2017年12月20日水曜日

トランプ大統領の国家安全保障戦略を読み解く

言われるような軍事のみを重視した安全保障構想ではありません。安全保障と言うと軍事「しか」思い起さない、あるいはそもそもトランプは軍事優先で所との思い込みは危険で、極めて包括的に世界を眺めています。

短くまとめてもこのボリュームなので原文は相当の内容があるのですが、例によってメディアは報道しない自由を行使し軍事力拡大だけを取り上げトランプ政権を批判しているようですね。

しかしよく検討されており、包括的に米国の価値観を擁護、普及させようとしている極めて健全な米保守主義のマニフェストであるのは明らかです。規制緩和と減税で経済を拡大していこうというのはレーガン時代をほうふつとさせるものがありますが、中国の経済「進出」に米国流企業経済を前面に立てた対抗策というのは時代を感じさせます。

また公平な負担があちこちに盛り込まれているのは相当の不満がたまっていることを思い起こされ日本も無関心ではいられないでしょう。国際機関等の枠組みへの関心を呼び掛けているのは内向きになりがちな米国人への注意喚起でしょうか。ともかく無視できない内容を含んでいますので是非ご一読ください。 

民主党前政権時代と比較するとやはりトランプが当選してよかったと思えてくるのは当方が「保守」なせいでしょうか。


We Broke Down Trump's Security Strategy Into Bullets So You Don't Have To Read All 60 Pages

トランプの安全保障戦略原文60ページを短くまとめてみた

The Trump Administration calls for more defense spending, new economic initiatives, and more aggressive diplomacy.

トランプ政権は国防支出増を求めながら経済面でも新機軸を持ち出し外交活動をもっと積極的に展開しようとしている

KYODO VIA AP
BY JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 18, 2017


2016年大統領選挙でドナルド・トランプ候補は米国内外の潜在的脅威に触れていた。大統領就任後ほぼ一年で国内外に危険が山積する中でトランプが新たな国家安全保障戦略構想を発表し、「アメリカ第一」を盛り込んだと説明している。
2018年12月18日にホワイトハウスが戦略構想全文をトランプ大統領の演説に先立ち公表した。文書は60ページほどでトランプ政権が現在の地政学的状況をどう把握しているか示し、その中で米国の権益をとらえ、今後の危険を示しながら米国政府の対応策を説明している。
ホワイトハウスは国家安全保障策を四本柱に分けている。米国流の生活様式を守り、米国の繁栄を推進し、力で平和を維持し、米国の影響力を高めることだ。総論に傾くきらいはあるが戦略構想からトランプ政権が目指すこの国の方向が見えてくる。

