2016年8月16日火曜日

★★★F-15戦闘機とSu-35Sはどちらが優秀なのか


米空軍ではF-15Eが主力となっていますが、日本ではJ型の原型であるのがC型なので今後も威力が期待できるのかが関心事でしょう。Jは相当の改良を経ていますが、もはや原型とは異なる機体と言って良いのではないでしょうか。F-35導入でめどがついてきたようなので、いよいよF-3開発に注力していくのでしょうが、残るF-15にも十分な配慮で供用年数を延長してもらいたいものです。

Visit WarriorUSAF F-15E vs. Russian Su-35S - Who Wins?

SEBASTIEN ROBLIN
12:22 AM

米F-15イーグルは露Su-35S「フランカーE」より優れているといえるのか。以下詳細に見てみよう。
  1. 第四世代戦闘機で最優秀と言われるSu-35SとF-15の比較を聞かれることが多い。
  2. F-15は第四世代戦闘機の定義を作った機体で1970年代に登場し、大幅改修を受け時代に合わせた性能を維持しており、今後数十年後も数百機が稼働する見込みだ。
  3. 一方Su-35はSu-27フランカーの改修型で新型エイビオニクスと武装を搭載し、推力方向偏向エンジンとレーダー波吸収塗装を採用した。
  4. Su-35Sについては筆者以外にNational Interestでデイヴ・マジュンダーが二機種が空戦をした想定をうまくまとめている。その結論はかなりの接戦になるというものだった。技術では優劣がつかず、結果を制するのは支援体制やパイロット訓練としていた。
  5. では両機種の優劣をミッション別に見てみよう。

センサーとステルス性能
  1. Su-35Sは強力なイルビスEパッシブ電子スキャンアレイレーダーを搭載し400キロの有効範囲がある。同レーダーは地上目標にも有効だ。だがF-15のAPG-63 V3アクティブ電子スキャンアレイレーダーはさらに優秀で妨害に強く、解像度も高く、追跡されにくい。
  2. Su-35には赤外線捜索追尾システム(IRST)があり、50キロ内の航空機位置をおおまかに把握できるとし、短距離ならステルス機を探知できる可能性がある。F-15にはIRSTは装備されていない。
  3. ただし追加ポッドが利用可能となりつつある。タロンHATEポッドによりIRST効果がF-15に利用可能となりデータ融合機能も他機や地上装備間で可能となる。さらにF-22ラプターと相互ネットワーク構築も可能となる。これはラプターが非標準型データリンクを使っているためで、ラプターを先に飛行させ、敵目標を探知し戦術データをミサイルを満載したF-15へ送り、安全な距離からミサイル発射が可能となる。

