2018年5月2日水曜日

★F-22生産早期終了の裏側に新型爆撃機実現に注力する米空軍の決断があった

F-22の話題がここにきてでてきていますが、戦闘機命の米空軍主流派に対して新しい潮流を当時のゲイツ国防長官が断行したことが分かります。というか、F-22よりも新型爆撃機がどうしても必要だったのですね。以来戦闘機派の不満がくすぶるなかで今回降ってわいたような日本の資金負担によるF-22生産再開が実現すれば米空軍にはまさしく濡れ手に粟でしょう。ゲイツ長官の決断が本当に愚かであったのかは歴史が証明するでしょう。


Retired General Says F-22 Production Was Killed So That A New Bomber Could Live F-22生産中止は新型爆撃機実現のためだったと当時の空軍トップが回顧

Other revelations include the Next Generation Bomber was to be armed with air-to-air missiles and the B-21 is indeed one part of a family of systems.その他判明したこととして次世代爆撃機構想には空宅空ミサイルでの武装の想定があったこと、B-21が各種システムのファミリー構成の一部であることなど。



USAF
BY TYLER ROGOWAYAPRIL 28, 2018




空軍参謀長を務めたノートン・シュワーツ退役大将がこのたび刊行された回顧録でF-22生産を必要機数の半分以下で終了させたのは当時の国防長官ロバート・ゲイツの愚かな決断で理由は新型ステルス爆撃機の生産を承認したことと指摘している。
Air Force Magazineが同大将の新著“Journey: Memoirs of an Air Force Chief of Staff”内の問題個所を最初に伝え、F-22生産継続をめぐる戦いの展開の詳細とともに次世代爆撃機開発再開の議論の流れにも触れている。
USAF
ノートン・シュワーツが空軍のトップになったが戦闘機以外のパイロットの就任は1982年初のことだった


舞台裏ではシュワーツの前任者マイク・モスレー大将は「なんとしてもF-22の381機調達の原則を絶対断念しなかった」と同書にある。だがこの決意はモスレーの更迭に繋がり、同時に空軍長官マイク・ウィンも職を失った。この後制服組は新型爆撃機の重要性を悟り、F-22と爆撃機の両方をゲイツに納得させるのは困難と考えるようになった。ゲイツは高価格装備でもイラクやアフガニスタンで役に立たないものは意味がないと頑なに反対の姿勢だった。
シュワーツはF-22生産機数を削減した場合は国防長官に受け入れられるかを知るべく、外部評価を行わせ243機のF-22が空軍が勝利を収める際の最小必要数との結果を得る。だが、ゲイツはこの規模も却下した。
LOCKHEED MARTIN


このことからシュワーツ他はF-22生産をめぐる論争を断念してしまう。ワシントンDCの力の哲学に従いシュワーツ大将も結局ボスにはいかに間違った判断とは言え逆らえず、ラプターの運命が決まったのだ。
新型爆撃機が調達面で最高の優先事項となりそのためしわ寄せが他の装備に生まれたと言えシュワーツはじめ空軍将官は爆撃機の実現に注力せざるを得なくなった。だがそれでも当時の状況下で文民トップに新型ステルス爆撃機の必要性を訴える必要があった。ゲイツは次世代爆撃機(NGB)構想を葬った前歴があったからだ。ただしシュワーツはその決断には「合理性」があったと認める。
Air Force Magazineは以下述べている:
「NGBは『機体が大きくなりすぎ』て実施可能なミッションは広範となり要求性能も多岐にわたった。自衛用に空対空ミサイル運用も想定され、シュワーツが明らかにしたようにそうした要求内容は「必要不可欠な内容ばかりではなかった」。当時はNGBでは「コストは重要でない」とされながらゲイツの世界観にあわず、「そのため中止させた」というのだ。
議会と報道陣に対しNGB開発中止の説明をしたゲイツはB-2の機体単価があまりにも高くなり調達取りやめとなった事例に触れたが、これは話が全く逆だった。132機調達計画のB-2を20機にしたため単価が膨張したのであり、研究開発コスト全額を六分の一になった機数で負担したためだ。
実態は一部は真実である。機体単価に研究開発コスト全額は含まないが、B-2の単価が膨張したのは事実だ。にもかかわらず、ヘリコプターと輸送機パイロット出身のシュワーツにとって爆撃機は「疑問の余地のない必要装備」で将来の大統領が「作戦実施とともに抑止効果でも」使う装備と映ったのだ。そこでゲイツ長官に爆撃機は妥当な価格かつ次世代爆撃機関連の開発リスクをくりかえさずにに実現すべきと進言していた。その一つとして要求性能を固定化し、既存サブシステム他部品の流用でコストを抑え、その他ジャミング機材を同時に飛ばすことで「各種システムのシステム」を実現することがある。
Air Force Magazine記事の末尾は同大将の所感を再度引用している。
最終的にゲイツが折れ、「空軍としてもそのような機体を一定の原則のもと配備できるはず」との主張が本人を説得したようだ。シュワーツはドンレーとともに「ゲイツ説得に成功し」B-21ではこれまで見たことのない原則で後継者にその実現を託すこととした。また機体には既製品のセンサー、ジャマー他装備品の搭載を極力進めコストダウンをシステムのシステムとして実現することになった。
この展開にはいろいろな理由で興味をそそられる。まずF-22生産中止ではゲイツに責任があるとこれまで広く信じられており、近視眼的決断が批判のためで米国に準じる実力を有する敵対勢力の対応を楽にしてしまった。特に中国のステルス戦闘機開発の動きを軽視したことがゲイツの最大の誤りとも言われる。
DOD
元国防長官ロバート・ゲイツ


