2018年2月13日火曜日

軽攻撃機選定、米空軍は自らの調達を真剣に考えていないのでは?

Will USAF Actually Buy A Light Attack Aircraft This Time?米空軍は軽攻撃機を真剣に調達するつもりがあるのか

The U.S. Air Force does not have the best track record of putting procurement dollars toward light attack米空軍に軽攻撃機調達で成功実績はない

Feb 5, 2018Lara Seligman | AviationWeek.com


国も軽攻撃機を導入して中東の戦闘員に対処すべきとの意見

の方にとって、米空軍が上位二機種の戦闘実証を省略してそのまま調達戦略を立案することに決めたのは朗報だろう。
 だが実際に軽攻撃機部隊に予算を投じることになるのか確実ではなく、空軍はこの面で実績は芳しくない。
 空軍は昨年夏に既存機4型式をホローマンAFB(ニューメキシコ)に持ち込み各機の特性を確認した。シエラ・ネヴァダ=エンブラエルのA-29スーパートゥカーノ、テキストロンのAT-6、同じくスコーピオン、L3-エアトラクターのAT-802Tロングソードで、空軍上層部は繰り返し実証がうまく行けば、次の段階は上位機種を実際の戦闘場面で実証すると言っていた。
 ここにきて空軍は決定に必要な情報は十分得られたので戦闘実証は行わないとする。何が起こったのか。空軍としては購入前に実際の戦闘環境で対象機の地上部隊支援性能を確認したいはずだ。
 空軍のこれまでの実績を見れば今回の軽攻撃機議論が理解できる。  
「OA-X」構想は2007年にまでさかのぼる。イラク戦が激化しピークとなり空軍力への支援要請が最高潮に達した。低コスト代替策として戦闘員相手に安価で低性能武器で対抗する構想だった。
 コロンビア空軍がターボプロップ軽攻撃機を供用しているのに触発され、空軍内部で費用対効果の研究が始まった。コロンビアはエンブラエルのA-29スーパートゥカーノ以外にEMB-312トゥカーノ、ヴィエトナム時代のA-37ドラゴンフライ(グラスコックピット改装ずみ)、ダグラスAC-47ガンシップを使っていた。検討でダグラスA-1スカイレイダーに関心が集まった。朝鮮戦争で活躍した米海軍機で退役済みで、そのほかノースアメリカン・ロックウェルOV-10ブロンコも観測機でありながら軽攻撃機にも投入された経緯があり注目された。
 この研究からOA-X実現構想が生まれ、航空戦闘軍団が2008年に承認し、安価な軽攻撃観測機の必要性能を明示した。その内容は現在まで一貫している。民間で稼働中の機体にターボプロップエンジンを搭載し点検整備を簡単にし、運航を安価に行いつつ、強力な武装、精密誘導爆弾、センサー通信装備を備えるものだ。
 ここまでは良好に聞こえるが、現実はうまく行かなかった。当初のOA-Xは2008年の予算問題の犠牲となった。同様の「軽攻撃兼武装偵察機」構想は2012年に取り消しになった。
 うまく行ったのは「軽支援機」構想で軽攻撃機少数を購入しアフガニスタン空軍向けに訓練を行ったことだ。今はNATOがスーパートゥカーノでアフガニスタン空軍を養成中だ。
 歴史を振り返ると米空軍が軽攻撃機導入で海外国の参加を強調しているのが興味深い。
 ホローマン実証では五か国がオブザーバー参加した。カナダ、オーストラリア、アラブ首長国連邦および中東の他国だ。空軍は第二段階実証ではさらに多くの国を招く予定だと言う。
 そのねらいは米国自身ではなく各国に同じ機体を導入させることに見える。
 そうなると空軍長官ヘザー・ウィルソンは第二段階で「必要なデータを入手し調達に向かう」と言っていたが、大いに怪しく思えてくる。■

なるほど、ゲリラ戦でのCASには米空軍がやる気がないことがわかりますね。A-10の処遇であれだけ冷淡だったのも予算問題と言うよりも対地支援任務への理解のなさが原因なのでしょう。しかし米陸軍に固定翼機運用を禁じたのが空軍自体なので引き受けざるを得ないミッションのはずなのですが。

