵攻の始まった2月に移設されていた。

 セヴァストポリは黒海にあるロシア海軍の最重要の海軍基地で、イルカは、米国とロシアがともに訓練してきたダイバー対応に使用され、ウクライナ特殊部隊の港内侵入と軍艦への妨害工作を防ぐのがねらいか。

 衛星写真を見ると、港内部には、ウクライナのミサイルの射程圏外とはいうものの、海中破壊工作に弱いロシア海軍の重要艦船が多数存在している。冷戦時代、ソ連海軍は黒海でイルカ訓練含む、海洋哺乳類プログラムを開発した。その部隊はセヴァストポリ近郊のカザチヤ・ブフタを拠点と、現在もその場所に存在する。

 1991年のソビエト連邦崩壊に伴い、同部隊はウクライナ軍に移管され、かろうじて存続してきた。2014年のロシアによるクリミア併合で、同部隊はロシア海軍の管理下に置かれた。その後、海洋哺乳類プログラムが拡張され、運用が再開された。

 

H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

  これは、ここ10年間にわたるロシアによる海洋哺乳類プログラムへの再投資の一部で、黒海艦隊の他北極圏での別の作戦も含まれる。

 北極圏では、ロシア北方艦隊は各種海洋哺乳類を使用している。シロイルカとアザラシは、黒海で使用されているバンドウイルカより脂肪層が厚く保温性が高いため、寒さ対策に優れている。

 近年は北極圏での活動も活発になっている。海軍の秘密基地であるGUGI(深海研究部Main Directorate Of Deep Sea Research)のオレニア・グーバにもシロイルカの檻が設置された。この組織は、ロシア軍の重要な海底諜報資産を担っているとされる。

 2019年4月23日、ノルウェー北部に訓練されたシロイルカが姿を現した。BBCによると、地元では「Hvaldimir」と呼ばれており、このクジラはロシア海軍プログラムから逃げ出したと考えられている。

 ロシアで海洋哺乳類の利用が増える兆しを見せているのは、北極圏だけではない。衛星写真によると、2018年には黒海艦隊のイルカが、シリアのタルタスにあるロシアの地中海海軍基地に数カ月間配備されていた。その際の配備に使われた移動式囲いは、現在セヴァストポリ港に配置されているものと非常によく似ている。

 ウクライナがセヴァストポリで水中から特殊作戦を計画しているかは不明である。しかし、イルカはダイバーに対する有効な防御手段として、海軍のアナリストの間で広く認識されている。■

 

Trained Russian Navy Dolphins are Protecting Black Sea Naval Base, Satellite Photos Show - USNI News

By: H I Sutton

April 27, 2022 3:58 PM


About H I Sutton

H I Sutton is a writer, illustrator and analyst who specializes in submarines and sub-surface systems. His work can be found at his website Covert Shores.


米特殊作戦部隊はウクライナ戦をこう見ている。20年を対戦闘員戦に注力して、変革に取り組むが、予算増が厳しい。

 

 

シアによる2カ月に及ぶウクライナ戦から、米国の特殊作戦部門は教訓を少なくとも2つ得ている。まず、米国が過去20年で培ってきた国際的パートナーシップが、大きな役割を果たしている。そして、無人機がさらに大きな役割を果たしている。

空軍、陸軍、海軍、海兵隊の各特殊作戦司令部の指導部はいずれも、水曜日の上院軍事委員会の新興脅威・能力小委員会で証言した。公聴会の焦点は、一般的な即応性と2023年要求での予算不足分だったが、質問の多くはウクライナに集中した。

アイオワ州選出の共和党ジョニ・アーンスト上院議員Sen. Joni Ernst, R-Iowaは、「侵攻後のリスクは何か」と質問した。「EUCOM米欧州司令部のこれまでの業績とプレゼンスを拡大する必要があるのはどこか」。

陸軍のジョナサン・ブラガ中将 Lt. Gen. Jonathan Bragaは、ロシア侵攻によって、東ヨーロッパ全域で「長年にわたる世代を超えた関係」を引き続き拡大する必要性が「強調」された、と答えた。

「ロシアと中国の脅威の規模と範囲を考えると、米国だけで対応はできないだろう」とブラガ中将は述べた。「そのため、国際的なパートナーについて、更に各国の能力と能力を高めることがいかに重要であるかについて話している」。

更に、同中将はウクライナでの「多数国」の特殊作戦部隊との国際的なパートナーシップは、「語られていない物語」だと述べた。

ブラガ中将は、「今すぐ人数は挙げられないが、各国は団結している。この20年間、異なる戦場、異なる大陸で共に働き、共に汗を流し、共に血を流してきたことが、効果を出していると思う」と述べた。

