2021年11月11日木曜日

最新の中国軍事力レポート(DoD)からPLANにハイライトするとこうなる。各種艦艇の整備が進み、PLANは世界最大の海軍となった。報告書は中国海兵隊にも注目。中国の視点がグローバル規模に拡大するのに呼応か。

 

DoD報告書ではPLAN艦艇面の整備状況よりも中国版海兵隊の拡充を注目している観があります。



国防総省(DoD)から今年版の中国軍事力並びに安全保障上の進展に関する報告書が公開された。一般には中国軍事力レポートと呼ばれる。最新報告は中国海軍の艦艇数が355隻と世界最大規模になったと評している。また報告書では人民解放軍の戦力整備の成熟化に注意喚起し、深刻な脅威だとしている。

 

報告書はPRCの国家戦略が進化を続けており、戦略目標としてのPLAの防衛方針、軍事戦略を解説している。またPLAの軍事装備近代化、改革の大きな流れにも触れ、PRCの目指す地域大、世界大の目標を解説している。

 

今回の報告書ではPLAが長距離兵力投射能力の整備を全ドメインで進めていること、とくに宇宙、宇宙対抗作戦、サイバー能力のほか核兵力の大規模拡張を狙っていることに触れている。


 

 

では同報告書が人民解放軍海軍(PLAN)についてどう伝えているか見てみよう。

 

人民解放軍海軍(PLAN)は数の上で世界最大規模の海軍部隊となり、戦闘艦艇は355隻のうち水上戦闘艦艇は145隻を数える。2020年時点でPLANには多数の近代的な多任務艦多数がある。近い将来、PLANには長距離精密攻撃の実施能力が整備され、潜水艦や水上艦からの巡航ミサイルによる対地攻撃が可能となる。またグローバル規模での兵力投射能力も実現する。PRCは対潜戦(ASW)能力の整備を進めており、自軍の空母部隊や弾道ミサイル潜水艦の防御態勢を強めようとしている。

 

PLAN主要部隊の展開状況

 

その他報告書ではPLANについて以下ハイライトしている。

  • PRCの初の国産建造空母は2019年に進水し、レンハイ級巡洋艦も2020年初頭に進水した。PRCは国産空母二号艦の2024年就航を目指している。

  • 2020年、PRCはYushen 級強襲揚陸艦(075型LHA)二号艦を進水させた。三号艦も2021年1月に進水した。

  • 潜水艦、水上艦艇から巡航ミサイルを発射し長距離精密攻撃を加えることでPRCはグローバル規模の兵力投射が可能となる。PRCは対潜戦装備の拡充も進めており、PLANの空母や弾道ミサイル潜水艦の防御訓練も展開している。

 

PRCによる2019年度版国防白書はPLANが近海防衛ならびに外洋への兵力投射を重視する戦略要求事項に焦点をあてており、「従来の近海防衛重視から外洋での任務遂行に必要な措置に軸足を移そうとしている」とある。

 

PRCが目指す目標は「強力かつ近代的な海軍戦力」の実現であり、その中でPLANは旧世代装備に代え新型かつ大型で多任務に対応可能な装備を導入しつつある。2020年時点でPLANは大部分が近代艦艇となり、高性能対艦、対空、対潜兵器やセンサー類を整備している。PLANは同時に海上共同作戦を重視しており、PLA内部の各軍との統合も図っている。PRCが海洋ドメインを重視しているため、PLANにも中国本土から遠く離れた地点での運用への要望が高まっている。

 

PLANは艦艇、航空機の運用のため装備導入、訓練を展開しており、PLAN海兵隊(PLANMC)がPLANの隷下にある。2020年、PLANは構造改革をさらに進め、PLA司令部は作戦統帥をPLA合同戦域司令部に任せることとした。PLAN司令部は組織運用、人員配備、訓練、海軍装備の導入に専念することになった。

 

戦力構造

 

PLANは約355隻を運用する世界最大規模の海軍部隊となった。水上艦、潜水艦、空母、揚陸艦、機雷戦艦艇、補給艦までをそろえる。これ以外に巡視戦闘艦艇85隻があり、対艦巡航ミサイル(ASCMs)を運用する。2025年には420隻に増える見込みで、2030年に460隻になる。増加分は主に主要水上艦艇だ。PLANの戦力構造は三つの艦隊を構成し、これと別に潜水艦戦隊、水上艦部隊、航空旅団、海軍基地がある。PLANの北方戦域海軍は北方戦域司令部の隷下にあり、東部戦域海軍は東部戦域司令部の隷下、南方戦域海軍は南方戦域司令部の隷下にある。

