2022年5月12日木曜日

ウクライナ戦。巡洋艦モスクワを喪失し、黒海のロシア海軍が劣勢に。スネーク島を巡る戦いが焦点。

 Russian Navy amphibious warfare ships in Black Sea base

 

ロシア海軍揚陸艦の多数が、ノボロシスクに集結している。同港はセパストポリから遠く、スネーク島付近で見られることが少なくなっている。また、ベルジャンスクでロシアが拿捕したウクライナ海軍の艦船も確認されている。

 

ロシア海軍が劣勢になりつつある。ロシアはウクライナ侵攻で、最初にスネーク島を奪取した。その2カ月後、ロシアはスネーク島の維持に必死になっている。黒海北方でロシア支配が弱まっている証だ。


 

巡洋艦モスクワ喪失後の最大の影響は、黒海北部がウクライナ機に安全な場所になったことだ。特にウクライナ海軍のTB2ドローンにとって。戦略的な意味合いが生まれたといってよい。

 焦点は、ウクライナ南西端にある小さな岩礁、スネーク島だ。開戦時にロシアに占領された。巡洋艦モスクワも奪取に役割を果たした。

 クリミアから西に侵攻できない今、スネーク島は孤立した前哨基地となっている。同島はクリミア以西の唯一のロシア拠点だ。そして、無防備になりつつある。

 

小さな岩の大きな代償

巡洋艦モスクワの役割は主に防空で、S300ミサイルを搭載していた。モスクワが消えた後、ウクライナ軍無人機は標的に効果的に対応できるようになった。劇的な効果を生んでいる。

 ウクライナの最初の大きな動きは、無人機による攻撃による島内の防空網の破壊だったようだ。少なくとも理論上は、強力なSA-15 Torミサイルシステムが防空を担っていた。そのシステムを排除したことで、ウクライナ海軍のTB2ドローンが付近を飛行できるようになった。ロシア海軍の最初の犠牲は、5月2日の2隻のラプター攻撃艇だった。

 プロジェクト03160ラプター級は、スウェーデンのCB-90をモデルにしている。特殊部隊の投入や撤収など、多くの用途がある。しかし、防空能力は限られ、激しい動きを見せてもTB2の格好の標的になってしまった。

 5月7日、ロシアはSA-15ミサイルシステムを同島に搬入しようとした。その際、TB2のドローンがプロジェクト11770セルナ級揚陸艦を捉え、荷揚げするところを直撃した。攻撃は壊滅的で、同艦は揚陸地点を塞いでしまった。

 防空能力が低下したロシア軍守備隊は、無人機と戦闘機による空爆を次々と受けることになった。やがて建物のほとんどが瓦礫と化した。ロシアはまだラプターを運用していたが、5月8日にTB2がさらに二隻を排除した。ヘリコプターが部隊を島に上陸させた。

 しかし、ロシアは、戦略的価値のある同島を保持すると決意しているようだ。5月9日、スネーク島の隣で、少し大きめのプロジェクト21820ジュゴンDyugon級上陸用舟艇が1隻観測され、SA-15 Tor防空システムを搬送するためと思われる。

 

大型揚陸艦の動きがない

Naval Newsは、独立系防衛アナリストのBenjamin Pittetと、黒海のロシア海軍水陸両用軍を観察してきた。作戦パターンに変化が見られる。

 ここ数週間、スネーク島周辺で大型揚陸艦の活動を見かけなくなった。開戦して数カ月は、ロプチャ級揚陸艦1隻か2隻が島の近くで頻繁に観測されていた。 

 ロシアは侵攻までに、黒海に追加の揚陸艦を送り込んでいた。北方艦隊とバルト海艦隊から、ロプチャ級揚陸艦と新型のイワン・グレン級揚陸艦が派遣されていた。また、カスピ海からは小型上陸用舟艇が移動し、太平洋からも追加派遣の気配もあったが、状況は一転した。

 

上陸用舟艇が2倍以上に

黒海の揚陸戦力は、揚陸艦の移動で2倍以上となった。当初、大部分はクリミアの西側、オデーサに面した場所に集中しオデーサ付近で「示威行動」任務が行われた。だが期待された上陸作戦の機会は来ず、おそらく頓挫したのだろう。

 4月下旬、モスクワ沈没の後、パターンに変化があった。スネーク島付近でロプチャ級を見かけなくなったのだ。オープンソース情報では、完全に停止したとは断言できないが、あらゆる兆候は停止していると思われる。代わりにラプター級や小型のダイゴン、セルナ級揚陸艦が使われている。

 巡洋艦モスクワがなくなり、危険な場所になったというのが素直な解釈だろう。ロプチャは対空砲を持つが、ウクライナのミサイルやドローンの格好の標的になっている。そのため、揚陸艦は港内に集中している。黒海艦隊の上陸用舟艇は海に出ているが、より限定された運用のままだ。黒海艦隊はセヴァストポリとノヴォロシスクに残ったままだ。

 

呪われた島は次にどうなるか?

