2016年3月6日日曜日

Darpaの垂直飛行X-プレーン契約をオーロラが獲得


これもDarpaが進める先進技術の案件です。分散推進方式であり、機体形状は相当これまでの常識を覆すようです。初飛行に成功することを祈りましょう。
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DARPA’s Vertical Takeoff ‘X-Plane’ Contract Goes to Aurora

Lara Seligman, Defense News 8:44 a.m. EST March 4, 2016
635926758015916809-b0b7478e-e539-4c70-b657-172fa07b97b4.HR.jpg(Photo: Aurora Flight Science)
WASHINGTON – 国防高等研究プロジェクト庁DarpaがオーロラフライトサイエンシズをX-プレーン無人垂直離着陸機の製造元に選定した。
Darpaが交付する契約はVTOL X-プレーン事業の第二段階と同社が発表。
オーロラ案はライトニングストライクLightningStrikeの名称で、ロールロイスAE1107ターボシャフトエンジンによりハネウェル製発電機三基を運転する。
オーロラは技術実証用に一機製作し、既存VTOL機の1.5倍の速度が実現すると同社は発表。フライトテスト開始は2018年ごろになる。
これだけではわかりにくいのでBreaking Defense記事から同機の特徴をまとめると、

You-Ain’t-Gonna-Believe-This Design Wins DARPA X-Plane Deal

By RICHARD WHITTLEon March 04, 2016 at 10:27 AM

  • 契約規模は89.4百万ドル
  • 分散電気推進方式
  • 小型ダクテッドファン24基を搭載し、各ファンにモーターがある
  • 主翼がティルトする
  • 3基の発電機の容量は合計3メガワットで4,023馬力に相当
  • 機体重量は10,000から12,000ポンドを狙う
  • 巡航速度300ktはV-22より50ノット速い
  • なお選考に敗れた三社は以下の通り
    • カレムエアクラフト
    • ボーイング
    • シコースキー
  • オーロラ案が最も先進的だった
  • 成功すれば一気に電気飛行機が普及するかも
とのことです。


習近平の進める人民解放軍改革の特徴は何か





Inside China’s Plan for a Military That Can Counter U.S. Muscle

Chinese President Xi Jinping seeks a ‘tectonic’ shakeup of the world's largest fighting force

March 4, 2016 — 8:00 AM JSTUpdated on March 4, 2016 — 2:07 PM JST



習近平主席が朝鮮戦争以来最大の軍改革に取り掛かっている。

2.3百万名強の人民解放軍を変身させ、21世紀の装備を持ちながらソ連時代の指揮命令系統を残した体制から近代戦を勝ち残れる組織にする。中国は「単なる大国から強力な大国」へ移行すると習は昨年11月に誇らしく宣言していた。軍組織のリストラクチャリングは国防予算でも大きな柱で3月5日にその大要が全人代で発表されるはずだ。

「軍の改革を断行した国は多いが、中国ほどの地殻変動的変化を経験した国は少ない」とヘリテージ財団のディーン・チェンは述べている。

習の目指す方向は以下の通りに要約されよう。

芸能兵は減らし、水兵をふやせ

改革の第一歩として習が天安門軍事パレードで公表したのがPLAで30万名の削減を2017年までに達成することだ。習はこの公約を中国が平和に尽力する証と述べたが、削減の対象は非戦闘隊員であり、削減で各軍の実戦力は一層目標に合致することになる。


削減対象に炊事、病院、報道に加え1万名ほどのPLA名物芸能兵がある。それでも中国の兵力は世界一で、米国より600千名も上回ると国際戦略研究所が推計している。
Flowers from a fan? Peng Liyuan, aka Mrs Xi Jinping, belts out a paean to China in Henan Province in 2004.
彭麗媛は習近平夫人だが同時に軍隊歌手として少将の階級にある. 2004年河南省
Photographer: ChinaFotoPress/ChinaFotoPress via Getty Images

またこれまで主流の立場に君臨してきた陸軍がその座を譲ることになる。近代戦で通常型兵員の需要が減るためだ。中国が必要とするのはパイロット、水兵、特殊作戦隊員、無人機操作員で戦略投射の範囲を広げることだ。



誰がボスになるのか

高度な軍事作戦では各軍の密接な連携が必要となる。これは陸軍中心の軍事体制で不足していた要素だ。習は軍組織を5軍の統合指揮構造に変えつつあり、そのモデルは米国だ。

陸軍に加え、PLA空軍、PLA海軍と新設のロケット軍が核・非核のミサイルを運用し、戦略支援軍がサイバー戦を統括し、中国の金融制度を攻撃から守る。


地図を書き直す

統合指揮命令体制への途上で中国は軍区7つを「戦域司令部」または「戦闘地区」5つに再編し、各区内を単一の司令官隷下におくことにした。これはブルームバーグが昨年9月に先駆けて報道している。ただし各区がどう機能するのか不明。

