2024年8月13日火曜日

紆余曲折を経て、ついにウクライナ空軍に正式就役したF-16の細部を観察! (The War Zone)

 F-16s for Ukraine arrive with weapons  

Ukraine M


A Ukrainian F-16 shown equipped with 4 AIM-9s and a Terma self-protection pod. (Ukrainian MOD screencap)

A chart showing Terma’s various pylon offerings and their respective features.Terma

Rear shot of Ukraine’s F-16s with the Terma self-protection pylon, live AIM-9L/M, and a captive carry (inert) AIM-120B AMRAAM. (Ukraine MOD screen cap)



F-16がウクライナ空軍についに正式に就役したが、興味深い特徴が見える


クライナにF-16が正式に加わり、戦闘活動を開始した。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、寄贈されたF-16AMの前で、ウクライナ空軍と自国全体にとっての歴史的な発展だとするスピーチを行った。また、F-16AMが装備している装備品の一部が初公開された。


ゼレンスキーはスピーチで、同盟国、特にデンマーク、オランダ、アメリカに感謝の意を表した。


F-16を受領するまでの道のりは、実に長く曲がりくねったものだった。ロシアの全面侵攻が始まった直後から、ウクライナは国土の大部分で制空権を維持し、ロシアの大部分を食い止めることができたが西側の第4世代戦闘機と、軍需品や戦術の採用の必要性は明らかだった。本誌は、パイロットと整備士の訓練を開始し、ソ連時代のジェット機から西側の戦闘機への移行プロセスを開始すべきだといち早く提唱した。


この日がついに来た事実が、ウクライナにとって記念碑的なのは間違いない。しかし、これまで本誌が力説してきたように、F-16の広大な能力を完全に解き放つことができるまでには、しばらく--おそらく数年--時間がかかるだろう。


F-16パイロットが完全に有能なミッションリーダーに成長するのに何年もかかり、新しいパイロットの確保がすでに大きな問題となっている。同機を運用するため必要なサポート要員もまた、成長し育成するのに時間がかかる。F-16の潜在力をフル発揮させるには、経験が重要だ。このように、F-16は決して万能解決策ではないが、ウクライナの空戦能力における革命的なアップグレードであり、紛争やウクライナの一般的な防衛でより強力な武器と戦術を最前線にもたらすだろう。


といって、F-16が役に立たないわけではない。そうとは言い切れない。任務の幅が広がれば、ウクライナの領土全域で重要な防空を提供し、国境内の重要なインフラや軍事能力を脅かすドローンや巡航ミサイルを追い詰めることができる。今回のF-16AMがAIM-9MとAIM-120 AMRAAMを装備していることは、F-16AMの初期防空能力を強調している。


F-16AMは、最新の戦闘機に装備され、既存のF-16戦闘機に装備されつつあるアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーを欠いているが、同機は依然としてこの役割において非常に価値がある。ウクライナのMiG-29でさえ、アップグレードされたAN/APG-66レーダーを搭載したF-16AMよりずっと劣るレーダーとエイビオニクス・スイートでこの役割を果たしていた。


F-16は、新しいスタンドオフ攻撃弾の搭載もできる。ウクライナの新型戦闘機はNATO標準のバス・アーキテクチャを採用し、NATOのほとんどの空中発射兵器を運用可能だ。例えばJDAM-ER、GBU-39/B小口径爆弾、ADM-160小型空中発射デコイ(MALD)はすでにF-16に統合されている。フランスのハンマーのような兵器は、ソ連時代の航空機に装備するのに比べれば比較的簡単に追加できる。つまり、新しい武器、特にロシア領の奥深くまで到達できる武器が登場する。


ウクライナのパイロットはジョイント・ヘルメット・マウント・キューイング・システム(JHMCS)も着用する。予想されていたとはいえ、これはAIM-9Xを搭載する場合に高い照準が得られるだけでなく、パイロットの状況認識能力を大きく向上させる。AIM-9とAIM-120が空対空ミサイルの分野で使用されることは、ウクライナが、ソ連が設計したタイプの減少しつつある備蓄だけに頼るのではなく、NATOの空対空ミサイルの備蓄を利用できることを意味する。


最後に、本誌の予想通り、現在ウクライナにあるF-16は、パイロン・インテグレーテッド・ディスペンシング・システム・プラス(PIDS+)システムを装備しており、先進的な電子戦闘統合パイロン・システム・プラス(ECIPS+)タイプも含まれている可能性がある。これらのパイロンはボルトオン式の自衛システムで、ミサイル接近警告センサー(MAWS)を搭載し、飛来するミサイルの脅威をほぼ球状に探知できるほか、消耗品(照明弾やチャフ)ディスペンサーも追加できる。また、レーダー警告やホーミング受信機能も備え、乗組員はレーダーベースの脅威に対して高い状況認識を持つことができる。ECIPS+にはディスペンサーはないが、ノースロップ・グラマンの有能な電子戦スイートが搭載されている。これらのシステムは、F-16の内部自己防護スイートと統合され、より高度な電子戦能力を相乗的に活用することができる。


以下は以前の記事より


「各PIDS+パイロンは、フレアとチャフ・ディスペンサーを最大2つまでしか搭載できない。また、AN/AAR-60ミサイル警報システムのバリエーションも備えており、各パイロンに3つの個別の警報センサーを搭載している。


ECIPSパイロンは3つのAN/AAR-60センサーを搭載しているが、フレアとチャフ・ディスペンサーは搭載しない。その代わり、ノースロップ・グラマン製のAN/ALQ-162(V)6ハイバンド無線周波数対策システムも搭載されている。


