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★★米空軍はラプターを2060年まで使い続ける


本当に2060年代まで使えるの、その時点でPCA次期制空戦闘機が登場すればラプターは第二バイオリンの役を果たせるのか、UAVの進化をどう予想しているのかと突っ込みどころが多いですが、しょせん日本からすれば往時のF-106のような米国専用機材であり、どこか他人事のようにしか聞こえませんね、というと言いすぎでしょうか。

 

The U.S. Air Force's Stealth F-22 Raptor Will Fly Until 2060

F-22ラプターを2060年まで供用する米空軍

The National InterestDave Majumdar June 26, 2017


  1. 米空軍はロッキード・マーティンF-22Aラプターを2060年まで配備し続ける。そのため空軍は一連の改修予算を計上し、同機の戦力水準を維持する。その一部を2018年度予算案に盛り込む。
  2. 「F-22を2060年まで維持し、途中で脅威の変化に対応し性能を向上させていく。FY18予算に624.5百万ドルをRDT&E用に、398.5百万ドルを調達用に計上している」とアーノルド・バンチ中将(調達担当空軍副長官付軍代表)、ジェリー・ハリス中将(作戦立案担当参謀次長)が下院軍事委員会宛に6月7日に書面で通知している。
  3. 航空戦闘軍団でF-22のアナリストを務めるトム・マッキンタイヤーから記者に2060年という数字にはラプター部隊も驚くだろうが、機体は十分持つの見込みを示した。
  4. 「2060年との予想はなかったので少々驚かされましたが、F-22には機体強度を維持するASIP(機体強度維持事業)があります」

機体構造は強靭
  1. ラプターの機体は冷戦末期に設計されたこともあり厳しい要求内容を反映して極めて強固に作られている。設計上は8,000時間が限界だが、飛行運用実績から12,000時間(ローエンドの場合)あるいは18,000時間(ハイエンド)まで改修せずに使えそうだという。
  2. 「80年代末から90年代初めに機体設計した当時はミッションを10通り想定していました」
  3. 「EMD(技術製造開発段階)中に各ミッションの有効性を試しています。ラプターは実際にはそこまで厳しい条件で供用されておらず機体強度の現状をみると2060年くらいまでなら供用可能と判断されたというわけです」
  4. また機体腐食も米海軍のF/A-18ホーネットほど深刻ではない。ラプターで空軍が見つけたのはステルス塗料による流電腐食現象だが機体構造上で問題になるものではないとマッキンタイヤーは述べている。空軍は問題を起こした特定の導電性ステルス塗装剤を変更し腐食問題の解決を目指す。
  5. 「この補正作業はヒル空軍基地で行っています」とマッキンタイヤ―は述べ、「今後も腐食が発生しないようにすべての作業は2020年までに完了します」

生産用設備はすべて保存中
  1. さらに空軍はシエラ陸軍補給処に保存中のF-22生産用設備の保全状態を調査中だ。現在、調査は85パーセント完了し、今までのところ生産設備はすべて所在が確認されている。それより以前に空軍関係者から一部設備類が所在不明との懸念が出ていたが、調査の結果根拠のない杞憂だとわかった。
  2. F-22の生産再開は米空軍で見込みがなくなっている。「空軍にはF-22生産ライン再開の予定はありません。経済上も作戦上も意味をなさないから」とキャリー・ケスラー少佐(航空戦闘軍団広報官)が記者に述べている。

2060年のラプター像
  1. F-22の機体が2060年までそのまま持つとしても、空軍は21世紀後半でもラプターを戦術的に意味のある機材として運用できるのだろうか。空軍からはこの疑問への答えがまだ出ていないが、2030年代までは有効な機材として維持する構想はある。
  2. 「2060年まで予言はできませんが、」とマッキンタイヤ―は言う。「空軍は2030年代までラプターの航空優勢を維持するべく必要な性能水準を実現していきます」
  3. 中国やロシアはラプターに代表される米航空優勢への対抗手段を大々的に開発中だ。そうなるとF-22は第六世代戦闘機となる侵攻制空機(PCA)とペアで対応することになりそうだ。ラプターはPCAに対して現在のF-15Cの立場になる。
  4. 「PCAが実現すれば第五世代機のF-22やF-35と共同運用する前提で設計されているはずです」とマキンタイヤーは述べている。「2030年代、2040年代や2050年代になればF-22は今日の第四世代機の立場になるでしょうね」
  5. とはいえ想定中の脅威が2019年から2020年に現実のになれば、空軍はF-22の性能改修を模索することになろう。ただしその内容は秘匿情報だ。
  6. 「その後数年すればラプターの供用年数が相当になるため暫定的に中間改修と呼ぶものが必要になるでしょうね」
  7. 中間改修でコンピューターを交換し、エイビオニクスでレーダーやアンテナを更新するのだろう。
  8. 「2025年から2030年の間のどこかで搭載システムがその先も維持できるか検討せざるをえなくなるでしょうね」「現時点はまだ検討の初期段階にすぎませんが」とマキンタイヤーは述べる。

