2018年11月22日木曜日

B-2の開発経緯、実戦投入実績、なぜ20機調達になったのか



Why the Air Force Only Has 20 B-2 Spirit Stealth Bombers 米空軍がB-2スピリットステルス爆撃機調達をわずか20機で打ち切った理由はなにか

The Spirit procurement was first reduced to 75, than cut to 20 by the Bush administration in 1992. And that made the costs skyrocket. Here is the whole story.スピリット調達数はまず75機に削減され、その後ブッシュ政権が1992年に20機にまで減らした。その結果、機体価格は急上昇した。
November 11, 2018  Topic: Security  Region: United States  Blog Brand: The Buzz Tags: B-2 SpiritU.S. Air ForceUnited StatesDepartment Of Defense


空軍は1947年の発足以来、一貫して長距離戦略爆撃機を整備し核抑止力維持に努めてきた。だが1960年代に入り高高度を飛行するB-52ではソ連の高速迎撃機や地対空ミサイルの防空網を突破できないと判明した。そこで超音速のFB-111やB-1を開発し低空侵入でレーダー探知を困難にさせようとした。だがペンタゴンはソ連がドップラー・レーダーや早期警戒機の開発で探知の盲点を潰そうとしていることを察知していた。
その時点で米航空技術陣はレーダー波吸収剤や非反射性の表面にしたらレーダー探知距離を大幅に短くできるとわかっており、SR-71ブラックバード・スパイ機にまず導入された。ロッキードのハブブルー試作機から初の作戦投入可能なステルス機F-117ナイトホーク攻撃機が生まれた。
ペンタゴンは次のステルス機として高度技術爆撃機ATBの実現をめざした。ノースロップはその時点でネヴァダ州のエリア51で奇妙な形状のステルス機タシットブルー(別名「ホエール」または「エイリアン・スクールバス」)のテストを実施していた。1940年代末に同社は巨大な翼幅52メートルの全翼ジェット爆撃機YB-49を開発していた。ロッキードとノースロップがATBでしのぎを削る1981年、ノースロップの大型無尾翼全翼機コンセプトが採択された。
同プロジェクトの存在は公表されたが、詳細は極秘とされ、ペンタゴンはダミー会社を使い部品を確保した。その後8年で設計は大幅に変更され低空侵攻任務を中心にし、開発予算は420億ドルになり政治面で問題となった。
スピリットが公開されたのは1988年で翌年に初飛行した。だが量産開始の1993年の前に冷戦がソ連崩壊の形で突如終了した。核搭載高性能爆撃機の存在意義が消えた。
空軍は依然としてB-2を必要としたが高価な事業費が仇となりシーウルフ級潜水艦等その他の高費用事業とともに削減対象となった。ペンタゴンは慌ててB-2で非核装備の運用能力を重視し、ステルス爆撃機は開戦直後の数日間は援護戦闘機なしで作戦投入されることになった。(実際はスピリットにEA-6Bプラウラーが随行しジャミング、レーダー対抗策を提供していた)
スピリット調達数はまず75機に削減され、その後ブッシュ政権が1992年に20機にまで減らした。クリントン政権で試作機が作戦機材に変更され21機になった。このため当初5億ドルの機体単価が7.37億ドルに高騰し、予備部品、改修、技術支援も含め9.3億ドルになった。スピリットの開発費は21億ドルと史上最高額の機体になった。
テスト機材除く全機がミズーリ州ホワイトマン空軍基地の509爆撃航空団に配備されている。同部隊は日本に原爆を二発投下した部隊の直系である。スピリットを操縦するのはパイロット80名からなるエリート部隊でディエゴ・ガルシア、グアム、英国に前方配備されることもある。
各機は全米の州の名称がつき、はスピリットオブミズーリで始まった。例外がスピリットオブキティホークで格納庫内でエンジンが突然始動するなど悪霊にとりつかれているという。2008年にスピリットオブカンザスがグアム離陸直後に墜落している。原因は大気中の湿度センサー計測が嵐のため誤りしフライ・バイ・ワイヤが誤動作したためだった。乗員全員は脱出したのが救いだった。
