2022年6月7日火曜日

ウクライナに想定外の敗北を喫したロシア海軍、日本海海戦の恥辱から立ち直っていないまま117年が経過

 Russian missile cruiser Moskva in the Mediterranean Sea

ロシア巡洋艦モスクヴァがシリア近くの地中海に展開していた, December 17, 2015. Russian Defense Ministry Press Service via AP


  • ロシア海軍は数で劣るウクライナから被害を被った

  • 敗北は、破滅的ではないものの、ロシアの威信が傷ついた

  • 今回の敗北は、地球の裏側で起きた別のロシア海軍の大敗から117年後となった


シアが 2 月末にウクライナ攻撃を開始して以来、数で圧倒的に劣る敵がロシア海軍に目立つ大損失を与えている。

 ロシアはラプター級巡視船5隻、タピール級揚陸艦1隻、セルナ級揚陸艦1隻を失い、特に黒海艦隊の旗艦だったスラバ級誘導弾巡洋艦モスクヴァを失った。

 ロシア海軍の威信が傷つつき、ロシア海軍旗艦が最後に沈没した対馬沖海戦から1世紀余り経った今、ロシアに再度の歴史的大失敗となった。

 1905年5月27日、28日に朝鮮半島と日本の間の海域で日露両帝国が戦闘を行った。この海戦の結果、日本は欧米列強と肩を並べる存在となったが、両帝国に多大な影響を与えた。


両帝国の競合


Japan navy ships Russo-Japanese war

日露戦争(1904-05年)で旅順港を砲撃する日本海軍艦艇を描いた図Ann Ronan Pictures/Print Collector/Getty Images


1895年の日清戦争で日本が圧倒的な勝利を収めたことで、日本帝国とロシア帝国の緊張が高まった。

 組織化され近代的な軍隊を備えた日本は、朝鮮と中国で野心を追求し、特に満州と朝鮮でのロシアの利権へ危険なほど接近した。

 ロシアにとって特に重要だったのは旅順港(現在の中国・大連)で、ここはロシア帝国唯一の太平洋不凍結港であり、租借地だった。旅順港はロシア太平洋艦隊の司令部となり、シベリア鉄道でロシアと結ぶ計画があった。

 同地域の将来をめぐる日露交渉は難航し、1904年2月8日、日本海軍は旅順港内のロシア太平洋艦隊主力部隊を攻撃し、数時間後に正式に宣戦布告した。

 日本は比較的早く海軍の優位性を獲得した。ロシア太平洋艦隊の旅順封鎖解除の試みを撃退し、ロシアのウラジオストクを拠点とする戦隊をケムルポ湾と蔚山でほぼ撃破した。

 敗戦を認められず、日本軍の旅順包囲を開始したロシア皇帝ニコライ2世は、バルチック艦隊の艦船で構成される第二太平洋艦隊の創設を命じた。

ジノヴィ・ロジェストヴェンスキー副将を司令官とする第2太平洋艦隊は、前弩級戦艦11隻、巡洋艦9隻、駆逐艦9隻を含む約40隻で構成された。

1904年10月にバルト海を出港した彼らは、旅順港にいる太平洋艦隊を救援し、遭遇した日本船を破壊し、日本とアジア本土の間の補給線を断つことになっていた。


Russia navy ships Port Arthur Russo-Japanese war

日露戦争で、旅順港を日本が艇を沈め閉鎖し、ロシア艦パラダ(左)、ポビダ(右)が砲撃を受けた。Hulton Archive/Getty Images



日本は比較的早く海軍の優位性を獲得した。ロシア太平洋艦隊の旅順封鎖解除の試みを撃退し、ロシアのウラジオストクを拠点とする戦隊をケムルポ湾と蔚山でほぼ撃破したのである。

 敗戦を認めない間に、日本軍の旅順包囲開始を知ったロシア皇帝ニコライ2世は、バルチック艦隊艦艇で第二太平洋艦隊の創設を命じた。

 ジノヴィ・ロジェストヴェンスキー中将を司令官とする第2太平洋艦隊は、前弩級戦艦11隻、巡洋艦9隻、駆逐艦9隻含む約40隻で構成された。

 1904年10月にバルト海を出港した艦隊は、旅順港に残る太平洋艦隊を救援し、遭遇する日本艦艇を破壊し、日本とアジア本土の間の補給線を断つ任務を受けた。

Russia navy battleship Knyaz Suvorov

1904年8月、サンクトペテルブルク近郊のクロンシュタットにて、対馬海戦でロシア旗艦となった帝国戦艦クニャズ・スヴォーロフ。公式写真 Official photograph


