2022年5月20日金曜日

ROKN: 尹新政権発足で前政権がぶちあげた海軍拡張計画はどうなるのか。空母建造はあやしくなってきたが、原潜建造は進みそう。

 ROK Navy CVX CSG


南朝鮮海軍の空母打撃群(CSG)構想のスケールモデル。CSGは空母のほか、KSS III潜水艦2隻、KDX IIIイージス駆逐艦2隻、KDX II駆逐艦1隻、KDDX駆逐艦2隻、FFXフリゲート3隻で構成。MADEX2021の南朝鮮海軍のブースで展示された。


北朝鮮が西側諸国と大韓民国へ挑発を続ける中、南朝鮮の近隣諸国が空母保有を加速している。日本はいずも級水陸両用艦を軽空母に改装し、中国は遼寧型空母2隻を保有し、さらに米海軍のニミッツ型空母に匹敵する大型空母2隻を建造中と言われる。


朝鮮国防省と文在寅大統領政権は、国防中期計画を昨年8月に発表し、CVXプロジェクトとして2033年までに3万トン級軽空母を取得し、2.6兆ウォンを投じると発表した。現代重工業(HHI)と大宇造船海洋工学(DSME)の2大造船会社がそれぞれバブコック・インターナショナルフィンカンティエリなど欧米企業と提携し、契約の獲得に向けて競争中だ。




 これまで、CVX推進派は、南朝鮮の周辺海域、南シナ海などの紛争地域、日本の独島(竹島)領有権主張などの海洋安全保障の重要性が高まっていることから、南朝鮮型空母の必要性を強調し、これに対しCVX反対派は周辺国の海軍力、消費コスト、開発時間などから空母は不要と主張している。


CVXへの風当たりが強まる


MADEX 2021: HHI unveils new CVX Aircraft Carrier designHHI がCVX軽空母のモデルを MADEX 2021で公表した


大韓民国海軍(ROKN)の野心的なCVXの見通しがどんどん暗くなってきた。3月9日の大統領選挙で、リベラルな文政権の次の新大統領に国民の力党の尹淑烈Yoon Suk-yeolが当選し、厳しい批判にさらされてきたCVXプロジェクトは終焉に近づくようだ。

 同プロジェクトでは国会の予算審議で、当時与党だったリベラル派の民主党と保守派の国民の力党が対立するなど、浮き沈みを繰り返してきた。しかし、新政権が国防政策に大きな変化をもたらすと予想され、軽空母保有に否定的な立場をとってきた国民の力党の新政権に、CVX事業の継続に懐疑的な声が強まっている。

 尹の現大統領移行チーム会長安哲秀Ahn Cheol-soo は、大統領選で尹と単独立候補に合意した際、「軽空母と高機能戦闘機のどちらが必要かを議論すれば、より良い解決策を生み出す相乗効果が生まれる」と述べており、空母よりF-35やKF-21など戦闘機取得に比重を置く。

 尹の初代国防相候補で元統合参謀本部(JCS)副議長の李鍾燮退役中将Lieutenant General  Lee Jong-supも、CVX事業への見解を問われ、「南朝鮮の野心について様々な意見があることは承知している」と答えるなど慎重姿勢を示した。また、李は軍事力向上を考える上で重要な基準として、戦略・作戦構想、軍事的要求事項の充足、国益への貢献、費用対効果などを挙げている。



Prospect: CVX and K-SSN in the Inaugurated Yoon Administration


南朝鮮海軍は、南朝鮮国防分析院(KIDA)の条件付き承認と国防省の全面承認で事業を進めてきたが、昨年国会で2022年予算審議で強い反対を受け、CVX予算は当初の72億ウォンが5億ウォンに大幅削減された。本会議で超党派合意を引き出せず、民主党が72億ウォンのCVX予算を完全に盛り込んだ予算案を強行通過させたため、現地報道では「青瓦台と文大統領の考えが完全に反映された」と解釈された。

 革新党が「VIP議題」としてきた同事業だが、尹政権で勢いを増すことはないだろう。南朝鮮軍のある関係者は「昨年、与党が予算案を強行通過したように、新政権と国民の力党は文前政権が主導したCVX事業を成功させないと言いかねない」と話した。


Babcock and DSME sign MOU for naval ship development南朝鮮海軍の CVX 計画に対する DSME の初期提案。



新政権、国防の新たな優先課題とは


CVX開発を阻む要因がもうひとつある。尹大統領がウクライナでのロシア軍の大失敗を教訓に、軍再編に力を入れる可能性がある。ロシアは核兵器を誇示し、対外的にどう見られるかに集中しすぎ、配備された部隊の戦闘能力の強化に関心がないまま、敗北した。ウクライナ戦は、新技術の武器を保有する巨大な軍より、戦闘任務を着実に遂行できる部隊の方が効果的だと証明している。

 この教訓を南朝鮮海軍に当てはめ、尹大統領は、軽空母のような目玉資産の獲得よりも、乗組員数、弾薬備蓄、精密誘導兵器の強化、整備頻度の増加、停泊期間の再調整など、現行の軍事力を最大限発揮することを好むかもしれない。

 実は、二大政党はともに、南朝鮮海軍が内部的に抱える問題、すなわち、2020年以降の潜水艦での乗組員の離脱者増加、KDX駆逐艦の地対空ミサイルの標的誘導装置の故障、標的誘導装置の予熱に時間がかかる、誘導装置の高価格と主要部品の不足、などを提起していた。また、DAPA(国防調達計画管理局)も縮小され、その機能は各軍または国防省に移管される可能性がある。このように南朝鮮軍の戦闘態勢を保証し、訓練を強化することは、大型新兵器の取得を躊躇させることにもなる。