 

潜水艦部隊

 

PLANでは潜水艦の近代化を優先事項とするものの、潜水艦部隊の増勢はかなりゆっくりとしているものの、戦力の成熟化をめざし、新技術を導入し、造船施設の拡充を進めている。PLANには原子力推進弾道ミサイル潜水艦(SSBNs)が6隻、原子力推進攻撃型潜水艦 (SSNs)6隻のほか、ディーゼル電気推進式攻撃型潜水艦 (SSs)が46隻ある。PLANの潜水艦部隊は2020年代を通じ65から70隻程度になり、旧型艦を廃止するたびに新型艦を導入する。

 

PRCは通常型潜水艦ながら高性能対艦巡航ミサイル(ASCMs)の運用能力の整備を進めており、2000年代にPLANはロシアからキロ級SS12隻を調達した。このうち8隻にASCM運用能力が付与されている。中国国内の造船所から宋級SS(039型)13隻、元級ディーゼル電気推進艦 (SSPs) ( 039A/B型)17隻が引き渡されている。PRCは2025年までに元級は25隻以上建造するとみられる。

 

これまで15年にわたりPLANは原子力潜水艦12隻を建造した。商I型SSNs(093型)2隻、商II型SSNs (093A型)4隻、晋級SSBNs (094型)6隻で、この晋級は中国の海中核抑止力としてはじめてまともに機能したもので、各艦はJL-2SLBM12発を搭載する。2019年に、PRCは建国70周年の軍事パレードでJL-2が稼働可能であることを誇示した。次世代のSSBNが096型で2020年から建造を開始したようで、新型SLBMを搭載する。PLANは094型096型のSSBNを同時に運行すると見られ、2030年には8隻を常時運用するとみられる。習近平主席が2018年に出したSSBN部隊の「強力な拡大」を実現するものだ。

 

2020年代半ばまでPRCは093B型誘導ミサイル原子力攻撃型潜水艦を建造すると見られる。商級の派生型でPLANの対水上艦攻撃能力を補強し、LACMsを搭載すれば気づかれずに対地攻撃を実施する選択肢となる。PLANの対潜能力向上として水上艦艇や専用機の整備があるが、まだ深海度での対潜戦(ASW)能力が不足したままだ。PRCではASW装備の拡充とともに訓練によりPLANの空母や弾道ミサイル潜水艦の防御をめざしている。そのためPLANはSWを重視することで広義の海洋運用能力が拡充されるとしており、本土付近の海域の防御とともに西太平洋やインド洋へのアクセス確保を目指している。

 

水上艦艇

055型駆逐艦南昌ナンチャンに052D型駆逐艦昆明クンミンが続く。ロシア国防省写真

 

PLANは引き続き水上艦艇の建造を進めており、新型油同ミサイル巡洋艦(CGs)、誘導ミサイル駆逐艦(DDGs)、海防艦(FFLs)の増勢が目立つ。対空・対艦・対潜能力が向上し、PLANがめざす陸上配備の防空網の有効範囲外での作戦実効性を強める意義がある。2019年末にジャンカイII級誘導ミサイルフリゲート艦の三十隻目を就役させて同級の建造が終わった。後継艦の建造も始まっている。

 

PLANは沿海域戦闘能力の強化をめざしており、東シナ海、南シナ海での作戦を念頭に入れている。そのためジャンダオ級FFL(056型)の建造のピッチを上げている。ジャンダオ級は50隻が就航しており最終的に70隻になる見込みだ。最新建造艦では対潜戦(ASW)を念頭に曳航式ソナーも備える。PRCは双胴船形式の誘導ミサイル艇ホウベイ級(022型)も60隻建造しており、「近海」に投入する。

 

PLANの進める大型艦建造ではルーヤンIIIDDG(052D型)とレンハイ級CGがある。2020年末までにPRCはルーヤンIII級DDGを25隻進水させ、うち12隻は艦体を延長したルーヤンIIIMOD型で64セルの多用途推力発射管システム(VLS)を搭載し、巡航ミサイル、SAMや対潜ミサイルの発射に使う。2020年にはレンハイ級誘導ミサイル巡洋艦の一号艦が就役しており、8隻目も建造を開始した。レンハイ級には112セルのVLSがあり、ASCM、対空ミサイル、魚雷、対潜兵器のほか今後LACMや対艦弾道ミサイル (ASBMs) を搭載するとみられる。

