2022年6月17日金曜日

次世代エイブラムス主力戦車のティーザー販促資料が出てきた

 


GDLS via Twitter

M1エイブラムス主力戦車の新バージョンを垣間見ることができる販促資料が出てきた。

ェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズGeneral Dynamics Land Systemsが、1981年から米軍で運用中のエイブラムス主力戦車の次世代型を予告している。同戦車の性能に関する詳細は現時点では非常に限られているが、既存のM1戦車より改良された武器、センサー、その他装備品を搭載することは明らかで、通常型=電動のハイブリッド推進システムを採用する可能性もある。

次世代エイブラムスの専用ウェブサイトがオープンした。ウェブサイトでは、ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ(GDLS) の他製品でも一連の「次世代」設計を予告しており、同社の 8x8 輪装甲車ストライカーの新しい基本構成と、高出力マイクロ波指向エナジー兵器レオニダス Leonidas を搭載した別の計画型の他、GLDSが提供する各種無人地上車両も紹介されており、TRX追跡型設計の改良型であるレーザーバックRazorbackは現在、数十個の浮遊弾薬を搭載し、米陸軍の小型多目的装備輸送(SMET)プログラムへの参入を狙っている。

GDLSの公式サイトに掲載の「次世代エイブラムス」のレンダリング画像で輝度を上げたもの。拡大すると、本来なら砲塔が見えるはずの画像上部が意図的に隠されていることがわかる。 GDLS

「レジェンドモード」や「次世代ドミナンス」といったキャッチフレーズ以外、新しいエイブラムスの構成は具体的に何も書かれていない。また、GLDSのプロモーション資料を見ると、このデザインは現在アメリカ陸軍が開発中のM1A2システム強化パッケージバージョン4(SEPv4)改良型とはほぼ無関係だとわかる。

M1A2 SEPv4 Abrams戦車と思われるGLDSプロモーション用レンダリング画像。この画像には、ストライカー8x8輪装甲車、TRX追跡型無人地上車両、小型クアッドコプタードローンも写っている。

米軍によると、SEPv4は、既存のSEPv3の構成から次のような改良が施される。

  • 第3世代の前方監視赤外線センサー(FLIR)、レーザー距離計、フルカラービデオカメラ搭載の改良型砲手側主視点(GPS)。

  • コマンダーズ・プライマリー・サイト(CPS)を改良し、第3世代のFLIRとフルカラービデオカメラ、レーザーポインターを搭載。

  • 120mm主砲に再プログラム可能なXM1147高性能多目的弾(AMP弾)の搭載や通信可能なデジタルデータリンクなど、殺傷能力が向上している。

  • 精度を向上し搭載される気象センサー。

  • 通信、データ共有、オンボード診断の機能を向上。

2017年の一般公開時のM1A2 SEPv3プロトタイプ。米軍で運用されている最新型のバリエーションだ GDLS

GDLSのウェブサイトに次世代エイブラムスに関する簡単なビデオフィーチャーが多数含まれていますが、コンピュータ生成のレンダリングを一瞥する程度に過ぎない。次世代エイブラムスとストライカーのプロモーション画像は、少なくとも先週から、より詳細を明らかにするため明るくシャープにされたバージョンと、オンラインでも出回っている。画像には2022年10月10日という日付も含まれており、これはワシントンD.C.で開かれた米国陸軍協会のカンファレンス・展示会の日付だ。防衛関連業者は同イベントで新商品やその他のニュースを発表している。

GDLS via Twitter

上の画像を明るくしてシャープにし、さらにディテールを露出させたバージョン。 GDLS via Twitter

プロモーション資料を見る限り、Nex Generation Abramsは、少なくとも車体と砲塔の外形が変更されているようだ。これが、バージョンの乗員構成に反映され、変更される可能性があるかは明らかではない。既存のエイブラムスは4人乗りで、運転手は車体に、車長、砲手、装填手は砲塔に乗る。

プレゼンテーションビデオの中には、「サイレント・ストライク」「They'll Never Hear Us Coming」というキャッチフレーズがあり、新型エイブラムスがハイブリッド推進システムを搭載する可能性を示唆している。ハイブリッド推進を各種軍用車両に採用するメリットとしてよく言われるのは、極めて静かなオール電化モードで運用できることだ。