 退任迫る文政権の最高幹部が報道陣に「専門家を招いた公聴会や討論会を開き、視聴者の理解と意思疎通を深める」と回答したが、昨年12月に「南朝鮮海軍は一時も休まずCVX計画を継続する」と明らかにした文大統領が任命した海軍作戦部長(CNO)金正秀提督 Admiral Kim Jeong-sooは、次期大統領により別の提督に交代する。このため、CVXで不確実性が高まり、新政権のテーブルに残ることはないだろう。総合判断すれば、大規模だが物議を醸すCVXプロジェクトが新政権に継承されるかの分かれ道となるのは国防省が後日発表する2023-2027年の新中期国防計画だろう。


South Korean Nuclear Submarine CutawayKSS-III級は、第一世代の原子力潜水艦の基盤となる。韓国は経験豊富な国、おそらくフランスと提携し、開発を迅速に進めることができる。



原子力潜水艦K-SSNの今後は?


SSNあるいはSSBNと呼ばれる原子力潜水艦は、核燃料で理論上無制限に海中で活動でき、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)あるいは通常兵器でいつでもどこでも敵を攻撃できる戦略物資として、世界中の海軍の「夢の兵器」だ。

 SSNやSSBNの保有国は、米国、ロシア、英国、フランス、中国、インドの7カ国だけだ。今年初めの金正恩の演説によれば、北は2020年代半ばまでに7番目となろうとしている。

 ソウルは2000年代初頭の故盧武鉉大統領以来、K-SSN導入を継続検討してきたものの、まだ実現していない。文在寅大統領はSSN取得を大統領公約としたが、ワシントンの政治的懸念、韓米平和協力協定、核燃料取得ルートの不足などで、青瓦台は膠着状態に陥ってしまった。チャン・ボゴ3(KSS-III)バッチ3の要求性能では、4000トンのSSNの開発が目標とある。

 また、バッチ3は排水量5000トン以上で、国産弾道ミサイル「ヒョンムー」をベースにSLBMを10発搭載するとされるが、国防省は「今の段階で言及するのは適切ではない」として、具体的な推進システムに関するコメントを避けている。


CVX Carrier Strike Group Sailing. ROK Navy picture.CVX空母打撃群の想像図. ROK Navy picture.




CVXとKSS-Nプロジェクトで国内世論と政治を味方に


CVXが近隣諸国や南朝鮮国民で関心を広く集めているように、K-SSNも、対北コスト効果の高い対潜戦能力の向上と、戦略抑止力としてのSSNの必要性という、二極化の世論に火をつけている。厳密に言えば、南朝鮮世論はK-SSNに党派を超えた支持を示している。

 KRi(南朝鮮研究院)とKINU(統一研究院)が昨年10月から11月にかけて実施した世論調査では、調査対象の南朝鮮人1006人のうち75.2%がSSNに賛成した。民主党支持の有権者の78.3%、国民の力党支持者の72.9%が賛成している。

 大統領選挙でSSN問題は論点にならなかった。当時の与党・民主党は原子力潜水艦の必要性を主張した。民主党の李在明候補は、韓米同盟と二国間外交協力に基づくSSN保有を公約に掲げ、ワシントンを説得し核合意を変更させるとした。

 これに対し、尹次期大統領は、ワシントン、東京との3極安全保障協力に基づくISR(情報、監視、偵察)の強化を優先するようであり、中国北朝鮮のため必要となった場合にSSN獲得を進めると予想される。尹は大統領選に立候補して以来、SSNやCVXの代わりにTHAAD(終末高高度航空防衛)を防衛力強化の対象としてよく挙げていた。

 しかし、北のSLBM実験とSSBN核弾道ミサイル潜水艦開発の意志がこれまで以上に強くなっており、中国が米海軍へ対抗し海洋進出を加速する中、尹政権がSSNを真剣に検討する誘惑にうち勝つのは困難になるかもしれない。国民の7割以上が支持する原子力潜水艦保有に対し、国民と政界を無視することは、容易ではないだろう。

 CVXに実質的に反対していた李鍾燮国防長官Lee Jong-sup がSSNに肯定的な姿勢を示し、「原子力潜水艦はディーゼル潜水艦より高速で長時間潜航できるため、運用効率が良い」「国防予算や技術水準、周辺の安全保障環境の変化などを考慮する必要がある」と述べた。李長官は、核燃料取得問題の解決で重要となる要素として、緊密な連携と二国間のコンセンサスの絆を挙げた。

 新政権がSSNの選択肢を完全に放棄することはないと思われ、国防開発庁ADDや研究機関による研究開発を継続するものと思われる。



同盟国の牽制と非対称性によるパワーバランス


南朝鮮海軍士官学校の柳智勳Yu Ji-hoon教授やニューヨーク州立大学のエリック・フレンチEric French 教授がディプロマットに寄稿し、K-SSNへの米国の支援を求めただけでなく、フィリップ・ルフォー Philippe Lefort駐韓フランス大使も昨年9月、南朝鮮政府と核廃棄物の再処理に関する協力または取引で協議する意思があると伝え、空母や原子力潜水艦に関する軍事技術をフランスがすべて保有していると強調している。