海軍特殊戦司令官のヒュー・ハワード少将Rear Adm. Hugh Howardは米国の特殊作戦は「変曲点」にあると、述べた。

ウクライナは「特殊作戦の第5の時代」の象徴で、これまで20年間、米国の特殊作戦が重きを置いてきたテロ対策からのシフトだ、とハワード少将は述べた。

「テロ対策に過剰に力を注いできた」「海上領域で私たちにしかできないことをメインにするため、緊急に動いている」 

海兵隊の特殊作戦司令官ジェームス・グリン少将Maj. Gen. James Glynnも同意見だ。

「過去 20 年間に投資し開発してきたテロ対策のスキルで、転用可能なのはどこまでか。どの程度、通用するか。そして、他に何ができるようにする必要があるのだろうか」とグリン少将は発言した。

特殊作戦部隊は、テロ対策以外の将来の戦場の姿をウクライナで学んでいるが、多くは地上にはない。

陸軍のブラガ中将は、「有人機無人機がもたらすインパクトには目を見張るものがある」と述べ、無人機は陸軍が注力しているが、ウクライナの影響を受けて、米陸軍は特殊作戦に有人・無人機専用の部門を作ることを検討し、「単なる追加任務ではなく、実際の専門分野」にしたと述べた。

「ロボティクスとAIがない未来の戦場は想像できません」と、ブラガ中将は議員に語った。

国防総省の他部門と同様に、特殊作戦部も横並びの予算ですべてを行う必要がある。

アーンスト議員は、「脅威が大幅に増加していのに、SOCOMの要求は昨年並だ」と指摘し、「横ばいの予算要求は予算削減と同じだ。インフレの上昇で、さらに悪化する」と指摘した。

SOCOMの2023年度予算要求は、2020年度予算より実質的に13億ドル少ない、とアーンスト議員は述べた。SOCOMは6億5千万ドル相当の予算未計上の優先事項リストを提供している。

「毎年、近代化、即応性、人事プログラムの中で予算勧告のバランスを取ろうとしている...そして毎年不足している」と空軍特殊作戦司令官ジェームズ・スライフ中将Lt. Gen. James Slifeは述べている。「提出した予算は、各分野でのリスクのバランスを表したものだ」。■

What Have US Special Operators Learned from the Ukraine War? - Defense One

BY ELIZABETH HOWE

ASSISTANT EDITOR, DEFENSE ONE

APRIL 27, 2022


2022年4月29日金曜日

中国はこうやって途上国を自国影響圏に取り込む。ソロモン諸島で安全保障に先立ち民間航空を使った陰謀があったことが露呈。

 

                                                                                                                                AVIC


中国とソロモン諸島がソロモンを南西太平洋の航空ハブにしようと画策していたことが、2019年の覚書から明らかになった。(この記事はターミナル1に先に掲載しました)


ロモン諸島政府と中国の AVIC Commercial Aircrafの覚書が流出し、眠ったような太平洋の島国を航空ハブに変えようとした野望が明らかになった。2019年の覚書では、ソロモン諸島政府がAVICから飛行機を購入する見返りに、ソロモン諸島周辺の飛行場36箇所を改良し、ソロモン諸島と中国間に直行便を導入する提案があった。


ソロモン諸島をハブにする遠大な計画

覚書全文は、オーストラリア放送協会(ABC)が金曜日朝に報道した。

 ソロモン諸島は中国と安全保障条約を締結したことで、ソロモン諸島に中国軍が常駐する可能性が生まれ、米国、ニュージーランド、オーストラリアは大いに不快に感じているが、この覚書は今回の騒動の中で流出した。



 2019年11月15日、中国でソロモン諸島の通信・航空担当大臣Ped Peter Shanel AgovakaとAVICの最高顧客責任者Zhang Yongが署名した覚書は、以下のように述べている。


「BRI(一帯一路構想)と本MOUを通じ、ソロモン諸島は西太平洋の航空ハブになるよう希望し、ソロモンは既存の国内飛行場インフラを強化し、国営航空会社の機体のアップグレードを希望する。


「ソロモンは、ホニイラへ中国から直行便を受け入れ、地域ハブとなる地域航空構想の一翼を担うよう希望する。ソロモンはMA600/MA700やY-12等の新型機を入手し、飛行場施設を改修する必要がある。


「ソロモン諸島は、MA600/MA700航空機の運用に向け飛行場の改修、CAAC(中国民用航空局)とCAASI(ソロモン諸島民間航空局)間の検証認証の実施、および当事者Bによる当事者Aの能力開発支援を同時に行う」(同)。


AVICは、発展途上国に航空機販売のニッチ市場を築いた。写真:AVIC 


一般的水準の航空インフラのアップグレード

AVICは、北京に本社を置く中国国営の航空宇宙・防衛企業だ。結局、ソロモン諸島に航空インフラが整備されることはなかったが、大胆な極秘計画の詳細が南西太平洋地域に波紋を呼んでいる。