 

PLANは対艦攻撃能力の整備を重視している。PLANのフリゲート艦や海防艦は YJ-83/YJ-83J ASCM (97 nm, 180 km)を搭載しているが、ルーヤンII級DDGではYJ-62 (215 nm, 400 km)を搭載する。さらにルーヤンIII級DDGおよびレンハイ級CGでは最新型ASCMのYJ-18A (290 nm, 537 km)を運用する。駆逐艦では改装後に超音速ASCMのYJ-12A (250 nm, 285 km)運用能力を付与されているものがある。またキロ級SSsのうち8隻にロシア製RS-SS-N-27b ASCM (120-nm, 220-km)を搭載している。式宋級SS、元級SSP、商級SSNには最新の潜水艦発射式国産ミサイルYJ-18が搭載されてい居る。これはロシア製S-SS-N-27b ASCMを改良したものだ。

 

PLANでは長距離ASCMには水平線越え(OTH)目標捕捉能力が必要と理解しており、この不足を補おうと各軍と協力し偵察監視指揮統制通信機能を戦略、作戦、戦術の各レベルで整備しようとしている。狙いは高精度の標的時報を水上艦、潜水艦に送り、ミサイル発射に使うことだ。

 

PLANは引き続き世界規模の多任務遂行部隊を目指しており、対地攻撃能力の次は対艦、対空実施能力の拡充だろう。PLANは最新の巡洋艦のほか駆逐艦や開発中の093B型原子力攻撃型潜水艦に搭載するだろう。対地攻撃能力が水上部隊や潜水艦に追加されれば長距離攻撃の選択肢が増える。これによりPRCはインド太平洋以外でも海洋から対地攻撃を実施する能力が実現する。

 

揚陸戦闘艦

075型LHD一号艦海南ハイナン

 

PLANの進めるLHA部隊整備から遠征戦闘能力の実現を目指す姿が見える。2020年4月にユーシェン級LHA(075型)の二号艦が進水している。一号艦は2019年に進水してろい、三号艦が2021年1月に進水した。16カ月で三隻が進水したことになる。ユーシェン級は大型で高性能の強襲揚陸艦となり、PLANに全方位の遠征戦闘能力をもたらす。大型上陸用舟艇、兵員、装甲車両、ヘリコプターを搭載する。さらに大型のユーチョー級揚陸ドック型輸送艦(LPD)(071型)が7隻あり、8号艦が2020年に海上公試を開始した。ユーチャオ級とユーシャオ級によりPLAの遠征能力は規模と運用期間で従来の艦を上回る。両級で新型ユイ級エアクッション中型上陸用機材ほか各種ヘリコプターのほか戦車、装甲車両、PLAN海兵隊を長期間展開できる。

 

空母

 

2019年12月に初の国産建造空母山東を就役させた。同艦は2017年進水のあと海上公試を2018年から2019年にかけ実施していた。山東は南方戦域海軍の海南島基地で2000年末に視認されていた。同艦は遼寧(ソ連時代のクズネトフ)の改良型でスキージャンプ式発艦方法を採用した。PRCは2020年も国産二号艦の建造を続け、さらに大型化しカタパルト発艦方式を採用している。

 

同艦はさらに多くの艦載機を搭載し、固定翼早期警戒機もここに加え、航空作戦を短時間で展開し、空母航空部隊の有効範囲を拡げ、攻撃の密度も高くなる。同艦は2024年就航の予想でさらに追加建造が続く。

 

PLANでは将来の空母艦載機の開発も進めており、J-15戦闘機ではカタパルト発艦に改装した派生型もあり、すでに陸上施設の蒸気式、電磁式カタパルトでテストしており、さらに複座型J-15Dが翼端に電子戦ポッドを搭載し各種機体一体型アンテナもつけ試験施設にある姿が判明している。同機は電子攻撃任務を専門とするようだ。さらに艦載AEW機としてKJ-600がある。同機モックアップは驚くほどE-2C/Dホークアイに酷似し、試作機が2020年8月にフライトテストを開始した。

 

補助艦艇

901型高速戦闘支援艦フルンレイク(AOE-965)JMSDF picture.