通常、バイパーはPIDS+とECIPS+を1基ずつ搭載し、複合的な対抗能力を提供する。6個のAN/AAR-60警告センサー、AN/ALQ-162(V)6ジャマー、拡張可能なフレアやチャフカートリッジ用のディスペンサー3個を、これらのパイロンに搭載していることになる。


両タイプのパイロンは、F-16バイパーの様々なタイプに搭載されている、同じくTerma製品であるAN/ALQ-213電子戦管理システムとも連動する。デンマークのTermaは、侵入してくる脅威に対して警告を発するシステムも提供している。これには、コックピット内の固定ディスプレイや、ヘルメットに装着されたJHMCS(Joint Helmet Mounted Cueing System)のフィードを通じた視覚的な警告のオプションや、デンマーク企業独自の3Dコックピット内サラウンド・サウンド・システムを含む様々なタイプの音声警告が含まれる。"


強化されたパイロンを総合すると、同機の状況認識と生存性が大幅に向上されていることがわかる。その性能の高さから、アメリカはF-16に同様のポッドを導入している。デンマークとオランダのF-16はこのシステムを搭載しているため、ウクライナに移譲されるのは理にかなっている。コックピット左側にある空中迎撃ライトから、ビデオに映っているテルマー自衛ポッドを搭載したジェット機は、元デンマーク機であることがわかる。全体として、これは、ロシアが配備している非常に複雑な防空オーバーレイの近くで運用されるF-16に非常に適した重要なアップグレードである。


やっと実現した。ロシアが電撃作戦を開始し約2年半でウクライナは正式にF-16クラブに加わった。前途は容易ではない。熟練したパイロットや整備兵を育てることは大きなハードルだ。しかし、何よりも、F-16が、今やロシアの最重要目標である以上、本当の挑戦はこれからだ。それでも、課題はさておき、ウクライナのカラーをまとったF-16の到着は、戦闘で疲弊したウクライナ空軍にとって、まったく新しいレベルの兵器能力を意味する。■


F-16 Officially In Ukrainian Service, Self Protection Pods Included

After years of work, F-16s have officially entered service with Ukraine's Air Force, and they are already sporting some interesting features.

Tyler Rogoway

Posted on Aug 4, 2024 3:48 PM EDT


https://www.twz.com/air/f-16-officially-in-ukrainian-service-self-protection-pods-included


ロシア侵攻作戦の最新状況:(現地時間8月12日現在)ウクライナは戦闘地域を拡大するも、ロシア軍の妨害が増加中 (The War Zone)

 


Ukraine said it captured 1.000 kilometers of Russian territory.  

Via X



ウクライナがロシア侵攻作戦の詳細を明らかにした。モスクワは失った領土の奪還を誓っているが


クライナは初めて、ロシアのクルスク州侵攻の詳細を明らかにした。オレクサンドル・シルスキー総司令官は、7日間にわたる作戦で、約1,000平方キロメートル(386平方マイル)の領土を占領したと、ウラジーミル・ゼレンスキー大統領に報告した。

 シルスキーは、ゼレンスキーのテレグラムチャンネルに米国東部時間月曜日午後投稿されたビデオでこれを述べ、「我々は、すべての兵士と指揮官の不屈の精神と断固とした行動に感謝している」とゼレンスキーは応じた。

 ウクライナ軍は戦闘地域を拡大し続けているが、ロシアが増援部隊を送り込み続けており、ウクライナ軍の前進をを阻止しているため、兵員と装備の損失は増大している。ウクライナはまた、クルスクに隣接するベルゴロド州への侵攻を開始したが、その規模や激しさははるかに小さいようだ。

 一方、ウクライナがクルスク原子力発電所に徐々に近づいている中、ウクライナのザポリージャ原子力発電所で火災が発生した。

 ゼレンスキー大統領は、2年以上前からモスクワ軍が占領中の同発電所でロシア軍が火災を起こしたと述べた。クレムリンが任命したザポリージャの知事は、ウクライナ軍の砲撃が火災の原因だと述べたとBBCは報じた。

 ウクライナによる侵攻を受けて、ロシアのプーチン大統領は、和平交渉は行わないと述べ、ウクライナに対して「相応の対応を行う。ロシアが直面するすべての目標は達成されるだろう」と語った。彼は詳細を説明しなかった。また、ウクライナ軍をロシアから追い出すと誓った。

プーチン大統領は、ロシアは西側諸国により攻撃されていると主張した

 「キーウは西側支配者の意図に従っている。西側諸国はウクライナ人の手を使ってロシアと戦っている」とプーチン大統領は述べた。タス通信がテレグラムで報じた。

 アハマト部隊の司令官も同様の見解を示し、ウクライナのために戦っているフランス軍とポーランド軍がいると主張したが、証拠は示さなかった。

 最初の攻撃は素早く、ロシア軍は不意を突かれた。

 装備が劣るロシア国境警備隊は大きな犠牲者を出した。それとは対照的に、ロシア国防省(MoD)は、チェチェン実力者ラムザン・カディロフに属するアハマト部隊は、死傷者や捕虜を出さず戦略的に撤退したと発表した。

 シルスキー司令官のコメントにもかかわらず、ロシア国防省は、ウクライナの侵攻開始以来、連日、侵攻を阻止していると繰り返し主張している。しかし、独立系ニュースサイト「エージェントヴォ」がロシア国防省の声明を分析したところ、実際に紛争地域は拡大している。