2018年2月12日月曜日

フィリピンにTC-90追加供与、3月に3機現地到着

地味なニュースですがインド太平洋構想で関係国の自主権行使実行力をこうやって高めることに意味があります。また日本で用途廃止になっても十分使える舞台があることを示していますね。当初はリースとしていましたが会計処理方法の変更で無償供与に河立ったのでしたっけ。フィリピン政府の公式発表をお伝えします。

3 more patrol planes from Japan arriving next month: DND


By Priam Nepomuceno  February 5, 2018, 6:05 pm

MANILA -- 日本が寄贈するビーチクラフト・キングエアTC-90哨戒機の追加分3機がフィリピン国軍(AFP)に3月に移管される。
 機体は一時的にカビテシティのサングレイポイント海軍航空集団司令部に到着する。
 TC-90二機が昨年3月27日納入ずみで、今回3機が加わりフィリピン運用のTC-90は5機になる。
 上記二機のうち一機が1月31日に初の海上哨戒飛行をスカボロー礁沖合で行った。
 TC-90は1,000カイリ以上の続距離があり巡航速度260ノットで合計9名まで搭乗する。
 これまで海軍の哨戒飛行にノーマン・ブリテン「アイランダー」6機、GAF「ノーマッド」4機、アグスタウェストランド製ヘリコプター5機、ロビンソンR-22訓練ヘリコプターを投入してきた。
 TC-90はビーチクラフト・キングエアファミリーの機体で2016年2月29日締結の防衛装備技術移転に関する合意に基づき日本が提供する。
(PNA)


今になって出てきたロッキードX-44A無人全翼機とはどんな機体だったのか

謎の機体好きにはたまらないスクープです。図面は米特許庁のファイルからのようでかなり大まかで実機と異なる可能性もあります。もう20年近く前の話なので技術が陳腐化しており、今更極秘にしておいても仕方ないという判断なのでしょうか。The Warzoneからの記事です。



Exclusive: Lockheed Skunk Works' X-44A Flying-Wing Drone Revealed  ロッキードスカンクワークスのX-44A全翼無人機の存在が浮上

The aircraft is a missing link in a lineage of shadowy unmanned flying-wing drones built by the legendary Skunk Works.

伝説的スカンクワークスの全翼無人機の系譜をつなぐ存在か


USPTO
BY TYLER ROGOWAYFEBRUARY 2, 2018


ッキードで採用に至らなかった「ティアIII」RQ-3ダークスター無人長時間滞空スパイ機とRQ-170センティネルをつなぐ存在で今まで不明だった機体が明らかになった。全翼機形状の無人機はロッキードのスカンクワークスが1999年にRQ-3が消滅した後に製造されていた。
 狙いは迅速製造技術とともに侵攻航空偵察性能の実証であり小型無尾翼無人機の空力特性の証明にあった。機体はX-44Aと呼称され2001年に初飛行した。
USAF
RQ-3タークスターは1999年に突如中止となったがねらいだった敵地侵入長時間偵察機能は今日につながっている
 
 この極秘機の呼称には混乱を招く要素がある。X-44「マンタ」は同時期に無尾翼有人機として広く知られていたからだ。X-44は推力偏向で飛行制御を狙い、速度、燃料効率、操縦性の効果を試すのが目的だった。
USAF/NASA
X-44マンタの想像図。事業は2000年に予算打ち止めとなった。


 USAFとNASAによる同事業は2000年すぎて取り消しになったことになっており、一部の想像図が残っるだけで、F-22から尾翼を取り除いた形状と三角翼が特徴だ。


DOD


 上がX-44Aが初めて国防総省の4120.15-L軍用航空機制式名称一覧に記載された際の写しで「None」とあるのは公式愛称がないことを意味している。明らかに記載内容はロッキードX-44A無人機と別であり、どうしてそんな記載になったのか不明だ。
 ロッキード作の小太りな全翼機形状無人機にX-44名称がついた経緯がわからないが、二つの機体に直接関連があるとは思えない。
USPTO


 ロッキードの1996年出願特許と知的所有権からX-44Aの設計案がわかる、と言うか実態に近い形がわかる。X-44表皮はナノカーボンファイバー製で動力はウィリアムズF112ターボジェットエンジンだ。このエンジンは巡航ミサイルのほか、無人機でもマクダネル・ダグラスX-36やボーイングX-50にも搭載された。


USAF/PUBLIC DOMAIN
Williams F112 jet engine.