序論

  • 文書ではトランプは「米経済を再活性化させ、軍を再建し、国境を守り、我が国の主権を守り、わが国固有の価値観を先に進めるとお約束した」とし、「米国は異例なまで危険な世界の中にあり、多様な種類の脅威に直面し、しかも脅威は強まっている」と紹介。
  • その中で北朝鮮、イラン、「過激イスラムテロ集団」、「犯罪カルテル」、「不公正貿易行動」および「同盟国間の不平等な負担受け入れ」を具体的に取り上げている。
  • 2017年に入りトランプはアフガニスタン戦の方針変更を発表し、イランの影響を封じ込め、エルサレム市街地の現状を維持すると述べていた。
  • 「この国家安全保障戦略は米国第一を重視している」とし「原則に基づいた現実的政策で結果重視としイデオロギーは重視しない」
  • 序として米国建国の理想と伝統に訴え、米国憲法が保証する自由ならびに法による支配を重視し「我が国の出発点を誇りとし過去の英知を尊重する」
  • 「米国の成果と世界での立ち位置とは決して偶然に生まれたものではない」
  • 文書では「奴隷制を終結させた」南北戦争、アフリカ系米国人の公民権運動、さらに米軍の第一次大戦、第二次大戦への参戦、さらに冷戦に言及。
  • 米国は「ファシズム、帝国主義、ソヴィエト共産主義を敗退させ民主共和制のもつ効力と耐久力への疑問を消滅させた」としながら米国自身が植民地を保有した歴史には触れていない。
  • 新国家安全保障戦略ではこうした成功で「独善的態度を生んだ」とし「我が国が構築を助けた国際的仕組みを食い物にする国」があるとする。
  • 具体例は示さず、序の部分では名指しせずに外国や過去の米政権が米国の海外での競争力を低下させながら米国人に規制と重税を課してきたとこき下ろしている。これはトランプが選挙中に繰り返してきた主張であり、大統領就任後も同様だ。
  • 「米国は世界各地で直面する政治経済軍事上の挑戦に対応していく」
  • ロシアと中国は米国の権益に軍事経済両面で挑戦する勢力とされ、北朝鮮とイラン、さらに「聖戦を主張する戦闘員集団、国境を越えた犯罪組織が示す」脅威に再び触れている。
  • 「ライバル勢力はプロパガンダ他の手段を使い民主制の信用を失わせようとしている」とあるが、ロシア政府が2016年大統領選挙に直接かつ積極的に関与があったのではとの一般の見方には触れていない。
  • かわりに「野蛮なイデオロギー」がISIS、アルカイダ他「聖戦主義テロ集団」にあり「シャリア法」を適用しようとしていると非難。米国には根拠のない陰謀説があり、米国内のイスラム教徒や移民がイスラム教を全国に広く押し付けようとしていると見る向きがある。
  • 序では米軍事優位性への通常、核両面での課題を取り上げ、北朝鮮の大量破壊兵器のみ記述し、生物化学兵器と「高性能ミサイル」に触れている。
  • 「かつて米国が指導性を発揮せず、悪意ある勢力が米国の不利益になる形で穴を埋めた教訓を学んだ」
  • 「競争とは常に敵意を伴うとは限らないし、対立につながるものでもない。米国が自らの権益を守る姿勢を取ることはだれも疑わないだろう」

柱その一 米国国民、本土、米国式生活水準を守る

  • 「国境警備を強化し入国管理制度を改革する。重要インフラストラクチャーを守り悪意あるサイバー攻撃の実行犯に対処する。ミサイル防衛システムを多層構造とし本土を防衛する。また脅威の発信源に脅威を与え、聖戦主義戦闘員は入国前に食い止める」
  • 最初の柱では北朝鮮やイランと言った国家による軍事攻撃に対応するほか、麻薬や人身売買、知的財産権の侵害、米国政治に対する外国の介入は米国及び米国流生活様式への脅威と受け止め対応する
  • テロ問題は「聖戦主義戦闘員」が中心とするが戦略構想では「米国は偏狭な見方や抑圧は拒絶し一つのアメリカの上に価値体系を築いている。過激思想は拒絶し法執行、民間部門そしてなりより米国民の間に信頼を増やす根本を確保する」とある。
  • 国境警備強化にはトランプ大統領の持論である壁の構築と旅行禁止措置があり、大量破壊兵器に関連した国土防衛もある他テロ攻撃のたくらみ、伝染病の発生、国際犯罪の抑制、サイバー攻撃、死活的な民間インフラを守る、電磁パルス(EMP)攻撃を列挙している。
  • そうした脅威への対応として情報活動の強化を訴え、同盟国との情報共有もあり、脅威を「根源で」断つ対策や海外諸国に自助努力を求め、米権益に脅威を与えるいかなるものに責任をとらせるとしている。
  • 演説でトランプはテロ攻撃を未然に防いだロシアのウラジミール・プーチン大統領との情報共有に触れた
  • 「昨日プーチン大統領から電話が入り我が国CIAがロシア側にサンクトペテルスブルグでの大規模テロ攻撃のたくらみがあると伝えたことへ感謝していた。ロシア側が犯行前に容疑者を逮捕しひとりも生命を失わなかった。これはすごいことでこうあるべきだ。このようにしたい」
  • 機微情報を提供していく姿勢のトランプ政権ではほかの事例もイエメン、ソマリアやアフリカ各地で見られ、米同盟各国も防衛努力の負担が必要と説く一方、パキスタンなどの提携国にテロ集団との闘いを求めている。
  • 弾道ミサイル防衛の強化も訴えている他、生物科学技術の進歩で伝染病と戦い、政府系コンピューターネットワークの安全性強化、重要民間施設をサイバー攻撃から守り、一般米国人にも深刻な事態が発生した場合を想定した準備態勢の強化を訴えている。


