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2017年12月24日日曜日
なぜ米韓で意見が食い違うのか。韓国が主導権を奪回すればどうなるのか
原著者は大学の先生で政策立案者ではないのすが、こんなこと言われて韓国の人たちはどう思うでしょうね。 AllianceではなくPartnershipのことばをつかいアメリカとして韓国を価値共有する相手とは見ていないようですね。韓国があちら側に行っても怖くないということでしょうか。米韓で意見が全部同じである必要はないのですが、この通りになれば韓国は日米とは一線を画しチームにはなれないですね。もちろん中国にとっては好都合なのでしょうが。文大統領については親北派と日本は見ているので発言にいちいち目くじらを立てかねないのですが、構想力はあるようです。ただし方向性が間違っていると思いますが。ともかく今年は開戦を避けられそうですね。
5 Things South Korea Can Do to Wrest Control from Washington
ワシントンから主導権をねじり取るため韓国にできる5つのこと
朝鮮半島の地図を見れば米韓両国が予防戦争を巡り意見が異なる理由がわかる
韓国の文在寅大統領には会ったことがなく、その機会もないだろう。いつか機会があれば握手して調子のいいことだけお座なりにいうのだろう。大統領から外交政策の助言を求められることもないはずだ。韓国には外交専門家もたくさんおり、大統領はそちらの意見を求めるはずだ。最終的に同国の政策は自国で決めるべきだ。
朝鮮半島の危機が過熱する中で韓国内の友人や関係者へ会話を試みたところたくさんのことが分かったが、韓国政府がとるべき対応については自分の意見は述べないようにした。また言うべきでもない。韓国側は北朝鮮が核兵器を入手することで生まれる意味を筆者より詳しく理解しており、頼まれてもいないのに出しゃばるべきでもない。だが筆者の話し相手はそうやすやすと筆者を解放してくれず、「こちらは評価結果を見せたのだからわが方の状況に何をしてくれるのか正確に教えてほしい」と言われた。
そこで以下対応した:
まず、韓国には独自の戦略展望が必要であり、自国の戦略的意味付けに対応しても米国の希望をそのまま実現するものにすべきではない。以下詳しく解説しよう。韓国は大きな進歩を1950年代以降見せている。貧しい国だったが、今や豊かな社会になった。国民一人当たり所得は4万ドル近く、ニュージーランド、スペイン、オランダを抜き、日本・英国・フランスに近づいている。GDP1.93兆ドルの韓国経済は世界第14位でカナダを上回る。輸出総額は5120億ドルで世界五位で中国、米国、ドイツ、日本の下だ。
自動車、船舶、コンピューター、通信、高性能電子製品は手は原子力発電所まで韓国企業は西側市場で地歩を築いた。ストックホルム平和研究所によれば韓国の国防支出は372.7億ドル(2016年)で世界8位だった。ちなみに北朝鮮の国民総所得が327.6億ドルで韓国国防費より小さい。南北朝鮮の軍事バランスは複雑な様相を呈しており、開戦となればあまりにも不明な要素が多いのはクラウゼビッツが「摩擦」要因と呼んだものと同じだ。配備した兵器数で北が数的に優勢だと誤解しやすいが韓国の近代的で高性能な軍事力が北の旧式兵力に圧倒されるはずがない。米国の支援がなければ韓国が北に蹂躙されるとよく言われることへも疑問符がつく。
これだけ戦略的重みがあるのに安全保障となると韓国は米依存のままだ。国連軍の仕組みが朝鮮戦争時にできて、合同軍司令部が1978年に定まり韓国軍は米将官の指揮下におかれた。1994年に変更され韓国は平時の統率権を得た。ただし有事に指揮権は米国に戻る。
韓国はこの取り決めを廃止すべきだ。韓国は積極的に動いていないが、軍の統帥権は常時握るべきだ。米国の防衛姿勢が弱まることを恐れるあまり躊躇すべきではない。米軍が韓国に半世紀も駐留して(現在は28,500名)いるのは慈善目的ではない。歴代の米政権が一定の軍事プレゼンスが北東アジアにあることで国益に資すると判断しているからだ。この見方は変わることなく、特に中国軍事力の台頭を意識する必要があるが韓国が全部隊の統帥権を掌握しても韓国は米国との軍事協力体制を終わらせる必要はない。むしろ韓国は提携関係にもっと多く関与することになる。そうなると韓国は戦略思考で一層独自に考えざるを得なくなる。文大統領は戦時の軍掌握を目指しているが、不運な結末を迎えた朴槿恵前大統領も同様だった。そこでこの変更は十分可能と思われる。むしろ遅きに失しているのだ。