 

 

PLANは外洋補助支援艦艇の大量建造を続けており、情報収艦(AGIs)、海洋観測艦(AGOSs)、燃料補給艦 (AORs)、病院艦、潜水艦救難艦他専用艦がある。さらに初の国産砕氷艦シューロン2が2019年から就役している。同艦は極地研究所が運用している。2020年に同艦は初の北極海航海を行った。

 

PLAN海兵隊 (PLANMC)

南シナ海で中国揚陸部隊が演習を展開した

 

 

PLANの陸上戦闘部隊がPLA海軍付属海兵隊(PLANMC) で中国の実戦部隊の中でも増強ぶりが目立つ。以前は二個旅団で揚陸作戦と南シナ海拠点の防御専用だったが、2020年に8個旅団に拡大し、機動力と装備近代化を経て第一列島線での作戦演習を行い、新設旅団4個に装備を与え訓練も続ける。特殊作戦旅団一個とヘリコプターによる航空旅団一個が追加された。PLANMCの改編と近代化はさらに続き、中央軍事委員会がPLAに出した「機械化達成」を2020年末までに達成しCCPの創設100周年となる2021年に備える目標があった。習主席はPLANMC司令部に足を運び戦闘能力の整備を進め、「戦闘への備え」を強め、「警戒態勢を高く保つ」べく訓練レベルを上げるよう求めた。

 

PLANMCは2020年末までの「機械化達成」のPLA目標を達成できなかった模様だが、新設旅団が2020年に作戦実施可能な状態(IOC)になっている。また航空旅団もIOCを達成しており、ヘリコプターの艦上運用養成を完了している。航空旅団によりPLAN、PLANMCはともに迅速対応能力を実現できる。これは習主席がPLANMC司令部で発言した内容に一致する。またPLA近代化の一環でPLANMCも遠征作戦用の装備品を調達しており、機動旅団に配備している。

 

今後もPLANMCは遠征戦闘能力を整備し第一列島線外でPRCの海外権益の拡大に呼応した防御能力を高めていく。PLANMCは国外演習を実施しており、長距離移動運用や各種天候条件下での作戦実施の能力を磨き、迅速な対応能力を維持している。さらに、PLANMCは海賊対策や国際軍事行動含むNWMAの展開をめざし資源、時間を注入している。PLANMCの重点が地球規模の遠征作戦に移行しているようで、揚陸作戦実施能力では南方戦域配備の二個旅団を三個に増備する一方で北方戦域も同じく三個旅団に拡充されており、揚陸作戦用装甲車両の運用に磨きを入れている。

 

PLANMCはPRC初の海外軍事支援拠点となったジブチに配備されており、中国軍の活動範囲と戦略的影響力をアフリカ、中東地域に拡大している。またジブチにPLANMCが配備されていることでPRCが投じた域内のインフラ施設ならびにアフリカに100万人、中東に50万人居住するPRC国民の保護に迅速対応できる。またPLANのアデン湾海賊対策任務部隊と連携してPRCの貿易面での権益を守る。さらにPRCの軍事外交政策をPLANMC

が下支えしている。例として中国海兵隊はロシア、タイと共同訓練しており、米国・オーストラリアとの交換訓練にも参加している。■

 

US DoD's 2021 China Military Power Report: PLAN is the Largest Navy in the World

Xavier Vavasseur  05 Nov 2021


米空軍が海上自衛隊のUS-2を視察。開発を目指す水陸両用機のヒントを模索か。新たな日米協力のタネになるか当面注視したい。

 Stars and Stripesの記事です。多大な労力と時間を費やして完成した世界に例のない水上機技術の知見を日米で何らかの形で共有する可能性が出てきたのではないでしょうか。

 

Capt. Koichi Washizawa of the Japan Maritime Self-Defense Force gives a tour of the ShinMaywa US-2 seaplane to the deputy commander of Air Force Special Operations Command, Maj. Gen. Eric Hill, at Marine Corps Air Station Iwakuni, Japan, Tuesday, Nov. 9, 2021.

