2015年4月21日火曜日

中国>S-400防空ミサイル導入で何が変わるか


長距離防空ミサイルの導入は他国の航空作戦への牽制効果がねらいでしょう。メッセージに注目すべきです。記事が指摘するように台湾が苦しい立場になりますが、日本も当然注視していくべき事態ですね。ロシアは防衛装備以外にめぼしい輸出工業製品がなく、このS-400も各国にこれから売り込みにかかるのでしょう。

S-400 Strengthens China's Hand in the Skies

By Wendell Minnick1:20 p.m. EDT April 18, 2015

635648131586430993-DFN-China-S-400(Photo: umnick/wikipedia)
TAIPEI — 中国はロシアと新型S-400対空防衛システムの導入で合意し、中国の防空体制はいっそう強固になると専門家は見ている。
  1. 射程400キロメートルではじめて台湾上空の飛行物体の撃破ができる他、ニューデリー、カルカッタ、ソウルも射程範囲におさめる。黄海や南シナ海の防空識別圏でも防御が固められ北朝鮮内のいずれの地点にも発射できる。
  2. 日本と対立が深まる尖閣諸島近くまで防衛空域を伸ばすことも可能と指摘するのは ワシリー・カシン Vasiliy Kashin (モスクワの戦略技術分析センター Centre for Analysis of Strategies and TechnologiesCentre for Analysis of Strategies and Technologiesで中国専門家)
  3. 中国が配備ずみのS-300の有効射程は300キロだが、台湾の北西沿岸部上空までしか射程におさめず、インドや韓国の首都は対象外だとアレクサンダー・フアン Alexander Huang (台北にある戦略軍事演習研究協議会 Council on Strategic and Wargaming Studiesの会長)は指摘する。S-400で台湾の防空体制が試される。
  4. 「新装備で中国は航空抑止力を増強でき各国とも中国領空近くでの作戦に一層慎重になるだろう」(フアン)
  5. 国営防衛装備輸出公団ロソボロネキスポートのCEOアナトリ・イサイキン Anatoly Isaikin が売却を4月13日に発表した。報道陣へはS-400に国際市場から引き合い多数があり、中国が初の海外顧客になると述べた。詳細は未発表だが正式契約は2014年末に結ばれているとカシンは補足し、4ないし6大隊分で総額30億ドルだという。
  6. S-400はミサイル迎撃にも利用できる。ロソボロネキスポートはDefense Newsからの問い合わせに答えていない。
  7. S-400導入は中国の防空・ミサイル防衛体制で正常進化とマーク・ストークス Mark Stokes(Project 2049 研究所専務理事)は語る。「どの型式が輸出される型式、配備地点がどこになるかも興味のまと」という。
  8. 台湾を挟みS-400が配備されると台はも非対称的能力の拡充に走り中国の防空体制の弱点を攻撃できる装備をめざすとストークスは見る。
  9. 台湾の国防部 Ministry of National Defense (MND) は今回の発表を平然と受け止め、台湾軍は慎重に観察していると報道官羅志祥少将Luo Shou-heは語り、ロシアと中国が密接な軍事協力を進めているのは承知という。
  10. 「新型装備の脅威に対抗するべくROC(中華民国)軍は脅威評価を終えており、対抗策の戦術戦略を調整済み」で飛行訓練も通常通り継続するという。
  11. カシンによれば中国は長距離防空ミサイル生産の体制を徐々に整えているものの、ロシアと開きが相当ある。中国製装備が海外市場でロシアに競り勝つことがあるが「性能より中国が提供する支払い条件や技術移転が理由」という。
  12. 中国がS-400をリバースエンジニアリングするのは疑いもない。S-300でも前例がある。だがリバースエンジニアリングは非常に時間を食うとカシンは指摘し、ロシアはすでに次世代のS-500の開発に取り組んでいるという。このS-500の生産開始は2017年と見られ、中国にS-400の供給を開始するのとほぼ同時期になる。■

2015年4月20日月曜日

ISIS,アルカイダ>テロ集団のフランチャイズ化が顕著に


米中軍事衝突が将来発生するかは予断を許しませんが、テロとの闘いは現実です。しかも下記事が指摘するようにフランチャイズ化しつつ要注意組織が広がっている事実は実に厄介と言わざるを得ません。人質交渉など相手側の期待する効果を一切排除し、冷淡と言われようが筋を貫く姿勢が必要なのでしょう。

Panel: ISIS, Al Qaeda Franchising Efforts Changed the Face of Terrorism

By: John Grady
April 3, 2015 12:22 PM

Members of the al Qaeda affiliated group al Shabab in Somalia in 2013
アルカイダ系集団アルシャハブの戦闘員たち(ソマリア、2013年)


