2014年10月11日土曜日

B-52エンジン換装は今度こそ実現するのか




B-52 Re-engine Resurfaces As USAF Reviews Studies

Oct 10, 2014
Bill Sweetman | Aerospace Daily & Defense Report
http://aviationweek.com/defense/b-52-re-engine-resurfaces-usaf-reviews-studies
米空軍は機齢50年超のB-52各機を民生用エンジンに換装する提案を検討中であるとグローバル攻撃軍団司令官スティーブン・ウィルソン中将Lt. Gen. Stephen Wilson が明らかにした。
  1. 空軍は10月9日に実施した場合の節減効果を検討する。B-52は2040年まで使用の見込み。
  2. ウィルソン中将は提案企業名を明らかにしていないし、提案が一社か複数かも明示しなかったが、業界筋から確認からとれたのはボーイングが「企画骨子」を提出、ジェネラルエレクトリックがCF34-10エンジン8発換装案を検討しており、プラット&ホイットニーも独自案を準備中だという。
  3. エンジン換装の狙いは燃料消費の改善で、結果として給油機への依存が減るとウィルソン中将は語る。さらに民間基準の適用で定期点検のたびにエンジン取り外しが不要になる。
  4. ただし、エンジン換装で障害となるのが予算と規制問題ダとウィルソン中将は言う。エアラインの運用実績を軍用耐空証明に使うことと、初期投資は運用費用を下げることで回収しても、燃料費の節約部分は基地施設の改修に使い、機材改修に支出できないしばりがあるという。
  5. B-52は現在TF33エンジン8基を搭載しているが、このエンジンはボーイング707用エンジンと類似している。今回の検討はエンジン換装案として三回目となる。
  6. ブラット&ホイットニーから1982年にPW2000エンジン4基換装案が提案されていた。1996年にはボーイングとロールスロイスが共同でRB211-535エンジン4発(リース調達)換装案が出た。B-1やB-2でB-52が1990年代に退役する予定だったため最初の提案は実現せず、二回目の案も軍用装備にリースを使うことへの抵抗と経済効果評価の不備で頓挫している。
  7. 2004年度の国防科学委員会報告によれば米空軍は空中給油の経費を試算に入れていなかった。その時点での給油機による燃料はガロン当たり17.5ドルで、地上でのガソリン価格の14倍になっていた。同委員会の作業部会は「全員一致で空軍にB-52Hのエンジン換装を直ちに提言する」としたが、空軍はなんら反応しなかった。
  8. 「その時点で手を打っておけば、いかに先見の明があるかを堂々と自慢できていたのに」とウィルソンは言う。
  9. GEのCF34-10エンジン(定格推力17,640-20,360-lb)8発案だと推力は増加する。プラット&ホイットニーからは5月に提案されたPW1135G-JM(定格推力35,000-lb.)もTF33の2倍の推力を出す。それぞれ1996年当時の案より性能が高く、燃料消費効率は向上する。
  10. RB211-535の生産はボーイング757の生産終了とともに行われていないが、PW2000の軍用版F117もC-17の最終号機に搭載されているので、両エンジンは候補として弱い点がある。■

2014年10月10日金曜日

ISRで三機種を同時運用が必要とする米海軍の事情


空軍の新型機開発が(目に見える範囲では)パッとしないのに対し、海軍の活動が活発なのはこれまでもお伝えしている通りですが、その中身を見るとなかなか通用しにくい論理が働いているようです。とくにUCLASSの行方がはっきりしません。また、せっかくP-8が就役しても無人トライトンの遠隔操作予算がついていないなど情けない状態があるようです。

Triton, Poseidon, & UCLASS: The Navy’s ISR Balancing Act

http://www.google.com/url?q=http%3A%2F%2Fbreakingdefense.com%2F2014%2F10%2Ftriton-poseidon-uclass-the-navys-isr-balancing-act%2F&sa=D&sntz=1&usg=AFQjCNGExojjuqLdNF9dKDWvoTfPN-4igw
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on October 01, 2014 at 4:00 AM
The first MQ-4C Triton drone to arrive at Patuxent River Naval Air Station. MQ-4C トライトン
PATUXENT RIVER NAVAL AIR STATION---米海軍の長距離偵察の未来を担うMQ-4Cトライトン無人機が当地の格納庫にあり、ボーイング737より翼巾は13フィート長く、機体重量は8割軽い。
  1. 高度50,000フィートで24時間超連続飛行する想定のトライトンは任務を単独で完結できない。高高度戦域全体を対象とした同機とは別に戦術偵察機として有人P-8ポセイドンと無人艦載偵察攻撃機(UCLASS)があり、海軍は三機種の同時運用を求めているが予算は厳しい。
  2. P-8はトライトンと共同作戦が可能。だがP-8乗員がトライトンを遠隔操作する機能は「予算化されていない」とジム・ホウク大佐Capt. Jim Hoke(トライトン事業責任者)は本誌記者に認めた。Triton program manager Capt. James Hoke.
トライトン開発を統括するジム・ホウク大佐
  1. トライトン三機が10月末にパックスリヴァーに揃いテストに備える。だが衝突回避レーダー開発が遅れている。2017年にグアムで作戦稼働を開始するが、当初の68機購入は微妙だ。ホウク大佐は高信頼性で整備所要時間が想定より少ないことで購入機数が減るのは確実という。
  2. UCLASS最終設計案の提出がいまだに業界に要求されていない。また、海軍の想定性能が「攻撃」より「監視」を重視していることが議論を呼んでいる。
  3. 「三機種すべてが必要だ」とマシアス・ウィンター少将Rear Adm. Mathias Winterは強調する。しかし記者が情報収集監視偵察 (ISR)で二機種必要な理由を問うと、少将はトライトンは戦域司令官のニーズに対応し、UCLASSは空母打撃群司令官が利用する、と回答。
A notional map of the areas Triton could cover from its five land bases.トライトンを世界5か所の基地から運用した際に監視対象となる地域を概念的に示した図

