スキップしてメイン コンテンツに移動

もし戦わば(15) ロシア、中国が同時に開戦してきたら米国に勝ち目はあるのか



要は世界秩序を破壊したいと考える勢力が一方にあり、残りの世界は現状維持が一番都合委がよいと考えているのです。ロシア、中国とも実力を把握せず空威張りしており、あるいは米国の没落を真剣に信じ時期が来るのを虎視眈々と待っているのでしょう。エッセイでは太平洋地区の主要同盟国たる日本に対する不信感が見られますが、南シナ海というより太平洋地区での繁栄の条件を守るため日本が何もしないはずはなく、むしろ時の政権によりますが、積極的に米国と共同戦線を張るはずなので、論調には違和感があります。読者の皆さんはどう感じますか。

Wikimedia Commons

Could U.S. Win War Against Russia and China? 

米国はロシア、中国と同時に戦えるのか

 
ROBERT FARLEY
中国とロシアが共同して太平洋とヨーロッパで同時に攻勢をしかけてきたらどうなるか。
  1. 米国はすでに「二正面戦」構想として同時に二大勢力を相手にした戦闘は断念している。イランやイラクと戦いながら北朝鮮を封じ込めるべく国防総省の調達部門は補給体制や基地設置戦略を冷戦後の世界に展開してきたが、それはソ連との対決がもはやあり得ないと判断したためだった。米国の構想放棄には国際社会の仕組みが変わり中国の台頭やテロリストのネットワークが巧妙に世界に広がったことも一因だ。
  2. だが米国が一度に二つの戦争をたたく必要が生まれたら、しかも相手が北朝鮮やイラン以上の敵の場合はどうなるか。中国とロシアが相互調整して同時に太平洋と欧州で戦火を開いたらどうなるだろうか。
政治調整Political Coordination
  1. 北京とモスクワが一連の危機状態を巧妙に作り出し、米軍の反応を別々に引き出す作戦に出たらどうなるか。可能性が高いのは両国の一方が都合よくすでに発生ずみの危機状態を拡大し地域内で利益を求める状況だ。例としてモスクワがバルト海諸国に手を伸ばす状態が考えられる。米国が南シナ海で足元を奪われていれば好機になる。
  2. いずれにせよ、モスクワあるいは北京が手を下せば開戦となるだろう。米国は各地での現状維持で利益を得ているのであり、外交手段、経済手段で政治上の目的の達成を目指すことが得策である。米国が戦争につながる状況を作り出せば、ロシアあるいは中国が引き金を引くだろう。
柔軟性Flexibility
  1. 良い面は欧州や太平洋の戦闘で必要になる条件が別になっていることだ。第二次大戦時と同様に米陸軍がヨーロッパを守り、海軍は太平洋に集中するだろう。米空軍は両戦線で支援にまわるはずだ。
  2. ロシアには北大西洋でNATO軍と戦う実力がない。つまり米国とNATO同盟国がうまく装備を配分すればロシアの海上交通路を遮断でき(同時にロシア海軍の封じ込めも)、その間に米海軍は太平洋に専念できる。戦闘状態がどれだけ長引くかによりまたどこまで事前警告があるかによるが、米国は米陸軍装備の相当量をヨーロッパに輸送し本格戦闘に投入できるだろう。
  3. 米空母、潜水艦、水上艦は太平洋やインド洋に集中配備し、中国のA2/AD接近阻止領域拒否体制に対抗するほか、中国の通商路を遮断する。ステルス爆撃機など長距離航空機材等は両戦線で必要に応じ投入する。
  4. 米軍はいずれかの戦線で決定的な勝利を早く達成するプレッシャーを受けるだろう。このため米国は航空宇宙ならびにサイバーに注力し戦略的かつ政治的に意味のある勝利をどちらか一方でまず確保してから残る戦線に注力するはずだ。在欧米軍の戦力を見れば米軍は太平洋方面をまず優先するのではないか。
同盟関係の実態Alliance Structure
  1. 太平洋地区での米国の同盟構造は欧州とは大きく異なる。現在、欧州同盟国の防衛努力不足が懸念されているが、米国がNATO同盟関係を犠牲にしてまでロシアに戦いを挑む理由はない。米国が戦火を開き、ドイツ、フランス、ポーランド、英国が加わるはずだ。米国以外のNATO加盟国だけでもロシアに対して相当の優位性を発揮できる。ロシアがバルト海諸国を占拠してもNATO空軍力により相当の代償を払うはずで、占拠も長く保持できないだろう。米海軍と米空軍が支援にまわり協調作戦をすればロシアを撃退する優位性がNATO加盟各国に生まれる。米核戦力もロシアに戦術・戦略核兵器を使わせない保険となる。
  2. だが太平洋では米国の状況はもっと困難だ。日本やインドも南シナ海に権益を有しても、だからと言って参戦の保証にはならない。(中立を宣言するのではないか) 有事の同盟関係は紛争の固有条件により左右される。フィリピン、ヴィエトナム、韓国、日本または台湾が中国の標的になる。残る各国は米国の圧力があっても傍観を決め込むかもしれない。そうなると米国は西太平洋制圧を自国だけで進める状況に追い込まれるかもしれない。
結語Parting Shots
  1. 米国には大規模戦闘を二つ同時に戦い勝利を収める力があるが、最低でもロシアないし中国を勝てないと達観させられるだろう。米国がこの目的を達成できるのはあくまでも世界最強の軍を維持しているからであり、極めて強力な軍事同盟を主導しているからに他ならない。さらにロシア、中国はともに独自の軍事上の問題に直面しているため、米国は軍事力の一部をどちらかに集中させ、残りの軍事力で別の相手に対応できる。
  2. ただし、この状況が永遠に続く保証はない。米国も優位性を無期限に維持できず、長期的にはどこまで関与すべきかを慎重に検討せざるを得なくなる。同時に国際秩序を作ってきたのは米国であり、各地の有力国の繁栄がこの秩序で生まれているのだ。したがって当面は各国の支援を期待してよい。■

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money , Information Dissemination  and the Diplomat .
This appeared last summer and is being reposted due to reader interest.


コメント

  1. 問題はやはりNATOが政治的に機能するかどうか、です。 ドイツのメルケルはトランプ(アメリカ)に頼らない独自の「ヨーロッパ統合軍」を構想している様です。 そして既にドイツと連携を取って統合運用している国がいくつかあり、チェコ・ルーマニア・オランダ各国軍は統合軍として活動する動きがあります。 又今後連携する動きがあるのはNATO所属でアメリカを除く殆どの国で連携されるのではと私は思います。 結局の所アメリカに(軍事予算などについて)口出しされ、政治的に掻き乱されるのを嫌っての事でしょう。 アメリカ軍としては当然「2正面作戦」を念頭に戦略を構築するつもりでしょうが、実質的にはヨーロッパの事はヨーロッパでやると追い出され、結果として太平洋戦線に注力出来るのではとも思います。

    少し話は変わりますが、ロシアは日本などと軍事予算は大きく差がある訳ではありませんが、どうしてあれ程新機材を購入出来るのかについてロシアメディアの記事を見ました。購入予算捻出の為に機材の保守管理費用を削っているとの事です。 元々稼働率や保守管理の質について良い話の聞かないロシアが今以上に整備費を削ってしまっては… ソースについては御要望があれば貼らせて頂きます。
    以上です。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