2016年6月19日日曜日

★クリントン外交政策の方がトランプ候補より危険という皮肉



なるほどクリントンは守旧派で実はタカ派、トランプは言動が支離滅裂とレッテルを張られていますが実は初の冷戦後思考候補者ということですか。変化や変革には誰しも抵抗するもので同盟国たる日本が慌ててトランプ候補の主張を検討しているのも本当は現状を維持したいと希望しているからでしょう。だが、この新思考がもっと古典的な思考をしているはずのロシアや中国に通用するのかはわかりません。どちらの候補二も期待できないという向きが多いようですが、方向性の違いがはっきりすれば選択の意味が出てくるでしょう。今後の討論会へ期待したいと思います。

The National Interest  Hillary's Foreign Policy Is Scarier Than Trump's

 Image: Flickr/Gage Skidmore.
June 17, 2016

クリントンの好戦的態度は軍事介入を容認し、核戦争含む開戦の可能性が高くなる

49名の命を奪ったフロリダ州オーランドのナイトクラブ殺戮事件の結果、これまで避けられてきた選挙の争点に火がついた。米外交政策の方向性ならびに世界で米国が果たすべき役割である。大統領候補指名の二大政党の党大会が数週間後に迫る中、この議論を始めるのはよいタイミングだろう。
  1. このうちヒラリー・クリントンが重要外交政策演説と銘打ち数週間前に見解を発表しているが、共和党候補とみなすドナルド・トランプを「危険」と決めつけている。トランプ候補の発言に日本、韓国に防衛の全責任を負わせるとの内容があり、核兵器使用まで匂わせたことをクリントンは巧妙に批判し「核のボタンを任せられる人物ではない。ドナルド・トランプでは国が戦争に巻き込まれる」としている。
  2. 1964年大統領選挙のテレビコマーシャルでリンドン・ジョンソンが原爆きのこ雲と花を手にする少女の画像をかぶせ相手候補のバリー・ゴールドウォーターを暗示したのは巧妙な宣伝の典型だ。
  3. クリントンのトランプ批判はメディアで高く評価を受けている。だが皮肉にもトランプの外交観はそこまでの恐怖を煽るものではない。核戦争を言及したとはいえクリントンの考える「世界チャンピオンとしてのアメリカ」に見える好戦的な姿勢よりは穏健と言える。
  4. 核拡散に強く反対する向きでさえ、日本や韓国ではなく、イラン、サウジアラビア、エジプト、パキスタン、北朝鮮のような不安定かつ急進的国家がすでに核兵器を保有あるいは保有しようとしていることに米国が懸念すべきという点では異論がないはずだ。
  5. だがクリントンの目指す方向はそこではない。クリントンはじめ両政党のエリート層、外交部門のエリートもトランプ発言が頭の中から離れないようだ。もし安定した民主国家で善良な世界市民の日本や韓国がと自ら侵略を抑止するべく核兵器を保有したらどうなるか。
  6. 米外交部門は幾重にも張り巡らせた安全保障の同盟関係や協定の幻想という危険から長年にわたり米国民の目をそらせてきた。NATO同盟国や日本、韓国、台湾、イスラエルといった米国安全保障の傘にある国が米国の防衛に呼ばれるシナリオは決して非現実的ではない。だが事態は逆で一方向に米国が各国の安全を守っている。
  7. 米同盟国で核兵器を保有する国はほぼ皆無で仮に中国やロシアといった核大国と対決したり、小規模でも南シナ海を巡る対立が発生した場合、米国は最終的には条約により該当国の防衛に責任を有することになり、最終的に核兵器の投入となれば米国本土が核報復攻撃の対象になりうる。
  8. 合理性を欠くこの政策は冷戦時に始まっており同盟国をソ連の攻撃から防衛するのが目的だった。だがソ連が西欧や日本を占拠する事態と同様に恐ろしい想定として米国が核の荒野になる可能性もあった。
  9. 米国が核兵器で同盟国を守るという暗黙の約束はソ連からの攻撃を抑止を基礎にしていた。だが抑止力が作用しなかった場合の壊滅的な結果の恐怖はほとんど議論されていなかった。.
  10. この政策が冷戦時でも合理性を欠いていたのなら、冷戦が終了した今もそのまま継続していることは合理性が一層足りないことになる。
  11. ドナルド・トランプは時代遅れで柔軟性に欠き多額予算が必要な世界中のたくさんの国を防衛するという米国の約束自体に賢明にも疑義を表明している。各条約や協定により米外交政策は過剰な範囲に拡大され、海外基地数百を維持し永遠に続くように思われる軍事行動を展開している。中にはクリントン自身が支援を惜しまなかったバルカン紛争、イラク、リビアもあり、帝国としてのアメリカを守るためとの説明だった。
  12. 政府債務が19兆ドルになっている米国にはこの政策を維持できる余裕はもはやない。
  13. また米国民および軍を不必要に危険にさらすのは賢明ではない。■

本記事の著者イヴァン・エランドは  Independent Institute (カリフォーニア州オークランド) で平和自由研究センターの主任研究員兼センター長を務めている。著書に歴代の大統領の功績を比較したRecarving Rushmore: Ranking the Presidents on Peace, Prosperity, and Libertyがある。