アルカイダあるいはISISと連携していると称する集団がフランチャイズ化しているのが国際テロリズムで最大の変化点だと専門家二名が大西洋協議会で指摘している。.
  1. ジョージタウン大学で安全保障を専門とするブルース・ホフマンBruce Hoffmanによれば米国は2001年9月11日のニューヨーク及びペンタゴン攻撃のあと「アルカイダの成功に自らをつなげる」テロリスト集団多数の動きを把握できなかったと述べている。「今回も全く同様の誤ち」をボコ・ハラム(ナイジェリア)、アルシャハブ(ソマリア)ほかエジプト、リピアのISISとつながりがあると称する集団で犯していると指摘。
  2. 17もの集団が各地で活動している。ブルース・ライデルBruce Riedel はブルッキング研究所で情報関連事業の統括者で、ワシントンの聴衆に対して「数が限られているアナリスト、有限な無人機」をどこに配備すべきかと問題提起した。
  3. アルカイダは組織存続のため劇的な攻撃を仕掛ける可能性があり、ISISは迅速な衝撃を与える作戦を取ることが多いが、テロリズムは米大使館襲撃レバノン海兵隊隊舎爆破(1983年)で十分効果をあげられることを実証済みだ。実施しても失う代償はごくわずかだが、成功した場合の効果は大きく、海兵隊はレバノンからわずか数カ月後に撤退している。同様に2001年の同時攻撃に投じた50万ドルは米国の支出5兆ドルを呼んだ。ここにはアフガニスタン、イラクでの長期戦の経費を含む。
  4. ホフマンによればアルカイダを主導するアイマン・アルザワヒリAyman al Zawahiri が数ヶ月に渡り沈黙を保っているのはアルカイダが南アジアで支援拡大を図っているためだという。この南アジアとはインド亜大陸からミャンマー、インドネシアまでを指す。
  5. パキスタン海軍の誘導ミサイルフリゲートの乗組員、士官に潜入し艦を占拠し、各国海軍が海賊対策活動を展開中の海域に同艦を移動させ米海軍艦船を攻撃しようとして失敗した試み(2014年9月)では「空母を狙っていた形跡がある」とし、攻撃を実施していたらパキスタンと米国の海上戦に発展していた可能性を指摘。
  6. ライデルはCIA分析官の経験があり、こう発言している。「全体的なアプローチ」がテロリスト対策に必要だ。「大規模な武力が必要、無人機も必要、SEALも必要」だが、これに漸進的な改革を可能とする方策を組み合わせる必要があり、しかもその対象国は独裁者が君臨してきたような国であり、方策ではイスラエル・パレスチナ間のような「二カ国問題の解決」の真価が理解されるものでなければならない。
  7. ホフマンも「指導層の排除は失敗した」とし、テロリズムの勢いをそぐことができなかったとする。「もっと重要なのはインフラストラクチャーの劣化だ」とCIA、FBI、国家地理空間情報機関が脅威環境の変化に対応して来たことを指摘。
  8. 「時期尚早の勝利宣言は避けるべき」であり「アルカイダ消滅の宣言」も控えるべきとライデルは発言し、これは自分で自分を痛めつけるのと同じと指摘。
  9. 合衆国政府も一部で「アメリカが制御できない現象がある」ことは承知していると、ライデルはアラブの春の例を上げた。
  10. アラブの春が始まった段階では民主的政府誕生への希望的観測があった。しかし期待は新政府が頓挫し、その後の反動でエジプトのように政治経済の進展に反撥が生まれ、あるいはリビアのように国家体制そのものが崩壊した中で失望に変わる。.
  11. イエメン事案ではライデルはサウジアラビアが空軍力の限界に気づきつつあり、フーシ反乱勢力から領土奪回するとしてもイランの影響力排除で困難に直面していると指摘した。
  12. パキスタンはサウジ主導の作戦への地上部隊派遣に同意しなかったが、「エジプトを説得して」地上部隊の動員に成功する可能性はあるという。
  13. 即位したばかりのサウジ新国王への教訓は「開戦するのは簡単だが終結させるのは困難」ということとライデルは語った。
  14. 20ヶ月後には米国にも新政権が誕生するが、その門出に待ち受ける課題として、ISISがイラクでも地下に潜入するのか、有志連合が撤兵する条件はなにかを考えることだろう。
  15. NATOがアフガニスタンで展開した作戦はきわめて有益な効果を示し、各国の部隊を統合して戦闘条件に合わせたが、英国のように国防予算そのものが縮小され地上部隊が規模縮小している例があるとライデルは指摘した。
  16. 両名ともアメリカの対テロ防衛体制は9.11以降大幅に拡充しているとはいえ、詰めの甘い点もあったとテキサス州フォート・フッド基地での兵士銃撃事件、マンハッタンのタイムズスクエアでの爆弾未遂事件、ボストン・マラソンのゴール地点付近の爆弾テロ事件があった。
  17. ボストン事件の際は大都市圏での活動が制限された。「今だったらあれほど柔軟な対応ができるだろうか」とライデルはコメントしているが、この事件は2001年9月1日に3千名の生命を奪ったテロ攻撃とは規模が全く違うものだった。■