Russia navy battleship Borodino

1904年8月、サンクトペテルブルク近郊のクロンシュタットでの帝政ロシア戦艦ボロディノ。Official photograph



呪われたロシア艦隊



ロシア海軍では1800年代後半から近代化が進んだが、第2太平洋艦隊は書類上では強そうに見えても、部隊としては二流だった。戦艦には新造艦もあるが、多くは旧式で老朽化の一途だった。また、砲を搭載した補助艦艇に過ぎないものさえあった。

 また、ロシア海軍指導層の質も低かった。将校の多くは、裕福でコネのある家系の出身で、昇進を金で買っていただけである。水兵も未熟な徴募兵が多く、プロ意識は希薄だった。

 これらの問題は、7カ月間、1万8千マイルに及ぶ太平洋への旅で、存分に発揮された。

イギリス近海の北海で、艦隊はイギリスの漁船トロール船を、なぜか日本水雷艇と勘違いし砲撃した。その結果、漁民2人が死亡、1人が負傷、1隻が沈没し、4隻が損傷した。この混乱で、ロシア艦艇には互いに発砲し合い、死傷者を出したり、損害を与えたものがあらわれた。

 外交工作により、イギリスが日本側で参戦することは何とか阻止できたが、ロシア艦隊の苦難はまだ始まったばかりだった。

 ロシア艦隊のほとんどはスエズ運河を通らずアフリカを回った。気候の違いや長時間の航海を経験していない乗組員にとって、航海は大きな負担となった。艦にも大きな負担がかかる。巡洋艦が曳航する模擬標的を使う砲撃訓練で、命中させたのは巡洋艦だけだった。

 同盟国がないロシアは、友好的な港に停泊できないため、洋上で石炭を多く積まなければならなかった。船内の状況は悪化し、病気や呼吸器系の問題で多くの水兵が死亡した。

1月にマダガスカルに到着した時点で、旅順は陥落していた。ウラジオストクでロシア太平洋艦隊の残党と合流し、日本軍との決戦に臨む計画に変更された。


Japanese navy ships Tsushima

1905年5月27日未明、対馬でロシア軍迎撃に出航した日本艦隊。戦艦「朝日」から見た。 via Wikimedia Commons

Shigetada Seki via Wikimedia Commons



Russia navy cruiser Oleg

1905年6月27日、マニラ湾にて、対馬沖海戦の被害を示すロシアの防護巡洋艦オレグ。Collection of P.H. Proctor via Wikimedia Commons


対馬の惨劇


1905年5月26日夜、ロシア艦隊が対馬島海峡に到着した時、ロジェストヴェンスキーは気づかれずに通過しようとした。不幸にも、日本艦に発見された。

 もっと不幸だったのは、発見されたロシア船が日本艦をロシア艦と誤解して、もっと多くのロシア艦船が付近にいると信号を送ったことだ。

 敵の位置を確認した東郷平八郎大将の連合艦隊は4隻の近代戦艦、20隻余りの巡洋艦、21隻の駆逐艦、そして43隻の水雷艇でロシア艦隊迎撃に出動した。

 5月27日朝、両艦隊は接触した。東郷は砲撃開始前に信号旗を掲げ、あらかじめ決められたメッセージを艦隊に伝えた。「帝国の運命はこの1戦にかかる、各人最大限の奮闘をせよ」。

 続く戦闘は大虐殺となった。訓練、規律、経験に加え、日本軍は徹甲弾を装備していたので、ロシア艦を引き裂くことができた。

 同日の終わりまでに、日本軍はロシア戦艦4隻を撃沈した。アレクサンドル帝王3世Imperator Aleksandr IIIは700人以上の乗組員全員と一緒に沈み、ボロディノBorodinoは800人以上の乗組員のうち一人を除いて全員と沈んだ。

 旗艦クニャース・スヴォーロフは20人の将校を除き全員が艦と運命をともにし、オスルヤの乗組員の約半数が艦とともに沈んだ。日本軍は巡洋艦と駆逐艦多数も撃沈した。

 夜になると、残存艦は暗闇にまぎれウラジオストクに向かおうとした。東郷の駆逐艦はこれを追い詰め、さらに戦艦2隻他の軍艦を撃沈した。翌日の午後には、生存者のほとんどが降伏した。