ロシアは、高い兵力と装備品を投入してでも、この島を維持する決意のようだ。位置は戦略的である。監視が可能で、ウクライナがを防ぐことができる。また、和平合意や最終的な領土奪取の際にも重要な意味を持ちかねない。また、マリウポルのウクライナ拠点と同様に、同島の防衛は象徴的になる可能性がある。

 ウクライナが同島を奪還しようとするかはまだ不明だ。感情的には強い動機があるかもしれない。政治的、戦略的にも意味があるかもしれない。

 しかし、実行すれば、状況は逆転となり、ロシアがウクライナ守備隊を自由に攻撃できる可能性が生まれる。同島は、効果的な局地防空がなければ無防備だ。今のところ、双方とも達成できるようには見えない。■

 

How The Russian Navy Is Losing Dominance: The Curse Of Snake Island - Naval News

H I Sutton  11 May 2022


レイルガン用に開発された超高速弾に米空軍がミサイル防衛で注目。海軍はレイルガン開発を断念ずみ。局地防衛の概念が変わる可能性も。

A rendering of a notional self-propelled large-caliber gun capable of firing hypervelocity projectiles at incoming missiles.

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空軍は巡航ミサイル防衛の解決策に超高速弾を導入しようとしている。

 

 

 米空軍は2023年度予算要求で、巡航ミサイル撃墜用の自走砲で試作品製作と試験を実施する資金を要求している。同兵器は、米海軍が開発断念したレイルガン用に開発された弾薬を使用し、前線基地防衛装備となる可能性があると空軍は説明している。しかし、巡航ミサイルが米国内に脅威をもたらす懸念があることから、他の用途もあり得る。

 空軍の2023年度予算案では、「C-130で輸送/配備可能な超速地上兵器システム(HGWS)プロトタイプ」の製造を含む、さまざまな「ライフサイクルプロトタイピング」に約89.1百万ドルを要求している。このうち、どの程度がHGWSに使われるかは不明だ。

 

「ライフサイクル試作装備」として超速地上兵器システムの詳細が空軍の2023年度予算要求文書に見られる。. USAF

USAF

 

 空軍予算書によると、「既存の統合サービス戦闘管理システムにシステムを統合し、実弾射撃実験として、巡航ミサイルへの効果をテストする」作業が、HGWSプロジェクトの2023会計年度の目標だ。「HGWS試作型は、遠征作戦の有効性を理解するために遠隔地に迅速に展開する」。

 2023年度予算案は、HGWSでの空軍要求で具体的な詳細を提供していない。しかし、同兵器の基本的な説明は、空軍研究本部(AFRL)が昨年、航空宇宙軍協会の年次会議で発表した「Multi-Domain Artillery Cannon」(MDAC)基地防衛システムの構想とほぼ同じものだ。同会議でAFRLは、MDACが作戦シナリオでどう使用されるかを描いたCGビデオも公開した。

 同ビデオでは、6x6の車輪付きシャーシに搭載されたC-130で輸送可能な大口径砲であること以外に、MDACの詳細は示されていない。その他、「高発射速度」や「高銃口速度」といった極めて一般的な能力を言及している。

 ここで想定する車両は、自走式155mm榴弾砲と大筋で類似した構成だ。特にスウェーデンのアーチャーを彷彿とさせる基本形で、BAEシステムズのボフォース部門によれば、設置から4発を発射し、再び移動するまで74秒を要するという。

 このことを考えると、AFRLが2021年の航空宇宙軍協会の会議で、MDACが発射する弾丸の例として、BAE Systemsがもともと海軍の電磁レイルガンや5インチ海軍砲、155mm榴弾砲に使用するため開発した超速発射体(HVP)の模型を展示したことが興味深い。海軍は昨年、レイルガン計画と関連するHVP開発をすべてキャンセルした

 空軍が巡航ミサイル迎撃のためHVPを発射す高性能自動装填装置付き移動式155mm榴弾砲を検討していることには意味がある。空軍は米陸軍と協力し、2020年のテストで、この組み合わせの能力を実証していた。その際、陸軍の追尾式自走155mm榴弾砲XM1299のプロトタイプが、HVPで亜音速巡航ミサイルの代用となったBQM-167標的無人機を撃墜していた。

 「戦車が巡航ミサイルを撃ち落とすなんてすごい」と、自走榴弾砲がBQM-167迎撃に成功したことについて、当時空軍の獲得・技術・兵站担当次官補だったウィル・ローパーは、テスト後に、「まさにビデオゲーム、SFの世界だ」と語っている。「弾丸が十分に利口であれば可能となる。このシステムで使用する弾丸は、例外的に利口だ」(ローパー)。

 原理的には、HGWS/MDAC構想は、地対空ミサイルのような、これまでの巡航ミサイル防衛能力と比較して、大きな利点を提供する。HVPは、地対空ミサイルより交戦単価が低く、21発弾倉を使えば、HGWS/MDAC車両1台で、地上型ミサイル発射台より多くの弾を準備できる可能性がある。