★海はもう広くない。CSBAが示す近未来の海上戦の様相



CSBAからまた刺激的な論文が出るようです。双方が互角の装備を整備して接近不可能な海域が増えると海洋の広さはどんどん縮小するというのは、一見すると海軍水上艦艇に未来がないように見えますが、実は兵力投射のプラットフォームとしての可能性をあらたに整備する方向性をあんじしているのではないでしょうか。 その意味でUCLASSは積極的な攻撃能力手段につながるのではないでしょうか。また度々ご紹介しているレーザーやレイルガンの技術開発にも新しい時代へ対応すべく海軍の展望がみえかくれします。 そうなると短距離しか飛行できず、かつ安全な陸上機地ないと使い物にならないF-35が太平洋で何ができるのか疑問ですし、その整備に巨額の予算をつかうことが費用対効果で大きく疑問になってくるでしょうね。むしろこの論文が議論の口火を切ることが期待されますし、それが自由な意見を自由に主張できる米国の強みですね。

No Man’s Sea: CSBA’s Lethal Vision Of Future Naval War

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on April 13, 2015 at 4:25 AM
CSBA graphic of a future war at sea.
WASHINGTON: もはや海は広い舞台ではない。ミサイルが有効射程を伸ばし精密度を上げ、センサー類の感度が向上し艦船に隠れる場所がなくなってきた。「要塞に発砲する軍艦は愚か」とは昔からの海の諺だが、陸上基地は弾薬量や防御力で海上艦艇より優位と言う意味だ。艦隊を陸上配備兵器の射程範囲に近づけるのを喜ぶ司令官はいない。だが、米海軍は新世代の兵器が配備される中で何百何千マイルも離れた海上に残れるのか。
  1. これがアンドリュー・クレピネヴィッチ Andrew Krepinevich がまもなく刊行される研究論文Maritime Competition In A Mature Precision-Strike Regime.「成熟した精密攻撃態勢の下での海洋覇権」(Breaking Defenseはクレピネヴィッチから同論文の写しを事前に入手し、本人へ直接質問をすることができた)の中心課題だ。クレピネヴィッチが率いるシンクタンク戦略予算評価センター Center for Strategic and Budgetary Assessments (CSBA)はこれまで接近阻止領域拒否anti-access/area denial (A2/AD)やエアシーバトルのコンセプトを生んできた。これらは中国他の勢力を遠距離から抑え込むのが目的だ。新しい論文では従来の研究成果をもとに双方が広域ネットワークで同等のスパイ衛星、無人機、爆撃機、ミサイルを整備した世界を想定し、論文の題名である「成熟した精密攻撃態勢」の意味が出てくる。
  2. 海戦も大きく変わる。陸上装備が艦隊に大きな損害を与えるので、もはや海戦とはいいがたい。(そのため論文では海洋、の語句を使っている。) 第二次大戦ではミッドウェイで日米が空母部隊で索敵に広い太平洋で苦労した。地中海では枢軸側と連合国側の艦船は簡単に発見され、陸上基地からの爆撃で大損害を受けた。現在の技術で太平洋は地中海の大きさに縮小されるといってよい。
  3. 「第二次大戦の地中海ではこういう接近できない地帯が生まれ、水上戦の支障になった」とクレピネヴィッチは語る。「精密攻撃手段が成熟化し大洋は地中海の大きさに縮む」
  1. クレピネヴィッチ予測では接近阻止領域拒否地帯が大洋に広がり、アクセス不可能な領土や海域が増え、双方にとってこの地帯では深刻な損害を覚悟しなければならなくなる。これまでの海軍作戦では自由航行が当然だったが、海洋の大部分が事実上通行不可能な危険地帯になる。対立する諸国が極めて近接している例として、日本・韓国・台湾が中国に近く、湾岸諸国もイランのすぐそばにあるが、バルト海諸国もロシアに近く、小国だと国土全体が危険地帯に入る。米国の同盟国が封鎖を受け、直接攻撃を受けるか包囲される可能性を想定すると救援に駆けつける米軍部隊もさながら第一次大戦の西部戦線のような海洋上の最前線を突破しないと到着できなくなる。
  2. 「例えば台湾の援護が必要になり、十分な事前準備ができない場合は重要な利害対象国である台湾を失うか、自軍部隊に高い損耗を覚悟するかのどちらかになる」(クレピネビッチ)
  3. 危険地帯を無事に突破できるだろうか。第一次大戦の現場指揮官と同じく、各種の新規手段を組み合わせて(英軍の場合はタンク)、戦術も組み合わせ(ドイツは突撃部隊)、多様な方法が考えられるとクレピネビッチはいう。
  4. 一番簡単なのは現地派遣をあきらめることだ。逆に敵を封鎖し、敵を自軍が設定した危険地帯へおびき出す。巧妙に敵に協力させることだ。「オフショアコントロール」構想では中国の長大な貿易海上ルートに着目し、中国から遠く離れた地点を封鎖し、輸出をまひさせ中東産原油が中国に届かなくすればよいと海兵隊退役大佐T.X.ハマーズ T.X. Hammesがエアシーバトルの代替策として提唱している。時間があればこの構想はとても魅力的だとクレビネヴィッチも認める。しかし米国の同盟国が敵の有効な射程範囲で身動きが取れなくなった場合(例 日本)では遠隔地の封鎖をしたところで肝心の同盟国が長く持たない。
