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★★潜水艦が一隻も使えないのはドイツ連邦軍の問題の氷山の一角だ

  • 几帳面がドイツでこうなっているとは意外な気もしますが、国防省の官僚的体質が災いのもとなのでしょうか。ドイツの安全保障に対する価値観にはやはり大戦中のトラウマがあるのでしょうか。日本はこの数年で意識がかわりつつあるのですがね。ドイツ国民に軍事アレルギーや防衛で主導的な立場を忌避する傾向があるのでしょうか。

 

Germany Does Not Have One Working Submarine

ドイツに作戦投入可能な潜水艦が一隻もない事態
December 16, 2017


  • 今年10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなった。
  • ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っている。
  • 紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっている。
  • だがドイツ海軍に作戦投入可能な潜水艦が一隻もない。
  • Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめた。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模もに小さい。212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びた。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度だ。
  • ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定だが再配備に公試数か月が必要だ。
  • U-32は2017年7月にノルウェー回航中にバッテリーが使えなくなった。修理用船台が空かず、U-34が次の順番を待つ中で修理のめどがつかない。
  • U-33は2018年2月まで整備中でその後公試に三四か月かかる。U-35の姉妹艦U-36は2017年10月に就役し、作戦投入可能は2018年5月だ。
  • なぜここまで時間がかかるのか。冷戦終結後のドイツ海軍は経費節減策で予備部品の大量保管を放棄し、部品は都度調達するか、非稼働中の艦から取り外してきた。遅延が重なる結果がここから生まれている。
  • ドイツ国防次官ハンス-ペーター・バルテルス Hans-Peter Bartels は以下発言している。「海軍には大変な災難だ。Uボートは最強戦力手段なのに数か月にわたり一隻も稼働できない状況ははじめて」で潜水艦乗員が運用経験が得られない。
  • 2018年なかごろに三隻が作戦投入可能となり、その後11月に4隻目が加わる予定だ。ただし6隻が稼働可能になっても全艦投入できない。バルテルスによれば訓練を積んだ乗員は三隻分しかない。
  • ドイツ国防軍は2011年から完全志願制に移行し、人員確保に苦労しており、若年層に魅力的に見えるようにフレックス勤務、居住環境の改善や育児施設まで充実してきた。女性隊員がUボート勤務できるとまで宣伝していたが、現状ではその活躍の場はない。
  • U-35とU-36は212A型でも最新設計だがダーシュピーゲルが最初の就航時に半ば悲喜劇ともいえる事態が発生していたとすっぱ抜いた。
  • 建造業者ティッセンクルップが212A型初期の建造で契約問題を引き起こしドイツ海軍は不満を感じている。U-35では海上公試でスクリューが「奇妙な...擦れて削るような音」を立てたのは中央線がずれていたためで、音響静粛性が台無しになった。初回の任務投入ではレーダーが連続故障し、業を煮やし民生用レーダーを取り外してきたほどだ。母港では25トンのクレーンで通信用マストがつぶれた。海上でカリスト通信ブイが繰り返し使用不能となった
  • U-36は2015年就役したが実際は部品多数を一時的に取り付けたで内輪では「臓器提供艦」と呼ばれるのは部品多数をU-35に提供しているからだ。
  • 低稼働率は国防軍の他部門でも悩みだ。ドイツ陸軍のレオパルド2戦車244両で戦闘投入可能なのは96両だけで89両は部品待ち、7両はR&Dに投入中、53両は整備改修が必要な状況だ。A400M輸送機は14機あるが一機も稼働できない状況が発生したこともあり、2017年2月には国防相ウルスラ・フォン・デアレイエン Ursula von der Leyenの搭乗中に故障している。トーネード攻撃機93機中で戦闘投入可能なのは30機しかないと2015年に暴露されている。
  • ドゥムレセ、バルテルス両名は報道陣に予備部品をその都度確保する方針は段階的に解消すると述べている。ティッセンクルップへの新規保守管理契約で予備部品供給の「成熟化」に「数年」かけてU-35やU-36の間違いを繰り返さないという。フォン・デアレイエン国防相も国防装備の即応体制の向上は2014年以来の優先事項と言うが、あきらかに改善は待ったなしだ。
  • ドイツが冷戦終結後に国防予算の比重を減らしたのは第二次大戦のナチドイツ時代の苦い記憶のためだろう。しかし、今や莫大な富を享受できる地位についたドイツはヨーロッパ連合で大きな地位を占め、モスクワが東ヨーロッパに軍事力を使いかねない状況ではヨーロッパ防衛貢献を一層求められている。そのドイツには軍事力拡大の前に予備部品や人員面の拡充が必要であり、航空機、艦船、装甲戦闘車量といった装備品の多数を戦闘投入な状態に維持する必要がある。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: A submarine at the German shipyard Howaldtswerke-Deutsche Werft GmbH in Kiel. Reuters/Fabian Bimmer.

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