  1. F-15はステルス機ではなく、レーダー断面積は平均5平方メートルだ。Su-35はステルスを意識し、レーダー断面積は平均で1ないし3平方メートルと言われる。そうなるとSu-35がレーダー画面に現れるのは遅くなるだろうが、1平方メートル大なら最新装備で長距離探知が可能で長距離ミサイルの標的にできる。
有視界外での空戦はどうか
  1. 最新空対空ミサイルは100キロ超の有効射程がある。米空軍では有視界外 (BVR) 戦が21世紀の空戦の中心になると確信しており、ミサイル射程範囲を拡大しようとしている。これに対しロシアはこの考え方に懐疑的で電子妨害装置や回避行動で被害は避けられるとする。ロシア機材もBVR対応を想定しているものの、BVRのあとには短距離交戦が控えると見ている。
  2. 兵装搭載量ではSu-35にはハードポイントが12箇所以上あるがF-15Cには8箇所しかないのでSu-35が有利となり、ミサイルを多数運用すれば命中の可能性が高まる。だがこの優位性は一時的にすぎない。ボーイングがF-15改修策で16発搭載を想定しているからだ。実現すれば後方に位置するF-15が「ミサイルボート」となり、F-22が探知した敵標的を攻撃できる。ただし当面はF-15はミサイル発射数で劣る。
  3. F-15、Su-35はともに長距離レーダー誘導空対空ミサイルを搭載する。AIM-120D(射程160キロ)とK-77M(200キロ)だ。両ミサイルは基本的に同等の存在でシーカー性能がこれから整備されていけば、最大距離からの発射が戦闘機に対しても可能となり撃墜の可能性が高まる。
  4. Su-35も超長距離(300から400キロ)のR-37Mミサイルを発射し、空中給油機やAWACS支援機を狙うだろう。
  5. Su-35には有利点がもうひとつあり、L175Mキビニー・レーダー妨害装置だ。米AESAレーダーは妨害に強いと言われているが、AIM-120ミサイルの搭載レーダーは別だ。キビニーが防御する機体を狙うミサイルは失敗に終わる可能性が高い。イーグルが搭載する戦術電子戦対抗システムは1970年まで遡るもので、新型装置はイーグル2040改修一式で提案されている。
有視界内の場合
  1. イーグルは高い操縦性を有した機体だが、重戦闘機でも高い旋回性、上昇の途中でも高い加速が可能となったのは主翼荷重の低さと高推力重量比によるものだ。
  2. ただしSu-35は独特の機体だ。ヴェクトル推力変更可能なターボファンでノズルを独立操作し、急旋回とともに高迎え角では通常の戦闘機では無理な操縦が可能だ。低速域ではSu-35がF-15をあしらうだろう。
  1. 兵装は両機種は互角でそれぞれ熱追跡AIM-9XとR-73ミサイルを使うだろう。両ミサイルともにヘルメット内視界で機体方向外にも発射できる。両ミサイルは70から80パーセントの命中確率を有すると言われる。
  2. 威力のある短距離空対空ミサイルが機体を敵方向に合わせなくても発射できることで近距離交戦では機体の操縦性は意味が減る。
対地攻撃ではどうか
  1. Su-35Sは17千ポンドの弾薬を搭載し、対地攻撃にはハードポイント14箇所を使う。F-15Cはゼロだ。純粋な制空戦闘機のためだ。(公平を期すと、対地攻撃は全く想定外ではない。イスラエルが70年代にイーグルでイラク原子炉攻撃に成功している)
  2. F-15Eストライクイーグルは兵装23千ポンドを搭載する。ストライクイーグルはF-15Cと同等の速度で空対空装備もほぼ同数搭載できるが機体操縦性はやや低くなるのは機体重量が増えたためだ。
  3. ロシア軍は米軍ほど精密誘導兵器を利用しておらず、投入可能な種類も少ないが、Su-35にはイルビス-Eレーダーの対地攻撃モードで精密誘導兵器を十分運用できる。
整備維持はどうか
  1. 米国は高価格機材を長期間供用する傾向がある。ソ連時代含むロシアは価格を重視し供用期間は短く、一方で整備工数は高くなる傾向がある。Su-30フランカーのように信頼性で問題が発生した例がある。
  2. Su-35ではこの問題を解決すべく6,000時間使用に耐える仕様になっている。F-15CおよびEはそれぞれ8千、16千時間の想定で、C型は耐用年数延長も実施されるだろう。一方でSu-35各機は製造したてで耐用年数は十分あるが、F-15機材の大部分は1970年代や1980年代の製造だ。
次世代のF-15
  1. ボーイングは高性能ステルス版のF-15サイレントイーグルの営業をここ数年展開しており、イスラエルが導入するかもしれない。さらにボーイングはF-15Cの性能改修パッケージをイーグル2040C名称で提唱している。
  2. サイレントイーグルやイーグル2040で現行F-15の弱点が解消できるのだろうか。
  3. まずSu-35の操縦制御面での優位性は当面揺るがないだろう。サイレントイーグルはレーダー断面積を前面では0.1平方メートルにし、Su-35の十分の一と豪語しているようだが、後方と側面ではステルス性がない。実戦では後方側面のステルス性があったほうが良い。
  4. イーグル2040CパッケージはIRST及びF-22互換性データリンクをタロンHATEポッドで実現し、ミサイル搭載量も倍増させる。
まとめると
  1. 将来の空戦の効果はミサイルと電子対抗装置の性能に左右され搭機体性能は二の次になりそうだ。とくに非ステルス機材の場合二個の傾向が強い。
  2. それでもSu-35はドッグファイトの王座につき、高性能多用途ミサイル発射母体として対空対地双方で威力を発揮するだろう。ただしAESAレーダーがないのが惜しい。
  3. 現行型F-15は高性能レーダーを搭載し航空優勢を実現する戦闘機としてその能力を維持している。F-15Eはその中で対地攻撃に威力を発揮する兵装搭載量の多さが利点だ。改修型F-15は対空戦兵装の搭載量が増えデータ融合効果を艦船、衛星、航空機と発揮する。サイレントイーグルは限定的とはいえ前方ステルス性能が期待できる。Su-35は全体100機弱がロシア、中国、マレーシア、アルジェリアで供用されることになっているが、若干追加発注が生まれるかもしれない。米国では2020年代以降にかけてF-15Eが200機、F-15CとDがややそれより少ない機数稼働することになる。世界各地ではこれ以外に400機がサウジアラビア、イスラエル、韓国、シンガポール、日本で供用されている。■

----This Story Was Originally Published in The National Interest----
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.


★航空自衛隊がF-35A1号機写真を公表 テキサス州フォートワース



JASDF releases images of first F-35

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
15 August 2016


  
航空自衛隊向けF-35A1号機の写真が初飛行・引き渡しに先立ちフォートワース工場で公開されたSource: Japan Air Self-Defense Force
日本向けのロッキード・マーティンF-35AライトニングII打撃戦闘機JSF一号機の写真が公表された。撮影場所は同社フォートワース工場内で撮影時期は8月中旬という。
写真は航空自衛隊が8月14日に公表し、機体には69-8701(別称AX-1)がつき飛行テストをへてルーク空軍基地(アリゾナ)の国際訓練部隊へ数週間で引き渡し可能になっている。
日本は今後5年でF-35A計28機を導入する。うち6機の正式契約が完了。最終的には42機導入し、三菱重工がライセンス生産したマクダネル・ダグラスF-4J改と入れ替える。
2014年6月25日に小野寺五典防衛相(当時)がF-35は当初は三沢基地に配備すると発表していた。三沢には平成29年度中に4機が配備され、運用部隊は301空あるいは302空となる見込みだ。■