  5. 反対にもっと積極策が考えられる。米軍の弾薬備蓄は長く維持できないかもしれない。ハイテク装備を有する敵との交戦はミサイル、無人機、有人機を消耗する。当然人員の損害も想定する必要があり、損耗率はこれまでのリビア、アフガニスタン、イスラム国相手の場合よりはるかに高くなる。いまでさえ米軍司令官は精密兵器の在庫が少ないことに危機感を持っており、米国では高性能兵器を迅速に生産できない。
  6. 「中華人民共和国と交戦した場合は弾薬類の補充生産はおろか主要装備品の増産は不可能だ」とクレビネヴィッチも認める。「そこで中国の立場で見れば、石油数カ月分の備蓄を前提に作戦立案すればよい。長期的視野にたてば中国は備蓄をするかパイプラインを陸上に構築すればよいことになる」
  7. 石油備蓄の方が精密兵器の備蓄よりずっと容易だ。もし中国等敵性国家がわが方の弾薬を使い果たすことに成功できるのなら、逆にわが方も相手の備蓄を使い果たすことができるのではないか。IPhoneの時代の技術で高性能ミサイルも低価格化できるはずだとクレピネビッチは指摘する。ただし長距離兵器ではそうはいかない。大国といえども強力な兵器の配備数には限りがあるということだ。
  8. 敵の武器備蓄を使い果たす方法としてむだな発射をさせることがあり、おとり、電子戦、敵ネットワーク侵入でありもしない目標を生み出す。反対に実目標に敵が発射してきたら飛んでくるミサイルを撃ち落とすのが効果的だ。これはミサイル防衛の課題であり、高価格の迎撃手段を有する艦船も搭載可能ミサイル数はごくわずかだ。レーザー兵器あるいは電磁レイルガンなら安価にミサイルに対抗でき、敵に高価なミサイルを使い果たさせられる。
  9. 長距離ミサイルだけが貴重な装備ではない。長距離センサーも目標探知に必要だ。衛星はどんどん脆弱化しており、直接攻撃手段としてのレーザー目くらましや関節攻撃としてのハッキングで地球へのダウンリンクが狙われる。あるいは小型爆発物で地上の管制施設が狙われるかもしれない。宇宙がだめなら、高高度飛行無人機を偵察と通信中継に使えばよいとクレピネビッチは説く。だがこの無人機も高レベルの自律性能で飛行できないと長距離データリンクが敵に狙われるとクレピネビッチは指摘する。
  10. 総じて無線ネットワークが大きな標的になる。サイバー諜報活動はかつてのナチや日本の暗号解読(ウルトラおよびマジック案件)の事例のように重要になるかもしれない。サイバー攻撃で偽データを配信するとか敵の中核システムを大事な時に使えなくさせることができよう。しかしこの種の戦闘には多くの不確定さがついてまわるのでクレピネヴィッチも注意するよう発言。
  11. 「ある程度までサイバーは20年代あるいは30年代の航空戦力と同じ位置づけです。重要だとわかっていても実際にどのように重要なのか誰も理解できていなかったのです」
  12. ただし航空戦力の場合は実際に撃ち合いが始まれば不確実性は急速に消えた。撃墜される機体が目に見えるし、都市は火に包まれた。サイバー戦や電子欺瞞作戦では攻撃する側、防御する側ともに目には見えない。敵が長距離ミサイルの発射を中止した時点で備蓄がなくなったのかわが方のサイバー電子攻撃で発射できなくなったのか、あるいはわが方がもっと近寄るのを待って発射しようとしているのか見極められない。
  13. 最終的に米軍部隊は接近せざるを得ない。ただし敵が長距離兵器を使い切った場合に限るが。では21世紀の危険地帯で生き残りができる部隊とはどんなものなのか。クレピネヴィッチはステルスは依然として重要だと見るが、今後もセンサーの性能向上とビッグデータの解析で挑戦を受けるだろう。潜水艦や陸上配備爆撃が中心的な精鋭部隊になるだろうとする。その補強に長距離陸上発射ミサイルが使われる。
  14. ということは水上艦艇には大きな役割は期待できないということで、現時点でも航空母艦は大きな目標にすぎないといする。潜水艦より目だち、脆弱性もあるが、水上艦のペイロードあたりの建造コストは低いが強力な火力を提供する。だが重要な問題点はそのペイロードだ。クレピネヴィッチも空母から反撃できないほどの長距離から空母を狙う巡航ミサイルを潜在敵国が発射できると指摘している。(この場合空中給油は危険すぎ選択肢に入らない) そこで長距離空母艦載機(有人である必要はない)で海軍の主力艦の威力を保つことになるのだろう。
  15. クレピネヴィッチは軍事上の革命的な進展は末端から始まることが多いと指摘し、従来通りの装備が大部分の中で最新鋭装備は少量ではじまることがあるという。これは軍の予算とも関連がある。電撃戦を展開したドイツ軍も当初は戦車よりも軍馬が引く車両のほうが多かったのだ。1941年12月7日時点の米海軍では戦艦の方が空母より多かった。攻撃を生き残った戦艦には対空砲を追加装備し、その後は空母を護衛する役割にまわった。新技術は比較的わずかでも新戦術に応用されると決定的な違いが生まれる。ここでもどの新技術、新戦術を重視するのかということだ。
  16. 議論に火がつけばクレピネヴィッチとしても嬉しいという。
  17. 「現状はバージョン1.0という段階」と報告書に記述。「いまのところこれが最良の予測であり、現在の傾向をもとにしたもの」というが、変動要因は非常に多く、これまでの軍事史上で経験がないほどの多さだという。とはいうものの、「それでもこのほうがよい。なぜなら今のまま未来に突入するよりも何かを失った方がよい」
  18. これは「対話の始まりを示すものであり、終わりではない」とクレピネヴィッチは指摘した。



