2017年12月20日水曜日

北朝鮮のサイバー攻撃国家関与が明らかになった 

これはひどい。北朝鮮でインターネットを利用しているのは政府関連しかないはずなので逆攻撃すべきでしょう。WINDOWSでは脆弱性がたびたび指摘されており、ユーザーの皆さんも更新作業を怠らないようにしてください。まさかXPを使っている人はいないでしょうね。英国の被害はOSをケチったためと聞いていますが。


North Korea Linked to ‘Reckless’ Global Cyber Attack

北朝鮮が「無謀な」世界規模サイバー攻撃を実行したていたと判明

Pyongyang hackers behind WannaCry malware used software flaw first

uncovered by NSA

ワナクライ型マルウェアを使った平壌ハッカー集団が利用したソフトウェア欠陥を最初に見つけたのはNSAだった

Tom Bossert, White House homeland security adviser, and Jeanette Manfra, chief of cybersecurity for the Department of Homeland Security
Tom Bossert, White House homeland security adviser, and Jeanette Manfra, chief of cybersecurity for
the Department of Homeland Security / Getty Images
December 20, 2017 5:00 am


北朝鮮が「無謀な」世界規模サイバー攻撃を各国政府や企業に実施したとトランプ政権が12月19日発表した。
「慎重に捜査して米国は公式に大規模ワナクライ・サイバー攻撃は北朝鮮が起源と判断する」とホワイトハウス国土防衛安全保障テロ対策補佐官トム・ボサートTom Bossertが述べた。「この非難は軽いものではない。証拠がある。各国も協力している」
ワナクライ型のマルウェアは身代金タイプと見られ5月に世界各地で感染が報告された。マルウェアが侵入するとウィンドウズコンピューターとハードディスクの暗号ファイルに影響が出て使用するためにはビットコインによる支払を求めてくる。
背後に北朝鮮のハッカー集団がありOSの弱点を利用しているという。これを最初に発見したのは国家安全保障庁だった。
ワナクライは最初にロシアのマルウェア、ペチャの変形と思われていたが、5月にNSA他米情報機関や民間セキュリティ企業が追跡に成功し、出所が北朝鮮だと判明した。
英国の国民健康医療制度が大きく被害を受けた他、ワナクライ感染は150か国におよび一部の被害者はハッカー集団に身代金を支払っている。
「配慮に欠けかつ無謀な攻撃」とボサートは報道陣に語る。「個人、産業界、政府が混乱した。被害は経済だけではない。英国では医療制度が大規模感染し人命に危険が生じており単なる金銭上の問題ではない」
ボサートは米国の発見内容は英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、日本の政府・セキュリティ企業も確認したという。
マイクロソフトはハッカー集団を追跡し北朝鮮政府との関連をつきとめたという。
ワナクライ型ランサムウェア攻撃は北朝鮮による第二波の大型攻撃だ。
2014年末に北朝鮮がソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントに侵入しデータを盗みオンライン上で公開して社内システムを破壊したことを米政府が明らかにした。
NSAは北朝鮮がソニー攻撃を突き止めたのは庁内のハッカーが北朝鮮ハッカー集団が使用中のコンピューターネットワークへの侵入に成功したためだ。NSAは北朝鮮をスパイしている事実はNSA委託業者エドワード・スノウデンが暴露している。
ボサートによればマイクロソフトやフェイスブックと言った技術系企業が最近になり北朝鮮の「サイバー上の功績」数件を閉鎖し、世界中でコンピューター感染を繰り返す北朝鮮からの利用を止めた。「各社で北朝鮮政府所属のハッカーを利用停止にした」のだという。
北朝鮮はハッカー攻撃に第三国を利用していることが知られており、中国やタイ国がよく名前に上る。
北朝鮮がワナクライ攻撃した事実が暴露されたのはトランプ大統領が初の国家安全保障戦略を発表し、サイバー攻撃やサイバースパイ活動への対抗を重視するとしたした翌日だ。
戦略構想ではサイバー空間での脅威対象やリスク事項をもっと探知するとある。
「国内の重要インフラストラクチャアの保安と回復性を改良するべく六大領域を評価する。国家安全保障、エネルギー電力、銀行金融、保険安全、通信、運輸だ」と報告書が述べている。「各分野でサイバー攻撃で破滅的な結果ないしほかに波及する結果が出るのはどこかを把握し、保護措置を優先順位付けし、防衛体制を整備する」
