2022年6月17日金曜日

これまでのウクライナ戦でわかったロシア軍電子戦の戦術効果について

 Russian Electronic Warfare

TASS

ロシアのウクライナに対する電子戦で、これまで判明したことをまとめた。

2022年2月24日モスクワ時間午前6時過ぎ、ロシア軍12個集団がウクライナ進攻を開始した。ロシア軍の電子戦(EW)装備は、歩兵、装甲、大砲と配備されていた。EWはロシア軍、特に陸軍で重要な役割を担う。「3分の1を攻撃し、3分の1を妨害し、最後の3分の1は崩壊する」というのは、ソ連・ロシア軍のドクトリンから生まれた格言だ。ロシア陸軍は、ロシアの西部、南部、中部、東部の各軍事区に各独立したEW旅団を配備している。また、陸軍の各戦術機動陣には、EW中隊が配置されているとされる。機動小銃・戦車旅団や師団に、最大30ものEW中隊が配備されることもある。

ロシアのEWドクトリン

EWは、ロシア軍が敵の指揮統制(C2)、情報・監視・偵察(ISR)能力を打破するために不可欠だ。C2は無線と衛星通信(SATCOM)に依存する。通信を遮断すれば、敵は命令伝達、状況報告の収集ができなくなる。陸軍のEWは、敵対する地上、海軍、空中のレーダーも標的とする。レーダーは目標の探知・追尾というISRの重要な役割を担う。レーダーを破壊すれば、敵のISRデータを奪うことができる。ロシアのEWは、敵対するGNSS(Global Navigation Satellite System)信号もターゲットにする。GNSSの妨害で、米国の全地球測位システム(GPS)のような衛星コンステレーションが送信する位置、航法、タイミング情報を敵から奪う。

軍事利用される民間装備も、ロシアのEWシステムのターゲットになる。民間の携帯電話ネットワークや従来の通信手段がここに含まれる。ネットワークが妨害されたり、部隊や民間人の携帯電話に送られる偽の、あるいは戦意を喪失させるテキストメッセージの通信路として利用されることもある。ロシア軍の EW能力が、情報戦を広く展開するため不可欠であるのは明らかである。EW妨害信号は、サイバー攻撃も可能である。妨害信号は通信やレーダーを妨害するのではなく、悪質なコードを送ることができる。この場合、敵の無線機が受信し、ネットワーク感染で、敵のC2ネットワークに入り込む可能性がある。

ロシア軍EW中隊は、前線全体で最大50キロメートル(31マイル)の範囲で戦術的なEWの提供を期待される。一方、EW旅団は、数百キロメートルに及ぶ戦域レベルの対応を提供する。旅団EWは、EW能力を必要としない小規模な作戦を支援するため、広く分散される。ロシア軍のEWシステムの多くは、静止状態で使用されるよう設計されているようだ。そのため、ロシアの EW ドクトリンは、機動部隊に EW の「泡」 を提供することにあるようだ。

ロシア陸軍は、電磁波の優越性と優位性(E2S)原則を受け入れている。E2Sは、電磁スペクトルで作戦の自由度を維持し、敵の作戦の自由度を低下させて、優位に立つことに主眼を置く。電磁波の優位性が電磁波の至上性の前提条件となる。

以前の状況

NATOにとって、ロシアによる2022年のウクライナ侵攻は、ロシア軍の10年にわたるEW近代化の効果を理解する絶好の機会だ。ロシア軍のEWは、今回の侵攻が初の投入ではない。2008年の「ニュールック」改革で、冷戦終結後のロシア軍衰退を食い止めるため、大規模投資が行われた。情報通信技術は近代化で重要な位置を占めている。

ウクライナは、2014年のロシアによる最初の侵攻の際に、ロシア軍のEW能力に直面し、に深刻な影響がウクライナ軍出た。EWは紛争当初から多用され、ウクライナ情報筋は、ロシアのEW計画は、妨害電波で混乱を引き起こし、E2Sの確保を狙っていたと主張している。

ロシア軍は当初、戦域内のウクライナ軍通信を攻撃し、ウクライナ軍司令部の通信を遮断するためEWを使用した。ロシアのスペツナズ特殊部隊が通信遮断により助けられた。ロシア軍が配備した悪名高いEWシステムの1つが、無人航空機(UAV)を使い携帯電話ネットワークを妨害する「RB-341V Leer-3」だ。ウクライナ軍と民間が使用する携帯電話の妨害に重要な役割を果たした。RB-341Vは、ウクライナ軍に戦意喪失させる虚偽のテキストメッセージを送信し、動向を追跡するため使用されたと考えられている。後者の情報は、ロシア砲撃の目標に変換された。