その他にも在任中に北朝鮮やロシアの動きを予見できなかった。イラク、アフガニスタンに焦点を当てすぎたのは理解できることだが、このためローエンド敵対勢力を唯一の脅威ととらえ米国の国防体制をこれに合わせたため影響がその後に残った。当時でも議論の種となった考え方だが今日そのツケを支払わされていると言える。
言い換えれば、ゲイツが選ぶ馬券は買いたくないものだ。
Air Force Magazineも同じ考えで以下述べている。
ゲイツは自身の回顧録“Duty”でF-22はアフガニスタンやイラクの戦闘員相手では役立たずの冷戦の遺物と述べ、中国のステルス戦闘機は2020年代までは実戦化されないと見ていたため、躊躇なくF-22を切り捨てたと主張。事実はF-22はシリア作戦で不可欠な存在となり、中国はステルス戦闘機の初部隊を2017年に編成している。ゲイツ以降の航空戦闘軍団の歴代司令官は口をそろえてF-22が需要に対して少なすぎると不平を述べている。
F-22生産をめぐる物語の先にUSAF爆撃機開発の一端を目にする貴重な機会があり、B-21レイダーの誕生がある。次世代爆撃機構想は当時も現在も厳重な機密情報のままだが、今回その一端が明らかになり、自衛用空対空兵器の搭載が当時真剣に考えられていたことが浮き彫りになった。
B-21ではNGBよりはるかに容易にこの機能が実現するかもしれない。と言うのは既存装備の導入が極力推奨されているからで、おそらくF-35で実現した機能が応用されそうだ。空軍はひそかに超長距離空対空ミサイルを開発中であり、B-21が搭載して戦闘投入された場合、敵標的捕捉はネットワーク接続されたステルス戦闘機に任せればよい。
ノートン将軍の指摘でこれまで解明できなかった点が見えてきた。B-21とは大規模な秘密機材の系統の一部で敵大国への奥地侵攻能力が新型爆撃機と並行して開発が進んでいる。おそらくここにすでに存在が知られている戦略偵察機で非公式にRQ-180と呼ばれる機体が加わり、敵地上空に滞空しながら探知されず標的情報や電子偵察情報をリアルタイムで提供しB-21の侵入経路決定や攻撃に活用するのだろう。
NORTHROP GRUMMAN/THE DRIVE
B-21レイダー
戦術無人戦闘航空機はセンサー機としてさらに電子攻撃機としても活用され、動的攻撃機にもなるシステムファミリーの一部の位置づけだろう。B-21を支援し敵地深部への攻撃ミッションを達成させる。新型ステルス巡航ミサイルがそこに加わり、弾頭は通常型になるのはほぼ確実となる。これはLRSOとして現在開発中のものだ。そうなると現時点のB-21は照明を落とした舞台で目立つ主役で暗闇の中では数々の機関が同機を主役の座につけようと懸命に動いていると考えてはどうだろうか。
アシュトン・カーター前国防長官がそうした存在を一度ならずとほのめかしていた。B-21がエドワーズAFBに到着する日が遠からず生まれるが同機が各システムで構成するファミリーの一部として同基地でテストを「プログラムのプログラム」の傘の下で受けるのは確実と思われる。こうした装備がすでに知らないうちに稼働している可能性があるがB-21が初期作戦能力を獲得する2020年代中頃にはその存在がおのずと明らかになるだろう。
USAF
C-130を操縦するノートン・シュワーツ.


B-21に必要な各種システムファミリーが実現されれば、B-2の前例から問題視されているB-21の機体単価も比較的低く維持できるはずだ。闇の予算を利用した下位装備品の開発が進めば、そうした装備は公式にはB-21とは無関係とされているため「安価な」B-21の生産が可能となる。USAFが爆撃機の中心的機能を分散化しつつ予算執行も分散化させることで同機は戦場でも議会の場でも残存性を高めるはずだ。

シュワーツ大将の回顧録全文に目を通し、これまで知られていなかった細かい情報が見つかることに期待したい。その節は読者各位に全体像をお伝えしたと考えている。■

2018年5月1日火曜日

★シリアでEC-130への電子攻撃に成功したロシアの戦力整備に危惧を深める米側

内容が内容なだけに開示できない情報が多いのですが、ロシアが着実にEW能力を高めているのは確かなようです。今回はEC-130が相手でしたが、もっと大事な装備も今後対EW対策に力を配分する必要があり、もっとこわいのはEW能力がISISなど非正規戦闘員レベルまで拡散することです。シリアが各国の戦闘モデルの試験場になっていることはあきらかですね。