「指揮命令構造を解明するには多大な尽力が必要だ。誰が誰を支援するのか、最も大事なのは誰がどの予算を抑えるかだ」とフェリックス・チャン(フィラデルフィアの外交政策研究所)は見ている。問題は各区の管轄範囲がどこまで中国の国境の外に伸びるかで、新しい区割りが南シナ海のような問題地区でのPLA活動を定義するかだ。

権限の集中化

Xi Jinping confers military flags on the five newly-established theater commands of the PLA.
新設5軍区の軍旗を自ら手交する習近平
Photographer: Li Gang/Xinhua via Getty Images


習は軍の肥大した官僚制度を分割しつ自身の権限を中央化しようとしている。四つの総局を小規模15部門に分割し訓練、補給、汚職幹部取り締まり、部隊の規律維持、マルクス主義学習まで機能させる。各部門は中央軍事委員会直轄とし、委員会は習が自ら委員長の党組織だ。

「習はPLA内部で自身の基盤強化がねらいだろう。各部の長は習の子飼いが任命されるのではないか」とチェンは見る。

改革案の成否を握るのは習がPLA内部の既得権益にどこまで手を入れられるかにかかる。共産党統治を後押しする代償としてPLAは特権を享受している。その一つの例として新設5軍区のトップは全員陸軍出身だ。

習が一つ明確にしたことがある。PLA統制はあくまでも党の権限で、政府に移譲するつもりは毛頭ないことだ。これに対し海外専門家は軍の専門性強化には移譲は当然だとみている。■

2016年3月5日土曜日

南シナ海にステニス打撃群が展開中



The U.S. just sent a carrier strike group to confront China

By David Larter, Navy Times 11:41 p.m. EST March 3, 2016
USS John C. Stennis operations(Photo: MCSA Justin Rayburn/Navy)
空母ジョン・C・ステニスを駆逐艦巡洋艦各2隻と第七艦隊旗艦とともに同海域に派遣中と軍関係者が明らかにした。同空母打撃群は緊張高まる同海域で示威目的で航行する。中国が過剰な領有権を主張しており軍事化はその防御のためだ米国はみている。
  1. ステニスに随伴するのは巡洋艦アンティテータム、モビールベイ、駆逐艦チュン・フーン、ストックデールの各艦だ。第七艦隊旗艦ブルーリッジも同海域にあり、フィリピン寄港に向かう途中。ステニスはワシントン州を1月15日に出港していた。
  2. アンティテータムは日本を母港としており、駆逐艦マッキャンベルとドック型揚陸艦アシュランドを引き継ぐ形で「通常のパトロール」任務を別個行っていた。
  3. 即座に中国はステニス打撃群のパトロール航行こそ米国が軍事緊張を高めている証拠だと非難した。「中国が軍事化をすすめているとの主張は状況を見誤ることにつながりかねない」と全人代報道官傅瑩Fu Yingが述べている。「よく見れば最新鋭航空機や艦船を南シナ海に送っているのは米国の側だとわかるはず」
  4. 太平洋艦隊報道官は域内の米プレゼンスで反論した。「わが方の艦船や航空機は西太平洋で南シナ海含め定例的に投入されており、しかも数十年間継続している」とクレイ・ドス中佐が声明文を発表。「2015年だけでも太平洋艦隊所属艦船が延べ700日を南シナ海で航行している」
  5. 一方でステニス打撃群の派遣で中国や域内各国へ明確なメッセージを示したと専門家は見る。
  6. 「海軍とDoDがこの地域での自由航行原則とプレゼンスの維持を重要視していると明示したものだ」とジェリー・ヘンドリクス退役海軍大佐、現新しいアメリカの安全保障を考えるセンターのアナリストは述べる。「空母打撃群、指揮統制艦により海軍は同地域への関心の高さとともにプレゼンスを投射し兵力を世界各地に示す能力を誇示している」
  7. 駆逐艦ラッセンが昨年10月に中国が作った南シナ海人工島の12カイリ以内を航行したのが中国がスプラトリー諸島の領有を主張することへの挑戦の開始だった。
  8. 1月30日には駆逐艦カーティス・ウィルバーがパラセル諸島のトライトン島付近を航行した。ここも中国が自国領と主張している。
  9. 域内六か国が問題地帯の部分ないし全体領有権を主張している。スプラトリー諸島はサンゴ礁、岩礁他自然物で構成されており、中国が大規模な埋め立て工事を行ってきた。この二年間で中国はサンゴ礁の上部で土木工事を行い、周囲の海域のみならず南シナ海の大部分を自国の専管漁業権対象水域だと主張している。
  10. 主張の対立が1974年には軍事衝突に発展し、当時の南ヴィエトナムと中国がパラセル諸島で銃撃戦を展開しており意見の相違は今日も解決していない。■