RB-341Vは、ウクライナ軍のAndroidベースの火砲火器管制システムにマルウェアをロードさせた可能性もある。ロシア軍の妨害電波は、欧州安全保障協力機構(OSCE)のUAVを攻撃した原因となったとも考えられている。無人機は、停戦取り決めを監視する任務を負っていた。ウクライナにおけるロシア軍EW部隊のその他の任務は、ウクライナ軍の通信と無線周波数(RF)作動を攻撃することであった。ロシア軍EW部隊は報復射撃を避けるため場所を頻繁に変えていた。ロシア軍 EWは、ロシアがウクライナに侵攻した当初から強力な能力が証明されていた。

現時点ではどうなっているか

紛争の現段階では、ウクライナ侵攻におけるロシア軍EWの実態の分析にはリスクが伴う。入手できる情報は断片的だ。偏っている可能性もあり、独自検証は不可能だ。とはいえ、信頼できる公開情報をもとに見解を示すことができる。

ロシア軍は 2 月 24 日の紛争開始から、ロシア政府が 4 月 7 日にキーウ周辺の部隊を撤退させた第1フェーズ終了まで、EWを使用した。EWは開戦段階の支援に多用された。当初、EWは、ウクライナ空軍の統合防空システムへの対抗を支援した。キーウ北西約 6 マイルにあるホストメル空港でのロシア空挺作戦を支援するために、ウクライナのレーダーと無線通信を妨害した。同飛行場の確保は、ロシアのキーウ進攻を支援する兵員と装備の輸送に不可欠だった。ロシア軍は同飛行場を占領したが、戦争の戦略的焦点がキーウからウクライナ東部に移ったため、3月下旬に同飛行場は放棄した。

興味深いことに、ロシア空挺部隊は、空港襲撃の数日前からクリア(暗号化されていない)無線を使って空港占領計画を話し合っていたようだ。この情報はウクライナ軍にとって貴重だった。これは、戦争全体で浮上してきたロシア軍のエミッション・コントロール(EMCON)の欠如を浮き彫りにし、おそらくロシア軍にとって今回の紛争で最初の大きなEWの失敗を意味する。

ロシア軍のEW対応は、侵攻当初から戦術レベルでも精力的に行われていた。スモールウォーズジャーナル誌の記事によると、「キーウ攻略戦の初期に悪質かつ効果的であった 」とある。ロシアのEWが効果的だったところ、特にウクライナ軍の通信に対して、ランナーやディスパッチライダーといった旧来型の手法が再び前面に出てきた。これらは紛争前夜に予想されていた戦術であった。同様に、侵攻前のウクライナ軍訓練では、ロシア軍の EW は過酷であり、電磁スペクトルが激しく競合する中で戦わなければならないことが強調されていた。また、ロシア軍はウクライナ軍の通信を妨害しようとした際に、EWの「味方による誤射」に見舞われた。これもロシア軍の EMCON 不足が原因かもしれない。ロシア軍の妨害工作は、ウクライナ軍が米国から支給されたSINCGARS無線機を使用していたことも障害となった。SINCGARSとは、Single-Channel Ground and Airborne Radio Systemの略で、ロシアの電波妨害に強い無線機だ。

米国がウクライナ軍に提供したSINCGARS無線機は、ロシア軍の妨害電波に優れた耐性を示してる。U.S. Department of Defense

他の周波数帯でも

ロシア軍の EW は、紛争の第一段階におけるウクライナ軍とウクライナ空軍のレーダーと無線通信に限られたものではなかった。R-330Zh Zhitel含むGNSS信号の攻撃が可能な装備も侵攻を支援した。3月4日、RFデータ分析会社Hawkeye 360は、ウクライナで記録したGNSS妨害を明らかにした。同社は2021年11月以降、親ロシア派の幹部が支配するウクライナ東部の一部からGNSS妨害を記録していた。

GNSS妨害は2022年2月まで続き、ウクライナのベラルーシとの国境からさらなる妨害が検出された。同社はまた、戦争が進行する中、ウクライナ北部のチョルノブイリ原子力発電所付近でのGNSS妨害も記録している。チョルノブイリは侵攻初日にロシア軍に占領された。GNSS妨害は懸念されていたものの、ほとんどが局地的なもので、全国規模の大停電を引き起こすことはなかったようだ。ウクライナ軍がTB2バイラクターのようなUAVを比較的容易に配備していることは、GNSS妨害が軽微だった可能性を示すものだ。UAV多数はナビゲーションにGNSSを利用している。また、ロシアによるGNSS妨害が軍用の暗号「Mコード」GPS信号に影響を与えることができなかった可能性もある。