Russia Widens EW War, ‘Disabling’ EC-130s In Syria ロシアがEW戦能力を拡充し、シリアで米軍EC-130の「機能不全」を発生させている



EC-130コンパスコール電子戦機
By COLIN CLARKon April 24, 2018 at 6:39 PM


EC-130コンパスコースは米軍の電子戦装備の主力の一つだが、シリア付近を飛行した同機が逆に電子攻撃を受け「最も過酷なEW環境で」作動できなくなる事態が発生していたことが空軍特殊作戦軍団司令官の口から明らかになった。
「目下のところシリアでは最も過酷なEW環境になっており、敵の活動が目立つ。敵はこちらを毎日のように試しており、通信を妨害したりEC-130の機能を止めている」とレイモンド・トーマス大将が2千名を超える情報関連専門家を前に語った。
言うまでもない理由でEC-130に向けられた攻撃の内容は不明だが、ロシアがEW手段でシリア内戦でこちらの専門家も「すごい」と言うだけの結果を生んでいることはわかっている。またシリア軍が用いる装備の大部分もロシアが供与している。
「ロシア側はEW機材をこの20年で一新した」と退役陸軍大佐ロリ・モー・バックアウトがEW専門家として開設している。ロシアはジョージア攻撃の後でEW能力不足を痛感し強化を図ったのだという。「ロシアはジョージア侵攻後に巨額の予算を投入しました。その結果、攻撃能力、各種周波数でのジャミングが遠距離からも可能となりました」
今回のEC-130へのEW攻撃ではロシアのEW攻撃で可能性があるのは機内の位置航法計時(PNT)機能や通信機器を妨害することで操縦を困難にさせ、乗員は地図参照しながら目視他での操縦を迫られたのだろう。
「EC-130の問題はジャミングを行う間に乗員はほかの仕事をほとんど行えないことです」と指摘し、攻撃に脆弱だというのだ。「ロシアはPNTや通信を狙ってきたのでしょう」としロシアは「こちらの弱い点を熟知している」のだという。

米軍には解決を迫られる課題が他にもあると著名国防コンサルタントのローレン・トンプソンが指摘する。「南西アジアの敵相手に時間をたくさん使いましたが、相手は技術的には遅れており、その間にこちらは戦術電子戦の進歩に乗り遅れてしまったのです」という。バックアウトもトンプソンの指摘にはもっともな点があると認める。■

2018年4月30日月曜日

★★わかりにくなってきたF-3開発への道:心神からF-3? それとも海外との共同開発?

すでにご紹介したF-22/F-35ハイブリッド機開発はロッキード提案であって、ボーイング、BEAシステムズからの返答が不明のままですね。内容によっては改めて完全自国開発の道がかろうじて残っているということですか。ロッキード案には読者の皆さんは概して懐疑的ですね。ところで、心神の特徴を米国経由でないと知ることができないのは情けないですね。あるいは皆さんは同機の特徴についてこの記事以上の情報をお持ちでしたか?



Revealed: Japan Already Has Its Own Stealth Fighter 

日本にはステルス機がすでにある





 
Sebastien Roblin
April 28, 2018


2016年4月22日、白赤青塗装のほっそりとした機体が名古屋空港誘導路をタキシーし、日本はステルス機開発で世界四番目の国になった。機体は三菱X-2心神だ。


それから二年たち、わずか34回(予定は50回)で心神はテストフライトを終了した。自衛隊は次世代ステルス戦闘機の国内開発か海外調達かの重要な決定に迫られている。新しい報道内容では日本は後者に傾いているようだ。


ラプターが入手できず心神が生まれた


自衛隊とは一般の軍隊と異なり国土防衛任務のみを念頭に装備された組織だ。中国の空軍力整備、中距離弾道ミサイル、海軍力を目の前にして任務は重要さを増している。中国やロシア軍用機の接近のたびに日本の戦闘機は毎年数百回ものスクランブル出撃をしている。日本の杞憂が高まっているのは中国が第五世代ステルス戦闘機J-20を第一線配備し航空自衛隊のF-15やF-2戦闘機の質的優位性を脅かしていることだ。


21世紀に入ろうとする中で日本はF-22ラプターステルス戦闘機導入を真剣に求めていた。最高の航空優勢戦闘機と言われることが多いラプターには優れた性能に応じた価格が付く。ただし、米議会がF-22輸出の途を閉ざし、ラプター生産ラインは早期に閉鎖された。かわりに航空自衛隊(JASDF)はF-35Aの42機導入を決めたが、本来欲しかったラプターと比べると性能が見劣りする。


防衛省技術開発本部がステルス技術を研究しており、米国内テスト施設利用が許されないため、原型機モックアップはレーダー断面積測定をフランスで2005年に行った。それから11年がたち、三菱重工業が高度性能技術実証機AT-Dがを発表し、X-2の別名が付いた。同機には360百万ドルが投じられ、関連企業220社が機体の9割を国内生産した。