 X-44の全翼巾は30フィート近くとRQ-170の半分程度だ。じゃかいも状の機体本体に各種センサーを搭載し、輸送時には主翼を取り外せたのではないか。これはRQ-170と同じだ。従来型の制御面が後縁部につき、主翼端はまっすぐに切れている
USPTO


 同機はロッキード・マーティン独自の研究成果と言うよりボーイング、ノースロップ・グラマンと同社の競作で生まれたようだ。この競作の成果は不明だが、ロッキードは不採用だったようだ。競作の目標は不明だが、初期の半使い捨てステルス機の可能性があり、空軍が現在目指している低コスト消耗品攻撃機実証 Low-Cost Attritable Strike Demonstration (LCASD)に近い存在だったかもしれない。


USPTO


 機体に付いた下の紋章の謎のデザインは航空宇宙国防関係でよく知られることになったのはトレヴァー・ペグランの著作 I Could Tell You But Then You Would Have to be Destroyed by Me: Emblems from the Pentagon's Black World 刊行以来である。


WORTHPOINT


 紋章は黒いエイがつき、興味深いことに「黒エイ」がX-44のニックネームだった。またpottus est melius quam satis beneとは「普通に良いだけでは十分ではない」の意味でX-44製造技術を指しているのだろう。 Indigo, Delta, Kilo(IDK)とは"I Don't Know"の頭文字で同機の極秘度合を示している。ナンバーワンと星座は謎だが、星六つはエリア51を意味することが多い。ただし、星は11個付いている。
 X-44は改装され海軍の空母運用空中給油機(CBARS)の目視探知機能の評価に使われている。ロッキードはCBARS参画をあきらめておらず、ジェネラルアトミックスとボーイングと厳しい競争に直面している。
LOCKHEED IMAGE
ロッキードP175ポールキャットはX-44Aの後で作成され、やや大型になったがコンセプトは類似し形状は進歩している。そこでRQ-170センティネルの前身にRQ-3、X-44、P175の三機種があったことがわかる。


 スカンクワークスが高性能無人機を目指す中でX-44が習作であったことがわかる。
 おそらくステルス無人機各型の前身となったのだろう。まだ極秘扱いが解除されていない機体がありそうだが、P175ポールキャット実証機につながったことは明白で両機種とも目標を共有し、設計上は類似しているが、P175は大型で性能も伸びている。
 その他2000年代初期から中期に現れたらしい機体にスカンクワークス作の全翼機形状極秘機体の一連があるのだろう。9/11後は敵地に侵入し長時間偵察する性能が最重要になったはずで、ロッキード製の別の極秘機がイラクの自由作戦に投入されている。これはおそらくRQ-170センティネルの試作機であったに違いない。アフガニスタンのカンダハール飛行場で同機が一般に目撃されはじめたのは2007年だった。
USAF VIA FOIA
グアムのアンダーセンAFBにRQ-170が配備された


 RQ-170はオサマ・ビン・ラディンの所在を突き止めたほか、イランの核開発の様子を監視し、2011年にイランに捕獲されたことで有名になったが、北朝鮮上空はじめ各地でも飛行している。その背後にX-44はじめまだ正体不明の機体数種類があるのだろう。謎に満ちて闇に消えた米国のステルス無人戦闘航空機(UCAV)の系譜については別に紹介したい。
 スカンクワークスから謎の機体の写真や関連情報が近い将来に公開される日が来るのを待とう。これだけ長期にわたり極秘扱いなのは全く理解できない。今日の高性能無人機と比較すればはるかに単純かつ小型機にすぎないのだ。
 X-44Aは二十年前の機体だが歴史に埋もれた高度に極秘の「ブラック」技術の世界があり、まだまだ知られていない側面があることを思い起こさせてくれる機体だ。
 ロッキードにX-44を照会したが回答が来ていない。同機に関する何らかの情報が出てくれば随時ご紹介したい。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