現在のF-35同様に初期生産型のB-2は性能が不完全なまま納入され、ペイロード、兵装、航法、防御装備が一部欠けたままだった。その後、ノースロップ・グラマンは段階的に改良を加え、地形追随システム、GPS航法、衛星通信が機内ラップトップから行えるようになった。もっと重要なのがスマート爆弾と巡航ミサイルの運用だ。今日も米空軍は多大な費用でレーダー波吸収剤の改良、光ファイバー配線への切り替え、コンピュータやデータリンクの改良をすすめている。
B-2が初期作戦能力を獲得したのは1997年で初の実戦投入は1999年3月24日のことでNATO空爆の先陣を切りユーゴスラビア爆撃に投入された。これはコソボのアルバニア人民族浄化を止めるのが目的だった。ミズーリ州を離陸したB-2は大西洋を越える30時間におよぶミッションを50ソーティ行い、ユーゴスラビア防空網を突破し、最初の二ヶ月で投下した爆弾のほぼ三分の一を投下したのだった。
B-2はGPS誘導方式のJDAM爆弾を使う初の機材となり、航空戦の転換点を飾り、その後の安価な精密誘導兵器の投入の先陣となった。ただし実戦では爆撃精度が上がっても標的を正確に区別する情報が不備では役に立たないことを示した。スピリットの一機がJDAM5発を中国大使館に投下したのはCIAが武器集積地と誤って識別したためで、三名が死亡、その他重傷者が発生し外交面で問題となった。
その二年後、スピリットは再び実戦に投入され、今回は70時間におよぶミッションでディエゴ・ガルシアを経由してアフガニスタンのタリバンを爆撃し史上最長の戦闘飛行任務となった。さらに二年後にB-2は「完全作戦能力獲得」となり、イラクへの米軍侵攻の初期段階で92箇所を爆撃した。
B-2は2011年にも開戦で真っ先に投入された。リビアの独裁者ムアマル・カダフィに対抗した介入戦でリビア空軍の大部分を地上でJDAMで破壊した。直近では2017年1月19日にリビア砂漠でISISのキャンプを襲撃し戦闘員85名を殺害した。
空軍のスピリット20機は「必殺」の第一撃手段として維持されており、大型通常型爆弾と核兵器のいずれも投下でき、強固な防空指揮所、防空レーダー他戦略拠点を警告ないまま攻撃できる。
B-2は単に製造コストが高いだけでなく、運用も高額で飛行一時間あたり163,000ドルかかりフライト後に60時間の保守整備が必要だ。一機を維持するだけで年間41百万ドルかかりミッション稼働率は50パーセント未満だ。
さらに各機に空調付き単価5百万ドルの格納庫が必要だ。これはレーダー吸収剤RAMの維持のためだ。また7年ごとに重整備60百万ドルが必要で、結晶化した小麦でんぷんでRAMを機体表面から剥離させ表面を注意深く点検し小さな凹みや傷がないか見つける。
B-2の調達機数が少ないと嘆く向きが多い。しかしB-2の調達機数削減は超大国同士の対決は今後発生しないと見た結果であり、空軍は同機を追加調達していたら発生していた費用を結果的に節約できたのだ。
もちろん中国やロシアは米国に匹敵する実力を有する敵性勢力として台頭している。このためB-2の長距離戦略攻撃ミッションの意義が大きくなっている。だがペンタゴンは今やよりステルス性能が高くコスト効率の高いB-21レイダーの調達を進めており、今後の有事に備えようとしている。B-2のステルス性能は今や最先端とは言えず、F-22やF-35に至ってはレーダー断面積がB-2の0.1平方メートルや0.05平方メートルの十分の一、百分の一と豪語している。
B-21は形状こそスピリット2.0に酷似しつつ費用対効果が高いレーダー波吸収剤を表面に使用しネットワーク化したコンピュータでセンサー融合を行い、監視偵察機能を倍増させる。
B-2の機能はすべてB-21に引き継がれるが空軍はスピリット退役を2036年と設定し、レイダーの導入とあわせる。もちろんB-2の実績からB-21が予算以内で実現できるのかとの疑問があるし、政府が何機調達するかも注目される。■


Sébastien Roblin holds a master’s degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .

