2014年11月3日月曜日

F-35Cの空母着艦テストは11月3日実施


いよいよF-35Cの実用艦上運用テストが始まります。太平洋標準時で11月3日実施ということですのでこちらでは4日に結果をお知らせできるでしょう。

F-35C’s First Carrier Landing Scheduled for Next Week

By: Dave Majumdar
Published: October 31, 2014 11:24 AM • Updated: October 31, 2014 11:25 AM

Lt. Scott Cleveland, assigned to Strike Fighter Squadron (VFA) 101, is directed to park the F-35C Lightning II Joint Strike Fighter after landing at Naval Air Station Oceana. US Navy Photo
スコット・クリーブランド大尉操縦の打撃戦闘機中隊(VFA)101所属のF-35CライトニングIIが海軍航空基地オシアナに到着した。 US Navy Photo

ロッキード・マーティンF-35ライトニングII共用打撃戦闘機は空母USSニミッツ (CVN-68)への着艦試験を来週実施する。

海軍仕様のF-35C2機を投入し、艦上で航空運用が安全に行えるかを実証する。

「実施は11月3日で初回の着艦では拘束装置を使います」と開発室長クリス・ボグデン中将が記者に語っている。
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使用される2機はテスト機材CF-3およびCF-5で10月30日にフォートワース(テキサス州)からユマ(アリゾナ州)へ移動し、事前準備をする。

これ以前にボグデン中将は海上公試の前に着艦フックと着陸装置の強度のため実施を危ぶむ発言をしていた。今回のテストで強度が十分だと証明されれば状況は解決したことになる。


同じニュースをBreaking Defenseは以下伝えています。

F-35 Ahoy! Navy Version Of JSF Faces Nimitz’s Tests

By COLIN CLARKon October 31, 2014 at 4:28 PM

F-35C with wings upWASHINGTON: これから二週間が海軍向け艦上運用型F-35Cには極めて重要な局面となる。2機がUSSニミッツ艦上で各種テストを実施する。
三軍の中で海軍が一番JSF導入に消極的であるが、今回の試験次第で海軍上層部も見方が変わるかもしれない。F-35C導入を減らしてF-18用の弾薬購入を増やそうという海軍の考えが変わるかが注目だ。クリス・ボグデン中将は記者団を前に昨日は強気を示していた。
2機は空母に直接飛び、拘束ワイヤを使い初の空母着艦となる光景を取材陣が見守る。
今回投入されるCF-3、CF-5の尾部のフック部分を再設計している。当初設計ではケーブルをうまくつかめず、強度も不足していた。そこでフック形状を変更し、機体との接続強度も増加させた。
これまでテストパイロットは意図的に機首のランディングギアから着地させて空母着艦時に縦揺れが発生した場合を模擬的に再現していた。海軍パイロットの一人と話をしたが、このような場合は相当の物理的ストレスが機体にかかるという。来週はサンディエゴに移動し、ニミッツ艦上からテストをお伝えする。■




2014年11月2日日曜日

ゲイツ元長官が予算強制削減を許したワシントン政界に喝を入れる



安全保障のカギは強力な国力であり国民の意思です。選挙制度と言う足かせで米軍が苦しむ間に非民主主義勢力は着々と軍事力を増強していることにはいらいらさせられますね。今月はその米国で中間選挙があり、ぜひ「まともな」議員が誕生することを期待しましょう。

