2019年10月27日日曜日

新型ISR機材RQ-180は極秘のうちにすでに供用開始か

ブログ主の好きなISRのブラック機材の話題です。Aviation Weekでも「らしい」「と思われる」と書かざるを得ないくらい情報が限られているのですね。

Aviation Week & Space Technology

USAF Unit Moves Reveal Clues To RQ-180 Ops Debut

米空軍部隊の動きからRQ-180の運用開始へ向けた推移がわかってきた

Oct 24, 2019Guy Norris | Aviation Week & Space Technology

ースロップ・グラマン開発による大型・極秘無人機の存在をAviation Weekが真っ先に報じてほぼ6年になる。現時点で同機が米空軍で通常に運用されていることが明らかになってきた。同機は敵領空を突破できる情報収集監視偵察(ISR)任務に投入されていると思われる。
RQ-180の制式名称といわれる同機の設計は先端的で2010年に初飛行したと見られ、2014年から飛行テスト評価に入っていた。Aviation Weekが入手した資料では同機は今年になり再編された第427偵察飛行隊のあるビールAFB(カリフォーニア州)で供用を開始している。米空軍は同期に関し一切の論評を拒んでいる。
同機の画像そのものが限られているが、新たな情報から飛行テスト初期段階、開発過程、初回配備に至る全体像が明らかになってきた。公開情報で同機の存在が明らかになった2013年以前の足取りが明らかになり、同時にその後のテスト、運用評価がカリフォーニア、ネヴァダ両州で主に展開されたこともあきらかになった。
敵領空内に侵入するISRミッション用に開発が始まったRQ-180はロッキードSR-71の退役(1999年)が経緯で、ノースロップ・グラマンが米空軍に提示した2005年の大型無人戦闘航空機材(UCAV)設計提案から生まれた。当時、同社はボーイングを相手に小型無尾翼設計案で米空軍米海軍向け共用無人戦闘航空システム(J-UCAS)の売り込みを図っていた。
だがJ-UCASは2006年に事業中止となり、海軍専用のUCAV空母運用適合性実証事業に変貌し、239百万ドルの予算要求で空母搭載長距離UCAV実証事業になった。
同時に空軍予算は極秘高高度長距離 (HALE) 事業に流用され、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの三社競合になったと見られる。ノースロップは主翼を延長したX-47Cを同時期に公表した。そのうち最大の機体寸法となる型では翼幅172フィート、ジェネラル・エレクトリックCF34双発で兵装ペイロード10千ポンドというものだった。
Aviation WeekはRQ-180の存在を初めて報じ想像図を掲載したが、業界筋は当初から実機は公表されたコンセプトとは異なるとの指摘していた。追加情報では最終形は同社の全翼機形状に近く、空軍が進めるB-21レイダーにも似通っている。ノースロップ・グラマンは当初はB-2同様の後縁部構造を想定していたが、空軍が低空侵入任務を追加したためより強固なノコギリ歯構造に変更した。
RQ-180には空軍研究本部(AFRL)向けに次代のステルス高高度無人偵察機として同社が手掛けたセンサークラフトSensorCraft 事業の影響が見られる。2002年にAFRLはセンサークラフト構想数点を公表し、中にノースロップ・グラマンの全翼機設計案も含まれていた。その二年後に、同社からAFRLに協力し先端的一体型アンテナ技術をセンサークラフト向けに12百万ドル5カ年契約で作業中との発表があった。これは低帯域構造アレイ(Lobstar)と呼ばれ、「複合材製主翼にアンテナ類を組み込むことで偵察能力が向上する」と同社は評していた。
2007年に、同社幹部は大型秘匿案件の受注見通しを明らかにし、空軍向けHALEの受注を示唆していた。同年6月までにネヴァダ州グルーム湖にある空軍の極秘施設エリア51のウォッチャーが基地内「サウスエンド」で大型格納庫の新規建設を伝えてきた。建屋の大きさと外寸から翼端サイズの大きい機体向けと見られた。
新格納庫は2008年に入ると完成に近づき、ノースロップ・グラマンの会計報告では同社が大型極秘機材開発契約で20億ドルでISR用UAVを画期的な低視認性(LO)と空力性能の効率化を実現するとあった。業務を担当したのは同社社内の先端技術開発センターで、ロッキードマーティンのスカンクワークス、ボーイングのファントムワークスに相当する部門だ。
2009年には同社は定率初期生産をRQ-180で開始し、空軍は機材評価の準備としてフライトテスト用の組織をグルームレイクで「マッドハッターズ」との名称で発足させた。空軍は無人航空システム(UAS)のロードマップを公表し、LOで上空侵入可能なISRを「特別型」UASと位置づけた。