柱その二 米国の繁栄を促進する

  • 「米国経済の恩恵を米国で労働者、企業双方が享受できるよう再生する。公平かつ双方向の経済関係で貿易不均衡を解消する。米国は研究開発での主導的立場を維持し我が国の知的財産を不当に取得しようとする競争相手から国内経済を防護する。米国のエネルギー非依存状況を守り、エネルギー利用に制限を加えないことで経済を活性化させる」
  • トランプ政権は経済成果を直接国家安全保障に結び付け、国内要因、国際関係、米国内のイノベーション創発、米国内のエネルギー関連部門支援に焦点をあてる。
  • 共和党の綱領路線に歩調をあわせ、戦略構想では規制撤廃、減税、財政赤字削減が国内経済に不可欠としている。
  • 「世界は注視している。世界は我が国が歴史に残る米国の家庭、企業両部門向け減税策があと数日で通過するのを見ている」としながら減税で赤字がさらに増えるとの見方には触れていない。
  • 国内インフラの再構築にも触れており、これも大統領選挙の公約だ。
  • 「ワシントン州で発生した列車事故の犠牲者へ心からの哀悼と祈りを示すことから始めたい」とトランプは演説冒頭で述べた。「だからこそ国内インフラにただちに手を入れるべきだ」と述べるが今回の事故では線路に原因があったのかはまだ不明で報道では線路上に妨害物があったことが原因としている。
  • これとは別に米国人に製造業従事に必要な技能として特に科学技術や数学での技能向上を手助けする事業も必要とした。
  • 貿易協定の枠組みでは言及がなかったがトランプは北米自由貿易協定NAFTAを繰り返し非難しており、今回の戦略構想では新規かつ「近代的な」貿易協定が必要とした。トランプ政権は新しい貿易協力を作るとし、環太平洋パートナーシップ(TPP)を評価せず環大西洋貿易投資協定(T-TIP)にも敵意を示す。
  • さらに米国は「共通の意思の提携国」と不公平かつ不正な海外での貿易慣行や経済活動に対抗して「新たな市場機会」を創出したいとする。
  • 科学技術分野での米国発イノベーションを後押しすることで才能ある人材や資金力を集めたい。
  • 米政府は官民連携を大学、民間企業他組織との間で推進し高度防衛関連の研究開発を進めるべきだ 
  • 米国には強力な知的財戦保護措置および国家安全保障基盤 National Security Innovation Base (NSIB)が必要で「経済窃盗」やスパイ活動に備え、特に中国の動向に注意が必要だ。米政府は中国政府が軍事機密や民間企業の知的データなど機微情報をサイバー攻撃で盗んでいると繰り返し非難している。
  • 議会の米国内海外投資委員会CFIUSの活動強化が必要で敵になる可能性のある勢力が「米国の官民両セクターで不当に技術や技術知識を得る」ことのないようにすべきだ。
  • サイバーセキュリティにはこれまでより高い広範な重点を置き機微情報の窃盗に対抗すべきだ
  • バラク・オバマ大統領から大きく変わりトランプ政権の国家安全保障戦略ではアメリカ国内のエネルギー資源を重要視し気候変動の緩和に向けた各国政策を米国家安全保障への脅威にとらえる。
  • 戦略構想では石炭、石油、天然ガス、原子力を列挙するものの水力、太陽光、風力他のエネルギー源に個別に触れずすべて「再生可能」エネルギーとしている。
  • ドランプ大統領は「クリーンコール」含む化石燃料技術の支持を表明しており、気候変動のパリ協定脱退を発表済みだ。
  • 「米国の指導力が成長を阻む政策課題に対抗するうえで不可欠であり実施されると米経済、エネルギー上の安全保障に悪影響が出る」
  • 「米国は温室効果ガスや従来型の環境汚染低減で引き続き世界の先頭に立ち、米経済の成長拡大を目指しつつ、他国の手本となり、イノベーション、技術、ブレイクスルー、エネルギー効率化の一連の流れを目指し、規制で達成できるとは見ない」
  • 国防総省が世界的な気候変動の影響に懸念している点には触れていない。同省は気候変動を世界情勢の不安定化とともに米軍施設や作戦にも影響を与えるとみている。