  1. 「空母打撃群では指揮命令と実行を迅速に行うことが肝要だ」とウィンターは記者に説明。UCLASSは空母から発進し、600から1,200マイルの範囲をパトロールするが、2,000マイル超の攻撃も可能だ。これに対し、トライトンは陸上施設五か所から発進し、作戦行動半径はほぼ2,000マイル。:
  2. 仮に十分な機数のトライトンを調達し、各空母を常時カバーできたら、また空母をトライトンの飛行対応範囲外に航行させないとどうなのか、ウィンターはそれでもUCLASSは必要だ、なぜなら性能が違うからと言う。
  3. 「トライトンは戦術攻撃用ではありません。武装を想定せず、UCLASSで想定の1,000ポンド爆弾も運べません。また空母打撃群での運用も想定外」なので指揮命令系統に入れない。これに対し「UCLASSはグラウラーと共同運用を想定しており、ホーネットやF-35とも攻撃に投入できるが、トライトンはできない」
Rear Adm. Mathias Winters, head of unmanned programs at Naval Air Systems Command (NAVAIR).
マシアス・ウィンター海軍少将は海軍航空システム本部(NAVAIR)の無人機事業を統括している。
  1. 行間からはUCLASSが高性能のようだ。長距離長時間飛行のカギは燃料消費効率だ。トライトンの主翼は長く、薄く、まっすぐで、P-8の20千フィート上空を飛行できる。「高度50千フィートだと燃料は大量に使いません」とホウク大佐は言う。空気が薄いためだ。その結果、トライトンの燃料消費はP-3のおよそ1割と言う。だが飛行距離と飛行時間のため機動性と速力が犠牲になった。UCLASSでも監視偵察ミッションに最適化すれば攻撃力が犠牲になるし、その逆もまた真である。
  2. トライトンの飛行高度では機体にストレスとなる操縦は発生しない、とウィンターは説明。それに対しP-3やP-8は低空・高Gの捜索や攻撃を行う。両機種は民間旅客機が原型で戦闘機の敏捷性はない。UCLASSでは要求性能が非公開あるいは変更中だが、発艦着艦というパイロットに一番負担を強いる機動が前提だ。
  3. 戦闘能力が優れるのはUCLASSで、トライトンンを補完できる。だが戦闘に投入できる性能がUCLASSに本当にあるのか。
A CSBA diagram shows the ranges needed to defeat a modern "anti-access/area denial" defense.
CSBAが作成した接近拒否領域阻止の防空体制における必要な飛行距離を示す概念図
  1. 記者はウィンター少将の説明内容をUCLASSに批判的な専門家2名に開示した。
  2. 「ISRを優先すべきではない」というのは戦略予算評価センター(CSBA)のロバート・マーティネージRobert Martinage。トライトンで空母をカバーできるとし、「MQ-4Cは海洋占有認識 maritime domain awareness (MDA)を空母打撃群で実現することを目的としている。世界各地にMQ-4C運用の基地を確保するのはMDAを一貫して実現するのが目的だ」
  3. 「空母近辺では戦術レベルのMDAとして、E-2Dホークアイと無人回転翼機M-8Cファイヤスカウトを組み合わせればよい」
CSBA scholar Robert Martinage.CSBA研究員のロバート・マーティネージ
  1. 偵察機材整備をすすめる海軍に長距離攻撃が不足しているという。「接近阻止領域拒否(A2/AD)の防衛体制をとる中国は機雷、潜水艦、攻撃機、長距離対艦ミサイルを駆使するので、米空母は沖合に留まらざるを得ない。これでは短距離しか飛べないF-18やF-35では内陸部を攻撃できない」と言う。A2/AD対抗には長距離重武装かつステルスが必要とマーティンネージは説明するが、UCLASSはこのいずれも目指していないという。
  2. 見識の高い某議会スタッフも同意見だ。ISR専用の無人機は「空母搭載機材として優れている」が、「空母航空部隊で一番必要な機材ではない」し、 新規案件への予算制約をすると、「どう考えてもは武力投射型UCLASSの優先順位が高くなるはず」という。
  3. 「ISR特化か攻撃型UCLASSかの議論からもっと大きな問題が見えてきた。そもそも、無人機を航空隊に組み入れる検討をしっかりしているだろうか」
  4. 空母運用型無人機を二種類準備する予算は確保できる可能性は低いので、海軍のもくろみは偵察用のULCASSを出し、あとで爆撃機に転用するのだろう。その実現はペンタゴンの文民幹部と議会が決めることだ。■

2014年10月9日木曜日

米軍向け次世代ヘリ試作機にベル、シコルスキー/ボーイング二案が選定されました



選定は予想通りというところでしょうか。複合ヘリ、ティルトローターともに今後が期待される技術ですが、陸軍の次期主力ヘリ選定に漏れた方が民生用に活路を見出す、というかつてのボーイング747の事例を思い出していますが、その可能性はどうでしょうかね。ボーイングはベルと仲がいいのかと思っていたら今度はシコルスキーとタッグを組んでいますね。技術の優位性を冷静に判断したのでしょうか。

U.S. Army Selects Bell and Sikorsky/Boeing to Build Prototypes for Next Generation Helicopter Program