Aviation Weekが新たに入手した情報では2010年が同事業の分かれ目だったとわかる。試作一号機V1が2010年8月3日に初飛行したらしい。初飛行に先立ち、ノースロップ・グラマン社有機のビーチ1900D支援機が頻繁に施設へ飛行しており、2010年5月にサウスエンド格納庫に駐機している様子が衛星写真で確認されている。
試作一号機V1は14ヶ月にわたり飛行テストを実施し、二号機V2も2011年11月からテストに加わった。さらに3機が15ヶ月の評価テストに投入された。
第5号機が初飛行するとRQ-180のテストはエドワーズAFB(カリフォーニア州)に移り、第53試験評価グループ分遣隊1が2014年3月に現地入りした。分遣隊1の任務の運用テスト評価はビールAFB駐留の分遣隊2が適役だった。ロッキード・マーティンのU-2R/Sおよびノースロップ・グラマンのRQ-4グローバルホークの評価で実績があるためだ。
同年後半に活動が強化され、V6初飛行が2014年9月に実施された模様だ。2014年末から2015年初めにかけ、第15テスト飛行隊の分遣隊2とされる部隊がエドワーズAFBに現れ、新型機の性能評価に加わり、作戦投入が近づいた。
第15テスト飛行隊はエグリンAFB(フロリダ州)に本拠を置く第53航空団の隷下にあり空軍の高優先順位機材の迅速調達むけテストの統括が任務だ。2014年公表の第53飛行団広報資料によれば第15飛行隊は「指定システムの開発で運用テスト管理業務を行い、第一線への機材引き渡しを加速化する」のが任務とある。分遣隊2に近い分遣隊1が当時はロッキードのR-170センティネルのテスト業務をクリーチAFB(ネヴァダ州)で実施していた。
2018年11月は7号機が初飛行したと見られ別の転機となった。更にその8ヶ月後に、第一線部隊での供用に向け別の一歩がやってきた。第9作戦グループ分遣隊2がエドワーズ南基地にした。第9作戦グループはビールに本拠を置く第9偵察航空団の飛行担当部門で、U-2R、RQ-4やビーチクラフトMC-12Wリバティの訓練や機体準備にあたる。
分遣隊2の発足は2016年でその後は初期運用に向けた準備が最終段階に入り、長距離最終試験ミッションがエドワーズを起点に極秘に展開されたのは2017年早々のことらしい。詳細はあきらかになっていないが、自律航法装備の有効性を高高度で試したものと思われ、北極上空を利用したらしい。
このミッションを実施してからRQ-180は2017年に初の配備となったようだ。同年8月に第9作戦グループに支援隊が2つ加わった。ビール基地の分遣隊3と、アンダーセンAFB(グアム)の分遣隊4で運用に備えたテコ入れだ。このうち分遣隊3配膳はグアムでRQ-4を運用した実績があり、分遣隊4はシゴネラAB(イタリア)でグローバルホークを運用していた。
その翌年2018年にもう一つの部隊がビールに生まれ、機体のテストとともに運用前準備の評価を任務とした。第605試験評価飛行隊に分遣隊3が生まれ、第53試験評価グループの分遣隊1はエドワーズAFBで解隊された。
同隊の装備人員は新設の第417試験評価飛行隊に引き継がれたとされる。同隊配膳はC-17およびYAL-1空中レーザー装備のテストを担当していた。ただし、同隊の本当の任務はB-21テストの準備にある。だが同年の空軍協会会合では新型爆撃機のテストは第420試験評価飛行隊が担当と案内されていた。
RQ-180供用に対応すべく支援体制強化は2018年から2019年はじめにかけ進み、第9作戦グループの分遣隊9がビールで同機の教導を開始した。同グループの任務がをU-2のISRミッションの訓練、立案、実施、およびRQ-4関係者の訓練にあることから同隊がRQ-180運用の支援、訓練にあたっていると考えるのが自然だ。
今年は最終調整の段階でビールを中心に第9作戦グループ分遣隊3が4月に解隊され、人員装備はここでも第427偵察飛行隊に移転された。同隊はMC-12Wを運用する影の部隊で同機が米陸軍に移譲されたため2015年11月に一度解隊していた。ただし公開情報を見ると427偵察飛行隊の司令は2015年から在籍しており、その間は同隊は公式には存在していないことになっているのだが。
米空軍は同隊がどの機種を運用しているのか開示していないが、427偵察飛行隊は第9作戦グループ分遣隊5、および605試験評価グループ分遣隊3とともに共通ミッションコントロールセンターを4月23日開所している。同センターは「戦闘指揮官に自由に拡大縮小でき、ニーズに合わせた情報業務を制空権が確立されていない空域で提供すること」にあると空軍は説明している。「ソフトウェア、ハードウェア、人員、機材を駆使し同センターはC2で生産性を引き上げ、タスク実施の連鎖を短縮し、ヒト中心の通信活動を削減する」という。■