次世代エイブラムス戦車は、30mm自動機関砲M230を搭載したKongsberg Protector RS6 Remote Weapon Station(RWS)を砲塔上部に装備しているようです。この兵器の軽量版M230LFは、米陸軍がXM914と命名し、小型ドローンの脅威が高まる中、車載型短距離防空システムの構成要素として米軍が運用している。このRWSをエイブラムスに追加すれば、低空飛行の脅威や地上のさまざまな目標に対して、戦車の乗員が敵の攻撃にさらされず操作できる火力が大幅に増やる。

 

GDLSのNext Generation Abramsのビデオフィーチャーで、30mm M230自動機関砲で武装したリモート・ウィアオプン・ステーションの一部をスクリーンショットした。GDLS capture

ネット上では、レンダリングに見られるマズルブレーキのデザインから、次世代エイブラムスの武装は、米陸軍で中止となったFCS(Future Combat Systems)プログラムの一環で開発した120mmタイプの新型主砲「XM360」バージョンではとの憶測が流れている。ただし、エイブラムス搭載を想定して開発されたXM360E1には、マズルデバイスが搭載されていないことも指摘されている。

GDLSの公式サイトに掲載されたプロモーション画像から、次世代エイブラムスの銃口のアップを撮影したもの。銃口の模様は、FCSプログラムの一環として開発されたXM360砲のプロトタイプに見られるものと類似している。 GDLS

XM360とXM360E1銃の違いについて詳しく説明した米軍のブリーフィングスライド US Army

米陸軍はエイブラムスの120mm主砲を140mmなど大型砲に置き換えることも検討ししていた。

砲塔前端部の左右上部には、センサー類(SEPv4型用に開発の改良型砲手照準器と指揮官照準器、あるいはさらに高度な代用品か)が2つ上げられており、後方の中央部にはRS6 RWSが見える。また、砲塔後部の左右には、アメリカ陸軍で供用中のエイブラムス一部にすでに搭載されているトロフィー・アクティブ・プロテクション システム(APS)と思われるものが見える。

砲塔形状から、これらセンサーシステムはPASEOシリーズではないかとの議論もある。PASEOシリーズは、フランスに本社を置く防衛コングロマリット「サフラン」が製造する。

右側に見えるPASEO砲塔の形状は、これまでに公開されたレンダリングで次世代エイブラムスの砲塔上部に見られたセンサー砲塔と、外観上の類似性がある。Safran


次世代エイブラムスのコンセプトの正確な構成がどうであれ、ウクライナ紛争で重装甲の有用性にが観察された結果、戦車全般の将来について大議論が巻き起こっているときに、このコンセプトが浮上してきた。米軍に関しても、将来のハイエンドな紛争、特に太平洋を横断する中国との戦争の可能性において、戦車やその他大型装甲車の役割について、鋭い議論が起こっている。


米海兵隊は、遠征戦と分散戦に重点を置いた新しい作戦コンセプトの一環として、M1エイブラムス戦車を全数廃止する方針が目立っている。米陸軍は、戦車を広範囲に運用する方針にこだわり続けているが、各種の小型・軽量武装・装甲無人地上車両が戦場で重要な役割を果たす未来も思い描いている。将来のM1A2 SEPv4や次世代エイブラムスの設計に、どのような有人・無人チーム機能が搭載されるかは、まだ明確でない。


アメリカの同盟国多数を含む世界中の他の国々が、次世代戦車を研究し、その姿を探っている。今週、ドイツのラインメタル社が、130mm砲を搭載したKF51パンサーという独自の新型戦車を発表した。同戦車は、ドイツのKMWとフランスのNexterによるコンソーシアム、KNDSが共同開発中の独仏の設計に対抗する存在になりそうだ。


次世代エイブラムスに関しては、今年末に予

定される正式公開に先立って、追加情報が出るかは未知数だ。The War Zoneは、GDLSに連絡を取り、詳細情報が入手可能か確認中だ。■


Next Generation M1 Abrams Tank Teased By General Dynamics

BYJOSEPH TREVITHICKJUN 16, 2022 3:52 PM

THE WAR ZONE



「はつゆき」級汎用駆逐艦11隻が並走する光景に圧巻された....冷戦時に量産された同級も今は全艦退役......