国土保全省(DHS)のサイバーセキュリティ・通信担当副長官ジェネット・マンフラJeanette Manfraはワナクライ攻撃は5月12日にアジアで始まりヨーロッパに広がったと述べている。
英国医療制度の次に「わが国内が狙われるという深刻な状況となった」とボサートは言う。
DHSはただちにワナクライに関する情報を主要インターネットサービス業者に提供した。この迅速な情報提供で被害は限定されたが、新型でもっと悪質なサイバー攻撃はその後も続いた。
「活動は強化され一層高度になっています。国家勢力と非国家勢力の双方が実施しています。多くの例で同じ敵対勢力が繰り返し関与しています」(マンフラ)
DHSとFBIは技術レポートを8月に公開し北朝鮮が重要な米国内インフラを狙い悪意ある攻撃を続けていると警告していた。
それによると北朝鮮政府所属のハッカー集団はメディア、航空宇宙、金融、重要インフラを米国や世界各地で標的にしてハイジャックされたコンピュータのネットワークを北朝鮮が利用してサービスを停止させたり、ネットワーク利用者が使えなくなった。
両機関は11月に入り、北朝鮮ハッカー集団が引き続きサイバー攻撃を続けていると警告している。
マンフラは攻撃による問題のひとつにインターネットがそもそも信頼を元に相互で利用できる仕様となっており開かれているが、システムには安全性を保障する仕組みははいっていないと指摘。
マンフラはインターネット上の攻撃を防ぐには政府と民間企業間の一層の協力が必要と主張。「集団的防衛体制を強化するためには政府は業界と密接に作業する必要があります。我が国の本土だけ防御できないのです。一企業では国家ぐるみの攻撃を防げません。サイバーセキュリティとは責任の共有です。すべてがインターネットの安全確保に尽力すべきなのです」
だが技術系企業の多くには政府との共同作業に不信感があり、数年前にもスノウデンがNSAのサイバースパイを暴露したばかりだ。その結果、企業の多くが政府と一緒に作業することを機密防衛の観点から嫌がっているのが現状だ。
ボサートは政府がワナクライ攻撃に対応が遅いとの指摘を否定する。「時間をかけて機密機微情報の保安を確認していた」という。
北朝鮮とのつながりの証拠として、平壌のハッカー集団が使うサイバーツール、使われているサイバー技術と運用施設が北朝鮮のものであることがある。
サイバーセキュリティ専門家の多くがマーカス・ハッチンスMarcus Hutchinsがマルウェアの被害を軽減したことを称賛している。ハッチンスはワナクライを5月初めに見つけ、その進展を送ら得セル方法を発見した。
ハッチンスはマルウェア上の欠陥を発見したのだった。デジタル上のキルスイッチで、これをONにしたのだ。「リスクを取り、うまく行きましたが、岡出で大変な恩恵が生まれました」とボサートはいい、「次回はここまで幸運とは限りません」
ボサートはこれ以上詳しく述べずに「北朝鮮政府が指示したものの状況に苦しむことはありませんでした」とだけ述べている。
ワナクライで北朝鮮政府の関与を占めす証拠が見つかり政府によるサイバー攻撃だと分かった。
ボサートによれば現政権の対北朝鮮政策ではサイバー攻撃を止めさせることも入っているという。
ランサムウェアでは北朝鮮が示す身代金額がどこまで増加しているのか不明だ。ただし、単純に資金を集めるだけのランサムウェアとは共通点が少ないという。
「どうも大金を集める意図はなかったようです。もしそうなら支払い済みのコンピュータを解放していたはずです。支払っても解放されないと分かると支払いが止まりました」
そこで現金目的よりも混乱を与えることに北朝鮮は目的を変えた。
ボサートは北朝鮮の関与がワナクライ・ランサムウェアで明らかになったのは第一歩にすぎず米国は「行動を止めさせる動きに出る」と同国に伝えているという。
ボサートは同時に米政府がカスペルスキラボのセキュリティソフトウェアの使用を禁止したと述べ、同ソフトがロシア政府に使用状況を伝えている恐れがあるためとした。
米政府は何か月もかけてワナクライで判明した事実があっても犯行国を名指しで難するのを避けていた。
「結果には行動があれこれ重なっているので実行犯を見つけるのが難しいのです。世界中にアナリストはいますが同様に情報機関でも詳しく経験豊かなアナリスト部隊があり運用中のインフラ施設のみならず使用されている技術や行動パターンを観察しており、これまでの攻撃事例でそういった技術の成果をご披露してきました。そこで捜査はコード分析だけではないんですよ」(ボサート)
謎のハッカー集団はシャドーブローカーズと呼ばれNSAが発見したマイクロソフトのOSの弱点を利用したとみられる。
ボサートは米政府が見つけた欠陥の9割は公表しており民間による修正を助けているという。公表されない欠陥内容は国家安全保障と関連している。
ボサートは米政府にはサイバー情報取集手段のよりよい防護ツールが必要だとしながら、そうしたツールでリークがあれば不幸としか言いようがないと述べた。