Gates Blasts Lawmakers Over Sequestration

Oct. 30, 2014 - 05:35PM   |  
By JOE GOULD   |   Comments

Former US Defense Secretary Robert Gates criticized Congress for being unable to reach a budget compromise.
ゲイツ元国防長官が予算案で妥協作りができなかった議会を批判した。(D. Myles Cullen / Defense Department)
WASHINGTON — ロバート・ゲイツ元国防長官がワシントン政界を強制予算削減、予算キャップできびしく非難した。議会が予算で妥協できなかったため「深刻な影響」が米軍、本土防衛その他政府機能に現れているという。
  1. 「議会の責任不履行の最たる例が強制削減」とゲイツは情報関連国家安全保障フォーラム【主催SAP安全保障サービシズ】で発言。「これ以上愚かな予算削減策があるだろうか」
  2. 合衆国の安全保障上で最大の脅威は「政治の機能不全で国防予算が削減され、即応体制が劣化していること」だとした。
  3. 強制削減は議会の共和党、民主党、およびホワイトハウス間で赤字削減策の合意に失敗した2011年が原因で、税収確保策や国内給付金制度を巡る意見の相違があった。ゲイツはそもそも国防予算削減で財政赤字を解消することに無理があり、軍組織が弱体化するだけだという。
  4. 「削減はそのまま即応体制の低下と技術優位性の減少として最悪の結果が米軍に降りかかった」とした。.
  5. かすかな望みは議会に「残るまともな人士」が予算で妥協することだという。
  6. ゲイツが議会を感情を害する批判を向けた対象は民主共和両党内の「赤字対策強硬派、孤立主義者」の右派であり、「旧来通りのリベラル」の左派だ。
  7. そんなゲイツが攻撃対象から外したのは現国防長官チャック・ヘイゲルと統合参謀本部議長陸軍大将マーティン・デンプシーの両名で、軍人待遇改善と部隊削減、基地統合化で削減策のバランスがとれた提言をしたのに、議会に却下されたと怒りをぶつける。
  8. 「議会はペンタゴンを最悪の立場に追い込み、予算を削減しておきながら、予算復活の妥協案を拒み、その後国防総省が改革と削減で全体コストを下げようとするのを妨害した」
  9. オバマ大統領は「海図のないまま危険海域を航海している」と政権の世界観を表現し、二つの戦役があいまいな形で終わったこともさしている。さらに地上部隊を軽視し空軍と海軍だけで想定する戦闘構想を軽蔑し、イスラム国対策でシリアに地上軍を投入することをためらう現政権を遠まわしに批判した。
  10. 中国、ロシア、ヒズボラ他テロリスト集団とこれまでの国家の概念がはっきりしない事例について、ゲイツは米軍は「多様な選択肢で能力を展開し、最高の対応力を想定可能な軍事対立すべてに発揮すべき」とし、これまで戦争の発生を予測できたためしがないことが理由だとした。
  11. アジア同盟国や権益の保護のため合衆国はミサイル防衛を強化し、宇宙配備装備を防護し、サイバーネットワーク網を防衛すべきだという。また長距離性能装備への投資を進め、無人機も含め、挑発的な姿勢ではなく抑止効果を上げるべきと主張。
  12. 合衆国の同盟国が戦場で能力不足を露呈したり、意欲に欠ける例が増えていると指摘。リビア航空作戦ではフランスや英国は精密爆弾を使い切り、合衆国に補充を求めてきた。
  13. 「合衆国は必要な投資で軍事力の規模、、即応体制、実力を維持を怠るべきではなく、世界規模で死活的なわが方の安全保障上の権益を守るべきだ」と発言。
  14. 会場から米国の教育制度の現状を問われたゲイツは公民教育が不足していると再度議会を酷評した。会場は拍手した。
  15. 「率直に言って、上院議員のほぼ全員に中学校のアメリカ史を再受講させたいくらいだ」とし、「そうすれば建国の父たちの考えがわかり、権力を分権し、、監視と均衡機能をあたえた背景には妥協なければ先に進まないためだったとわかるだろう」■


米海兵隊が進めるCH-53Kは大幅に性能向上した新型スーパースタリオン



Marine Corps Prepares New CH-53K for First Flight

by KRIS OSBORN on OCTOBER 21, 2014
http://defensetech.org/2014/10/21/marine-corps-prepares-new-ch-53k-for-first-flight/
Marine Corps' new MH-53K prepares for its first flight.海兵隊が新型CH-53Kスーパースタリオン大型輸送ヘリコプターの各種テストを実施中。同機は来年に初飛行の予定。
CH-53Kは現行のCH-53Eスーパースタリオンの改修型で、貨物27,000ポンドを110カイリ先に輸送し、30分滞空して出発地に戻る性能が高温環境下でも発揮できる設計だ。
  1. 同型で海兵隊空陸任務部隊Marine Air Ground Task Force(MAGTF)向けに想定した性能が実現すると海兵隊は説明している。
  2. CH-53Kは軍事作戦以外に人道援助他非軍事ミッション、強襲作戦も想定していると海兵隊エリック・パーセル少佐 Maj. Eric Purcell (海兵隊大型ヘリコプター開発部門)は説明。
  3. 「実際の飛行パターンでテストし、特に動力伝達系や駆動部分、燃料供給システムやサブシステムをテストしています」と語るのはハンク・ヴァンダーボート大佐Col. Hank Vanderborght(海軍航空システム本部所属、H-53ヘリコプター開発部門責任者)だ。
  4. 陸上テストは三分の一を消化ずみで、GE-408に過負荷・高リスクテストも行っている。
  5. 初飛行が遅れて今年から来年になったのは技術問題のせいとヴァンダーボート大佐は言う。
  6. 課題の一部は機体の供用期間を30年として部品が耐久性を持つかを確認することだという。
  7. CH-53Kだけが事業準備でつまづいて遅延した例ではない。管理室によれば2011年に会計検査院が報告書でコスト上昇と日程管理の遅延を問題視した後は順調に推移しているという。実戦配備は2019年予定で当初の予定から4年遅れる。
  8. CH-53Kは現行CH-53Eの貨物搭載量の三倍となる。これが実現できたのは機体が軽量化したためで複合材の他アルミニウムやチタニウムも使用している。.横材構造と表皮はすべて複合材でローターブレイドは新設計で先端はたわみをつけているとシコルスキーエアクラフトコーポレーションは説明している。
  9. 海兵隊の調達想定は200機で、単価約70百万ドル。2028年までに完全運用を開始し、2050年代にかけて稼働させる。なお、生産開始は2016年予定だ。
  10. 「CH-53Kはこれまでの大型ヘリコプターの延長線というだけでなく、ヘリコプター運用の姿を変えるものとなる。海兵隊は即応体制が一番高い組織として今後も残る」(パーセル)
  11. パーセルにおよれば真価が試されるのはアフガニスタンだ。CH-53Eではパイロット両名は9,000ポンドの補給物資を三回つづけて30マイルずつ前線基地に送り、毎回燃料補給をして帰還するという。
  12. 「CH-53Kではこのミッションを三基の貨物吊り下げ用フックにそれぞれ違う貨物を取り付けて一度に実施できます」
  13. CH-53Kでは「分割式トルク」“split-torque” も開発されている。分割式トルクのトランスミッションでは高馬力、高速回転のエンジン出力を低速低トルクのロータードライブに伝達できる。これにより機体重量を増やさずに高出力が得られるので効率が優れる。
  14. もう一つの特長が指向性赤外線対抗手段DIRCMでレーザーを使い飛来するミサイルの方向を変えさせる。
  15. K型はフライバイワイヤで飛行し、状況対応型保守管理を採用しており、診断機能の付いたセンサーにより機内システムを監視し、故障予知と回避を行うと海兵隊は説明している。■