歴史に残る艦 はつゆき級汎用駆逐艦

Hatsuyuki class

Japan MoD

上自衛隊が公式Twitterアカウントで公開したスナップショットに、これまでに建造された「はつゆき」級駆逐艦12隻のうち11隻が堂々と並走する光景が収められている。よく見ると船体番号順に並んでいる。

最古参のDD-122が写っていることから、退役した2010年以前の撮影と思われる。つまり、この画像が10年以上前に撮影されたことを示し、正確な日付はわからないものの、写真は称賛された同級駆逐艦が海で過ごした時間を視覚的に思い出させてくれる。

「はつゆき」級が海上自衛隊の第一世代「汎用護衛艦」であることを考えると、技術面で記念すべき艦であるのは間違いない。

日立造船や三菱重工業など複数メーカーが建造した「はつゆき」級は、日本で初めて対空・対潜能力を兼ね備えた汎用護衛艦(DD)の指定を受けた。はつゆき級の登場前の海上自衛隊駆逐艦は、対空型がDDA、対潜型がDDKと指定されていた。

はつゆき級は、最盛期には12隻で構成され、船体番号はDD-122からDD-133まであった。はつゆきは1979年に起工、翌年進水し、1982年に就役した。その後、建造は急拡大し、残り11隻もすべて1980年代末に就役した。

JSはつゆき (DD-122). Wikimedia Commons

全長約426フィート、平均排水量約3,000トンで、DD-129からDD-133までは、最初の7隻で使われたアルミニウム合金ではなく、鋼鉄で建造されたため、重量が増えた。また、はつゆきは海上自衛隊の駆逐艦として初めて、巡航用の川崎ロールス・ロイス製タインRM1Cガスタービン2基と、最大速度30ノットを達成するためのより強力な川崎ロールス・ロイス製オリンパスTM3Bガスタービン2基からなる複合ガス推進システムを採用した艦種だ。

冷戦時に日本は海上自衛隊の駆逐艦の見直しを行い、1970年代の敵対国の技術進歩に対応するため追加整備が必要という結論を出した。例えば、ソ連が潜水艦や対艦ミサイルを強化したことで、日本は海軍のプレゼンスを最適化する必要に迫られた。これは、各隊をヘリコプター搭載駆逐艦(DDH)1隻、誘導弾搭載駆逐艦(DDG)2隻、そして新たに構想された汎用駆逐艦5隻で構成し、充実した海上防衛を行うというものであった。

 

JS はるゆき (DD-128). Wikimedia Commons

はつゆき級は、日本製の火器管制システムFCS-2を使用したシースパローミサイルシステムを海上自衛隊で初めて搭載し、船尾のボックスランチャーに設置した。はつゆき級はシースパローのほか、OTOメララ製の76mm艦砲、ゼネラルダイナミクス製の20mmポイントディフェンス兵器ファランクス2基、ボーイング製の対艦ミサイルハープーンを搭載した。さらに、RUR-5対潜ロケット8基と発射台、Mk-46魚雷用のHOS-301三連装魚雷発射管2基を搭載した。

しかし、2010年に予算の関係で、「はつゆき」は最初に退役することになった。その後、2016年までに6隻も退役し、2020年から2021年に5隻も退役した。日本は過去20年間で水上戦闘艦部隊を劇的に改良し、「はつゆき」級は能力的にはるかに劣る存在となってしまった。

JSさわゆき(DD-125). ミサイル発射管が舷側に見える. Wikimedia Commons

だがそれではつゆき級が全て消えたわけではない。1999年から2016年まで4隻が練習艦として再利用されたからだ。

はつゆき級すべてが戦闘任務に就いていたわけではなく、ごく一部の艦艇が訓練任務に就いたことを考えると、この写真は後にDD-133を除く艦隊の最後の集会の記録となるのかもしれない。いずれにせよ、見ごたえのある写真であることは間違いない。■