ユーゴスラビアの中国大使館爆撃は「誤爆」だったのか本当に狙ったのか、あと数十年したら真相がでてくるかもしれません。中国へのメッセージではないかという説が強く残っています。B-21はまさか20機調達ということはないとしても今後削減される可能性はあるでしょうね。

2018年11月21日水曜日

グローバルホーク3機の導入時期は2022年9月に。日本が契約に調印

Japan signs for three Global Hawk UAVs 日本がグローバルホーク3機導入契約に調印

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
20 November 2018
 
日本はグローバルホークブロック30iHALE無人機を2022年9月はじめに受領する。Source: Northrop Grumman


本がノースロップ・グラマン製RQ-4グローバルホーク高高度長時間飛行(HALE)無人機(UAV)の3機調達で総額489.9百万ドル契約に11月19日調印した。
米国防総省(DoD)が海外軍事販売(FMS)制度でブロック30i(iはinternational)仕様のグローバルホークに高性能統合センサー装備ペイロードを搭載した機体を調達する。さらに地上操縦装置二式、予備部品、支援機材、実施業務サービスを含む。


契約交付公告はミッション装備に触れていないが、2015年11月の国防安全保障庁(DSCA)による認可では各機に高性能統合センサー装備(EISS)を搭載するとあった。EISSはレイセオンが開発し電子光学・赤外線センサー、合成開口レーダー画像、地上移動目標捕捉能力を有する。


「今回のRQ-4販売で日本の情報収集監視偵察(ISR)能力が飛躍的に伸び、日本は域内脅威の動向を把握し引き続き抑止できる」とDSCAは2015年に説明していた。同庁によれば日本がグローバルホーク関連支出の総額は12億ドルの試算だ。

グローバルホーク各機の引渡しは2022年9月1日の予定。■
コメント:機材の運用を航空自衛隊が行うでしょうが、重要なのは情報の解析、分析含むインテリジェンス活動でいよいよ情報本部の真価が試されることになりますね。例によって中国、北朝鮮等に同調する国内勢力が異議を唱えるでしょうが防衛当局には何ら屈することなくISRの「あるべき道」を進んでいってもらいたいものです。

開発進む超音速ビジネスジェット機はペンタゴンでの利用も視野に入る



  • Supersonic Bizjets May Attract Pentagon Interest ペンタゴンが超音速ビズジェットに注目する日が来る


  • BY PAULINA GLASSREAD BIO
NOVEMBER 13, 2018
代版のSSTに三チームが取り組んでおり米軍が採用するかもしれない。
超音速旅客機が再び空を飛ぶ日が来ればも米軍もリースあるいは購入を検討するはずだ。

コンコードが最後のフライトを終え15年以上になるが、NASAおよびエアリオン・スーパーソニックおよびブーム・スーパーソニックの民間2社がそれぞれ超音速旅客機を2020年代中頃の実用化を目指している。


ペンタゴンが関心を持つ理由としてTealグループ副社長のリチャード・アブラフィアは人質救難や戦闘捜索救難で迅速移動ができ危機解決につながることをあげる。


現代版SSTに必要な新技術としてソニックブームの制御があり、軍にも応用できるとアブラフィアは指摘する。


超音速ビジネスジェット機を軍で使う発想は前からある。1999年に一空軍少佐が空軍幕僚大学校で各種の可能性を論文にまとめている。


「砂漠の嵐作戦で超音速グローバル輸送手段があればイラクでシュワルツコフ大将が指揮する休戦合意に国務省チームは迅速に現地入りできていたはずだ」とマシュー・マロイ少佐が執筆。


軍が超音速ビズジェット機を購入しなくても利用は可能だ。現に軍はリアジェットから特殊作戦用途に機材をリースしている。空軍はC-21としてリアジェット35Aビジネス機に軍用装備を搭載して40機ほどを運用している。