2016年6月18日土曜日

★米軍が現在も使用中の長寿装備11選

こうしてみると1950年代の技術が最多ですね60年代も併せて今もその基本技術にお世話になっているわけですか。もちろん改修向上策を何度となく積み重ねているわけですが、先行投資の効果は大きいことが分かります。自動車や家電製品で同様の例は皆無ですから軍事用途の世界が全く違くパラダイムで動いていることがよく見えてきますね。

The 11 Longest-Serving US Military Weapons



西側世界では常にiPhoneやハイテクに流れる傾向があるが、軍の兵員は時の試練を経た装備にはそのようなきらびやかさは不要だと分かっている。以下その例を見てみよう。

1. M2 (1933-)

Photo: US Army Staff Sgt. Ryan Crane

誕生は第二次大戦前で1933年に制式化されたM2は.50口径弾を2,910フィート先に命中させる。当初は対空兵器としての採用だったがその後は歩兵戦、軽車両対策に投入されたほか、対艦攻撃にも用いられた。

2. B-52 (1954-)

Photo: US Air Force Master Sgt. Lance Cheung
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B-52ストラトフォートレス爆撃機は最大70千ポンドの兵装を搭載して9,000カイリまで飛行する。空中給油でそれ以上先に飛行可能なので心配は不要だ。機体改修で最大搭載量を105千ポンドとし、コンピュータ性能も引き上げる案がある。供用は2040年まで続ける。

3. C-130 (1954-)

Photo: US Air Force Staff Sgt. Matthew Plew

C-130ハーキュリーズは以前の輸送機と一線を画す革新的だが不格好な設計だった。1954年に登場した「ハーク」は数十万回の飛行をこなし今日でも現役だ。戦車を運び、落下傘部隊を投下し、世界各地で補給物資を運ぶ。武装型AC-130はヴィエトナム戦で登場し今も地上兵員を支援している。

4. KC-135 (1956-)

Photo: US Air Force Staff Sgt. Jerry Fleshman

KC-135初号機の飛行は1956年8月のことで、以後この空飛ぶガソリンスタンドはジェット機、ヘリコプター、プロペラ機に空中給油を提供し、ヴィエトナム戦、湾岸戦争その他を通じイラク、アフガニスタンでも健在だ。

5. U-2 (1956-)

Photo: US Air Force Staff Sgt. Eric Harris

高高度を飛ぶU-2は冷戦時代の偵察任務が有名だが、初飛行は1956年で繰り返し改修を受けてきた。現在のU-2Sは高度70千フィートを飛行し2050年以降も供用が期待されている

6. M14 (1957-)

Photo: US Air Force Senior Airman Grovert Fuentes-Contreras

M14は1957年に制式化され米海兵隊、陸軍の標準装備となった。その後有名なM16に主役の座を譲ったが、改修型が米軍に使用されており、強襲任務や特殊作戦で使われ続けている。

7. UH-1 (1958-)

Photo: US Marine Corps Staff Sgt. Artur Shvartsberg

UH-1は米陸軍がヴィエトナムでHU-1として1958年にMEDEVAC(戦場救命搬送用)に投入した。その後兵員輸送や攻撃任務に転用された。最新版UH-1はエンジン双発になり海兵隊、空軍、その他海外諸国で供用中だ。

8. M72 LAW (1963-)

Photo: US Air Force Airman 1st Class Jeffrey Parkinson

M72軽量対戦車兵器は66ミリロケット弾を発射し200ヤード先から厚さ8インチの装甲を貫通する。米陸軍地上部隊にロシア装甲車両に対抗する能力を1963年に実現した。生産は終了しているが、米軍は備蓄装備を使って軽装甲車両や建築物の攻撃に使っている。


9. AH-1 Cobra (1967-)

Photo: US Marine Corp Sgt. Tyler C. Gregory

1967年に正式採用された同機だが当時AH-56開発が始まっており、つなぎ装備の位置づけだった。AH-56は結局実現せず、AH-1はそのままAH-64アパッチの登場まで主役の座に就いた。米軍では海兵隊だけが現在も使用中でAH-1Zスーパーコブラ、ヴァイパーと呼称している。

10. CH-47 (1962-)

U.S. Air Force photo by Senior Airman Peter Reft

CH-47Aチヌークの米陸軍での供用開始は1962年で65年から75年までヴィエトナム戦に投入された。今日でもCH-47Fとして米陸軍はエンジン、コンピュータ、エイビオニクスを改修して使用中で、特殊作戦航空連隊は燃料搭載量を増やしさらに空中給油能力を付与したMH-47Gを使っている。

11. A-10 (1975-)

Photo: DARPA

愛着を込めウォートホグと呼ばれるA-10サンダーボルトIIは銃身七本を束ねた30mmガトリング砲で有名だが、同時にロケット弾、ミサイル、爆弾も搭載し、1975年から供用中だ。ここにきて退役方針は無期限に取り消されている。


★提言 X-47Bを給油機として飛行再開せよ



この意見のように確かにX-47Bのテストは唐突な終わり方をしており、もったいないことは確かなのですが予算問題など飛行を中止させる理由があったのも確かです。一方で空母離着艦ができるのは有人操縦だけという組織内文化がすべて無人でこなしてしまう同機に反発したことも考えられませんかね。

 Put the X-47B Back to Work — As a Tanker

An X-47B UAV made a historic launch from the aircraft carrier USS George H.W. Bush on May 14, 2013.
U.S. NAVY / ERIK HILDEBRANDT
BY JERRY HENDRIX
JUNE 13, 2016
米海軍は数十億ドルを投じて別のUAV試作機を作らなくても既存機材を有効活用できるはずだ。