ホークアイ360は、ロシアがウクライナ侵攻を開始した直後、GNSS妨害波を検知した地域を示す地図を作成した。チョルノブイリ原発周辺やウクライナのロシア占領地などで検出された。 Hawkeye 360

携帯電話でも、同様の傾向が見られた。2014年のロシア侵攻では、軍のRB-314 Leer-3システムが携帯電話ネットワークを妨害し、効果的であることが証明された。紛争の第1段階では、局所的な携帯電話ネットワークの妨害が発生したようだ。ドンバス地方とクリミア地方に集中した携帯電話の妨害電波がソーシャルメディアに投稿されていた。しかし、ウクライナの携帯電話ネットワークはほとんど影響を受けていない可能性がある。まず、ロシア軍が通信で同ネットワークに依存している可能性がある。ロシアの暗号化されたERA携帯電話ネットワークの配備は失敗に終わったようだ。これが、ロシア軍がウクライナの携帯電話ネットワークを物理的に狙った理由である可能性がある。次に、Leer-3 は現地の携帯電話網の妨害に有効かもしれないが、ロシア軍にはウクライナの携帯電話網を全国的に狙うだけシステムが十分でない可能性がある。

SATCOM はウクライナ作戦地域で攻撃を受けているが、主にサイバー攻撃によるものであり、ロシア軍EWと対照的である。実際、ウクライナから世界中のメディアに定期的に生中継されているニュースによると、SATCOMはほぼ影響を受けていないようだ。

ロシア陸軍の電子戦システム「R-330Zh Zhitel」は、EW中隊に配備されている。衛星通信信号を含む様々なターゲットを攻撃することができる。InformNapalm/Google Earth

ロシア軍のEWシステムには、Leer-3、Zhitel、RP-377L/LA Loranditなど、SATCOM信号を攻撃可能と思われる装備がある。しかし、ロシア軍はウクライナの衛星通信にサイバー攻撃を行ったようだ。民間衛星通信会社Viasatは、戦争開始時に同社KA-SATネットワークがサイバー攻撃を受けたと明らかにした。同社によると、攻撃はウクライナとヨーロッパ周辺のユーザーに影響を与えた。この攻撃でウクライナ軍によるKA-SATネットワークの利用を狙ったものと思われる。同様に、SpaceXのStarlink SATCOM端末もロシアのサイバー攻撃の標的にされた。同社の創業者で最高経営責任者のイーロン・マスクは、ウクライナ全土をブロードバンドSATCOMでカバーするため、Starlink端末数千台を配布したことはよく知られる。どちらのケースも、ソフトウェア修正により、比較的短期間で改善された。

次に何が控えているのか

ロシア軍のEWは、戦争の第一段階で実施されたが、当初懸念されたほど決定的な効果を発揮していない。なぜか、明確な理由を挙げることはできない。ウクライナ軍は、2014年侵攻から貴重な教訓を得ていたようだ。また、ロシア軍のEW装備がどの程度、目的に合っているかでも疑問が残る。2014年にロシアが初めて侵攻した際、ウクライナ軍に対して有効であることが証明された。しかし、その後ウクライナ軍が大幅に改善した戦力に対しては、能力が劣る可能性がある。ロシア軍のEWシステムが損傷したり、使用不能になり、交換部品が滞留している可能性もある。ロシア軍の EW 要員の訓練が、今回の戦争に対応できていない可能性もある。

ロシア軍の EW C2システムは目的に適っているのだろうか?そうでないかもしれない。5月初旬発行のロシア学術誌「軍事思想」の記事がこの懸念を浮き彫りにしている。「現在、電子戦部隊の制御システムは、電子戦部隊と軍全体の真のニーズを十分に満たしていない」。これらのEW C2システムには、「システム的、技術的に多くの欠点がある」という。同様に、キーウへの侵攻の際、道路の混雑のため、EW部隊を前進させられなかったとの分析がある。