超小型のX-2は全長14メートル、翼幅9メートルだ。ここまで小型化できたのはX-2は実証機で兵装搭載の想定がなく、機体重量も10.5トン(最大14.4トン)しかないためだ。軽量と言われるF-16でも空虚重量は18トンある。


通常のレーダー波吸収塗装の代わりに心神では非反射性の炭化ケイ素とセラミックが使われ、風防にも特殊合金の被膜をついた。さらに機体表面はギザギザの処理や不規則曲線を組みあわせレーダー反射を減らした。尾翼は外側へ傾けられている。


日本の防衛関係は心神は「10キロ離れるとカブトムシ程度にしか映らない」とし、この発言は米軍がF-35のレーダー断面積(RCS)をゴルフボール程度、ラプターではマルハナバチ程度と発言しているのに通じる。ただしX-2のRCSはそこまでの実力はなく、むしろ中程度のステルス機中国のJ-20に対しては推力偏向型エンジンで優位になると見る向きもある。


エンジンはIHIのXF5-1低パイパス比ターボファン双発でアフターバーナー付きジェットエンジンとしては国産初で、耐熱セラミック複合物とチタンアルミ合金をベースに製造した。排気口にパドル3枚がつき、推力方向を三次元的に偏向させることでX-2は急角度で操縦が可能だ。量産型ではパドルの代わりに可変式排気ノズルをつけレーダー断面積をさらに減らす。


X-2のエンジンは各5,500ポンド推力しかないが機体が軽量のためマッハ2以上の速力が出せ、アフターバーナーなしで超音速を継続するスーパークルーズが可能だ。


心神には日本開発の各種技術が搭載されていると伝えられる。新型機では油圧制御の代わりに「フライバイワイヤ」が使われるが、三菱はさらに先を行き光ファイバーを採用し電磁攻撃への耐じん性を増している。また「自己修理型」制御系が採用されているともいわれ、水平尾翼や昇降機など制御表面の損傷を探知し自動的に補正制御して飛行を続ける。


実証機から三菱F-3が生まれるのか


心神は技術実証機であり、量産前試作機ではない。非武装機の開発は数千ポンドもの装備を積む実戦用機材よりも簡単である。


日本が目指す国産設計のステルス戦闘機には三菱F-3の名称がつくが、まだコンセプト模索段階だ。防衛省は大型双発ステルス機として長距離空対空ミサイル6本を機内搭載する同機の生産を2027年に開始したいと明示している。百機あればF-15JやF-4EJの後継機になるだろう。


公表済みのコンセプト図が二案あり、ひとつはF-22に類似し、もう一つは無尾翼第六世代機のようでボーイング提案のF-A-XXにも似ている。機体には構成の多機能レーダーを搭載し、接近する機材の探知に加え電磁センサーさらにマイクロ波兵器にもなり敵の電子系統を使用不可にする可能性もある。


ただし2018年4月配信のロイター記事では匿名日本防衛筋の話として日本が純国産開発よりも海外提携先の模索を目指すとある。2018年6月までに予算化されないとF-3は日本の時期五か年防衛計画に盛り込まれなくなる。


その理由にコストとリスクがある。日本の試算では初期費用だけで400億ドルとあり、日本の2018年度防衛予算が460億ドルであるので最大規模の事業となる。


また米国がF-35で新規技術開発に挑戦したが、多くが予想に反する結果となり遅延と費用上昇を招いた事実もある。そのため既存技術に資金を投入したほうが確実であり、他国の予算で既存技術に磨きがかかるのであればなおさら好都合だ。一から新技術開発に向かうリスクよりましだ。


ラプター・ライトニングのハイブリッド案はどうか


日本政府の情報開示要望はBAEシステムズ、ボーイング、ロッキード・マーティンの各社向けで新型ステルス戦闘機の共同開発の可能性がポイントだ。そこで浮上してきた興味深い提案がラプターとF-35ライトニングIIのハイブリッド版の開発だ。


もともと日本がF-22に魅力を感じたのはF-35より優れる航空優勢性能のためであり、JASDFは空対空戦能力を重視している。ただしラプターは1990年代のコンピューターが足かせで、性能改修は巨額費用が必要で機体表面のレーダー波吸収材(RAM)の塗布も高価だ。さらに重要なことに同機の生産が終了している。他方でF-35は経済性に優れたRAMパネルを採用し、センサーやコンピューターも高性能化され、標的情報をネットワークで友軍と共有できる。


したがって日本が目指す新型機はF-35の新機軸とF-22の優秀な飛行性能を加えたものとなる。実現すれば究極のステルス機になるが巨額の費用が必要となるだろう。ペンタゴンによる検討内容がリークされており、F-22生産ライン再開とあわせて旧式装備を近代化する場合、初期費用だけで70から100億ドル、194機生産の場合の単価は210億ドルで総額500億ドルとある。


ここに日本をからませれば費用が一部減るが、初期価格だけ見れば完全新型機開発と大差なく、ただ既存機に手を加えるだけなのでリスクは低くできる。米空軍も運用中のF-22約180機の追加や性能向上となれば前向きになるだろう。ただしF-35予算が流用されれば国防ロビー筋が反対するだろう。