 

米空軍特殊作戦軍団副指令エリック・ヒル少将が岩国海兵隊航空基地で新明和US-2を視察した。Nov. 9, 2021. (Jonathan Snyder/Stars and Stripes)

 

 

空軍特殊作戦軍団副司令が岩国海兵隊航空基地を11月9日訪問し、日本の新明和US-2水陸両用機を視察した。米空軍も同様の機種を開発中だ。

 

「US-2水上機には空軍特殊作戦軍団が関心を寄せている」「滑走路の制約から自由になるため各種の策に取り組んでいる」とエリック・ヒル少将はStars and Stripesに同日語った。ヒル少将は海上自衛隊第31航空群のUS-2を視察した。

 

「南シナ海が特殊作戦部隊用の着陸地点を確保できれば大きな機会が実現する」

 

空軍では中国の動きに対抗する作戦構想を立てようとしており、滑走路の制約を受けず航空作戦を展開する可能性を模索している。水面が滑走路の代わりとなれば航空機の運用がどこでも可能となる。

 

空軍が開発中の水上機はMC-130JコマンドーIIを特殊作戦用に改造する構想だ。

 

MC-130Jの水上機版開発では空軍研究本部が特殊作戦軍団に協力している。

 

同軍団には民間企業も加わり、仮想現実技術を使い水陸両用機試作型のデジタルモデルのテストを行っていると空軍は説明。

 

同軍団では水陸両用型にしたスーパーハーキュリーズの試作型を2022年までに完成させたいとヒル少将は空軍協会で9月に発言していた。

 

「実機開発をはじめるに当たり、同盟国から知見を学び、日本の水上機を視察することにした」「学ぶものは多い」(ヒル少将)

 

日本のUS-2は捜索救難、空輸、敵性勢力の艦船の偵察や対潜戦に投入されている。着水時の機体損傷を回避する機構の開発に8年を費やした。また巡航速度が低いこともあり、最大9フィートの波高での離着水が可能というのが新明和工業の説明だ。

 

「自力で開発調達するのか、既成機を調達するのか、方向性を語るのは時期尚早」「あるいは双方を組み合わせるかもしれない」(ヒル少将)

 

広大な太平洋で迅速な戦闘展開を旨とする方針では滑走路の制約から解放されることの意味は大きい。前方作戦区域で分散した各地で機体を発進、回収、整備することを同盟国や他軍の協力で実施することが狙いだ。

「当地での同盟関係には強固なものがある。軍組織間での協力姿勢も強く、この地域の各種問題に日米で共同して取り組んでいる。この強い協力関係から広大な海洋面での防衛、作戦実行を確実に行う各種能力を実現していく弾みが生まれると思う」とヒル少将は語った。■


Air Force special operations general visits Japan to gain insight on seaplanes

BY JONATHAN SNYDER• STARS AND STRIPES • NOVEMBER 10, 2021


2021年11月10日水曜日

J-20マイティドラゴンの真の性能を推定する。(一部情報が古くなっています)中国が考える第五世代機は実はドッグファイト能力も想定しているのではないか。

 

 

 

 

2011年のこと、大型で矢じりに似た灰色塗装のジェット機の初飛行で中国は初のステルス機成都J-20「威龙Mighty Dragon」を公表した。六年後にJ-20は人民解放軍空軍(PLAAF)に配備を開始した。

 

同機はレーダー誘導式ミサイルで百マイル単位の距離から敵機を狙うステルス機で厳しい戦闘状況でもパイロットを無事帰還させるといわれる。

 

 

だがJ-20はどこまでの威力があるのか。またどんな任務を想定するのか。つまるところ米国初のステルス戦闘機F-117ナイトホークは実態は戦闘機ではなく、空対空戦闘能力は皆無だった。

 

PLAは装備品の情報を隠し、特に性能面では公表情報は少ない。そのためJ-20の最高速度、航続距離(マッハ2、2,000マイル)はともに推定にすぎない。兵装庫は4-6発の長距離ミサイルあるいは爆弾を搭載するものの大型兵装は搭載しないようだ。

 

各国筋は同機を高速かつ長距離運用可能な機体とみているが、同機には近接交戦で必要となる機敏な機体制御は欠如している。珠海航空ショーの飛行展示でも際立った操縦性を示していない。

 

これを見て観測筋はJ-20を長距離超音速攻撃機あるいは一撃離脱の迎撃機で敵防空網を突破し、脆弱な給油機やAWACS機を攻撃する存在と見ている。

 

だがThe Diplomatのリック・ジョーの主張はこうした推論は同機設計上の特徴に目をつぶり、中国がJ-20を多任務戦闘機で「強力な」ドッグファイト能力があると説明していることに目をつむった集団思考の典型だと指摘している。

 

たとえば、珠海ショー(2018年)で配布された資料ではJ-20は「航空優勢を確立し、中長距離迎撃に対応し、援護および深部進入攻撃」が可能としていた。これは多任務戦闘機だということだ。

 