ソルティドッグ501および502は未来の海軍航空兵力へ当初期待された効果を全部出すことなくひっそりと格納庫に座っている。海軍は新型UAVに予算と時間を使う前に、X-47Bを飛行再開すべきだ。

2007年に十億ドル予算が付いたX-47B実証無人機は海軍航空兵力に無人機が統合可能か調べるのが目的だった。その栄光の日々の実績には初の空母自律着艦、初の空中給油の実施があり、二機はさらぶテストに使う予定だったが、想定飛行時間の八割で海軍上層部はX-47Bを博物館送りにする決定を下した。せっかく無人空母艦載機の実現に向けて事業が進んでいたのに。

ソルティドッグ二機は低視認性の無人攻撃機で機内ペイロード4,000ポンド戦闘半径1,500マイルの試作型として製造された。だが実際に完成すると海軍航空部門の上層部はおどろくべき変心を見せ長距離攻撃能力は不要と言い始めた。すでにMQ-4Cトライトン広域海洋監視機を68機調達する予定なので空母打撃群のニーズにこたえられるとしたのだ。

だがこの方針転換は接近阻止領域拒否 (A2/AD) 体系の新型装備には目をつぶっているようで、たとえばDF-21D空母キラー弾道ミサイルの登場で艦載航空隊の有効距離より外で空母が航行を迫られる事態に対応できない。航空隊の有効半径は通常500マイルであり、航空隊には長距離攻撃機が必要であり、X-47B計は参考になるはずだ。

そこでソルティドッグの仕様をもう一度思い出してみよう。実際には実現までしないものもあったが、当時の海軍作戦部長ゲイリー・ラフヘッド大将は次の内容を承認した。

  • 空軍のブーム式給油装置に対応すること
  • 夜間発着艦および低照度下で艦上移動可能とすること
  • 悪天候、向かい風でも飛行オペレーション可能とすること
  • 有人機と同等の着艦条件の実現(海軍飛行隊員がケースI、II、IIIと呼ぶ想定)
  • 母艦から無線制御で着艦させること.
  • 空母離着艦を100回以上実施すること(実績は20回未満)

10億ドルを投じ、無人機の空母運用テストの8割をこなしたただけで格納庫入りさせておきながら海軍は別事業で空母用無人機を検討しているのは皮肉としかいいようがない。

そこでペンタゴン内部から別の声が出ているのは驚くべきことではない。海軍に偵察機ではなく給油機として無人機を活用させて有人機の飛行距離を伸ばしA2ADに対抗させようというのだ。給油機としての設計が将来攻撃機に進化できるのであればこの案に意味がある。だが基本設計が給油機としても機能する偵察機のままならば意味がない。その設計では攻撃機として想定する高度、速度が実現できず、重装備兵装を搭載する想定のかわりに機内燃料を他機に分け与えるだけの想定だからだ。

そこで以下を提案したい。何か突飛なことをしてX-47B/ソルティドッグのテストを当初通り貫徹させる。各機能の発展をチェックし、追加テストも行う。ソルティドッグの一機に4,000ポンド燃料バッグを爆弾倉に搭載し、ホース-ドローグ給油装置をハードポイントに取り付ければソルティドッグは無人給油機のテスト機材に早変わりする。X-47Bの運用高度上限は40,000フィートプラスで高めの亜音速により現行の有人機への給油は容易に実施できるはずだ。さらにすぐにもテスト開始できる利点もある。

財政事情が窮屈なのはわかるが、敵も進歩しており、せっかく二機が眠ったままなので海軍は将来のために両機を有効活用すべきである。今すぐその場で。


本記事の著者ジェリー・ヘンドリックスは新しいアメリカの安全保障を考えるセンターにおいて国防戦略評価部長を務めているが、海軍を大佐で退役しており、海軍歴史遺産保存部門長をしていた。



2016年6月17日金曜日

★Brexit>EU脱退を選択した英国に三つの可能性


EU脱退の選択に終わった場合の英国はどんな戦略方針に向かうべきか、というのが今回のテーマです。経済面ではEU脱退にを想定した動きが出ていますが、状況は混とんとし票差はわずか、つまりどっちに転んでおかしくないでしょう。EUそのものが不要と英国民が選択すれば一気に制度が崩壊し現状維持が旨の主流派はなんとか残留の結果を出してもらいたいと必死ですが、どうやら安全保障上は世界の終わりではないようです。以下お読みください。

The National Interest


Little Britain, Middleman, or America's BFF: the UK's Options after Brexit

Image: Flickr/c.art.