柱その三 力により平和を守る

  • 「力により平和を守るべく軍を再建し敵勢力を抑止し必要なら戦闘しても勝利できるようにする。国力が許す限りの手段を活用し一国による世界支配は許さない。米国の国力を再強化し宇宙とサイバー空間もここに含む。同盟国提携国が米国の国力を拡大する効果をもたらす。各国には公平な責任負担を通じ共通の危険に対する防衛を求めていきたい」
  • 「力による平和」はロナルド・レーガン政権が1980年代に有名にしてから共和党でよく使われる表現だ。
  • 三番目の柱では脅威のはロシア、中国、北朝鮮、イラン、戦闘員、国際犯罪組織であるとの説明が再出している。
  • 「中国は米国をインド太平洋地区から放逐しようと狙い、国家主導の経済モデルを広め秩序を自国に都合の良い形で再構築しようとしている」
  • 「ロシアは世界における米国の影響力を弱めようとし、同盟国提携国との関係を遠ざけようともしている」
  • 「イラン政権は世界各地でテロ活動を支援しており、弾道ミサイル開発を進めつつ核兵器開発の再開の可能性があり、実施すれば米国や関係国の脅威となる」
  • 戦略構想では特にイランの動きに触れ、「イスラエルが中東の問題の原因でなない」とし「イスラエルと利害が共通すると気付いた各国が共通脅威に立ち向かっている」と評している。
  • トランプ政権はエルサレムをイスラエル首都と認定したがその前にはこの見方の根拠は確かに存在した。2017年12月18日に米国はその他14カ国が求めた安保理決議声明を拒否権で阻止した。主要同盟国の英国、フランス、ドイツ、日本含む各国は米政府に認定取り消しを求めていた。
  • 「北朝鮮は人間の尊厳など眼中にない独裁体制の支配下にあり25年以上にわたり約束はすべて破り核兵器と弾道ミサイル開発に突き進んでいる」
  • 「聖戦主義テロ戦闘員集団のISISやアルカイダ等は急進イスラム主義で共通項があり米国や関係国に暴力行使を厭わずその支配下にあるものを不幸にしている」
  • こうした脅威に対応すべく国家安全保障戦略では規模と戦力両面で米軍の増強を強く求め、米技術力が高水準なので規模縮小を補えるとの考えを一蹴している。冷戦後にこの考えが米軍立案部門でも強まり「軍事行動の革命」につながり「第三相殺」としても現れていた。
  • 「米国は圧倒的な力を維持すべきであり圧倒規模の軍事力で敵が勝利を収められないようにし未来の米国軍の男女が不利な状況で戦闘に追い込まれないようにすべきだ」
  • 通常兵力、核三本柱の近代化の継続、国防産業基盤の保持と活性化を求めている。
  • 注目すべきは戦略構想で米国による核兵器使用が受け入れられる状況が生まれる事態に暗示している点で今後のペンタゴンにおける核運用体制の見直しに関連しているのだろう。現時点で米国は「核の非先制使用」方針をとらないが極めて特殊な状況以外では核兵器を投入しないと述べてきた。
  • 「核抑止戦略で紛争すべてを食い止められないが、核攻撃、非核兵器による戦略攻撃や大規模通常攻勢の予防に不可欠だ。さらに米核抑止力は30を越える同盟国提携国に提供されており各国の安全を保障しながら各国が核兵器取得に走る必要をなくしている」
  • 宇宙、サイバー空間でも新しい防衛安全保障策を求めている。トランプ政権は有人宇宙活動の再開を強く求め、マイク・ペンス副大統領を中心に国家宇宙協議会を再開させているほか、米軍のサイバー軍団の位置づけも引き上げている。
  • 国家安全保障戦略ではオープンソースから情報取得の必要を重視し、ソーシャルメディア他インターネット情報源の活用を訴えている。
  • すべてを実現するためトランプは支出上限枠を撤廃するよう求めている。上限は2011年予算管理法の結果生まれており、強制削減策として知られる。「今回の戦略構想では国防予算強制削減策から自由になる必要がある。これは撤廃する」
  • ただしこれは議会の責任であり大統領権限は限定され、議会は短期間の「継続対策」で政府機能を維持しながら予算計上に苦闘しているのが現状だ。
  • 2018年度国防予算が2017年11月に通過し、トランプ大統領が12月初めに署名したがトランプが求める軍事拡大に必要な予算増は盛り込まれていない。
  • 力による平和では軍事面のみならず外交にも焦点をあわせるが、軍事協力を重視している。
  • 「外交の枠組みを超えて前方配備を進めるべきで紛争当事国の軍組織との連携もあり得る」
  • 外交部門は経済関係強化を米同盟国提携国と進めることに力点を置くべきだが米国に有利に働く一方で敵対国には経済圧力をかけるべきである。
  • 外交部門は敵意に満ちたプロパガンダや「武器としての情報」を国営メディアや取り巻きが投げかけられる最前線に立ち意図的に虚偽の情報や緊張を高める目的の情報を目的としたソーシャルメディアなどインターネット上の「流し釣り」に注意喚起すべきだ。
  • 中国が人工知能で自国民にインターネット公開情報を操作していること、ロシアによる情報戦、テロ集団がオンラインで人員募集しながら過激思想を広めていることを特記している。
  • 「もっと費用対効果の高い方法で米国の求める国家安全保障と一貫したコンテンツを提供し、評価できる方法を検討したい」