「よく見られる誤りは中国航空宇宙産業界では第五世代制空戦闘機の製造はできないとし、技術的に低い芸芸機あるいは攻撃機に落ちつくというものだ」とジョーは述べている。

 

大型のJ-20だがロシアのSu-35フランカーEより短い。Su-35は最高性能の機体制御能力を有するといわれるジョーは2001年のSong Wecongによる検討内容を引用しており、Songはステルス機は「スーパークルーズ性能とともにストール後の機体制御などこれまでにない性能が必要だ」としている。SongはJ-20設計主任Yang Weiを指導した技術者だ。

 

Songの結論は理想的なステルス戦闘機はカナード翼、前縁部根本の延長(ストレーキとも呼ばれる)、S字状の機体下部空気取り入れ口を採用し、ステルス、スピード、操縦性のバランスをとるべきとした。このすべてがJ-20にみられる。

 

J-20搭載のレーダー性能は不明のままだが、一部には探知されにくいAESAレーダーといわれ、電子光学赤外線センサーで全周探知を可能とし、センサー情報を融合しデータリンクで僚機と共有できるともいわれる。これは米F-35の高性能センサーで実現している機能だ。こうした機能はステルス機探知に有効だ。

 

J-20二はヘルメット搭載画像機能もつき、PL-10E熱追尾ミサイルを標的の方向を向けば発射できる。短距離ミサイルは機体側部に搭載し機内で回転させて連続発射できる。

 

こうした新装備が採用されたJ-20は近接交戦も想定しており、あわせて機体兵装庫から長距離極著音速PL-15ミサイルも発射できる。高機動戦闘機との交戦では短距離ミサイルを使い、撃墜させる可能性は80%と推定する専門家もいる。

 

中国設計陣は推力偏向エンジンもJ-20に搭載した。排気口ノズルを操作し小回りをめざすもので、PLAAFは同じく推力偏向エンジンを搭載したSu-35もロシアから導入している。

 

推力偏向エンジンで高機動性能が実現するものの、新鋭機でことごとく採用されていないのは重量増、コスト増に加えレーダー断面積(RCS)の最小化に反するからだ。さらに推力偏向エンジンを戦闘時に多用すると機動エナジーが急減し、機体の動きが緩慢となり敵機の格好の標的となる。ネヴァダ州の空戦演習でこれが実際に見られた。米F-15とインド空軍フランカーの模擬空戦が展開されている。このため、西側で推力偏向エンジンを採用する例は少ないがF-22は例外だ。中国が推力偏向に関心を示すのは機動性をどうとらえているかを示している。

 

J-20をみるとステルス機と交戦となればどうなるのかという疑問が出てくる。両機ともステルス性能が高ければ、50マイル未満でやっと探知できるはずだ。この距離では空戦能力がカギとなる。米ステルス機が中国の想定する主要競合相手で、J-20が対抗する想定が十分考えられる。

 

J-20はF-22に対抗できる可能性が低いが、F-35相手なら危険な相手となる。F-35は視界内交戦に最適化されていないためだ。だが、F-22、F-35ともに全方位RCSはJ-20より低いと思われるものの、J-20はロシアのSu-57を上回るステルス性能を有しているようだ。

 

2011年にオーストラリアの航空部門専門家カーロ・コップが行った分析ではJ-20は前方方向でのステルス機能が高いとしたが側方や後方のRCSは高く、Su-57とも共通する制約条件とした。

 

だが、RCSは機体塗布のレーダー吸収剤により左右される。インド空軍がSu-30でJ-20をレーダー追跡したと公言しているが、ステルス戦闘機は通常の飛行でRCSを拡大するような「ルネバーグレンズ」を放出し、実際の性能を隠すことがあるので、いずれにせよ真の性能を知ることがむずかしい。

 

もうひとつ、分析を混乱させているのがJ-20に高推力WS-15エンジンがまだ搭載されていないことだ。当面はロシア製AL-31Fエンジンとしている。中国の第四世代機ではエンジン欠陥に悩まされている。WS-15はAL-31FNより推力が23%増え、J-20でスーパークルーズが実現する。そうなるとJ-20の最高速度もマッハ2.5を超えることになるが、国産エンジンが真価を発揮した場合の想定だ。

 

PLAAFにJ-20が数十機しかないことから、同機をヒットアンドラン攻撃戦術や特別深部侵攻攻撃用に温存しているのか。前述のDiplomat誌の指摘のように、J-20が今後全方位で活用できる機体に進化する可能性があり、ドッグファイト性能も加わるのではないか。■

 

How Stealthy is China's J-20 Fighter Jet?