June 16, 2016

  1. 6月23日、英国有権者は再び国民投票に臨み、欧州連合に残留するか留まるかで意思を示す。外交政策や国際関係関連で投稿する喜びのひとつに歴史上の「もしも」の疑問に答えることだ。過去の暗い記録から予測しEU脱退した場合を考えるのは面白い作業だ。英国離脱Brexitが本当に実現した後の想定はスコットランド離脱を巡る国民投票や婚約破棄とは違う。だが関心の的は「離婚回避」に失敗したあとに英国の長期的戦略がどうなるかで、可能性は三つと見ており「小英国」「仲介役」「永遠の大親友」と呼ぶ。

小英国モデル
  1. まず「小英国」とはEUの陰から英国が抜け出し地政学的に多国間関係を強めることで、1973年に同国がEUに加盟した時点の状況を上回ることだ。国家主権を重視する政治主張が有権者に影響を与えれば英国はかつての「栄光ある孤立」に復帰することになる。この言葉を生んだサリスベリ卿の時代には帝国版図だけに留意し欧州大陸のごたごたとは一線を画せた。今日では冷戦期の日本が例だ。日米同盟関係に守られて日本は新重商主義外交を展開し、地政学上の危険から距離を置きつつ同盟側には最低限の支援しか提供しなかった。英国に置き換えると米国およびNATOと正式な防衛取り決めは維持するが英国に直接関係しない事態へは積極対応はしない。世界に背を向け紅茶をすすり午后をクリケットで楽しむ英国となる。
  2. この場合の英国は参戦に慎重になる。西側の一員とはいえ自国に死活的な権益がある場合のみ戦火を開くことになる。ただし過去の栄光ある孤立から学ぶものがあるとすれば、英国外交にほとんど益がないことだ。孤立主義で紛争を初期段階で抑える介入が遅れたのは、集団対応策の実施ができずその意向もなかったためだ。1890年代末のドイツの台頭が例で最後まで傍観者のままで、ドイツを放置したため1870年代の普仏戦争時よりかえって強力で悪意あるドイツを作ってしまった。

調停役モデル
  1. 二番目の可能性は英国が中間業者に似た立場になることだ。これは韓国の元大統領盧武鉉が2000年ごろに提唱した「バランサー」論に似ている。この発想では「小英国」よりは規模を拡大して中間国あるいは誠実な調停役の役割を演じる。例えば英国政府は米中間の亀裂を解消する立場になる。両方に大事な点を伝える仲買人外交を務め、誠実な調停者あるいは銀行家となる。つまるところBrexit後の予測として経済崩壊が言われるが、ロンドンは引き続き世界の金融センターのままむしろ成長するだろう。英国の金融大国としての国力は閉じられた扉の中でも強いようだ。
  2. ただし歴史をひも解けば誠実な仲介者役は状況の進展につれ発言力を失う傾向がある。教科書を見れば誠実さの欠ける国は仲介者として成功していないことがわかる。英国自体が大戦間に仲介役を心がけたがドイツを怒らせ結果としてフランスの力を弱めている。英仏両国の努力が結果を結ばなかったのは明白である。では現代においてはどうだろうか。インドは長い間にわたる調停役の経験を有するが、同国でさえ非同盟主義が今日では逆に危険につながると気づき始めている。誠実な調停役では機密情報や防衛装備の入手が同盟国時より劣るのは当然だ。相手にすればどちらにつくのかわからない。中国とロシアが一層強圧的な政治手法をとり、歴史修正主義の立場で法支配が前提の自由主義の秩序に挑戦する世界で日和見の立場を取れば状況の危険性を見抜けず致命的な誤算を招きかねない。

永遠の大親友モデル
  1. 最後のシナリオは英国が中核的な安全保障関係を抜本的に見直し、テコ入れすることだ。この選択では従来の同盟国たる米国との関係が強化されNATO重視にもつながる。同時にオーストラリア、ニュージーランドとの最恵国貿易関係、安全保障、住民移動関係が復活するだろう。EU加盟でこの関係は弱くなっていた。EU型から離れた英国は同盟国とともに以前から存在する制度に新しい利用価値を与えるだろう。「ファイブアイズ」(英米加豪ニュージーランド)がアングロスフィアで長い間安全保障の柱だ。英国内エリート層はファイブアイズの再強化策として目に見えない存在から閣僚級組織に格上げし英国および最密接な同盟各国の自由体制を守る手段に変えようするかもしれない。さらにファイブアイズの門戸を広げ、インドやスカンジナビア、北東アジアの諸国の追加を考えてよい。

望ましい選択肢は
  1. 英国の進むべき道では三番目の選択肢が安全保障上、国家主権の独立性の観点双方で優れていると写る。ただしこれから数十年にわたり英国民がどの方向を望むのかはうかがい知れない。三つの選択肢で英国の一般国民や政治エリートに尋ねても意見はバラバラだろう。小英国モデルは地方部で人気を集めるだろう。地方の独立党支持者や過疎地でEU脱退論が一番強い。調停役モデルを一番強く支持するのは保守党内のビジネス観点を有する層ならびにコービー党首率いる新しい労働党の中で専制主義に寛容な一派だろう。ロンドンの都市住民層では人種文化が多様化しており、調停者構想が一番合うのではないか。これは英国がイラク侵攻に参加した2003年の影響で、米国との特別関係に不安を覚える感情のなせる業だ。
  2. 米国との複雑な関係があるからこそ都市部住民で教育を受けたエリート層は米国と自由主義を共有しても、ロシアや中国へは違和感があるはずだ。本人が認めるか定かではないがジェレミー・コービンが一番共感できるのはバーニー・サンダースでありウラジミール・プーチンではないはずだ。また労働党支持層は社会多様性、社会正義、人権がアメリカ社会で扱われている様を共感しても、ロシアが同性愛者を非合法化し、中国が人権運動法律家を投獄するのは容認できないはずだ。この深いつながりが最終的に(ロシアからの潜入者が多いとはいえ)労働党政権が誕生しても毎回英米同盟関係を維持している理由である。そして最良の友人構想を強く支えるのが根っからの保守党支持者と穏健な労働党支持層でともに全国に散らばる。こうしてみると最後の選択肢になれば西側防衛体制は再強化されたメンバー国に出合えそうだ。6月23日の結果と関係なく、米国の政策決定層は英国に手を差し伸べ、英国民に対して米国が最古の同盟国であることを思い出させ、結果と関係なく米国は英国の側につくことを伝えるべきだ。