 第二次世界大戦の激戦地ソロモン諸島が、地政学の地図に再び登場してきた。同国を構成する1,000余りの島々の貧弱な航空インフラは、大国にとっては格好の餌食だ。

 ソロモン諸島の主要空港であるホニアラ国際空港(HIR)は2,200メートルの滑走路しかなく、ワイドボディ・ジェット機はアクセスできない。

 首都ホニアラと世界をつなぐのは、国営航空会社ソロモンエアラインズエア・ニウギニのみで、接続性の悪さも問題だ。このうちソロモンエアラインズはジェット機1機(エアバスA320-200のリース機)を保有するだけで、ブリスベン(BNE)へ週2便運航している。

ホニアラ国際空港(写真)は、ソロモン諸島で最大かつ最も利用客の多い空港である。写真 ソロモンエアラインズ


ソロモンエアラインズはMOUに入れなかった

ABC報道によると、国営ソロモンエアラインズは、極秘MoUとソロモンの航空インフラを強化するため中国資金を使用する計画に加わっていなかった。

 同社CEOブレット・ゲバースBrett Gebersは合意について知らなかったとABC取材で語った。

 「2019年の今頃、国会議員団に同行し中国に半ば強引に招待されましたが、実現しませんでした」「機体を見るという話はありましたが」

 AVICは、56席のMA60/600と74席のMA700ターボプロップに加え、各種ヘリコプター、FC-1/JF-17戦闘機を含む軍用機も製造している。AVICは、発展途上国に飛行機を販売するニッチ分野を確立している。

 中国は、中国政府とつながる民間企業を使い、対象国との貿易・経済関係を構築してから、軍事的関与など、論議を呼ぶ側面を取り込み、関係をアップグレードすることがよくある。今回流出したMOUは、中国政府が航空業界を利用する一例である。■



Leaked MoU Reveals China's Plans For Southwest Pacific Aviation Hub

BY ANDREW CURRAN

PUBLISHED 2 HOURS AGO



Source: Australian Broadcasting Corporation

Andrew Curran (2371 Articles Published)

Lead Journalist - Australasia - A Masters level education and appetite for travel combines to make Andrew an incredible aviation brain with decades of insight behind him. Working closely


NGAD有人機型の単価が「数億ドル」になる予想が出てきた。空軍長官がNGADの最新状況を下院で話した。

 

ボーイングのコンセプトアートは、Next Generation Air Dominance戦闘機のデザインの可能性を示している。空軍長官フランク・ケンドールは、有人NGAD戦闘機の単価が数億ドルになる可能性があると述べた。 (Boeing)

 

空軍が秘密裏に開発中の次世代戦闘機「Next Generation Air Dominance」は、史上最も高価な航空機になる可能性があり、有人操縦型では機体単価が数億ドルになる予想が出てきた。

 

 

 水曜日の下院軍事委員会で、NGADの価格について質問されたケンドール長官は、予想水準を明らかにしなかったが、空軍では数億ドルになると見ていると発言。

 ケンドール長官は、「皆さんの注目を集めて当然の数字です」と述べた。「高価な機体になる」とした。となると、8000万ドルというF-35の2倍以上となる。

 長官は、NGADは「信じられないほど効果的」であるが、戦闘効果を拡大するためには、安価なプラットフォームを伴う必要があるとし、自律無人機との同時投入を想定していると述べた。

 NGADの自律型ウイングマンのコスト情報は不明だが、フロリダ州オーランドで3月開催された空軍協会イベントで、ケンドールは、空軍は戦闘無人機のコストが有人機の半分以下になるのを望むと述べていた。

 ただし、NGADの有人機型が1機あたり数億ドルなら、無人ウィングマン機はF-35と同等かそれ以上のコストになる可能性があることになる。

 NGADプログラムは長期的に維持費を抑えるため開発段階で適切なステップを踏んでいる、とケンドール長官は述べた。機体がアップグレードやメンテナンスを容易に受けられるよう、政府管理のモジュール設計とインターフェースを使用することで実現する。

 ケンドール長官は、この戦略は競争につながり、さらなるコストダウンが実現すると語った。

 「NGADの初期段階で正しく理解することに時間と労力を費やす価値があります。その結果は、後々の維持管理で、はるかに大きな金額効果をもたらすからです」「NGADプログラムは、このアプローチを採用しています」。

 ドナルド・ノークロス議員が提起した、NGADのスケジュールが「右にスライドしている」との懸念に対し、ケンドール長官は、空軍は2030年代初頭のNGAD配備を想定していると述べ、それまではF-22戦闘機を改修し飛ばし続ける予定とした。■

 

Future NGAD fighter jets could cost 'hundreds of millions' apiece

By Stephen Losey

 Apr 29, 03:52 AM