2014年11月1日土曜日

ロシア新型潜水艦ヤーレン級の現況



潜水艦連盟の年次総会に合わせて潜水艦関係の話題が連続しています。ロシア海軍の新型潜水艦の話題ですが、ちっともすすまない自国の次世代原子力潜水艦(いつか核融合に切り替わるのでしょうか)に不満のある米海軍がわざとリークしているのかもしれませんね。

U.S. Navy Impressed with New Russian Attack Boat

By: Dave Majumdar
Published: October 28, 2014 4:24 PM
Updated: October 28, 2014 4:29 PM
Russian submarine Novosibirsk during July 2013 sea trials.
海上公試中のロシア潜水艦プロジェクト885


米海軍潜水艦部隊のトップもロシアの新型プロジェクト885攻撃型原子力潜水艦には強い印象を持っているようで、K-329セヴェロドヴィンスク Severodvinsk の模型を堂々と飾っているほどだ。

  1. デイヴ・ジョンソン少将Rear Adm. Dave Johnsonは海軍海洋システムズ本部 Naval Sea Systems Command (NAVSEA) で潜水艦プロジェクトを統括する。少将はセヴェロドヴィンスクの模型をホールに置き、毎日眺めつつ自室に入るという。
  2. 「これは手ごわい相手になりますね。海軍省内のカードロック部門に公開情報をもとにロシア誘導ミサイル潜水艦(SSGN)の模型を作らせました。各国の水中戦力開発は止まってくれていません」と潜水艦連盟のシンポジウム(ヴァージニア州フォールズチャーチ)で発言した。
  3. 同艦は1993年から建造に入ったが、海上公試は2011年末だった。今年に正式に就役した。ソ連崩壊後の混乱で資金不足に悩んだロシアは何回も建造を遅らせていた。
  4. セヴェロドヴィンスクはロシアの攻撃潜水艦として最高の性能だが、ソ連時代の技術を反映した艦だ。
Model of Russian submarine Severodvinsk built for NAVSEA. US Naval Institute Photo
ロシア原潜セヴェロドヴィンスクの模型がNAVSEA本部に展示されている 
US Naval Institute Photo

  1. 排水量13,900トン、全長390フィートの同艦は高度自動化で乗組員は士官32名、乗員58名。
  2. 従来のロシア潜水艦より静粛性が高く、最大限に「沈黙」を守っても20ノット航行できる。
  3. 米海軍協会編「世界の戦闘艦船」では最高速度を35ないし40ノットとしているが、ロシア側報道では35ノットだ。最新の原子力潜水艦としてセヴェロドヴィンスクも原子炉は艦の寿命と同じ期間稼働する。
  4. 海軍情報部(ONI)によれば同艦は改良型ロサンジェルス級より静粛性が優れるが、シーウルフ級、ヴァージニア級には及ばない。ソ連時代でも静粛化技術の差はわずかであったという。ロシアになってヤーセン級 Yasen の艦体設計を改良して建造した。
  5. ソ連時代とちがうのは、ヤーセン級各艦は二重船殻構造でない点だ。耐圧殻の上に軽量構造をかぶせたハイブリッド構造とロシア報道は伝えている。.
  6. もう一つの特長が球状船首ソナーで、イルティシュ・アンフォラ Irtysh-Amfora を初めて採用した。魚雷発射管は艦中央部に配置され米国潜水艦と同様になった。発射管は8本で4本が650mmで残りは533mm口径だ。「世界の戦闘艦船」ではヤーセン級は魚雷30本搭載としている。
Infographic of Project 885 submarine via RIA Novosti
Infographic of Project 885 submarine via RIA Novosti

  1. ロシア攻撃型潜水艦の例に倣い同艦も対艦ミサイルを大量に搭載し主要攻撃手段としている。ミサイル発射管は24本で、超音速NPOマシノストレニヤP-800オニクス NPO Mashinostroyeniya P-800 Oniks 対艦ミサイルは200カイリの射程距離がある。またノヴァトルRK-55グラナットNovator RK-55 Granat 核搭載可能亜音速地上攻撃用巡航ミサイル(射程1,600カイリ)を搭載する。さらに3M14 カリバー Kalibr、3M54ビリュザ Biryuza 対地・対艦ミサイルも魚雷発射管から発射する。射程は300マイルとみられる。
  2. 対潜水艦用に91Rミサイルを搭載し、機雷の敷設も可能だ。
  3. 一部ロシア筋によるとセヴェロドヴィンスクにはアクティブ方式対魚雷防御機能があり、対空能力もあるという。後者ではプロジェクト941アクラ級(タイフーン級弾道ミサイル原潜)に9K38イグラ Igla 対空ミサイルを装備した前例がある。
  4. ロシアはヤーセン級8隻を建造すると見られ、後続艦では技術改良がくわえられ、2隻がセヴェロドヴィンスクのセヴマシュSevmash 造船所で建造中だ。二号艦カザン Kazan  は2009年7月、三号艦ノボシビリスク Novosibirsk は2013年7月にそれぞれ起工ずみだ。■