2016年8月15日月曜日

もし戦わば② 戦艦大和 対 戦艦ビスマルク


世の東西を問わず歴史が好きな人にとってIFの世界はたまらない魅力がありますね。あくまでも遊びの世界なのであまり目くじらたてないでください。
We go to war so you don’t have to

The Japanese battleship ‘Musashi’ in 1942. Photo via Wikimedia

A Clash Between German and Japanese Battleships Would Have Been Mighty

And ugly for the losing side

by ROBERT FARLEY

第二次大戦時の巨大戦艦、ドイツのビスマルクと日本の大和の直接対決シナリオが想像できるだろうか。難しいが不可能ではない。
マルヌ会戦が逆の結末となり、ドイツが1914年秋にフランスを破ったとする。1940年春と同じ状況だ。
ドイツと英国は海軍軍備で和解し、ドイツ帝国はヨーロッパ大陸を手に入れ、英帝国は存続を保証された。
第一次大戦前からドイツは太平洋に相当の領土を確保していた。第一次大戦に勝利しドイツは領土拡張に乗り出していただろう。特に中国を。すると、日本はドイツと摩擦を起こしていたはずだ。

The German battleship ‘Bismarck.’ Photo via Wikimedia
両艦の特徴
アイオワ級やHMSヴァンガードを除き、ビスマルク級と大和級は世界最大級の戦艦だった。
ビスマルクと姉妹艦ティルピッツの排水量は約5万トンで30ノットが出せ、主砲15インチ8門を砲塔4つに搭載。装甲は合計19千トンだが第二次大戦の標準仕様で建造された。これに対し大和級は排水量7万2千トンで主砲は18.1インチ三連装三砲塔形式で速力は27ノット。装甲の合計重量は22千トンで近代的な艦体設計だ。
ドイツがビスマルク級戦艦を極東まで回航し、第一次大戦前から確保している青島軍港を本拠地とした仮定とする。航続距離が長いドイツ戦艦は通商破壊も想定し、太平洋でも十分活躍しただろう。またドイツには高速戦艦もあり、大西洋に強力な艦艇を残していたはずだ。
The Japanese battleship ‘Yamato’ in 1941. Photo via Wikimedia

海戦の展開

開戦となりビスマルク、ティルピッツ及び小型艦(重巡2、駆逐艦6)は青島からトラック島へ移動する。
機動部隊は別地点で投入中のため日本帝国海軍はHIJMS大和およびHIJMS武蔵をドイツ艦隊を捕捉撃滅すべく派遣する。
ドイツ戦隊は速力差3ノットを活かし、日本部隊を振り切り、交戦を避けられる。ただし日本には地理上の優位性があり、各拠点基地から旧式艦を随所に配備しており、脱出経路を警戒している。
長門はじめ旧式戦艦部隊と交戦せずギュンター・ルッチェンス提督は日本帝国海軍の最新鋭艦艇との交戦で運を試す決断を下す。ルッチェンスは日没前交戦を期待した。なぜなら日本側が夜戦で優位とを知っているからだ。ドイツ艦にはレーダーがあるにもかかわらず。
砲門を先に開いたのはドイツでだが一撃離脱できないことがすぐわかった。ルッチェンスは日本巡洋艦・駆逐艦による魚雷攻撃の射程に入る前に叩く決断をする。ドイツ情報部は93式魚雷の性能を評価し、遠距離から大型艦を撃沈できると知っていたのだ。
ビスマルクが大和を、ティルピッツが武蔵に主砲を発射し、ビスマルクは日本旗艦に初弾から命中を上げる。
だがすぐに日本側も反撃を開始し、18.1インチ主砲が火を噴く。日独双方とも火器管制は優秀だが、結果は一方に傾く。ビスマルク級15インチ主砲は発射回数が高いが命中しても日本主力艦に与える損害は軽微だ。(ただし日本艦も上部構造物は相当損傷する)
これに対し18.1インチ砲が命中すると即座に深刻な打撃を与える。長距離から着実にドイツ艦に命中していくが、損害を区画でくいとめる両艦に致命的な損害にならない。ただし、ビスマルク、ティルピッツとも速度が低下し、離脱の可能性が減る。
小型艦同士の海戦も始まり、これは日本に有利となる。日本側は24インチ「長槍」魚雷の有効範囲で一斉にこれを発射。ドイツ艦三隻に命中。巡洋艦駆逐艦各1が甚大な被害だ。日本側砲撃でドイツ戦隊の動きが鈍り、日本の補助艦艇がドイツ側に当たり、戦艦部隊はドイツ戦艦部隊に集中できる。
日本側砲撃は正確度をあげ、ドイツ艦の上部構造物がますます破壊されていく。速力差の優位が消え、ドイツ側は重武装大型艦と長期戦に巻き込まれたことを自覚する。日本側の優位性が明らかになり、ドイツ艦の火砲発射間隔が長くなり不正確になる。
駆逐艦雪風、磯風が勇猛果敢にドイツ巨艦二隻に近距離で魚雷攻撃を加え、両艦に命中する。
ドイツ各艦は日本側へ意味ある交戦能力を喪失し、強力な戦艦火砲を一方的に受けている。
日本側巡洋艦駆逐艦はドイツ側の同等勢力を排除し、主砲と魚雷で攻撃を開始する。ドイツ主力艦二隻が日本帝国海軍の攻撃を受けても驚くほどの残存性を示している。
二時間が経過し、ティルピッツで艦内爆発が発生しまもなく転覆沈没する。日本部隊はビスマルクに火砲を集中し、ビスマルクも停止し発砲を停止する。大和艦上の見張り員がビスマルクが降伏するのを見つける。命令はドイツ戦隊に伝わり戦闘が終わる。
雪風の拿捕隊が傷ついたドイツ戦艦に乗船し、日本各艦からも損傷復旧部隊が合流する。ドイツ乗員も手助けし、鎮火と浸水は一定範囲に抑える。大和がビスマルクが曳航し、タグボート到着まで待つ。
ビスマルクは日本軍艦籍に入るが、その後戦闘に加わることはない。修理が複雑かつ高価すぎるためだ。ただし乗員大部分は戦闘を生きのびた。