柱その四 米国の影響力を促進する


  • 「米国の影響力を強化する。なぜなら世界が米国の権益を支持し我が国の価値観を反映することで米国は安全となり国際機関での指導力を発揮でき、米国の権益と原則を守れるからだ。米国の示す自由、民主主義、法による支配を堅持せば圧政の下に暮らす者は希望を見いだせる。民間セクター主導による経済成長の促進でわれわれは触媒となり、志を持つ各国が貿易、国防相手国になれるよう助ける。我が国は寛大な国家でありつづけながら他国には責任負担を求めていきたい」
  • 国家安全保障構想では「志を有する提携国に期待を与える」ことを求めているが、開発途上国の諸制度は脆弱で、弱体な国家が総じて不安定さの源泉であり、米国の権益に脅威を生む原因となっている。
  • トランプ政権が示す開発の主体は経済で、民間部門との連携や民間に投資意欲を海外各国のプロジェクトに持たせることだ。ただしそうしたプロジェクトは米国にも恩恵を生む必要がある。
  • 戦略構想では植民時時代の重商主義とは違うとくぎを刺し、双方が恩恵を受けると強調している。
  • 中国の国名こそないが、この構想は中国が得た影響力に対抗する意図が明白で、特にアフリカでの投資と効果を狙うようだ。
  • トランプ政権は多国間フォーラムへの米国民の関心を喚起しており、国際連合、国際通貨基金や世界貿易機関当を想定している。トランプ本人は国際機関を総じて米国や同盟国に不公平な立場をとっているとして非難している。
  • 「自由かつ開かれたインターネット」を世界規模で維持することを求めているが、連邦通信委員会が最近になりいわゆる「ネット中立性」廃棄を決めたことを批判する向きはトランプ政権にはこの方針の国内適用の意向がないと見る。
  • 最後に米国の価値観の擁護を求めている。政治と信仰の自由であり、世界各地での食料共有の保証であり、医療ケアの実施だ。同性愛者や性不統一者への言及はなかった。