そうこうしているうちに二番艦カザンも建造が進み、艦体編入が視野に入ってきました。こちらは一番艦より強力な性能の改良型のようです。

Improved Russian Nuclear Attack Submarine Kazan to Deliver in 2016
By: Dave Majumdar
Published: October 29, 2014 12:27 PM
Updated: October 29, 2014 12:48 PM
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ロシア海軍はプロジェクト885Mヤーセン級攻撃型潜水艦の改良型1号艦を2016年に受領するとロシア国営報道機関が伝えている。同艦はカザンの名称で先に就役しているプロジェクト855の1号艦セヴェロドヴィンスク(K-329)以降の改良が施されている。

  1. 「改良型プロジェクト885Mの1号艦カザンはロシア海軍に2016年に納入される」とマラキット艦船設計局Malakhit design bureauの副所長ニコライ・ノヴォセロフNikolai NovoselovがRIAノーヴォスティ通信に語っている。
  2. カザンはセンサーと兵器システムでセヴェロドヴィンスクより進歩している。静粛性も改良されているという。
  3. セヴェロドヴィンスクの就役が大幅に遅れたことでプロジェクト855の改良ができた。セヴェドロビンスクの建造開始は1993年でその後数回にわたりソ連解体後の混乱で遅延を繰り返し完成し、相当の性能を有するが、一部装備は時代遅れの観がある。
  4. ロシア海軍は最低でも8隻のヤーセン級を整備する予定とRIAノーヴォスティは伝える。発注済は4隻で、3号艦ノヴォシビルスクが2013年7月に起工された。
  5. またプロジェクト955ボーレイ級Borei-class 弾道ミサイル潜水艦10隻の建造も同時に進めており、ソ連時代のタイフーン級、デルタIV級の後継艦とする。うちユーリ・ドルゴルキYury Dolgoruky 、アレクサンドル・ネフスキーAlexander Nevsky がすでに就役していると伝えられ、ブラヴァ Bulava 潜水艦発射弾道ミサイル16発を搭載している。またウラジミール・モノマーフVladimir Monomakh が公試中。
  6. 4番艦クニャージ・ウラジミール Knyaz Vladimir は改良型プロジェクト955-A級で、2012年起工。20発の弾道ミサイルを搭載するとの観測もある。■


2014年10月31日金曜日

オーストラリア潜水艦事業に絡みたいサーブ・コックムスとはどんな企業なのか


オーストラリア向け潜水艦建造の競合相手になりそうなサーブ傘下のコックムスの話題です。同社が提携したコリンズ級がオーストラリアにとっては不満の種なのですが、同社はオーストラリアにこれまでも実績のある会社で決して無視はできないと思います。だがはたして日本の2社に海上自衛隊向けとは別に輸出用船体を作る余裕があるのか、そこに米国も割り込んできて、ますます混迷しそうな状況ですね。同社を率いるフランソン女史の発言を見ると、とてもオーストラリアの想定する性能を実現できる実績のある会社と思えないのですが、いかにも自信満々ですよね。日本側もメディアを使って自社の立ち位置を説明してはいかがでしょうか。