This Shot Of 11 Japanese Hatsuyuki-Class Destroyers Is Damn Impressive


BYEMMA HELFRICH JUN 16, 2022 8:26 PM

THE WAR ZONE

Contact the author: Emma@thewarzone.com


これまでのウクライナ戦でわかったロシア軍電子戦の戦術効果について

 Russian Electronic Warfare

TASS

ロシアのウクライナに対する電子戦で、これまで判明したことをまとめた。

2022年2月24日モスクワ時間午前6時過ぎ、ロシア軍12個集団がウクライナ進攻を開始した。ロシア軍の電子戦(EW)装備は、歩兵、装甲、大砲と配備されていた。EWはロシア軍、特に陸軍で重要な役割を担う。「3分の1を攻撃し、3分の1を妨害し、最後の3分の1は崩壊する」というのは、ソ連・ロシア軍のドクトリンから生まれた格言だ。ロシア陸軍は、ロシアの西部、南部、中部、東部の各軍事区に各独立したEW旅団を配備している。また、陸軍の各戦術機動陣には、EW中隊が配置されているとされる。機動小銃・戦車旅団や師団に、最大30ものEW中隊が配備されることもある。

ロシアのEWドクトリン

EWは、ロシア軍が敵の指揮統制(C2)、情報・監視・偵察(ISR)能力を打破するために不可欠だ。C2は無線と衛星通信(SATCOM)に依存する。通信を遮断すれば、敵は命令伝達、状況報告の収集ができなくなる。陸軍のEWは、敵対する地上、海軍、空中のレーダーも標的とする。レーダーは目標の探知・追尾というISRの重要な役割を担う。レーダーを破壊すれば、敵のISRデータを奪うことができる。ロシアのEWは、敵対するGNSS(Global Navigation Satellite System)信号もターゲットにする。GNSSの妨害で、米国の全地球測位システム(GPS)のような衛星コンステレーションが送信する位置、航法、タイミング情報を敵から奪う。

軍事利用される民間装備も、ロシアのEWシステムのターゲットになる。民間の携帯電話ネットワークや従来の通信手段がここに含まれる。ネットワークが妨害されたり、部隊や民間人の携帯電話に送られる偽の、あるいは戦意を喪失させるテキストメッセージの通信路として利用されることもある。ロシア軍の EW能力が、情報戦を広く展開するため不可欠であるのは明らかである。EW妨害信号は、サイバー攻撃も可能である。妨害信号は通信やレーダーを妨害するのではなく、悪質なコードを送ることができる。この場合、敵の無線機が受信し、ネットワーク感染で、敵のC2ネットワークに入り込む可能性がある。

ロシア軍EW中隊は、前線全体で最大50キロメートル(31マイル)の範囲で戦術的なEWの提供を期待される。一方、EW旅団は、数百キロメートルに及ぶ戦域レベルの対応を提供する。旅団EWは、EW能力を必要としない小規模な作戦を支援するため、広く分散される。ロシア軍のEWシステムの多くは、静止状態で使用されるよう設計されているようだ。そのため、ロシアの EW ドクトリンは、機動部隊に EW の「泡」 を提供することにあるようだ。

ロシア陸軍は、電磁波の優越性と優位性(E2S)原則を受け入れている。E2Sは、電磁スペクトルで作戦の自由度を維持し、敵の作戦の自由度を低下させて、優位に立つことに主眼を置く。電磁波の優位性が電磁波の至上性の前提条件となる。

以前の状況

NATOにとって、ロシアによる2022年のウクライナ侵攻は、ロシア軍の10年にわたるEW近代化の効果を理解する絶好の機会だ。ロシア軍のEWは、今回の侵攻が初の投入ではない。2008年の「ニュールック」改革で、冷戦終結後のロシア軍衰退を食い止めるため、大規模投資が行われた。情報通信技術は近代化で重要な位置を占めている。

ウクライナは、2014年のロシアによる最初の侵攻の際に、ロシア軍のEW能力に直面し、に深刻な影響がウクライナ軍出た。EWは紛争当初から多用され、ウクライナ情報筋は、ロシアのEW計画は、妨害電波で混乱を引き起こし、E2Sの確保を狙っていたと主張している。