失われた威信



Heihashima Togo Japan Tokyo


1905年10月22日、東京に戻った東郷平八郎元帥を歓迎する日本国民ullstein bild/ullstein bild via Getty Images



ロシア海軍の損失は甚大で、21隻が沈没または自沈し、7隻が拿捕された。3隻のみがウラジオストクに到着したが、他の6隻は中国、フィリピン、マダガスカルの中立港に到着できた。

 日本軍は4千人余りのロシア水兵を殺し、6千人余りを捕虜にした。日本軍は3隻の魚雷艇を失っただけで、死者117人、負傷者約500人で、真珠湾攻撃の首謀者若い山本五十六は、戦闘で指を2本失った。

 ロシア海軍の威信は対馬海戦の後、回復することはなかった。第一次世界大戦では、大規模な再建ができず、主要な戦闘は皆無だった。ソ連海軍は第二次世界大戦でも限られた戦いしかせず、冷戦時代にも実力を発揮することはなかったが、ソ連潜水艦はNATOの海軍にとって常に懸念材料であった。

 現在、ロシア海軍は小規模ながら近代的な艦隊を誇り、外洋での作戦よりも近海水域での作戦に重点を置いているが、ウクライナ戦での驚くべき敗北は、100年前に失った優位性をまだ取り戻せていないことを物語るものだ。■


Surprising Russian Navy Losses Against Ukraine Century After Tsushima

The Russian navy's surprising losses against Ukraine are reminders of another humiliating defeat 117 years ago

Benjamin Brimelow


2022年6月6日月曜日

海兵隊沿海域(リトラル)連隊が発足。構想と戦術を解説。対中作戦で画期的な効果を上げる期待。

 



事ニュースを追っている人なら、リトラルという言葉をよく目にしていることだろう。海兵隊司令官が掲げる海兵隊のスリム化構想は続いている。それには、低シグネチャで発見されにくく、動きが迅速で、沿海域部で効率的な戦闘力を持つ海兵隊リトラル連隊の育成が必要だ。

 


 

リトラルとはどういう意味なのか。ネットによると「沿海域とは、海、湖、川などの岸辺に近い部分のこと。沿海域地帯は、めったに浸水しない高水位から、永久に水没する海岸線まで広がる」とある。

 

この部隊は、まさしく水陸両用で、海岸線と砂浜で常に活動し、水中または水辺に配置される。海兵隊にとって完璧な任務だ。このような任務は全世界に適用できるものではないが、太平洋地域では理にかなう。このため、最初のリトラル連隊はハワイを拠点とする。

 

最初の海兵隊リトラル連隊は、今年初めに発足した。今回は、リトラル連隊とは何か、それが何を意味するのか、そしてこのリトラル海兵隊が何をするのかについて見てみよう。



(USMC)

海兵リトラル連隊の構成

3海兵隊リトラル連隊は、3部構成となる。1つは、歩兵大隊1とミサイル隊1からなる沿海域戦闘チーム。二番目が新しい対空大隊で、第3LAABとして知られる。最後に、第3が戦闘兵站大隊で、連隊の補給を維持する。各隊は、小型の沿海域戦闘艦(LCS)を使用する。

 

海兵隊は海軍と、沿海域連隊のため特別に設計された海軍軽水陸両用艦を開発中だ。艦から陸上への移動は必要だが、AAVよりLCACや小型ボートに頼ることになる。新型水陸両用艦は、後退し、タラップを下ろして、海兵隊員や車両などを直接揚陸できる。

 

小型艦は、低シグネチャのまま、接岸できる。こうした艦船により、海兵隊は遠征前進基地作戦(EABO)を確立し、島嶼ホッピング作戦の足場として機能させ、海へのアクセスを敵に拒否する役割を果たす。

 


(USMC)

 

沿海域戦闘チーム

沿海域戦闘隊は、強化した小隊を沿海域部に投入し、攻撃作戦を展開する。海兵隊部隊は足場を固め、各種作業を可能にするべくEABOを構築する。

 

EABOは、航空機の再武装と燃料補給の前方基地として機能し、海兵隊員が海上で偵察、監視、情報収集を行うことを可能にする。また、防空探知や早期警戒ステーションとしても機能する。