エアリオン社の広報ジェフ・ミラーは王立航空工学学会主催のイベントで超音速ビジネス機の誕生はまもなくとし、同社がロッキード・マーティン及びハネウェルと共同開発中の機材を紹介した。GEのエンジン供給でエアリオンも信用度を高めている。


「2023年にコンコード運行終了20周年として大西洋を超音速飛行で横断し、就航は2026年になります」

12人乗り全長49メートルの同社の機体は120百万ドルの値段になる見込みだ。■

2018年11月20日火曜日

世界各地で建造中の空母5隻の最新情報



Aircraft Carrier Watch: 5 New Carriers Being Built Right Now You Need to Check Out 空母情報:世界で建造中の空母は計5隻

November 17, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarAircraft
界初の航空母艦HMSハーミーズの建造から100年が経ち、空母は現在でも威力を誇っている。ニューポートニューズから上海まで主要海軍国で空母建造が続いている。ステルス、スタンドオフ兵器や無人機など新型技術をいかにはやく導入し実用化できるかが重要かつ喫緊の課題になっており、空母は災害救助から制海任務まで多様な用途に投入されている。世界各地で建造中の空母5隻の最新状況は以下のとおりだ。
米国、USSジョン・F・ケネディ、USSエンタープライズ。ジェラルド・R・フォード級二番艦のUSSジョン・F・ケネディは第35代大統領の名を冠する二番目の艦となり、全長1,092フィート、飛行甲板は最大幅256フィートだ。満排水量は10万トン、航空要員含む全乗組員は4,450名となる。75機からなる有人機、無人機、ヘリコプターを搭載する。
USSケネディは2015年4月に起工し、現在50パーセント管制している。2019年に命名式を行い、2020年中に就役する。USSエンタープライズの就役は2027年で海軍は今後30年でフォード級12隻を整備する。
USSフォードで電磁航空機発進システムEMALSで問題があり、ケネディ、エンタープライズでは実証済みの蒸気カタパルトに戻す検討もあったが結局予定通りEMALSの採用が決まった。
英国、HMSプリンス・オブ・ウェールズ。クイーン・エリザベス級二号艦がHMSプリンス・オブ・ウェールズだ。艦容は両艦で同じで、全長920フィート、飛行甲板幅は240フィートある。排水量は64千トンだが米空母よりはるかに少ない1,600名が搭乗する。
プリンス・オブ・ウェールズはF-35Bを12機から24機搭載する他、対潜・多用途ヘリコプター14機を運用する。有事には戦闘機を36機まで増強できる。英米両国の合意で英軍向けF-35Bの戦力化まで米海兵隊所属のF-35B飛行隊が両艦から運用される。
プリンス・オブ・ウェールズ建造は2011年にスコットランド・ローサイス造船所で始まり、2017年にエリザベス女王により命名され、現在は艤装中だ。同艦は2019年に海上公試を開始し、2020年就航の予定だ。
中国、003型艦。中国初の空母遼寧が人民解放軍海軍で就役したのは2012年9月だった。二号艦は名称不明だが遼寧を原型に現在海上公試中だ。中国からの報道を見るとさらに二隻が建造中で003型艦となる。
003型艦の情報は少ない。上海で一隻が建造中で、二号艦は大連で建造中だ。近代建造技術を駆使する中国初の大型艦になり、一個が数百トンの「スーパーリフト」と呼ぶモジュールで建造する。中国の原子力推進は潜水艦に限定されており、大型水上艦向けにはシステムを拡大する必要があり、新型空母は通常動力を採用する。
003型空母はスキージャンプ甲板にならないようだ。遼寧、二号艦ではスキージャンプ方式を採用しプロペラ駆動の支援機は運用できない。さらに運用機材では燃料・兵装搭載量で制限がつき、性能を発揮できない。EMALSと同様の発艦装備があれば新型艦は各種機材を運用可能となろう。
003型艦の搭載機数は不明だが、これまでの中国艦より拡大するはずだ。船体規模によるが最大70機を搭載する可能性がある。
インド、INSヴィクラント。インドも海軍航空兵力の運用で長い実績を有しており、これまで旧英海軍空母を保有してきた。だがINSヴィクラントの建造でこの流れに終止符がうたれる。同艦はインド初の国産空母で、最新鋭空母二隻の保有を目指すインドに大事な一歩になる。最終的には三隻の運用を狙っている。
ヴィクラントは国産空母第一号(IAC-1) とも呼ばれ、建造は2008年にコチン造船所で始まった。ヴィクラントは通常型空母としては小型で排水量は45千トンだが、インドの建造史上最大の艦となる。全長860フィート、飛行甲板全幅203フィートだ。インド海軍旗艦INSヴィクラマディティヤと同様にヴィクラントにもスキージャンプが付き、着艦時には拘束ケーブルを使う。この着艦装置はロシアから調達する。
ヴィクラントは30機を搭載し、うち20機がMiG-29K多用途戦闘機でヘリコプターが10基だ。ヴィクラントは2018年就役予定だったが建造とライセンス問題で2020年10月に延期となった。二号艦IAC-2はINSヴィシャルと呼ばれ、設計段階にある。同艦は65千トンとヴィクラントを上回る艦容になり、米空母技術とくにEMALSを導入する見込みだ。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.