 ウクライナは、装甲部隊だけでなく、小規模な破壊工作部隊や偵察部隊も投入して戦っている。

 エージェントヴォは、シリスキー発言よりもウクライナ軍の占領地域が小さいと発表し、キーウ軍はクルスクで約720平方キロメートルを占領していると述べた。

 ウクライナ軍で最も進出した地点は、国境から約18マイル北のオブシチ・コロデズ(Obshchy Kolodez)だと、エージェントヴォは述べた。戦闘の最も西側で行われたのは、10マイル南西のトルピーノ(Tolpino)で、最も東側で行われたのは、20マイル南西のマルティノフカ(Martynovka)村であるという。

 地上攻撃とは別に、ウクライナ国防軍は「第14戦闘航空連隊および第332ヘリコプター連隊が拠点を置くクルスク・ヴォストーチヌイ空軍基地に対して、ミサイルおよび航空攻撃を同時に行った」と、ウクライナ国防戦略センターは伝えている。「さらに、太平洋艦隊の第155独立海兵旅団の前進集中地域を標的としたミサイル攻撃も実施された」

 この戦争全体を通じてそうであったように、無人機はウクライナの進撃において大きな役割を果たしている。

 一部のロシア軍は、接近するウクライナのFPV(First Person View)ドローンが被害を与える前に撃墜することに成功した。

 ロシアはウクライナの進軍阻止を数か所で行ったが、ウクライナは障害物を押し退けていると、フィンランドに拠点を置くオープンソース調査機関ブラックバード・グループが月曜日に本誌に語った。

 「クルスクでは、ロシアは最重要地点を強化し、ウクライナ軍の作戦を阻止することができています」と、ブラックバードグループのアナリスト、エミル・カステヘルミは語った。

 しかし、増援にもかかわらず、「ロシア軍はまだすべての進軍ルートを封鎖できていない」と、カステヘルミは付け加えた。「例えば、ベリツァ付近、ギリ村の内部でウクライナ軍の装甲兵員輸送車の部隊が戦っているのが確認されています。ロシア軍は依然として、いくつかの最も重要な地域を優先しなければならない状況にあり、少なくとも全方位において明確な前線はまだ形成されていません」。

 何が起こっているかの評価がいかに難しいかを示す例として、ロシアの情報筋は、ジリで目撃されたBTR-4は、実際にはアハマト軍が捕獲した車両で乗り回しているものだと主張した。この装甲車両は、クルスク侵攻に使用されたウクライナ軍の車両のひとつである。

 現時点では、ウクライナ軍部隊は「コルネヴォの東側で活動しており、側面からの脅威を生み出すことを目的としている可能性がある」と、カステヘルミは説明した。「いわゆるグレーゾーンが数多く存在する。ウクライナはオルグフカ-ガヴリロフカ地域を確実に掌握しているわけではないが、ロシアも同様である。ウクライナがさらなるロシア軍の予備部隊が到着する前に勢いと奇襲性を維持しようとしているため、多くの不確実性がある」

 また、ウクライナはスベルジリコヴォの町に進軍し、ロシアの国旗を撤去したと主張している。

 「ウクライナ軍には依然として勢いがあります。攻勢を迅速に継続するために望ましいほどの速さで、作戦上重要な町、主にKorenevoとSudzha(およびMirnyi)を占領できなかったにもかかわらずです」と、カステヘルミは説明した。「ウクライナが作戦にどれだけの部隊を投入するつもりなのか、また、例えば現在の戦いを支援するために他の方面から攻勢をかけるつもりなのかによって、状況は大きく変わります。そのような方面としては、グルヒフからリルスクへの攻撃が考えられます」。

 「我々はさらに深く攻め込んでいく」と、あるウクライナ兵士はフィナンシャル・タイムズに語り、ロシア軍の増援にもかかわらず、キーウ軍は依然として優勢であると付け加えた。

 スドジャにあるガズプロムの輸送基地が被害を受けたという視覚的証拠が現れた。ロイター通信によると、この基地は「ウクライナ経由でヨーロッパに輸出されるロシア産ガスの最後の運用中積み替え地点」である。同通信によると、ロシアがヨーロッパに輸出する天然ガスの約半分がウクライナを経由している。

 ロイター通信によると、「2019年12月、モスクワとキエフは、ウクライナ経由のロシア産ガスの輸送に関する5年間の長期協定に署名した。2020年には450億立方メートル、2021年から2024年までは毎年400億立方メートル」である。「ウクライナ経由の欧州向けロシア産ガスの輸送に関する合意は2024年に期限が切れるが、キーウは延長や新たな合意の締結の意思はないとしている」。

 ウクライナは、数日間にわたって戦闘が続いたものの、侵攻の最初の標的となったこの町に対する支配権を主張している。

 被害にもかかわらず、ガスは依然として流れている。それでも、ロシア国営通信社タスによると、ガズプロムのセルゲイ・クプリヤノフ報道官は、戦闘がすでに天然ガスと液化ガスの価格に大幅な影響を与えており、価格が急騰していると述べた。

 ウクライナはロシアによる奇襲を逆に撃退したと伝えられている。ウクライナ軍は壊滅を免れ、代わりにロシア軍に攻撃を仕掛け、装備を破壊した。

 ウクライナは、ますます大きな代償を払うことになっている。

 犠牲者数や装備の損失に関する正確な数字は入手不可能である。しかし、戦闘地域から国境を越えたウクライナのスームィ州にある病院をエコノミスト誌が最近訪問したところ、犠牲者が増加していることが示唆された。

 「ウクライナの負傷者の証言によると、この侵攻は楽なものではなく、依然として危険が伴うことが示唆されている」と、同誌は負傷した兵士数名にインタビューした後に報告している。