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Bill Gertz is the senior editor of the Washington Free Beacon.

トランプ大統領の国家安全保障戦略を読み解く

言われるような軍事のみを重視した安全保障構想ではありません。安全保障と言うと軍事「しか」思い起さない、あるいはそもそもトランプは軍事優先で所との思い込みは危険で、極めて包括的に世界を眺めています。

短くまとめてもこのボリュームなので原文は相当の内容があるのですが、例によってメディアは報道しない自由を行使し軍事力拡大だけを取り上げトランプ政権を批判しているようですね。

しかしよく検討されており、包括的に米国の価値観を擁護、普及させようとしている極めて健全な米保守主義のマニフェストであるのは明らかです。規制緩和と減税で経済を拡大していこうというのはレーガン時代をほうふつとさせるものがありますが、中国の経済「進出」に米国流企業経済を前面に立てた対抗策というのは時代を感じさせます。

また公平な負担があちこちに盛り込まれているのは相当の不満がたまっていることを思い起こされ日本も無関心ではいられないでしょう。国際機関等の枠組みへの関心を呼び掛けているのは内向きになりがちな米国人への注意喚起でしょうか。ともかく無視できない内容を含んでいますので是非ご一読ください。 

民主党前政権時代と比較するとやはりトランプが当選してよかったと思えてくるのは当方が「保守」なせいでしょうか。


We Broke Down Trump's Security Strategy Into Bullets So You Don't Have To Read All 60 Pages

トランプの安全保障戦略原文60ページを短くまとめてみた

The Trump Administration calls for more defense spending, new economic initiatives, and more aggressive diplomacy.

トランプ政権は国防支出増を求めながら経済面でも新機軸を持ち出し外交活動をもっと積極的に展開しようとしている

KYODO VIA AP
BY JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 18, 2017


2016年大統領選挙でドナルド・トランプ候補は米国内外の潜在的脅威に触れていた。大統領就任後ほぼ一年で国内外に危険が山積する中でトランプが新たな国家安全保障戦略構想を発表し、「アメリカ第一」を盛り込んだと説明している。
2018年12月18日にホワイトハウスが戦略構想全文をトランプ大統領の演説に先立ち公表した。文書は60ページほどでトランプ政権が現在の地政学的状況をどう把握しているか示し、その中で米国の権益をとらえ、今後の危険を示しながら米国政府の対応策を説明している。
ホワイトハウスは国家安全保障策を四本柱に分けている。米国流の生活様式を守り、米国の繁栄を推進し、力で平和を維持し、米国の影響力を高めることだ。総論に傾くきらいはあるが戦略構想からトランプ政権が目指すこの国の方向が見えてくる。

