2018年3月14日水曜日

いせ がカール・ヴィンソン打撃群と南シナ海で共同訓練を開始

USS Carl Vinson in joint training with JS Ise

カール・ヴィンソン打撃群が海上自衛隊のJSいせ(DDH-182)と演習を3月11日開始した。

JS Ise, Haruyuki and Abukuma in the East China Sea after Keen Sword 2013, -16 Nov. 2012 c

By Denver Applehans, U.S. Navy [Public domain], via Wikimedia Commons



Story Number: NNS180312-14Release Date: 3/12/2018 1:43:00 PM

By Lt. j.g. Danielle Moser, Carl Vinson Strike Group Public Affairs
SOUTH CHINA SEA (NNS) -- カール・ヴィンソン空母打撃群は日本の海上自衛隊(JMSDF)との共同演習を3月11日に西太平洋で開始した。
USSカール・ヴィンソン(CVN-70)、駆逐艦USSウェイン・E・メイヤー(DDG-108)はJSいせ(DDH-182)と日米共同作戦演習を開始した。
「強固な海上の協力関係で安全、安定、繁栄が維持されており、インド太平洋地区は70年にわたりこれを享受してきた」と打撃群司令ジョン・フラー少将は述べる。「密接な海上作戦のパートナーとともに地域協力が促進される」
演習ではJMSDFの連絡士官がカール・ヴィンソンに乗艦し共同作戦を進めている。演習では隊列航行や対潜戦、対空戦の訓練もあり、いせは洋上でカール・ヴィンソンからの物資補給訓練も行う。
いせは全長646フィート、排水量18千トンでSH-60K/Jヘリコプター3機を搭載する。主任務は対潜戦、機雷戦、補給支援ならびに捜索救難だ。
カール・ヴィンソン打撃群には第二空母航空団の70機に含め駆逐艦戦隊1と誘導ミサイル駆逐艦USSマイケル・マーフィ(DDG-112)が加わっている。
マイケル・マーフィは先にフランスのフリゲート艦FNSヴァンデミエールと南シナ海で1月2月に演習を行い、通信と操艦の腕を磨いていた。
打撃群は3月9日にヴィエトナムへ米空母として40年間で初の寄港をしていた。

より詳しくは以下参照されたい。 www.navy.mil, www.facebook.com/usnavy, またはwww.twitter.com/usnavy.


USSカール・ヴィンソンについては以下を参照されたい。www.navy.mil/local/CVN70/.

対北朝鮮への警戒姿勢を示す韓国軍がバンカーバスターミサイルを追加発注

朝鮮半島の事態の変化に世界が振り回されている観がありますが、韓国の独立と安全に責任を有する軍部はどう見ているのでしょうか。警戒態勢は維持しているはずですが、政治の方向性が誤っていると判断すればクーデターに動かないでしょうか。あたかも平和が約束されたと浮かれる世間からすればこうしたニュースは歓迎されないでしょうから、おそらくこのニュースは韓国国内では黙殺されているはずです。軍が「国民感情」に忖度するようなことでいいのでしょうかね。


South Korea quietly orders 90 more Taurus bunker-busting missiles韓国がこっそりとバンカーバスターミサイル「トーラス」を90発追加発注

By: Jeff Jeong    

トーラスミサイルは北朝鮮の地下施設攻撃能力があり、金正恩の秘密退避壕も正確に狙えるといわれる。(South Korea Defense Ministry via AP)