Image: Wikimedia Commons

2018年11月19日月曜日

F-35導入の遅れを想定した米空軍の対応策とは、その他米航空戦力整備の最新案から読める情報とは



The Air Force Has a Plan if the F-35 Doesn't Work Out As Planned F-35事業が予定通り進展しない場合に備える米空軍の構想


November 16, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35MilitaryTechnologyWorldWarF-18. F/A-18




F-35が予定どおり戦力化しない場合に備えペンタゴンはF-15E、F-16、F-18の再調達を想定しているのか。


米議会調査部(CRS)によれば、ペンタゴンが出した航空戦力整備長期計画の背後にこの可能性が見えるという。


国防総省はアメリカの航空戦力を30年俯瞰で想定する構想案を毎年更新している。通常は総論で曖昧な内容に留まる事が多い。


今回は違う。「2018年4月発表の最新の三十年構想では詳細内容が豊富で、事業中止、耐用年数延長、新規事業に触れている」とCRSのジェレマイア・ガートラーが述べる。「一部は直接的、一部は間接的だ」


ガートラーは航空戦力整備構想で判明するパターンに注目している。とくにF-35に関する件だ。空軍はF-15Eストライクイーグル、F-16で耐用年数を延長しながらF-15C制空戦闘機は退役させようとしている。


「F-15EとF-16で共通要素は何か」とがートラーが問いかける。「ともにF-35ライトニングIIが後継機の予定だが、新構想ではF-35が予定通り就役ができない場合を想定し空軍が既存機種で耐用年数を延長して穴埋めをねらっているとわかる。F-35調達機数は変更がなく、空軍は1,763機だが予定通りに投入できない事態を想定し、空軍は旧型機の改修をめざす」


さらにA-10ウォートホッグは2030年代まで飛行継続し、ここでもガートラーはF-35調達の遅れを最初から空軍が想定していると見る。同様に海軍はF-18スーパーホーネットで耐用年数延長を目指しており、旧式のA型からD型は退役させる内容だ。つまり海軍はF-35のトラブルに備える構えだ。


ガートラーは今回の航空戦力整備で以下興味深い点がみつかったと指摘。


第六世代戦闘機で動きが来年発生。海軍と空軍は2019年に第六世代機の性能諸元を決定したいとする。「本格生産は数十年先になり、現在は概念形成の作業が中心。海軍は来年中に検討を完了させるとする。次のステップは提案内容の作成だ」(ガートラー)


KC-46の調達拡大。空軍は当初想定の179機を超えたKC-46ペガサス給油機の調達を希望。「今回の構想で空軍は既存規模では不足とし当初予定以上の機数を導入しつつ既存のKC-135でも改修を行う意向だとわかる。以前はKC-135を全機退役させる予定だったが空軍は供用年数を延長したいとする」