November 9, 2021  Topic: J-20 Fighter  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: Stealth FightersChinaMilitaryStealth TechnologyPLAAFRadar

by Sebastien Roblin

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article is being republished due to reader interest.

Image: Wikimedia Commons


2021年11月9日火曜日

中国が米海軍空母などの艦艇実寸大ミサイル標的を砂漠に構築。弾道対艦ミサイルの精度を上げるためか。中国は真剣だ。

 

2021年10月20日の衛星画像で米空母を模した標的がタクラマカン砂漠に見つかった。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

国軍が米空母の形を模した標的をタクラマカン砂漠に構築しており、標的演習場を新たに構築したのが衛星画像で判明した。画像はMaxar社が提供した。

 

米空母の実寸大輪郭に加えアーレイ・バーク級駆逐艦の輪郭少なくとも二つが演習場に見つかった。場所は 新疆ウイグルのRuoqiang若羌にあり、中国がいわゆる空母キラーのDF-21D対艦弾道ミサイル試射に以前使った演習地に近い。

 

タクラマカン砂漠で見つかった米駆逐艦を模した標的。H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

空母標的は平面で空母のアイランドは構築されていないようで、航空機用エレベーター、兵装など詳細は省略されている。レーダーを使えば周りの砂漠からこの標的が浮き出るはずだ。

 

さらに標的二つがあり、空母標的より詳細に構築されている。柱数本があり、おそらく計器測定用だろう。レーダー反射をシミュレートするものかもしれない。

 

また同演習場内にはレイルが敷かれており、10月9日のMaxar衛星画像を見ると全長75メートルの標的に各種計装をつけて幅6メートルのレイル二本で移動させている様子がわかった。

 

同地区はこれまでも弾道ミサイル試験に使われていると地理空間情報提供企業AllSource Analysisが解説している。

 

「米艦艇を模した実物大標的に加え、レイル移動式の標的もあることから標的捕捉、照準のテスト用だろう」と同社は見ており、模型のすぐ近くに兵器が命中した形跡がないという。「艦艇を模した標的に各種センサーもついていることから、この演習場は今後各種試験に使う意図が見られる」

 

衛星画像履歴を見ると空母標的は2019年3月から4月の間に構築されていたことがわかる。その後、工事が続いたが2019年12月に解体された。その場所が今年9月再び工事が始まり10月初めにおおむね完成した。


Ruoqiang施設内に見つかった移動式標的のクローズアップ写真。 H I Sutton Illustration for USNI News Satellite image ©2021 Maxar Technologies Used with Permission

 

 

人民解放軍ロケット軍(PLARF)は対艦弾道ミサイル数種類の開発を進めており、陸上配備型のCSS-5 Mod 5 (DF-21D) の射程は800カイリ超といわれる。同ミサイルは飛翔制御可能な再突入体(MaRV)で艦艇を狙う。大型のCSS-18 (DF-26)は射程2千カイリ。

 

「PLARFは2019年7月に初の実弾発射を南シナ海に向け実施し、DF-21D対艦弾道ミサイル6発をスプラトリー諸島北側に発射した」とペンタゴンは中国軍事力報告で述べている。また長距離対応の対艦弾道ミサイルが2016年に出現している。

 

「多任務対応のDF-26は通常弾頭を短時間で核弾頭に変更が可能で精密対地攻撃のほか、対艦攻撃に使え、中国本土から西太平洋、インド洋、南シナ海を標的に収める。2020年、PRCは南シナ海上を移動する標的に対艦弾道ミサイル数本を発射したが、公式にはこれを認めていない」(報告書)

 

2021年11月5日に Capella Space が開口合成レーダーで米空母の輪郭を模した標的を撮影した。H I Sutton Illustration for USNI News

 

陸上配備型ミサイルに加え、PLANのH-6爆撃機に大型対艦弾道ミサイルを搭載している。2018年に初めて視認されたのがCH-AS-X-13で空中発射ミサイルとして最大の大きさがあり、極超音速弾頭の装着も可能な大きさだ。

 

さらに055型レンハイ級大型駆逐艦からの発射も考えられる。同艦は誘導ミサイル巡洋艦とも区分され、対艦ミサイルの発射が可能とペンタゴン報告書は述べている。

 

