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★★ドイツだけではなかった。英海軍も深刻な低稼働率に直面

心配になるニュースで、英独両国が負担すべき努力を怠ったためこうなったのか、産業構造に問題があるのか、政治家が悪いのかわかりませんが昨日今日始まった問題ではないようです。NATOが海軍力で欠陥を抱えたままだと米海軍の負担が増えて太平洋のバランスにも影響が出かねません。解決策としてNATOへの日本の加盟、あるいはNATOを拡大した「有志連合」として太平洋、大西洋をカバーする超同盟の樹立はいかがでしょう。



Almost All of the UK's Surface Combatants Are in Port While Germany Has No Working Subs

英水上艦ほぼ全隻が出動不能状態、ドイツには稼働潜水艦皆無

These already worrying developments reflect poor readiness overall and other larger issues within both of these NATO navies. 心配になる事態は両国海軍の即応態勢以外にもっと大きな問題がある証拠




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BY JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 20, 2017
英独両国の海軍部隊の即応態勢がともにかつてない低さになっており、英海軍では駆逐艦フリゲート艦のほぼ全数が港内にとどまり、ドイツ潜水艦部隊では一隻も出動できない状態だ。両国で現状ではヨーロッパ内外の危険に対応できないとの主張に勢いがついている。
2017年12月20日現在で英海軍23型フリゲート13隻で稼働可能艦は一隻だけで、45型駆逐艦6隻は全て港内に留まっている。2か月前にはドイツ海軍のU-35潜水艦が事故で損傷し、212A型潜水艦6隻全部が港内で修理を待つ状況にある。
英海軍は「世界規模で作戦投入されクリスマス、新年関係なく国益を防護する」状態を保っていると報道官がテレグラフ紙に語っている。「水上艦潜水艦が13隻本国の内外に展開中で核抑止力も含まれる」
展開中の13隻のうち一隻は大型水上戦闘艦で深刻な問題に直面しており、ほかにも即応態勢や隊員の士気でも問題がある。英国防省が言っていた「英海軍の年」が大いなる失望の年になってしまった格好だ。
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45型駆逐艦HMSダイアモンドがポーツマス軍港で霧の中に佇む


2017年6月、HMSクイーン・エリザベスが英海軍初の超大型空母かつ建艦史上最大の艦として初の海上公試に臨んだ。2017年12月はじめにエリザベス二世女王自身が臨席し就役した。艦名は16世紀の初代エリザベス女王にちなみ、同女王がスペイン海軍を撃破した当時の英海軍に命令を与えた。
「本日は英海軍の重要な歴史を刻む日で将来の旗艦が女王陛下の艦隊に編入される」と英国防相ギャビン・ウィリアムソン Gavin Williamson が12月7日の就役式典であいさつした。「女王ご臨席のもと英海軍は多忙な年となり、二番艦HMSプリンスオブウェールズの命名、新型26型フリゲートの初号艦の建造も始まった」
ウィリアムソン国防相は述べていないがクイーンエリザベスの艦載機F-35Bの作戦機材はまだなく、艦隊航空部隊は運用機を確保できないままプリンスオブウェールズも就役し空母打撃任務につくことになる。また国防省は揚陸強襲艦二隻の廃止を検討中でその他艦艇も削減して空母運用経費をねん出する目論見だ。英海軍のヴァンガード級弾道ミサイル潜水艦では技術的な問題こそないが乗員の士気が低下している。
そのクイーンエリザベスのプロペラシャフトから浸水する事件が12月に発生したのは公試中だった。浸水は機関室にも及んだ。こうした事件は決して特異な出来事ではなく、各国海軍で建造したての艦艇は各種公試に出してから正式に就役させているとウィリアムソン大臣はBBC報道へ反応した。「これで同艦が海上に出ることができなくなるわけではないし、公試にも影響はない」と海軍報道部もコメントを出した。
だが批判勢力はこの機会をとらえ建造費用40億ドルの同艦が艦載機の有無と関係なく実際の任務に投入不可能な証拠だと攻撃をしかけ、政府は事実を隠し問題をうやむやにしようとしていると主張している。
艦の整備問題とともに乗員の離隊が増えて英海軍の精鋭水上艦が港内に留まっていることから海軍は作戦を遂行できるのか、新型空母を活用できるのかとの疑問が生まれている。23型、45型が全艦任務実施状態に復帰しても英海軍の駆逐艦フリゲート艦は不足して護衛任務と並行して別作戦を行うことができなくなりそうだ。
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23型エスコート二隻を護衛に航行するHMSクイーンエリザベス


ウィリアムソン国防相が言及したように旧式23型の後継艦となる26型フリゲートで初号艦の建造が2017年7月に始まった。シティ級と呼ばれる同型の最初の三隻が艦隊編入されるのは2020年代中ごろ以降と国防省は見ているが8号艦と最終号艦は未定だ。
現時点で23型と一対一の交換は想定しておらず、英国は戦力が劣る31型汎用フリゲート5隻の去就の決定を迫られる。
英国のEU離脱にともなう予算削減と経済状況の不確定さのため事態はさらに混乱している。2017年10月にBAEシステムズはクイーンエリザベス級空母の建造にあたる共同事業体の出資社ならびに26型建造所も運用する企業として英国内で2千名を解雇すると発表し、うち英海軍艦艇の運用支援要員数百名が含まれている。
このため英国防省がNATO他ヨーロッパ内同盟国に戦力不足で支援を求めてくる可能性がある。艦艇運用も他国と協調して不足分を補いたいとする。英国は米国と米海兵隊F-35Bをクイーンエリザベスで運用して艦隊航空部隊の不足を補う合意をしているが運用開始は未定だ。
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海上公試中のクイーンエリザベス、2017年6月。