まとめ

大型艦で相当の攻撃に耐えられるはずのビスマルク、ティルピッツが他国海軍の高速戦艦との比較では高評価されなかった。
大和、武蔵は史上最大かつ強力な戦艦であったが、(米アイオワ級には不利な点もあった)ドイツ艦を凌駕し簡単に撃破していただろう。
ただし帝政ドイツの野望は忘れてはならない。日米両国が太平洋で19世紀末から20世紀初頭にかけて展開した政策(特に米のフィリピン併合)によりドイツは域内での領土野心を一層堅くしていたのだ。
日本は第一次大戦を英仏の側に立ちドイツ等へ宣戦布告した。連合軍体制がもし崩れたとしても日本はやはりドイツと対立するはずだっただろう。■
Robert Farley is author of The Battleship Book and Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky.


★TR-XはISR機材として採用をねらうロッキードの高高度ステルス無人機構想



ここで言っているTR-XはU-2無人機版としてロッキードが提唱していたコンセプトの発展形でしょう。供用期間の途中で大幅にステルス性能などを引き上げていく(当然同社には改修費用が収入源となる)という同社にとって虫のいいお話になります。実現するか未定ですが、予算危機とはいえ、大事なISR機材を調達できないくらいアメリカは弱っているのでしょうか。短期的なつじつま合わせでなく情報収集手段として今後稼働できるのならいい買い物になるのですが。

Aviation Week & Space Technology

Lockheed’s TR-X Reconnaissance Aircraft Will Have Stealthy Shape, Skin

Lockheed Martin is pitching TR-X, a stealthy, high-flying UAS, to replace U-2 and Global Hawk
Aug 12, 2016 Lara Seligman | Aviation Week & Space Technology

  1. ロシア、中国がミサイルを高度化する中、米空軍のロッキード・マーティン有人U-2およびノースロップ・グラマンのグローバルホーク無人機は敵国境線へ接近が困難になりつつある。
  2. ロッキード・マーティンは自社のスカンクワークスならこの課題を解決できるとし、これまで公開していなかった無人TR-X提案のステルス性能を今回明らかにした。高高度飛行しステルス性の外装およびレーダー波吸収表面で敵領空深くへ侵入できるようになるとロッキードでU-2事業開発部長を務めるスコット・ウィンステッドが述べている。

ロッキードの考えるステルス偵察機開発案
  • 初期型TR-XはU-2の高性能センサーを搭載した低視認性機体とする
  • ステルス性能は機体のステルス形状とレーダー波吸収表皮で実現する。
  • ロッキードが開発中の極超音速SR-72を補完する役割も期待
  • 初期型30機を38億ドルで7年以内に稼働開始させる