侵攻直後、匿名の米国防当局者は、「ロシアが電子戦能力をフルに発揮したとは思えないし、理由もはっきりしない」と述べた。この状況が、今回の戦争の新しい段階でも続くだろうか?初期評価では、ロシア軍が電子戦能力を向上させたことを示唆している。6月上旬にワシントン・ポストが発表した報告書では、ウクライナ東部で最近目撃されたEWのレベルは強烈と警告している。特に懸念されるのは、ウクライナのUAV運用への影響だ。カナダのUAV企業Volatus Aerospaceは、5月下旬のプレスリリースで、ロシアの妨害電波が小型無人機に悪影響を与えていると述べていた。暗号化された無線やGNSSリンクが搭載されていないため、電子攻撃から機体を保護できないとある。同様に、AP通信が6月上旬に発表したレポートは、ロシアの妨害電波が急増中と警告している。これは、ロシア陸軍がEWユニットを戦闘地域に近づけるために、補給線がより短く、より安全になったことが原因だとされている。

戦争が新段階に入り、ウクライナ軍にどのような影響が出るかは不明だ。ロシアがウクライナのE2Sを決定的に獲得し、維持すれば、ウクライナにとって大きな後退となる。どのようなものであれ、ロシアの完全勝利を一方的に招くことはないだろう。しかし、ウクライナ軍がロシア侵攻に対抗するためには、地域制圧を狙うロシア軍に対抗できなければ、どうしようもない。

NATOや同盟国は、電子戦の行方を見誤ってはならない。ロシア軍EWは戦争の初期局面こそ精彩を欠いているように見えたが、紛争が新局面に入れば変わるかもしれない。NATO、ウクライナのいずれも自己満足は許されない。■

 

Russia's Electronic Warfare Capabilities Have Had Mixed Results Against Ukraine

BYDR. THOMAS WITHINGTONJUN 16, 2022 3:24 PM

THE WAR ZONE

Dr. Thomas Withington is an award-winning analyst and writer specializing in electronic warfare, radar, and military communications.


ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月16日現在)




 
 

シアによるウクライナ侵攻が始まり113日となった。木曜日もロシア軍はセベロドネツクの占領を目指し、北西と南西の進攻軸も押し進めている。 

 

ドンバスの状況 

セベロドネツクとその周辺での戦闘は続いている。同市につながる橋はすべて破壊されたが、ロシア軍は同市を包囲できていない。激しい市街戦が行われており、戦闘のほとんどは、市内の工業地帯にあるアゾット化学工場に集中している。 

 

北西部(イジウムとライマン)のロシア軍はスロビャンスクに向け前進しているが、ウクライナ軍は持ちこたえている。南西部(バフムト)の状況も同様で、ロシア軍はセベロドネツクの次にリシチャンスクに向け進軍しているが、ウクライナ側はとりあえず足止めしている。しかし、この4週間で共通するのは、ロシア軍が犠牲をいとわず、ゆっくりと意図的に前進していることだ。 

 

ウクライナ南東部では、ロシア軍はケルソン近郊で防衛を続けているが、同地のウクライナ軍の反撃は、勢いが足りず結果を得ていない。 

 

ロシア軍の損失 

ウクライナ軍は毎日、ロシア軍の死傷者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。 

しかし、西側の情報機関の評価と独立した報道は、ウクライナの主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、600両以上のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。 

 

他のウクライナの主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。 

 

さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。 

実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いという。 

 

木曜日時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア人犠牲者を主張している。 

 

2022年6月16日木曜日

テニアン島飛行施設の拡張工事を進める米軍はグアムが中国ミサイル攻撃を受ける事態を想定している。

 A satellite image showing Tinian International Airport on the island of Tinian on June 6, 2022, with construction work visible on the northern side of the facility.

PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

 

テニアンで建設中の飛行施設は、グアムが攻撃された場合にアンダーセン空軍基地の代替を想定している。

 

 

星画像から、テニアン国際空港で大規模建設が行われているのがわかる。有事に米軍の代替飛行場となる施設の拡張計画に直接関連しているのは間違いない。同プロジェクトは、テニアンの南西に位置するグアム島の巨大なアンダーセン空軍基地が機能しなくなった場合に、それに代わる重要な活動場所を提供することを目的とし、10年以上前から進められている。アンダーセンの脆弱性、特にこの地域で起こりうる紛争の初期段階での中国のミサイル攻撃への懸念が高まっており、飛行場拡張計画の意義は過去の報道でも強調されている。

 The War Zoneが6月6日入手したテニアンの衛星写真では、テニアン国際空港の主滑走路の北西の一部が切り開かれている。既存のアクセス道路が作業区域のほぼ中央を東西に走る。Planet Labsの過去の衛星画像を確認すると、工事は5月初旬に始まっていることがわかる。