By: Dave Majumdar
Published: October 3, 2014 5:27 PM
Updated: October 3, 2014 5:33 PM
SB-1 Defiant. Boeing Photo
SB-1 Defiant. Boeing Photo
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米陸軍はベルヘリコプターおよびシコルスキー/ボーイングチームの二社を共用多用途(JMR)高速ヘリコプター開発業者に選定した。

  1. 各チームは技術実証(TD)機を完成させ2017年にフライトテストを開始する、と陸軍はUSNI News向けに文書で開示した。

  1. 試作機二機種は共用多用途技術実証飛行機体の位置づけで、陸軍が進める次世代垂直輸送機.(FVL)につながり、シコルスキーUH-60ブラックホークおよびボーイングAH-64Eアパッチの後継機種となる。FVLは米海軍のMH-XXにもなり、MH-60シーホークに代わる機体となる。


  1. 陸軍のJMR/FVL事業主査ダン・ベイリー Dan Bailey, the Army’s JMR/FVL program directorは「JMR TDで差知識獲得を最大化し、リスクを減らしてFVL調達に進むのが目的」と語る。「予算環境を考えて基本設計4案をまず2案に絞り込んだ」

Bell-V2280. Bell Image
Bell-V2280. Bell Image

  1. 今回選定に外れたのはカマンエアクラフトAVXエアクラフトだが、陸軍は両社の技術内容にも関心を示している。

  1. シコルスキー・ボーイングチームのSB-1デファイアントDefiant案は、同軸ローター複数と推進用プロペラを組み合わせた複合ヘリだ。原型はシコルスキーの革命的なX2で、200ノットが限度だった従来型ヘリコプターの性能を非対称揚力dissymmetry of lift で実現した。

  1. ベルヘリコプター案はV-280ヴァラーValorで発達型ティルトローター機としてベル・ボーイングV-22オスプレイを原型とする。V-280は小型だが300ノット超と高速かつ操縦性でオスプレイを上回る。

  1. 不採択となったAVX案はデファイアントに似た複合ヘリだった。カマンからの提案は可変ティルトローターでベル案と似通っていた。■


2014年10月8日水曜日

電子戦環境で優越性を失ったと認識する国防総省技術トップの認識




US Has Lost ‘Dominance In Electromagnetic Spectrum’: Shaffer

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on September 03, 2014 at 3:49 PM
NATIONAL PRESS CLUB: 「我が国は電磁スペクトルの優位性を喪失した」とアラン・シャファーAlan Shaffer(ペンタゴンの研究技術主任)が発言している。「高性能装備を配備しても低価格デジタルジャマーで対抗されたら大変なことだ」
  1. ペンタゴン関係者から電子戦で危惧する発言は前もあったが、今回の発言は極めて率直だ。
  2. 「電磁スペクトルで優位性を取り戻す必要がある。最低でも同等水準に戻す必要がある。さもないと各装備が想定通りに運用できない」とシャファーは発言している。例としてペンタゴン最大の調達案件となるF-35では高性能情報技術が搭載されていると宣伝しているが、シャファーは「EMスペクトラムに配慮しないとF-35は大変」という。.
  3. ではいったい何が起こったのか。本人に恒例のCommon Defense (ConfDef) 会議の席上で尋ねてみた。「答えるのは複雑」とシャファーは答えた。その一部は米国政府が所有していた周波数帯の大部分を「経済上の理由から」(シャファー)売却してしまったことためだという。
  4. もっと大きな背景として世界中でアナログからデジタルへ技術が切り替わり、高出力でも低価格の製品が普及してきたことがある。かつては強力な国家機関しかできなかった電子盗聴やジャミングが小国でも可能となり、場合によればゲリラでも実施できる。.
  5. シャファーは発言していないが、米軍は電子戦の意義をソ連崩壊後の10年間にわたり無視し続けた。9/11後の地上戦で無線起爆式の道路設置爆弾が威力を示すと、EW装備がアフガニスタンとイラクの地上軍に必要になった。それ以外では投資が遅れている。空軍はF-35に大きく希望するが、電子戦機材はEC-130Hコンパスコールしかない。海軍はEA-6Bプラウラーを新型EA-18Gグラウラーで更新しているが現時点では旧式電子装置を新型機に搭載しているだけだ。次世代ジャマー(NGJ)はまだ開発中だ。
  6. また新型センサーや通信技術を軍は最大限に活用していない。シャファーは「既存のレーダーや通信周波数帯に大きく依存したまま」とし、Xバンドレーダーなどについて言及しているが、「その間に世界では高周波数帯か低周波数帯へ移行し帯域幅が広がり、システムが機動的になっている」と言う。.
  7. その結果イラクの戦闘員がプレデターの生映像を見ている。映像信号の暗号化していなかった。もっと能力が高い敵が情報を盗み、無人機と操作員のリンクを妨害する事態が発生しているし、合衆国のネットワークに侵入している。
  8. この実態は専門家も認めている。「シャファーの言っていることは正しい」とベン・フィッツジェラルド Ben Fitzgerald (これからの全米安全保障を考えるセンターCenter for a New American Security )は言う。「我が国が使用中の多くの技術たとえばGPSでも高出力信号は使っておらず、妨害に弱くなっています。妨害は非常に安価に実施できます」
  9. GPSの弱点は突出している。米空軍は今日でもGPSに依存し、アフガニスタンの歩哨からイラクの精密爆弾まで広く利用している。しかし、GPS妨害装置は安価になっている。
  10. 「GPSは運輸省に譲り、(衛星を使わない)精密航法計時precision navigation and timing [PNT] の普及をしてもらいたいくらいです」とシャファーは講演後に記者団に語っている。DARPAは原子時計を利用した精密計時と位置測定情報を軍事利用できないか研究中で、実現すれば衛星信号を使う必要がなくなる。
  11. ただしこの技術は未完成で、既存技術と同じ価格帯になるのは先の話だ。
  12. 民生でネットワーク技術とモバイル機器の利用が高まる中、敵が妨害してきたらどう戦うのかとの難題に取り組むのが軍の現状なのである。■