2016年3月4日金曜日

★トランプの国防観は突っ込みどころ満載だ こんな人が大統領になっていいのか



日本にとっては共和党政権のほうが望ましい場合が多いのですが、今回はその共和党が分裂してしまうかもしれません。その原因がトランプ氏なのは明白で、保守派良識派が流れを変えようと躍起になってきましたが、時すでに遅しかもしれません。クリントン当選だけは阻止していただきたいものですが。
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Lunacy, Bluster & Unanswered Questions: Trump On Defense

By MARK CANCIAN on March 03, 2016 at 3:06 PM

Donald Trump's campaign photo. Donald Trump’s campaign photo.
国防力整備で断固たる姿勢の共和党ジョン・マケイン上院議員は同党大統領候補としてのドナルド・トランプに反対姿勢を表明し、前回の大統領候補ミット・ロムニーはじめ国防で指導的立場にある共和党所属議員65名とともに、「トランプ氏の国家安全保障観は無知かつ危険極まりない」と非難している。
「現在の世界情勢がこれまでにない複雑かつ危険を示す中、新帝国主義ロシア、強圧的な中国、拡張主義のイラン、狂気の北朝鮮指導者、さらにテロ活動の中東アフリカでの広がりを見るにつけ、くれぐれも共和党有権者には尊敬を集め知識も豊富な党指導層ならびに安全保障専門家がトランプ氏をどう評しているか注意をはらっていただき、じっくり考えてもらいたい。次期の最高司令官ならびに自由世界の指導者としてだれが適任かという点だ」とマケイン議員は声明を発表。
トランプは再び討論会でアメリカの将来と自身の役割を表明する予定であるため前OMBで国防関連の専門家だったマーク・カンシアン(戦略国際研究センター)による分析と主張の掲載に絶好のタイミングになったといえる。国の将来を祈ってもらいたい。編集部
トランプ候補の選挙運動から分析できるデータはほぼ皆無とはいえ、その国防構想を検分すべき時が来た。同氏が共和党大統領候補になる可能性が増えているためだ。トランプは既成の政策方針をすべて否定しており、国防政策でも同様の発言を繰り返している。共和党内の国防安全保障関係者に同候補へ不快感が高まっている。
トランプ陣営のウェブサイトに情報は少ない。わずか23秒で国防観を語っており、その要約は「わが軍を大規模で強力にし、どんな相手にも見下されない威力を実現する。退役軍人は大切にする。ISISは撲滅すべく迅速に排除する」というもの。トランプはインタビューや討論会で持論を展開しているので、合わせて分析してみよう。
そこでわかるのは本流たる共和党としての政策目標(本人は一応共和党の指名を狙っている)、大げさな大言壮語、全くの狂気、さらに対応できていない質問の山である。トランプ自身が取り上げている四分野(国防予算、退役軍人、、ISIS、同盟国との負担分担)で見ていく。
1. 国防予算の増額
主流派共和党政治家の言い分:アメリカの国防力増強は全員が共通で認識。共和党候補全員がこれを支持。
トランプの大言壮語:「誰にもバカにされない」とは言いえて妙だが、これが達成できないのは皆が知っている。歴史には強大国家が攻撃を受けた例がたくさんある。あらゆる面で優越性を永続的に維持できた国家はない。
トランプの狂気: トランプは2015年度の予算交渉は「予算管理の基本がまったくない」と否定し、「子々孫々に負担できない借金を負わせる」ので反対という。だがこの予算交渉があったから国防予算の大幅削減を回避できた。反対だったら国防強化の目標自体が危機に瀕していただろう。
トランプが回答しきれていない質問。どこまでの規模の軍を想定するのか。テッド・クルーズ上院議員の場合は年1,400億ドルの国防予算増額の前提で提言している。冷戦たけなわのころに軍に「低リスク部隊」で国防目標達成が可能かと問いかけがあったが、前提は第二次大戦規模の想定だった。トランプ候補もこれを念頭にしているのか。
2. 退役軍人の処遇改善