2015年4月19日日曜日

★★ 米海軍>新型DDG-1000にレイルガン搭載 テスト計画も明らかに



「defense tech」の画像検索結果これも海軍の技術革新を象徴する兵器ですね。日本語ではずっとrailをレールとしてきましたのでレールガンとするのが多いと思いますが、当ブログでは二重母音のレイルとしています。なるべく原語に近いカタカナ表記にすることですこしでも意思疎通を楽にしたい=二つの表記を覚えるより経済的というのが当方の主張です。あしからず。それはともかくこれまでの海軍砲術の常識を塗り替える新しい手段がもう少しで実用化されそうです。

Navy Will Test its Electromagnetic Rail Gun aboard DDG 1000

by KRIS OSBORN on APRIL 15, 2015

DDG1000

電磁レイルガンをハイテクの塊DDG-1000新型駆逐艦に2020年までに搭載すると米海軍が発表した。
  1. DDG-1000級の統合発電システムで大量の電力が使えることで、レイルガンの使用が可能となると、マイク・ジブ大佐Capt. Mike Ziv(指向性エネルギー・電力系兵器システム開発担当)が報道陣を前に述べた。DDG-1000級駆逐艦は三隻建造され、一号艦ズムワルトは昨年4月に命名されている。
  2. ジブ大佐によるとDDG-1000はレイルガン搭載の条件を満たすが、追加検討がリスク対策で必要だという。検討内容は相当大規模で今年いっぱいかかるという。
  3. DDG-1000は総排水量は15,482トンで現行のイージス巡洋艦(9,500トン)より65パーセントも大きい。
  4. 統合発電システムを用い同艦は電気推進式を採用し、発電容量は58メガワットで将来のレイルガン使用にも十分耐えられる。
  5. 将来はDDG-51アーレイ・バーク級駆逐艦にもレイルガンが搭載される可能性があるが、LCSは想定外とジブは付け加えた。
  6. 一方で海軍は電磁レイルガンの海上試射を2016年から実施する予定で、USNSトレントンTrenton(共用高速艦艇Joint High Speed Vessel)を使う。,
  7. 試射の標的は海上のはしけで距離は25ないし50カイリをとる。
  8. 「はしけを標的にし、水平線越しの標的にどこまで効果を発揮できるかを見ます。段階を追ってテストを続け、データを集めます。大きな出来事になるとともに学びの機会にもなります』(ジブ)
  9. 米海軍はレイルガンを水上使用以外に陸上攻撃も想定し開発を進めている。レイルガンは誘導高速発射体を100マイル以上先に飛ばし、弾道ミサイル防衛や水上戦でも有効性が期待される。
  10. レイルガンの原理は電気エネルギーで電磁場を形成し、発射体を前に押し出し、マッハ7.5で目標に向かわせるもので、巡航ミサイル、弾道ミサイルにも有効。
  11. 作動には電荷でパルスを連続発生することが必要で、コンデンサで強力なエネルギーを瞬時に発生させる。想定される電流は3百万から5百万アンペアで、10ミリ秒で1,200ボルトを放電するのと同じになる。これで45ポンドの物体を静止状態から時速5,000マイルに百万分の1秒で加速する、とジブは言う。
  12. 超高速発射体は運動エネルギー弾頭が装着し爆薬類は必要がないためコストが下がり、兵站業務も軽減されるとジブは述べた。発射回数は一分間に10発。秒速2,000メートルと現行の通常兵器の速度の3倍に達する。
  13. 巡航ミサイルの迎撃も可能な超高速発射体は艦内に大量に搭載可能だ。ミサイルとお大きな違いは価格で超高速発射体一発は25千ドルになる。
  14. 現在は固定目標、静止目標にGPS技術で発射体を誘導する構想だが、将来においては移動目標の攻撃にも投入可能、とジブ大佐は述べた。■


2015年4月17日金曜日

中国がスプラトリー諸島で滑走路を建設中と衛星画像で判明


中国は力づくで現状変更に向かっているようです。これを止める力はどこにもないのでしょうか。誠に歯がゆいことですが、せめて宇宙から監視の目があることが救いでしょうか。