 インドのシンクタンク、Institute for Defence Studies and Analyses の東アジアセンターのコーディネーターJagannath P. Panda は、米国が AUKUS から南朝鮮を排除し、SSN技術の移転や支援を拒否すれば、ソウルはパリと協力しSSNを開発すると見ている。キム・ヒョンジョン Kim Hyun-jong国家安保室第2部長は2020年10月ワシントンを訪問し、K-SSN向け核燃料供給を要請したが、ホワイトハウスは核不拡散原則を理由に断った。だが、オーストラリアへの原子力潜水艦譲渡は例外的に決定している。

 南朝鮮国防大学のパク・ヨンジュンPark Young-jun教授は、北の核兵器開発が進む中、南朝鮮はSSN含む抑止力の獲得に集中するべきで、政府レベルで信頼獲得措置を取る必要があり、原子力の軍事利用が相互核合意で禁止されている以上、米国の信頼獲得が最重要と主張した。

 核武装した北を抑止し、アジア太平洋の海軍力整備に遅れを取らないためにはSSNが必要とする主張に説得力が増している。中国や日本の海軍は、南朝鮮に比べて規模や質で優れると言われており、戦力差の克服はかなり困難だ。北東アジアの軍拡競争は並行して進行しており、非対称的な資産で別の指標を相殺する必要がある。

 朝鮮半島の安全保障状況と国内世論がSSN建造の重要性を高めているが、膨大な費用と時間が障害として残る。豪州戦略政策研究所(ASPI)の調査では、SSN8隻の建造費に1710億豪ドルを試算している。SSN は今のところ、国民から見て CVX よりは説得力があるものの、核武装7カ国の技術水準に達するため天文学的な予算を投入しても各国との技術ギャップを埋められないとなれば、国民は効率性と実行可能性に疑問を投げかけるはずだ。

 もう一つ処理すべき問題がある。SSNの核燃料だ。原子力潜水艦の建造経験がある国から技術や知識を導入する必要があるとの指摘もある。現在の韓米原子力協定では、南朝鮮のウラン濃縮は20%以下、軍事目的での使用は制限され、尹大統領は毎年10月の2国間戦略協議(SCM)や尹・バイデン首脳会談で、将来の抑止力とあわせ、北の脅威に直面する国防の大きな観点からこの問題を話し合う必要がありそうだ。



South Korea's HHI and Babcock Ink Strategic Alliance for CVX Aircraft CarrierCVX想像図 HHI image


大局観で先を見通せ


尹大統領は韓米関係の重要性をよく認識しており、最終的にクアッドに加盟しワシントンと強固な同盟関係を維持すると宣言した。バイデン政権もこれを認識し、同盟関係の強化と協力関係の緊密化に大きな期待を寄せているので、尹大統領の意志があればK-SSNとあわせ核合意修正の議論を再燃させられるだろう。K-SSNがアジア太平洋地域と同盟国の安定にどう貢献するのか、米国の説得は新政権の外交力にかかっている。

 文政権は、クアッド諸国や欧州同盟国ほどワシントンと積極的に同調しなかった、バイデンは、成長する中国と北朝鮮抑止の目的だけのために、1970年代以来40年以上にわたりミサイル開発を阻止してきた韓米ミサイルガイドラインを2021年5月に解除して先例を作った。北東アジアを取り巻く安全保障上の変数が、今後5年間の尹大統領の任期中にどう推移するか次第で、核協定の微小変更にもタカ派的な反応を示すホワイトハウスの姿勢も中期的に、おそらく2020年代後半に変化する可能性がある。

 豪州のSSN取得に対する最近の姿勢の変化は、米国が中国海軍の海洋進出に対抗する目標と現実的な国益が一致する場合に、行動を起こすことを証明している。

 AUKUSの出現にフランスは反発し、豪州はフランスのディーゼル潜水艦の売却契約を破棄したが、NATO(北大西洋条約機構)、Quad(四極対話)、AUKUSに南朝鮮、日本、インド、 ヨーロッパが加わり、より広い枠組みで体系的に連携する多国間安全保障協力体制で協力できる可能性がある。ホワイトハウスのカート・キャンベル国家安全保障会議インド太平洋調整官は、AUKUSを「オープン・アーキテクチャ」と呼び、将来的にアジアや欧州諸国へも何らかの形で参加する、道を残している。

 南朝鮮海軍は昨年10月以降、数回にわたりSLBMの水中発射実験に成功し、最近では海上でSLBM2発を20秒間隔で同時発射した。南朝鮮は世界で初めて在来型ディーゼル潜水艦に自前SLBMを搭載した国だ。したがって、平壌と北京の脅威の下で、国民及び軍事戦略上のSSNに対する要求は時が経つにつれ増えてくる可能性がある。■



Prospect: CVX and K-SSN in South Korea's New Administration - Naval News

Daehan Lee  17 May 2022


Daehan Lee currently works for aerospace and defense-related projects in Seoul, also being a political, security affairs researcher writing about inter-Korean naval acquisition and development. He previously worked at the U.S. and Belgian Embassies in Seoul, the People Power Party, and election camps. Prior to his work in politics and foreign affairs, Lee served for the Republic of Korea Navy as an assistant to the Vice Admiral and a translator for Master Chief Petty Officers of the Navy, shortly working at the Joint Chiefs of Staff. Fields of interest include the Asia-Pacific security, defense acquisition, Korean politics and foreign policy.