 

2022年6月6日、テニアン国際空港を撮影した衛星画像。空港の北西端で工事が行われているのがよくわかるPHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

 

6月6日画像にある新規工事は、テニアン代替飛行場プロジェクトの一環として、テニアン国際空港の北側に新誘導路や駐機エプロンなどを追加する計画に沿うものだ。工事は総工費約161百万ドルで、2025年10月完工を目指し、今年2月に起工式が行われた。

 

テニアン国際空港の工事現場をクローズアップ。 PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

テニアン国際空港の注釈付き衛星画像。テニアン・ダイバート飛行場プロジェクトの一部として現在建設中の新しいパーキングエプロンと誘導路の計画位置を灰色で示す。紫と黄色の線は、燃料パイプラインの2つのルート案の一部で、これも建設作業の一部である。USAF

 

代替飛行場プロジェクトの原点は、テニアン島と隣のサイパン島の建設計画関連で環境影響評価が始まった2010年代初頭にさかのぼる。テニアンとサイパンは、いずれも北マリアナ諸島(CNMI)を構成する米国領だ。グアムも米国領だが、CNMIではない。

 2016年12月、米空軍はテニアンの選択肢を正式決定した。国防総省とCNMI当局が40年リース契約に署名し、2019年に建設作業が可能となった。現在、米海軍の海軍設営システム司令部マリアナ(NAVFAC Marianas)が代替飛行場プロジェクトを管理しているが、新施設の整備後に空軍に引き渡される。

 また、テニアン島南端にある主要港に燃料貯蔵施設を新設し、空港と結ぶパイプラインの建設や、道路整備も代替飛行場整備事業に含まれる。

 

テニアン代替飛行場プロジェクトの一環で計画された建設の全容を示す注釈付き衛星画像。USAF

 

代替飛行場計画に伴うテニアン港の建設予定地を詳しく見る。USAF

 

米軍がバリアント・シールド22演習の準備でテニアンで行った工事(道路整備など)が、代替飛行場設置工事と関係があるかは不明だ。バリアント・シールドは、2年おきに西太平洋各地で行われる大規模合同演習で、今年は6月6日に始まり、6月17日に終了する。

 

バリアント・シールド22の一環として、テニアン島での道路建設プロジェクトでフロントエンドローダーを運転する海軍機動建設第3大隊の米海軍水兵。 USN / Lt. Tyler Baldino

 

バリアント・シールド22は、テニアン島と周辺、グアム、サイパンで各種訓練を展開するが、地域全体の戦略的重要性を強調し、代替飛行場プロジェクトを開始した理由が浮き彫りなっている。

 米軍はテニアンとサイパンの各空港を演習に利用し、有事シナリオで訓練を行っている。米空軍と海兵隊は、戦闘機部隊をテニアン国際空港に配備する訓練を実施してきた。テニアン国際空港では、高速ジェット機の安全性を高めるため可動式アレスティングギアシステムが採用され、海兵隊が利用した。

 

以前の演習でテニアン国際空港で「ワイヤーキャッチ」する米海兵隊のF/A-18ホーネット。 USMC / Lance Cpl. J. Gage Karwick

 

パシフィック・アイアン21演習中でテニアン国際空港に展開した米空軍F-15Eストライク・イーグル戦闘機。 USAF / Tech. Sgt. Benjamin Sutton

 

テニアンにはノース・フィールドと呼ばれる別の飛行場があり、第二次世界大戦中にB-29爆撃機の運用支援のため建設され、ここでも改良工事が行われている。ここもバリアント・シールドのような演習を含め、遠隔地や厳しい場所からの輸送や航空攻撃航空作戦関連の訓練に適している。

 しかし、グアムのアンダーセン空軍基地のような飛行場インフラは、サイパン同様、テニアンにも存在しない。太平洋における中国とのハイエンド紛争の初期段階で想定されるミサイル攻撃でだがアンダーセン以下の既存米軍施設の脆弱性への懸念が高まる一方だ。

 

コープノース2020演習中に撮影されたグアム島のアンダーセン空軍の衛星画像。内側は、プロモーション写真のため整列した各種米軍機と外国軍機。PHOTO © 2020 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

代替飛行場工事が完了しても、テニアンの飛行場施設はグアムより見劣りする。特に、敵の行動でグアムでの飛行が停止した場合、空中給油機や貨物機など大型機の運用をサポートするため、アンダーセンに代わる現実的で即時性のある施設を空軍や米軍の他部門に提供することになる。