二番目に、韓国政府は米国が北朝鮮の核戦力の完全配備を防ぐ目的で攻撃を始めた場合には支援しないと疑う余地なく明確にすべきだ。北朝鮮の核戦力開発には解決すべき技術課題がある。弾頭の小型化や大気圏再突入時の高温と振動に耐える構造設計等だ。予防戦争は韓国に破滅的結果をもたらすが北にも同様で、その評価は各方面が分析済みだ。外科手術的予防攻撃はファンタジーの世界と言ってよく、韓国は自国の将来を魔法的予想に賭けるべきではないだろう。
韓国はさらに先を目指すべきだ。自国領土、領海、領空を予防戦争の目的に使わせるべきではない。また米国との軍事演習も緊張高まる時期には再考してよい。北朝鮮は演習に怯えておらず、ましてや核やミサイルの進展を遅らせる効果は皆無だ。演習や軍事力行使は緊張を高める効果を生むだけだ。偶発事故や誤解の危険や技術誤作動が引き金となり危機的状況が戦争に発展しかねない。
朝鮮半島の地図を見ればワシントンとソウルで予防戦争を巡り見解が違う理由が分かる。ホワイトハウスの主が朝鮮半島情勢に驚くほど無知で、配下の国務長官の外交努力を無駄にし、いつの日か金正恩に会ってもよいと言いながら次には北朝鮮を「完全破壊する」と口にする大統領になった今は特に明白だ。ツイッター発言が一定していないことも韓国が予防戦争に頑として反対すべき理由になり、韓国はイベントの連続に流されるべきではない。
三番目に韓国は核兵器を容認しない政策を見直すべきだ。韓国も核兵器開発を1970年代に検討したが、機密解除となった米政府公文書によれば米国の圧力に屈したとある。同国が核不拡散条約に調印したのは1968年で批准は1975年だ。2004年に国際原子力エネルギー機関の追加議定書の実施に合意している。これら全部を不履行したら大変なことになる。だが戦略事情は変化している。韓国が北朝鮮の非核化をどれだけ熱望しても結果はひとつしかない。不可能だ。北朝鮮は貧しく友邦国もなく恐れ(今や中国に対しても)猜疑心を強めており、核兵器を米国からの攻撃の抑止手段と見ている。国営メディアや政府関係者は繰り返しムアマル・カダフィやサダム・フセインも核兵器さえ保有していればまだ生きているはずと主張している。金正恩にとって実戦投入可能な核兵器開発は最高優先事項だ。米軍の力の誇示、経済制裁、中国やロシアの舞台裏外交、トランプの脅かしや癇癪があっても金正恩の心は揺るがない。次のテストもすぐにでも行われると予測すべきだ。
北朝鮮核ミサイルで米本土を攻撃可能となれば米国に北朝鮮への報復ミサイルが何発あっても関係なくなる。韓国にとっても北朝鮮が実戦核戦力を整備すればゲームは戻れない道に入る。拡大核抑止力の概念も無用の存在になる。米国はソウルを守るためロサンジェルスを犠牲にできない。もちろん北朝鮮の核が本当に攻撃能力があるのかは議論の余地があるし、米国あるいは韓国への核攻撃が圧倒的な米反攻につながるかでも議論はあるだろうし、平壌も他の核保有国同様に非核保有国を脅かすのに核兵器は使えないことに気付くかもしれない。ソウルが平壌の核兵器に悩まされなくなれば韓国内の軍指導者や民間戦略専門家を納得させられなくなるだろう。
韓国が非核化政策を変換すれば大きな影響が生まれ、日本、中国、米国からの抗議を生み韓国に現状変更しないように圧力がかかるはずだ。政策変更は国内でも激しい論議を呼び、実際に韓国では核兵器保有の選択について議論がこれまでより強くなっているし、最近の世論調査では韓国民の60パーセントが核戦力整備に賛成している。文大統領はこの道には進まないと発言しているが、韓国は拡大抑止力を信頼しないのであれば核の選択肢を排除すべきでない。
四番目に韓国は長期戦略で中国と関係強化すべきだ。南北を比較すれば中国には韓国の重要性の方が北朝鮮よりはるかに高く、中国と韓国の関係は日中間のような過去の負の歴史はない。中国が韓国と一層建設的な関係になればソウルは北京指導部が苛ついても平壌に対する立場が強まる。ソウルの新中国政策の効果は大きいはずだ。地域内の力のバランスにつながるためだ。中国はこの二十年間で軍事力を増強し米国が有事に北太平洋で兵力投射すれば相当の対価を支払わせる体制を整備している。このため中国が強力になれば韓国は敵対関係に巻き込まれるリスクを覚悟することになる。もうアメリカの保護は期待できない。米国と縁を切れば韓国には愚かな選択となるが、新しい力の地図を有利に使う立場になれる。このためには思考を塹壕状態から脱する必要がある。
短期的には韓国は米THAADにどこまでの防衛を期待するのかを決めつつ、対中関係の見返りに同装備の展開を取りやめるべきかも決心する必要がある。北朝鮮ミサイル攻撃に同装備がどこまで有効なのか、韓国が必要とするソウル首都圏の防衛に役立つのかを見極めることだ。同装備は迎撃ミサイル48発と高性能レーダーの攻勢で韓国南部星州に展開している。ミサイルに詳しいテオドール・パストル他がTHAADの実効性に疑問を呈しており、ソウルには参考になるだろう。