アジア太平洋戦域の貨物輸送にDARPAがハイブリッド輸送機コンセプトを発表---リバティ・リフター構想からどんな機体が生まれるのか

 ekranoplan Liberty Lifter

 

アジア太平洋地域の沿岸域での作戦に最適化した新型ハイブリッド輸送機コンセプトがDARPAから発表された。

 

国防総省がめざす水上輸送機構想は、ボートと飛行機の中間に位置する「エクラノプラン」、地面効果翼(WIG)の原理を応用する。地上効果を利用して水面を高速で滑走するエクラノプランは、これまで旧ソ連を中心に限られた地域で軍事利用されただけだったが、米軍で採用されれば、革新的な一歩となる。

 

 

 国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)は、エクラノプランのコンセプトを応用した長距離・低コストのXプレーンをめざすリバティ・リフター・プロジェクトを立ち上げた。DARPAは、同機で海上での戦略的・戦術的揚力を実証することを期待し、「作戦用のロジスティクス能力の飛躍を実証する」としている。

 メディアリリースでDARPAはこう説明している。「想定の機体は、大型貨物の高速で柔軟な戦略的輸送と、水面離着陸能力を兼ね備える。機体構造では、水面近くでの高度な制御飛行と、中高度飛行の両方が可能となる。さらに、同機は低コスト設計と製造の理念に基づき建造される」。

 現在、プログラムは初期段階にあり、DARPAの戦術技術室のプログラムマネージャー、アレクサンダー・ワランAlexander Walanによれば、「水上飛行機の航続距離、ペイロード、その他のパラメータ」を再定義するという。

 しかし、ワランは、プログラムの目標について、「長期にわたる海上作戦において、戦闘部隊に新しい能力を提供するXプレーンの実証機になる」と自信たっぷりに語る。

 

リバティリフターのコンセプト図のひとつ DARPA

 

 コンセプトアートと合わせ公開したビデオで、このXプレーンの姿がわかるが、機体はコンセプト図にある双胴形式の貨物機より相当小さいものになる。

 このデザインは、直線翼を、コックピットをつけた2つの箱型胴体と結合させ、小さなカナード前翼を備えている。動力装置は、主翼に沿って取り付けた10個のプロペラユニットとして描かれているが、各ユニットが共通の動力装置を使用しているかは不明。さらに、別のコンセプト図では、プロペラはプッシャー配置になっており、さらに別のコンセプトでは前方に向いている。胴体には、わずかに傾斜した尾翼があり、その上に水平安定板が装着されている。

 

DARPAが公開したビデオでリバティリフターが装甲車両を海岸に発進させ強襲攻撃を加える DARPA

 

 

 映像でわかる重要な点は、上方に開く機首扉から海岸に車両を走行させる荷揚げプロセスだ。

 リバティリフターが水面を滑走するだけでなく、高度1万フィートまでの「中高度」でも飛行可能であることは、同機が、エクラノプランの利点と従来型の固定翼機の優れた性能特性および柔軟性を組み合わせたハイブリッド機であることを示している。

 水上を滑走することで、エクランオープンは貨物を迅速かつ効率的に移動させる。ただし、低空飛行で機動性に乏しいため、水面上の各種物体に衝突し、ダメージを受ける危険がある。DARPAによると、エクラノプランの定義は、水上(または陸上)の飛行距離が翼幅以下としている。

 リバティリフターのコンセプトは、エクラノプランのように、滑走路に依存せず、必要に応じ水上を低空飛行することだ。

 また、通常のエクラノプランの場合、波が高いと運航に支障をきたす。離陸が穏やかな海域に限られるのは、従来型の飛行艇にも共通する欠点だ。

 DARPAによれば、リバティリフタープログラムで取り組む主な課題の1つは、荒れた海域での運用方法。「低速で高揚力を生み出し、離着陸時の波の衝撃負荷を軽減し、波の力を吸収する革新的な設計ソリューション」を実現することだ。

 「高度なセンサーと制御機能」が、大きな波を回避し、離着陸手順の間に空力/流体力学の相互作用を処理するため開発される。

 こうした各種技術の融合は、DARPAがリバティリフターを輸送機だけでなく貨物船にも拡張する構想で考えているためだろう。しかし、従来型の輸送機と異なり、リバティリフターは水上から離着水が可能である。また、貨物船と対照的に、リバティリフターは、エクラノプランの機能で、より速く、より高い生存率で積載物を輸送できる。

 DARPAが指摘するように、「現在の海上輸送は大量のペイロードを輸送する上では非常に効率的だが、脅威に対して脆弱で、港湾施設を必要とし、輸送時間が長くなる」。米空軍の輸送機は、貨物を迅速に輸送できるものの、滑走路の制約を受け、また非常に脆弱という欠点がある。また、米国防総省が重視する海上作戦の支援もできない。

 リバティリフターは滑走路に依存しないだけでなく、陸上での整備を大幅に減らし、「数週間、海上で連続運用できる」想定だ。

 この考え方は、明らかにアジア太平洋地域における中国との将来の紛争の可能性に基づくものだ。 中国との紛争では、海上輸送が主体となり、貨物や人員の移動は長距離に及び、通常の飛行施設は中国の長距離攻撃により緒戦から脅かされる。

 こうした懸念のため、米軍全体が想定する戦い方が大きく変化し、特にアジア太平洋の海上における航空輸送は、この新しい考え方の応用になる。

 ここ数カ月、米特殊作戦司令部(SOCOM)は、特殊作戦部隊の支援用に沿岸部で運用する水陸両用C-130ハーキュリーズの変種、MC-130J Amphibious Capability(MAC)を発表した。同機は、リバティリフターと同じ課題に答える想定だが、DARPAは幅広い要求を満たすため、より根本的なアプローチを考えているようだ。