2014年10月7日火曜日

ベトナム向け武器売却解禁に出たアメリカの狙いは



ベトナム経済は堅調ですし、地政学的にも中国の南方で海洋アクセスを抑える重要な位置にありますので、単に中古機材を押し付ける相手ではなさそうですね。今回の米越接近は日本にとっても考えさせられるニュースではないでしょうか。

New Vietnam Ruling Could Open Door To Further Exports

Oct. 4, 2014 - 03:30PM   |  
By AARON MEHTA   |   CommentsNew Life for old Planes: US-built P-3 Orion maritime patrol aircraft are among the equipment Vietnam may want to purchase, after the US loosened its regulations governing sales to Vietnam.
P-3オライオン哨戒機はベトナムが導入を希望する機種のひとつ。米国が武器輸出の規制を緩和した事が大きい。(MC2 Jillian Lotti/ / US Navy)

WASHINGTON — ベトナム向け武器輸出の解禁が決定されたが地域バランスと米国産業界双方に影響が出そうだ。
  1. ベトナム向け武器輸出がベトナム戦終結後はじめて可能となるが、ときあたかも中国が南シナ海で敵対的な姿勢を強めている。
  2. ただし販売は海洋防衛に限定し、合衆国政府は事案ごとにベトナム軍への売却の可否を検討する。
  3. ベトナムの海上防衛力の強化を人権侵害を発生させずに実現するのが目標と国務省関係者が説明している。
  4. 国務省は今回の決定はベトナム関係の改善を背景とし、中国をけん制するものではないと説明している。
  5. 米越関係はこの数年間で好転し、とくに2010年にヒラリー・クリントン国務長官(当時)のハノイ訪問以降に顕著だ。国務省は人権面で一定の進展がベトナムに見られたと指摘する。
  6. だが中国の好戦的な態度が大きくなっていることは否定出来ない。この夏には中国軍がベトナムが領有を主張する海面で石油掘削施設を完成させ、両国の海軍部隊が緊張する場面があったばかりだ。
  7. 中国は同施設を撤収したが、この事件でベトナムは北の隣国の「向こう側を見通す」必要性を痛感した。
  8. 中国としては南の隣国への武器引き渡しを歓迎できないところだ。
  9. 「中国を意識した事前集積で、中国としては不快だ。が、過剰反応はしない。中国とベトナムの間に危機的状態があるわけでないから。だがオバマ大統領がAPEC会合で北京へ来たらこの話題は避けられないだろう」(上海交通大学のZhuang Jianzhong of Shanghai Jiao Tong University )
  10. 国務省の解釈では海上防衛手段は航空機を含む。これは予算削減が続く米産業界にとって海外販路を拡大し利益を計上する好機となる。ベトナムは金鉱になるかもしれないとTeal Groupのリチャード・アブラフィアは言う。「いつの日にかベトナムは米国製装備の重要市場になるかもしれません」
  11. 中でも米海軍の余剰P-3の売却が可能性が高いとアブラフィアは見る。米海軍はP-8導入でP-3の退役を進めている。
  12. また中古C-130輸送機も海上救難捜索任務に最適だ。沿岸警備隊のC-130Hが候補で、C-130J導入で余剰になっている。.
  13. そこで注目すべきはジョン・ケリー国務長官が2013年末に発表したベトナム向け高速非武装パトロール艇5隻供与の案件だ。前出の国務省関係者によればベトナムからは当初想定の5隻への関心は示されておらず、武装カッターの発注に関心を示しているという。
  14. ベトナムヘ米企業が強気の期待を寄せるが、米政府も同様だ。
  15. 国務省は残る武器輸出解禁の予定はないとしながら、将来に含みを残す。「関係の変化あるいは人権面で進展が見られれば、次の段階に進める可能性が高くなる。したがって進展があるかぎり解禁がないとはいえない」■

2014年10月6日月曜日

シコルスキーの新型ヘリが示す革新的な方向性


本件以外にテキストロンのスコーピオン事業など自社開発による新しい試みが最近目立ちますね。下に紹介している思索迅速化や仮想化は民間だからこそ導入できた発想でしょう。自動車や電子産業の影響もあるのかもしれません。

Sikorsky Talks To Customers About Potential Raider Applications


Oct 6, 2014
Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
S-97レイダーは軽量戦術ヘリコプターの試作機で米陸軍の求める武装航空偵察ヘリコプターの要求に答えるもの。Sikorsky Aircraft