SEOUL, South Korea — 韓国の国防調達部門がトーラス長距離空中発射地下施設攻撃ミサイルを90発追加発注した。
国防調達事業庁DAPAは契約情報を開示しておらず、北朝鮮との対話ムードに水を差さないよう配慮しているのは明らかだ。
南北会談とともに米大統領ドナルド・トランプと北朝鮮指導者金正恩の首脳会談に向けた準備により低下している。
ミサイルのメーカーのドイツ企業トーラスシステムズGmbHの契約は2月末に締結されたとDAPA報道官Kang Hwan-seokが述べている。
今回のミサイル発注は2013年に続くものでDAPAはトーラスミサイル170発を発注しF-15K戦闘機搭載を進めていた。ミサイルは一発1.8百万ドル。
A Taurus long-range air-to-surface missile is fired from a South Korean Air Force F-15K fighter jet during an exercise on Sept. 12, 2017, in Taean-gun, South Korea. (South Korean Defense Ministry via Getty Images)トーラス長距離空対地ミサイルが韓国空軍のF-15K戦闘機から試射された Sept. 12, 2017, in Taean-gun, South Korea. (South Korean Defense Ministry via Getty Images)
同ミサイルは韓国が実現をめざす「キルチェーン」先制攻撃装備の中核となり、北朝鮮の核兵器ミサイルによる脅威に対抗する。
同ミサイルの射程は550キロで北朝鮮の地下施設の破壊能力があるといわれ、金正恩の秘密退避場所も含めピンポイントで狙える。
昨年9月に韓国空軍はトーラスの実弾発射試験を初めて実施し、9月3日の北朝鮮核実験に対抗した。演習ではF-15Kから発射したトーラスは400キロ飛翔し群山沖合の標的に命中した。
韓国空軍は国産FA-50軽攻撃機にトーラス350K2(短距離型)の搭載を目指している。韓国はFA-50を60機運用している。350K2は約300キロ軽量化され射程は300キロ。
昨年12月はFA-50近代化のフィージビリティスタデイを開始した。構想では兵装のアップグレード、空中給油機能の追加、エンジン改良が含まれる。■

Email: jeff@defensenews.com

日本はどこまでASEANからの防衛装備提供要請に答えられるか


なかなか思ったように新規防衛装備品の海外販売が進展しない中で、こうした地道が努力がいつか結果を生むかもしれませんし、気前の良い日本のお財布だけが尊重されることになるかもしれません。国有財産処分の実施解釈が変わったことでTC-90も当初の「リース」が供与に変わりましたが、関係者が相当苦労されたのでしょうね。当方も似たような仕事をして戒能で想像に難くありません。


Japan mulls over requests for defence equipment from Southeast Asia 日本が東南アジア向け防衛装備提供の要請を熟考中

Ridzwan Rahmat, Tokyo - IHS Jane's Defence Weekly
09 March 2018
マレーシア向けにP-3Cを供与するとの報道は日本政府が認めていない。 Source: JMSDF

ポイント

  • 日本は東南アジア複数政府からの防衛装備供与の要請を検討中
  • ただし海外政府向け援助より日本での運用を優先したいと自衛隊幹部がJane'sに語った


上自衛隊 (JMSDF) は東南アジア複数政府よりの要請で余剰装備供与を検討中。
防衛装備品と別にASEAN東南アジア諸国連合加盟国から技術知識の提供でも要請を受けており、今後の二国間防衛協力拡大の話もある。
JMSDF教育隊が運用していたキングエアTC-90を5機フィリピン政府に供与し、日本は東南アジア各国の海洋哨戒能力整備に協力している。
TC-902機がフィリピン海軍に引き渡し済みで残る3機も2018年中に移管される。JMSDFは同機運用の訓練もフィリピン海軍要員向けに提供中。
東南アジア各国との防衛関係強化をめざし、日本政府は海洋哨戒能力整備に力を入れており、その筆頭がフィリピンだ。

TC-90以外に日本政府はフィリピン沿岸警備隊 (PCG)用に多用途対応艇10隻をジャパンマリタイムユナイテッド造船で建造させている。PCGは7隻受領しており残りも2018年中に引き渡される。■

2018年3月13日火曜日

米海軍で相次ぐUFO目撃事例、だが解明を阻む要素とはなにか


空を飛ぶパイロットの間ではUFO遭遇は結構多いといわれますが、白眼視されることを恐れわざわざ報告することは少ないようです。今回も米海軍の事例が突出してますが米空軍はどうなのでしょう。もっと飛行頻度が高いのは民間定期便なのですがこちらはどうでしょうか。「常識」では理解できない現象を目の前にして試されますね。皆さんはどう思いますか。

The Navy keeps encountering mysterious UFOs — and no one can figure out what they are 

米海軍で相次ぐUFO遭遇、だが誰も解明できないのはなぜか

US Navy UFO
Stars Academy of Arts & Scienceが公開した映像のスクリーンショットでは米海軍ジェット戦闘機が追尾したUFOがはっきりと見える。To The Stars Academy of Arts & Science/YouTube
  • 米海軍他でUFO遭遇報告が数十年続いている
  • 軍はUFO事例の解明に真剣に対応していない
  • UFOを地球外のものと信じると芳しくない評判がつくためだ