共和党主流派の主張: 退役軍人向け支援は党を超えた目標として政界は認識している。退役軍人問題はトランプが唯一政策案を展開している領域だ。トランプの考えは「無能な」幹部を解雇して運営効率をあげることだが、議会も退役軍人行政の強化を図っており考え方が一致する。
トランプの大言壮語。「退役軍人行政は悲惨な状態...汚職と無能な局幹部のせいで退役軍人が迷惑している。解雇せよ」
トランプの狂気: トランプ陣営資料によれば「退役軍人が必要な支援をいつでもどこでも得られる保障をする。もう遠隔地に出かけ長く待たされることはない」ようにするという。こんな誇張が基本線となると、退役軍人支援事業は政策目標に到達できず、退役軍人はさらに高い負担を強いられ失望感にさいなまれるだろう。
トランプが回答しきれていない質問。オバマ政権が任命したのは民間で実績を示したプロクターアンドギャンブル元CEOのロバート・マクドナルドだった。トランプはこれ以上のトップ人事があると考えているのか。退役軍人行政を民間ビジネスと同様に考えて退役軍人に選択肢を広く与えれば、退役軍人は当然今より好待遇を望むはずで行政経費が増大するが、これをどう処理するのか。まだ機能していない退役軍人局の一部業務を閉鎖できるのか。
3. ダーシュ(ISIL)に勝利をおさめる
共和党主流派の主張: ダーシュを敗北させる目標は広く共有されている。共和党候補者全員が同じ考えだ。オバマ大統領でさえダーシュの「撃滅」を表明している。
トランプの大言壮語:ダーシュを「早期に」排除するのは不可能。ゲリラ活動を短期に破った事例はない。
トランプの狂気: トランプはダーシュの収入源を断ち切るため、イラクの石油関連施設への空爆を主張しているが、これではイラク政府が離反してしまい、せっかく後押ししている現在の努力が水の泡となり、戦後の国土再建が困難になる。
トランプが回答しきれていない質問:どうやって早期に勝利を収めるつもりなのか。オバマ政権の方策は空爆と小規模地上部隊で現地同盟各国を支援するものだが、一定の成果を示しつつある。ラマディは奪回できたし、モスル攻略も始まっている。だが全体に非常に時間がかかっている。トランプは米軍を投入して短期のうちに勝利できると考えているのか。たしかに実施すれば迅速な効果を上げそうな唯一の選択肢ではあるが、繰り返し海外介入に慎重な姿勢を示してきたトランプの考え方と矛盾しそうだ。さらにシリア国内のダーシュはどうするのか。米軍を派遣し内戦に介入させるのか。
4. 同盟国にもっと負担させる
共和党主流派の主張:同盟各国に共通防衛の負担増を求めていくのは超党派で共通した政策目標でNATO創設時から不変。GDP比率で見ると米国は一貫して大幅負担をしているが、安全保障の効率は維持できるよう同盟各国に負担させる道を求めている。
トランプの大言壮語: 同盟各国に国防負担の「請求書」を送付する。
トランプの狂気:トランプ候補はイラクの原油1.5兆ドル相当を接収し米軍経費にあてると発言。現時点の原油価格だとイラクの石油収入全額を30年間にわたり召し上げることになる。イラクが同意するはずもなく、イラク原油を物理的に占拠するしかなくなり、実施は受容できないはずだ。
トランプが回答しきれていない質問: 有名なトランプの交渉力がここで発揮されるのではないか。冷戦後25年にわたり米国が交渉してもヨーロッパ各国はたいして変わっていない。NATOでの米国負担は2001年の50%が75%まで膨れ上がっている。日本(および韓国)では大きく負担比率が下がっている。もし相手側が今後は自国で防衛体制を整備して核兵力も視野に入れると申し入れてきたらどうするのか。日本が独自に大規模な軍事力を整備し多結果大きな被害が生じた前例はいまだに記憶に新しい。トランプは同盟各国を疎遠にさせずにいられるのか。

大統領選挙の公約ではあいまいな発言に終始するのは普通のことだ。クリントン陣営もルビオ陣営も詳細な国防安全保障の内容を発表していないので、トランプだけというわけではない。ただし、同候補の大げさな主張や無遠慮で過激な主張が感情から出ていることや回答できていない課題が多く残っているのは事実だ。■
マーク・カンシアンはオバマ政権の予算管理局で国防分野のトップ予算アナリストを務めた後、現在は戦略国際問題研究センターで国防アナリスト。