Saab Confident in Its Kockums Submarine Builders

Oct. 29, 2014 - 05:03PM   |  
By CHRISTOPHER P. CAVAS   |   Comments
Saab Kockums Security and Defense Solutions unitを率いるグニラ・フランソンは世界の海軍市場で競合に勝ち残りたいと意欲満々だ。 (Christopher P. Cavas/Staff)
PARIS — コックムス造船が再度スウェーデンの所有・統制に復帰した際は同国の国民、政府、産業界が全員承認する稀な事例となった。
  1. 「全員が好意的な反応を示すのはこの国で初めてでしょう」と言うのはサーブ・コックムスSaab Kockums Security and Defense Solutionsを率いるグニラ・フランソンGunilla Franssonである。
  2. サーブはコックムスを傘下に収め潜水艦建造でスウェーデンらしさを出してきた。
  3. 「サーブ・コックムスとしてサーブの強みとコックムスの造船能力を提供します」
  4. フランソンはサーブの海軍艦船建造実績を上げたうえで、「サーブは造船では有名とはいいがいですが、コックムスの名前はサーブが造船も手掛けていることを印象付けます」
  5. サーブの名称はグリペンに代表されれる航空機製造、サーブ・バラキューダSaab Barracudaとして米国に本社を置く安全保障防衛システム開発で知られているとフランソンは指摘。
  6. サーブ・コックムスは海軍関係の事業を世界規模で展開し、艦船建造からシステムズまで手掛けようとする。
  7. 「海軍関連事業は業界内の協力があって成立し、一社ですべてのシステムを提供できません」
  8. サーブはシステム統合企業と自社をみていると語る。「当社の強みは海軍関係の統合機能です。主契約企業をめざし、競合他社の製品も利用します」
  9. コックムスがドイツ持ち株会社と関係が不安定だったのはホバルツウェルケ・ドイチェHowaldtswerke-Deutsche Werft が国有企業だったコックムスを1999年に買収したためだった。その後ティッセンクルップ・マリンシステムズThyssenKrupp Marine Systems (TKMS)に2005年に編入され関係はさらに悪化し、併合でコックムスの潜水艦設計建造事業が廃止されるとの猜疑心だけが高まっていた。
  10. 今年二月にスウェーデン政府から「国益の観点で潜水艦建造能力が必要だ、サーブに同事業をやってもらいたい」と言ってきたとフランソンはいう。そういわれて、ことわれなかった、と回想する。
  11. コックムスは15年もの間外国に所有されていたが、「スウェーデン企業のままで、TKMSへ統合されていない」とフランソンは言う。
  12. スウェーデン政府方針でサーブ・コックムスはA26潜水艦の開発を再開し、設計・建造の準備を急いでいる。フランソンはこの事業の行方に自信を持っている。
  13. 「20年間潜水艦を一隻も建造してなくても、スウェーデン海軍用に潜水艦をドック補修していましたから」と言う。
  14. 造船技術そのものはサーブが手に入れた900名のコックムス社員の中にある。「30年40年勤務の社員が多数おり、技能水準を維持しています。スウェーデンには海軍関係者も多く、コックムスと強い関係を持っていますので、技能で心配はしていません」
  15. 経営管理層はサーブ出身者、コックムス出身で半々だという。「管理職には20年30年の経験があり、海軍士官出身者もいますよ」
  16. 政府契約でサーブ・コックムスはA26設計を見直し、「現在の要求水準に合致するか確認中で、サブシステム、調達品を再検証する」という。
  17. サーブ・コックムスはA26潜水艦調達の決定が数年以内に決まり、詳細設計、建造を開始できると見ている。A26級一号艦の納入は2022年目標だとフランソンは言う。
  18. TKMSは傘下のコックムスに潜水艦の輸出営業を許さず、スウェーデン側に不満の種だった。同社はオーストラリア向けに建造したコリンズ級の出来具合に誇りを持っている。コリンズはスウェーデン海軍向け設計案を拡大した潜水艦である。
  19. 同社はオーストラリアで再度存在感を高めようとしている。オーストラリア政府はコリンズ級6隻の後継艦として12隻の建造を計画している。
  20. 「オーストラリア案件に当社も関与したい。オーストラリアとは強い関係がある」(フランソン)
  21. サーブには20年にわたり防衛事業を支える現地社員がオーストラリアにおり、「サーブはオーストラリア企業として認知されています。コックムスが加わり、潜水艦事業で強力な入札企業となります」
  22. 「潜水艦調達を獲得するのが目標ですが、決めるのはもちろんオーストラリアです」 ■

2014年10月30日木曜日

F-35イスラエルが追加発注に動く 発注数増加が最大のコスト低減策という実態



単価を下げたければもっと発注しろ、途中で取り消したら全員が迷惑だ、というのではかなり強引なセールスになりますね。ちょっと疑問に思います。とくにそういう米国が調達規模を縮小するのでは。そうなると我慢比べみたいなもので最後まで残っていいことがあればいいのですが。

Israel Planning To Increase F-35 Buy

http://www.defensenews.com/article/20141029/DEFREG04/310290029/Israel-Planning-Increase-F-35-Buy
Oct. 29, 2014 - 02:21PM   |  
By AARON MEHTA   |   Comments

WASHINGTON — イスラエルはF-35を追加発注をし、合計44機の導入を目指す。
イスラエルは2010年に対外有償軍事援助販売(FMS)を通じF-35を購入する初の国となり、A型を19機購入することにしていた。今回の追加は25機である。この報道はロイターがまず流し、統合開発室も確認したが、コメントは避けている。
今週はF-35にとってよい一週間になった。開発室とロッキード・マーティンが八番目の生産ロットの条件面で合意を形成している。この中にはイスラエル向けF-35Aが2機と日本向け4機が含まれ、生産は2016年に開始される。
イスラエルの発注追加はF-35事業への信頼度が回復している証であり、米国向けのみならず共同開発国8か国とともに有償援助の三カ国向け単価にも影響が出てくる。
業界とペンタゴンはコスト削減の努力をつづけているが、最大の削減策は受注数を増やすことだと強調している。
事業を統括するクリストファー・ボグデン中将は事業量が伸びることが節減効果全体の8割相当になると発言。
「これからの三年間で生産量は二倍になり、5年で3倍になる。今後の増産は大規模ということ。そこで発注取り消しや先延ばしがあれば全体へ影響する。運命共同体 We all sink or swim together ということだ」とボグデンは9月に発言している。■

★★F-35機体価格の最新動向 航空自衛隊機体含む



なるほど日本向けの機体はドル108円換算で単価100.8億円ということですが。今後も機体価格が下がっていくというのはよい知らせですね。ただACC司令官も言っているようにF-35の役割は機種の違いを融合させた総合的な戦力と状況把握能力、ネットワーク機能なので、運用する航空自衛隊も考え方を切り替えていかないとせっかくの機材も宝の持ち腐れになってしまいますね。