こうしたブラック事業は予算技術で普通の費目に潜り込ませているのでしょうね。それはやはり財政がしっかりしているから可能なことなので、現今の厳しい状況をみるとブラックの原資そのものが乏しくなっていれば技術の革新的進歩に逆効果になりますね。やはり国防の基本は強い経済です。

2018年2月11日日曜日

シリアで何が起こっているか② 米海兵隊が猛烈な火砲支援を展開

Marines in Syria fired more rounds than any artillery battalion since Vietnam — and burned out 2 howitzers in the processシリアの米海兵隊がヴィエトナム戦以来最大の砲弾発射、榴弾砲二門が熱でつぶれる

US Marines Syria artillery howitzer米海兵隊第11遠征部隊がM777りゅう弾砲を北部シリアで不朽の決意作戦の一部で運用中。 March 24, 2017. Photo By: Lance Cpl. Zachery Laning
Feb. 6, 2018, 8:12 PM
  • ISISと戦う米国支援を受ける勢力を助けるため海兵隊がヴィエトナム以来最大の砲撃を展開した
  • 火力支援の規模は巣覚まし宅りゅう弾砲二門が使えなくなってしまったほどだ
  • イラク、シリアのISISはここにきて弱体化しているが戦闘員がいまだに孤立した拠点を防御している


兵砲撃大隊がラッカ(シリア)でISISと戦うシリア民主軍を助けるため24時間にわたる火砲支援を行い、この40年間で最大規模の攻撃となった。途中でりゅう弾砲二門が破損するほどだった。
 「この五か月で最大規模の砲撃で、海兵隊はもちろん陸軍砲撃部隊でもこれだけ規模はない。ヴィエトナム戦争以来最大だ」と統合参謀本部顧問の陸軍上級曹長ジョン・ウェイン・トロクセル Army Sgt. Major. John Wayne Troxell が語っている。
 砲兵大隊は火砲18門を装備し第11海兵遠征部隊所属で2017年3月に北部シリアに展開を開始している。155mmのM777りゅう弾砲を運用する。
 同部隊は34千発を発射してイラク侵攻を支援し、砂漠の嵐作戦では陸軍砲兵隊とともに730門のりゅう弾砲で30千発以上を発射しているとMarine Corps Timesがまとめている。
 トロクセル曹長は11月にラッカ攻略戦でりゅう弾砲の発射が増え、二門の砲身が焼け付いてしまい安全使用できなくなったことがあると記者団に語った。
 M777りゅう弾砲は重量7,500ポンドで取り扱いが楽だ。通常毎分2発発射できるが、2分間までなら毎分5発発射も可能だとメーカーのBAEシステムズが説明している。
 元陸軍の砲兵隊将校がMilitary Timesにりゅう弾砲を焼き付かせる砲弾発射数は射程と砲弾の大きさにより一様ではないと述べている。
 「聞いたことがないですね。通常は一回使用後は補給処で再整備していますからね。それだけ激しく砲撃したのでしょう」
 「射撃回数が多いため、現場で砲の部品をリサイクルして使いまわしているのはそれだけ発射砲弾数が多いからです」とトロクセルは1月にMarine Corps Timesで語っている。
 M777の最大射程は18.6マイルで、2017年に出回った映像では海兵隊が155mm砲弾にXM1156精密誘導キットを付けて運用している状況がわかる。
 このキットを付けると砲弾は半精密誘導弾になり平均誤差100フィートが最大射程でも実現する。XM1156はこれまで数回しか戦闘に投入されていない。
 米軍は砲撃の精度を上げる二つの手段を投入している。携帯型の共用攻撃効果標的システムがその一つで陸軍はりゅう弾砲を「巨大狙撃銃」に変える効果があると述べている。もうひとつが上記精密誘導キット対応の砲弾でこれがラッカで発射された。
 ラッカで味方現地勢力を支援する海兵隊はラッカ奪還後直ちに撤収した。シリアは昨年末にISISに対する勝利を宣言した。米軍がイラクでも対ISIS戦を支援し、イラク政府がISISへの勝利宣言をやはり2017年末に発表した。