心神原型の完全国産F-3ステルス戦闘機の開発案も代替策になる。日本が国内生産を好ましく思うのは確実でステルス技術も自国で管理できる。ただしJASDFはX-2実証機に多額予算を投入しながら、第五世代ステルス戦闘機を確実かつ費用対効果に優れた形で実現する方法は海外提携先を見つけることと結論付けている。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Wikimedia Commons

2018年4月29日日曜日

あなたの知らない戦史-4 イスラエルがソ連MiG-21を3分間で5機撃墜した(1970年)

罠にかけて目障りなMiGを一気に料理する作戦はベトナムでもUSAFのエースパイロット、オールズ大佐が67年に実施していますからイスラエルが参考にした可能性はありますね。(このときは米側がMiGを7機撃墜)とはいえ、イスラエルの作戦勝ちだったわけです

How Israel Shot Down 5 Russian MiGs in 3 Minutes イスラエルはソ連MiG5機を3分間でこうして撃墜した



April 26, 2018


1970年7月30日、イスラエル空軍がソ連軍MiG-21の5機を3分間で撃墜した。

アメリカ、ロシア、イスラエルはいずれもシリアで現在対峙しているが、48年前のこの物語には今日にも通じるものがある。ソ連の息がかかった国家、この場合はエジプト、がトラブルに直面していた。1967年の六日間戦争での敗北で屈辱を感じたアブデル・ナセル大統領はイスラエルに必勝の願いで戦いを選んだ。これが1967年から1970年にかけての消耗戦争でスエズ運河地帯のイスラエル陣地へ決死隊攻撃と砲撃を繰り返した。

だがイスラエルは死傷者の発生を嫌い、数ではアラブ側に劣勢なためなかなか優勢を得られない中で反撃に出た。六日間戦争では航空電撃作戦で勝利をつかんだイスラエル空軍(IAF)は新たに取得した米国製F-4ファントムでエジプト国内奥深くまで報復攻撃を実施した。それに対しナセルはソ連に要請し高密度の対空ミサイル(SAM)陣地をスエズ運河に沿って構築した。IAFはエジプト機多数を撃墜したが、SA-2、SA-3陣地によりIAFにも被撃墜機が発生し、運河地帯での空軍作戦に支障をきたした。これは当時のハノイ上空での米側航空作戦に似ている。

SAM導入はイスラエルにとってはレッドラインだったが、そらにソ連空軍のMiG-21飛行隊がエジプト防空に投入されたことが難易度を高めた。当初はソ連とイスラエルもそれぞれ回避しようとした(今日のシリア上空でのイスラエル、米国、ロシアの状況と似通う)。だがついにイスラエル空爆にソ連が迎撃をかけた。イスラエルのA-4スカイホーク一機が空対空ミサイルで被弾する事態が1970年7月25日に発生。SAMとMiGによりイスラエルはスエズ運河地帯を西部開拓時代の「テキサス」と命名したほどだ。

イスラエルはソ連に教訓を与える時が来たと決意し周到な立案実施をめざした。ロシア語のできるイスラエル通信要員がソ連交信を傍受し、IAFに名案が生まれた。

リモン20作戦は罠を仕掛ける構想だった。「実に簡単な作戦だった」と歴史家シュロモ・アロニが書いている。「ミラージュ4機を高高度偵察パターンで飛行させ、ソ連MiG-21の飛行区域上空を通過させる。ミラージュ二機ずつ組ませ、いかにも非武装の偵察飛行に見せるが、実は各機は武装している」 さらにファントムと別のミラージュ各編隊がイスラエルが支配するシナイ半島で低空飛行し、エジプト軍のレーダーに映らないまま待機し、ソ連機が餌にかかり「偵察」ミラージュを追い回し、イスラエル領内に近づくのを待つ。

ミッション志願者は多数いたが、最高のうちの最高で経験豊かなパイロットが選ばれた。IAFクルーは腕がうずうずしながらも不安をぬぐえなかった。「怖くなかったが、どういう事態になるか予測ができなかった。相手が相手だし高度装備を搭載しているはずだったから」と当時のイスラエルパイロットが回想している。「ロシア人に『テキサス』がどこにあるのか教えてやる時が来たと言われていました」

そして7月30日木曜日の午後が来た。ソ連機は罠にかかり、エジプト各地の空軍基地から21機ものMiG-21がスクランブル出撃し、偽の偵察機の迎撃を目指した。楽な標的と思ったらファントムとミラージュIII計16機の待ち伏せだった。三分間でMiGの5機が撃墜されたが、ファントムとミラージュが2機ずつ、残り1機は両型機で撃墜した。ファントム撃墜のMiGの一機は「超低空」撃墜でレーダー誘導のAIM-7スパローが仕留めたが、設計よりはるかに低い高度での出来事だった。別のイスラエル機は「15千フィートから2千フィートまでMiGを追尾し、AIM-9Dサイドワインダー一発で撃墜した」とアロニが記している。イスラエル側には技量だけでなく運も味方した。ロシア人パイロットがファントムの後尾につけ、アトール熱追尾ミサイルを発射したが不発だった。