新型長距離給油機構想:航空戦力整備構想ではKC-46投入でKC-10を退役させる予定とわかる。ガートラーはこれを空軍が新型長距離給油機構想を断念する動きと解釈する。「空軍が給油機近代化を始めた段階でまずKC-Xとしてエアバス、ボーイングを競わせ179機導入でKC-135と交代させる構想だった。その次がKC-YでKC-X採択機材をやはり179機導入し、三番目のKC-Zは完全新型の大型機でKC-10の52機の後継機とするはずだった。今回の企画案ではKC-Zが消えている。KC-46は勢いを強めている現役機となっており同機の将来は一層有望に写る」


AWACSは飛行を継続。E-3セントリー空中早期警戒統制機材7機の退役構想は棚上げになった。空軍はC-130供用を続けるがC-130Jは追加調達しない。海軍はC-130数機を調達する。


新型VIP機材。「もう一つ予想外の動きが空軍であり、ボーイング757原型のC-32VIP輸送機を退役させる」とがートラーは指摘。「757生産が終わり14年となり新型機が必要だ」


ポセイドン追加調達。中国との対立深刻化を受けて海軍がP-8ポセイドン哨戒機の調達への動きを示している。「現時点の地政学面の変化を考えれば、追加調達が必要だ」と航空戦力整備構想に記述がある。


海軍向け新型練習機:「もう一つ新規事業としてこれまで予算化されておらず今回の30年計画に盛り込まれたのがT-44の後継機だ。海軍が民生ビーチクラフト・キングエアを原型に訓練に投入している機体だ。」とガートラーは指摘。「陸軍にも同様の動きがある」


新型海軍向けヘリコプター:艦艇建造計画見直しに伴い、海軍はヘリコプター多数を必要とする。「2030年になると新型艦の就役が増えるともっと多数のヘリコプターが必要となる」(ガートラー)。通常は調達前倒しで生産ライン維持を図るが「海軍は完全新型機として2030年代中頃の調達を狙い次世代の垂直離着陸技術の導入を期待する。陸軍と共同で進める新型機がここで絡むのだろう。海軍が新型機を2030年代中頃に運用開始するなら今後三四年のうちに事業開始になるはずだ」


ベテランのCH-47チヌークは今後も飛行を継続する。「陸軍の次世代垂直離着陸機にはまだ大型機版がなく、陸軍はチヌークの改修で耐用年数を15から20年伸ばしておきたいと考えている」(ガートラー)


中古ブラックホークヘリコプターを販売。ガートラーはUH-60ブラックホークヘリコプターの一部を陸軍が民間に払い下げると見ている。航空戦力整備案では陸軍はメーカーのシコースキーにブラックホークを送り再整備させるとある。「構想案では米軍用の再整備と入っておらず、シコースキーは旧型機を再生し別の相手に販売するのではないか。だが米政府が中古機材を市場に放出する準備に入っている」

だがCRSのガートラーは構想案そのものが全体として予算増額をねらうペンタゴンの策である可能性を警告する。「提言は国防予算上限を改定すべく二年おきに議会と約束している内容の延長である。軍としては上限拡大を狙い、これだけの支出で何が手に入るかを議会へ示す必要がある。つまり予算手当がついていない要求リストを別の形で示しているだけである」というのだ。■


Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .

2018年11月18日日曜日

いま開戦したら米国はロシア、中国に敗北する---米議会委員会報告書

Report: America Could Lose a War Against Russia or China 米国はロシア、中国との次の戦争に勝てないとの報告書

“Put bluntly, the U.S. military could lose the next state-versus-state war it fights.”「率直に言って、米軍は次回の国家間戦で敗北を喫するだろう」
November 15, 2018  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: RussiaChinaMilitaryTechnologyWorldA2/ad