五番目にソウルは半島での戦争リスクを減らす案を支援し、東北アジアの経済開発を促進する構想を推進し各国の経済自律を促し北朝鮮も参加させるべきだ。文大統領が発表したばかりの「平和と繁栄の半島」構想にはこの方向に通じるものがある。構想には各種の事業があり、韓国が北朝鮮の崩壊を望まず計画もせず再統一はあくまでも協力協調で進めると確認すること、「軍事信頼醸成」に向けた手順の実施、各国の投資で「三大経済ベルト地方」を創設し朝鮮半島、中国、ロシアをむすぶことが含まれる。構想が一般的な内容なのは認めなくてはいけないし平壌を説得して核兵器開発を中止させるのが非現実的なのは確かだが、文大統領は賛辞を受けてしかるべきだ。韓国独自で構想をまとめたからだ。さらにトランプの目指す方向とは違う点が新鮮に見える。トランプは脅迫を主にし戦争も辞さない姿勢で、中国も米国からのご褒美で非核化した北朝鮮の出現を期待しているように見える。
以上5つの視点では韓国が自ら選択し進路を独自に決める前提で、同国が達成した経済軍事力をその背景とする。出発点としてソウルはワシントンに対して韓国の国益と米国の国益がどこが同じでどこが異なるのか明確に示し、「レッドライン」はどこなのかも示し、大胆な構想で自国でしっかり運営していける自信も示し、もはや乗せられるだけの存在ではないと主張したらどうか。これだけは明確だ。ソウルは今まで通りの運営はもうできない。あまりにも多くの状況が変化している。さらに多くの変化がこれからやってくるのだ。■
Rajan Menon is an Anne and Bernard Spitzer Professor of International Relations at the Powell School, City College of New York/City University of New York. He is also a senior research scholar at Columbia University’s Saltzman Institute of War and Peace Studies, and author of The Conceit of Humanitarian Intervention.
Image: U.S. President Donald Trump and South Korea's President Moon Jae-in hold a joint news conference at the Blue House in Seoul, South Korea November 7, 2017. Reuters/Jonathan Ernst
★★ドイツだけではなかった。英海軍も深刻な低稼働率に直面
心配になるニュースで、英独両国が負担すべき努力を怠ったためこうなったのか、産業構造に問題があるのか、政治家が悪いのかわかりませんが昨日今日始まった問題ではないようです。NATOが海軍力で欠陥を抱えたままだと米海軍の負担が増えて太平洋のバランスにも影響が出かねません。解決策としてNATOへの日本の加盟、あるいはNATOを拡大した「有志連合」として太平洋、大西洋をカバーする超同盟の樹立はいかがでしょう。
Almost All of the UK's Surface Combatants Are in Port While Germany Has No Working Subs
英水上艦ほぼ全隻が出動不能状態、ドイツには稼働潜水艦皆無
These already worrying developments reflect poor readiness overall and other larger issues within both of these NATO navies. 心配になる事態は両国海軍の即応態勢以外にもっと大きな問題がある証拠
英独両国の海軍部隊の即応態勢がともにかつてない低さになっており、英海軍では駆逐艦フリゲート艦のほぼ全数が港内にとどまり、ドイツ潜水艦部隊では一隻も出動できない状態だ。両国で現状ではヨーロッパ内外の危険に対応できないとの主張に勢いがついている。
2017年12月20日現在で英海軍23型フリゲート13隻で稼働可能艦は一隻だけで、45型駆逐艦6隻は全て港内に留まっている。2か月前にはドイツ海軍のU-35潜水艦が事故で損傷し、212A型潜水艦6隻全部が港内で修理を待つ状況にある。
英海軍は「世界規模で作戦投入されクリスマス、新年関係なく国益を防護する」状態を保っていると報道官がテレグラフ紙に語っている。「水上艦潜水艦が13隻本国の内外に展開中で核抑止力も含まれる」