性能改修策の内容
  1. 空軍は近未来の脅威にもラプターを対応させるべく資金を投入している。インクリメント3.2BとしてレイセオンAIM-9XサイドワインダーやAIM-120D(AMRAAM)の運用を可能としさらにその他改修をめざす運用テストが今夏に始まり、2019年度の実戦投入をめざす。ソフトウェアではアップデート6を同時に実用化しラプターの情報暗号化が改良されるとマキンタイヤーは解説している。
  2. アップデート6でもう一つ大きな意義があるのがTACLink-16でF-22にリンク-16送信機能を2021年までに追加することだ。空軍は無指向性のリンク-16の搭載を一貫して拒否してきたが、ここにきてラプターに送信機能追加を決めた。その理由としてステルス機の運用実績を積んで作戦上の知見が増えてきたことがある。
  3. 「戦術上でF-22がリンク-16送信してもほぼ常時心配の必要がないと分かってきました」とマッキンタイヤ―は述べる。「同機の知識が増えており運用にあたる賢明な男女が戦術を編み出し初期に心配されてたいリンク-16送信の懸念は根拠がないとわかったのです」
  4. 空軍は新型データリンクのラプターへの導入も検討してきた。たとえばF-35の多機能高性能データリンク(MADL)や海軍の高速広帯域方式の戦術目標情報ネットワーク技術(TTNT)だが、によればこの分野での知見が十分ではないとしつつも空軍がF-15Cが搭載するタロンHATEデータリンクポッドでラプターから情報再配信を信頼できない理由があるという。
  5. 「ごく少数のF-15でしか利用できない性能なのです」とマッキンタイヤーは説明する。「利用可能なF-15が少ないためF-22が集める戦術情報の共有が不可能なのです」
  6. だがTACLink-16には単なるデータリンク機能の追加以上の内容がある。ラプターの機内エイビオニクスベイは三つあり一つは未使用のままなので空軍はここにオープンミッションシステムズ(OMS)の搭載をF-22の今後の性能改修の目玉として検討している。
  7. 「OMSで将来のF-22性能近代化がすべて実現します」とマッキンタイヤ―は言う。「簡単に言うとiPhoneにアプリを追加するようなものです」
  8. TACLinkに続くのがTACMANつまりTactical Mandatesでペンタゴンが求めるモード5の敵味方識別機能の向上だ。「2022年以降になるがTACLink-16とTACMANが使えるようになると威力はすごいはず」(マッキンタイヤー)
  9. ラプターパイロットにはもう一つ朗報がある。F-22でもヘルメット搭載型目標指定装備helmet–mounted cueing systems (HMCS) が使えるようになり、AIM-9Xの性能をフルに使えるようになる。HMCSの開発導入は来年2018年には始まり、2021年に使用可能となる予定だ。空軍はどの型のHMCSにするか決めていないが来年中に選定の運びとマッキンタイヤーは述べた。
  10. “The key enabler is the OMS,” McIntyre said.
  11. 「カギはOMS」とマッキンタイヤーは述べる。
  12. HMCSの追加によりラプターは当初ロッキードが契約を交付された際の高性能戦術戦闘機構想で想定した性能の機体がやっと生まれる。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


コメント

  1. シリアでのF-22のミッションにおいて、ロシアのSu-35から探知される事なく、IRST.イールビス-Eはカタログスペック通りの性能を発揮出来なかった様で。 日本では新たな電波吸収剤(99.9パーセント低減)を開発出来たとか。F-22のステルス性向上はまだ伸び代はありますし、電子系の一新によって、高い好戦能力を維持し続ける事は可能だと思います。
    ただ機体数が非常に少ない状況は改善が必要と思います。

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