極超音速技術の開発で軍事優位性を狙う米国は中ロの追随を振り切れるか



Hypersonics could help Air Force thwart enemy anti-air defenses

By Phillip Swarts, Air Force Times2:38 p.m. EST March 1, 2016

X-51-Illustration.jpg(Photo: Air Force)
音速の五倍で飛ぶ極超音速ミサイルで米空軍は敵の高度防空体制を突破できると一部議員と専門家が3月1日に述べている。
  1. 「極超音速はバック・ロジャースの未来世界SFの話ではなくなった」と空軍研究所長を務めたカーティス・ベドゥケ退役少将は語る。「極超音速兵器はこちら側が開発すべきなのはもちろんですが、別の勢力も当然開発に乗り出してくるでしょう。真剣に対応が必要していかないとこちらが出遅れてしまいます」
  2. 超高速ミサイルが実現すれば米国は敵地奥深くを標的にし、高性能防空体制を克服できる。とくにロシアや中国に対し超高速ミサイルで防空網を突破し、脆弱な内陸目標を狙えれば有人機を敵地に侵攻させパイロットの生命を危険にさらさなくてもよくなる。
  3. 「敵の反応より一歩早く敵地に届けば勝ちだ」とスティーブ・ナイト下院議員(共、カリフォーニア)は語る。
  4. 米国は過去にも極超音速技術に投資している。直近では2013年にX-51ウェイブライダーがあり、テストでは三分間にわたり時速3,500 mph に近づいた。この成果はおおむね成功と受け止められたが、次のテストは2019年まで実施されないとベドゥケは述べる。
  5. それまでにロシアや中国が米国を追い越して極超音速技術の開発に成功するのを専門家は恐れる。防空ミサイルに応用されれば第四世代戦闘機は実質的に全機安全に飛行できなくなる。
  6. 「極超音速兵器は敵の防空体制に対応するため必要だ」とオリン・ハッチ上院議員(共、ユタ)は語る。「ロシアが危険な各国に武器を拡散させ、中国は技術開発で驚くべき成果を示している。中長期的には米軍は高性能装備を相手にせざるを得なくなる。そこで優位性を実現してくれる装備、つまり極超音速が必要だ」
  7. ハッチ議員は同僚議員に極超音速技術開発に予算を認めるよう要請しているものの予算環境は厳しい。
  8. ベドゥケと米空軍協会のミッチェル航空宇宙研究所は3月1日に報告書を公表し、極高音速ミサイルの意義を説いている。報告書は各議員、議員スタッフ、民間に配布され、議論を活性化させるのが目的だ。
  9. 「これからの道のりは決して予測不能でもなく、巨額予算にもならない」とベドゥケは述べ、「機会を無駄にしたのをくりかえすべきではない」と付け加えた。
  10. 「機会逸失」には極超音速技術は1960年代から存在したにもかかわらず真剣に試すまで30年を無駄にしたことがあるという。
  11. ナイト議員の実父ウィリアム・ナイトは60年代にX-15極超音速実験機のパイロットで、マッハ6.7の世界記録を保持している。
  12. 下院議員はその後極超音速の実績でほとんど進展がないと嘆く。「記録がずっと前に破られていて当然だ。父が生きていたらやはり同じことを言うだろう。先に進むつもりがあるのなら、新技術を手がけなければ、そうすれば技術を実用化できるのだ」■

2016年3月3日木曜日

国防装備に必須のレアアース供給に中国の影、日本近海の供給可能性は?


現在は価格が暴落しているので産業界にも危機感がないようですが、レーザーなど記事が指摘するように新技術の生死を決めかねない材料が中国に多いというのはなんという皮肉でしょう。レアアースはレアメタルよりさらに特殊な材料のようですね。実は日本近海が有望な開発地点として注目されており、今後中国がここに目をつけて日本の海洋主権に挑戦してくる可能性も出てくるでしょう。
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Pentagon Fails To Act On Crucial Rare Earth Minerals