ロシア軍は当初、戦域内のウクライナ軍通信を攻撃し、ウクライナ軍司令部の通信を遮断するためEWを使用した。ロシアのスペツナズ特殊部隊が通信遮断により助けられた。ロシア軍が配備した悪名高いEWシステムの1つが、無人航空機(UAV)を使い携帯電話ネットワークを妨害する「RB-341V Leer-3」だ。ウクライナ軍と民間が使用する携帯電話の妨害に重要な役割を果たした。RB-341Vは、ウクライナ軍に戦意喪失させる虚偽のテキストメッセージを送信し、動向を追跡するため使用されたと考えられている。後者の情報は、ロシア砲撃の目標に変換された。

RB-341Vは、ウクライナ軍のAndroidベースの火砲火器管制システムにマルウェアをロードさせた可能性もある。ロシア軍の妨害電波は、欧州安全保障協力機構(OSCE)のUAVを攻撃した原因となったとも考えられている。無人機は、停戦取り決めを監視する任務を負っていた。ウクライナにおけるロシア軍EW部隊のその他の任務は、ウクライナ軍の通信と無線周波数(RF)作動を攻撃することであった。ロシア軍EW部隊は報復射撃を避けるため場所を頻繁に変えていた。ロシア軍 EWは、ロシアがウクライナに侵攻した当初から強力な能力が証明されていた。

現時点ではどうなっているか

紛争の現段階では、ウクライナ侵攻におけるロシア軍EWの実態の分析にはリスクが伴う。入手できる情報は断片的だ。偏っている可能性もあり、独自検証は不可能だ。とはいえ、信頼できる公開情報をもとに見解を示すことができる。

ロシア軍は 2 月 24 日の紛争開始から、ロシア政府が 4 月 7 日にキーウ周辺の部隊を撤退させた第1フェーズ終了まで、EWを使用した。EWは開戦段階の支援に多用された。当初、EWは、ウクライナ空軍の統合防空システムへの対抗を支援した。キーウ北西約 6 マイルにあるホストメル空港でのロシア空挺作戦を支援するために、ウクライナのレーダーと無線通信を妨害した。同飛行場の確保は、ロシアのキーウ進攻を支援する兵員と装備の輸送に不可欠だった。ロシア軍は同飛行場を占領したが、戦争の戦略的焦点がキーウからウクライナ東部に移ったため、3月下旬に同飛行場は放棄した。

興味深いことに、ロシア空挺部隊は、空港襲撃の数日前からクリア(暗号化されていない)無線を使って空港占領計画を話し合っていたようだ。この情報はウクライナ軍にとって貴重だった。これは、戦争全体で浮上してきたロシア軍のエミッション・コントロール(EMCON)の欠如を浮き彫りにし、おそらくロシア軍にとって今回の紛争で最初の大きなEWの失敗を意味する。

ロシア軍のEW対応は、侵攻当初から戦術レベルでも精力的に行われていた。スモールウォーズジャーナル誌の記事によると、「キーウ攻略戦の初期に悪質かつ効果的であった 」とある。ロシアのEWが効果的だったところ、特にウクライナ軍の通信に対して、ランナーやディスパッチライダーといった旧来型の手法が再び前面に出てきた。これらは紛争前夜に予想されていた戦術であった。同様に、侵攻前のウクライナ軍訓練では、ロシア軍の EW は過酷であり、電磁スペクトルが激しく競合する中で戦わなければならないことが強調されていた。また、ロシア軍はウクライナ軍の通信を妨害しようとした際に、EWの「味方による誤射」に見舞われた。これもロシア軍の EMCON 不足が原因かもしれない。ロシア軍の妨害工作は、ウクライナ軍が米国から支給されたSINCGARS無線機を使用していたことも障害となった。SINCGARSとは、Single-Channel Ground and Airborne Radio Systemの略で、ロシアの電波妨害に強い無線機だ。

米国がウクライナ軍に提供したSINCGARS無線機は、ロシア軍の妨害電波に優れた耐性を示してる。U.S. Department of Defense

他の周波数帯でも

ロシア軍の EW は、紛争の第一段階におけるウクライナ軍とウクライナ空軍のレーダーと無線通信に限られたものではなかった。R-330Zh Zhitel含むGNSS信号の攻撃が可能な装備も侵攻を支援した。3月4日、RFデータ分析会社Hawkeye 360は、ウクライナで記録したGNSS妨害を明らかにした。同社は2021年11月以降、親ロシア派の幹部が支配するウクライナ東部の一部からGNSS妨害を記録していた。