序論

  • 文書ではトランプは「米経済を再活性化させ、軍を再建し、国境を守り、我が国の主権を守り、わが国固有の価値観を先に進めるとお約束した」とし、「米国は異例なまで危険な世界の中にあり、多様な種類の脅威に直面し、しかも脅威は強まっている」と紹介。
  • その中で北朝鮮、イラン、「過激イスラムテロ集団」、「犯罪カルテル」、「不公正貿易行動」および「同盟国間の不平等な負担受け入れ」を具体的に取り上げている。
  • 2017年に入りトランプはアフガニスタン戦の方針変更を発表し、イランの影響を封じ込め、エルサレム市街地の現状を維持すると述べていた。
  • 「この国家安全保障戦略は米国第一を重視している」とし「原則に基づいた現実的政策で結果重視としイデオロギーは重視しない」
  • 序として米国建国の理想と伝統に訴え、米国憲法が保証する自由ならびに法による支配を重視し「我が国の出発点を誇りとし過去の英知を尊重する」
  • 「米国の成果と世界での立ち位置とは決して偶然に生まれたものではない」
  • 文書では「奴隷制を終結させた」南北戦争、アフリカ系米国人の公民権運動、さらに米軍の第一次大戦、第二次大戦への参戦、さらに冷戦に言及。
  • 米国は「ファシズム、帝国主義、ソヴィエト共産主義を敗退させ民主共和制のもつ効力と耐久力への疑問を消滅させた」としながら米国自身が植民地を保有した歴史には触れていない。
  • 新国家安全保障戦略ではこうした成功で「独善的態度を生んだ」とし「我が国が構築を助けた国際的仕組みを食い物にする国」があるとする。
  • 具体例は示さず、序の部分では名指しせずに外国や過去の米政権が米国の海外での競争力を低下させながら米国人に規制と重税を課してきたとこき下ろしている。これはトランプが選挙中に繰り返してきた主張であり、大統領就任後も同様だ。
  • 「米国は世界各地で直面する政治経済軍事上の挑戦に対応していく」
  • ロシアと中国は米国の権益に軍事経済両面で挑戦する勢力とされ、北朝鮮とイラン、さらに「聖戦を主張する戦闘員集団、国境を越えた犯罪組織が示す」脅威に再び触れている。
  • 「ライバル勢力はプロパガンダ他の手段を使い民主制の信用を失わせようとしている」とあるが、ロシア政府が2016年大統領選挙に直接かつ積極的に関与があったのではとの一般の見方には触れていない。
  • かわりに「野蛮なイデオロギー」がISIS、アルカイダ他「聖戦主義テロ集団」にあり「シャリア法」を適用しようとしていると非難。米国には根拠のない陰謀説があり、米国内のイスラム教徒や移民がイスラム教を全国に広く押し付けようとしていると見る向きがある。
  • 序では米軍事優位性への通常、核両面での課題を取り上げ、北朝鮮の大量破壊兵器のみ記述し、生物化学兵器と「高性能ミサイル」に触れている。
  • 「かつて米国が指導性を発揮せず、悪意ある勢力が米国の不利益になる形で穴を埋めた教訓を学んだ」
  • 「競争とは常に敵意を伴うとは限らないし、対立につながるものでもない。米国が自らの権益を守る姿勢を取ることはだれも疑わないだろう」

柱その一 米国国民、本土、米国式生活水準を守る

  • 「国境警備を強化し入国管理制度を改革する。重要インフラストラクチャーを守り悪意あるサイバー攻撃の実行犯に対処する。ミサイル防衛システムを多層構造とし本土を防衛する。また脅威の発信源に脅威を与え、聖戦主義戦闘員は入国前に食い止める」
  • 最初の柱では北朝鮮やイランと言った国家による軍事攻撃に対応するほか、麻薬や人身売買、知的財産権の侵害、米国政治に対する外国の介入は米国及び米国流生活様式への脅威と受け止め対応する
  • テロ問題は「聖戦主義戦闘員」が中心とするが戦略構想では「米国は偏狭な見方や抑圧は拒絶し一つのアメリカの上に価値体系を築いている。過激思想は拒絶し法執行、民間部門そしてなりより米国民の間に信頼を増やす根本を確保する」とある。
  • 国境警備強化にはトランプ大統領の持論である壁の構築と旅行禁止措置があり、大量破壊兵器に関連した国土防衛もある他テロ攻撃のたくらみ、伝染病の発生、国際犯罪の抑制、サイバー攻撃、死活的な民間インフラを守る、電磁パルス(EMP)攻撃を列挙している。
  • そうした脅威への対応として情報活動の強化を訴え、同盟国との情報共有もあり、脅威を「根源で」断つ対策や海外諸国に自助努力を求め、米権益に脅威を与えるいかなるものに責任をとらせるとしている。
  • 演説でトランプはテロ攻撃を未然に防いだロシアのウラジミール・プーチン大統領との情報共有に触れた
  • 「昨日プーチン大統領から電話が入り我が国CIAがロシア側にサンクトペテルスブルグでの大規模テロ攻撃のたくらみがあると伝えたことへ感謝していた。ロシア側が犯行前に容疑者を逮捕しひとりも生命を失わなかった。これはすごいことでこうあるべきだ。このようにしたい」
  • 機微情報を提供していく姿勢のトランプ政権ではほかの事例もイエメン、ソマリアやアフリカ各地で見られ、米同盟各国も防衛努力の負担が必要と説く一方、パキスタンなどの提携国にテロ集団との闘いを求めている。
  • 弾道ミサイル防衛の強化も訴えている他、生物科学技術の進歩で伝染病と戦い、政府系コンピューターネットワークの安全性強化、重要民間施設をサイバー攻撃から守り、一般米国人にも深刻な事態が発生した場合を想定した準備態勢の強化を訴えている。