 

長距離対艦ミサイルも運用可能だ。ミサイル隊と連携し、艦船を発見・撃沈できる可能性が生まれる。海兵隊小隊が沿海域で敵艦を撃沈する姿を想像してみてほしい。敵のアキレス腱にメスを入れるような、小規模、正確で、致命的な部隊が投入されれば、ゲームチェンジャーとなる。

 

強化小隊は海兵隊員75100名で構成する。ライフル小隊にマシンガン、迫撃砲、対人兵装を組み合わせたものになるだろう。スカウト・スナイパーや重機関銃や迫撃砲の小隊も登場する可能性は否定できない。

 


(USMC)

 

ミサイル隊は車両移動型ミサイルを使用する。ROGUE-Firesと呼ぶ車両には、対艦ミサイルシステム「NMESIS」を搭載する。乗員は車両から離れ、車両とランチャーを遠隔操作できる。これにより、発射台が狙われても海兵隊員の喪失は避けられる。逆に、海兵隊はミサイルを搭載した遠隔操作車両で艦船を仕留める。




(USMC)

 

連隊が空から脅威を受ければ、沿海域対空大隊が行動する。航空機に交戦し排除し、航空監視、早期警戒、航空管制、前方再武装・給油の能力を活用することができる。

 これは戦力増強効果を生み、少数の海兵隊員で沿海域地帯の支配を維持できるようにするのがねらいだ。これにより、連隊は効率的になり、他軍のお荷物になることはない。

 

戦闘兵站大隊

戦闘兵站大隊(CLB)は、新しい構想ではない。海兵隊はこれまでもあらゆる気候や場所で長期作戦を行うため必要な兵站を提供してきた。海兵隊員には耳の痛い話だが、ロジスティクスで戦争に勝つのだ。

 

CLBEABOに燃料や弾薬、さらには高度なタスクを補給する。これにより、車両や武器、そして医療部隊のメンテナンスをより高いレベルで行うことができるようになる。さらに、リトラル連隊が自律的に活動し、低いシグネチャで高い効率を維持できるようになる。

 


(USMC)

 

うまくいくか?

明言できない。筆者は海兵隊で5年の経験を持つ一兵卒にすぎず、新しい沿海域連隊構想を検討していない。筆者は将軍ではないし、星のついた連中は何千時間もの戦争ゲームを行っている。だが、素晴らしいアイデアに思える。

 

75から100名の小隊が太平洋を渡り大混乱を巻き起こす姿を想像している。部隊は機動性があり、発見されにくく、艦艇の動きを止め、海やジャングルの中に消える。このような部隊への対処は不可能で、歩兵や回転翼機ではほとんど不可能だろう。また、海兵隊が戦略上重要な敵地点を拒否することも可能となる。

 

筆者は、この構想が継続され、発展していくのを見るのが楽しみだ。海兵隊の変化は見るものを魅了し、現役海兵隊員が羨ましい。■

 


Travis Pike

Travis Pike is a former Marine Machine gunner who served with 2nd Bn 2nd Marines for 5 years. He deployed in 2009 to Afghanistan and again in 2011 with the 22nd MEU(SOC) during a record-setting 11 months at sea. He’s trained with the Romanian Army, the Spanish Marines, the Emirate Marines, and the Afghan National Army. He serves as an NRA certified pistol instructor and teaches concealed carry classes.

 

第二次太平洋戦争を想定し、大型水上機が復権する:DARPAのリバティリフター構想について

Japanese US-2 seaplane

二次世界大戦の太平洋で水上機が多くの命を救った。米軍のPBY-4カタリナは、海上に墜落した飛行士を拾い上げ、敵艦の捜索任務や潜水艦を狩る任務をこなした。飛行場が点在し、空中給油の発明前、広大な太平洋では水上発着可能な水上機は欠かせない存在であった。

 しかし、水上機は陸上機や艦載機に比べ、重く、扱いにくく、性能も劣りがちだった。冷戦時代にソ連が水陸両用哨戒機Be-12を飛ばしたのを除けば、水上機の軍事利用はほぼ行われなくなった。