ボーイングが12月19日に発表したのはMQ-25海軍向け無人給油機だった

Boeing Unveils Prototype For The Navy's MQ-25 Drone Tanker

Competition ボーイングが海軍MQ-25無人給油機競合への自社提案を発表

After teasing the reveal on social media, we finally get our first peak at the

company's clean-sheet, aircraft carrier-borne, unmanned tanker design.ソーシャルメディアでのもったいぶった発表は完全新型空母搭載無人給油機と判明


BOEING

めいたツイッター投稿で好奇心を刺激してくれたボーイングの謎の機体の正体は米海軍向けMQ-25スティングレイ無人給油機案と判明した。同社はジェネラルアトミックスに次いで同事業参画をめざす二番目の企業となった。
 2017年12月19日、ボーイングが新型無人機をファントムワークス作品として発表した。ファントムワークスは極秘機材の担当部門でロッキード・マーティンのスカンクワークスに相当する。同社はこの機体の社内呼称等を発表していない。これでMQ-25参入を表明しながら機体発表していないのはロッキード・マーティンだけとなった。MQ-25はCBARS(空母搭載空中給油システム)としても知られるが当初はUCLASS(無人空母運用空中監視攻撃機事業)だったが経緯があり変更されたもの。
 ボーイングのファントムワークスで給油機をまとめるドン・ギャディスDon Gaddisは「ボーイングは空母搭載機を海軍に90年にわたり納入しています」と述べ、「技術製造開発契約を交付いただければフライトテストを実施できる状態です」と声明文を発表した。
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Revealed and ready! #BoeingMQ25 #UAS future @USNavy tanker will extend the range of combat aircraft from the flight deck to the fight!
 ボーイングによれば同機は機能状態にあるが飛行していない。地上エンジンテストに次いで艦上公試を2018年早々に行いたいという。米海軍は競合各社の作品の提示期限を2018年1月3日に定めている。
 今回公開の機体には同社が以前発表の構想図と共通点が少ない。降着装置は空母運用を想定してると分かり、ステルス性能の要求はないが、機体形状は低視認性の特徴が見られるもののステルス特化ではないようだ。また今回発表の試作機には下のUCLASS想像図と同じ絵図が使われていることに注目だ。
 ボーイング公開の写真に見られる空気取り入れ口は小さく謎が残る。視覚上の錯覚なのか意図的に小さいのか、あるいは大きな取り入れ口が別にあるのだろう
BOEING

 総合するとボーイングのMQ-25提案はジェネラルアトミックスのシーアヴェンジャー構想と類似している。後者はプレデターC/アヴェンジャー無人機を原型とする。両社案はV字型尾翼をつけ、機体背部に空気取り入れ口があることで共通している。
GENERAL ATOMICS

 ジェネラルアトミックス提案のシーアヴェンジャーは原型のプレデターC/アヴェンジャーを燃料搭載トラックに改装している。ロッキードの構想は不明だがおそらく相当の内容になるだろう。

 ボーイング機に今後のミッション追加を想定した拡張余地があるか不明で、センサー搭載機や通信中継機、少量兵装を搭載する機体などが想定される。このためには機体内部に格納スペースや開口部が必要となる。米海軍はレーダー搭載スペースは少なくとも必要としているようだ。

 その点で機首降着装置のすぐ後ろに見える腹部ベイが比較的大きいように見える。ただし大型のアクセスパネルなのかペイロード搭載用の空間になるのか判断できない。
BOEING
 主降着装置の背後にもアクセス部分またはベイがあるようだ。この空間にミッション装備を搭載できるか、兵装庫に転用できるのか不明だ。

ボーイングに詳細情報や写真の提示を求めたが、同社からは来年まではこれ以上公開する内容はないと言ってきた。ボーイングには高性能無人航空システムで過小評価された過去がある。

 同社はすでに15年以上前に半自律的かつネットワーク化された無人戦闘航空機(UCAV)を誕生させた(少なくとも公表されている範囲で)実績があり自社費用でこれを発展させていたがUSAFはまるでこの画期的な性能が存在しないかのごとくふるまっていた。MQ-25契約自体は当初こそ多大な利益をもたらさないが、受注すれば未来の航空戦闘に大きな足場を確保できる。