GNSS妨害は2022年2月まで続き、ウクライナのベラルーシとの国境からさらなる妨害が検出された。同社はまた、戦争が進行する中、ウクライナ北部のチョルノブイリ原子力発電所付近でのGNSS妨害も記録している。チョルノブイリは侵攻初日にロシア軍に占領された。GNSS妨害は懸念されていたものの、ほとんどが局地的なもので、全国規模の大停電を引き起こすことはなかったようだ。ウクライナ軍がTB2バイラクターのようなUAVを比較的容易に配備していることは、GNSS妨害が軽微だった可能性を示すものだ。UAV多数はナビゲーションにGNSSを利用している。また、ロシアによるGNSS妨害が軍用の暗号「Mコード」GPS信号に影響を与えることができなかった可能性もある。

ホークアイ360は、ロシアがウクライナ侵攻を開始した直後、GNSS妨害波を検知した地域を示す地図を作成した。チョルノブイリ原発周辺やウクライナのロシア占領地などで検出された。 Hawkeye 360

携帯電話でも、同様の傾向が見られた。2014年のロシア侵攻では、軍のRB-314 Leer-3システムが携帯電話ネットワークを妨害し、効果的であることが証明された。紛争の第1段階では、局所的な携帯電話ネットワークの妨害が発生したようだ。ドンバス地方とクリミア地方に集中した携帯電話の妨害電波がソーシャルメディアに投稿されていた。しかし、ウクライナの携帯電話ネットワークはほとんど影響を受けていない可能性がある。まず、ロシア軍が通信で同ネットワークに依存している可能性がある。ロシアの暗号化されたERA携帯電話ネットワークの配備は失敗に終わったようだ。これが、ロシア軍がウクライナの携帯電話ネットワークを物理的に狙った理由である可能性がある。次に、Leer-3 は現地の携帯電話網の妨害に有効かもしれないが、ロシア軍にはウクライナの携帯電話網を全国的に狙うだけシステムが十分でない可能性がある。

SATCOM はウクライナ作戦地域で攻撃を受けているが、主にサイバー攻撃によるものであり、ロシア軍EWと対照的である。実際、ウクライナから世界中のメディアに定期的に生中継されているニュースによると、SATCOMはほぼ影響を受けていないようだ。

ロシア陸軍の電子戦システム「R-330Zh Zhitel」は、EW中隊に配備されている。衛星通信信号を含む様々なターゲットを攻撃することができる。InformNapalm/Google Earth

ロシア軍のEWシステムには、Leer-3、Zhitel、RP-377L/LA Loranditなど、SATCOM信号を攻撃可能と思われる装備がある。しかし、ロシア軍はウクライナの衛星通信にサイバー攻撃を行ったようだ。民間衛星通信会社Viasatは、戦争開始時に同社KA-SATネットワークがサイバー攻撃を受けたと明らかにした。同社によると、攻撃はウクライナとヨーロッパ周辺のユーザーに影響を与えた。この攻撃でウクライナ軍によるKA-SATネットワークの利用を狙ったものと思われる。同様に、SpaceXのStarlink SATCOM端末もロシアのサイバー攻撃の標的にされた。同社の創業者で最高経営責任者のイーロン・マスクは、ウクライナ全土をブロードバンドSATCOMでカバーするため、Starlink端末数千台を配布したことはよく知られる。どちらのケースも、ソフトウェア修正により、比較的短期間で改善された。

次に何が控えているのか

ロシア軍のEWは、戦争の第一段階で実施されたが、当初懸念されたほど決定的な効果を発揮していない。なぜか、明確な理由を挙げることはできない。ウクライナ軍は、2014年侵攻から貴重な教訓を得ていたようだ。また、ロシア軍のEW装備がどの程度、目的に合っているかでも疑問が残る。2014年にロシアが初めて侵攻した際、ウクライナ軍に対して有効であることが証明された。しかし、その後ウクライナ軍が大幅に改善した戦力に対しては、能力が劣る可能性がある。ロシア軍のEWシステムが損傷したり、使用不能になり、交換部品が滞留している可能性もある。ロシア軍の EW 要員の訓練が、今回の戦争に対応できていない可能性もある。