 ISISはイラク、シリアでほとんどの領土を失ったが、戦闘員一部はユーフラテス川沿いの地点に残っている。■

シリアで何が起こっているか ① イランUAVをイスラエルアパッチが撃墜、シリアがF-16Iを撃墜

Israeli F-16I Sufa Crashes After Coming Under Massive Anti-Aircraft Fire From Syrian Air Defenseシリア防空網がイスラエル空軍F-16Iを撃墜



F-16I-SUFA

Feb 10 2018 -
ランUAVが2月10日イスラエル領空に侵入しAH-64アパッチにより撃墜された。イスラエル空軍はシリア報復攻撃に出撃s多賀、F-16I一機に被弾が生じイスラエル北部に墜落した。パイロット二名は脱出に成功したが、一名が重傷である。

 「2月10日、アパッチヘリコプターがシリアから発進しイスラエルに侵入したイラン製UAVの迎撃に成功した。侵入機は防空体制により早期探知され追尾を続け迎撃した。これに対してIDFはイラン機を発進させたシリア国内の施設を攻撃した」とイスラエル国防軍が発表している。

 撃墜の瞬間を映した映像では機体はセーゲ(サンダーボルト)のようで、イラン革命防衛隊(IRGC)が2016年に公表した無人機で先に捕獲した米RQ-170ステルス無人機を原型にしたもののようだ。


2月10日に撃墜されたUAVはRQ-170原型のイラン無人機に酷似している。

 ただしその後に発生したことの方が重要だ。
 
「その後、イランUAV侵入に対応しイスラエル空軍(IAF)はシリア国内12か所を攻撃目標とし、うち三か所が防空施設、四か所がシリア駐留イラン軍施設であった。攻撃中に対空ミサイル複数がIAF機に向け発射され、F-16パイロット二名が射出脱出したが、一名が重傷で現在病院で治療中だ」

 第一報で撃墜されたのはF-16IスーファでsA-5およびSA-17数発が発射されたといわれるが公式の確認はない。ただしIDF発表の表現に要注意だ。機体に「命中」したとは言っていない。興味深いのはイスラエル軍はスラエル機に向けて発射されあたのはシリアのミサイルだと明確に言っている。

 シリア北部でミサイル発射が続き民間航空に一部支障が生じた。

 テルアヴィヴのベン・グリオン国際空港は30分間着陸を見合わせた。

 これまで数十年にわたりイスラエル機はシリアを自由に空爆しているが、イスラエル機が撃墜されたのは1980年代初頭のレバノン内戦以来のことだ。■

★冷戦時、ソ連製装備品はこうして米国の手に入っていた


This Is How the CIA Got Its Hands on Some of Russia's Most Powerful Weapons CIAはロシア最強兵器をこうして入手した



 