 ターゲット捕捉と照準が、空軍予算書にある不特定の「戦闘管理システム」ネットワークを介してHGWS/MDAC車両がリンクするセンサーで完全に処理されれば、同兵器は、過酷地でも比較的簡単かつ迅速に展開および採用できる可能性がある。空軍の先進戦闘管理システム(ABMS)構想の一環で開発中のネットワーク機能は、2020年試験でXM1299プロトタイプ榴弾砲に照準情報を提供した。また、陸軍が航空・ミサイル防衛に特化した統合戦闘指揮システム(IBCS)ネットワークで行っている作業を活用する可能性もある。

 HGSW/MDACは、巡航ミサイル以外にも、各種無人機を含む、既存および新たな脅威からの基地防衛に役立つ可能性がある。

 

 

米海軍がHVPの説明資料を準備していた。ここでは艦船で広範囲の対空脅威に対応する以外に地上目標もHVPを既存の5インチ砲で発射するとしていた。HGWSとMDACは多任務能力で共通している。 USN

HVP 弾は3種類ある  Joseph Trevithick

 

CBSニュース記者にHVP弾を説明するマシュー・クランダー中将(当時)。 2014. Credit: USN

Credit: BAE Systems

HVP/GLGPは各種火砲による運用を想定し、電磁レイルガンも含む Credit: USN

 

 これらの能力はすべて、巡航ミサイルや弾道ミサイルによる基地への脅威のため、空軍含む米軍が特に取り組む遠征・分散戦の作戦概念の支援で極めて重要になる。同時に、分散型基地は独自では脅威を完全に排除するのに十分ではなく、遠隔地や過酷地点でも、将来の大規模紛争では多層的防御が必要となる予想がある。HGSW/MADCは防御の一要素に過ぎず、空軍は既に、相手を完全に欺く新能力など、他の各種の関連した手段に取り組んでいることが知られている。

 空軍の2023年度予算案では、「基地防衛実験-NASAMSとHGWS」の言及があるなど、将来の多層的防衛に空軍が関心を示している。NASAMSはNorwegianやNational Advanced Surface to Air Missile Systemの略で、AIM-120 Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile(AMRAAM)を地上から発射するのを含む地対空ミサイルシステムである。

 2020年、空軍は陸軍とNASAMS試験を実施し、低空巡航ミサイルの代用としたBQM-167に対して交戦範囲の拡大を実証した。この地対空ミサイルシステムは、ワシントンD.C.首都圏の防衛にのみ運用されている。

 HGWS試作型とNASAMSを組み合わせたテストは、火砲ベースのシステムが遠征基地防衛以外の用途にも使われる可能性を示している。米国への巡航ミサイル脅威が再認識される中で、そ軍事施設や重要インフラを守るため何が必要かが議論されている。北方軍(NORTHCOM)の2023年度予算案では、国内巡航ミサイル防衛アーキテクチャの実証に50百万ドル超の追加投入を求めている。

 

AIM-120ミサイルをNASAMSで発射する想像図 Kongsberg Defense

 

 NORTHCOMと北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の責任者であるグレン・ヴァンハーク空軍大将Gen. Glen VanHerckは、月曜日の防衛ライターグループのイベントで、テストで想定する内容について尋ねられ、「業界、ミサイル防衛庁、各軍に、任務達成似必要な能力を自由に考えてもらいたい」と答えた。彼はさらに、「非運動性」オプションにも興味があると発言した。

 また、「巡航ミサイル防衛の成功には、運動論的な最終局面での撃破以外に複数の方法がある」「電磁波やその他の非誘導的手段で、局地防衛を超えた、広域防御や限定的な地域防衛が可能になるかもしれない」と語った。

 ヴァンヘルク大将はさらに、巡航ミサイル防衛の方程式として、敵攻撃抑止の重要性を強調した。

 空軍の2023年度予算要求では、HGWS/MDACの中核コンセプトの実証の継続に関心があることが明らかになった。このような兵器を実際にどう使用する想定なのか、どのように大規模な航空・ミサイル防衛のエコシステムに適合させるのか、詳細が今後明らかになるだろう。

 

UPDATE: 9:05 PM EST—

 

 記事掲載後に、読者から、国防総省の2023年度予算要求にHGWS関連項目が追加されているとのご指摘をいただいた。国防長官官房の戦略能力局(SCO)は、"Advanced Innovative Technologies "と呼ぶポートフォリオの一部として、HGWS開発を支援するため151百万ドルを要求している。また、SCOは2021会計年度と2022会計年度に3百万ドルと20百万ドルのHGWS研究開発資金を受け取ったと記されている。

 項目には、SCOの2022会計年度におけるHGWSプログラムの目標として、「移行作業に関連するレーダー、砲、射撃方向、発射体のエンジニアリングおよび製造開発(EMD)活動を支援する」ことを挙げているが、目標が達成されたかは書かれていない。

 2023年度の目標として「HGWSプロジェクトは、移行作業に向けた技術・製造開発(EMD)フェーズの開始を支援する」と記されている。■

 

Railgun Ammo-Firing Cannon Being Eyed By Air Force For Cruise Missile Defense (Updated).