本稿の著者ジョン・ヘミングスはCSIS戦略国際問題研究所の太平洋フォーラムで非常勤研究員でロンドン大学政経学部でアジア太平洋における米国の同盟戦略を研究し博士号取得をめざしている。


南シナ海で米艦艇を追尾してくる中国の不気味な動きに注意が必要


中国海軍の動きは注視する必要があり、シーマンシップの「常識」が通用しない同海軍というか解放軍の実態は世界が等しく認識すべきです。国際法を遵守しないと公言するのなら実力で対応する事態に進むでしょう。米海軍は淡々とした態度ですが、いったん予想外の事態が発生しないとも限りません。照準レーダーの照射という事件もありました。日米が一線を超えないのをいいことにますます非常識な行動をPLANが撮れば大変な異なると認識させないといけませんね。

China shadows U.S. warships amid rising tensions in Asia

Kirk Spitzer, USA Today9:23 p.m. EDT June 15, 2016

XXX SPITZER 003.JPG JPN(Photo: Kirk Spitzer, USA TODAY)
ABOARD THE USS JOHN C. STENNIS — マラバール国際海軍演習が今週始まったが、招かれざる客が見つかった。中国海軍の艦艇だ。
  1. これは驚くべきことではない。人民解放軍海軍PLANの艦艇がこの海域で米海軍艦艇を追尾するのは日常になっている。
  2. 米海軍によればUSSジョン・C・ステニス空母打撃群が三月に南シナ海に入るや中国艦艇が追尾を始めた。原子力空母ステニスは六か月のアジア太平洋パトロール任務の終わりに近づいている。同打撃群には水上艦四隻とロサンジェルス級攻撃潜水艦一隻が加わっている。
  3. 「PLAN艦船は南シナ海各地に定期的に出現しています。中国艦は一日24時間毎日常に目視距離で航行しています」とマーカス・ヒッチコック海軍少将(ステニス打撃群司令官)は述べている。
  4. 先週は二回にわたりPLAN艦艇が日本領海に侵入または接続海域を航行しており、東シナ海の尖閣諸島もその中に含まれていた。米国のもっとも親密な同盟国日本は早速非難の声を上げた。
  5. 米、インド、日本の海軍艦艇が一週間にわたる合同演習をフィリピン海で15日開始し、演習海域は日本南端部からもさほど遠くない。
  6. 米海軍は今回の「マラバール」演習を「複雑かつハイエンドの模擬戦闘演習」とし、三か国の海軍共同作戦の実力を引き上げるのが目的と明らかにしている。
  7. マラバール演習は1992年に米印共同演習として始まり、近年は日本も加わっている。日本近海での演習実施は二回目でインドは米国や米同盟国との関係を強化している。
  8. インドは中国と長年にわたる陸上国境線を巡る対立にある一方でPLANがインド洋での活動を強化していることにも憂慮している。
  9. インドのナレンドラ・モディ首相は米上下両院で強固な印米協力関係により「平和を確実医師、繁栄と安定をアジアからアフリカに及ぶ地域にインド洋から太平洋にまたがり実現できる」と演説した。
  10. ヒッチコック少将は南シナ海の国際公海上でPLAN艦艇は一番近づいた時でUSSステニスの三から四マイルに接近したと述べている。
  11. またステニス打撃群にPLAN情報収集艦が先週からフィリピン海でついて回っているとも発言。15日には同艦はステニスから7ないし10マイルの地点を航行していた。マラバール演習は国際公海上で実施中だ。
  12. ステニス艦長グレゴリー・ホフマン大佐によれば中国艦船はきわめて統制さえrた形で終始行動しており、ステニス打撃群は妨害を受けるず運用できていると述べた。
  13. そのまま続けばいいのですがね、とジェフリー・ホーナン(笹川平和財団米国で東アジア安全保障問題の専門家)が述べている。
  14. 「PLANの動き方は米海軍の標準とは異なり、法順守を前提とする各国の動きとも異なるものです。でもそれが中国の基準なのです」(ホーナン)
  15. 中国は南シナ海ほぼ全域を自国領海と主張し、大規模浚渫埋め立て工事で七か所に人工島を建設し一部で軍用滑走路や港湾施設を構築した。
  16. 年間5兆ドル相当の貿易が同海域を行き来しており、米側は中国が人工島から空路海路を管制することを恐れている。中国はそのようなことはしないといっている。
  17. アシュトン・カーター国防長官は去る四月に南シナ海を航行中のステニスに乗艦し、中国の領有権主張および人工島建設に批判的コメントを発表した。
  18. 台湾他四か国も南シナ海で領海を主張している。ハーグの国際仲裁裁判所がまもなくフィリピン提示による中国領有権主張の法律的結論を出すと見られ、中国はすでに同仲裁裁判所には本件を判断する法的根拠はないので裁定内容は無視すると公言している。
  19. ステニス乗員全員は中国艦船に追尾されていることは承知しており、航空機発着艦士官のジェイムズ・ブリグデン大尉は「中国艦船が『陣形』を組んで航行しているのを見るのはいつものことで、プレゼンスを感じています」と述べ、「当方としては逐一動揺せず毎日の任務をこなすだけです」と述べている。■