Lockheed, Pentagon Agree On Latest F-35 Production Lot

http://aviationweek.com/defense/lockheed-pentagon-agree-latest-f-35-production-lot
Oct 27, 2014Amy Butler | AWIN First
Lockheed Martin

ペンタゴンとロッキード・マーティン間でF-35の次回生産バッチ43機分で合意ができた。

  1. これによると低率初回生産(LRIP)第8ロットの価格は前回のLRIP 7よりおよそ3.6%低い単価になり、F-35Aで93.3百万ドル(約100.8億円)、F-35Bは100.5百万ドル(108.5億円)、F-35Cが111.1百万ドル(120億円)になる。

  1. 今回の生産ロットに初の海外軍事販売分の2案件も含む。イスラエルはF-35Aの2機、日本向けF-35Aが4機である。米国向けは29機で、うち19機が米空軍、6機B型が海兵隊、C型4機が海軍向けだ。あわせてノルウェー、イタリア向け各2機もここに入る。英国にはF-35Bを4機生産する。
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  1. 今回の生産ロットは2014年度調達で2016会計年度末までに引き渡しとなる。

  1. F-35開発室は初のC型空母運用も開始しようとしている。USSニミッツへの拘束フックによる着艦は11月3日を予定し、サンディエゴ沖合で行う。艦上運用型ではフック形状を再設計している。ロッキード・マーティンが再設計を迫られたのは原型が空母の拘束鉄線をつかむことができなかったためだ。

  1. ロッキード・マーティンでF-35事業を担当する執行副社長ロレイン・マーティン Lorraine Martin によればF-35Aの機体価格は2019年度に80百万ドルに下がる見込みという。そうなると第四世代戦闘機と価格面で同じ水準になる。グリペンやスーパーホーネットが念頭にあり、両機種とも生産はまだ継続中でF-35と競合する。マーティンは 価格低減のための計画づくりBlueprint for Affordability (BPA) を開始しており、これまで数々のコスト節約方法を実行に移してきた。

  1. BPAによるコスト低減を反映した新価格を政府に提示するのが目的だ。例としてロッキードは342千ドルを投じてF-35キャノピー前方部を一体成型から順次生産方式に変更したが、この節約効果は31.5百万ドルと試算される。

  1. 各改善案には社内資金を投じているが、相当の節減効果がでているという。一連の改善策を反映した新価格はLRIP第9ロットから設定される。■


2014年10月29日水曜日

ACC司令官が見る 空軍力の現状と未来


ホステジ司令官はこれまでもいろいろ発言をしている人ですが、退役を控え、一区切りというところでしょうか。空軍の考える作戦概念そのものは案外理解されていないので、非常に参考になると思います。

ACC’s Gen.Hostage: On Fifth Gen Combat Cloud And Syria

By ROBBIN LAIRD and ED TIMPERLAKEon October 22, 2014 at 4:29 AM
ロビン・レアード ROBBIN LAIRD(寄稿コラムニスト)とエド・テンパーレイク ED TIMPERLAKE がマイク・ホステジ大将との最後のインタビュー機会を得た。大将は航空戦闘軍団を率いるが、11月初旬に退官予定だ。ホステジは空軍が第五世代機F-22を導入し、F-35導入に備える様子を目にしてきた。(編集部)
質問: F-22が実戦に初めて投入された。中東のISILを相手に。もっと早く実戦投入しておくべきだったのに、実現しなかった。F-22は独立して運用されるのか、それとも空軍の一部に統合されるべきなのか。
ホステジ: 今日運用中の機体はすべて統合されている。単一ミッションしかできない機体は運用しないが、近接航空支援機は例外。今でも全体をきわめてうまく調整して実施すべき運用である。
空軍に統合できていない機材があると考えるのはばかげた見方だ。F-22は他の機種と交信ができないというのは他機種と同じレベルでの交信ができないという意味。
しかし機材を他の資産と統合するのはいまに始まったことではなく、空軍創立以来続いている。TTPという戦術、技量、手段に関しておおむねそれは正しい。
F-22も対ISIL戦では戦力構成の一部に取り込まれている。決して単独行動しているわけではない。それぞれの役割はあるが、全体として戦力ミックスとしている。
航空攻撃だけおこなっているわけではない。同機の状況把握能力と防空能力は大きな要素であるが、他機種と同様に攻撃目標も与えられる。
これ以上の統合があるだろうか。
質問: 空軍力は一層重要性を増しており、作戦の実施のたびにその観が強い。それでも議論があり、地上兵力対空軍力と言う観点で意見が分かれている。我々は空軍力は戦闘区域の状況を形成するとともにその他の作戦の実施を可能にするカギだと見ているが、どう思うか。
ホステジ: 地上部隊派遣の是非は多分に政治論議であり、軍事上の検討ではない。地上部隊を送ればだれが悪いやつか区別して、悪いやつの顔の上に武器をつきつけてやることができるのはあたりまえだ。
ただこれを実施すべきかの是非は軍事上の決断ではなく、政治判断だ。正しい政治判断を指導層がこの件で下すと思う。道のりはちがっても、好むと好まざるを問わず、軍事上の選択でなくあくまでも政治選択だ。

