年末になり大ニュースがとびこんできました。ボーイングがエンブラエルの吸収合併をねらっているというもの。狙いは民間機市場でエアバスに対抗するものですが、エンブラエルも軍用機を製造しているため別の影響も発生しそうです。ブラジル政府が合併の可否を握っているようなので要注意ですね。
Here’s how a Boeing takeover of Embraer could play out
ボーイングのボンバルディア買収で生まれる効果とは
エンブラエルKC-390のロールアウト、2014年10月21日。(Nelson Almeida/AFP via Getty Images)
ボーイングがブラジルの航空宇宙企業エンブラエル買収に乗り出した。両社が12月21日に確認した。
実現すればボーイングは新規にスーパートゥカーノ、KC-390輸送機など軍用機数種類を入手することになる。アナリストにはボーイングの軍用機事業でメリットを疑う向きもあるが製品構成に意外な効果が生まれそうだ。
両社はエンブラエルの株式評価額37億ドルに上乗せする形で交渉中とウォールストリートジャーナルが12月21日に特報で伝えており、交渉に詳しい筋の話としてブラジル政府の承認を待つ段階だという。
ボーイング、エンブラエル両社は「将来の合同に向け協議中だが内容は検討段階」とWSJ記事の後で発表。「ブラジル政府による承認次第であり、両社それぞれの役員会及びエンブラエル株主の承認が必要」
承認は簡単に下りないと見られる。ブラジル大統領ミシェル・テメルMichel Temerは本件を知ってエンブラエルがボーイングの完全支配に入るのは承認できないと語った。
成立すればエンブラエルへの効果の方が高くなりそうなのはボーイングの世界規模の営業力が活用できるようになるため、とブライオン・キャラン Byron Callan(キャピタルアルファパートナーズ)は見るが、ボーイングにも十分うまみがある。「製品群が相当拡大し他社にない内容がうまれます」
テメル大統領が心変わりしてもボーイングは金額で合意できなければ交渉を降りることもありうるとリチャード・アボウラフィア Richard Aboulafia(Teal グループ)が見ている。
Embraer, Boeing Hope KC-390 Will Have Long Payout
「国防分野で一番興味を惹かれるのはボーイングがKC-390軍用輸送機を米国内外で販売することです。その意義は大きい」(アボウラフィア)
エンブラエルはKC-390のローンチカスタマーにブラジルを確保したがその後の買い手がない。ボーイングとエンブラエルは2016年に共同で同機の海外販売で合意形成したが、ボーイングは表に立っていない。
「ボーイングは同機を真剣に米国内で販売するつもりがあるのだろうか」とキャランはいぶかしる。「ボーイングの世界的営業力を考えれば世界を舞台にC-130Jへ十分競争できるのではないか」
KC-390の米軍採用は簡単ではない。米軍がロッキード・マーティンC-130ハーキュリーズを長年調達していることもあり、特殊作戦軍団に採用されれば道が開けるとアボウラフィアは見る。「大きなお墨付きになる」
企業買収が成功すればKC-390利用者はボーイングの世界規模の保守管理機能が利用可能となりこれも大きなセールスポイントになるとアボウラフィアは指摘。
Embraer expecting first international KC-390 sale in 2017
ただしアボウラフィア、キャランともにエンブラエルの他の軍用機にチャンスがあるかで見方が違う。
「ブラジルの国防需要を考えるとボーイングの狙いは戦闘機だろう」とアボウラフィアは見ており、「しかしブラジルはスーパーホーネットは断りグリペンに注目している」
エンブラエルはブラジルでSaabグリペンE戦闘機用最終組立ラインを立ち上げようとしている。
エンブラエルはSaabとE-99他ビジネスジェット機に搭載用の早期警戒指揮統制システム エリアイErieyeでも提携しておりボーイングを交えれば可能性がさらに開ける。ボーイングはSaabと米空軍向けT-X練習機事業でも提携している。
「点を結べば別の可能性が生まれませんか。ボーイングにSaabを買収するつもりがあるか不明ですが、Saabへ出資するとどうなりますか。ブラジルにグリペンEの組立ラインを建設してその先はどうなりますか」とキャランは言う。
一方でエンブラエルのスーパートゥカーノにも新しい可能性が生まれそうだ。米空軍が低コスト攻撃機OA-Xの購入を検討中とキャランは指摘する。
スーパートゥカーノはA-29として米国内で営業展開中でエンブラエルとシエラネヴァダコーポレーションとの提携で8月にはホローマン空軍基地(ニューメキシコ)で各種実証を行っている。
A-29はOA-X選定で採用が有望視されており、すでに米空軍はアフガニスタンやレバノンでの運用に採用している。
アボウラフィアは同機が数百機販売されてもボーイングの最終利益への影響はわずかだと指摘し「ボーイングがどうしてこの機体にかかわるのか理解に苦しむ」とする。
合意形成になればこの数か月で二回目のボーイングによる大型買収となる。10月にオーロラフライトサイエンシズ買収を発表している。
エンブラエル買収はボーイングに民間機市場の最大のライバルたるエアバスへ対抗策となる。エアバスはボンバルディアCシリーズで提携関係を最近発表したばかりだ。■
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