  1. ロッキードはTR-Xコンセプトを昨年の空軍協会の年次総会で発表し、U-2とグローバルホークの後継機として今世紀一杯稼働できるとうたった。その際にTR-Xは低視認性機体だと述べていたがステルス性能の詳細には触れていなかった。
  2. 今後は相手領空上空への侵入が出来なくなるのが普通となり、高性能センサー、高高度飛行、長距離飛行性能にステルスを加えてISR情報収集監視偵察任務での優位性が実現するとウィンステッドは述べている。高性能センサーの例が電子スキャン方式アレイレーダーで、現行のU-2やグローバルホークに搭載すれば敵領土奥深くまで侵入できるが、機体表皮そのものを全く新しくしないとレーダー探知からは逃げられないとウィンステッドは指摘する。
ロッキードTR-X構想では最終的にステルス機体となりレーダー吸収被膜とすることで敵地億副区に侵入可能となる。Credit: Lockheed Martin Concept
  1. 「そうなると敵はレーダー出力を上げないと探知できなくなり、こちら側はそれだけ接近でき戦時に有利になります」
  2. TR-Xの空軍採用を期待するロッキード・マーティンは二段階の開発をする。第一段階は低視認性機体で当面の必要条件に答え、その後、ステルス性を高めた機体としてレーダー吸収表皮を追加する。
  3. TR-Xはノースロップの極秘RQ-180とロッキードが開発中の極超音速SR-72に加わり、空軍の求める侵攻型ISR機材の一角となる想定だ。一機種ですべてを実現するのではなく、複数要求に選択肢複数とし、脅威環境の変化に対応する考えだとレベッカ・グラントIRIS独立研究所の社長が解説。
  4. SR-72がマッハ6で飛行すれば速度と残存性が武器となる。理論上は同機は危険空域でも存分に活動でき、敵の地上移動目標が隠れる前に探知し、高速で帰還し、途中でネットワーク有効範囲に入れば情報を送信する。
  5. 将来において空軍はステルス高高度飛行のTR-Xと極超音速のSR-72双方を運用する必要に迫られるはずとグラントは言う。TR-Xは常時滞空する空の目となり、変化を見逃さず、現在のU-2の役割を果たすというのだ。何らかの変化の兆候が見つかれば、あるいは具体的な脅威の兆候が見つかれば、SR-72が出動し、データを迅速に収集する。
  6. TR-Xは当面はU-2と同じ非ステルス性機首に合成開口レーダーあるいは強力なSYERS-2電子光学赤外線(EO/IR)カメラを搭載して空軍にISRを提供するとウィンステッドは語り、初期機材のTR-Xはまっすぐな主翼構造でステルス機の特徴と反するが、機体構造は低視認性だという。
  7. 高高度飛行はU-2から、長時間飛行はグローバルホークから引き継ぎTR-Xは一つの機体にする。無人機であるためU-2より航続距離が延びる。24時間連続飛行が可能で、空中給油でさらに伸びる。グローバルホークは28から30時間連続飛行できる。U-2と同じ強力なジェネラルエレクトリック製F118エンジンを搭載し、高度70千フィート飛行が可能で、グローバルホークより10千フィート高く飛びながらペイロード5千ポンドを搭載する。
  8. 空軍の予算執行案ではU-2は2019年に退役し、グローバルホークにU-2のセンサーを搭載した改良型を後継機とする。だがTR-Xの方が短期ISR需要にはコストパフォーマンスが高いとウィンステッドは説明。ロッキード試算では初期30機の機材をそろえるのに38億ドルで、7年間で稼働開始できるという。これに対しグローバルホーク改修案では35億ドルで「U-2性能の80%相当にしかならない」という。
  9. TR-Xの初期機材は敵防空網の境界部分なら活動できるが、敵領土奥深くへ侵入できない。「それでも生き残り、気づかれない」とウィンステッドは以前述べていた。
  10. その先に来るのが最終案TR-Xでステルス性能を完全に実現するという。レーダー波吸収式の表皮塗膜と構造材料に加え、一体型ステルス設計の機体でレーダー波を反射する。
  11. ロッキードはTR-X最終型の費用、所要時間を確定していない。機体構造改修を行いステルス性能を実現する妥当な時期は機材の定期点検改修時だとウィンステッドは述べる。U-2の場合は6年周期で重点検を受ける。30機のTR-Xをすべて改修するのか一部にとどめるのかは空軍が判断すればよいというのがウィンステッドの言い分だ。
  12. ロッキードは空軍上層部にTR-Xおよび発展型を事前説明しており、新型機は来年再来年にも実現できると同社は述べ、ボブ・オットー少将(ISR担当副司令官)は同社構想に「興味をそそられた」というが、航空戦闘軍団はTR-X導入の予算はないとし、他に近代化の対象となる重要案件B-21爆撃機、F-35、KC-46給油機などがあるとする。
  13. だがウィンステッドに落胆の様子はなく、ステルス高高度ISR機材の必要性はすぐにでも明白になるという。「最大の障害は調達部門で新規事業が必要となるはずなのに構想を巡らす余裕がないこと」とし、「でも性能検討でニーズを見れば、ニーズが増える一方だと分かり優先順位も高くなるはずです」■


KC-46 本生産へGO



やっとKC-46が先に進みますね。生産予定の179機には日本向け3機(これだけでいいのか疑問)は含まれておらずボーイングとしては代替を期待するKC-135の母体数を見ればもっと売りたいのでしょうね。

KC-46 Tanker Cleared for Production

Aaron Mehta, Defense News6:50 p.m. EDT August 12, 2016
KC46 f16 refuel(Photo: Boeing / Paul Weatherman)
WASHINGTON – KC-46Aペガサスの本生産開始が承認され、ボーイングに大きな一歩となった。ペンタゴンで調達業務を統括するフランク・ケンドール副長官が同機事業でマイルストーンCを12日金曜日に認定したためだ。
空軍はまず30日以内に定率初期生産2ロット分の契約を交付する見込みで、19機と関連予備部品の生産が開始される。交渉前価格で28億ドルとなる。
「KC-46が次の段階に進む準備が整った」とデイヴ・ゴールドファイン空軍参謀総長は広報資料を発表。「空軍はボーイングと共同で課題解決に向け努力を拡大してきた。ボーイング生産施設の現場で働く同社社員を誇らしく思う。またその他提携企業の社員にも同様で、毎日の精進で従来の概念を一変する性能が空軍に実現する。関係各位には脱帽の感がある」
マイルストーンC認定のためKC-46はF-16、C-17、A-10の各機にブーム給油を、またホーズとドローグでの給油をAV-8とF/A-18へ行う必要があった。KC-10から給油も受けている。
給油テストは遅れたのはブームによる給油を大型機向けに行うのに困難が見つかったためだ。ボーイングは燃料流量を制御する別回路を設計して、マイルストーンC認定のテストは6月から8月に先送りされて、空軍への第一期認証済み機材18機の納入も当初の2017年8が2018年1月に先送りとなった。
開発契約によりボーイングへの公金支出は49億ドル上限となり、同社は超過分税抜き19億ドルを自社負担している。
米空軍はKC-46Aを179機調達する予定で、さらに長期計画でKC-Y(KC-10後継機)及びKC-Z(KC-135後継機)事業があるが、ボーイングはKC-46の追加調達を期待している。


2016年8月14日日曜日

グアムに米重爆撃機三機種が集結中 真の狙いは?