2019年10月16日水曜日

シコースキーのレイダーXは米陸軍の求める高速偵察ヘリコプターへの新たな提案


シコースキーの "Raider X" は米陸軍向けの
将来型高速武装偵察ヘリコプター構想への同社の提案だ
米陸軍がめざす残存性を備えた高速「ナイフファイター」ヘリコプターは激甚戦場への投入を目論む中、 レイダーXはこの任務に最適のよう
BY TYLER ROGOWAYOCTOBER 14, 2019
シコースキー


週はベルから360インヴィクタス高速武装偵察ヘリコプターが発表された。米陸軍のめざす次世代偵察機材(FARA)への同社の提案で、今回はシコースキーが「レイダーX」を公表した。同機はS-97レイダー実証機が原型で、同じく同社のX2複合ヘリコプター技術も活用し高速飛行と操縦性を実現している。同社には大型のSB>1デファイアントもあり、こちらは共用多用途(JMR)競作への提案で、さらに将来型垂直離着陸中型機への採用をめざし、これも他に例のない構造となっている。シコースキーX2技術は自社開発で今まで10年以上にわたり開発されてきた。 S-97についてWar Zoneが同社X2チームと独占インタビューしているので参照されたい

シコースキー

S-97 レイダー実証機がレイダーXの原型だが、一部が大きく変化している。

FARAOH-58カイオワウォリアーとAH-64アパッチの後継機も同時にねらう。FARAでは、ベル、シコースキー以外にも受注を狙う企業がある。シコースキーも現在はロッキード・マーティンの子会社であり、ボーイングAVXL3連合の他ケイレムノースロップ・グラマンレイセオンといった競争相手も存在する。ただボーイング含む残りの企業からFARA事業への提案内容は発表されていない。
シコースキーによればレイダーXは「迅速開発、迅速配備で様相を一変させる技術と性能を実現し、最も過酷な状況においても真価を発揮する機体。 レイダーXは将来の戦場で勝利をおさめるため必要な航続距離、防御能力、威力を備えた機体」とする。同社はさらに続ける。
-抜群の性能:X2.のリジッドローターにより性能が引き上げられる。操縦入力に敏感に対応し、低速ホバリング性能が向上し、軸を外したホバリングが可能であり、同じ加速率と減速を実現する。 Xは競合相手がないほどの性能を発揮する.
-アジャイルなデジタル設計。高性能デジタル技術による設計、製造はすでにロッキード・マーティン、シコースキーの他機種で実用に供されている。例としてCH-53K,CH-148F-35の各機があり、これにより陸軍は調達経費を引き下げるにとどまらず迅速かつ安価な改修で今後も変化していく脅威に対応可能となる。
-適応性: 新しいオープンシステム・アーキテクチャア(MOSA)によるエイビオニクス、やミッションシステムが「プラグアンドプレイ」により高い演算能力、センサー、残存性を実現し、高い威力と生存性につながる
-維持保守について:機材の運用コストを引き下げるため新技術を利用し、通常の整備点検方式を自機診断および実際の状況に応じた保守管理に変える。これにより機材の稼働率が上がり、前線での運用を容易にし、整備実施も柔軟に行える。
-今後の発展性、柔軟性: 将来の変わり続ける脅威環境に着目し、X2複合同軸ヘリコプター技術から他に比類のない今後の性能向上の余地が生まれ、飛行速度、航続距離、ペイロードの発展が期待される。 この将来への発展性から作戦運用上の柔軟性が生まれ、多様な用途に投入する柔軟性につながる。各種仕様と運用形態が実現するはずだ。
シコースキー
シコースキー・レイダーの実証飛行.