「この世のものと思えなかった」と米海軍退役パイロットのデイヴィッド・フレイヴァー中佐がABC Newsの2017年12月取材で述べた。
「自分は頭がおかしいわけでもないし、酔っ払ってもいなかった。あれは、飛行歴18年で見たどれとも違っていた」
フレイヴァーが話していたのは2004年11月14日にカリフォーニア沖訓練飛行中に遭遇した未確認飛行物体のことで通常は不可能な飛行をしていたという。「左右前後さらにでたらめに」とフレイヴァーは述べ、突如加速して姿を消したという。
「今まで見たことのない物体で、見たことがない加速で、確か翼は付いていなかった」という。
その際の映像を他の類似例とともに昨年12月にニューヨークタイムズが記事にした。二つ目の映像では米海軍パイロットが多数のUFOのうち一機を追跡しているがどこにも推進手段が見当たらない。
Why most scientists don't care about these incredible UFO videosDepartment of Defense
追尾中にパイロットがUFOの速度と進行方向を述べている。「風上に向かっている。風速は西120ノット」
まもなくパイロットにショッキングな展開となった。UFOが姿勢を変化し、片方に旋回しながら同じスピードと進路を維持していた。「回転している」と他のパイロットが指摘した。
別の映像が先週金曜日に民間研究団体To The Stars Academy of Arts & Scienceによりネットで公開されており、やはり米海軍F/A-18がUFOに接近して、搭乗員二人が興奮のあまり声を上げながら混乱する様子を示している。「わーすごい」「なんだこれは」
こうした映像は米海軍によるUFO遭遇事件の記録の一例に過ぎない。国防総省が情報開示しこの度公開したものだ。
上記研究団体TTSAはDoD公開の映像にそれぞれ詳しい解説を加えてネット投稿している。
DoDは謎の飛行物体の正体を解明しておらず、一部には地球外の技術を使った宇宙からの訪問者の乗り物と見る向きがある。.
DoDは2007年以降発生のUFO事件の調査解明を始めたが2012年をもって予算を付けなくなった。ニューヨークタイムズ記事では国防・情報関係者が調査継続中とあるが、実質的に何も解明できず結論が出ていない。

UFO研究にともなう悪評とは

UFOが地球外生命体が地球に来訪したと信じると悪い評判がつき上司は関心を示さず正体解明は進まないといわれる。
「安全保障分野で『宇宙人野郎』と呼ばれたいと思う人はいませんね」とTTSA顧問を務めるクリストファー・メロンChristopher Mellonは言う。本人はクリントンージョージ・W・ブッシュ両政権で国防次官補(情報分野)を務めた。「この件で騒いで笑いものにされたりのけ者にされたくないとみんな思っています。指揮命令系統全体で同じ傾向で、解明の妨げが繰り返されています」
そのため軍では内部からUFO目撃報告が出ても何も対応していないという。
「ペンタゴンで各軍情報の統合作業はありません。陸軍が海軍の援助なしで潜水艦を自分で探すようなものです」「この問題で情報収集と解析を真剣に行う必要があるとの認識が不足しています
メロンはもっと真剣にこの問題に取り組み各方面の力を結集して「国家安全保障の官僚組織」を切り込み一連の事案の現実的な説明を模索することを指摘しており、地球外生命そのものを虚構の世界と切り捨てるべきではないとする。
NASAに協力する富豪ロバート・ビグローRobert Bigelowも同様に宇宙人の存在とUFOの地球来訪をと信じている。
「世界を見回すとこの問題では我が国が一番遅れている。科学者は排斥を恐れ、メディアは風評を気にしている」とニューヨークタイムズに述べている。

中国、ロシア、その他ヨーロッパ諸国の方が米国よりもこの問題を真剣に扱っているとビグローはいう。「各国は積極的にこの問題を検討しており遠慮はありません。子供のたわごとと一蹴されていません」■

★21世紀に必要なのは戦艦だ...といっても大鑑巨砲主義ではなく中国の攻撃を跳ね返す新発想の戦闘艦です

記事でいう戦艦とはノスタルジックな大型戦艦ではなく、中国の猛攻撃に耐えられる十分な装甲を持つ水上艦で、著者の主張は最前線に投入すべきる全損製高い艦として、巨艦である必要はないでしょう。ズムワルト級の理論的延長かも知れません。それだけ中国の軍事力を評価していることであり、主敵を中国に想定していることがよくわかります。ところでBattleship を戦艦と訳すのであればBattle plane (小型戦闘機では不可能な攻撃能力、フルステルス性能を盛り込んだ大型機構想)は戦機?悩むところです。