 また、作戦における装備の損失を示す視覚的な証拠も増えているが、兵站能力を示す兆候として、ウクライナは戦闘で損傷した車両も回収している。

 ロシアもこの侵攻のために大きな代償を払っている。

「現時点では、28の集落が敵の支配下にあり、クルスク州への侵攻の深さは12キロ、戦線の幅は40キロです」と、クルスク州知事代理のアレクセイ・スミルノフは月曜日にプーチンに報告した。

 これまでに民間人12人が死亡し、子供10人を含む121人が負傷したとスミルノフは主張。また、約12万1000人が避難するか、自発的に戦闘の影響を受けた地域を離れたと付け加えた。

 ロシア人にとって、この地域をうろつくウクライナの陽動作戦部隊をすべて追跡するのは難しいとスミルノフは指摘した。一部は偽のロシアIDを使用しているからだ。

 ウクライナによる被害だけではない。

 「ロシアのKa-52Mヘリコプターがロシア軍部隊を攻撃し、その結果、自走砲2S19M2 Msta-Sが破壊された」と、ロシアのNo Context Telegramチャンネルが報じた。

 ブラック・バード・グループのカステヘルミは、ウクライナ軍のベルゴロド進撃ははるかに軽微であったと語っており、ウクライナ軍によるベルゴロドへの最初の攻勢は装甲部隊の支援の支援を受けていたことを示す動画が公開された。

 しかし、ベロゴルド州知事のVyacheslav Gladkovは、ウクライナ国境付近の住民避難も発表し、月曜日の朝を「憂慮すべき」と表現したが、詳細は明らかにしていない。

 その地域の住民も避難させられている。

 前進が続く中、ウクライナ軍の動画や画像がさらに公開されている。

 下のビデオでは、スジャの中心部を米国から提供されたHMMWVを運転するウクライナ軍の様子が映し出されている。

 フランスとドイツの車両も目撃されています。ポーランドが供与したPT-91 Twardy主力戦車も確認された。

 ドイツ国防省(MoD)は、ベルリンから寄贈された装備をウクライナが適切に利用することを承認した。

 「ドイツからウクライナに引き渡された兵器はすでにウクライナの所有物であり、ウクライナの兵器です。障害はありませんので、ウクライナは自由に機会を選ぶことができます」と、ドイツ国防省の報道官は月曜日、ウクライナのニュース機関Ukrinformに語った。

 月曜日にキーウを訪問した米国の上院議員リンゼイ・グラハム(共、サウスカロライナ)は、ウクライナがロシアのクルスク地方に国境を越えて侵攻した作戦を「見事」かつ「大胆」と称賛し、ウクライナが必要とする武器を提供するようにバイデン政権に促した。

 何はともあれ、退役したウクライナ軍の将軍が語ったように、この侵攻は同国の士気を大幅に高めている。今後数日のうちに、実際の戦略的利益がもたらされるかどうか、より明確になるだろう。


更新:東部時間午後7時16分 -

ウクライナの国会議員ロマン・コストンコは、議場を欠席すると述べたが、正当な理由がある。同議員は、ウクライナによるロシア攻撃に参加中と述べた。


Ukraine Expands Area Of Fighting But Finding Advances Increasingly Blocked

Ukraine has finally provided details of its push into Russian territory as Moscow vows to retake what it's lost.

Howard Altman

Posted on Aug 12, 2024 7:02 PM EDT


https://www.twz.com/news-features/ukraine-expands-area-of-fighting-but-finding-advances-increasingly-blocked


空母エイブラハム・リンカンは中東への移動を「加速」するよう命じられ、誘導ミサイル潜水艦ジョージアも急行中―イランの次の動きを想定しイスラエル防衛を強化中の米海軍の動き (USNI News)


イラン、ハマス、ヒズボラ他の「報復攻撃」に備え、イスラエル防衛を強化すべく、USSリンカンCSGが東方から移動中。

当ブログの方針として慣習を排除し、英語による人名固有名詞は極力原音に近いカタカナ表記としておりますのでご理解をお願い申し上げます。

ニミッツ級空母エイブラハム・リンカン(CVN-72)からの洋上給油を監督するアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSスプルーアンス(DDG-111)の艦長マット・アダムス中佐。US Navy Photo 


空母USSエイブラハム・リンカン(CVN-72)と護衛艦艇部隊は、太平洋から中東への移動を「加速」中と、国防総省当局者が月曜日に記者団に語った。 

 ロイド・オースティン国防長官はイスラエルのヨアヴ・ギャラント国防相と日曜日に会談し、先月末にテヘランでハマスの指導者イスマイル・ハニェが殺害されたのを受け、イランの報復に備える中、イスラエルへの米国の軍事的コミットメントをあらためて確認した。

 「オースティン長官は、F-35C戦闘機を搭載したUSSエイブラハム・リンカン空母打撃群に、USSセオドア・ローズベルト空母打撃群の能力に加わるべく、(米中央軍管轄地区への)移動を加速するよう命じた」と、国防総省のパット・ライダー報道官は記者団に月曜日語った。 

 海兵隊のF-35CライティングII統合打撃戦闘機は、第314海兵戦闘機飛行隊(VMFA)の「ブラックナイツ」に所属している。USNI News Fleet and Marine Trackerによると、月曜日時点で、リンカンはフィリピン沖のスールー海で活動している。先週、リンカンは西太平洋でイタリアの空母ITSカヴール(550)と演習を行った。 

 ライダー報道官は、リンカンがUSSセオドア・ローズベルト(CVN-71)と一緒に行動するのか、あるいはローズベルトが中東から太平洋に戻るのかについては明らかにしなかった。今回の発表に先立ち、国防当局者はUSNIニュースに対し、ローズベルトと第11空母航空団がカリフォーニアに帰港する予定であると語っていた。月曜日時点で、同打撃群は7ヶ月以上配備されている。