 「CNMIでの代替構想は、西太平洋で唯一の代替飛行場を確保し、米空軍に一時的または持続的な給油作業を行う能力を提供する」と、マーク・ウェルシュ空軍大将(当時参謀長)は、2016年にサイパンではなくテニアンに代替飛行場を設ける方針が決定された際に述べていた。「有事以外に自然災害対応の支援にも使えるようになる」。

 当時、テニアン国際空港の拡張施設は空中給油機最大12をサポートでき、オペレーションをサポート用の追加人員を受け入れるができると期待されていた。少なくとも初期の環境影響評価の情報に基づけば、建設工事の正確な範囲が、ここ数年で変化していることに留意する必要がある。

 

 

テニアンにおける代替飛行場関連の建設予定地の注釈付き衛星画像。サイパンではなくテニアンを選択し、「南オプション」ではなく「北オプション」の採用を決定する前の環境影響評価書ドラフトから転載した。ここに示されたノースオプションの範囲は、2020年に発表された最終環境影響評価書に描かれた建設予定地とは異なる。

 

太平洋空軍(PACAF)のトップ、ケネス・ウィルスバック空軍大将Air Force Gen. Kenneth Wilsbachは、2020年にマリアナ・ビジネス・ジャーナル紙のインタビューで、「テニアンに飛行要員や機材等を配置する計画はない」と述べていた。「我々は、主にタンカーと機動性機材の代替飛行場として使用できるよう構築したい」。

 アンダーセン基地に司令部を置く第36航空団司令のジェレミー・スローン准将Air Force Brig. Gen. Jeremy Sloaneは、今年初めの起工式で「飛行場、道路、港、パイプラインの整備は、米軍に不可欠な戦略、作戦、演習能力をもたらす」と述べ、施設の活用方法についてより広いビジョンを指摘していた。

 米軍関係者はプロジェクト開始当初から、テニアンで拡張された代替飛行場が、自然災害への対応など、さまざまな平時活動において貴重な活動場所になると強調してきた。

 テニアンでの工事は、グアムでの改善を含む、太平洋地域における基地施設の選択肢を拡大する。テニアン島での工事は、グアム島のノースウエスト・フィールド工事も含んでおり、F-35共用打撃戦闘機を含む戦闘機等の航空機運用のサポートが可能になった。

 また、グアムの北西約1,500マイルに位置するウェーク島でも、米軍基地の拡張工事が進んでいる。この島の重要性と工事内容については、War Zoneが以前詳しくご紹介した。

 

 

地図だと各場所の距離感と戦略的な重要性がよくわかる。西太平洋の端にグアムとテニアン(サイパンも)、さらに東にウェーク島、ハワイがある。地図上の縦の点線は、国際日付変更線。Google Maps

 

 米軍は太平洋地域の同盟国同志国と協力し、各種有事シナリオで使用できる追加基地施設の実現を目指している。昨年、国防総省は太平洋地域における中国への挑戦のため各種取り組みを網羅した270億ドルの計画を提出したが、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャル諸島などにおける「戦力投射・分散・訓練施設」で46億7000万ドルが含まれていた。これら3つの群島国はすべて主権国家であるが、自由連合協定(COFA)と呼ぶ国際協定で米国と深く結びついている。

 テニアンの新しい代替飛行場に関しては、アンダーセンと同じ脅威の範囲内にあることが注目されるが、その場合、相手はこの地域の飛行場を無力化するタスクにさらに資源を投入せざるを得なくなる。このことは、空軍だけでなく、米軍の他部門もよく認識しているようで、空軍は現在、高速道路を含む遠隔地や厳しい場所からの分散作戦概念に重点を置いていることからも明らかである。基地防衛の改善や、航空部隊の展開位置で相手を欺く試みも、話題になっている。

 フランク・ケンドール空軍長官は3月、アビエーション・ウィークのブライアン・エバースティン記者のインタビューで、「自分たちが居場所がどこか敵を混乱させたい」「だから、囮を他の場所に置けば役に立つ」と述べていた。

 基地の選択肢は少ないより多い方がいいに決まっている。テニアンでの飛行場施設の拡張工事は、将来の大規模な紛争や、太平洋での不測事態に備え、米軍機の活動場所を確保する幅広い取り組みの一部に過ぎない。■

 

Construction Of Airbase On Tinian Island In Case Guam Gets Knocked Out Has Begun

BYJOSEPH TREVITHICKJUN 15, 2022 3:40 PM

THE WAR ZONE