展開中の13隻のうち一隻は大型水上戦闘艦で深刻な問題に直面しており、ほかにも即応態勢や隊員の士気でも問題がある。英国防省が言っていた「英海軍の年」が大いなる失望の年になってしまった格好だ。
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45型駆逐艦HMSダイアモンドがポーツマス軍港で霧の中に佇む
2017年6月、HMSクイーン・エリザベスが英海軍初の超大型空母かつ建艦史上最大の艦として初の海上公試に臨んだ。2017年12月はじめにエリザベス二世女王自身が臨席し就役した。艦名は16世紀の初代エリザベス女王にちなみ、同女王がスペイン海軍を撃破した当時の英海軍に命令を与えた。
「本日は英海軍の重要な歴史を刻む日で将来の旗艦が女王陛下の艦隊に編入される」と英国防相ギャビン・ウィリアムソン Gavin Williamson が12月7日の就役式典であいさつした。「女王ご臨席のもと英海軍は多忙な年となり、二番艦HMSプリンスオブウェールズの命名、新型26型フリゲートの初号艦の建造も始まった」
ウィリアムソン国防相は述べていないがクイーンエリザベスの艦載機F-35Bの作戦機材はまだなく、艦隊航空部隊は運用機を確保できないままプリンスオブウェールズも就役し空母打撃任務につくことになる。また国防省は揚陸強襲艦二隻の廃止を検討中でその他艦艇も削減して空母運用経費をねん出する目論見だ。英海軍のヴァンガード級弾道ミサイル潜水艦では技術的な問題こそないが乗員の士気が低下している。
そのクイーンエリザベスのプロペラシャフトから浸水する事件が12月に発生したのは公試中だった。浸水は機関室にも及んだ。こうした事件は決して特異な出来事ではなく、各国海軍で建造したての艦艇は各種公試に出してから正式に就役させているとウィリアムソン大臣はBBC報道へ反応した。「これで同艦が海上に出ることができなくなるわけではないし、公試にも影響はない」と海軍報道部もコメントを出した。
だが批判勢力はこの機会をとらえ建造費用40億ドルの同艦が艦載機の有無と関係なく実際の任務に投入不可能な証拠だと攻撃をしかけ、政府は事実を隠し問題をうやむやにしようとしていると主張している。
艦の整備問題とともに乗員の離隊が増えて英海軍の精鋭水上艦が港内に留まっていることから海軍は作戦を遂行できるのか、新型空母を活用できるのかとの疑問が生まれている。23型、45型が全艦任務実施状態に復帰しても英海軍の駆逐艦フリゲート艦は不足して護衛任務と並行して別作戦を行うことができなくなりそうだ。
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23型エスコート二隻を護衛に航行するHMSクイーンエリザベス
ウィリアムソン国防相が言及したように旧式23型の後継艦となる26型フリゲートで初号艦の建造が2017年7月に始まった。シティ級と呼ばれる同型の最初の三隻が艦隊編入されるのは2020年代中ごろ以降と国防省は見ているが8号艦と最終号艦は未定だ。
現時点で23型と一対一の交換は想定しておらず、英国は戦力が劣る31型汎用フリゲート5隻の去就の決定を迫られる。
英国のEU離脱にともなう予算削減と経済状況の不確定さのため事態はさらに混乱している。2017年10月にBAEシステムズはクイーンエリザベス級空母の建造にあたる共同事業体の出資社ならびに26型建造所も運用する企業として英国内で2千名を解雇すると発表し、うち英海軍艦艇の運用支援要員数百名が含まれている。
このため英国防省がNATO他ヨーロッパ内同盟国に戦力不足で支援を求めてくる可能性がある。艦艇運用も他国と協調して不足分を補いたいとする。英国は米国と米海兵隊F-35Bをクイーンエリザベスで運用して艦隊航空部隊の不足を補う合意をしているが運用開始は未定だ。
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海上公試中のクイーンエリザベス、2017年6月。
ドイツ海軍の状況にも深刻な様子が見える。212A型潜水艦から海軍全体に広がる問題が見える。
同級は高性能かつ極めて静粛なディーゼル電気推進艦で大気非依存型機関に水素燃料電池を使い数週間の潜航が可能だ。潜水艦はNATOが想定するバルト海でのロシアとの軍事対決時に中核の役割を期待されている。
残念なことに同級潜水艦は保守管理上の悪夢で故障連続で修理も遅れている。
冷戦終結時にドイツ政府は東ドイツ復興に注力する一方でヨーロッパでの安全保障の懸念は大幅に減ったと見た。このため国防予算を大幅減額とし装備も削減した。ドイツ海軍は新型212A型潜水艦の予備部品を発注するのみだった。
BUNDESWEHR
ドイツ海軍の 212A 型潜水艦 U-32.