War Is BoringWe go to war so you don’t have to
B-1s, B-2s and B-52s at Andersen Air Force Base on Guam on Aug. 10, 2016. Air Force photo

B-1, B-2 and B-52 Bombers All Descend on Guam in a Huge Show of Force

This is not something you see every day

by JOSEPH TREVITHICK

8月10日の米空軍発表で、B-2スピリットステルス爆撃機がグアムに到着し、B-52ストラトフォートレスおよびB-1ランサーに合流したとわかった。太平洋で各機種が揃うのは異例で、グアム島で初めてだ。
  1. 空軍長官デボラ・リー・ジェイムズは今回の配備を「爆撃機搭乗員に別機種との統合運用の貴重な経験と訓練の機会となり、同盟国協力国も各種ミッション通じ有益な機会となる」と述べた。
  2. ただしジェイムズ長官は今回の配備についてそれ以上触れず、各機種を同時配備する意味を深く説明していない。グアムから中国、北朝鮮は攻撃範囲である。
  3. ペンタゴンは爆撃機をアンダーセン空軍基地に定期配備している。ただし北朝鮮の核ミサイル実験、中国の南シナ海進出で今回の配備に新しい意義が生まれている。
  4. 今回の展開は8月6日にB-1編隊がグアムに到着して始まった。B-52に交代するため飛来したものでペンタゴンが「連続爆撃機プレゼンス」、CBPと呼ぶ作戦の一環。交代するB-52部隊は8月末に米本土に帰還する。
  5. 8月10日にB-2編隊が「爆撃機保証抑止力配備」BAADで到着。ただしステルス爆撃機隊がミズーリ州の本拠地に帰還する予定は不明だ。
  6. 三機種には全く共通性がない。すっきりしたB-1は超音速飛行可能で機内爆弾倉は3つに分かれ40トン近くを搭載する。最大行動半径は6,000マイル近い。
  7. 巨大なB-52は低速で爆弾搭載量はそこまでないが、さらに3,000マイル飛行可能だ。B-2スピリットも爆弾搭載量は少ないが全翼機形状でステルス特性で敵レーダーに補足されない。
One of the B-1s at Andersen Air Force Base. Air Force photo
  1. これまでCBPおよびBAADミッションは北朝鮮の好戦的な態度を睨んで実施されてきた。
  2. 2002年1月29日、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が北朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」と呼び、一年以上たってグアムに新設の爆撃飛行団にB-1、B-52が派遣され、2004年にどう飛行団がCBPミッションを開始した。
  3. 初回展開の「2003年春はアンダーセン基地での爆撃機運用の新時代を開いた」と第36飛行団公式記録が記述している爆撃機需要とアンダーセンの活動状況は平行ししていた War Is Boringは情報公開法でこの記録写しを入手した
  4. 冷戦中のグアムに核爆弾搭載B-52爆撃機隊が駐留しソ連あるいは中国との開戦に備えていた。幸いに想定は現実にならず、ヴィエトナム戦争でB-52隊は同基地から発進し通常爆弾を投下していた。
  5. 2000年代に入ると爆撃機隊は広範囲ミッションに備え、オーストラリアやアラスカからハワイにかけてさらに東シナ海でも演習に参加した。空軍は各演習フライトに色彩豊かな名称「ブルーライトニング」や「ポーラーライトニング」をつけていた。
  6. 2004年8月から9月にかけ機材は韓国との年次軍事演習に派遣された。その三ヶ月後、U-2が集めた情報で地上部隊からB-52に模擬空爆の要請が入ったと第36飛行団の公式記録にある。
One of the B-2s at Andersen Air Force Base. Air Force photo
  1. これと違い、BAADは世界規模での示威行動が目的だ。ただし太平洋地区で脅威可能性が最大になっている。
  2. ペンタゴンは爆撃機を中東に定期的に派遣し、イラン核開発への不快感を示していた。ロシアがウクライナのクリミア地方を併合した2014年2月にはB-52派遣が拡大されヨーロッパでの演習を増強している。
  3. だが今回の派遣から空軍が太平洋を最重視しているのは明らかだ。8月10日の報道会見でディビッド・ゴールドファイン空軍参謀総長は中東や中央アジアと状況が違うと強調した。
  4. B-52やB-1は中東では対イスラム国などを相手にわずかのミッションしか実行していない。大型爆撃機は通常は国家規模の敵勢力への空爆の必要が生じるまで待機している。
  5. 対照的に太平洋地区の最高司令部は北朝鮮の挑発に加え中国の野望に直面している。2016年だけで平壌はミサイル10発以上を試射し、核弾頭搭載能力がついたと言われる。
  6. 7月には中国がH-6K爆撃機一機を紛糾中のスカーボロ礁上空に飛ばしている。同月に国連仲裁法廷が中国艦船がフィリピン漁船による同海域立ち入りを力で封じ込めているのは不法との裁定が出ている。
  7. 中国の海上警察がスカーボロはじめ小規模島しょ地帯への外国艦船の活動を封じ、北京の主張を強固にしようとしている。中国関係者は米艦船や航空機には地対空ミサイルや弾道ミサイルを配備していると公言している。
One of the B-52s at Andersen Air Force Base. Air Force photo
  1. だが重爆撃機三機種を本土から数千マイル先まで派遣できるのはペンタゴンだけだ。最近の出来事から、これだけの威力を揃えたのは偶然の出来事ではない。
  2. 空中給油機の支援を得て各長距離爆撃機は熱い地点へ到達で切る利点があり、直前発表すればすぐ実施できる。
  3. 空軍は新型ステルス爆撃機、巡航ミサイル他高性能装備を調達を希望して議会へ要求中で、長距離ミッションをグアムのような戦略拠点から迅速に事項できる能力を示している。
  4. 2016年早々に空軍は超極秘B-21爆撃機の総費用をめぐり議会と子どものような意見衝突をしている。「空軍上層部はB-21契約の全体金額を開示すれば米国の敵に機密情報が流出すると主張している」とジョン・マケイン上院議員はWar Is Boringで論説を発表している。「ナンセンスだ」
  5. そうなると空軍は各爆撃機を太平洋に集結させて実は議会関係者へ強力なメッセージを送っているのかもしれない。
  6. 8月10日の報道会見ではジェイムズ長官もゴールドファイン対象と横に並び、議会に対して国防予算は年間全額の一括認可とし、「継続決議」と言われる小出し予算を期間限定で認める措置は取らないよう求めた。
  7. ジェイムズはこの措置の場合にB-21開発にどんな影響が出るかを示した。「開発全体が遅れ抑止力に大きな影響が2020年代に発生します」
  8. 空軍が議会を説得できれば、あと15年するとグアムにもう一つの爆撃機が出現するだろう。■