 

The Case for a 21st-Century Battleship 21世紀型戦艦を想定する





March 8, 2018


第二次大戦中の日本の超大型戦艦大和と武蔵はともに海軍史上最大の18.1インチ主砲9門を搭載したもののアメリカ海軍戦艦を一隻も沈めていない。海戦の勝敗は航空戦力が決定し、大和・武蔵は旗艦でありながら輸送任務にも投入された。これだけ重武装をしながら両艦は過去の歴史をひきづったいわば鋼鉄の恐竜になってしまったのだ。
だが鋼鉄の恐竜をどうやって沈めたのか。容易ではなかった。大和には魚雷11本爆弾6発を命中させた。武蔵は魚雷19本爆弾17発が必要だった。しかも沈没時点で両艦は先に受けた損害を応急措置していた。戦略的には無用の存在だったが、大和・武蔵は不沈艦に近かった。
海軍艦艇建造には長期の事前準備が必要なため計画部門は直近戦役のイメージから自由になれないリスクがある。第二次大戦後の米海軍は空母中心の体制になった。だが世界規模の戦役は発生せず別の形のミッションが多数発生中だ。中国の台頭に対抗して頻度が増えているのがFONOPsすなわち航行の自由作戦だがここで戦闘は全く必要ない。
ここ数年にわたり中国の法的根拠のない南シナ海領有の主張の声は大きくなるばかりである。対抗して米国は定期的にFONOPsを実施し駆逐艦を中国が作った人工島から12カイリ以内を航行させ、北京の主権主張に挑戦している。今のところ中国は作戦の妨害などは示していない。
だが駆逐艦は脆弱だ。昨年6月のUSSフィッツジェラルド事故ではコンテ貨物船と衝突し駆逐艦乗員7名が犠牲となり作戦行動できなくなった。8月にはUSSジョン・S・マケインが原油タンカーと衝突し沈没寸前となり10名が犠牲となったがタンカーに人的損害はない。操艦のまずさは別としても衝突事故二件から今日の海軍艦艇の欠点である残存性の低さが浮かび上がる。原油タンカーに海軍艦艇は脅威であったのであり、逆ではない。
米海軍には空母打撃群による攻撃力が必要だし、打撃群には装甲が薄っぺらい誘導ミサイル駆逐艦がある。だが敵攻撃を受けても航行可能な艦が必要だ。強靭なら中国が精密攻撃能力を開発する中で重要な性能になる。南シナ海の航行は装甲がない艦船では危険になりそうだ。
攻撃を避ける意味でステルスは一つの解決策で米海軍はステルス駆逐艦の開発で先端を走る。しかしステルスではFONOPの目的に合わない。視認されることに意味があるのだ。昔ながらの戦艦なら視認されることを前提にしている。だが21世紀にわざわざ昔通りの戦艦を建造する必要はない。新発想の戦艦をかわりに作ればよい。
現代版戦艦は高性能装甲素材に自動損傷復旧機能を付け事実上不沈艦となる。攻撃兵装はミッション別に想定するがカギは残存性だ。危険戦域に派遣しても何とか帰港できる艦となるだろう。
この「未来の戦艦」があれば接近阻止領域拒否 (A2/AD) で米国を西太平洋から追い出す中国戦略へ対抗策になる。中国は陸上、洋上、海中、宇宙に配備したセンサー多数を接続し第一列島線の日本、沖縄、台湾、フィリピンを通過する存在すべての探知を中国本土からめざしているが、精密攻撃兵器体系の能力向上もあり探知標的をすべて攻撃する能力が実現しそうだ。
米国の対応はエアシーバトル、JAM-GC、第三相殺の各構想と変化してきた。共通するのは最良の防衛は有効な攻撃力と見ることで、中国のA2/AD攻撃から防御するのではなく、米国がまず指揮統制系統を破壊しセンサーと精密誘導兵器の連携を切断する。問題はこれだと全面戦争にエスカレートすることだ。
ここに将来型戦艦の活躍の余地があり、限定戦で米国に選択肢が生まれる。たとえば中国の海中センサーを無力にしたり海底ケーブルを切断することで中国の挑発行為に対抗する。中国や北朝鮮が多用する体当たり戦術だでもこの艦なら耐えられる。またA2/ADが撃ち合い戦に拡大しても同艦なら危険地帯で作戦を遂行しながら米攻撃部隊が戦局を好転するまで踏みとどまれる。
米海軍が往時の大艦巨砲主義に復帰することは決してないが、艦艇の装甲性能を再検討すべき時に来ている。最前線での攻勢作戦には敵攻撃を受けても平気なラインズマンが少数でも必要だ。将来型戦艦により米海軍並びにその延長で大統領に敵の完全殲滅以外の軍事オプションが生まれる。通常のFONOPsでこのオプションの必要性が痛感されている。A2/AD脅威によりさらに危険なミッションが生まれそうな中、任務達成できそうなのは頑健な将来型戦艦しかない。■
Salvatore Babones is an associate professor of Sociology and Social Policy at the University of Sydney.
Image: Wikimedia Commons