By RICHARD WHITTLE on March 01, 2016 at 1:24 PM

Round Top (1) (004)テキサス州のラウンドトップ山は中国に代わりDoDの求めるレアアース材料の供給源になれるのだろうか。
このたび刊行された政府会計検査部門GAOの報告書では国防総省DoDがレアメタルの国家安全保障上の意義を理解していないと叱責している。レアメタルは中国が世界市場を支配しており、米国に必要量を確保する案を作成していない、関連部門の連携が取れていないと指摘している。これについてBreaking DefenseがDoDに照会したところは過誤はないとしながら善処を約束した。
  1. 「GAOによるDoDが重要資源獲得に尽力していないとの指摘に賛同しかねるが、継続改善の考えによりGAO報告書の提言は受け入れる」と報道官エリック・バジャー空軍中佐が述べた。
  2. ペンタゴン、防衛産業その他企業がレアアースで国防向けは100パーセント、民生用で85パーセントの供給を中国が支配している事実を都合よく無視しているという議論は低調なままだ。2010年に中国はこれを武器として日本向けレアアース供給を停止しレアアース価格は急騰した。
Fig 8 China-Japan zones
  1. 「南シナ海、東シナ海の状況を見ていると、中国が重要原材料を実行支配しているのを知る人がほとんど皆無なのは何とも皮肉だ」とテキサスレアアース資源会社 (TRER)のアンソニー・マーチーズ会長は指摘する。同社は投資元を募り、レアアース鉱脈を米国内で唯一の供給源テキサスで探査中だ。
  2. レアアースとは特殊な物性を有する17種類もの金属・成分で、強力な磁力や高度の耐熱性などを発揮できる。分類上は「軽い」レアアースと「重い」ものにわかれ、イットリウム、ネオジウム、ジプソジウムといった奇妙な名前がついているが、いったん不足すれば笑っていられなくなる。「最近の研究ではレアアースがないと米軍事装備の生産や運用ができなくなると判明」とGAOは述べている。「必要な資源に確実なアクセスを確保することがDoDに必要だ」
  3. ペンタゴンにとってこの資源がどうして必要なのか。(2012年度国防予算認可法で詳しく説明しているので引用する)
    • SSN-774ヴァージニア級原子力高速攻撃潜水艦一隻でおよそ9,200ポンドのレアアース材料が必要
    • DDG-51イージス駆逐艦では5,200ポンド
    • F-35共用打撃戦闘機なら920ポンド
    • 精密誘導弾、レーザー、衛星通信、レーダー、ソナー他装備にも必須と議会調査局が2013年に追加している
  4. 「レアアースは文字通り希少とは限らないが、地球表土で濃度が低いことが多い」と議会調査局は説明している。つまり採掘と処理が高価格になり、処理も多工程を必要とする。鉱石から酸化物成分に分離し、金属成分に精錬し、金属成分を合金に処理し、合金をデバイスや部品に加工し永久磁石として共用直接攻撃弾(JDAM)にの誘導部分に組み込むのは一例だ。
  5. GAOによればDoDで三部門がレアアースを所管している。国防補給局(DLA)の戦略物資室、生産産業基盤政策 (MIBP)室、戦略物資保護委員会 (SMPB) で、それぞれの製作方向性が「ばらばら」で「必須の」レアアース材料の定義でも共通認識がないという。GAOはSMPBが「国防安全保障上で必須なレアアースを定義し」供給がストップした際の影響をあらかじめ分析させたうえで「供給確保につながる戦略を展開させる」べきとアシュ・カーター国防長官へ提言している。また国防長官は「MIBPに対して確実な供給源を把握し、相当の期間にわたり確実な供給を確立するよう指示すべき」としている。
  6. 今回のGAO報告書はこの問題に関する政府報告書の最新版にすぎないが、これまでの報告書でも国防総省に迅速な行動をとるよう求めていなかった。またこの件に関し国防産業に対しても同じ姿勢だ。
  7. 「フォーチュン企業番付大手100社の主要企業と話しましたが、皆同じことを言っています。『何が問題なのか。必要なレアアースは低価格で調達するのに何の問題もないぞ』というのです」(マーチーズ) TRERは国防補給局が交付した契約により同社のラウンドトップ山(エルパソ南方)のレアアース鉱脈の時価評価を行っている。同社はイットリウム、イッテルビウムその他DLA指定のレアアースの分析用標本を製造しており、契約により秘匿条件を守っている。マーチーズによればラウンドトップ山から「将来のDoDレアアース材料の100パーセント供給は確実」だという。
  8. ただし、この問題を正しく認識すれば。■

2016年3月2日水曜日

★★F-35Aの空戦性能はすごい、と昨夏レポートと反対の感想がノルウェー空軍少佐から出ています




 