ロシア軍の EW C2システムは目的に適っているのだろうか?そうでないかもしれない。5月初旬発行のロシア学術誌「軍事思想」の記事がこの懸念を浮き彫りにしている。「現在、電子戦部隊の制御システムは、電子戦部隊と軍全体の真のニーズを十分に満たしていない」。これらのEW C2システムには、「システム的、技術的に多くの欠点がある」という。同様に、キーウへの侵攻の際、道路の混雑のため、EW部隊を前進させられなかったとの分析がある。

侵攻直後、匿名の米国防当局者は、「ロシアが電子戦能力をフルに発揮したとは思えないし、理由もはっきりしない」と述べた。この状況が、今回の戦争の新しい段階でも続くだろうか?初期評価では、ロシア軍が電子戦能力を向上させたことを示唆している。6月上旬にワシントン・ポストが発表した報告書では、ウクライナ東部で最近目撃されたEWのレベルは強烈と警告している。特に懸念されるのは、ウクライナのUAV運用への影響だ。カナダのUAV企業Volatus Aerospaceは、5月下旬のプレスリリースで、ロシアの妨害電波が小型無人機に悪影響を与えていると述べていた。暗号化された無線やGNSSリンクが搭載されていないため、電子攻撃から機体を保護できないとある。同様に、AP通信が6月上旬に発表したレポートは、ロシアの妨害電波が急増中と警告している。これは、ロシア陸軍がEWユニットを戦闘地域に近づけるために、補給線がより短く、より安全になったことが原因だとされている。

戦争が新段階に入り、ウクライナ軍にどのような影響が出るかは不明だ。ロシアがウクライナのE2Sを決定的に獲得し、維持すれば、ウクライナにとって大きな後退となる。どのようなものであれ、ロシアの完全勝利を一方的に招くことはないだろう。しかし、ウクライナ軍がロシア侵攻に対抗するためには、地域制圧を狙うロシア軍に対抗できなければ、どうしようもない。

NATOや同盟国は、電子戦の行方を見誤ってはならない。ロシア軍EWは戦争の初期局面こそ精彩を欠いているように見えたが、紛争が新局面に入れば変わるかもしれない。NATO、ウクライナのいずれも自己満足は許されない。■

 

Russia's Electronic Warfare Capabilities Have Had Mixed Results Against Ukraine

BYDR. THOMAS WITHINGTONJUN 16, 2022 3:24 PM

THE WAR ZONE

Dr. Thomas Withington is an award-winning analyst and writer specializing in electronic warfare, radar, and military communications.


ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月16日現在)




 
 

シアによるウクライナ侵攻が始まり113日となった。木曜日もロシア軍はセベロドネツクの占領を目指し、北西と南西の進攻軸も押し進めている。 

 

ドンバスの状況 

セベロドネツクとその周辺での戦闘は続いている。同市につながる橋はすべて破壊されたが、ロシア軍は同市を包囲できていない。激しい市街戦が行われており、戦闘のほとんどは、市内の工業地帯にあるアゾット化学工場に集中している。 

 

北西部(イジウムとライマン)のロシア軍はスロビャンスクに向け前進しているが、ウクライナ軍は持ちこたえている。南西部(バフムト)の状況も同様で、ロシア軍はセベロドネツクの次にリシチャンスクに向け進軍しているが、ウクライナ側はとりあえず足止めしている。しかし、この4週間で共通するのは、ロシア軍が犠牲をいとわず、ゆっくりと意図的に前進していることだ。 

 

ウクライナ南東部では、ロシア軍はケルソン近郊で防衛を続けているが、同地のウクライナ軍の反撃は、勢いが足りず結果を得ていない。 

 

ロシア軍の損失 

ウクライナ軍は毎日、ロシア軍の死傷者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。 

しかし、西側の情報機関の評価と独立した報道は、ウクライナの主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、600両以上のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。 

 

他のウクライナの主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。 

 

さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。 

実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いという。 

 

木曜日時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア人犠牲者を主張している。