ドイツ海軍は補修部品を毎回特注扱いで確保しており非常に高額かつ時間も取られている。同時にドイツの造船業コンソーシアムには潜水艦技術を発展させる余地が減り、サプライチェーンも不活性で技能労働力も衰弱している。
U-35(212A型5番艦)が就役した2015年にはスクリュー音が大きく行動が制約される事態が生まれたとダーシュピーゲルが報じた。レーダーや通信装備も故障したうえに事故で艦の行動がさらに妨げられた。
匿名ドイツ海軍関係者がダーシュピーゲルに語ったのはU-31でも同じ問題が先に見つかり、主建造業者のティッセンクルップは補修策をなんら行なわず翌年に就役したU-36は姉妹艦運用のため部品取りに使われたという。
予算と補給面の制約でドイツが6隻すべてをいつ運用可能になるのか見えてこない。ドイツの造船所では212A型潜水艦すべてに必要な補修を同時に行えず、修理はさらに時間がかかる。
ドイツ海軍はU-36は2018年5月までに作戦復帰させたいとし、U-31は2014年から係留されたままで大修理がやっと完了したが、公試が残り、復帰は2018年中とする。
U-34の整備は2018年1月に開始し、U-33は翌月から作業を開始する。ただしこの二艦がいつ現役復帰できるか未定で、U-32は施設の空きを待つ状況にある。U-35はノルウェー沖で岩礁に接触し潜航舵を大きく損傷しこれも修理の順番を待っている。
各艦がすべて完全に作動してもドイツ海軍の訓練済み要員は三隻分しかなく、募集目標の達成が困難な状況が続いている。潜水艦部隊の即応態勢はさらに下がりそうだ。
BJOERTVEDT VIA WIKIMEDIA
212A型潜水艦二隻がキール港のHowaldtswerke-Deutsche Werft 造船所に休んでいる。2013年撮影。
ドイツは2014年以来国防予算を確実に増やしてきた。当初はロシアがクリミヤを併合した同年のウクライナ危機が契機だったが、ロシアとNATOの緊張に非同盟諸国のスウェーデンやフィンランドも防衛費増額で応じている。
ドイツ首相アンゲラ・メルケルは2016年に国防予算を大きく増やすと約束したが、バラク・オバマ大統領の圧力を理由にあげていた。同時にドナルド・トランプ大統領候補が選挙戦でNATO加盟国の集団安全保障への分担水準が低いことを論点にしていた。トランプは当選し、就任後もヨーロッパ同盟各国へ防衛支出増を求めている。
ドイツでは直近の総選挙で多数党の中道キリスト教民主党(CDU)とキリスト教社会連盟(CSU)が連立政権作りに取り組んだままだ。長年の提携先の左翼寄り社会民主党(SPD)は反対党になってた。
ドイツ外相シグマル・ガブリエル Sigmar Gabriel(SPD)は2017年早々に国防予算の増加分では人道援助を中心にすべきと発言したため、そもそもドイツ軍の世界での役割は何かとの議論を呼んだ。このことも国防装備品の調達に影を落としている。
そこにドイツ海軍の最新水上戦闘艦バーデン・ヴュルテンベルグ級「フリゲート」が登場する。同艦は他国海軍の駆逐艦並みの排水量があるが火力は劣り、主任務は低脅威の海賊対策や人道救難活動しか思い当たらない。
BUNDESWEHR
FRG バーデン・ヴュルテンベルグ
だがなんといっても212A型潜水艦の問題はドイツ造船能力が不足していることを如実に示している。同様に運用科員の不足も頭が痛い。
英海軍、独海軍の状況はともに心配にさせるものがあるがロシアや中国の活動が全世界に広がりつつある中で高まっている緊張を鑑みると深刻さが分かる。バルト海、北海、黒海、地中海の各地でNATOが対処できるか不明だ。
各海域でロシア軍が着々と勢力を増強しており、統合防空体制や沿岸配備の対艦ミサイル、対潜哨戒活動の強化により危機発生時にアクセスが制限されかねない。ロシアは通信や航行の妨害能力も強化している。
両国それぞれ、あるいはNATOとして海軍兵力を投射する能力が必要な時に得られなくなりそうだ。英海軍の45型駆逐艦HMSダイアモンドはペルシア湾をパトロール中に2017年11月機関故障で修理のため帰国したが、代わりとなる英艦艇は手当できていない。
ドイツ、英国ともに状況の改善には時間がかかるが、現状はますます維持できなくなる方向に進んでいるのは明らかで両国海軍は優先順位の付け方を厳しく再検討し近い将来も戦力として意味がある形に維持する必要がある。■