BY

JOSEPH TREVITHICK

MAY 1, 2022 6:02 PM

THE WAR ZONE

 


 

2022年5月11日水曜日

次期大統領専用ヘリコプターVH-92はなぜ大統領をまだ乗せられないのか。

 

開発がなかなか終わらない次期大統領選用ヘリコプターVH-92は通信装備の不具合のため、いまだに大統領他政府高官を載せ飛行できない。

兵隊は新型VH-92A大統領専用ヘリコプターを運用可能と宣言し、"マリーンワン "として米国の国家元首を乗せる飛行隊に統合するプロセスを始めた。しかし、同機が搭載する重要な安全通信システムに問題があり、修正に予算が回らないと、完全就航が遅れる可能性がある。


シコースキーVH-92の初期運用能力は12月28日に宣言されたが、ホワイトハウス軍事局(WHMO)は、任務通信システム(MCS)の信頼性が高まるまでは、同機を使ったジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、その他高官、その家族、高官の輸送を海兵隊へ許可しない方針だ。

VH-92Aには各種アンテナ、衛星通信用の膨らみが機体後部からテイルブームにかけ多数ついているのがわかる。 Blend Qatipi

海兵隊報道官のジェイ・ヘルナンデス少佐Maj. Jay Hernandezは、IOCは「イベント上の目標」だったと述べている。「海兵隊は、ホワイトハウス軍事事務所、大統領ヘリコプター・プログラム・オフィス(PMA-274)、海兵隊ヘリコプター飛行隊1(HMX-1)と協力し、運用中のVH-3DおよびVH-60からVH-92Aへの移行条件を整備している」。

ヘルナンデス少佐はさらに、VH-92プログラムは「議会で承認ずみの予算コストとスケジュールの範囲内で推移している」と述べている。計画では、今年10月1日からの2023会計年度に、23機のVH-92を海兵隊に配備する。海軍の2023会計年度予算要求では、そのうち21機は次期会計年度にソフトウェアやハードウェアの改修が可能になる見込みで、利用可能機体が50%増加する。海兵隊予算は海軍の予算に組み込まれており、海軍航空システム本部(NAVAIR)がVH-92プログラムを監督している。

海軍の調達担当トップであるジェイ・ステファニーJay Stefanyは今月初め、下院で 「同ヘリコプターでホワイトハウスでの試運転を始めている」と語った。

IOCは2021年7月に設定していたが、そもそも当初2020年半ばの就役開始予定から遅れていた。

海軍はまた、2023年度予算において、VIP乗客が搭乗中に政府機関と安全に通話できるためのMCSでみつかった欠陥に対処する予算が確保されない場合、完全な運用能力実現が遅れる可能性があると指摘している。これはエアフォース・ワンが搭載するシステムと同じ目的で、大統領やその他高官が世界のどことでも途切れることなく超高速かつ暗号化通信を可能とするもの。特に、核抑止力を支える国家司令部との通信を可能とする。大統領専用機には不可欠であるため、VH-92導入の前提とされている。

MCSとは、独立したシステム2系統からなる広帯域の見通し線通信リンクで、ハイドラライトとクライシスマネジメントの2つで構成される。海軍予算書によると、ハイドラライトは無線機、アンテナ、アンプで構成し、Phoenix Air-to-Ground Communications Network(PAGCN)を利用してVoice over IP(VoIP)通話を可能にする。クライシスマネジメントは、防衛情報システム局の安全なネットワークに接続するためのルーター、コールマネージャー、高保証インターネットプロトコル暗号化装置(HAIPE)で構成する。

 

海兵隊第一ヘリコプター飛行隊(HMX-1)が新型VH-92Aの運行テストをホワイトハウスで2018年に行った (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Hunter Helis)

VH-92が2023会計年度から交代するHMX-1所属のVH-3DとVH-60N両ヘリコプターには、同様のシステムが搭載済みだ。海軍予算書によると、海兵隊は2016年に新型無線機、アンテナ、付属品、運用飛行プログラムを導入している。ただし、現行機材は老朽化しており、VH-92が完全に配備されるまで現役でいられるように、運用寿命を4000時間延ばす耐用年数延長を行う。

海軍の予算要求では52.30百万ドルのうち16百万万ドルはMCSバージョン4.0とMCS5.0の組み込み、インストールツール、不備の修正の検証、陳腐化への対応に必要とある。海軍によると、その予算が得られないと、完全な運用能力は延期される。

「資金が増えないと、重大欠陥の修正と緊急サービス通信の強化が遅れるか実施できず、運用能力の完全実現は遅れる」と海軍予算書は述べている。「機体の即応性は、グローバルな通信能力と生存性への悪影響とともに、マイナスの影響を受ける。これで、全体的な機体性能とミッションの有効性が低下するだろう」。

「マリーンワン」の代名詞とも言えるVH-3Dは、最高司令官用の強力な指揮統制プラットフォームにもなる。NAVAIR

就航すれば、シコースキーの商用機S-92をベースにしたVH-92は、最も洗練された大統領専用ヘリコプターとなる。韓国の次期大統領のように、同型機を飛ばす国家元首は他にもいるが、各機は商用ヘリを改造したものだ。これに対しVH-92はアメリカの大統領や政府高官を運ぶため専用に製造されたもので、シコースキーがニューヨーク州オーゴで政府に代わり取り付ける、高度かつ機密の防御装備、生存能力、エイビオニクス、通信機器が満載だ。