February 9, 2018


戦時に思わぬ宝が手に入ったことがあるようだ。一方の陣営が新兵器を登場させると相手陣営はなんとしても入手して分析の後、リバースエンジニアリングするか敵陣営と戦う戦闘員に供与しようとした。
米国はこの動きを海外軍事探求(FME)と名付け、国家安全保障アーカイブでロシア製装備の入手が広く行われていたことがわかる。
 一例をあげると1951年の米空軍情報部報告がソ連のMiG-15を入手した経緯を述べている。1951年7月9日、平壌北西でのドッグファイトでMiG-15パイロットが機外脱出した機体は朝鮮半島西海岸の浅瀬に墜落したのが目撃された。英軍機が墜落地点を確認したが、米空軍は機体回収できなかった。
 直後に英米合同の任務部隊が機体回収を再度試みた。やはり回収しようと共産軍の発砲はあったが英米チームはほぼ機体全体を回収でき、米国に送付し分析した。その他のソ連製機体も回収されており、Yak-28ファイヤーバー迎撃戦闘機は西ベルリンで1966年4月に墜落した機体だ。
 中でも一番有名な事案が1960年代初頭にあり、CIAがメキシコで展示中のソ連ルナ衛星を「拝借し」写真撮影したことだ。1965年にはCIAが新型Mi-8輸送ヘリコプター一機を手に入れ、別件ではミンスク-2デジタルコンピューターを100千ドルで入手しようとした。(もちろん成功している)
 冷戦期には敵味方が常に入れ替わっており、第三世界に供与した兵器が同盟関係の変更で反対陣営の超大国の手に渡ることはよくあった。1966年にCIAはソ連製対空兵器をガーナで入手している。同様にソ連もF-14他米製兵器をイラン革命後に入手したはずだ。
 情報活動では成果が努力に見合うものになっているか時として問題になることがある。だが機密解除文書を見るとソ連製装備やマニュアルの入手が成果を十分に上げていることがわかる。特に米空軍に当てはまる。
 空軍が1966年7月の日付でCIA宛に送ったソ連のSA-2対空ミサイルに関するメモが例だ。「海軍、空軍のパイロットがSA-2ミサイルを北ヴィエトナムでうまく回避しているのはご承知と思う」と空軍中将ジョセフ・キャロルが書いている。「成功の背景には同装備のマニュアル他情報を貴局が入手してくれたことが大きい」
 ただし空軍の別メモではSA-2現物を米国が入手していないことを指摘している。だが1967年の六日間戦争で待望の機会が現実になった。イスラエルがエジプトから捕獲したのだ。
 イスラエルがソ連製装備の最大の供給元だったのは確かで、1967年、1973年、1982年の武力衝突のたびに大量の兵器をアラブ軍から捕獲している。1967年6月のメモでは六日間戦争中に手に入れた装備は「国防総省が情報探求の点で大変必要としていたもの」と認めている。ただし1967年9月の空軍メモではイスラエルが米国に装備大部分の検分を許しているが、一部高価値装備でイスラエルが「極端な躊躇」を示していると指摘している。特にSA-2ミサイルが対象でイスラエルは同装備を公開する代わりに米国からの見返りを期待していると空軍は考えていた。
 にもかかわらず米国は最終的にSA-2含むソ連装備すべてを調査できた。SA-2では付属品のFan Songレーダーの現物を調べてジャミング対策を講じる事が急務だった。その他対空砲、無線機、戦車等があった。「全体としての調査で今まで不明だった情報内容がわかり研究開発でのギャップが埋まり、一部は直接東南アジアでの紛争に応用できた」と空軍はまとめている。そうした知見からソ連の「設計内容、製品の品質管理、研究開発の方向性がわかった」とある。
 ソ連製装備には情報面以上の価値もあった。捕獲した武器をソ連と戦う勢力に供与し、とくにソ連占領下のアフガニスタン反乱勢力がこの恩恵を受けた。ここでもイスラエルが大きな供給源となり、1982年のレバノン戦争がその機会だった。同紛争では米国とイスラエルで緊張も発生したが同時にペンタゴンに計り知れない価値の情報がMiG-23やT-72のような高性能ソ連装備で手に入った。
 皮肉にも米国はイスラエルからの装備提供は対価を伴わない贈与と考えていた。米国の援助から当然と考えていたのだ。「イスラエルへの我が国の交渉上の立場は非常に弱い」とCIA長官ウィリアム・ケイシーは国防長官キャスパー・ワインバーガーに伝えている。「それでも貴省の手助けをいただいて欲しい兵器を低価格あるいは無償で米政府が入手できるようにしたい」
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Wikimedia Commons.

冷戦終結でこうした動きが消えたわけではなく、今日でも虚々実々のの駆け引きでハードウェアの入手がつづいているはずです。現に米空軍にはスホイなどロシア製機材で飛行隊があるという話です。しかし、現在は最ばースパイの脅威の方が深刻ですね。