イスラエルの勝利には詩的な響きもあった。だがイスラエルはうぬぼれず当初はエジプト機を撃墜したと認識していたほどだ。むしろエジプトがソ連軍事顧問に憤慨した。「エジプト軍にはロシア人の失態に笑いをこらえられない向きがあった」との指摘がイスラエルにある。「この戦闘以後、ナセルは飛行隊のロシア人教官を笑ってはならぬとの訓示を出している」

米国が仲介して消耗戦戦争は終結したが、イスラエルとアラブ諸国との戦闘はこれで終わったわけではない。休戦したがSAM陣地はスエズ運河地帯に残り、イスラエルは後悔することになった。三年後にエジプトとシリアに供与したSAMでソ連はスエズ運河とゴラン高原でIAF機へ復讐した。

ただし、今回はソ連パイロットや顧問団は関与していない。エジプト大統領アンワル・サダトが1972年に国外追放したためだ。

現在のイスラエル、米国、ロシアはシリア上空で対決を避けているようだ。だが1970年同様に接近しているため衝突の危険性は存在し、米軍空爆で死傷者が発生している中でロシア傭兵にも犠牲者が発生している。イスラエルもシリア国内でイラン軍を標的にしているが、ロシアの迎撃を受けたり、ミサイルに追われる事態が発生すれば、イスラエルは反撃にでるだろう。1970年同様に火薬庫の爆発の懸念はもしではなくいつかの問題だ。
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Flickr

2018年4月28日土曜日

独仏共同の哨戒機へのP-1売り込みは成功するか

思ったように成約しない日本の防衛装備ですが、商売とはそういうものでしょう。さらに実績がないのですから日本製装備にハンディがあるのは仕方ありません。しかし、P-1やC-2はニッチの製品ではないでしょうか。ましてや一国で単独開発する案件はこれから減るはずですから稀有な存在なのは明らか。そうなると政府も知恵をしぼって後押し(政府が主役になってはいけません)すべきであり、メーカーにももっとフリーハンドを与えていいのでは。企業メカニズムが動く方が効果が高いと思いますが、皆様のご意見はいかがでしょう。

Japan seeks role in French-German marine surveillance plane project - sources仏独哨戒機開発事業に日本が参画を目指している



TOKYO/BERLIN, April 25 (Reuters) - 第二次大戦後初の大型防衛装備の海外販売制約を目指し、海上哨戒機調達を狙う仏独共同案件に日本がP-1対潜哨戒機を提案している。日本政府筋二か所から確認した。
三か国政府による協議は昨年始まり、日本政府はP-1のメーカー川崎重工業にフランスのダッソーエイビエーションタレスSA両社との話し合いを求めていると内容に詳しいものの報道陣へ情報開示権限がない同上筋は明らかにしている。
「ゼロから作れば莫大な費用がかかるし仮にスペイン他が調達に動いても市場規模は小さい」と関係筋の一人が語る。
だがP-1売り込みは容易でなく、現地競争相手は多い。
エアバスはA320neo旅客機の軍用型を検討中としており、フランスのダッソーエイビエーションはファルコン8Xビジネスジェットの転用に向かう。両社は本件について論評を避けている。ボーイングもP-8Aポセイドンの売り込みを図りそうだ。
「防衛省の後押しで当社はP-1を他国に紹介してきた」と川崎重工業広報は述べる。「ただし、個別案件についてお話しできない」
防衛省は当方の照会に回答していない。
ドイツは現有哨戒機の後継機でロシア潜水艦の哨戒活動が冷戦終結後で最高水準になっていることへ対応させたいとする。
独仏国防相は今週のベルリン航空ショー会場で新型哨戒機の共同開発に関する文書に署名するとドイツ軍事筋が述べている。
ドイツ国防省の報道官は本件について論評を避けつつ、「ドイツ、フランス両国は現在存在する良好な協力関係の拡大可能性を検討中」とのみ答えている。
両国はその他共同調達や共同開発の実現を目指し、戦闘機や無人機もここに含む。またロッキード・マーティンC-130J輸送機の共同運用も実現する予定だ。

海外販売は成立するのか

安倍晋三首相は長きにわたった武器輸出禁止措置を4年前に解除している。
ただ日本製防衛装備で成約した海外販売は一件もない。各社がしのぎを削る商戦の中で日本の防衛産業はこれまで長く孤立してきた。
.2015年に英国にP-1を提案したが、採択されたのはボーイングP-8だった。2016年にはオーストラリア向け潜水艦販売案件はフランスの艦船メーカーDCNSに流れた。
欧州の防衛アナリスト、軍事筋には独仏共同選定でP-1は厳しい競争に直面するとの声が多い。なお、新型機の就役開始は2035年の設定だ。
「この時点で日本の川崎に成約できる、できないを占うのは時期尚早だ」との声が軍事筋にある。ボンバルディアイスラエル航空宇宙工業レオナルドが哨戒機商戦に参入を狙っている。
日本はフランス、ドイツ両国との防衛上の関係強化を狙いP-1をベルリン航空ショーで展示する。P-1は高高度または海面近くで高速飛行性能があり、ロッキード・マーティンP-3Cオライオンの後継機として開発された。
ドイツもオライオンを運用中だがフランスはダッソーエイビエーションが1980年代に製造したアトランティーク2(ATL2)を運用する。
P-1は日本の広大な領海を守るべく、太平洋から東シナ海まで飛行しており、後者では中国と日本が無人島をめぐり領有権を争っている。
四発の同機は胴体と主翼での亀裂やエンジン不調のため供用開始が2015年にずれこんだが、光ファイバーで飛行制御をコックピットから行う初の量産機になっている。■