 USNIニュースの空母配備データベースによると、2020年以降、TRはほぼ540日間配備されている。 ローズベルトが米中央軍に到着する前、オースティンは東海岸の空母USSドワイト・D・アイゼンハワー(CVN-69)を2度延長して中東にとどまらせていた。次に配備される東海岸の空母はUSSハリー・S・トルーマン(CVN-75)で、配備前の最終演習の真っ最中である。 


タスクフォース61/2に配属された第2部隊偵察中隊の海兵隊員は、地中海を航行中のオハイオ級誘導ミサイル潜水艦USSジョージア(SSGN-729)と潜水作戦を行う(2024年7月31日)。US Navy Photo 


 国防総省は、リンカンに関する発表に加え、トマホーク陸上攻撃ミサイル154発と特殊作戦部隊を搭載可能な誘導ミサイル潜水艦が、米中央司令部(CENTCOM)に向かうと発表した。 

 オハイオ級潜水艦USSジョージア(SSGN-729)は、米欧州軍から米中央軍に移されると、国防当局者がUSNIニュースに確認した。

 月曜日時点では、ジョージアは東地中海で活動中で、スエズ運河を通過していない、と防衛当局者がUSNI Newsに確認した。 

 ジョージアは、トマホークを搭載するため原子力弾道ミサイル潜水艦から改造されたオハイオ級4隻の1隻。

 同じく誘導ミサイル潜水艦USSフロリダ(SSGN-728)は中東と地中海へのほぼ2年にわたる展開を終えており、イエメンのフーシ派に対する攻撃も含まれていた。■


Carrier USS Abraham Lincoln Ordered to ‘Accelerate its Transit’ to Middle East, Guided-missile Sub USS Georgia Going to CENTCOM

Sam LaGrone

August 12, 2024 5:10 PM

https://news.usni.org/2024/08/12/carrier-uss-abraham-lincoln-ordered-to-accelerate-its-transit-to-middle-east-guided-missile-sub-uss-georgia-going-to-centcom


2024年8月12日月曜日

ウクライナのクルスク奇襲攻撃でプーチンの立場が微妙に―外国の侵攻を受けることこそロシアが一番嫌がる事態。ウクライナ戦は全く違う局面に入った

 


クライナ軍は今週、国境地帯を攻撃しロシア領内に押し寄せた。 

ウクライナによる攻撃は、ロシアのヨーロッパ領土への外国からの攻撃として第二次世界大戦以来初であり、ウクライナ北東部スミ州と国境を接するクルスク地方に非常事態を引き起こした。  

 ウクライナ軍の装甲車両は少なくとも20マイル前進し、戦闘4日目の今日もクルスクの奥深くまで攻め込み続けている。  

 この奇襲攻撃はプーチン大統領を激怒させ、プーチンはこの侵攻を「大規模な挑発行為」と呼び、クレムリンがウクライナとの戦争だけでなく、キーウの主要な支援国アメリカとの戦争もエスカレートさせるのではないかという懸念に火をつけた。 

 攻勢がどのように進むかは不明だが、ウクライナはロシアに侵入することで、戦争のシナリオを変えることに成功した、とシンクタンクGLOBSECの政策・プログラム担当副社長、アレナ・クズコは言う。 

 「ウクライナは戦争の展開を変えようと懸命に努力している。クルスクを攻撃する前は、戦争は予測可能になったとの印象があったが今回の攻撃によって、ウクライナはこの戦争を予測不可能なものにする余地があること、ロシアを驚かせる余地があることを示せた」。 

 クルスク攻撃は、ウクライナの高速作戦がロシアの意表を突いた2022年のハリコフやケルソンでの反攻を彷彿とさせる。 

 アメリカ政府はウクライナの攻撃を支持している。国防総省のサブリナ・シン副報道局長は木曜日、クルスク侵攻はロシアによる国境越え攻撃から防衛するというワシントンの方針に沿ったものであり、戦争をエスカレートさせるものではないと記者団に語った。「エスカレートしているとは感じていない。「ウクライナは戦場で成功するために必要なことを行っているだけだ」。 

 キーウは、600マイルに及ぶ前線で数ヶ月間ロシアの攻撃をかわすのに苦労してきた。 

 クルスク攻勢の一方で、ロシア軍は主要目標である北東部のハリコフ地方と東部のドネツク州を攻撃し続けている。  

 ロシア軍はゆっくり、そして少しずつ前進しているが、ドネツクの主要都市チャシフ・ヤール含む主要目標に突き進んでいる。同都市を占領すれば、モスクワは高台に立つことができ、ドネツク全土の占領を目指すロシアが長い間狙ってきた双子都市、スロビアンスクとクラマトルスクへの進攻が可能になる。 

 ロシアのハリコフ攻勢も続いているが、ロシア軍はハリコフ市への道を開くヴォフチャンスクの町をまだ占領しておらず、攻勢は減速しているようだ。 

 ウクライナ軍の侵攻は、ロシアに兵力を転用し国境を守るよう圧力をかけている、と欧州政策分析センターの大西洋横断防衛・安全保障プログラムのフェデリコ・ボルサリは言う。 「クルスク攻勢をどうするかはロシア次第だ。ロシアは、ウクライナに選択肢を与えることになるとはいえ、圧力を打ち負かそうとするだろう」。 

 ウクライナは後手に回ったまま、消耗した人員でロシアの攻撃をかわそうとしている。  

 数ヶ月に及ぶアメリカからの援助の遅れがウクライナの防衛にダメージを与える一方で、何十億ドルものアメリカの武器や装備が戦場に投入されている。新しい武器にはF-16が含まれ、今週ウクライナに到着し、空の防衛に役立っている。航空優勢は高速機動戦に不可欠だが、F-16がクルスクで使われたのかは不明だ。 