Norwegian F-35 Pilot Counters Controversial ‘Dogfighting’ Report

Lara Seligman, Defense News6:03 p.m. EST March 1, 2016
WASHINGTON – 昨夏にF-35の空戦能力を巡り問題報告があったが、それ以来初めて接近距離でのドッグファイト・シナリオで実際にF-35を操縦したパイロットが感想を述べている。
  1. ノルウェー空軍のモーテン・「ドルビー」・ハンシェ少佐がノルウェーで初めてF-35を操縦し、同機のドッグファイト結果を3月1日付のブログに書いている。ブログはノルウェー国防省のウェブサイトに掲載された。(下参照)
  1. ハンシェ少佐は2015年発表の報告書とは一切関係がないが、先に出た報告書の匿名報告者の指摘点では多くの反論をしている。
  2. 2015年発表の報告書ではF-16との比較でF-35の出力不足、操縦性の不足を高い迎角での空戦演習で指摘していた。F-35は「旋回戦でエネルギー利用の点で大きく劣」っていると匿名作成者は指摘。また「ピッチ角速度も遅すぎる」としていた。
  3. これに反しハンシェはF-35が迎え角をF-16より大きく取れるので、パイロットは機首を思う方向に向ける範囲が大きいと書いている。
  4. 「機体を敵の方向へ向ける能力が向上しており、F-16より早く兵装を向かわせることが可能だ。このため敵は防御に回ることが多くなり、F-16より早く機体速度を減速できた」とハンシェは記している。ハンシェは米海軍テストパイロット教程を修了し、ロッキード・マーティンF-16で2,200時間のフライト経験があり、ルーク空軍基地(アリゾナ州)の第62戦闘機隊で飛行教官兼兵装支援士官を務めている。
  5. 防御にまわるとF-35は減速しつつ「むちのように」激しく移動できるとハンシェは書いている。自動車の緊急時ブレーキより早く減速できる。
  6. 迎え角を最大にとるとF-35はパイロットの「ペダル入力」より早い反応を示し、機首の移動はF-16より迅速だったとハンシェは伝えている。
  7. 「これで機体の方向を変える別の方法がわかった。敵を十分脅かすに足る。この『ペダルターン』で旋回は低速でも相当早くなるとわかった。防御に回る際にはこの『ペダルターン』で状況を好転させる、または逆転させることも可能だろう」
  8. F-35の性能には批判的な向きがあり、高g高迎角操縦で機体振動あるいは「バフェティング」が発生するという評価もあった。このバフェティングが原因となりパイロットがヘッズアップディスプレイの数字を読み取れない事例が発生していた。ただしハンシェは第三世代ヘルメットを着用しており、この問題には遭遇していない。
  9. ハンシェも匿名報告者も意見を同じくするのはヘッドレストのせいで機体後部が見えにくいことだ。ハンシェはF-16よりF-35コックピットの視野が狭いと感じたという。
  10. 「F-16のコックピットの視界はよかった。ほかのどの戦闘機よりもよかった。見回して反対側の翼端を視認でき、右に向けば機体後部を見ながら左翼端を覗くことができた。これはF-35では無理だ。ヘッドレストが視野の邪魔になるからだ」
  11. だがハンシェはシートを前方に移動し側方に体を傾けて視界を確保してから頭を回して後方を覗いてみた。これでシートの左右を見通すことができた。
  12. ハンシェ少佐は過激な操縦の間も敵側の機体を視認しつづけることができたと強調しており、コックピットの視界制約は「F-35だけの問題」ではないとする。
  13. 「とりあえず結論としてこの機体ならF-16よりもっと積極的に操縦制御できるとしておこう」「ドッグファイトになったらF-35はどう動くか。結論から言えば、今回の経験からF-35なら攻撃姿勢をやさしく維持でき、敵に兵装を向ける可能性も多くなる」■


米国防長官がISIS向けサイバー作戦でロシア、中国向け実力も磨いていると認める


大統領選挙のせいもあり、現政権はイラク、シリアでの功績を示さないと不利になります。苦し布ではないでしょうが、今回サイバー作戦の一部を公表しましたが、それでも内容はよくわからい形になっています。これをさらに各地で拡大するということですが、特定の場面で特定の方法を使うということでますますその内容はわかりにくいものになるでしょうね。
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Cyber War Against ISIL Hones Weapons Vs. Russia, China