6月15日の中国情報収集艦による日本領海侵犯事件について



どうも解放軍の動きが変です。(もともとおかしいとも言えますが) 国際社会から孤立し、分断した思考にはまり、行動がそれを反映しているのか、日米印の海軍演習に加えまもなく出てくる国際仲裁裁判所の裁定結果もあり、まうます暴走する危険が増えてきました。日本政府は冷静を保っていますが、国際社会は中国への警戒心を増していくでしょう。その中で中国経済が米国株式の売却を進めているというのは不気味な動きです

Chinese spy ship enters Japanese territorial waters

Gabriel Dominguez, London and Chieko Tsuneoka, Tokyo - IHS Jane's Defence Weekly
16 June 2016
Source: Japan MoD

中国の情報収集艦が6月15日早朝に日本領海に侵入した。人民解放軍海軍PLANの艦船が日本の12カイリ領海に入るのは2004年に漢級原子力攻撃潜水艦が石垣島付近で領海侵犯をして以来二件目だ。
海上自衛隊のP-3Cが同艦を発見したのは口永良部島西方で時刻は0330だったと防衛省が明かした。815型東周 Dongdiao 級情報収集艦と識別されている。
同艦はその後南東に航行し屋久島沖で日本領海を離れたのは90分後だった。世耕官房副長官は記者会見で中国艦船の意図で言及を避けたが、外務省のアジア大洋州局が在日中国大使館の副大使に中国海軍活動について懸念を伝えている。
領海侵犯が起こった時点で日本は米国、インドと共同海軍演習を南シナ海で実施中で、中国は演習に抗議していた。中谷元防衛相は記者団に同じ中国スパイ船が『マラバール』演習で付近を航行中のインド海軍艦艇二隻を追尾していたことを明かした。
中谷防衛相はPLAN艦船が「無害通航」をしていたか改めて分析すると述べ、その場合同艦は情報収集はしていなかったことになる。■

2016年6月16日木曜日

★★オーストラリア潜水艦問題>フランス案採択の背景には深い理由があった。日本側関係者には冷静に読んでもらいたいです。



いまさらと思われるかもしれませんが、再びオーストラリアの潜水艦建造競争入札結果の分析です。こうしてみるとオーストラリアが狙う方向性に近い内容だったのはフランス案とわかります。日本では採用されて当然と見る向きが多かったのはやはりインテリジェンス不足ですね。官民挙げて積極的に営業しなかったのはこうした背景が事前にわかっていたからでしょうか。そんなことはないですよね。SSBNとSSNは違うという向きもありましょうが、原子力潜水艦のような大型艦の知見は残念ながら日本にありません。日本技術の優位性というのも一定の条件で成立しているのであり、なんでも日本が優秀と信じるのはあまりにも子供じみていることが分かります。


Lethal Alliance Under the Sea: Why France Is Helping Australia Build Attack Subs

June 15, 2016

4月26日の晴れ晴れしい発表でアデレードでの潜水艦12隻建造が決まったが、その後は沈黙が続いている。オーストラリア国防省は今は急いで進めるつもりがなく、同国史上最大の建艦事業は国政選挙後に活発になるようだ。詳細設計の契約交渉は中断したままで当面進展しそうにない。一方で国防省によれば選定業者フランスのDCNSと作業部会を編成中で、科学技術を軸に人選するという。
  1. DCNSを採用した選定結果には異論もあった、特に選定過程にドイツTKMSは不快感を覚えたといわれ、競合評価作業(CEP)は最初から原子力潜水艦に誘導するシナリオだったと見ている。日本はそこまではっきりと言っていないが日本政府が心象を害したのは疑いなく、2013年にトニー・アボット前首相が示した導入願望は何だったのかと思っているはずだが、その後はこの話題を避けているようだ。
  2. DCNS選定には理由がいくつかあるが、決め手は高度潜水艦技術の入手だったようだ。CEPでは狙いは高性能潜水艦設計でオーストラリア国内技術の蓄積に役立つ協力先を選定することで、特定の艦艇の選定ではない。DCNSの知見の背景にはフランス海軍のDGA装備品開発総局や軍事研究部門があり、内容の濃い技術蓄積がある。
  3. フランスがドイツ、日本に対して優位な技術がある。それは14千トンにもなる大型SSBNの推進力問題の解決実績だ。オーストラリアが企画する4,500トン潜水艦をすべての速度域で静かに推進させるのは容易ではない。ドイツと日本は通常型のプロペラ推進を提案したが、フランスは英米と同様にポンプジェット方式推進器を原子力潜水艦で搭載する方向に向かっており、ポンプジェットあるいはプロパルサー推進器技術を提案した。
  4. プロペラは高速でキャビテーションを発生しやすい。プロペラブレイド末端の海水が強力な圧力で沸騰する現象で特徴のあるノイズを発生し敵のソナーで探知される。通常型推進の潜水艦は大半の時間を低速航行や基地内で過ごすのでプロペラもプロパルサーも音響面で相違は生まないが、、危機状態では高速航行が必要となる。最高速度まで加速を静かに行い、同時に方向や深度も変えることで大型潜水艦は危険な状況を乗り切ることができ、これが最大の強みになっている。
  5. 大型潜水艦向けにはプロペラ技術では限界がありDCNSがは機密度が高い原子力潜水艦技術の流用で大きく有利になった。単純に言えば、ドイツと日本は通常型潜水艦で優れた実績があるが、フランスは通常型原子力推進双方で優秀な実績があるということだ。
  6. ピーター・ジェニングス含む専門家からオーストラリアは将来原子力潜水艦に向かうのではとの意見が出ているが、どうやらこの話題が今後公に議論されそうだ。DCNSが加われば原子力潜水艦への移行は比較的容易だろう。
  7. その他フランスに有利に働いた要因がある。ドイツと日本はリチウムイオン電池を搭載する案だったが、フランスは採用を回避した。リチウムイオンへの猜疑心は米海軍も抱いており、今回の選定に大きく作用したようだ。また現行のコリンズ級にはフランス大手ハイテク企業のタレスやSagemのソナーやリング・レーザー式慣性航法装置が採用されている。各社は装備開発の目標を達成し、技術移転や再輸出まで実現している。
  8. 最後に、フランスは営業でも活発でオーストラリア海軍の要求水準の実現に向けて協力的な態度で臨んでいた。DCNSは価格設定を控えめに設定したことがこれが最終的な決め手になっている。コリンズ級潜水艦で開発段階で多額の経費を必要とすることは身に染みているためだ。
This piece first appeared in ASPI's The Strategist here.
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★★パイロットが語るA-10の威力>供用期間延長は当然だろう