China's first runway in Spratlys under construction

James Hardy, London and Sean O'Connor, Indianapolis. Additional reporting by Michael Cohen, Manila - IHS Jane's Defence Weekly
15 April 2015
  
Airbus Defence and Space imagery shows changes to Fiery Cross Reef observed between February and March 2015. Noteworthy is the beginning of airfield installation in March, and the relocation of some dredging activity out of the harbour. (© CNES 2015, Distribution Airbus DS / Spot Image / IHS) 1569026
要約
  • エアバス・ディフェンス・アンド・スペース提供の衛星画像で中国がスプラトリー諸島のフィアリークロス礁の埋立地に滑走路建設を開始したと判明
  • 画像からスビ礁でも人工島を建設中で滑走路建設に向かう可能性があるとわかる
中国がスプラトリー諸島で初の滑走路建設を開始しているとIHS Jane’sがエアバス・ディフェンス・アンド・スペース提供の衛星画像(3月撮影)を解析してつきとめた。
3月23日撮影の画像ではフィアリークロス礁の北東部で長さ503メートル幅53メートルの舗装部分が確認できた。フィアリークロス礁は中国が2014年から島変換工事を開始している。舗装など地面整備も始まっている。また400メートルx20メートルのエプロンの舗装も実施している。
Airbus Defence and Space imagery shows runway construction underway at Fiery Cross Reef. (© CNES 2015, Distribution Airbus DS / Spot Image / IHS) 1569027 Airbus Defence and Space imagery shows runway construction underway at Fiery Cross Reef. (© CNES 2015, Distribution Airbus DS / Spot Image / IHS) 1569027

同時に撮影された画像では中国はスビ礁で2番目の滑走路を建設しているようだ。
フィアリークロス礁での島形成工事で3,000メートル滑走路を設置するスペースが生まれている。人民解放軍空軍の中国本土基地と同等の規模となる。
パラセル諸島のウッディー島ではすでに2,300メートル滑走路があったが、改修工事が2014年に始まっていることが衛星画像で確認され、ここでも3,000メートル級の滑走路に拡充するようだ。
フィアリークロス礁を撮影した3月23日画像では島になった南西部で浚渫工事が確認されている。また浮体式クレーン複数で港湾建設をしていることがコンクリートブロックが多数設置されていることでカクンできる。
エアバス画像ではスビ礁で2月6日と3月5日撮影画像で埋立工事の進展がわかった。2月6日画像では3つの島が形成されている。3月5日までに少なくとも浚渫船9隻で陸地部分がサンゴ礁の上に形成されて、つながることで3,000メートル級滑走路が後日建設できるようになる。
フィアリークロス礁はスプラトリー諸島で西側に位置する。スビ礁は北側になり、パグアサ島からわずか25キロしか離れていない。パグアサ島はフィリピンが実効支配中。■

★F-35は最後の有人戦闘機になるとの海軍長官発言から見えるF/A-XXの方向性



海軍のほうが技術を軸に、しっかりと未来を見つめている気がするのは当ブログ運営者だけでしょうか。空軍が主力戦闘機を無人型にするというのは相当勇気がいることなのでしょうか。そのために可能性を自ら閉ざすということはないでしょうか。結果が出なければわからないといえばそれまでですが。

Mabus: F-35 Will Be ‘Last Manned Strike Fighter’ the Navy, Marines ‘Will Ever Buy or Fly’

By: Sam LaGrone
April 15, 2015 1:55 PMUpdated: April 15, 2015 3:56 PM

NATIONAL HARBOR, Md. レイ・メイバス海軍長官がF-35共用打撃戦闘機(JSF)が「海軍省が購入あるいは運航する最後の有人戦闘機になるのはほぼ確実」と発言し、ボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットの後継機種の方向性を暗示した。
  1. 「今後は無人機とくに自律運航型が広い分野で標準機種になる」(メイバス)
  2. またメイバス長官は無人戦闘装備の役割増大に呼応すべく無人システムを専門に取り扱う副次官補ポストを設け、水上戦や航空戦部局と同列の組織をN-99として新設すると発表。
  3. この措置は「無人装備全て、空中、水上、水中および海上陸上で運用する装備全体を調整し優秀な装備を確保するため」と長官は説明した。
  4. 海軍省でN2/N6の情報優越性確保の目的で情報収集・監視・偵察(ISR)機体を活用しているが、水中・水上の無人装備は多数の組織にまたがって運用されている。
  5. 「上位ポスト新設は海軍が無人航空機を重要視している証だが、その技術の進展如何で海軍の将来が影響を受けるので、有効活用が求められている」と下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員会委員長ランディ・フォーブス議員(共・ヴァージニア州)がUSNI News取材に答えている。
  6. 「空母航空隊の将来は無人システムの開発に関係しており、長距離、敵地侵攻型の攻撃ミッションを接近阻止領域拒否の環境で実施できるかにかかっている。新ポストに就任するのが誰であれ、全体的な視野で戦略的観点から海軍の無人機構成を考え全体構想を前に進めてもらいたい」(フォーブス議員)
  7. 現時点で米海軍は武装UAVを保有しておらず、開発中のUCLASS(無人艦載偵察攻撃機)が攻撃能力を有する初のUAVとなる。
  8. また長官の発言で海軍の次期主力戦闘機F/A-XXの開発準備状況にも触れている。.
  9. F/A-XXでは2016年に選択肢決定のための分析作業(AoA)で各種オプションの絞込を行うがその時点では有人・無人機それぞれの性能比較を行うと思われていた。
  10. 海軍作戦部長(CNO)ジョナサン・グリナート大将からは今年はじめにF/A-XXは選択的に有人機になると発言していた。■