シコルスキーがヘリコプターを1939年のVS-300で完成させた。このたび同社は高速飛行とホバリング性能を進め、低速度での機動性も維持する回転翼機の定義を塗り替える機体を発表した。
  1. フロリダ州ウェストパームビーチの同社開発テストセンターで10月2日に公開されたS-97レイダー Raider は新型技術を盛り込んだ2番目の機体だ。最初のX2技術実証機は260ノットを2010年に実現。三番目はシコルスキー/ボーイング共同開発のSB.1デファイアント Defiantで2017年初飛行を目指す米陸軍向け共用多用途(JMR)ヘリコプターの実証機となる。
  2. レイダーはシコルスキーが開発した硬式同軸ローターによる複合ヘリコプター rigid coaxial-rotor compound helicopter で総重量6千ポンドのX2から30千ポンド級の次世代推力輸送中型機Future Vertical Lift Medium多用途回転翼機{シコルスキーUH-60ブラックホークの後継機として2035年ごろに登場する)にまで応用する技術の実用化で大きな一歩となる。
  3. レイダーはシコルスキーがX2で培った迅速な試作機製作 rapid-prototyping をJMRに応用できることを示すもの。開発費用は業界と陸軍が折半する。
  4. 「X2実証機の設計思想を引き継いでいます。試作を小規模チームで迅速に行い、業界で最良の技術で革新的なシステムを作り、量産化の道を開きます」と同社技術研究担当副社長マーク・ミラー Mark Miller は語る。
  5. シコルスキーはかねてからX2は発明ではなく、利用可能な技術を集結させた知的作業だと強調している。同社は硬式同軸ローター複合機を70年代にXH-59A実験機で試している。同機は高速260ノット超だが騒音が高く、振動も大きく燃料効率も悪い上に操縦が難しく、パイロット2名でエンジン4基を制御していた。
  6. X2ではフライバイワイヤ飛行制御、ローターハブの抗力削減、補助推進力の一体化、アクティブ振動制御、軽量かつ強固な複合材ブレイドを採用し、XH-59Aの弱点を克服した。その結果、パイロット一名でエンジン単発の同機はブラックホークの二倍の速度で飛行しつつ振動はほぼ同じになった。
  7. X2は同社が50百万ドルで自社開発し43ヶ月で初飛行させ250-ktの水平飛行速度の実現を17回のフライトテストで達成した。レイダーは2010年7月の開発開始から初飛行(12月)まで49ヶ月となる予定。試作用2機を200百万ドルで制作する。
  8. 2,600-shpジェネラル・エレクトリックYT706エンジンを搭載し機体総重量11,500-lb.のレイダーは直径34フィートの継ぎ目なしローターx2にブレイド4枚をそれぞれつける。同軸ローター採用でトルク打ち消し用のテイルローターは不要となる。その代わり、直径7フィートの可変ピッチプロペラを尾部で回転させ高速飛行に使うが、低速あるいはホバリング時では安全のため格納し騒音を低減する。
  9. レイダーの設計巡航速度は 220 kt. だが推進器により水平飛行しながら加減速、武器使用時の機首固定など新しい飛行モードが可能となる。レイダーのテストではこれらの実用度を試す。
  10. レイダーの開発が迅速に行えた背景には仮想設計環境virtual design environment があり、「実際の製作前に製作し、飛行も先に行えた」とミラーは言う。「施設内にはすべてのシステム機器をとりそろえ、実際の飛行前にすべての作動を確認できた」とクリス・ヴァン・ブイテン Chris Van Buiten技術革新担当副社長が言う。「地上にいながら飛行を一年前に実施し、問題点は先につぶすことができた」
  11. 鍵は高忠実度モデリングとシミュレーションhiigh-fidelity modeling and simulation tools だ。「リスクを減らすため予想される事項を先に解決し、障害を取り除いた」とミラーは言う。「想定外の事項は実質ゼロで組立工程を進められました」降着装置では運動モデリングの利用で取り付けは数日で完了したのは前例がないという。
  12. 「迅速試作とは物事を省略することではありません」とミラーは言う。「問題点をフライトテストに繰り越すと開発が何ヶ月も遅れるリスクになります。X2では限界性能を短期間で引き上げ、17回のテスト飛行で十分でした。飛行実施は費用がかさみ、なるべく早く飛行限界を引き上げるのが目的であり、欠陥を発見することはテストの目的ではありません」(ミラー)「飛行前や飛行中に問題点が見つかることがありますが、一年前に直面した問題に再度悩まされることはありません」(ヴァン・ブイテン)
  13. 同時に部品メーカー合計53社との協力関係を重視するのも同社の特徴だ。「各社から9割の部品部材が届き、シコルスキーは組み立て統合を行い、文書化を行いますが、これにより高品質を重視する価値観が迅速に実現できるのです」とヴァン・ブイテンは説明する。「取引先は大企業中小企業あり、仕事の進捗速度は異なりますが、納期どおりに部品を届けています。見ていて興奮しますね」
  14. ミラーも「多数の供給先のネットワークを維持しながら、強力なモデリングツールとインターフェイス制御で仮想設計は実現できるのです」とし、各社は共通のデザインモデルを参照して同時に作業をすすめているという。.
  15. レイダー1号機の地上テストは準備できたとヴァン・ブイテンは語る。「2号機の部品もすべてそろっており、胴体は完成しています。1号機の飛行に時間をかけてから2号機組み立てを完成っせて、変更点を取り入れます」 1号機のフライトテストは四段階でホバリング低速飛行から始める。その後性能限界を拡大しつつ推進器を使った特殊飛行も行う。
  16. 「X2を出発点とします」とミラーは言う。「新しい飛行性能でヘリコプターの実用度を大きく変えることになるでしょう」 ヘリコプター、固定翼機、ティルトローターのパイロットがそれぞれレイダーのシミュレーターを試し、フィードバックを与えている。
  17. レイダーは米陸軍の武装航空偵察Armed Aerial Scout (AAS) の要求内容に対応するが、同計画は予算問題で先行き不透明になっている。「レイダーは量産機ではありませんが生産モデルに限りなく近くなっています」(ミラー) 試作機は軍用仕様になっていないがシコルスキーは製造履歴を完全に残し、平行して軍用の量産化型機体の準備がすぐできるという。
  18. AAS構想が前に進まない中で、シコルスキーは顧客候補複数から実証内容で希望を聴取している。「2号機では前例のない実証をします。有望な顧客候補複数と何を試すかを話し合っているところです」(ミラー)
  19. シコルスキーは技術情報をボーイングにJMR開発用に提供している。仮想設計技術は「実用レベルで移転可能であり、迅速試作化により開発は迅速に進められるでしょう」とJMR技術実証を担当するダグ・シドラー Doug Shidler,は語る。「レイダーで試す内容はJMRで実現することになります」■