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2017年12月23日土曜日
ボーイングがエンブラエル買収を交渉中、実現すると軍用機分野でどんな影響が生まれるのか
年末になり大ニュースがとびこんできました。ボーイングがエンブラエルの吸収合併をねらっているというもの。狙いは民間機市場でエアバスに対抗するものですが、エンブラエルも軍用機を製造しているため別の影響も発生しそうです。ブラジル政府が合併の可否を握っているようなので要注意ですね。
Here’s how a Boeing takeover of Embraer could play out
ボーイングのボンバルディア買収で生まれる効果とは
エンブラエルKC-390のロールアウト、2014年10月21日。(Nelson Almeida/AFP via Getty Images)
ボーイングがブラジルの航空宇宙企業エンブラエル買収に乗り出した。両社が12月21日に確認した。
実現すればボーイングは新規にスーパートゥカーノ、KC-390輸送機など軍用機数種類を入手することになる。アナリストにはボーイングの軍用機事業でメリットを疑う向きもあるが製品構成に意外な効果が生まれそうだ。
両社はエンブラエルの株式評価額37億ドルに上乗せする形で交渉中とウォールストリートジャーナルが12月21日に特報で伝えており、交渉に詳しい筋の話としてブラジル政府の承認を待つ段階だという。
ボーイング、エンブラエル両社は「将来の合同に向け協議中だが内容は検討段階」とWSJ記事の後で発表。「ブラジル政府による承認次第であり、両社それぞれの役員会及びエンブラエル株主の承認が必要」
承認は簡単に下りないと見られる。ブラジル大統領ミシェル・テメルMichel Temerは本件を知ってエンブラエルがボーイングの完全支配に入るのは承認できないと語った。
成立すればエンブラエルへの効果の方が高くなりそうなのはボーイングの世界規模の営業力が活用できるようになるため、とブライオン・キャラン Byron Callan(キャピタルアルファパートナーズ)は見るが、ボーイングにも十分うまみがある。「製品群が相当拡大し他社にない内容がうまれます」
テメル大統領が心変わりしてもボーイングは金額で合意できなければ交渉を降りることもありうるとリチャード・アボウラフィア Richard Aboulafia(Teal グループ)が見ている。
Embraer, Boeing Hope KC-390 Will Have Long Payout
「国防分野で一番興味を惹かれるのはボーイングがKC-390軍用輸送機を米国内外で販売することです。その意義は大きい」(アボウラフィア)
エンブラエルはKC-390のローンチカスタマーにブラジルを確保したがその後の買い手がない。ボーイングとエンブラエルは2016年に共同で同機の海外販売で合意形成したが、ボーイングは表に立っていない。
「ボーイングは同機を真剣に米国内で販売するつもりがあるのだろうか」とキャランはいぶかしる。「ボーイングの世界的営業力を考えれば世界を舞台にC-130Jへ十分競争できるのではないか」
KC-390の米軍採用は簡単ではない。米軍がロッキード・マーティンC-130ハーキュリーズを長年調達していることもあり、特殊作戦軍団に採用されれば道が開けるとアボウラフィアは見る。「大きなお墨付きになる」
企業買収が成功すればKC-390利用者はボーイングの世界規模の保守管理機能が利用可能となりこれも大きなセールスポイントになるとアボウラフィアは指摘。
Embraer expecting first international KC-390 sale in 2017
ただしアボウラフィア、キャランともにエンブラエルの他の軍用機にチャンスがあるかで見方が違う。
「ブラジルの国防需要を考えるとボーイングの狙いは戦闘機だろう」とアボウラフィアは見ており、「しかしブラジルはスーパーホーネットは断りグリペンに注目している」
エンブラエルはブラジルでSaabグリペンE戦闘機用最終組立ラインを立ち上げようとしている。
エンブラエルはSaabとE-99他ビジネスジェット機に搭載用の早期警戒指揮統制システム エリアイErieyeでも提携しておりボーイングを交えれば可能性がさらに開ける。ボーイングはSaabと米空軍向けT-X練習機事業でも提携している。