海軍と海兵隊はVH-92の開発と統合に強気であったが、試験と評価の報告書で問題が指摘されてきた。MCSはともかく、2,500軸馬力のジェネラル・エレクトリックCT7-8Aエンジンは、テスト中にホワイトハウスの芝生を何度も焦がした。この問題を解消するためエンジン排気を改良する必要があり、トランプ政権時代に修正されたが、トランプは最高司令官として同機に搭乗できなかった。

VH-92Aが、ホワイトハウスとエアフォースワンが駐機するアンドリュース空軍基地、メリーランド州のキャンプ・デイビッド間のワシントンDC周辺を頻繁に移動する大統領を運ぶ準備ができたとWHMOが判断するのはいつになるかは不明だ。しかし、IOC宣言をしても、すべての通信機器が正常に作動する完全な運用能力がなければ、同機の運用には意味がない。海外訪問の際には、大統領が降り立つ場所には2機のヘリコプターが同行する。上空では、少なくとも2機で「シェルゲーム」とし、大統領を標的にする者を困難にする。

VH-92は訓練飛行で、ポトマック川沿いを飛行し、ホワイトハウスに着陸する姿が何度か目撃されている。2019年3月には2機が編隊飛行しているのが目撃され、その写真からは、機体に点在するさまざまな通信機器やアンテナを確認できた。

2021年8月にさかのぼるが、NAVAIRで航空対潜戦、強襲、特殊任務プログラムのプログラム執行を務める海兵隊グレッグ・マシエロ少将は、HMX-1は「今日から準備完了となった」と述べていた。つまり、使用には十分な機体がそろい。パイロットの訓練も十分で支援機材もある。

VH-92の初期能力を考えると、HMX-1に欠けているのは、WHMOが海兵隊に大統領搭乗を認める最重要のシステムだ。HMX-1は、重要でない他の人たちを輸送できても、コールサイン"マリーンワン"はまだつけられない。■

 

VH-92 Closer To Being 'Marine One' But Comms System Could Still Cause Delays

BY

DAN PARSONS

MAY 2, 2022 3:15 PM

THE WAR ZONE


急速な変化が必要となっている米空軍が想定する事態は対中戦。そのため旧型装備を処分して資金を捻出しようとするのだが....

 


有人機と運用する消耗品扱いの低コスト無人機のコンセプト(U.S. Air Force)


国南部上空を飛行中のC-40機内にて----ジョリーグリーンII戦闘救難ヘリコプターは、先代のペイブホークに続き、アフガニスタン戦で敵地に閉じ込められたアメリカ軍と同盟国を何度も救出してきた。

 しかし、3月末の2023年度予算で、米空軍は驚くべきことを発表した。高度な防空システムを有する敵に撃墜される恐れがあるとして、ジョリーグリーンII HH-60Wの購入を3分の1、合計75機へ縮小する。



 次の戦争に備え、軍の懸念はジョリーグリーンIIだけではない。しかし、新型の戦闘救難ヘリコプターでの方針転換は、空軍が将来へ向けた考え方や準備のありかたを大きく変えたことを示す、目に見える最大の兆候だろう。

 過去20年間の中東での戦闘で、米国は無人機、戦闘機、戦闘救難ヘリコプターを飛ばす中、ほぼ完全な空の支配を享受してきた。しかし、中国含む先進的な敵国との戦争になれば、そうはいかない。

 空域の争奪戦がさらに激化した場合に備え、空軍は取り組み方を根本的に変える土台作りにとりかかっている。

 空軍上層部は、2段階プロセスで説明している。今後数年で、空軍は旧式機を売却し、新しい機体の短期的な進歩や既存の機体のアップグレードの資金を確保し、既存機材の近代化は小規模に留める。

 第6世代戦闘機の導入や、自律型無人システムの新たな利用法として危険な戦闘地域で負傷した兵士の救出を想定しているのだろう。

 だが、時間がない。ロシアのウクライナ侵攻は、大国間競争の時代が到来したことを示す。国防総省は、中国との衝突が想定以上に早く発生するのを懸念している。

 克服すべき技術的ハードルもある。2023年までに計150機の退役が予定されるが、議会が許可するかは未解決だ。こうしたことから、空軍が理想とする次世代能力を実現できるのか疑問を呈する専門家もいる。



ホローマン空軍基地内の高速度テスト施設で貫通型ペイロードが標的命中時の状況を再現している。 (U.S. Air Force)


 保守派ヘリテージ財団の国防政策専門家ジョン・ベナブルJohn Venableは、空軍は慎重にならざるを得ないと指摘する。空軍は旧式システムを縮小しながら、次の危機が訪れる前に先進的な能力を実現したいと考えているという。

 この30年間、われわれは『大きなリスクを引き受ける』という言葉を飲み込んできた......それは、自分の家に第3、第4、第5、第6のローンを組むようなものだ」とベナブルは言う。「そして、債権者が返済を求めてくるかもしれない」。