2014年10月5日日曜日

中国がステルス機に有効な防空レーダー開発に成功と主張


中国報道が正しいのか確証がありませんが、電子光学技術の発達はステルス機が想定された90年代と今とでは相当の開きがあり、F-35が配備された時点で有効な対抗策が配備されていたとしても驚かれないでしょう。技術は水の流れと同じで完全に管理することはできないとしても中国のスパイ活動にはアメリカも相当頭にきているようですね。

China Touts Anti-stealth Radar

Oct. 4, 2014 - 03:37PM   |  
By WENDELL MINNICK   |   Comments
AFMC on track to deliver more F-22s
ステルス機を探知可能なレーダー開発に成功と中国が報道。 (Tech. Sgt. Ben Bloker/ / US Air Force)

TAIPEI — アメリカのステルス戦闘機は中国の防空体制に大きなリスク要因で、中国軍は手段を選ばず撃墜方法を得ようとしている。
  1. その中国がステルス機を探知可能なレーダー開発に成功と主張。9月末の中国国内報道でF-22やヨーロッパのニューロン無人戦闘航空機も中国の新型 DWL002 レーダーの前では無力としている。
  2. CETCインターナショナル(本社北京)からDWL002 パッシブ探知レーダーシステムが5月の第九回中国国際防衛電子製品見本市で出展されていた。探知能力は400キロメートル(対戦闘機)か600キロメートル(早期警戒機)という。
  3. 400から600キロメートルとすると台湾全土を監視する他、尖閣諸島も監視できる。しかし沖縄、フィリピンは範囲外。
  4. 「有効半径の制約は設定条件のためで高度10千フィートに設置しないと500キロメートルが限度」とジョン・ワイズJohn Wise(英、レーダー専門家)は見る。
  5. 有効範囲に問題があるが、報道では同時に100個の標的を区別し、信号パルス、周波数、パルス長、戦術航法システムの種類、敵味方識別等の情報がわかるという。
  6. 「パッシブ・レーダーのDWL002 やYLC20はステルス機へ脅威となる」とリチャード・フィッシャー Richard Fisher(国際評価戦略センターInternational Assessment and Strategy Center.主任研究員)は語る。「パッシブ・レーダーは電子発信音を聞き取り、とくに米軍はネットワーク化され発信頻度は高いこともあり敵の判別と位置を知ることができるのです」
  7. フィッシャーによれば対抗手段として光学データ送信があるが、見通し線でしか有効でなく自由度が制限される。
  8. DWL002は既存パッシブ・レーダー二種類から生まれた、とワシリー・カシンVasiliy Kashin(モスクワの戦略技術研究センターで中国軍事専門家)は言う。米国はチェコ製VERA-Eパッシブ・レーダーの中国向け売却を2004年に中止させたが、「中国は同レーダーを詳細研究した」という。VERA-Eは購入できなかったが、カシンによれば中国はウクライナ製のコルチューガ Kolchuga パッシブ・レーダーを購入している。
  9. 「DWL002はYLC20レーダーから開発しているが、さらに原型はVERA-E」とカシンは言う。YLC20はパッシブ式の方位探知・位置割出し用レーダーで有効範囲は600キロメートルだ。
  10. 中国がステルス対抗技術を開発しているのは事実だ。1999年3月にF-117ステルス戦闘機が撃墜され、未確認情報では機体の一部が中国に渡された。
  11. 2011年にグーグルアースでF-117の実物大模型が洛陽光電子光学技術開発センターLuoyang Optoelectro Technology Development Center (LOEC) (湖南省)で視認された。在北京米国大使館の元武官によればLOECにはB-2、F-35、F-22のモックアップもあり、F-117があっても驚かないという。
  12. 米ステルス機の情報を得るため中国は諜報活動を重視している。6月にカナダ当局がLode-Technologyの社長中国人 Su Bin を拘束したが、米政府はF-22とF-35の秘密情報を中国に渡した容疑をかけている。 ■

2014年10月4日土曜日

米海軍の原子力潜水艦運用60周年



The U.S. Navy’s Nuclear Submarine Force: A 60-Year Legacy of Excellence

– SEPTEMBER 30, 2014
By Lt. Cmdr. Ben Amdur
就役を数週間後に控えたUSSノースダコタ(SSN-784)はヴァージニア級ブロックIII性能向上型の一号艦で、戦力が一層充実している。艦隊に編入される同級潜水艦としては11隻目になる。一方海軍長官レイ・メイバスは建造中19号艦をヴァ―モント(SSN-792)と命名した。
GROTON, Conn (Nov. 2, 2013) Pre-Commissioning Unit North Dakota (SSN 784) sits moored at the graving dock of General Dynamics Electric Boat prior to its christening ceremony in Groton, Conn.
コネチカット州グロートン(2013年11月2日) 就役前艦ノースダコタ(SSN 784)がジェネラルダイナミクスのドックに係留され命名式を待つ。

  1. 各艦は世界初の原子力潜水艦USSノーチラス(SSN-571)が1954年9月30日に就役して以来60年続く優秀な運用実績の一部となる。原子力推進潜水艦が構想からわずか10年で実現した背景にはハイマン・G・リッコーヴァー少将(当時)の強力な推進力がある。