 今回の援助がウクライナの防衛問題のすべてに対処したわけではない。また、ウクライナは徴兵年齢を27歳から25歳に引き下げ、より多くの兵力を招集できるようになったが、数カ月あるいはそれ以上、深刻な人手不足を解決することはできないだろう。 

 クルスク攻勢は、こうした困難を相殺するための努力だろう、と欧州外交問題評議会の政策フェロー、ラファエル・ロスは見る。 

 「現時点でウクライナにとって最重要な問題は人員だ。「大胆な作戦のニュースによって、ウクライナで志願者が増えるかもしれない。個人のリスク計算が根本的に変わるとは思えないが、ボランティアをめぐる議論のトーンが変わり始めるかもしれない」。 

 ウクライナ高官はクルスクでの攻撃を認めていないが、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とその顧問は、それを裏付けるような不可解なメッセージを発している。「戦争は戦争であり、独自のルールがあり、侵略者は必然的にそれに対応する結果を得る」とゼレンスキー大統領の最高顧問であるミハイロ・ポドリャクはソーシャルプラットフォームXに書いている。しかし、軍隊はこの地域のいくつかの地域をうろついているようで、ロシアに複数の分野での対応を強いている。 

 ウクライナは今後、ロシアの領土をどうするか、そしてそれが前線での防衛努力の妨げになるかどうかに直面することになる。  

 スタンフォード大学フーバー研究所のトマシュ・ブルシェヴィッチ研究員によれば、ウクライナはクルスクから撤退する可能性が高いが、ロシアに旅団複数を移動させ、前線での立場を利用させた後だという。 

 「今、彼らは動かなければならない。そしてロシアはこれが苦手だ。彼らは兵站が苦手なのだ。「ウクライナの動きは見事だった。ロシアに軍隊を移動させ、ロシアが他の地域では無防備であることを示すことで、すでに大きな成功を収めた。プーチンにとっては大きな威信失墜の一撃だ」。 

 ロシアはクルスクに増援部隊を送り込み、ウクライナ軍を撃退すると誓っている。 

 ロシアの主要軍事・政治総局の副局長アプティ・アラウディノフ空軍大将は、クルスクでは「状況は厳しいが、危機的ではない」とし、ウクライナの前線崩壊は避けられないと国営通信社タスに語った。 

 「敵を阻止し、破壊することができる。「これらの資源を破壊しさえすれば、敵は我々に対抗する術を失うだろう」。 

 ウクライナの計画は、領土を保持するよりも、ロシア国内の戦略的資源を攻撃することかもしれない。捕虜や領土を確保することは、交渉や捕虜交換にも使える。 

 ウクライナ軍はクルスクのガス測定所も占拠し、近隣のロシアの原子力発電所を脅している。 

 ジャーマン・マーシャル・ファンド客員シニアフェローのブロック・バイアマンは、この攻撃は、ウクライナが破壊して脅威から取り除くことができる重要資産がある地域をターゲットにした戦略的なものだと述べた。 

 また、「前線を分散させる方法」でもあり、ロシアに自国の資産を守るため「資源再配分」を迫るものだと付け加えた。 

 「特定地域だけでなく、非常に長い国境に沿って、どのように資源を配分するかを考えなければならなくなる」。 

 クルスク攻撃は、ロシア国民に戦争の直接的な結末を直視させた。今回の攻撃以前、ウクライナのロシアへの攻撃は、石油備蓄基地や戦略的資産に対する散発的なドローン攻撃に限られていた。ここ数カ月は、長距離砲を含むアメリカ製兵器を使い、国境付近の標的を攻撃し始めていた。 

 しかしクルスクのロシア人は避難を余儀なくされ、数人が死亡している。 

 クルスクの攻撃を予測できなかったこと、あるいは侵攻に対して十分な防御ができなかったことについて、政府や軍を非難するロシア人もあらわれた。  

 ロシアの軍事的目標を支持し、クレムリンの退役報道官でもあるロシアの軍事ブロガー、ライバルは、ウクライナが「何カ月以前から戦力を蓄積していた」ことを理由にモスクワを非難した。 

 「2ヶ月間、すべての情報は役に立たない上層部に送られていた。適切な決断を下すのに十分な時間があった」とライバルはテレグラムで述べた。「その代償が、スジャとコレネヴォに侵入したウクライナ軍だ」。 

 プーチンは自国を厳しく掌握し、反対意見はおおむね鎮圧している。しかし、クルスクの攻撃は、戦争はコントロール下にあるというプーチンのシナリオを崩す恐れがある。 

 シンクタンク『GLOBSEC』のクズコは、ロシア国内で大きな変化が起こるとは予想していないとしながらも、クレムリンへの圧力が強まるだろうとも強調した。 

 「クレムリンや政府へ国民の不満は高まるだろう。「戦争を支持する人々でさえ、この戦争が自分たちの生活に及ぼす結果について不満を感じ始めているはずだ」。■


Ukraine’s surprise attack into Russia ups ante for Putin

by Brad Dress - 08/10/24 6:00 AM ET

Ukrainian forces pushed into Russia this week to attack a border region in a stunning counteroffensive that comes after Kyiv has been largely on the defensive for the past year and a half. 


https://thehill.com/policy/defense/4821208-ukraines-surprise-attack-into-russia-ups-ante-for-putin/


ボーイングにとって今年は最悪の年になるのか―労組はストも辞さない姿勢だが、技術より財務を優先させてきた経営方針による負債とも言える。防衛部門も低迷中。(Forbes、ターミナル1と共通記事)