 だが極秘の世界で飛ぶ機体については不明のままになっていることに注目すべきだ。ロッキード・マーティンのスカンクワークスがこれまでの高性能無人機技術を応用した機体を提示してジェネラルアトミックス、ボーイングともに驚愕する事態も考えられる。 

 ボーイングのMQ-25提案やCBARS事業の進展では今後も随時お知らせする。海軍初の高性能空母搭載無人機は要求内容が引き下げられ空母航空戦力の無人機化が減速されてしまったが、今後の戦略戦術両面で大きな意味を有することは事実である。■

Contact the authors: jtrevithickpr@gmail.com and tyler@thedrive.com

★米海軍レイルガン開発はここまで来ている


  • これも何度も出てくる話題ですが、レイルガンの開発は本当に順調なのでしょうか。レイルガンの基本は電力であり、むしろ運動エネルギーを使う超高速弾に関心が移りそうな気もします。しかし既存装備で運用した場合の運動エネルギーを考えるとそんなにすごい威力はないのではと思えますが、真相はいかに。

 

U.S. Navy Rail Gun to Test Rapid Fire and Move Closer to Combat

米海軍レイルガンは迅速連続発射テスト中で実戦化に近づいている


December 17, 2017


ッハ7.5まで電動加速される米海軍の超高速発射弾はレイルガンから発射
され敵の水上艦船、地上車両、ミサイルを狙い射程は最大100カイリ(約185
キロ)だ。
  • 未来の話に聞こえるがSF映画の世界ではなく、あと一歩で実戦投入できる。実現すれば遠距離攻撃しながら敵は攻撃できなくなるはずだ。投入エネルギーは時速160マイル(約200キロ)で走行する小型乗用車とほぼ等しいと開発陣は説明。
  • 海軍研究本部(ONR)は電磁レイルガンを実験室から海軍水上船センターのあるダールグレンでレップレイトテスト試射場に設置し発射テストを行う。
  • 「初期レップレイト発射(連続発射)は低出力ながら成功しています。次のテストはエネルギーを増加させながら安全を確保し、発射回数も増やし一斉射撃も試します」とONRは説明。
  • レイルガンのレップレイト発射テストでは今夏に20メガジュールでの発射に成功し、来年は32メガジュールに増加させる。ちなみに1メガジュールとは1トンの物体を時速160マイルで動かすのと等しいとONRは説明。
  • 「レイルガンやその他指向性エネルギー兵器は将来の海洋優位性達成の手段」とONRで海軍航空戦兵器開発部をまとめるトーマス・ビュートナー博士Dr. Thomas Beutnerは述べている。「米海軍がこの画期的技術を最初に実用化して敵勢力への優位性を維持する必要がある」
  • 作動には電力でパルスを生成させる。パルス生成系統にコンデンサーが瞬時に大電流を放出する。電流は3百万から5百万アンペアで10万分の一秒に1,200ボルトを放出するという。これで重量45ポンドの物体を百分の一秒でゼロから五千マイルに加速する。
  • 時速5,600マイルに達すると超高速発射弾となり運動エネルギーが武器となる。爆発物は使わない。超高速発射弾は秒速2キロと通常の兵器の三倍の速力を実現する。発射回数は毎分10発だという。
  • 巡航ミサイル迎撃の能力もあり、発射弾は艦内に大量搭載できる。大型ミサイルとちがい超高速発射弾の単価は25千ドルにすぎない。
  • レイルガンの出力は艦内電力系統または超大型バッテリーで確保する。装備は大きく発射機、エネルギー貯蔵、パルス生成ネットワーク、超高速発射弾、砲台と五つにわかれる。
  • 現在はGPS誘導で固定目標、静止目標の攻撃を想定しているが、将来はレイルガンで移動目標も攻撃対象になると海軍は説明してきた。
  • 海軍はDoDや陸軍とともにレイルガンの超高速発射弾を海軍の5インチ砲や陸軍榴弾砲といった既存装備で運用する実験を行っている。
  • また電磁レイルガンをハイテク艦のDDG-1000駆逐艦に2020年代中ごろまでに搭載できないかと検討中だ。
  • DDG-1000には統合給配電系統があり、艦内で十分な電力供給が可能だ。海軍上層部もDDG-1000がレイルガン搭載に最適と認めながら追加検討でリスク対応も必要だとする。
  • DDG-1000は統合給配電系統の70メガワット発電容量が将来のレイルガン運用の鍵を握ると見られる。
  • またDDG-1000級の排水量は15,482トンとイージス搭載駆逐艦の9,500トンより大きい。
  • DDG-51アーレイ・バーク級駆逐艦でのレイルガン運用も将来の可能性がある。技術面の要求からその程度の艦体が必要だ。そのため海軍の小型沿海部戦闘艦で電磁砲の運用は無理となりそうだ。■