 3月の記者会見で、フランク・ケンドール空軍長官は、米国が直面している対象、特に中国に対応するため、空軍は進化ではなく、変革が必要だと述べた。

 ケンドール長官によれば、1940億ドルの23年度予算案は、変革を加速させるのが目的で、24年度予算で進める。

 4月の記者会見で、長官は「変化は容易ではない。空軍と宇宙軍は必要な水準まで前進しようとしている」と述べた。


変化への道

4月18日、空軍のC-40機内でのDefense Newsとのインタビューで、ケンドール長官と空軍参謀長CQ ブラウン大将は、最大の課題は中国や他の敵国が長距離精密兵器を採用することだと述べた。

 ケンドール長官によると、米国が前方航空基地、重要な衛星、空母、兵站や指揮統制ノードなど、高価値の少数の資産に集中していることに中国は気づいている。

 集中が今や脆弱性を生んでいる、とケンドール長官は言う。中国が長距離兵器でこうした資産を破壊すれば、アメリカの世界各地への軍事力展開や使用能力に深刻な打撃が生まれるという。

 空軍はまた、イラクやアフガニスタンで経験した無敵の航空優勢が、中国やロシアとの戦争ではそうならないという現実を受け入れている。

 空軍関係者は、23年度予算要求がこうした課題への対処で最初のステップになる、と述べている。  A-10ウォートホグやMQ-9リーパーなど、先進的な敵の前で脆弱となる旧式機や無人機を廃棄する方向で動いている。また、次世代制空システム、極超音速研究、B-21レイダー爆撃機の調達、自律無人機ウイングマンの研究など先端技術に資金をシフトしている。


B-21 Raider concept

B-21レイダーの想像図 (Courtesy of Northrop Grumman)


 ケンドール長官の説明では、捜索・救助用ヘリコプターは必要だが、どこで運用するか、どのようなプラットフォームで任務遂行するか、現実的に考え直さなければならないという。

 「ヘリコプターを持ち込めない場所もある。その場合は対応できなくなる」(ケンドール長官)。

 空軍幹部は戦闘救難ヘリコプターの需要を考え、より少数のプラットフォームで対応できると結論づけたと言うのが長官の説明だ。

 例えば、米国が中国の侵略から台湾を防衛する場合、墜落されたパイロットは海上あるいは台湾領土から救出されるとケンドールは言う。であれば、専用ヘリコプターの必要性は低くなる。

 しかし、ヨーロッパでの紛争の場合、特殊なヘリコプターが必要になるかは、墜落された隊員が敵陣の背後にいるかどうか、さらに敵の防空能力によって決まる、とケンドール長官は付け加えた。

 ブラウン大将によれば、空軍はパイロットが危険にさらされる可能性のある地域には自律型システムで侵入する方法も検討している。

 「脅威度の高い環境で戦闘時の捜索救助をどう行うか、従来と異なる方法で検討する必要がある」(ブラウン)。

 同様に、将来の通信、指揮統制、戦場管理能力にどう取り組むかを見極めようとしている。

 長年にわたり、空軍はE-3セントリー空中警戒管制システムAWACSおよびE-8統合監視目標攻撃レーダーシステムJSTARSで部隊を追跡し、敵撃破に必要な情報を指揮官に提供してきた。

 しかし空軍関係者によると、冷戦時代のAWACSやJSTARSは、高度な敵との戦闘で極めて脆弱になるという。

 ケンドール長官は、AWACS代替機に、E-7ウェッジテイルの調達を開始するべく、23年度予算要求で227百万ドルの資金を計上したが「少なくとも暫定的な解決策 」にすぎないという。



E-3セントリーも高度能力を有する敵勢力の前では脆弱と空軍当局は警戒している。 (Senior Airman Jessi Monte/U.S. Air Force)


 AWACSの長期的な代替機も、JSTARSの代替機もない。長期的な代替機がなければ、敵軍を正確に追跡し、目標を定めるアメリカの能力は危険にさらされる。

 ウェッジテイルは、最新の電子機器を搭載した機体だが、それでもE-3同様に敵ミサイルの影響を受けやすくなる。そこでケンドール長官は、空軍は戦場を見張り、目標を追跡する機能として星に目を向けている、と語った。

 「できれば宇宙からこれらの仕事をしたいのですが、解決できていない技術問題があります」。ケンドール長官は以前、空軍の宇宙部門には、攻撃を受けても稼働し続けられる弾力性が必須と述べていた。

 「バランスをとりながら、高度な脅威に必要な対応をで早く進めようとしている」



最新のウェッジテイルでさえ、敵ミサイルの脅威にさらされる点で現行機種と変わりない(British Ministry of Defence)


 バランスをとる方法に、航空機の平均機齢と平均コストを下げることがある。有人機と連携し、戦術の幅を広げる低コスト無人攻撃機、あるいは消耗品扱いの戦闘機の技術はすでにある、とケンドール長官は指摘する。