(Reporting by Nobuhiro Kubo in TOKYO and Andrea Shalal in BERLIN; writing by Tim Kelly; Editing by Gerry Doyle)

2018年4月27日金曜日

米B-52編隊で中国広東省へののスタンドオフ攻撃演習をした米国の狙い

US B-52 bombers fly close to Guangdong coastB-52爆撃機編隊が広東省付近を飛行した模様

Rarely had US strategic bombers been seen above waters so close to the Chinese shore米戦略爆撃機が中国本土付近まで進出するのはまれなこと

By ASIA TIMES STAFF APRIL 26, 2018 4:01 PM (UTC+8)
今週火曜日午後、米空軍B-52ストラトフォートレス戦略爆撃機二機が広東省沿岸から250キロ以内をに飛行したとの台湾報道があり、USAF機材の動向を追うツイッターグループAircraft Spotsも同様に伝えている。
登録番号57-1454と60-0360の二機がコールサインHERO01、HERO02で台湾とフィリピンの間のバシー海峡上空で確認されており、グアムを発進したと見られる。
両機は南シナ海北部を西に向かい台湾が占拠する東沙諸島(香港から南東340キロ)上空を通過し、ジグザグコースをとり嘉手納航空基地に帰投した。この様子をAircraft Spotsが示している。また二機が沖縄付近で空中給油を行ったことが判明している。
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Aircraft Spotsに出たB-52二機編隊の飛行経路 Photo: Twitter

台湾の自由時報Liberty Timesは米戦略爆撃機が中国本土付近を飛行するのは珍しいと指摘。一方でH-6Kはじめ人民解放軍の爆撃機やスパイ機がひんばんに同空域を飛行しており、台湾外周を一周飛行することも多いという。
同紙によれば今回の飛行経路から爆撃機編隊がトマホーク巡航ミサイルで広東省沿岸部を標的にした模擬攻撃を行ったのがわかるという。
トマホーク巡航ミサイル最大射程は2,500キロあり、東沙諸島付近から発射すればPLAの軍事施設多数の攻撃が可能だ。
B-52が今回投入されたのは中国が台湾領空をないがしろにすれば米国としても対応の用意があると示す狙いがあったためと見られる。
中国がいわゆる第二列島線(小笠原諸島、火山列島からマリアナ諸島)の突破を狙っているのは明らかでH-6K爆撃機の航続距離を活用しCJ-10Kはじめ対地攻撃ミサイルを空中発射するのだろう。
こうしたミサイルの実用射程は1,500キロで台湾の太平洋側を飛ぶH-6Kから発射すればグアムも狙える。
噂だがH-6Kは空中給油でグアム付近まで進出可能ともいわれ、原型がソ連時代の旧式爆撃機にステルス性能は皆無で台湾や日本のレーダーなら簡単に探知できるはずだ。
中国国防省は今回の中国防空識別圏への侵入にまだ反応していないが、中国の防空レーダーが対応したのか、軍用機が迎撃に出撃したのかは不明だ。

だが中国のニュースポータルSinaに26日評論が出ており、大型のB-52も中国の防空体制の前には脆弱であり、中国にはロシアから輸入したS-400トリウームフ防空ミサイルもあると指摘している。■

シリア空爆は北朝鮮攻撃の予行演習になるのか




金正恩が見え見えの核実験凍結等の発言をしてすぐ反射的に喜んだのは韓国与党勢力でした。韓国の野党や日本は冷たい見方をしていましたが、今や金正恩に核兵器放棄の意図が全くないことが明らかになり、世界はあきれているのが現実です。ただこの記事にあるシリア攻撃が北朝鮮を頑なにさせているとの見方はどうでしょうか。来るべき米朝会談が決裂し、金正恩をなびかせることが出来なくなった米国が北朝鮮を攻撃する可能性が減る可能性はないでしょう。つまり、朝鮮半島の危機は緩和されることはないと見ます。今年上半期の動向が重要です。



Syria: A Preview of What Is to Come in North Korea? シリア空爆は北朝鮮にこれから起こることの予告編だったのか



April 22, 2018


先週の米英仏協調によるシリア国内化学兵器施設三か所への攻撃には明白な目的があった。サリンや塩素ガスを使用したバシャル・アル-アサド政権にはっきりと警告のメッセージを送ることだった。作戦自体は限定的ながら精密に攻撃対象を選び、死傷者は一人も発生していない。作戦完了後にジェイムズ・マティス国防長官は報道陣に今回のミサイル攻撃は「一回限り」でアサド二個例以上の化学兵器使用に向かわせないことを目指したと強調した。