ドイツ海軍の状況にも深刻な様子が見える。212A型潜水艦から海軍全体に広がる問題が見える。
同級は高性能かつ極めて静粛なディーゼル電気推進艦で大気非依存型機関に水素燃料電池を使い数週間の潜航が可能だ。潜水艦はNATOが想定するバルト海でのロシアとの軍事対決時に中核の役割を期待されている。
残念なことに同級潜水艦は保守管理上の悪夢で故障連続で修理も遅れている。
冷戦終結時にドイツ政府は東ドイツ復興に注力する一方でヨーロッパでの安全保障の懸念は大幅に減ったと見た。このため国防予算を大幅減額とし装備も削減した。ドイツ海軍は新型212A型潜水艦の予備部品を発注するのみだった。
BUNDESWEHR
ドイツ海軍の 212A 型潜水艦 U-32.


ドイツ海軍は補修部品を毎回特注扱いで確保しており非常に高額かつ時間も取られている。同時にドイツの造船業コンソーシアムには潜水艦技術を発展させる余地が減り、サプライチェーンも不活性で技能労働力も衰弱している。
U-35(212A型5番艦)が就役した2015年にはスクリュー音が大きく行動が制約される事態が生まれたとダーシュピーゲルが報じた。レーダーや通信装備も故障したうえに事故で艦の行動がさらに妨げられた。
匿名ドイツ海軍関係者がダーシュピーゲルに語ったのはU-31でも同じ問題が先に見つかり、主建造業者のティッセンクルップは補修策をなんら行なわず翌年に就役したU-36は姉妹艦運用のため部品取りに使われたという。
予算と補給面の制約でドイツが6隻すべてをいつ運用可能になるのか見えてこない。ドイツの造船所では212A型潜水艦すべてに必要な補修を同時に行えず、修理はさらに時間がかかる。
ドイツ海軍はU-36は2018年5月までに作戦復帰させたいとし、U-31は2014年から係留されたままで大修理がやっと完了したが、公試が残り、復帰は2018年中とする。
U-34の整備は2018年1月に開始し、U-33は翌月から作業を開始する。ただしこの二艦がいつ現役復帰できるか未定で、U-32は施設の空きを待つ状況にある。U-35はノルウェー沖で岩礁に接触し潜航舵を大きく損傷しこれも修理の順番を待っている。
各艦がすべて完全に作動してもドイツ海軍の訓練済み要員は三隻分しかなく、募集目標の達成が困難な状況が続いている。潜水艦部隊の即応態勢はさらに下がりそうだ。
BJOERTVEDT VIA WIKIMEDIA
212A型潜水艦二隻がキール港のHowaldtswerke-Deutsche Werft 造船所に休んでいる。2013年撮影。


ドイツは2014年以来国防予算を確実に増やしてきた。当初はロシアがクリミヤを併合した同年のウクライナ危機が契機だったが、ロシアとNATOの緊張に非同盟諸国のスウェーデンやフィンランドも防衛費増額で応じている。
ドイツ首相アンゲラ・メルケルは2016年に国防予算を大きく増やすと約束したが、バラク・オバマ大統領の圧力を理由にあげていた。同時にドナルド・トランプ大統領候補が選挙戦でNATO加盟国の集団安全保障への分担水準が低いことを論点にしていた。トランプは当選し、就任後もヨーロッパ同盟各国へ防衛支出増を求めている。
ドイツでは直近の総選挙で多数党の中道キリスト教民主党(CDU)とキリスト教社会連盟(CSU)が連立政権作りに取り組んだままだ。長年の提携先の左翼寄り社会民主党(SPD)は反対党になってた。
ドイツ外相シグマル・ガブリエル Sigmar Gabriel(SPD)は2017年早々に国防予算の増加分では人道援助を中心にすべきと発言したため、そもそもドイツ軍の世界での役割は何かとの議論を呼んだ。このことも国防装備品の調達に影を落としている。
そこにドイツ海軍の最新水上戦闘艦バーデン・ヴュルテンベルグ級「フリゲート」が登場する。同艦は他国海軍の駆逐艦並みの排水量があるが火力は劣り、主任務は低脅威の海賊対策や人道救難活動しか思い当たらない。
BUNDESWEHR
FRG バーデン・ヴュルテンベルグ


だがなんといっても212A型潜水艦の問題はドイツ造船能力が不足していることを如実に示している。同様に運用科員の不足も頭が痛い。
英海軍、独海軍の状況はともに心配にさせるものがあるがロシアや中国の活動が全世界に広がりつつある中で高まっている緊張を鑑みると深刻さが分かる。バルト海、北海、黒海、地中海の各地でNATOが対処できるか不明だ。
各海域でロシア軍が着々と勢力を増強しており、統合防空体制や沿岸配備の対艦ミサイル、対潜哨戒活動の強化により危機発生時にアクセスが制限されかねない。ロシアは通信や航行の妨害能力も強化している。
両国それぞれ、あるいはNATOとして海軍兵力を投射する能力が必要な時に得られなくなりそうだ。英海軍の45型駆逐艦HMSダイアモンドはペルシア湾をパトロール中に2017年11月機関故障で修理のため帰国したが、代わりとなる英艦艇は手当できていない。
ドイツ、英国ともに状況の改善には時間がかかるが、現状はますます維持できなくなる方向に進んでいるのは明らかで両国海軍は優先順位の付け方を厳しく再検討し近い将来も戦力として意味がある形に維持する必要がある。■

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