 



US-AVIATION-LABOUR-UNIONS-BOEING (Photo by Jason Redmond / AFP) (Photo by JASON REDMOND/AFP via Getty Images)

Boeing workers hold signs at a strike-sanction vote event at T-Mobile Park in Seattle on July 17.JASON REDMOND/AFP/Getty Images


ボーイングの労働者を代表する機械工組合の地方支部ホールデン会長は、「今年がボーイングにとって最悪の年になりそうだ」と語った


営難に陥ったボーイングは、新労働契約とあわせ会社運営にこれまで以上の発言権を求めている最大労組との不利な対峙に向かうかもしれない。

 ボーイングの機械工組合は組合員にストライキに備えて資金を確保するよう2019年以来促してきた。ストライキが必要かどうかを決める交渉が月曜日に本格化する。

 ボーイング経営陣と、ワシントン州でボーイング機を組み立てる32,000人を代表する同社最大の国際機械工組合は、現行契約が切れる9月12日より前に、2008年以来初となる新契約を打ち出すため、シアトル近郊のホテルにチェックインする。

 業界オブザーバーは、双方が行き詰まり、ストライキに向かうと考えている。1月に起きたアラスカ航空737マックスのパネルが空中分解した事故を受け、政府はボーイングの製造に対する監視を強め、ボーイングの生産は急減速している。長期の作業停止は、ボーイングが資金流出を食い止めるためどうしても必要な、機材納入を頓挫させる可能性がある。ボーイングの新CEOケリー・オートバーグ Kelly Ortbergがこの状況にどう対処するかは誰にもわからない。オートバーグは木曜日に出勤し、ボーイングと労働者、顧客、政府、一般市民との関係を修復するという高い目標を掲げた。

 米国商工会議所によれば、6月現在、米国の耐久消費財メーカーにおける仕事の35%が埋まっていない。また、組合員の長年にわたる怒りも大きい。過去10年間、ボーイング幹部はシアトル地域から職場を移転させると脅して、賃金を低迷させ、労働者の年金制度を取り上げ、医療費を労働者に転嫁する一連の契約延長を交渉してきた。

 先月、国際機械工労組ロッジ751の組合員は、シアトル・マリナーズ・スタジアムで開催された約2万人が参加した騒々しい集会で、ストを要請する権限を指導部に与えることに99.9%の賛成票を投じた。機械工組合は、3年間で40%の賃上げ、年金制度復活、強制残業廃止など、会社にとって受け入れがたい要求の長いリストを掲げている。

 しかし、IAM751のジョン・ホールデン代表は、経営陣の失策からアメリカ最大の航空宇宙企業を救うという壮大な使命を打ち出している。

 ボーイングが737マックスを顧客に引き渡すシアトル南部の飛行場近くにあるIAM751本部のウッドパネル張りの会議室で、ホールデンは本誌インタビューに答えた。「私たちはこの会社を、彼らが想像していたよりもずっと遠くへ押し進めるつもりだ」。

 これには、ボーイング取締役会への参加要求も含まれる。取締役会は製造の専門知識が欠如しており、かつては定評のあったエンジニアリングの優秀性を犠牲にしてまで財務収益を改善しようとする経営陣を承認してきたと、批評家たちは長年指摘してきた。組合はまた、品質管理検査官の数を増やす約束と、ボーイングの次期機材をシアトル地域で製造する保証を求めている。

 ボーイングは公式声明上では労働者の給与と手当の改善には前向きなようだ。退任するデビッド・カルフーン最高経営責任者(CEO)は、退任前の最後の行動となった先週の第2四半期決算に関する電話会議で、「このプロセスにおいて従業員を厚遇することを恐れてはいません。ストライキを起こされないよう、できる限り努力する」。

 しかし、労働者たちは会社の待遇に対する長年の恨みから、ストに踏み切るかもしれないと、オブザーバーたちは本誌に語った。

「ボーイングがストロベリー・アイスクリームをつけてすべて提供しない限り、彼らは出て行くだろう」と、現在の立場で公にコメントできないが、交渉に詳しい元組合員は語った。 

 本誌の質問に対し、ボーイングの広報担当者ボビー・イーガンは、「従業員のニーズと企業として直面する事業上の現実のバランスを取る取引に到達できると確信している 」と記して返答してきた。


改善計画

労働者代表は、ボーイングが現在の危機から脱却するためには、賃金と労働条件の改善が重要だと主張している。

 ボーイングは今春、連邦航空局の命令で作成した品質改善計画に基づいて、製造労働者の訓練を大幅に増やしている。ボーイングは、新しい整備士と品質検査官を対象に300時間の研修を追加し、工場現場にコーチを配備し、現行従業員の継続訓練を改善すると発表した。また、製造指示や工程の簡素化にも取り組んでいる。

 しかし、ボーイングのエンジニアと技術者16,000人を代表する航空宇宙専門技術職従業員協会の戦略開発ディレクター、リチャード・プランケットは、同社は根本的な重要問題に対処できていないと本誌に語った。「労働力を維持できなければ、訓練に何の意味もない」。

 コロナパンデミック以来、経験豊富な組立作業員を失ったことが、ボーイングを悩ませている品質問題の難題で重要な役割を担っていると、航空宇宙専門家は本誌に語っている。航空宇宙産業の組立作業員が熟練するには何年もかかると彼らは言う。そしてそれは、1960年代にさかのぼる設計に基づき、大部分が手作業で製造されている737マックスで特に重要な問題だ。