2016年8月13日土曜日

こんな人には大統領になってもらいたくない②ドナルド.J・トランプに国際安全保障で中身のある考えは期待できない



当然このシリーズ二回目はトランプ候補です。米大統領選挙史上で最も異彩な候補者と言ってもいいでしょう。正統派の共和党には受け入れられず、多数の既成共和党政治家が不支持を公然と表明しているのは異様ですが、世論調査ではまだヒラリー候補と大きな差がついていなのも異様です。どちらが当選しても過去の延長線の大統領にはなりそうもありませんね。その結果が安全保障面でこれからどう現れるかが懸念されます。

The National Interest Donald J. Trump? Never.

Does he have any real ideas about international security other than those he reads from his teleprompter?
Image: “Donald Trump speaking with supporters at a campaign rally at Veterans Memorial Coliseum at the Arizona State Fairgrounds in Phoenix, Arizona.” Photo by Gage Skidmore, CC BY-SA 2.0.
“Donald Trump speaking with supporters at a campaign rally at Veterans Memorial Coliseum at the Arizona State Fairgrounds in Phoenix, Arizona.” Photo by Gage Skidmore, CC BY-SA 2.0.

August 8, 2016


  1. ドナルド・トランプに大統領選挙で一票を鼻をつまみながら投じても良いと一瞬思える時期が筆者にもあった。
  2. 今年4月末にNational Interest主催の機会で外交政策の所信表明をし、納得できる点があった。トランプはイスラエルとアラブ諸国の間に平和を実現するとの立場を見せ、他方でNATO同盟諸国にはGDP比2パーセントまで国防支出を増やさせ、アメリカの防衛政策のあるべき姿を従来より詳しく述べた。核兵器近代化を支持し、ミサイル防衛の実効性も高めるとした。また陸軍の増強、艦船数、空軍兵力の拡大も主張した。対ロシア姿勢では以前よりバランスが取れたものの言い方で力を背景にした交渉のみをすると言い切っていた。
  3. 筆者はずっと共和党員であり本選挙では共和党候補なら誰でも構わず投票してきた人物だが、トランプはこの筆者を完全に納得させられなかった。貿易問題では頑固なまで否定的な態度を示したことに心配させられた。
  4. とくに貿易問題と同盟関係で無頓着とも言える横柄さに懸念を覚え、これでは日本や韓国が独自に核兵器保有に向かうのではと思わされた。本人自慢の交渉術がイスラエルとパレスチナの間に本当に平和をもたらすか不明だし、逆に双方をもっと対立させるお節介ブリを示すかもしれない。
  5. 11百万人に登る不法移民を国外追放せよとの提言にも賛同できない。多くはヒスパニックでメキシコ国境に壁を作るとも主張している。不法移民をメキシコ出身の性犯罪者や犯罪者だと決めつけるが実はヒスパニックの大部分はラテンアメリカ各国出身者で通常のアメリカ市民より重大犯罪を犯す実績が低い事実を無視している。さらに同候補者のイスラム教徒への姿勢に大きな懸念を覚えざるを得ない。スンニ派諸国ではすでにアメリカの信頼度が揺らぎ始めており、1930年代に後戻りするような人種差別主義の香りもする。
  6. とはいえNational Interestでの講演を契機にトランプは一皮むけたと筆者は感じ、過激な発言を慎むよう助言する専門家に耳を傾けるようになったと思った。だが筆者は甘かった。だがその後の本人の行動を見ると他人には耳を傾けていないのは明らかだし、テレプロンプターがなければ大衆扇動家のままではないか。歓声を上げる聴衆の前で見境のない発言をしているだけだ。