 しかし、水上機が復権しつつある。第二次太平洋戦争が勃発すれば、今回は中国と戦うことになるが、飛行場のない広い海域で戦うことになる。さらに悪いことに、中国の長距離兵器で飛行場が破壊されたり、損傷を受ける可能性もある。日本はUS-2水陸両用機で実績をあげており、航空機乗務員の水上救助などの任務に役立てている。

 米軍も水上機がほしいところだ。しかも、装甲車両を運べる大型水上機だ。巨大な水上輸送機がもたらすメリットは非常に大きい。飛行場がないところ、あるいは敵の砲撃で飛行場が破壊されたところに、兵員や装備を運べる。また、水陸両用装甲車を遠隔地に空輸し、奇襲攻撃ができる。

リバティリフター構想



 国防総省の研究機関DARPAがつけた「リバティ・リフター」という名前からして、第二次世界大戦を連想させるようなプロジェクトである。しかし、DARPAが実際に想定するのは、あくまでも近代的な航空機だ。

 問題は、米軍が大量輸送とロジスティクスを海上輸送に頼っていることである。

「大量のペイロードを運ぶには非常に効率的だが、従来型の海上輸送は脅威に弱く、機能する港湾を必要とし、輸送時間が長くなる」とDARPAの公募要項にある。

 「従来型の航空輸送は、桁違いに速いが、高価で、海上作戦への支援能力が限られる。さらに、航空機は長い滑走路を必要とし、垂直離着陸機(VTOL)やその他の海上航空機は積載量で制限を受ける」。

  解決策としてDARPAが求めるのは、水面近くを飛行する際に翼が生み出す揚力を利用する、地面効果を利用した設計だ。最も有名な例は、対艦ミサイルを搭載した300トン、全長242フィートの巨大な地面効果機で、飛行機というより船だったエクラノプラン(別名「カスピ海の怪物」)だ。

 しかし、エクラノプランを真似るものではない。

 「これらの機体は高速(250ノット以上)で滑走路に依存しないが、対地効果飛行の制御性は穏やかな海域(例えばカスピ海)での運用に限られる」とDARPAは説明。「さらに、地面効果での高速運転は、混雑した環境で衝突の可能性を増加させる」。

 DARPAは、水上飛行機と地面効果機を組み合わせた、ハイブリッド設計を目指しているようだ。最終的な形状は不明だが、大型機になるだろう。DARPA仕様では、米海兵隊の水陸両用戦闘車2台、または20フィートコンテナ6個を搭載できることがある。つまり、C-17輸送機に近い機体サイズになる。

 リバティリフターではその他のスペックにも目を見張るものがある。貨物積載量は90トンとC-17並み、航続距離は45トン積載時で4000海里以上、フェリー航続距離は6500海里以上、さらに高度1万フィート以上で運用が可能とある。

 また、海面状況4(中程度の海面状態)での離着水、海面状況5(中程度の荒海面)までの対地効果飛行が求められている。さらに「悪天候や障害物の回避、一部の地形上の飛行、運用の柔軟性を可能にするため、持続的な非加圧飛行」を行うものとある。

 興味深いことに、DARPAによれば、リバティリフターは「最大46週間の海上運用」が可能でなければならないとある。飛行場のない遠隔地で活動し、特殊作戦部隊や諜報任務の海上基地として機能する航空機/ボートを示唆している。

水上機を武装したら

 DARPAがリバティリフターの武装について言及していないことが重要だ。おそらく、第二次世界大戦における水上機の戦闘実績を反映しているのだろう。カタリナ含む水上機は、対潜哨戒や無防備商船への攻撃には有効だった。しかし、浮体構造の重量が戦闘能力を低下させた。日本が開発したA6M2零戦の水上機型は、ドッグファイターとしてはお粗末なものであった。

 しかし、アメリカ空軍は、C-130などの貨物機に巡航ミサイルを搭載する計画を進めている。輸送機は軍需物資を大量搭載でき、また、スタンドオフ兵器により、敵の防空圏外に安全にとどまることができる。ミサイルを搭載したリバティリフターは強力な武器となる。とはいえ非武装の輸送機としても、装甲車両を遠隔地に運ぶ水上機は、非常に意味のある装備となる。

Giant seaplanes may make a return as great-power competition in the Pacific heats up - Sandboxx

Michael Peck | June 3, 2022

Michael Peck is a contributing writer for Forbes. His work has appeared in The National Interest, 1945, Foreign Policy Magazine, Defense News and other publications. He can be found on Twitter and Linkedin.