 例として、空軍パイロットは消耗覚悟の無人ウイングマンを前方に送り、意図的に敵を引きつけることができる。


落とし穴を避ける

空軍が検討中のコンセプトには、実現が難しいものや、初期段階のもの、まだプログラムになっていないものもあり、実現が不透明なものもある。

 そして、時間がないことを懸念する専門家がいる。

 戦略国際問題研究所(CSIS)の航空宇宙安全保障プロジェクト長トッド・ハリソンTodd Harrisonは、「情報機関の予測や国防総省周辺の噂では、中国は今後4、5年以内に台湾を軍事攻撃する可能性があると言われています」「もし、開発終了間近のものや生産中のものがなければ、2026年までに戦力として配備されることはない。そのため、短期的な改良を含む空軍の2段階戦略は賢明だ」と言う。しかし、ハリソンは、何年も先のことであっても、空軍は最先端の変革を推し進め続ける必要がある、と付け加えた。

 「萎縮させてはいけない。いずれ必要になるのだから」と言う。

 議会がワイルドカードだ。空軍は、議会が希望する資金レベルを承認し、資金を確保するため旧式機を退役させ、運用機数の数量制限を緩和する必要があると言う。

 昨年、議会は空軍が要求したA-10を除くすべての航空機の退役を許可した。しかし、以前は、議会は航空機削減に難色を示していた。

 ケンドール長官は、4月の記者会見で「議会の協力が不可欠」と述べた。「結局のところ、我々は前進する道を見つけなければならず、議会がその道の一部でなければならない」。

 4月28日のインタビューで、下院戦術航空陸上軍小委員会のドナルド・ノークロス委員長Rep. Donald Norcross(民 ニュージャージー)は、議会は空軍から長期的な近代化計画や売却について話を聞くことに前向きだが、空軍の能力で不足が生まれないようにすべきと語った。

 「議会での監督と同様に、議員は空軍の報告に耳を傾け、わかっていることや歴史が語ることと内容が一致しているか確認する」とノークロス委員長は述べた。「まだプロセスの初期段階なので、空軍の要求を検討し、過去の実績と将来の戦力ニーズと照らし合わせることになる」。

 旧型機処分議論は、二律背反の危険をはらんでいる、とハリソンは言う。議会は、空軍の新規能力開発には賛成であることが多い一方で、同等かそれ以上の代替品なしに旧装備を手放すことを望まない傾向がある、と指摘する。

 空軍は旧型プラットフォームの処分が許されないと、新規能力の開発資金を自由にできないと主張する。このため、空軍上層部は連邦議会議事堂に何度も足を運び、議員に空軍ビジョンに賛同するよう説得しなければならない、とハリソンは言う。

 「私たちを信じてください、私たちには計画がありますと言っても、通用しない。有権者多数の利害が絡み、本当の戦略的リスクも多数あるのだから」と言う。

 ケンドール長官とブラウン大将はDefense Newsに対し、議員に処分を売り込む責任は空軍にあることを認めた。

 「それは、われわれ次第です」とケンドール長官は言った。「議会に協力したい...協力こそが前進への道だ」。■


Inside the US Air Force's race to fund future fighters, bombers and autonomous drones before the next crisis

By Stephen Losey

 May 9, 07:00 PM


About Stephen Losey

Stephen Losey is the air warfare reporter at Defense News. He previously reported for Military.com, covering the Pentagon, special operations and air warfare. Before that, he covered U.S. Air Force leadership, personnel and operations for Air Force Times.


2022年5月10日火曜日

現在は歴史の大きな転回点と見るフリードマンの説明を御覧ください。

 


地政学の大家フリードマンのエッセイです。歴史を大局で見つめる必要がありますね。多極化世界が米国主導の世界に戻るのか注目です。さらに、「衰退」した日本がこれからどうなるのかはフリードマンの過去の著作をご参照ください。(これとても時代の流れの中での考察にすぎませんが)



「歴史のステージ」というテーマで、筆者は200年以上にわたるシステムの変化を先週指摘した。前世紀は、およそ30〜40年おきにシフトがあり、最後のシフトは1991年、約30年前に起きていた。この年、冷戦が終結し、マーストリヒト条約が締結され、砂漠の嵐作戦が始まり、日本の経済的奇跡が終わり、中国の台頭に扉が開かれた。1989年の世界は、1992年の世界と全く異なっていた。



 現在はシフトの最中だ。世界大戦の時代と冷戦後の世界変化には、50年近くを要した。なぜ、ある時代が他の時代より長く続くのか、理由は不明だ。単なる偶然かもしれない。ある時代はひとつの非常にしっかりした現実に基づく一方で、別の時代はより脆弱な複数の現実に基づく。1945年から1991年の時代は、米ソ対立という強固な基盤の上に成り立っていた。一方、1991年から2022年は、世界的なテロとの戦い、EU、中国の台頭、ロシアの自己主張など、複数の力に基づいている。現在は、断片的な変化で始まり、不安定なプラットフォームが形成されている。