USS Nautilus (SSN-571), in Long Island Sound, off New London, Connecticut, during her shakedown cruise, May 1955.
USSノーチラス(SSN-571)が処女航海に出発した。コネチカット州ニューロンドン沖のロングアイランド海峡にて。1955年5月。
  1. ノーチラスから60年で、技術は驚くべき進歩をとげ工学技術、艦設計、建造それぞれがアメリカ最高の水準であり、米海軍潜水艦部隊は世界最強だ。ヴァージニア級はノーチラスのほぼ二倍の大きさだが、水中速度、潜航深度、静粛性がことごとく向上している。
  2. 動力系統で改良が顕著でノーチラスが原子炉x4で航海距離を確保したのに対し、設計耐用年数33年のノースダコタは原子炉ひとつでノーチラスを上回る距離を移動できる。艦内容積が拡大し、無人航空機あるいは潜水艇の搭載も視野に入っている。
  3. 60年で変わらないものもある。潜水艦乗員候補への訓練だ。海軍で最も知的かつ高度に訓練されたものを選抜し、士官・下士官は全員核運用資格を有し、一年以上にわたる集中訓練を経て潜水艦配属となる。原子力科士官を航海科や戦術科士官と分けない伝統もノーチラスで始まった。各国では原子力関連コースを運用関連と完全分離するのが多いが、合衆国の原子力潜水艦の士官は原子炉関係、戦闘、航海、艦制御の各チームを率いることが可能だ。潜水艦士官なら乗組員と艦両方の能力を把握すべきとの考えが背景にある。
ATLANTIC OCEAN (Aug. 18, 2014) The PCU North Dakota (SSN 784) during bravo sea trials. The crew performed exceptionally well on both alpha and bravo sea trials.
撮影場所大西洋(2014年8月18日) PCUノースダコタ(SSN 784)の第二次海上公試。二回の公試で乗組員は非常に優秀だと判明した

  1. 潜水艦部隊による安定と安全を我が国だけでなく同盟各国にも享受されている。わが原子力潜水艦部隊は今後も潜在敵国の侵略を抑止する。また絶えず世界情勢に適合適応し、他に代えがたい原子力によるステルス性、航続性、敏捷性、そして火力を提供している。■


2014年10月3日金曜日

☆☆ そうりゅう級の電池変更でオーストラリア商戦に影響はあるか



当ブログの方向性でお尋ねしたところ早速多数のコメントありがとうございました。海軍関係など独立すべしとのコメントは皆無でしたのでこのまま継続することにします。AIP機関からリチウムイオイン電池に切り替えて大幅な水中性能アップを狙う海上自衛隊潜水艦そうりゅう型(改、になるのでしょうね)の話題ですがオーストラリアにも変更の点は事前に知らされているようです。潜水艦技術の輸出第一案件になるのか今後も注目ですね。なお、以下記事では在外専門家がJapanese Navyとしっかり言っていますのであえて海上自衛隊と訳していない部分があります。あしからず

Japan To Make Major Switch on Sub Propulsion

Lithium-ion Batteries Will Power Soryu-class Boats

Sep. 29, 2014 - 03:45AM   |  
By PAUL KALLENDER-UMEZU   |   Comments
The Japanese submarine Hakuryu visits Guam last year. The Soryu-class boat was built with air-independent propulsion technology, which Japan plans to replace with Lithium-ion batteries for the remaining four boats in the 10-ship class.
海上自衛隊潜水艦はくりゅうがグアムに入港した。2013年撮影、 そうりゅう級潜水艦は大気非依存型推進技術を取り入れたが、日本はこれをリチウムイオン電池技術に切り替えようとしている。 (MC1 Jeffrey Jay Price / US Navy)