「点を結べば別の可能性が生まれませんか。ボーイングにSaabを買収するつもりがあるか不明ですが、Saabへ出資するとどうなりますか。ブラジルにグリペンEの組立ラインを建設してその先はどうなりますか」とキャランは言う。
一方でエンブラエルのスーパートゥカーノにも新しい可能性が生まれそうだ。米空軍が低コスト攻撃機OA-Xの購入を検討中とキャランは指摘する。
スーパートゥカーノはA-29として米国内で営業展開中でエンブラエルとシエラネヴァダコーポレーションとの提携で8月にはホローマン空軍基地(ニューメキシコ)で各種実証を行っている。
A-29はOA-X選定で採用が有望視されており、すでに米空軍はアフガニスタンやレバノンでの運用に採用している。
アボウラフィアは同機が数百機販売されてもボーイングの最終利益への影響はわずかだと指摘し「ボーイングがどうしてこの機体にかかわるのか理解に苦しむ」とする。
合意形成になればこの数か月で二回目のボーイングによる大型買収となる。10月にオーロラフライトサイエンシズ買収を発表している。
エンブラエル買収はボーイングに民間機市場の最大のライバルたるエアバスへ対抗策となる。エアバスはボンバルディアCシリーズで提携関係を最近発表したばかりだ。■
★日曜特集:スターウォーズ映画と現実の航空戦の関係
The Real-World Air Combat Origins of “Star Wars:
The Last Jedi” 「スターウォーズ/最後のジェダイ」は
現実の航空戦から着想を得ている
Dec 20 2017 - https://theaviationist.com/2017/12/20/the-real-world-air-combat-origins-of-star-wars-the-
事実は小説より奇なり。「最後のジェダイ」の着想には驚かされる。
ご注意 以下には「スターウォーズ 最後のジェダイ」のネタバレが含まれています。映画鑑賞後に読まれることをお勧めします。
敵の巨大要塞装備に向かう主人公パイロットに攻撃チャンスは一回しかない。勝利すれば同胞の命が助かるが失敗すれば惑星全体の破壊につながる。一か八かでありこの攻撃に人類の存続がかかる。
これはライアン・ジョンソンが脚本監督した「スターウォーズ/最後のジェダイ」の一シーンではない。1981年6月7日に実際にあったイスラエルによるオペラ作戦でイラク・オシラクの原子炉と核兵器製造能力を攻撃した事例だ。
新作ハリウッド大作でもこれまでのスターウォーズシリーズと同様に実際の空爆作戦から着想を得ており、宇宙空間での戦いに史実が大きな影響を与えている。また空戦史がお好きなら、「スターウォーズ/最後のジェダイ」のシーンからどこかでみたことがあるとわかるはずだ。
ライアン・ジョンソン監督の「最後のジェダイ」の視覚効果には古典的な航空戦の原則が見られる。攻撃側はおとりミッションを実施し、主力の第二波攻撃の発進前に時間を稼ぐ。この戦術は以前から使われている。
現実世界ではヴィエトナムとイラクでの「ワイルド・ウィーゼル」SAM制圧任務を思い起こすだろう。また1967年1月2日に北ヴィエトナムでのUSAFのロビン・オルズ大佐の「ボロ作戦」が想起される。大佐のF-4ファントム編隊は護衛戦闘機なしの爆撃機のふりをして北ヴィエトナム上空でおとりとなりMiG-21戦闘機を出撃させ罠にかけた。
「最後のジェダイ」では現実世界の戦闘機パイロット装備に着想を得たようだ (Photo: Lucasfilm)
「最後のジェダイ」に見られる戦術でも敵(「ファースト・オーダー」)の防空装備全部を初回のおとり攻撃に振り向けさせセンサーの位置を割り出しながら弾薬を使い果たせてから大規模第二波攻撃隊を発進させるシーンがある。「最後のジェダイ」の冒頭ではXウィング戦闘機の一機が巨大宇宙戦闘艦を引き付けながら進行を遅らせてから攻撃を開始し防御兵力を制圧して攻撃本隊の侵入経路を開いた。
「最後のジェダイ」の視覚効果には各時代の実際の航空戦や航空映画から着想を得たものが見られる。ルーク・スカイウォーカーがデススターを攻撃した第一作のシーンは部分的に「633爆撃隊」のモスキート機映画にヒントを得ている。ミレニアムファルコンのコックピットは第二次大戦時のB-29爆撃機が原型だ。