国がロシアあるいは中国と明日開戦したら、米軍は「決定的な軍事敗北」を喫し、米国の「安全と安寧」は「過去最高の危険にさらされる」と警告する報告書がトランプ政権が今年出した国家防衛戦略を批判している。
報告書は議会選出による超党派の国家防衛戦略委員会がまとめ、北ヨーロッパでロシアを相手に米軍事作戦が展開された場合、または台灣を巡り中国を対象にした作戦を実施した場合「甚大な」数の死傷者が軍で発生するのみならず「主要装備」たる艦船、機材その他でも深刻な喪失が発生すると警句を鳴らしている。
-  理由は単純だ。冷戦後の米軍が「危険水域まで規模縮小」し、ロシアや中国の軍事力が米国並みに伸長している中、米国のみが強大な軍事力を行使する時代は終わっているからだ。
-  その結果、ペンタゴンは「航空優勢または制海権を確立する、または失地回復に困難を感じる」はずとし、「高水準装備を備えた敵に対抗するのはとてつもなく困難」と解説。
- 「米軍の遠征作戦では圧倒的威力を有する戦隊を現地に展開するのがこれまでは特徴だったが、いまや実施は圧倒的に困難かつ高価につくようになった」とも述べ、「率直に言って、米軍は次回の国家間戦で敗北を喫するだろう」と結論付けている。
This article originally appeared at Task & Purpose. Follow Task & Purpose on  Twitter

もはや米国は単独で強力な敵に勝てないとの自覚だとすれば、同盟国と力をあわせて「ならず者」国家を制していくしかないということでしょう。国防予算の増額を巡ってときおり米国では自国の軍事力に悲観的な見解がでてきますが、今回はどうでしょうか。

Y-20が中国のグローバル大国志向に果たす役割に注目すべきである


This Not-So-Scary Picture Should Terrify the U.S. Military

一見無害なこの写真が米軍を震え上がらせる

Just how many Y-20s the PLAAF has ordered remains a mystery—at least eight are known to have entered service by 2018. The Y-20’s cost also remains obscure, with numbers ranging from $160 to $250 million floated. PLAAFが同機を何機発注しているかは不明のままだ。すくなくとも8機が2018年までに納入されたと判明している。機材価格もはっきりしないが、160百万ドルから250百万ドルの範囲といわれる。

by Sebastien Roblin

November 12, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMilitaryTechnologyWorldY-20PLAAF



国がグローバル大国に近づこうとする中、往時の米国同様の装備調達が続いており、中でも大型輸送機での拡充が目を引く。新型Y-20輸送機は米C-17の生産が終了した現時点で製造中機体として世界最大の輸送機だ。

米空軍が運用中の輸送機材は600機ほどで、C-130ハーキュリーズ、C-17グローブマスター、C-5ギャラクシーの各型がある。人民解放軍空軍PLAAFには145機ほどしかない。そのうち43機あるY-7は六トンしか運べない。グローバルかつ「戦略的」輸送能力ではロシアから導入したIl-76MDの22機があり、53トンを運べる。リビア内戦が2011年に勃発し、PLAAFは自国民退避にIl-76を4機派遣した。

現在の中国ではアフリカでの軍事展開の必要が増えており、インド洋、太平洋での軍事基地、同盟国への補給任務も同様だ。だが戦略輸送能力が必要な背景には本国近辺の事情もある。2005年の四川大地震を受けてPLAAFは被災地への貨物輸送に奔走した。

そのわずか一年後に西安航空機が新型大型輸送機開発を開始した。それまでの中国貨物機はすべてソ連機のコピーあるいは輸入機材だったが、西安はアントノフ設計局の支援を仰いだ。ウクライナの同社からターボプロップAn-70の拡大、ジェット化案が提示された。中国が六十四トンの大型99A戦車を開発し設計案に手を加える必要が生まれた。

開発はJH-7戦闘爆撃機を開発したTang Changhongの手に委ねられた。開発チームは設計で3Dモデリング技法を全面採用し、3Dプリンターに混合材料を投入した。またrelational design 技法で機体の「骨格」モデルを作成し、一方の形状を変更すれば自動的に残りの部分の修正が完了した。この手法で機体開発・製造時間を30から75%短縮できたと伝えられ、2013年1月に試作機が初飛行できた。