今回はアサドを狙った攻撃だったが、事態の進展を注視していたのはアサドだけではなかった。トランプ大統領が今回の武力行使に踏み切った背景にもっと大きな構図があり、アサドはわき役に過ぎないとの見方がワシントンにある。タカ派の色彩が濃いワシントンのシンクタンクには今回のシリア攻撃にはアサドへの懲罰以上の意味があると指摘する向きがある。国際社会に北朝鮮の金正恩にホワイトハウスの言動に深刻に対応させる意味があることを示したというのだ。

ジョージ・W・ブッシュ政権でスピーチライターだったアメリカンエンタープライズインスティチュートのマーク・ティーッセンMarc Thiessenがワシントンポストに寄稿している。「シリアでの見せ場でトランプには北朝鮮のみならず駐豪へもメッセージを送り金正恩政権にも方向転換を迫り、今回の事例が示すように言葉の脅かしはこけおどしではないと分からせようとした」

残念ながらティーッセンの指摘は最良の場合のシナリオではない。トランプ大統領は北朝鮮指導部の足元にメッセージを送ったが、病的なまで偏執狂の金正恩はワシントンの専門家が期待するような形に受け止めていない。トランプに今後始まる北朝鮮相手の核交渉を有利にさせるのではなく、アサドへの空爆で北朝鮮には核兵器を交渉対象とすべきではないと考えさせたのではないか。シリアの首都近郊にミサイルの雨が降ったことで北朝鮮首脳部は核兵器廃棄を材料に交渉してはまずいと考えたはずだ。シリア首都近郊にミサイルの雨が降ったことで北朝鮮には核兵器および運搬手段がなければさらに危険な立場に追いやられると確信したはずだ。

では北朝鮮がシリア攻撃をどうとらえていたのか確実にわかる方法があるのか。もちろん確実なことはわからない。北朝鮮は難関中の難関で米情報機関もその実態を何十年も把握できないままだ。ただ北朝鮮外務省関係者と金正恩本人から十五年に及ぶ米主導の軍事行動で北朝鮮は核抑止力なくして生き残れないと考えるに至ったことがうかがえる。国家情報局長ダン・コーツが昨年に北朝鮮政府が過去15年に核兵器を保険と考えるようになったと表現したのは全く正しい。とくに同国は地球最強の軍事力を有する相手と対峙しているのだ。

金正恩は核兵器をこれから入手する必要はない。すでに保有しているからだ。トランプがシリアを攻撃したことで、金正恩はますます核廃絶にのりだせなくなっている。核抑止力はそこまで重要であり、金正恩政権が重要であるため米国は月でも星でも差し出しかねない様相だ。つまり、平和条約、韓国からの撤兵、経済生産の完全解除であり、北朝鮮はこれからもすべてての申し出を拒絶できる立場になる。またトランプ政権が求める実証可能な非核化についても同様だ。

端的に言えば、金正恩はサダム・フセインのような裁判にかけられることを避けたいと考え、ムアマル・アル-カダフィのように襲撃され殺害されることも望まず、バシャル・アル-アサドのように米空襲を何度となく受けて都度地下壕に退避する生活も望んでいないのだ。

トランプ大統領は金正恩との会談に高い期待をつないでおり、超大国を代表した交渉役として米国民の利益になるとすれば重要な会談でも途中放棄する構えだ。トランプは心底から金正恩に核兵器放棄を迫れると考えているようで、同時にワシントンが求める韓国、日本との安全保障枠組みをこれまで通り守れると考えているようだ。地政学並びに朝鮮半島を学んだものならここまで楽観視した考え方が笑止千万であることは承知の上だと思う。北朝鮮が国際約束を守ることにかけては見掛け倒しの実績しかないこと、北朝鮮政府の気まぐれな対応、腹黒さの歴史はよく知られている。仮に核兵器処理の交渉が本当に実現するのであれば、トランプ政権の最大の功績として北朝鮮から期待できるのはこれ以上の核開発を凍結し、核兵器のミサイル搭載も止めることだが、実際にこの二つの実現したとしてもその実証は国際的な査察体制がない限り不可能だろう。

だが懲罰行動的な空爆をアサドの化学兵器開発に加えたトランプは北朝鮮対応を自ら困難に変えてしまった。金正恩には自らの核兵器保有を守る理由ができてしまったのだ。■
Daniel R. DePetris, a fellow at Washington-based think tank Defense Priorities. He is a columnist for the National Interest and the American Conservative. Follow him on Twitter at @dandepetris.

Image: A U.S. Air Force B-1B Lancer and crew, being deployed to launch strike as part of the multinational response to Syria's use of chemical weapons, is seen in this image released from Al Udeid Air Base, Doha, Qatar on April 14, 2018. U.S. Air Force/Handout ​