2015年4月15日水曜日

★X-47Bの最後のテストは空中給油の実施、そこでお役御免へ

X-47Bが順調にテストをこなしている間にUCLASSのコンセプトが決まらないのは歯がゆいですね。一方、いつの間にかドローンという言葉が一班に使われるようになりましたが、もとをただすとunmannedというコバに抵抗を感じた女性が出発点です。その女性は今週大統領選挙出馬を表明したヒラリーであり、このブログ管理者がどうしても支持したくないタイプの政治家です。

X-47B Drone Set For Refueling Test Tomorrow

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on April 14, 2015 at 4:50 PM

130514-N-FU443-745
NATIONAL HARBOR, MD: 「明日の天気はよさそうだ」とボー・デュアーテ大佐(米海軍で空母運用無人機事業を統括)は言う。慎重に「今のところはね」と付け加えた。
  1. 天候が良ければ米海軍の実験機X-47Bは空中給油を行う。無人機の空中給油は初の試みだ。これまでのテストでX-47Bは飛行中の給油機に30フィートまで接近し、ドローグ(燃料ホース)の背後についたまま飛行している。これまでは高精度GPSで空母着艦含む飛行を制御してきた。明日は新型光学センサーで燃料管をドローグに挿入する。
  2. 空中給油はパイロットにとっても神経をすり減らす仕事だが、アメリカが世界規模で空の優位を維持するためにはどうしても必要だ。無人機で空中給油が可能となれば可能性は増える。有人機の場合は燃料以外に搭乗員の人的限界で制約を受けるからだ。
  3. そこで海軍はX-47B後継機に超人的な耐久性を期待しており、UCLASSは24時間一週間連続の警戒飛行を航空母艦の周囲で行う。ただしUCLASSを巡り内部で苦い論争がまだ続いており、偵察・攻撃のどちらを優先すべきかで結論が出ていない。もともと防空体制の整備された空域に奥深く侵攻する構想だったが、長時間パトロール飛行しつつ、必要に応じ爆弾を投下する設定へと大きく変化している。.
  4. UCLASSは偵察・攻撃ミッションを均等に実施できない。海軍は偵察ミッションを重視し、最低でも飛行時間は14時間としている。国防長官官房(OSD)はこれに疑問を感じ高レベルで戦略性能検討会Strategic Portfolio Review (SPR, improbably pronounced “spear”)を開催し、何ヶ月も意見を戦わせているが問題は一向に解決のめどがついていない。
  5. デュアーテ大佐は海軍連盟主催の会議の席上で報道陣に対し検討作業は「夏のどこか」までに終わるとの見方を報道陣に示した。OSDがUCLASSの要求性能をめぐり議論を進める間に、大佐はUCLASSで求められる性能の実現を図っている。これは共用操作ステーションCommon Control Station と呼ばれ艦上で無人機と空母の間の通信を司る装備を含み、デュアーテは「今年度はCVN-70カール・ヴィンソンとCVN-77ジョージ・ブッシュの二隻を改造し」UCLASS運用の準備をする。
  6. ペンタゴンが戦略レベルでUCLASSの主任務を決めれば、海軍による要求性能に「修正が必要か判断できる」とデュアーテはいい、いよいよ待望の提案要求に移る。「産業界は息を殺して待っている」という。予算案では契約成立を2017年、作戦投入は2023年を想定する。
  7. その時点でX-47Bは確実に博物館入りしているだろう。同機はあくまで実証が目的で空中給油(AAR)に成功すれば十分な働きをしたといえるとデュアーテは言う。また給油テストで予算を使い果たしてしまう。
  8. 「目標項目はすべて達成し、得られた成果はUCLASSの性能諸元に反映させる」とデュアーテは言うが、UCLASSはX-47Bと相当違う機体になるはずで、制御系、降着装置など機構が異なる。そこでX-47Bをこれ以上テストに投入しても次期機種の開発に参考にならないということだ。現会計年度が終わる10月1日に海軍はX-47B2機を処分し、博物館に運ぶかデイビス・モンタン空軍基地(機体廃棄場)に移動させるかだという。そうなると同機は歴史を作る立場から歴史の一部になる。■


日本の安全保障で宇宙空間利用はどこまで進んでいるか



日本の宇宙開発で安全保障への応用で制約がすでに撤廃されていますが、意外に全体像は理解しにくいですね。Defense Newsがうまくまとめてくれましたのでご一読ください。結構安上がりですが期待できそうですね