四発機となり広い胴体から「太っちょ娘」の愛称がついた。なお、公式名称はKunpengである。110トンにおよぶ機体だが未整地滑走路運用も可能で最前線近くへ進出できる。600ないし700メートルで離陸可能という報道がある。ただしY-20の特徴は航続距離の長さにあり、貨物満載で2,700マイル(4,300キロ)、中程度軽程度の貨物なら7,200キロから9,900キロ飛べ、最大時速は575マイル(920キロ)だ。

Y-20は最大72.5トンの貨物搭載量があり、Il-76を上回るが、C-17の85.5トンには及ばない。それでも99型戦車一両の運搬には十分だし、軽装甲車両なら一度に数両を搭載できる。パラシュート投下可能なZBD.-03先頭車両は三両を搭載できる。

ただし難点がある。中国機の例に漏れず、国産ターボファンエンジンだ。Y-20には今のところロシア製のソロヴィエフD-30ターボファンを搭載し最大貨物搭載量を55トンに制限している。だが性能諸元を見ると大出力の瀋陽WS-20高バイパス比ターボファンに換装するようで、推力が24千ポンドから28千ポンドへ引き上がる。だがWS-20は高バイパス比版のWS-10Aエンジン(Taihang)でJ-11戦闘機搭載エンジンを改装したものだ。同エンジンは性能、信頼性両面の欠陥で悪名高い。

PLAAFはY-20の2機をまず第12輸送連隊(四川省成都)に2016年7月に導入した。2018年5月に初の落下傘兵降下、貨物投下を実施した。

長距離輸送以外にも中国は同機を空中給油機また早期警戒機として活用するのはほぼ確実だ。給油機として投入されれば戦力増強効果を発揮し、H-6K戦略爆撃機の航続距離を伸ばし、太平洋地区全域が作戦範囲に入るだろう。

Y-20の長距離性能があれば海洋哨戒機・対潜機材として、さらに電子線機材やスパイ機として理想的だ。ただし、一部任務では機材が大きすぎる場合もある。現時点での欠陥は空中給油を受けられないことだ。

中国では同機に固体ロケットを搭載し衛星の迅速打ち上げに流用する構想が出ている。また空中発射レーザーで弾道ミサイル防衛にも利用できるとする意見も出ている。西安航空機では民生型も開発し輸出も進めたいとし、スリランカから照会を受けている。

PLAAFが同機を何機発注しているかは不明のままだ。すくなくとも8機が2018年までに納入されたと判明している。機材価格もはっきりしないが、160百万ドルから250百万ドルの範囲といわれる。
2016年にはAVIC関係者 Zhu Qianが中国にはY-20が最低1,000機必要と発言して驚かせる事態が発生。世界各地で飛行中の大型輸送機の合計はこの数より少ない。もちろん発言はメーカーの意見であり中国軍の見解ではない。国防大学が先に発表した研究結果はY-20が400機が必要としていたが、それでも相当の規模だ。
だが中国国防アナリストのXu Yonglingが人民日報に語った内容ではY-20発注規模は100機未満とし、今後5ないし10年すればより高性能の機材が登場するという。AVICでは米C-5ギャラクシーあるいはアントノフAn-225に匹敵する超大型機の開発も想定しているという。An-225は世界最大の実用輸送機でペイロード最大は275トンもある。中国は同型一機をウクライナから購入している。
Y-20及び後継機は中国の軍事政治両面の国力投影能力を着実に伸ばす手段になり、とかく注目を集めがちのステルス戦闘機や空母より意味のある存在かもしれない。ステルス機や空母はハイテク装備を有する敵との大規模戦で実力を発揮する。だが輸送機が大量にあれば超大国への道を目指す中国の台頭を日常的に見せつけられる。迅速展開した部隊の活動を維持する、あるいは人道援助を世界各地で展開できる。同時にこれまで米国や欧州各国が果たしてきた「世界統治」ミッションに中国も加わることになるからだ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.