柱その二 米国の繁栄を促進する

  • 「米国経済の恩恵を米国で労働者、企業双方が享受できるよう再生する。公平かつ双方向の経済関係で貿易不均衡を解消する。米国は研究開発での主導的立場を維持し我が国の知的財産を不当に取得しようとする競争相手から国内経済を防護する。米国のエネルギー非依存状況を守り、エネルギー利用に制限を加えないことで経済を活性化させる」
  • トランプ政権は経済成果を直接国家安全保障に結び付け、国内要因、国際関係、米国内のイノベーション創発、米国内のエネルギー関連部門支援に焦点をあてる。
  • 共和党の綱領路線に歩調をあわせ、戦略構想では規制撤廃、減税、財政赤字削減が国内経済に不可欠としている。
  • 「世界は注視している。世界は我が国が歴史に残る米国の家庭、企業両部門向け減税策があと数日で通過するのを見ている」としながら減税で赤字がさらに増えるとの見方には触れていない。
  • 国内インフラの再構築にも触れており、これも大統領選挙の公約だ。
  • 「ワシントン州で発生した列車事故の犠牲者へ心からの哀悼と祈りを示すことから始めたい」とトランプは演説冒頭で述べた。「だからこそ国内インフラにただちに手を入れるべきだ」と述べるが今回の事故では線路に原因があったのかはまだ不明で報道では線路上に妨害物があったことが原因としている。
  • これとは別に米国人に製造業従事に必要な技能として特に科学技術や数学での技能向上を手助けする事業も必要とした。
  • 貿易協定の枠組みでは言及がなかったがトランプは北米自由貿易協定NAFTAを繰り返し非難しており、今回の戦略構想では新規かつ「近代的な」貿易協定が必要とした。トランプ政権は新しい貿易協力を作るとし、環太平洋パートナーシップ(TPP)を評価せず環大西洋貿易投資協定(T-TIP)にも敵意を示す。
  • さらに米国は「共通の意思の提携国」と不公平かつ不正な海外での貿易慣行や経済活動に対抗して「新たな市場機会」を創出したいとする。
  • 科学技術分野での米国発イノベーションを後押しすることで才能ある人材や資金力を集めたい。
  • 米政府は官民連携を大学、民間企業他組織との間で推進し高度防衛関連の研究開発を進めるべきだ 
  • 米国には強力な知的財戦保護措置および国家安全保障基盤 National Security Innovation Base (NSIB)が必要で「経済窃盗」やスパイ活動に備え、特に中国の動向に注意が必要だ。米政府は中国政府が軍事機密や民間企業の知的データなど機微情報をサイバー攻撃で盗んでいると繰り返し非難している。
  • 議会の米国内海外投資委員会CFIUSの活動強化が必要で敵になる可能性のある勢力が「米国の官民両セクターで不当に技術や技術知識を得る」ことのないようにすべきだ。
  • サイバーセキュリティにはこれまでより高い広範な重点を置き機微情報の窃盗に対抗すべきだ
  • バラク・オバマ大統領から大きく変わりトランプ政権の国家安全保障戦略ではアメリカ国内のエネルギー資源を重要視し気候変動の緩和に向けた各国政策を米国家安全保障への脅威にとらえる。
  • 戦略構想では石炭、石油、天然ガス、原子力を列挙するものの水力、太陽光、風力他のエネルギー源に個別に触れずすべて「再生可能」エネルギーとしている。
  • ドランプ大統領は「クリーンコール」含む化石燃料技術の支持を表明しており、気候変動のパリ協定脱退を発表済みだ。
  • 「米国の指導力が成長を阻む政策課題に対抗するうえで不可欠であり実施されると米経済、エネルギー上の安全保障に悪影響が出る」
  • 「米国は温室効果ガスや従来型の環境汚染低減で引き続き世界の先頭に立ち、米経済の成長拡大を目指しつつ、他国の手本となり、イノベーション、技術、ブレイクスルー、エネルギー効率化の一連の流れを目指し、規制で達成できるとは見ない」
  • 国防総省が世界的な気候変動の影響に懸念している点には触れていない。同省は気候変動を世界情勢の不安定化とともに米軍施設や作戦にも影響を与えるとみている。