 

MC-130J MACの構想. U.S. Special Operations Command

 

 

 米空軍は日本の新明和US-2水陸両用機の導入に公式な関心を示していないものの、米空軍がアジア太平洋でのコープ・ノース演習で、同機とともに訓練を行ったことも注目される。US-2は、現在も供用中の数少ない水陸両用機であり、沿岸部での特殊作戦任務にも適しているようだ。

 

新明和US-2がコープノース22演習でティニアン島沖合に展開した。2022年2月 U.S. Air Force/Senior Airman Joseph P. LeVeille

 

 

 リバティリフター・プロジェクトから量産機が誕生するとしたら、DARPAは「精巧で軽量なコンセプトよりも、低コストかつ製造が容易な設計を優先する」としている。手頃な材料を使えば、「大量に」購入できるはずだ。

 リバティリフターから派生した航空機がコープ・ノース演習に参加するまでは数年先になりそうだ。

 しかし、DARPAが海上空輸の概念全体の見直しに入ったのは、アジア太平洋地域で互角の戦力を有する敵との紛争を国防総省が真剣に受け止めているためだ。■

 

 

Cargo Hauling Ekranoplan X-Plane Being Developed By DARPA | The Drive

BY

THOMAS NEWDICK

MAY 19, 2022 2:27 PM

THE WAR ZONE


2022年5月19日木曜日

台湾がPLAに制圧されたら.....米海兵隊が現地抵抗勢力を支援し、中国占領軍に妨害活動を展開する....?

以下の記事はUS Naval InstituteのProceedingsオンライン版に掲載された論文の抄訳です

 

FEATURED ARTICLE

台湾が中国侵攻受け制圧されれば、米海兵隊は、中国の監視能力を妨害するべく、台湾のインフラを破壊しなければならない事態が発生する。

 

2021年7月、習近平国家主席は中国共産党創立100周年記念演説で、中国には台湾と統一し、独立の努力を「粉砕」する「歴史的使命」と「揺るぎない決意」があると述べた1。中国共産党は、特に「落ち着かない」人口の多い地域で、住民を統制する広大な監視国家を中国で作り上げた。台湾海峡を挟む中華民国は、COVID-19の拡散を抑えることに成功したことが示したように、安全保障、健康、輸送などの用途に高度な電子監視方法を採用している2。

中国が台湾を侵略・征服した場合、台湾の既存の監視能力を迅速に再利用する可能性がある。習近平と中国共産党は、抵抗を排除し、支配を確立する方法として、大規模な監視モデルを開発したと考えている3。大規模監視モデルがチベット、香港、新疆での利用を通じ完成された4。

台湾国内の抵抗勢力への支援として、米海兵隊は台湾のデータセンターおよび中国へのデータ送信経路を物理的あるいはサイバー手段で攻撃・破壊す必要がある。反乱を成功させるため、台湾での中国監視能力を無効にする必要がある。反乱部隊が中国軍を疲弊させれば、米軍と同盟軍は広い戦域で中国を撃退する時間が稼げるかもしれない。

中国の監視体制

surveillance cameras

台湾侵攻で、中国は既存の監視網を利用し住民をコントロールしようとするだろう。このインフラを無効にすることが、反乱軍にとって不可欠である。Credit: Alamy 

中国共産党の戦略家は、情報こそが戦争の重要領域と考え、システム・オン・システムの対決において、米軍のデータ収集・評価能力の破壊をねらうだろう5。

中国共産党は、通信監視、監視カメラ数億台、顔認識ソフトなどを通じ、中国国内の疑わしい集団だけでなく、自国民も統制するために、テクノロジーを駆使した監視国家を構築した6。例えば、「スマートフォン監視装置、顔認識技術、ディープパケット検閲、アプリケーションフィルタリング」によって、ウイグル人の「仮想収容」、コミュニティの「野外監獄化」7を実現している。

香港の平定に監視技術が応用され、この手法の成功度があきらかになった。香港が公然と反乱を起こしたのはわずか2年前のことだった8。

台湾をめぐる対立

中国共産党は台湾統一へ関心を強めており、中国軍は台湾海峡で攻撃的な姿勢を示している。人民解放軍海軍(PLAN)は、米海軍に数の面で優位で、米国のウォーゲームの多くは、高じん度紛争が始まると、米軍は質的な優位性も失う可能性があると指摘している9。元海軍次官は、ロシアがウクライナで最初に失敗したことで、PLANが台湾防衛力を早期に圧倒する努力を倍加させる可能性を示唆している10。中国が台湾を侵略する場合、香港などその他落ち着かない地方と同様に、住民を制圧して同化できれば「勝ち」となる。

ジョセフ・バイデン大統領やドナルド・トランプ大統領の下で、米国は公然と台湾を支持するようになった。バイデン政権の特殊作戦・低強度紛争担当国防次官補に指名された人物は、2021年5月に上院軍事委員会で、中国の侵略に対抗するための台湾の非正規戦能力向上を支援を米国は強く検討すべきと証言している11。2021年8月には、ホワイトハウスは750百万ドルの武器パッケージを台北に提供した12。