 いずれにせよ、1991年に始まった時代は終わりを告げ、新時代が始まる。中国、アメリカ、ロシア、ヨーロッパといった主要な主体や国家は、それぞれ大変化を遂げつつある。ロシアにとって、ウクライナ侵攻は1991年を覆すための最新かつ最も重要な試みに過ぎない。しかし、一人当たりの国内総生産が86位と、共産主義からの脱却は想定したほど有益な成果を生んでいない。また、軍事力はウクライナ軍に負けるほどで、軍事大国とは言い難い。つまり、ロシアは自らの期待に応えておらず、革命を起こすか、限定軍事力で攻撃を続けるか、核兵器を持ちながら小国に終わるかのいずれかだろう。

 ウクライナ戦争は欧州にも変化をもたらした。NATOが、EUと並行する主要なシステムとして再登場し、多少異なるメンバー、異なるアジェンダ、異なる予算コストをかかえるシステムとなった。さらに重要なのは、大西洋両岸関係にも新たな息吹が吹き込まれ、軍事費へコミットメントが高まってきたことだ。ここからヨーロッパは全く異なる構造へと導かれる。まず、政府支出が増加し、紛争の圧力下で経済パフォーマンスが低下し、EU内でストレスが悪化する。また、米国への依存度が高まり、ワシントンは再びドイツに代わる経済パートナーと見なされるかもしれない。すでに圧力にさらされているEUは、再度自らを定義し直さなければならないだろう。

 中国も過渡期にある。中国は猛烈な経済成長期を迎えた。日本がそうであったように、また米国がそうであったように、中国も驚異的な経済成長を遂げてきた。日本は1991年に2桁成長の限界に達し、衰退し、中国に取って代わられた。日本は、低コスト輸出と高度技術力で経済を発展させた。そのための資金を、経済的・政治的に資本を配分する金融システム、すなわち「系列」を通じ調達してきた。そして、統制のとれた労働力のもとで急成長を遂げた。しかし、自国製品を下回る低価値の商品の登場で激しい競争にさらされ、消費国、特に米国の政治的抵抗に遭った。自動車など高価格帯商品で、この傾向が強まった。数量やマージンの減少で、金融システムの脆弱性が顕在化し、失われた10年の間に自己変革を迫られた。

 現在の中国の低価格帯輸出品は競争によって浸食され、高級品も同様で、消費市場の輸出への抵抗は言うに及ばずである。40年前に始まった拡大だが、成長率を維持できなくなってきた。輸出は圧力を受け、金融システムも圧力を受ける。中国の場合、フェイルセーフに利用されている不動産セクターでデフォルトなど障害が発生すると、必然的に経済が不安定になり、その結果、政治的緊張が生じる。中国の成長が劇的に鈍化する可能性があり、成長の恩恵を十分に受けられない中国国民が大量に発生し、危険な状況に陥る。

 米国は、国内の不和や経済的な圧力があっても、依然として世界で最も強力な国家だ。国内不和は周期的であり、新技術を基盤とした経済の躍進を予感させる。しかし、今のところ、アメリカの経済力は、直近では対ロシアでのドル使用を通じ、まだ高くそびえ立っている。米国は4大主要経済の中で制度改革を必要としない国であり、それが1945年以来その地位を維持するのに役立っている。

 ロシアと中国を新興国としてきた想定には疑問符がつく。事態は変化するが、ロシアの復活や中国での経済問題の急速な解決を見ることは難しい。このため、今が循環的な変化の始まりだとすれば、米国が新時代移行の柱のひとつになる。あとはイメージしにくい。1991年時点で中国が躍進するとか、1945年にヨーロッパが今の形に再建されるとは誰も想像できなかった。想像を絶する変化を模索する段階の今と同じことはいつもあった。■



The Beginning of a New Era

By George Friedman -May 3, 2022

https://geopoliticalfutures.com/the-beginning-of-a-new-era/?tpa=NDdmMzVkMTkzZTdhNGQzNjY0M2YzMzE2NTIzNjk3MTExN2M4ZGY

George Friedman

https://geopoliticalfutures.com/author/gfriedman/

George Friedman is an internationally recognized geopolitical forecaster and strategist on international affairs and the founder and chairman of Geopolitical Futures.

Dr. Friedman is also a New York Times bestselling author. His most recent book, THE STORM BEFORE THE CALM: America’s Discord, the Coming Crisis of the 2020s, and the Triumph Beyond, published February 25, 2020 describes how “the United States periodically reaches a point of crisis in which it appears to be at war with itself, yet after an extended period it reinvents itself, in a form both faithful to its founding and radically different from what it had been.” The decade 2020-2030 is such a period which will bring dramatic upheaval and reshaping of American government, foreign policy, economics, and culture.



His most popular book, The Next 100 Years, is kept alive by the prescience of its predictions. Other best-selling books include Flashpoints: The Emerging Crisis in Europe, The Next Decade, America’s Secret War, The Future of War and The Intelligence Edge. His books have been translated into more than 20 languages.

Dr. Friedman has briefed numerous military and government organizations in the United States and overseas and appears regularly as an expert on international affairs, foreign policy and intelligence in major media. For almost 20 years before resigning in May 2015, Dr. Friedman was CEO and then chairman of Stratfor, a company he founded in 1996. Friedman received his bachelor’s degree from the City College of the City University of New York and holds a doctorate in government from Cornell University.