柱その三 力により平和を守る

  • 「力により平和を守るべく軍を再建し敵勢力を抑止し必要なら戦闘しても勝利できるようにする。国力が許す限りの手段を活用し一国による世界支配は許さない。米国の国力を再強化し宇宙とサイバー空間もここに含む。同盟国提携国が米国の国力を拡大する効果をもたらす。各国には公平な責任負担を通じ共通の危険に対する防衛を求めていきたい」
  • 「力による平和」はロナルド・レーガン政権が1980年代に有名にしてから共和党でよく使われる表現だ。
  • 三番目の柱では脅威のはロシア、中国、北朝鮮、イラン、戦闘員、国際犯罪組織であるとの説明が再出している。
  • 「中国は米国をインド太平洋地区から放逐しようと狙い、国家主導の経済モデルを広め秩序を自国に都合の良い形で再構築しようとしている」
  • 「ロシアは世界における米国の影響力を弱めようとし、同盟国提携国との関係を遠ざけようともしている」
  • 「イラン政権は世界各地でテロ活動を支援しており、弾道ミサイル開発を進めつつ核兵器開発の再開の可能性があり、実施すれば米国や関係国の脅威となる」
  • 戦略構想では特にイランの動きに触れ、「イスラエルが中東の問題の原因でなない」とし「イスラエルと利害が共通すると気付いた各国が共通脅威に立ち向かっている」と評している。
  • トランプ政権はエルサレムをイスラエル首都と認定したがその前にはこの見方の根拠は確かに存在した。2017年12月18日に米国はその他14カ国が求めた安保理決議声明を拒否権で阻止した。主要同盟国の英国、フランス、ドイツ、日本含む各国は米政府に認定取り消しを求めていた。
  • 「北朝鮮は人間の尊厳など眼中にない独裁体制の支配下にあり25年以上にわたり約束はすべて破り核兵器と弾道ミサイル開発に突き進んでいる」
  • 「聖戦主義テロ戦闘員集団のISISやアルカイダ等は急進イスラム主義で共通項があり米国や関係国に暴力行使を厭わずその支配下にあるものを不幸にしている」
  • こうした脅威に対応すべく国家安全保障戦略では規模と戦力両面で米軍の増強を強く求め、米技術力が高水準なので規模縮小を補えるとの考えを一蹴している。冷戦後にこの考えが米軍立案部門でも強まり「軍事行動の革命」につながり「第三相殺」としても現れていた。
  • 「米国は圧倒的な力を維持すべきであり圧倒規模の軍事力で敵が勝利を収められないようにし未来の米国軍の男女が不利な状況で戦闘に追い込まれないようにすべきだ」
  • 通常兵力、核三本柱の近代化の継続、国防産業基盤の保持と活性化を求めている。
  • 注目すべきは戦略構想で米国による核兵器使用が受け入れられる状況が生まれる事態に暗示している点で今後のペンタゴンにおける核運用体制の見直しに関連しているのだろう。現時点で米国は「核の非先制使用」方針をとらないが極めて特殊な状況以外では核兵器を投入しないと述べてきた。
  • 「核抑止戦略で紛争すべてを食い止められないが、核攻撃、非核兵器による戦略攻撃や大規模通常攻勢の予防に不可欠だ。さらに米核抑止力は30を越える同盟国提携国に提供されており各国の安全を保障しながら各国が核兵器取得に走る必要をなくしている」
  • 宇宙、サイバー空間でも新しい防衛安全保障策を求めている。トランプ政権は有人宇宙活動の再開を強く求め、マイク・ペンス副大統領を中心に国家宇宙協議会を再開させているほか、米軍のサイバー軍団の位置づけも引き上げている。
  • 国家安全保障戦略ではオープンソースから情報取得の必要を重視し、ソーシャルメディア他インターネット情報源の活用を訴えている。
  • すべてを実現するためトランプは支出上限枠を撤廃するよう求めている。上限は2011年予算管理法の結果生まれており、強制削減策として知られる。「今回の戦略構想では国防予算強制削減策から自由になる必要がある。これは撤廃する」
  • ただしこれは議会の責任であり大統領権限は限定され、議会は短期間の「継続対策」で政府機能を維持しながら予算計上に苦闘しているのが現状だ。
  • 2018年度国防予算が2017年11月に通過し、トランプ大統領が12月初めに署名したがトランプが求める軍事拡大に必要な予算増は盛り込まれていない。
  • 力による平和では軍事面のみならず外交にも焦点をあわせるが、軍事協力を重視している。
  • 「外交の枠組みを超えて前方配備を進めるべきで紛争当事国の軍組織との連携もあり得る」
  • 外交部門は経済関係強化を米同盟国提携国と進めることに力点を置くべきだが米国に有利に働く一方で敵対国には経済圧力をかけるべきである。
  • 外交部門は敵意に満ちたプロパガンダや「武器としての情報」を国営メディアや取り巻きが投げかけられる最前線に立ち意図的に虚偽の情報や緊張を高める目的の情報を目的としたソーシャルメディアなどインターネット上の「流し釣り」に注意喚起すべきだ。
  • 中国が人工知能で自国民にインターネット公開情報を操作していること、ロシアによる情報戦、テロ集団がオンラインで人員募集しながら過激思想を広めていることを特記している。
  • 「もっと費用対効果の高い方法で米国の求める国家安全保障と一貫したコンテンツを提供し、評価できる方法を検討したい」