海兵隊は、台湾でより大きな役割を果たすようだ。海兵隊司令官デビッド・H・バーガー大将General David H. Bergerは、海兵隊を太平洋と中国に焦点を当てるように方向転換し、他の脅威を排除していると批評されている14。 バーガー大将の評価が正しければ、台湾有事に海兵隊は「911部隊」として対応し、中華民国防衛に直接関与するユニークな存在となる。台湾防衛における海兵隊の重要な役割は、米国同盟国がより広い戦域で中国と戦う間、台湾平定を成功させないため、PLAへ反乱が可能な抵抗勢力の育成にある。

反乱と制圧の方法

最近行われた中国による台湾侵攻を想定した演習で、元統合参謀本部副議長ジョン・E・ハイテン大将General John E. Hytenは、米軍が「惨敗」したと評定した。ハイテン大将は、敵対勢力は「我々を圧倒した」と述べた15。中国による併合は不可避ではないが、米国の立案部門は最悪のシナリオに備えるべきだ。この場合、中国が台湾を占領しても、2003年に米国がイラク軍を撃退しイラク戦争を終結させたのと同様に、紛争終結と見なすべきではない。このような不測の事態に備え、海兵隊は台湾内の反乱軍を支援する計画が必要だ。

海兵隊には、抵抗勢力支援に適した能力がある。海兵隊特殊作戦司令部(MarSOC)は、海兵隊と他の米軍部隊、情報機関、ホスト/パートナー部隊の間をつなぐ役割を果たす。海兵隊強襲部隊は、PLA 占領に対抗する抵抗ネットワークの構築で手段と方法について、台湾のパートナーと協力できる16。海兵隊はまた、太平洋を担当し、最近の台湾での演習に参加した第1特殊部隊群(空挺部隊)含む米陸軍特殊部隊とも連携できる17。

 

Marine cyber forces

海兵隊のサイバー部隊は、通常の海兵隊部隊と同様に、中国によるネットワークへのアクセスや支配を防ぐため、台湾のネットワークを妨害する必要がある。 (Jacob Osborne)

2006年版の陸軍-海兵隊の野戦教範3-24「対反乱戦」では、フランスの対反乱戦理論家でアルジェリア戦争の退役軍人ダヴィッド・ガルーラDavid Galulaの考えに大きく依拠している18。ガルーラは著作で、ゲリラから住民を勝ち取ることに焦点を当てる反乱への対処として、政府全体での包括的アプローチを取った19。ロジェ・トリンキエRoger Trinquierは、現地抵抗運動を鎮圧するための占領国向けハウツー・マニュアルを執筆している。それによれば、敵の情報を得ること、敵を住民から切り離すことに重点を置くべきとある。トリンキエは、検閲、夜間外出禁止令、その他の方法を用いて、反乱軍への協力を義務づけ、政府への協力を容易にするよう提案している20 。

米軍は、ガルーラの手法に依存しながらも、トリンキエの手法も現代の技術に適応させ、2004年にアフガニスタンとイラクで拘束した容疑者全員の生体データを目録化した「自動生体認証システム」などのプログラムを立ち上げた21。

したがって、抵抗勢力の訓練、準備、供給、武器庫の設置など、第二次世界大戦中の戦略事業局(Office of Strategic Services)のような措置に加え、海兵隊は監視技術を含む現代の情報領域を考慮するべきだ。台湾にはスマートシティが数カ所にあり、閉回路テレビカメラの広範なネットワークがあり、病歴を追跡する国民健康保険スマートカードを発行している。2020年、中華民国政府は、携帯電話のジオフェンシングなど、高度な社会監視ツールを使用し、COVID-19の蔓延を抑えることに成功した22。パンデミック前の2018年から、人権擁護団体の報告書が、治安機関や警察機関によるオンラインおよび携帯電話データの大量収集を指摘し、台湾議会はデジタルプライバシーに関する公聴会を開いていた23。

台湾の抵抗勢力は人知れず活動する必要があり、さもなければ、細胞はPLAに特定され破壊される。ゲリラ作戦の成功のために、海兵隊の作戦立案部門は、台湾で監視体制を妨害し、PLAに利用できなくさせるため、監視カメラシステム、衛星中継、インターネット/ファイバーノード、関連データの保存手段を標的にする。さらに、海兵隊は台湾国防省と協力し、中国の巨大なサーバーファームが実行するビッグデータ・アルゴリズム分析と悪用のため、データを中国に流出させる場所を特定し、操作不能にする計画を立てるべきだ24 。

台湾の情報インフラの破壊は、バーチャル世界だけでなく、物理的な世界でも行える。物理的な攻撃は、通常部隊や海兵隊レイダーが担当する。海兵隊サイバー空間司令部(MarForCyber)は、コンピュータネットワーク作戦で、台湾のサイバーネットワークのマッピングと破壊を支援できる。民間人がインターネットで通信できなくなれば PLAは喜ぶかもしれないが、占領への悪影響のほうが大きく、抵抗勢力に活動の自由を生む。

インターネットデータおよび国際的に共有される情報の 99%は海底ケーブルを経由しているため、MarForCyberがターゲットとする主要なチョークポイントは、海底ケーブルの陸揚げ地点となる25。台湾の監視とデータ流出能力を破壊することしか、台湾には抵抗のチャンスはない。

中国が台湾侵攻を実行し、米国が介入する場合、海兵隊が最初の対応をする公算が高い。海兵隊の作戦立案部門は、台湾防衛で、長期戦に備え、予想されるPLA侵攻軍の圧倒的な数的優位のため、中国が中華民国を占領する可能性があると認識しておく必要がある。