戦闘状況のISR活動は今でも大規模であるがもっと現地に機材を増やせばもっと多くの情報が得られると思う。
だが上空からできることに限界がある。航続距離とセンサーの精度の問題だ。建物を透視できない。こそこそ話も盗聴できない。空からのISRには明らかに限界がある。
ただこうして話している間にも現地では驚異的な作業が進行している。作戦環境の中で効果を最大化するためにはなんでも実施すべきだ。
今回とアフガニスタンを比較すれば、ちがいがわかる。アフガニスタンでは 再建されたアフガン部隊と共同で作戦していた。アフガン警察、米国、その他各国連合軍が地上に展開していた。非常に高密度のISIRで地表を覆った。多数の機種を投入し、電子フルモーション画像情報を活用した。これと同じことはイラクでは実施できないし、イラク軍は混乱状態にある。
状況に応じた制約の中で出来ることを実施するしかない。
質問: ACC司令官の任期の終わりが近づく中、主な業績を上げると何か。
ホステジ: そうだね、戦場で最高の戦闘機材となるF-22部隊を指揮するのが一番誇らしいことかな。シリアに投入したのはテストではなく、必要だったからだが、全く問題なく作戦を実施している。
同機を実戦化する努力が報われた。着任当時は同機は半年も飛行停止状態だった。パイロットが飛行するのを恐れていた。整備部門は手を付けたがらなかった。まったくひどい状態だった。最高の機材を失う危険があった。
3.1ソフトウェアを各機に搭載する作業が完了して、空対地攻撃能力を接近阻止・領域拒否l (A2/AD) の環境でも発揮できるようになった。
作戦の実施方法を根底から覆す機材だ。
当初の予定機数を調達できていたらよかったと思う。それでも184機でも絶対的な威力を発揮する機材だ。F-35の性能にもとても満足している。1,763機も調達すれば相当の戦力となるだろう。
質問: 前回お会いした際はF-22を実際に操縦する初のACC司令官と知り大いに感銘をうけた。F-22、F-35を旧型機と共同運用するのは困難か。
ホステジ: 航空作戦の再定義ということか。F-22を操縦することができ幸運だった。今まで知らなかったことを勉強できた。
以前は三ツ星としてF-22を使った作戦構想を準備していたが、同機の性能をすべて発揮できていなかった、というのも第五世代機の決定的な違いを理解していなかったからだ。
よくステルス性能が第五世代機の決定的な違いだといわれるが、実際は違う。違いは融合fusionだ。融合は決定的に違いを生む。4.5世代だ、4.8世代機だという向きがあるが、信じてはいけない。そこで言っているのはRCS(レーダー断面積)のことだけだ。
融合こそこれからの方向だ。融合機能は第四世代機では期待できない。エイヴィオニクス装置が融合機材用に設定されていないからだ。融合により機材の運用方法が変わってくる。
第五世代機のSA(状況把握)が強力なので第四世代機にSAを伝え、攻撃させるのが効果的だ。ラプターを一機送り、第四世代機をウィンチェスター銃として使うことだ。そのあと五世代機で仕上げを行う。また後続機のために安全を確保する。戦争の仕方が変わった。
戦術戦の状況を根本から変えつつある。第五世代機と融合させてどのように戦術機を運用するか。戦術戦では四世代機と五世代機でパイロットの仕事が根本から違ってくる。
だが航空優勢を実現する仕掛けの根本は敵地奥深く攻撃することでありこれは不変だ。
指揮命令の前提は全面攻撃能力を四・五世代機間で実現することであり、戦闘能力をフルに活用することだが、このため第四世代機での戦闘のやり方を変える必要が出てくる。
マシン間の交信がないと四世代機はいまと変わらない仕事しかできないが、やりとりができれば四世代機は五世代機の仕事の一部を引き受けられる。これのカギは五世代機が提供するSAだ。
このマシン間同士のやり取りが実現すれば、四世代機も戦術面で五世代機の融合機能の恩恵を受けることが可能となる。
質問: 専門家の中には空軍の前主任研究員のマーク・ルイスのように第五世代機の機能を完全利用するには革命的な能力を有する兵装の制約を開放するべきと指摘する向きがある。兵器が進化している実態をどう見るか、またどの領域に進むべきと考えるか。
ホステジ: 第五世代機に合わせて第五世代兵器を作る必要はないと思う。しかも一気に進歩するのではなく、確実に進歩させていくべきだ。
つまるところ、何を実現したいかだ。現在の機材に搭載している兵装は直線的に進歩を遂げた結果だが我々が求める効果を生む能力がある。
接近拒否領域阻止の環境が今以上に激しくなれば、敵地内部の攻撃能力はすべて無効化される。このため戦闘の在り方を一変するgame changing新兵器の開発努力が必要だ。
質問: S3乗というコンセプトがあり、センサー、ステルス、スピードの相殺関係を指している。そのうちどれを重視し、どれを犠牲にするのか。また相殺に意味があるのか。
ホステジ:三つの相互関係をうまく言い表しているのはラプターとライトニングの比較だ。ラプターは高度5万フィート以上をマッハ2で飛行し、RCSは高度3万5千フィートマッハ0.9のライトニングよりも小さい。