TOKYO — 日本は今後建造するそうりゅう級潜水艦で大気非依存推進(AIP)をやめリチウムイオン電池を採用する。同種類のバッテリーがボーイング787で問題を起こしているだけに驚きを呼んでいる。
  1. ただし専門家は懸念を退け、むしろ性能が向上し保守点検は容易になると指摘する。日本製潜水艦の輸出可能性が高まるという。.
  2. 海上自衛隊によれば変更対象は今後に建造するそうりゅう級4隻。そうりゅう級は全10隻建造する。
  3. オーストラリアは6月に日本と技術協定を締結済みだが、同国高官はDefense NewsにLiイオン電池切り替えを承知しており、日本の潜水艦技術に引き続き関心があると発言した。そうりゅう級の完成品購入も視野に入っているという。
  4. 日本製潜水艦にはオーストラリア海軍が多大の関心を示しており、350億オーストラリアドル(330億ドル)で現行のコリンズ級6隻の後継艦を調達する事業がはじまっている。旧式化し整備が大変なコリンズ級を新型の大型潜水艦に置き換え南シナ海、東シナ海の通商路を防衛する構想である。
  5. オーストラリアのビショップJulie Bishop国防相、ジョンストンDavid Johnston外相は小野寺防衛相、岸田外務相と潜水艦の共同開発で6月に合意している。
  6. 「次世代潜水艦の方針は未決定のまま」とジョンストン国防相は声明を発表している。「国防調達は首相の言うとおり、国防の観点で決定すべきであり、産業や地域振興政策の観点ではない」
  7. 現行のそうりゅう級ディーゼルエレクトリック潜水艦(16SS)ではAIP技術にコックムズ社 Kockums のスターリングエンジンを川崎重工業がライセンス製造している。これで長期潜水が可能となった。スウェーデンのゴットランド級潜水艦が5ノットで2週間潜航できるが小型艦だ。
  8. そうりゅう級の大型電動機には電源が三種類ある。ディーゼルエンジン、主蓄電池、AIPエンジンである。ディーゼルエンジン運転には大気が必要なので浮上中またはシュノーケルで蓄電池に急速充電する。AIPエンジンは少量のディーゼル燃料と液体酸素を使用し長時間低速の潜航移動が可能。その間に蓄電池は完全充電される。蓄電池は超静粛移動や高速水中機動に使うが急速に消耗してしまう。
  9. リチウムイオン電池に切り替える新型そうりゅう級はディーゼル機関は残し、強力かつ手入れが簡単な電池を搭載する。
  10. そうりゅう級潜水艦の建造期間は約4年で計画10隻中6隻が完成している。防衛省は644億円を要求し、27年度から一隻を建造するが、この新造艦含む4隻にリチウムイオン電池を搭載する。
  11. そうりゅう級バッテリーはジーエス・ユアサが供給するが、同社はボーイング787にも供給中で、バッテリー発火事故によりFAA連邦航空局が1979年以来という機種全体の全面飛行停止措置に動いた。
  12. オーストラリアがAIP搭載のそうりゅう級購入に向かうとの現地報道もあるが、海軍関連専門家はバッテリー問題は重要視していない。むしろ切り替えを歓迎している。
  13. キングスカレッジ(ロンドン)の軍事研究科で日本海軍論を専門とするアレッシオ・パタラーノAlessio Patalanoは推進力の選択枝で各国がAIPを最初に注目したのは燃料電池やLiイオン電池が技術的に未成熟だったためと指摘する。
  14. 「潜水艦が日本にとって最前線の攻撃手段であり、速度と持続性が潜水艦作戦の核心部分となる中で、推進力性能から日本海軍には魅力と映ったのだろう」.
  15. 海上自衛隊はAIP技術では潜航中数ノットしか確保できず、戦略的活用には低速すぎると受け止め、また保守点検で負担が大きいとしている。
  16. 海軍関連コンサルタント企業AMI InternationaIのボブ・ヌージェントBob NugentもLiイオンバッテリーで速度、出力両面で得られるものは大きいと見ており、そうりゅう級がAIP搭載のヨーロッパ潜水艦より3割ほど大きいと指摘し、バッテリー容量、エネルギー密度の大型化で作戦期間が延び、速度瞬発力が向上するという。
  17. 「リチウムイオンバッテリーは熱暴走問題を克服し安全を確保できます。その他、燃料電池とAIPの組み合わせや高性能コンデンサと言った別の選択肢もありますが、技術リスクがあるのは事実です」
  18. AMIインタナショナル社長ガイ・スティット Guy Stitttは海上自衛隊は運用能力が高く、リスクを嫌う傾向から今回の技術導入で潜水艦動力は「大きな前進」をし、作戦運用も変わる可能性があると指摘。
  19. 「AIPを取り外すのは二次発電を不要と日本が判断し、かわりに蓄電能力を拡大するため鉛電池をリチウムイオンに切り替えるわけです。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、安全確保のため電子装備を複数配置し、各セルの安定度を監視するのでしょう」
  20. さらにオーストラリア海軍の次期潜水艦について「調達方針の正式決定はまだ先」とし、もし海上自衛隊での実績が良好であれば各国も同じ技術の導入に前向きになるはずだと指摘する。
  21. パタラーノは「通常型・大型潜水艦の開発では日本が世界最先端。すき間市場として期待できる」ともいう。.
  22. 「優れた水準をさらに引きあげた高性能潜水艦がオーストラリア向け商談でどう扱われるか実に興味深い」 ■


2014年10月2日木曜日

おしらせ ご意見をお聞かせください

もともと航空宇宙なのですが、
最近海軍関係の記事が増えてきました。
ちょっと違和感がある方もいるかもしれません。
航空宇宙ネタとしてはF-35、ISRが中心にして、
海軍関連については別のブログに分けた方がいいでしょうか。

そんなに簡単に分けられないかもしれません。

また予算関連含む安全保障の話題になると皆さんのご関心も低くなっているようですね。一方でISIS(IS)関連はホットでこれからも増えそうです。

皆様のご意見をお聞かせください。

MV-22から乗員緊急脱出 ペルシア湾


オスプレイの事故ニュースがいつ出るのかと待っている反対派の人たちには悪いですが、結局事故にはなっていません。あらためて機体性能が優秀なのか海兵隊パイロットが勇敢であるのか(たぶん両方)を証明する形になったようですね。

BREAKING: Two Aircrew Bail Out of MV-22 in Persian Gulf, One Rescued, One Missing

By: Dave Majumdar
Published: October 1, 2014 2:14 PM
Updated: October 1, 2014 5:05 PM


ペルシア湾北部で海軍と海兵隊が救難捜索活動を展開中。ベル・ボーイングMV-22オスプレイから乗員2名が緊急脱出する事態が水曜日に発生したためだ。

  1. 同機はUSSマキンアイランド(LHD-8)から離陸中に飛行中に出力を失った。
  2. 乗員一名は機体から飛び降り、救難されたと海軍は発表。.
  3. 海軍艦艇と航空機が行方不明の乗員を捜索中。
  4. パイロットは機体を救おうとし、マキンアイランド着艦に成功した。なお、同艦は第11海兵遠征部隊の一部としてシリア、イラクでの作戦を支援している。
  5. 海軍・海兵隊は今回のインシデントの原因を調査中だ。

  1. 以下は10月1日発表の海軍声明文。
  2. MANAMA, Bahrain (NNS) 北アラビア湾で米海軍、海兵隊は操作救難活動を行方不明の乗員を対象に実施中、海兵隊所属MV-22オスプレイの該当乗員は本日2:10 p.m. (GMT)に海中に没した。機体はUSSマキンアイランド(LHD 8)から離陸しようとして出力を失った。乗員2名は脱出しアラビア湾に飛び込み、一名は無事救出されマキンアイランド艦内に収容され状態は安定している。同機のパイロットは機体制御を回復しマキンアイランドに着艦させた。■