米国と同盟国が中国と大規模戦闘を戦う間、PLA軍へのゲリラ作戦を維持するため、海兵隊は台湾を全面的監視におこうとする中国の能力を低下させる貢献が求められる。そのため、海兵隊の空挺部隊、通常部隊、サイバー部隊が、台湾のネットワークを破壊し、中国本土へデータを流出させる手段を断たねばならない25。過去には、撤退部隊が橋を破壊し、鉄道を寸断してきた。これからの海兵隊は、抵抗勢力が生き残り、別の機会に戦えるよう、電子の超高速道路を破壊しなければならない。■

Preparing a Post-Invasion Taiwan for Insurgency | Proceedings

By Christopher Booth

May 2022 Proceedings Vol. 148/5/1,431

 

1. Yew Lun Tian and Yimou Lee, “China’s Xi Pledges ‘Reunification’ with Taiwan, Gets Stern Rebuke,” Reuters, 1 July 2021; and Lawrence Chung, “Xi Jinping Vows to Crush Attempts to Thwart ‘Complete Reunification’ with Taiwan,” South China Morning Post, 1 July 2021.

2. Yimou Lee, “Taiwan’s New ‘Electronic Fence’ for Quarantine Leads Wave of Virus Monitoring,” Reuters, 20 March 2020.

3. Jeff Schogol, “Why the Next Major War Is Likely to Start in Taiwan,” Task & Purpose, 7 August 2021.

4. “Chinese Authorities in Tibet Demand Information on Relatives Living Abroad,” Radio Free Asia, 30 July 2021; and “China Undercover,” PBS Frontline, 7 April 2020.

5. Edmund J. Burke, Kristen Gunness, Cortez A. Cooper III, and Mark Cozad, People’s Liberation Army Operational Concepts (Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2020); and J. Michael Dahm, “Beyond ‘Conventional Wisdom’: Evaluating the PLA’s South China Sea Bases in Operational Context,” War on the Rocks, 17 March 2020.

6. Tahir Hamut Izgil, “One by One, My Friends Were Sent to the Camps,” The Atlantic, 14 July 2021; Kai Strittmatter, We Have Been Harmonized: Life in China’s Surveillance State (New York: Harper Collins Publishers, 2020); Nectar Gan, “China Is Installing Surveillance Cameras Outside People’s Front Doors . . . and Sometimes Inside Their Homes,” CNN Business, 28 April 2020; and “How China Is Using Facial Recognition Technology,” NPR, 16 December 2019.

7. Ali Çaksu, “Islamophobia, Chinese Style: Total Internment of Uyghur Muslims by the People’s Republic of China,” Islamophobia Studies Journal 5, no. 2 (Fall 2020): 184–86.

8. Vivian Wang and Alexandra Stevenson, “‘A Form of Brainwashing’: China Remakes Hong Kong,” The New York Times, 30 July 2021.

9. Todd South, “What War with China May Could Like,” Military Times, 1 September 2020.

10. Seth Cropsey, “Biden’s Plan to Cut Navy Ships: Handing China Victory at Sea,” The Hill, 4 April 2022.

11. Stephen Losey, “U.S. Special Forces Could Help Taiwan Learn to Resist Chinese Invasion, DoD Nominee Says,” Military.com, 27 May 2021.

12. Jennifer Hansler, “Biden Administration Proposes $750 Million Arms Sale to Taiwan in a Move Likely to Anger Beijing,” CNN, 5 August 2021.

13. Michael Mazza, “Imagining a New U.S. Military Presence in Taiwan,” The American Enterprise Institute, 17 June 2020.

14. Jim Webb, “The Future of the U.S. Marine Corps,” The National Interest, 8 May 2020.

15. Guy Taylor, “Chinese Pressure Sparks Debate on Taiwan’s Resilience,” The Washington Times, 8 August 2021.

16. LTC Brandon Turner and MAJ Paul Bailey, USMC, “The Joint-Force SOF Relationship: Support Roles in the Resurgence of Great Power Competition,” Marine Corps Gazette, January 2020, 12–16.

17. Joseph Trevithick, “Army Releases Ultra Rare Video Showing Green Berets Training in Taiwan,” TheDrive.com, 29 June 2020.

18. Fred Kaplan, The Insurgents: David Petraeus and the Plot to Change the American Way of War (New York: Simon & Schuster, 2014); and Ann Marlowe, “David Galula: His Life and Intellectual Context,” Strategic Studies Institute Report, U.S. Army War College, 2010.

19. David Galula, Counterinsurgency Warfare: Theory and Practice (New York: Praeger, 1964), 66.

20. Roger Trinquier, Modern Warfare: A French View of Counterinsurgency (New York: Praeger, 1964), 45.

21. Nina Toft Djanegara, “Biometrics and Counter-terrorism: Case Study of Iraq and Afghanistan,” Privacy International—Report, May 2021.

22. Wen-Yee Lee, Elizabeth McCauley, and Mark Abadi, “Taiwan Used Police Surveillance, Government Tracking, and $33,000 Fines to Contain Its Coronavirus Outbreak,” Business Insider, 4 June 2020; and Alexander Klimburg, Louk Faesen, Paul Verhagen, and Philipp Mirtl, “Pandemic Mitigation in the Digital Age: Digital Epidemiological Measures to Combat the Corona Pandemic,” Hague Centre for Strategic Studies (2020), appendix A.

23. Lawrence Chung, “Is Taiwan Becoming a Surveillance State? Privacy Advocates Sound Alarm,” South China Morning Post, 9 September 2018.