2017年12月19日火曜日

今年のF-35引き渡し数は66機、目標達成したロッキード・マーティン

  • ロッキード・マーティンによる発表文でF-35Aでコスト低減等の効果を主張していますのでご注意ください。しかし生産が軌道に乗ってきました。増産が続きます。しかしソフトウェアの対応が間に合っていません。今や航空機特に戦闘機材ではハードウェアだけ見ていても間に合いませんね。

気になる表現
the transformational F-35 air system  --- 変化し続ける
the F-35 enterprise ---F-35事業

Lockheed Martin Meets 2017 F-35 Delivery Target
ロッキード・マーティンが2017年のF-35引き渡し目標を達成

FORT WORTH, Texas, Dec. 18, 2017 /PRNewswire/ -- 12月15日ロッキード・
マーティン (NYSE: LMT) が通算66号機のF-35を引き渡し、政府と共に定めた2017
年納入目標を達成したことになる。
  • これで265機が米国ならびに各国向けに納入ずみで、パイロット530名、整備要員5千名の養成が完了している。完成機体の総飛行時間は115千時間に上る。
  • 「2017年の納入目標の達成は政府産業界一体となっての懸命な努力と尽力の結果で変化し続けるF-35航空システムを第一線に提供できた」とロッキード・マーティン執行副社長兼F-35事業総支配人ジェフ・バビオン Jeff Babioneが語った。「チームは今後も課題解決に取り組み今回の達成実績で顧客にはF-35の年間生産量が毎年増えていくのが確信していただけるでしょう」
  • 2017年の引き渡し66機とは前年比40パーセント増で、F-35生産は2023年に年間160機体制を目指している。

生産面での改良続く
  • 増産と改良でロッキード・マーティンの目標はF-35A機体単価を2020年に80百万ドルに下げることにある。これまでの知見を盛り込み、工程改善や自動加工、生産施設の改良やサプライチェーンの努力他でF-35生産はコスト低減の一方で生産性を引き上げている。以下は例。
  1. F-35A機体価格は契約金額より60パーセントも下がった
  2. 修正作業がこの五年間で75パーセント減った
  3. 生産期間が2015年比較で20パーセント削減された
  • 増産に備えロッキード・マーティンはテキサス州フォートワースで2017年1月以降だけで従業員を1,300名増員し、さらに1,800名増員する。F-35生産には米国や世界で数千名が従事しており、サプライヤーは国内とプエルトリコだけで1,400社に上る。米国内で直接間接合わせ17万名の雇用を生む経済効果は年240億ドルだ。さらに各国にサプライヤー100社があり数千名分の雇用になっている。
  • 超音速多用途機のF-35は今後も変化継続する性能で前例のない状況把握能力、威力、残存性を実現している。次世代のレーダー回避ステルス性能、超音速飛行、戦闘機としての操縦性にかつてないほど強力な統合センサーパッケージを搭載し、これまでの戦闘機の水準を超える。

よりくわしくは www.f35.com をご覧ください。

ロッキード・マーティンについて
ロッキード・マーティン(本社メリーランド州ベセスダ)は世界規模の安全
保障航空宇宙企業で従業員数は全世界で97千名が高度技術応用のシステム、
製品、サービスの研究開発、設計、製造、統合、維持にあたっている。■