「最後のジェダイ」の冒頭シーンは第二次大戦時の大型爆撃機のこうした写真がヒントか。 (Photo: Wikipedia)
噂ではジョージ・ルーカスは実際の訓練施設を低空飛行して着想を得たといわれ、ウェールズのマッハループやネリス訓練場そばのデスバレーにあるR-2508施設(現在は軍が「ジェダイ・トランジション」とか「スターウオーズ・キャニオン」と呼ぶ)を見たといわれる。
ライアン・ジョンソンは空戦からヒントを得ており、「最後のジェダイ」では物理法則や現実を自由に制御している。重力は映画中で都合よく使われており、無重力の宇宙で自由落下爆弾が機能し宇宙機が上下に動いているがそもそも宇宙空間には方向はなく、戦闘員は無大気の宇宙から与圧宇宙機内に自由に移動している。
「最後のジェダイ」の登場人物の一部には再訓練が必要だし、司令官の命令を自分勝手に選択して実施しているし、完全に無視することさえある。現実世界ではこのような不服従があれば「トップガン」の主人公のようにお目玉を食らうのは必至だ。現実遊離の例はまだあり、銃のように見える武器が長距離スタンドオフ兵器として使われている。だが厳格かつ正確無比な現実にもとづく筋書きと想像の世界は別物だ。例えばトム・クランシー作品では現実世界より厳しい形で終わることが多い。
ライアン・ジョンソンはF-22ラプターやスホイSu-35の映像をたくさん観たにちがいない。「最後のジェダイ」冒頭の宇宙戦シーンでポー・ダメロン操縦するXウィングがスホイのような水平テールスライドでファーストオーダー戦闘機の攻撃を避けている。
Xウィング戦闘機のコックピットに新技術の高性能兵装画面やサイドスティックと旧式技術のトグルスイッチを使っているのはF-35のタッチスクリーンより劇的な視覚効果があるとみたためだろう。
F-35で高性能状況認識とネットワーク機能が搭載されているがXウィングパイロットのポー・ダメロン機に同乗するBB-8ドロイドが実はF-35の高性能エイビオニクスの象徴で多機能高性能データリンク(MADL)、アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダー、分散開口システム(DAS)そのものだ。各システムでパイロットは戦術環境や機体状況を把握しながらコマンドシステム上で交信やシステム作動が円滑に進む。BB-8ドロイドではほとんどすべてを音声認識で行っている。
また「最後のジェダイ」冒頭の戦闘シーンで登場する抵抗軍の爆撃機大編隊には第二次大戦時のドイツ、日本空爆時の爆撃機編隊の記録画像を思い出させるものがある。映画では無防備の爆撃機編隊をXウィング戦闘機が援護するが大損害を受ける。爆撃機にボール状銃座が機体下についているのはB-17空の要塞のようだ。
ボール銃座の射手ペイジ・ティコが「最後のジェダイ」で最初に犠牲的な最期を遂げる。ペイジは自らの生命を犠牲にして最後の瞬間に一機だけ残った爆撃機からファースト・オーダー宇宙機に爆弾投下する。ペイジの姉妹ローズ・ティコがその後はヒーローとして描かれる。
遠隔操作銃座はB-29スーパーフォートレスがヒントだろう(Photo: Lucasfilm)
ファースト・オーダーの巨大戦艦マタドール-IV級にもどこかで見た感がある。「最後のジェダイ」美術監督ケビン・ジェンキンスは巨大戦艦の着想をあちこちから得たが、第二次大戦の日本海軍戦艦大和もその一つと明かしている。巨大戦艦には大型軌道砲二門があり、その他遠隔操作対空砲が24門つく。全長7,669メートルと巨大な艦体だ。
巨大宇宙艦は日本の大和からヒントを得ている(Photo: Lucasfilm)
フィクションの傑作はおしなべて現実世界から着想を得ている。「スターウォーズ/最後のジェダイ」では現実の航空戦の技術、戦術、戦史から観客に興奮感動を与える映像を作った。こうしてみるとこの作品はスターウォーズ各作品含め、過去現在未来の航空戦の叙情詩と言ってよく、現実政界で未来のジェダイ戦士を鼓舞させてくれる。■
Top image credit: Lucasfilm.
スターウォーズ第一作のデススター攻撃は「暁の出撃」Dambustersが元ネタと言われていますが....
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