24. Derek Grossman, Christian Curriden, Logan Ma, Lindsey Polley, J. D. Williams, and Cortez A. Cooper III, Chinese Views of Big Data Analytics (Santa Monica, CA: RAND Corporation 2020), l.

25. Phil Edwards, “A Map of All the Underwater Cables that Connect the Internet,” Vox, 8 November 2015; and “How Does Cyberspace Work?” The Council on Foreign Relations—World 101.

主張 北欧2カ国のNATO加盟に立ちふさがるトルコの取引要求を認めるべきではない。とはいえ、トルコはNATOから追放できない。だが、対応策はある。経済だ。

  

 

ウェーデンとフィンランドのNATO加盟でトルコを甘やかすな、強硬路線を貫くべき

 

ロシアのウクライナ侵攻とプーチン大統領の暴走を背景に、スウェーデンとフィンランドがNATO加盟を模索している。プーチンの制裁回避の命綱がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンRecep Tayyip Erdogan大統領で、両国の申請を阻止すると脅している。




 NATOはトルコを切り捨てるべきだ。同国の独裁体制、ハマスやシリアのアルカイダ関連組織などのテロ集団の後援、アメリカの情報機関への裏切り、アフガニスタンのタリバンとの二重取引、その他多くの理由があり、トルコは加盟国とは言い難い。

 だが、トルコのNATO追放は、2つの理由で言うは易く行うは難しだろう。第一に、加盟国を同盟から追放する正式なメカニズムがない。過去にフランスとギリシャが統合軍事作戦から一時的に離脱したが、ともに自発的な決定であり、同盟に留まったままだった。第二に、NATOの意思決定はコンセンサス重視のため、エトルコを追い出そうとする動きをルドアン大統領は阻止できる。トルコはNATO内部のトロイの木馬になっている。

 ほとんどのNATO加盟国は、NATOを相互防衛の手段とみるが、エルドアンはトルコの加盟を利用の機会とみなしている。トルコ票が高く売れると見ているのか。もし、スウェーデンとフィンランドをNATOに受け入れるのであれば、彼は報酬を期待する。それは、新型F-16と強化パッケージのトルコ売却を議会が承認することかもしれないし、北欧諸国が自国内のクルド人妨害活動や資金調達を取り締まることかもしれない。同時に、エルドアンはスウェーデンとフィンランドを締め出せばロシアが何を提供するかプーチンに確認しているようだ。

 しかし、トルコと交渉すれば、エルドアンの戦術が正当化される。イランが核問題でホワイトハウスの譲歩に応じ、要求を引き上げたように、アンカラの気まぐれな独裁者も要求してくるかもしれない。少なくとも、エルドアンを宥めれば、現在あるいは将来、他のNATO諸国でも指導者が票を売る危険な前例を作ることになる。

 この問題はNATO加盟国が以前から認識していた。米国は、エマニュエル・マクロン仏大統領の2018年11月の欧州軍創設の呼びかけを、NATOへの危険と、西ヨーロッパのエリートに煽った反米主義へのお遊びだとドナルド・トランプ大統領が批判したが、東欧の防衛当局者は、ワシントンではなくアンカラとの問題がこのプロジェクトへの関心を高める動機と筆者に内々に語っている。しかし、欧州部隊は、米国とカナダ、特に米国の海軍、核、衛星の能力なしには効果がない。ブレグジットで英国がEUから切り離された今日、これはさらに真実味を帯びている。

 多分もっと良いアプローチは、トルコをなだめるのではなく、強制することだろう。トルコが納得するまで、トルコ航空のNATO加盟国へのフライトを停止させる。エルドアンは2023年に選挙を控え、経済がアキレス腱だ。エルドアンの命令で皮肉にも人質となっていた米国人アンドリュー・ブランソン牧師の解放をトルコに迫るため課した微額の関税でさえ、トルコの不安定な通貨を崩壊させる原因となった。1米ドルは15トルコリラだが、トルコ人は、エルドアンが考えを変えない限り、25になると思っていた方がいい。最後に、米国のインシルリク駐留を終了させることだ。ギリシャ、ルーマニア、キプロスが代替案を提示できるだろう。

 NATOもトルコを組織内で孤立させることができる。米国の機密文書には、文書閲覧国が記載されていることが多い。米国や他のNATO加盟国の情報およびメモをトルコから遮断すればよい。本質的にニューヨーク市の教職員組合がNATOの教訓となる。悪役をクビにできないのなら、懲罰室に入れ、一日中新聞を読ませておけばいいのだ。

 国務省とヨーロッパの外務省のお決まりの反応は、いつも交渉だ。しかし、外交は話し合いだけではない。時には、他の手段も使い、断れないような提案を他の指導者にすることも必要となる。

 

Turkey Wants a Bribe for Allowing Sweden and Finland to Join NATO - 19FortyFive

 

ByMichael Rubin

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Michael Rubin is a Senior Fellow at the American Enterprise Institute (AEI). Dr. Rubin is the author, co-author, and co-editor of several books exploring diplomacy, Iranian history, Arab culture, Kurdish studies, and Shi’ite politics, including “Seven Pillars: What Really Causes Instability in the Middle East?” (AEI Press, 2019); “Kurdistan Rising” (AEI Press, 2016); “Dancing with the Devil: The Perils of Engaging Rogue Regimes” (Encounter Books, 2014); and “Eternal Iran: Continuity and Chaos” (Palgrave, 2005).

In this article:Erdoğan, featured, Finland, Russia, Sweden, Turkey, Ukraine