Visit Warrior

Pilot Intv. - Attack Missions in the A-10

KRIS OSBORN
Yesterday at 12:22 AM


Scout WarriorはこのたびA-10パイロットへの取材機会を得た。パイロットによれば同機はこれまで飛ばした機体の中で「一番頑丈」だという。米空軍は同機を2020年代中頃まで稼働させようとしている。
  1. 敵陣地を攻撃し、整備不完全な飛行場に着陸し、再び離陸し敵戦闘員を30mm機関砲で倒し敵を制圧することを難なく繰り返すA-10にはパイロット陣から「空飛ぶ戦車」の異名がある。地上戦の現場に滞空し地上兵員の生命を近接航空支援で守る。
  2. 「ここまで撃たれても耐えられる機体は他にありませんね。頑丈さは有名です」と語るのはライアン・ヘイデン中佐(第二十三戦闘機集団副司令官、ムーディ空軍基地駐留)でScout Warriorが取材を許された。
  3. A-10パイロットの周囲にはチタン装甲板が何層もあり機体は小火器の銃弾に耐える設計で撃たれても攻撃任務を続けることが可能だ。
  4. 「A-10は敏捷性がなく、機敏に素早く動けませんが、計画的に堂々と威力ある攻撃をしっかりと加えます。作りも飛行も危なっかしいところはまったくありませんね」
  5. ウォートホグの愛称がつくA-10サンダーボルトIIは1970年代後半より供用され数々の戦役で近接航空支援を提供してきた。湾岸戦争、不朽の自由作戦、イラクの自由作戦、コソボ連合軍作戦その他だ。
  6. 戦闘任務で飛行させてヘイデン中佐はあらためてA-10が敵の地上砲火を受けても帰れるように設計されていると実感できたという。「あちこちで冗長性があります。油圧系が一つ故障しても別のものが起動します」
  7. 機内の電子装備が全部使えなくなっても、飛行を続け爆弾投下や30mm機関砲を発射できるとヘイデン中佐は説明する。
  8. 「コンピュータが全部ダウンして目標捕捉ポッドやヘッドアップディスプレイが使えなくなっても精度は落ちますが標的捕捉と攻撃は可能です。この想定で実際に訓練しています」
  9. 他機種が速度、操縦性、空対空ドッグファイトを目指す中で、A-10は30mm機関砲を軸に設計された機体だ。砲はGAU-8/Aガトリング砲である。
  10. 「30mm砲は弾倉7つが付いて機体中央に配置され、弾倉は機体中央線にぴったり合います。機体を地上目標に合わせればいいのです。地上攻撃用にうまく設計されている機体です」
  11. 機関砲には合計1,150発がつき、毎秒70発を発射できる。
  12. ヘイデン中佐は砲の向きは機体とまっすぐに調整されており、他機種のような上方への傾きはないと説明。また風防窓は広く、パイロットは広視野で目標を視認できる。


  1. エンジン二基は高い位置に取り付けてあり非整備地着陸も可能という。エンジンはジェネラルエレクトリックTF34-GE-100だ。
  2. 「砂漠の滑走路に着陸する機体を見たことがありますが、主脚は砂に一フィートは埋まっていましたね。それでもそこで離陸していましたよ」
  3. またエンジンの被弾にパイロットが気付かずに帰還した例がたくさんあるという。
  4. 機体の空力特性とエンジン技術でA-10は低速・低空飛行が可能なため陸上部隊や敵標的に接近できる。
  5. 「主翼はまっすぐで幅広になっています。エンジンはターボファンで燃料消費を考慮して選定されており、推力は理由ではありません。大変効率が良いエンジンで上空待機をしても燃料のことを心配しなくて済みます」