  7. トランプはNATO批判で窮地に陥っている。同盟各国間には本人の評価は低くなり、TPP環太平洋経済連携への反対姿勢もそのままで、太平洋での米主導力を否定する形だ。また日本や韓国が核武装に向かうとしても反対はしないようだ。中国への敵意はそのままだが、ロシアへは手ぬるい姿勢に変化はない。ロシアのウクライナ侵攻を無視しているのか無知なのか、国際安全保障問題ではテレプロンプターが表示する文句以下外は本人の考えは皆無のようだ。
  8. 上記を理由に筆者はドナルド・トランプには絶対投票しないと決意したのではない。むしろその行動であり、ナルシズムの気難しさであり、あえて楽しんでいるかのような激烈な声明から地上最高位の職務には全く不適格と言わざるをえない。
  9. 米国生まれのヒスパニック系判事への非難は同判事がトランプ大学案件を担当したためなのか人種差別観が露骨に出ており、米国在住イスラム教徒カン一家を非難した口調には常識的な一線を超えイラク戦で息子を失った家族をなじっていた。また障害を持つ記者を真似てからかうさまはクリントン陣営の選挙CMが取り上げている。
  10. 筆者は孫多数に恵まれ、5人が十代と十代未満だ。それぞれの両親によりゆくゆくは立派な国民として軍服を身に着けた男女を尊敬し外見や信仰は違っても他者を尊敬するよう教えられている。そんな孫たちに対してドナルド・トランプが大統領になるのは耐えられず、孫達が教えこまれた価値観と反対のお手本を大統領が示すのも耐えられない。候補者はそれぞれ欠点はある。ヒラリー・クリントンも多々欠陥があるがドナルド・トランプはその比ではない。共和党の恥であり、それだけでなく米国とその価値観へも侮辱だ。■

筆者ダヴ・S・ザケイムはCenter for the National Interest副会長で、国防次官補を2001年なら2004年までつとめた以外に国防副次官を1985年から87年まで経験している。


2016年8月11日木曜日

歴史に残る機体⑨ KC-135、60年にわたり飛行を続ける米空軍の働き者



KC-135 Stratotanker reaches historic milestone



TAMPA, FL, UNITED STATES

08.09.2016

Story by Capt. Joseph Simms

927th Air Refueling Wing




1956年8月31日に初飛行したボーイングKC-135を見た人たちには60年たっても飛行しているとは想像できなかっただろう。
  1. だが60年に渡りボーイング707を原型とした同機は米空軍きっての働き者として活躍し、空中給油、人員貨物輸送、医療搬送など世界中を飛んでいる。
  2. 1950年代中頃の戦略航空軍団はカーティス・ルメイ将軍の指揮のもとで当時の最新鋭戦闘機や爆撃機に追随できる食う中給油機を必要としていた。B-52は当時着陸装置をおろして抗力を増やし低速にしてプロペラ式のKC-97に合わせて給油を受けており、機体に負担となるばかりでなく貴重な燃料を無駄使いしていた。
  3. KC-135の登場でこれは解決する。450マイルの速度で飛ぶ同機はKC-97の給油量の二倍を搭載可能だった。
  4. KC-135Aが第93空中給油飛行隊(キャッスルAFB、カリフォーニア)に1957年から配備されるとKC-97と交代し高速で世界各地に空輸する能力が生まれた。1976年に空軍予備役にもKC-135が投入されると、予備役パイロットによる第63空中給油隊がマクディル空軍基地(フロリダ)に発足し、同隊は今日も同機を運用している。
  5. KC-135は空軍の空中給油の屋台骨を60年間つとめ衰えを知らないようです」とアダム・マクリーン中佐第63ARS指揮官は言う
  6. 現在KC-135を操縦する一番若いパイロットの母親が生まれる前から同機が飛行を続けられるのは整備陣の技能があってこそだ。
  7. 「クルマなら毎日乗って60年も維持できないでしょうが、KC-135が毎日飛んでいまでもちゃんと動けるのは整備部隊の成果です」と語るのはメアリー・レント少佐第927航空機整備隊隊長だ。
  8. ストラトタンカーの真価は空中給油だけではない。輸送機としてKC-135は貨物83千ポンドと40名を搭載し、傷病者輸送任務では患者搬送パレットを医療スタッフとともに運ぶ。
  9. 空中給油任務に新型KC-46ペガサスが投入されるが、航空機動軍団は今後もKC-135の供用期間を延長すべく出費を続ける。■