中国は以前も砂漠地方に空母標的を構築している。2003年に空母の大きさに近いコンクリート板が敷設され標的にしていた。同移設はShuangchengziミサイル試射場にあり、何度もミサイルの命中を受け、都度修理を受けていた。今回の新施設はそこから600マイル離れた場所にあり、もっと進んだ施設になっている。標的は実際の艦艇に極めて近い大きさになっている。

    DoD Graphic

 

新施設にどのミサイルを使うのか不明だが、施設が巧妙に作られていることからPLAが米海軍部隊の中国本土接近を阻止する手段の開発を進めているのは明らかで、空母部隊がその狙いであることはあきらかだ。

 

ペンタゴンは恒例の報告書を先週公開しており、PLARFの主任務に西太平洋に展開する米空母部隊の活動を制約することがあると記述している。■

 

China Builds Missile Targets Shaped Like US Aircraft Carrier, Destroyers in Remote Desert - USNI News

By: H I Sutton and Sam LaGrone

November 7, 2021 11:12 AM • Updated: November 7, 2021 12:58 PM

2021年11月8日月曜日

空軍が否定するSR-91アウロラだが目撃談が続けてあらわれたのは、実機が存在してほしいと願う民間人の想いが原因なのか。

 

 

 

の機体SR-91「アウロラ」は1980年代に世界最高速の有人機として航空機性能の新次元を開くとの推測を読んだ機体だ。現在ではアウロラは歴史の脚注に出るだけの存在になっている。実現するはずだった機体という扱いだ。

 

実際の展開はこんな感じだ。40年前に米軍は次世代偵察機プロジェクトを立ち上げ、老朽化してきたうえに運航経費が高いSR-71ブラックバードの代替を目指した。政府は有人極超音速ステルススパイ機でマッハ5飛行の実現を想定した提案を検討した。1980年代末の実勢価格で20億ドルとされた同事業だが、その後再度検討されることはなかった。

 

だがこの説明には難点がある。SR-91は量産されていないが、そもそも同機の設計コンセプトが存在したのかはっきりしない。政府は一貫して同機が製造された事実はないと否定している。SR-91試作機が飛行した確たる証拠はない。1990年代初めにアウロラとされる機体が目撃されたとの報道があったが、確認が取れた事実はない。

 

証拠とされているのはロサンジェルス近郊で振動があったとの報道だ。エリア51から発進した軍用機が振動をおこした可能性があるが、問題の機体がSR-91試作機だったか断定できない。1989年には有名な北海での目撃例があるが、SR-91ではなくB-2スピリットと見間違えた可能性がある。スピリットは当時は導入されて日が浅いステルス爆撃機で目撃者が見たという三角形の機体形状に見える。

 

こうしたアウロラを巡る噂話の中には地球外生命体との遭遇や極秘軍用機開発のような奇抜な発想もあり、確たる証拠もないままSR-91の存在に関心を有する一般民間人の想いが先行している。大部分が1990年のAviation Week &Space Technologyが掲載した連邦予算で「アウロラ」の名称が見られるとの記事が出発点だ。1994年に出たロッキード・マーティンのスカンクワークスの前部長ベン・リッチの回想録に説明がある。リッチは「アウロラ」とはB-2事業向け予算のコードネームで空軍の「ブラック事業」に従事する一大佐がつけた名前だという。

 

「どういうわけか議会歳出聴聞会中から名称が独り歩きし、メディアが予算項目にアウロラがあると見つけ、スカンクワークスのトップシークレット事業との噂が急に登場し、スカンクワークスが米国初の極超音速機を製作中だというのだ」「今もこの話が残っているが、実はアウロラはB-2予算の隠語だったのだ」(リッチ著作より)

 

「メディアにはなかなか信じてもらえないが、極超音速機にコードネームはなかった。なぜなら単純にそんな機体は存在しなかったからだ」(リッチ)

 

リッチの一言でこの問題は一件落着となった。その逆を証明する証拠は結局ないままだ。アウロラ伝説から、いったんメディアに漏れると雪玉のように成長し都市伝説になることがわかる。■

 

Aurora SR-91: The U.S. Military Says this Aircraft Doesn't Exist

by Mark Episkopos

November 7, 2021  Topic: SR-91 Aurora  Region: America  Blog Brand: The Buzz  Tags: Hypersonic WeaponsU.S. Air ForceMilitarySR-71Area 51

Aurora SR-91: The U.S. Military Says this Aircraft Doesn't Exist


 

Mark Episkopos is a national security reporter for the National Interest. 

Image: Wikimedia Commons.