 ボーイングはかつてシアトル地域の支配的な雇用主であったが、現在はその他宇宙関連企業やハイテク企業との熟練労働力争奪戦に直面している。ボーイングの機械工の賃金は追いついておらず、同社は過去8年間、昇給を年率で半分に制限してきた、とホールデンは言う。初任給は職種によって時給16ドルから26ドルで、5年間は毎年1ドルずつ上がる(組合員が勤続6年になると、時給は23ドルから51ドルに上がる)。シアトルでの最低賃金の引き上げに伴い、ドアダッシュやインスタカートといった食品会社の配達員では現在、時給26ドルからとなっている。

 組合幹部がバンク・オブ・アメリカのアナリストに語ったところによると、パンデミック以前のIAM751では労働者の半数以上が6年以上の経験を持っていた。現在は25%以下だ。

 ボーイングでは技術者も離職しており、会社の方向性に動揺を強めていると、航空宇宙専門技術者協会の役員は語った。

 パイロット労組SPEEAによるおtボーイング従業員の平均勤続年数は、2014年の16.8年から2024年に13.5年に減少するという。SPEEAのレイ・ゴフォース事務局長は、組合員も変化を求めていると述べた。

 アラスカエアライン機事件前の1月に開かれた準備集会で、ゴフォースは本誌に、不満を持つ20代から30代組合員の出席率の高さに驚かされたと語った。

 「もっと休暇が欲しい、とか、そんな話ではなかった。この会社は間違っている、どうするつもりなんだ?というのだ」。


本質論

ボーイングは、機械工の最も重要な提案にはまだ回答していないとホールデンは言う。TDコーウェンの航空宇宙アナリスト、カイ・フォン・ルモアは、最近の顧客向けメモでこう書いている。同アナリストは、ボーイングの民間航空機部門のコストに占める労働組合の機械工の割合は5%に過ぎないと推測している。顧客との契約では、人件費が上昇した場合、機体価格を引き上げることができる条項が含まれている。

 チャールズ・エドワーズ・マネジメント・コンサルティングの航空宇宙コンサルタント、クリフ・コリアーは言う。「新しいプログラムを導入する10年後、5年後がどうなっているかわからない。「しかし、そのために100日間のストライキを行うだろうか?私はそうは思わない」。

 コリアーは、理事会代表の要求については双方が柔軟に対応できると考えている。議席が1つなら意思決定に大きな影響を与えることはないだろうから、ボーイングはそれを容認するだろう。しかし、組合にとってはマイナス面もある。取締役会に席があれば、物議を醸すような決定について、組合員が指導者に部分的な責任を押し付けるようになるかもしれない、と彼は言う。

 ボーイングは今年初め、小規模組合との契約交渉で好戦的な姿勢を示し、憂慮すべき前例を作ったと言う者がいる。春、同社は125人の内勤消防士と救急サービス労働者を3週間締め出し、5月に妥結する前に代わりの労働者を入れるという強硬手段に出た。また、航空会社とともに安全性に取り組み、パイロット訓練プログラムを開発するパイロット23人との交渉が難航した際にも、年明け早々に代替要員を投入した。

 こうした交渉におけるボーイングの行動は、過去にはなかった方法で「信じられないほど不愉快」だったと、パイロットを代表するSPEEAのゴフォースは語った。ボーイング代表は2回の会合に姿を見せなかったという。「私たちは公然と敵意をむき出しにするようになった。「それが751交渉に持ち込まれたら、うまくいくはずがない」。


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Machinist union members hold up their ballots at the strike-sanction vote.JASON REDMOND/AFP/Getty Images


 ボーイングはパイロットと消防士との交渉で最終的に譲歩した。パイロットは年間2万ドルの賃上げを得た。バイデン大統領がツイートでボーイングに交渉のテーブルに戻り、消防士たちに「彼らにふさわしい給与と手当」を与えるよう呼びかけた後、同社は組合が「勝利」と評価する賃金の改善を提示した。


 フォン・ルモアは、機械工は1989年から2008年の間に4回、平均40日間のストライキを行ったと指摘した。


資金難

ストはボーイングの資金繰りの危機を悪化させる。同社はパンデミック以来、ベストセラー機737マックスの生産率を上げ、2019年からの年間赤字に終止符を打つべく奮闘してきた。航空会社は通常、納入時に購入価格の65%から70%を支払う。

 同社は、6月と7月に25機だった737を月産機数を年末までに38機に増産する目標を掲げている。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ロン・エプスタインは、ストライキが起こる可能性が高く、月産38機への増産は1年遅れ、2025年末になると考えている。

 経営難に陥っている防衛部門の見通しの悪化と相まって、エプスタインは、ボーイングは今年100億ドルの現金を消費し、2025年には70億ドルから80億ドルの株式発行を迫られ、日々の必要を賄うのに十分な現金が確保されると見ている。

 ストライキに関連した生産上の混乱は、ボーイングの信用格付けにも脅威を与える可能性がある。S&Pは先週、ボーイングが今年後半に生産と納入増強に失敗した場合、格下げの可能性があると警告した。格付けがジャンクになれば、ボーイングの借入コストはさらに上昇する。

 ボーイングの財務状況が組合の交渉姿勢に影響を与えないとホールデンは述べている。また、経営陣がパイロットや消防士との交渉で行った乱暴なアプローチを取っても、組合は動じないようだ。「会社が険悪な態度になっても気にしない。こちらには影響力がある。それを行使し、押し進める」。■


Boeing’s Bad Year Is About To Get Worse

Updated Aug 9, 2024, 10:34am EDT

By Jeremy Bogaisky, Forbes Staff


https://www.forbes.com/sites/jeremybogaisky/2024/08/09/boeings-bad-year-is-about-to-get-worse/?ss=aerospace-defense