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 29, 2016 at 2:26 PM

ISIL militants
WASHINGTON: 米国が実施中のダーシュ(自称イスラム国)を狙うサイバー戦の概要を国防長官と統合参謀本部議長が明らかにしている。軍高官が米国がサイバー兵器を敵に投入している状況を認めたのはこれがはじめてではないか。もちろんサイバーは情報活動ではすでに投入されている。
  1. 「現在の使用方法は全く新しいもので、驚きの内容もあり、一部はISIL以外の他の課題にも世界各地で利用できる内容です」とカーター長官は報道陣に述べている。その「他の課題」とはイラン、北朝鮮、ロシア、中国であると長官は列挙している。
Ashton Carter
Ashton Carter
  1. 「サイバーの運用は特にシリアでISILの指揮統制をかく乱し通信連絡手段の信頼性を落とし、通信系統の負担を過大にして信頼を崩し機能を喪失させることであり、各地の部隊への指揮命令能力を妨害すること、占拠中の住民や経済への支配力を低下させることにある」とカーター長官は述べ、一言でいえばダーシュの軍事、政治、経済の中枢部分を攻撃しているという。
  2. 「通信系統の過負荷」というと通信が機能しなくなるようにしているようだが、ハッカーが簡単なプログラムで相手を狙い、処理能力以上の交信を試みることがある。またウイルスで相手のコンピュータを観戦させ処理能力を低下させることもある。ともに米サイバー司令部の仕事としてはお粗末に聞こえる。「相手のネットワークへの信頼を崩させる」とは高等手段が使用されている可能性を示唆し、偽情報を植え付けるとか、機能不全にすることが想定される。
  3. フォートミードに本拠を置くサイバー司令部(戦略軍隷下)は中央軍を支援してISILへのサイバー攻撃の先鋒を切る。カーター長官は「ISIL作戦の経験からすべての戦闘司令官が恩恵を受けている」と述べている。
  4. ではデーシュに向けたサイバー作戦は将来の作戦のお手本になるのか、と記者が質問した。これに対し統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将はそこまで画一的ではないとし、「将来の各司令官に役立つツールを整備している」と答えた。つまり状況に応じ、敵の実態に応じた手段を使い分けるということだ。
Gen. Joseph Dunford
Gen. Joseph Dunford
  1. サイバー攻撃は昔から変わらない目標である敵の「通信線」を遮断する方法のひとつにすぎない。サイバー空間での攻撃と並行してイラク政府軍と米国はじめとする同盟軍は物理的に道路、建物、河川交通、砂漠通商路を地上で遮断している。
  2. 「モスル奪回作戦が開始された。この瞬間にもモスル包囲網を強化している。ラッカも同様だ」とダンフォード議長は述べている。モスルはダーシュが実効支配中のイラクで最大の都市だ。ラッカは同集団の実質的なシリア領内の首都だ。
  3. 一部のサイバー攻撃はあまりにも微妙でダーシュも攻撃の自覚を感じていないとダンフォードは表現する。「わが方の作戦で一部ストレスを感じているだろうが、情報化社会では普通のストレスもある。その違いを感じさせたくない」
  4. 仮にISILがオンライン接続を使えないと判断すればローテク手段に戻るのではないか。エドワード・スノウデンが国家安全保障局の盗聴暴露して以降テロリストは続々と携帯電話の利用をやめている。オサマ・ビン・ラーディンは昔ながらの密使に切り替えていた。
  5. 「ISILの通信をかく乱するためサイバー以外の手段もある」と電子戦の利用をカーター長官は認めており、「それ以外の方法も利用するが、どちらでも切断に成功している。そういった別手段で傍受が簡単にできる場合もある」
  6. カーター長官は当然ながら詳しく述べないが、ダーシュに高度暗号化された「ダークウェブ」チャンネルで携帯電話を使うよう追い込んでいるのだろう。これは朗報で携帯電話は小型の短距離無線機で、通信中継を必要とし、発信はすべて追跡可能だ。暗号解除しなくても電子戦操作員なら三角測量で発信元を特定できる。これは情報機関にも攻撃実施にも価値ある材料だ。
Jason Healey
Jason Healey
  1. その他の軍事作戦との統合効果が出ており、サイバー作戦を特別な存在にしているとコロンビア大の主任研究員ジェイソン・ヒーリーが指摘する。A Fierce Domain: Cyber Conflict, 1986 to 2012の著者ヒーリーは「サイバーを武力として使っていると事が新しい動きだ」とし、これまでサイバーを手段として認識したのと対照的とする。
  2. 「高度でない目標が多く、技術面では興味深い内容はありません」とヒーリーは述べており、ハッキング分野の傑作とされるスタックスネットと対比している。「ただし作戦上で興味を引くのは、作戦立案上で採用されていることですが、政治面でたぶん一番大きな意味があり、今回の発表で効果を認めたことです」とする。カーターが今朝ここまで率直に語った背景にはシリア、イラクで成果を出していないと現政権が非難をあびていることがある。
  3. スタックスネットは謀略活動の一部で、米国法で戦争行為を規定する連邦法規定第50巻の制約を受けない。だが現在進行中の作戦は軍の活動を規定する第10巻に従うもので、クラウゼビッツもいうように政治その他の手段の延長としての戦争行為なのである。■