この二機種はともに高度、速度、ステルス性があるが、性能は全く違う。ライトニングの性能をラプター並みにするにはライトニングを6機、7機、8機と組み合わせることだ。
この融合したF-35編隊とF-22を比較すれば、性能は互角となる。また各機のウェポンシステムを融合した合成効果が出てくる。
これが第五世代機F-35の不思議な特性だが、この効果を得るには一定数のF-35が必要となる。そのため同機を予定通りの機数で購入すべきと主張している。ラプターのような少数配備になれば、圧倒的な威力は期待できない。
質問: F-35のグローバルな展開にはそうなると同盟国、協力国が重要となる。もうひとつおっしゃているのは第五世代機の投入で戦闘作戦の概念が変わり、21世紀型の戦場となり、30年前と同じ環境ではいられないということ。では、元空軍長官マイク・ウィンMike Wynne が第五世代機をSA能力を生かして観測偵察機として使えといっているが同じ趣旨で以前にSAで他の攻撃機を助けるべきと発言されていた。
ホステジ: 全くその通りで、前線偵察機として目標情報を集め、四世代機に送り、スタンドオフ攻撃を加え、戦闘の全体状況を把握させる。データを送受信する能力であり、これを目指して努力しているところだ。
同時にC2(通信と統制)の再構築も必要だ。アフガニスタンで起こったことが今でも起こる可能性があるのはCAOC(Combined Air and Space Operations Center----統合航空作戦司令部)が1,500マイル離れた地点にあるためで、全体調整、統合、相乗効果の実現を機種が混在する中で敵のいない戦場でおこなうためだ。
シリア上空の作戦空域がまず対象で、台湾海峡上空他も大きな課題となる。遠隔地の統合指揮命令機能から長距離のリンクに依存することになる。
クラウドを使って指揮命令系統を分散化する考えもあるが、全体調整能力の実現が必要だ。機体が自身で動いてミッションを実行する話ではなく、各機が相乗効果を上げて望む効果を達成し、敵攻撃を生き延びる話をしている。
それぞれ違う機種で同期した環境で作戦を実施するとする。同期を実現する装置が必要だ。これが分散制御の考え方だ。それはBMC2(戦闘管理指揮統制)用の機体で、JSTARSかもしれない、AWACSかもしれないし、E-2Cかもしれないが、空飛ぶ司令部となり、あるいは水上艦かもしれない、その他の装備かもしれないが、前方戦闘地帯内の航空機をとりまとめる前方分散統制機能となるだろう。
質問:これまで合衆国は航空優勢を確保して空軍力を他の役目に使うことで水上部隊、地上部隊を支援してきたが、空軍力がいつもあることを前提にしていたのにいつの間にかこれを忘れている。これも挑戦すべき課題なのか。
ホステジ: 陸軍の仲間にこう言ったことがある。これまで60年間で上空が音がしても誰も気にしていない。気になって空を見上げることもない。いつも空軍がいたからだ。ただ今後もその通りか保証がない。これまで60年間変わらなかったのは空軍が努力したせいだ。
努力を怠れば戦場の様相は大きく変わる。地上兵士は空を見上げてあの音は友軍のものなのか、敵軍のものかわからなくなるだろう。
質問: 進行中の変化のひとつが空対空戦の再登場。航空急襲部隊への脅威も含め新しい戦闘に伴う状況を想像する必要がある。空対地から空対空へ重点が移る中どこまで準備ができているのか。
ホステジ: 任官したばかりの中尉に戦闘機パイロットとしてまずこの二三年で何をすべきかを聞いてみたところ、逆に自分の場合を聞かれた。気恥ずかしかった。
これからの人たちは複雑なシステムを扱い負担が重いが、一方で操作は楽になっていく。本当に良いことだ。
事態が発生すれば勝利を収めてくれると疑いはない。わが方の装備も乗員も本当に能力が高いので空で衝突が発生しても衝撃と畏怖作戦の日々が戻ってくると思う。
合衆国だけによるレッドフラッグ演習を見ていると、恐るべき威力を発揮している。だから自信がある。疑いなく勝利を収めるが、今のような財政状態で優秀な乗員を支える国防の仕組みが崩壊しなければ、だ。
質問:パイロットが空軍力の進化に応じて行動様式を変えていくことは重要だろうか。とくに新型機が今後導入されるが。
ホステジ: 新しいハードウェアを任官間もない若いパイロットが操縦すると想像外の結果がいつも起こるものだ。また想定外の使用方法も発見する。そして戦術マニュアルの書き換えにつながる。
飛行隊で抜きんでた考えを持つものを選抜しようと探すのはそれが理由だ。毎年のように兵装と戦術の見直しをおこなっており、各戦術飛行隊の選りすぐりがネリスで二週間にわたり技術を披露する。【レッドフラッグ演習のこと】 乗員は新趣向を毎回しこまれるが、専門家があれこれ工夫する効果を搭乗員はあらゆる手を使って実現する。
この試練に生き残れば、記録化し、だれでもできるように訓練を開始する。
このようにしてすぐれた知識を空軍全体に広めてきた。
推進力は若い中尉の心の中にあり、素晴らしいマシンを目の前にして新しい発想で何かをしようとする。これが変化を生む推進力だ。■