近接航空支援の実態

  1. A-10は高度100フィートで飛行できる。このためパイロットは敵標的を直接視認でき、搭載する爆弾、ロケット弾や30mm砲を味方部隊のすぐ横で発射できる。
  2. 「発砲は本当に近距離で、50メートルも離れていない時があります。地上部隊の隊員の手が動くのが見えるほどです。これだけ接近して低空飛行すれば敵味方を目で区別して射撃できます」
  3. 一方で遠方からの攻撃も可能だという。
  4. A-10は赤外線と電子光学センサーの「ライトニング」と「スナイパー」の二種類のポッドを搭載しパイロットの標的探しを助けてくれる。
  5. 「目標捕捉ポッドはF-15EやF-16と同じ種類ですが、戦闘機では二種類のポッドを使い分けできません。A-10ではソフトウェアでこれが可能です」
  6. A-10が搭載する兵装にはGPS誘導方式の共用直接攻撃弾JDAMの他、GBU38、GBU31、GBU54、Mk82、Mk84、AGM-65マーヴェリックミサイル、AIM-9サイドワインダー、ロケット弾、照明フレア、ジャマーポッド他防御装備がある。各種兵装を16,000ポンド搭載可能で主翼下に8発、胴体下に3発をつり下げるパイロンがあると空軍は説明している。

A-10のエイビオニクス

  1. 攻撃ミッションで飛ぶパイロットは僚機以外に地上部隊とも無線に加えLINK16データリンクで連絡できる。僚機とは文字メッセージを交換できるという。
  2. コックピットはCASS(共通エイビオニクスアーキテクチャシステム)仕様でデジタル式移動地図表示他各種ディスプレイで高度、上昇角、周辺地形や目標データなど関連情報を示してくれる。


  1. パイロットはハイテクヘルメットを装着して目標画像をヘルメットで見ることができる。「目標捕捉ポッドの画像を目の前に投影してみることができます。地上から射撃を受ければその方向を見るだけで目標に設定できるんです」

アナコンダ作戦

  1. 不朽の自由作戦開始後の数か月たち「アナコンダ作戦」と呼ぶ戦闘でヘイデンのA-10は急変する戦闘状況に巻き込まれた。米軍がアフガニスタン山地でタリバン戦闘員に攻撃を加えていた。2002年3月のことでヘイデン中佐はタリバン対空砲陣地を戦闘員もろとも発見し破壊した。
  2. 「谷間の片方から銃火の軌跡がもう一方に向かうのが見えました。どちらが味方なのか識別できませんでした。近接航空支援の標準方法に従い搭載センサーの助けを借りて戦術状況を理解してから攻撃を加えました」

A-10の将来

  1. 議会メンバー、専門家、退役軍人、現役パイロット含む軍関係者の多くが空軍のA-10対処方針の行方を追っている。予算を理由に空軍上層部は以前はA-10全機を今年中に退役させると発言していた。空軍の一部にはA-10退役後もF-16やこれから登場するF-35ステルス多用途戦闘機ならミッションの穴を埋めて近接航空支援を実施できるはずと主張していた。
  2. ただし、これに疑念の声が議会から続出し、ISIS相手にA-10が非の打ちどころのない実績を示してたため、空軍は供用期間を2020年代まで延長した。他機種で近接航空支援の実施は可能との主張に対しては地上部隊の防御と近接航空支援の実施で同機に匹敵する機体はないとA-10支持派は一貫して主張。
  3. 現時点で空軍はA-10の交代あるいは継続使用で三案を実行中で既存機体の改修・保管を検討し、どの機種が交代可能かを検討する、または近接航空支援機種を新たに調達することをめざす。
  4. 近接航空支援機を機体保管場に送り込めば五年間で42億ドルの予算節約になるというのが空軍の以前の説明だった。この金額にはライフサイクル管理関連、機体維持の予算目標値が含まれているが議会メンバーは案を却下している。
  5. 議会内にはA-10支持派が多数あり、空軍方針に公然と疑義を示していた。中でもケリー・アヨッテ上院議員(共、ニューハンプシャー)とジョン・マケイン上院議員が最右翼のA-10支持派だ。


  1. アヨッテ議員は事あるごとに空軍の同機退役方針に反対してきた。
  2. 「A-10で生命を救われた米軍隊員は数多く、アヨッテ議員は後継機種ないのに空軍がA-10を時期尚早に退役させることを憂慮しています。近接航空支援でギャップが生まれれば危険にさらされるのは兵士の命ですから」とアヨッテ議員のスタッフが説明している。マケイン議員は上院軍事委員会委員長として空軍がA-10の供用期間を延長したことを歓迎している。
  3. 「空軍がA-10を2017年度まで稼働延長する決定をしたことを好意的に受け止める。これでわが軍地上部隊は死活的な近接航空支援を世界各地で受けられる。現時点でA-10部隊はISILとの闘いで不可欠な役割についているほか、ロシアの野望を東ヨーロッパで食い止めるNATOを支援している」とマケイン議員は声明文を発表している。
  4. ISIS相手の攻撃ではA-10は極めて高い成果を示して、同機への需要は高く、これが決定の変更につながったともいわれる。
  5. 「世界各地の情勢が混とんとしている中で最高の近接航空支援機材を後継機の当てがないまま早まって引退させる余裕はない。オバマ政権が2017年度予算要求を数週間以内に提出するが、A-10の継続飛行で米軍部隊の防御に充て危険な状況に放り込まれた兵士が助けられるよう希望する」
  6. A-10は2020年代にも飛行するのは確実だが、後継機種を巡る議論が活発になるのは必至だろう。■