レイダーに盛り込まれているX2技術のその他について同社は以下のように述べている。
X2ファミリー機材の最新版レイダーXをシコースキーが公表した。 これまでX2が達成した性能は以下の通り。
·         250ノット超の最高速度
·         最高高度9千フィート超
·         低速高速での機体制御能力を生かして60度超の機体傾斜が可能
·         ADS-33B (Aeronautical Design Standard) レベル1の機体制御能力を複数パイロットで実現
·         飛行制御を最適化し、振動も抑える

シコースキーのテストパイロット、ビル・フェルがレイダーのテスト飛行大部分を操縦しており、以下X2技術について述べている。 
X2のパワーでヘリコプターの常識が変わる。 高速ヘリコプターの性能と航空機の巡航飛行性能を両立している。 S-97レイダーからFARA試作機となるレイダーXのリスクが低減できた。
レイダーXのコンセプトはS-97に似通っているが一部に改良が見られる。 低視認性への配慮が機体設計の基本にあったようだ。構想図を見るとレーダー反射面がない機体になっており、センサー、パイロン、アンテナ、兵装がきれいに格納されている。 その例として20mm機関砲も使用していないときは機体内に格納されているようだ。ローダーヘッドシュラウドも角度がついており、V字型空気取り入れ口の形状からガスタービンエンジンは機体内部奥深くに装備されているようだ。
排気もテイルブーム内部を経由し、冷却のしかけは同社から以前発表され不採用になったRAH-66コマンチと同様なようだ。テイル下部の形状がこの機能のために設計されているのだろう。コマンチでは高温排気は低温外気と混ぜてからここから排出されていた。


シコースキー
シコースキー
さらに胴体部のエッジにもコマンチ同様の加工がされているようだ。

こうした特徴から同機はヘリコプターとしての効率を追求しつつ可能な限りの高速度を実現する設計のようで、同時に低視認性設計の特徴も備え持つようだ。編集部はシコースキーにこうした特徴について確認を求めた。
また忘れてはならないのは、同機のレーダー視認性を低くする工夫として機体のレーダー断面積や赤外線特徴を低くするべく、コマンチほどではないが高い残存性を実現していることだ 同機が高速性能とともに状況認識能力を引き上げるべくセンサーを活用し、機体防御対策も高度化しておりこれからの戦場でも高い残存性につながるだろう。
SIKORSKY/LOCKHEED MARTIN
同様な設計上の特徴がFVL軽量版でも見られる。これはFARAより先に提案が募集されていた

レイダーXは同軸複合ヘリ仕様でFARA競合機の中では運動性能が一番上のはずだが、シコースキーからはX2技術を低リスクで実現できることを強調しているが、これは非常に主観的な意見だ。
同社がこの技術に賭け、10年余を費やしたのは事実である。だが量産機には応用されておらず、ベルよりリスクが高いのは事実だ。ベルはきわめて通常型のヘリコプターを提案している。複雑な機構を考えると、レイダーXの機体単価は相当高額になるのではないか。ただし、今の時点でこの点は明確にできない。すると、低コスト、低性能版のほうがFARAミッションに適していると言えないか。
高性能統合防空装備システム(IADS)と短距離防空装備の進歩に対し通常型ヘリコプターが高度防空体制を突破し残存できるのかとの疑問が生まれている。もうひとつが飛行距離の問題だ。接近阻止領域拒否の時代にヘリコプター運用基地が目標から150マイル以内にあるのでは現実的と言えるのか。
こうした問題については今後もご紹介していくが、飛行距離、速度、とくに残存性がFARAに数十億ドルを投じるにあたり重要な検討項目になるのではないか。または回転翼機による戦闘が過去のものとなっているのに無駄な検討項目になっているのかもしれない。
シコースキー
S-97の独特な機体構成を上から見るとびっくりする。

レイダーXは速度、飛行距離、操縦性でも優れているだろうが、残存性でもステルス特徴を生かし最新の防御策、センサー、兵装を実現する。これが実現しないと、開発リスクを抱えた複雑な機構のヘリコプターとして他社より機体価格が上昇しかねない。 だが再度、安価な競合作があるとしても、残存性が劣り将来のハイエンド戦に投入できない機体になればそれだけの高額を投じる価値があるのか。
その答えはFARAの考過程にあわせでてくるはずだが、現時点ではシコースキーの提案内容が判明したにすぎず、その内容は強い印象を与えてくれる。