柱その四 米国の影響力を促進する


  • 「米国の影響力を強化する。なぜなら世界が米国の権益を支持し我が国の価値観を反映することで米国は安全となり国際機関での指導力を発揮でき、米国の権益と原則を守れるからだ。米国の示す自由、民主主義、法による支配を堅持せば圧政の下に暮らす者は希望を見いだせる。民間セクター主導による経済成長の促進でわれわれは触媒となり、志を持つ各国が貿易、国防相手国になれるよう助ける。我が国は寛大な国家でありつづけながら他国には責任負担を求めていきたい」
  • 国家安全保障構想では「志を有する提携国に期待を与える」ことを求めているが、開発途上国の諸制度は脆弱で、弱体な国家が総じて不安定さの源泉であり、米国の権益に脅威を生む原因となっている。
  • トランプ政権が示す開発の主体は経済で、民間部門との連携や民間に投資意欲を海外各国のプロジェクトに持たせることだ。ただしそうしたプロジェクトは米国にも恩恵を生む必要がある。
  • 戦略構想では植民時時代の重商主義とは違うとくぎを刺し、双方が恩恵を受けると強調している。
  • 中国の国名こそないが、この構想は中国が得た影響力に対抗する意図が明白で、特にアフリカでの投資と効果を狙うようだ。
  • トランプ政権は多国間フォーラムへの米国民の関心を喚起しており、国際連合、国際通貨基金や世界貿易機関当を想定している。トランプ本人は国際機関を総じて米国や同盟国に不公平な立場をとっているとして非難している。
  • 「自由かつ開かれたインターネット」を世界規模で維持することを求めているが、連邦通信委員会が最近になりいわゆる「ネット中立性」廃棄を決めたことを批判する向きはトランプ政権にはこの方針の国内適用の意向がないと見る。
  • 最後に米国の価値観の擁護を求めている。政治と信仰の自由であり、世界各地での食料共有の保証であり、医療ケアの実施だ。同性愛者や性不統一者への言及はなかった。