Japan Begins National Security Space Buildup

By Paul Kallender-Umezu 11:01 a.m. EDT April 12, 2015
TOKYO — 日本の宇宙開発戦略本部が今後10年間の戦略方針となる基本計画を今年1月に固めた。日本が宇宙政策を安全保障戦略に組み込むのは初めて。日米同盟で中国を封じ込めるねらいがある。
  1. 準天頂衛星Quasi-Zenith Satellite System (QZSS)をGPS補完用として整備し、宇宙状況認識space situational awareness (SSA)、海洋状況把握maritime domain awareness (MDA)の開発を重要視している。情報収集衛星 Information Gathering Satellite (IGS)の運用数は二倍にする。またミサイル早期警戒衛星を開発する。
  2. 「QZSS、SSA、MDAが日本の三大重要宇宙事業だ。宇宙配備弾道ミサイル早期警戒衛星も検討していく」と自民党今津寛衆議院議員が述べた。党の宇宙政策委員会の前座長で、現在は政務調査会で安全保障関連をまとめる今津代議士は宇宙での安全保障体制構築を主導。
  3. 平成27年度予算でQZSSは18.5%増の223億円で7機の製作が決まり、IGSには14%増の697億円が計上され、宇宙関連全体では18.5%増の3,245億円がついた。
  4. 今回の基本計画は従来の政策方針とは明白に異なる。中国を全世界の安全保障の撹乱要素とし、2007年に衛星攻撃兵器をテストし、その後もジャミングやレーザー妨害実験を行っていると指摘する。
  5. 安全保障上施策に宇宙を取り入れるのは2013年12月発表の国家安全保障戦略方針で方向が決まっており、安倍首相の提唱する「受身的防衛」から「事前対応型防衛」へ転換していた。
  6. 米国は日本の新方向性を強く支援している。昨年5月にはワシントンで日米の第二回総合宇宙関連政策対話があり、日米は安全保障での宇宙利用で協力を進め、特にSSAとMDAで中国の動向を監視する共通認識を確認。
  7. 「新方針は大きな変化」と語るのはジェイムズ・クレイ・モルツ James Clay Moltz 海軍研究大学院の教授で "Asia's Space Race: National Motivations, Regional Rivalries and International Risks."アジアの宇宙レース:各国の背景と地域内対立関係および国際政治上のリスク」の著者だ。「宇宙での軍事活動実施に向け方策を具体的に展開した初の公文書だ。米国の宇宙政策文書と比較しても詳細に踏み込んでわかりやすくまとめられている」
  8. 特筆すべきは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業内容に安全保障が組み込まれたことだ。JAXAは2012年改正で軍事目的の宇宙開発ができるようになったが、従来は研究開発機関の位置づけだった。
  9. JAXAの軍民両用プロジェクトでは次世代データ中継衛星を情報収集監視偵察(ISR)用途に投入する。防衛省が作成した赤外線ミサイルセンサーをJAXAの偵察衛星に搭載する。重量150キロ級の多用途衛星も開発中で、ミッションに応じ構成を変更する。超低高度試験衛星 Super Low Altitude Test Satellite (SLATS)も開発中で、地上操作で大気圏に突入・離脱が可能で鮮明な画像を撮影できる。
  10. JAXAを共同所管する文部科学省(MEXT)の宇宙開発利用課千原由幸課長は新方針を完全に支援している。「文科省、JAXAと防衛省の協力関係は強固になっています。JAXAと防衛省の科学技術協力合意が好例。高性能光学画像衛星にミサイルセンサーを搭載するのもその例で、協力を強化していきます」
  11. 一方で基本方針は今津代議士の構想から後退している。年間予算を早急に5,000億円規模に引き上げ、安全保障関連の事業を拡充し、IGS衛星数を倍増し、MDAを優先し、宇宙関連事業を国家安全保障会議の直轄にすべきと今津は提唱していた。
  12. 基本計画ではIGS衛星の整備目標数を明記せず、MDAは二年間かけて必要な規模を検討するとしている。ただし米国とはこの事業の推進で合意が形成済みだ。
  13. 変化の影響はSLATSのような公開型開発にも見られる。実現すれば軍事上も有益な技術提案が日本の諸研究機関から出ており、同一軌道で対衛星兵器に転用出来る技術などがあるが、提案側が民生利用の可能性を十分伝えきれず予算がついてこなかった。だが軍民双方に応用できる技術は日本の軍事宇宙利用の中核技術になる、とクリス・ヒューズChris Hughes(英国ウォーウィック大で日本軍事問題の専門家)は指摘。
  14. 「今回の計画改定は宇宙の軍事利用に道を開く。特筆すべきは国家安全保障を宇宙政策の根本に埋め込んだことで、これまでの民生用途限定を否定し、今後は順調に宇宙の軍事利用が進むだろう。目指している性能水準には本当にすごいものがあり、具体化している技術も多い。」■