2018年3月12日月曜日

あなたの知らない戦史シリーズ②米軍機撃墜で米朝あわや開戦寸前へ(1969年)

あなたの知らない戦史シリーズが意外に公表なのでさっそく第二弾です。厳密には相互に撃ち合っていないのですが、北朝鮮の横暴な攻撃に力で対決したという事例ですね。この事案はリアルタイムで見ていた方もいるのでは。この当時の北朝鮮にはミサイルも核兵器もなかったのですが、今日同じ状況になればどんな対応が可能でしょうか。在韓米軍にも核兵器は今ありませんね。National Interest記事の紹介です。しかしスーパーコンステレーションは格好いいですね。

 

In 1969, North Korea Almost Started a War with America 1969年、北朝鮮は米国と戦闘一歩手前まで踏み込んだ

 


March 11, 2018



1969年4月15日は米国にとって戦後アジアで最も危険な日になった。米軍偵察機が北朝鮮沖合で撃墜され搭乗員31名全員が死亡したた。議会から毅然たる行動を求められたリチャード・M・ニクソン大統領は報復しない決定を下し、第二次朝鮮戦争を回避した。実際には行使しなかったが、ニクソンには軍事オプションが各種あり、選択の幅は広かった。

4月15日午前のこと、E-3セントリーAWACSの前身というべき米海軍WV-2(EC-121M「ウォーニングスター」の海軍版)が厚木基地を離陸し北朝鮮沿岸を目指した。同機のコールサインは「ディープシー129」で日本海上空を楕円状に飛び北朝鮮の通信情報を後日の分析用に収集した。北朝鮮軍は韓国や米軍に越境攻撃をしばしば仕掛けており、米軍は北朝鮮が奇襲攻撃を仕掛ける兆候を先に把握しておく必要があった。

任務について5時間半後に在韓米軍レーダーが北朝鮮人民空軍MiG-17「フレスコ」戦闘機二機が基地を離陸するのをとらえ、レーダーはディープシー129を迎撃する進路にとると判明した。同機には31名の海軍・海兵隊要員が搭乗し、間もなくレーダーから消失した。ソ連と米艦船が向かい捜索救難活動を展開し遺体二名分と機体の破片を発見した。

米議会の反応は激烈だった。「アメリカの答えはひとえに報復、報復、報復だ」と下院軍事委員会のL・メンデル・リヴァース委員長は述べ、「必要な核兵器も使わせろ。あいつらに答えを教えるべき時がきた」と述べた。強硬な軍事対応策は被害規模で多岐にわたりペンタゴンから大統領と国家安全保障会議に提出された。

その一つが北朝鮮国内の航空基地攻撃で目標は「平壌の軍事姿勢」を崩し「北朝鮮指導部に米軍機撃墜の罰を与える」ことだった。空母四隻(エンタープライズ、キティホーク、レインジャー、ホーネット)が待機し、48時間から72時間で攻撃に入り、加えて沖縄から戦術機を発進させ、日本本土、韓国、グアムからも出撃させる。空爆案がいずれも元山航空基地を標的にしたのはディープシー129を撃墜した戦闘機が同基地発進だったからだ。

別の報復措置は暗号名フラクチャードパインで米海軍巡洋艦からタロス対空ミサイルを発射する案だった。巡洋艦二隻を北朝鮮元山およびソドンニの各空軍基地付近まで前進させ両基地を離陸する機体をすべて撃墜する。タロスは北ベトナムでも投入され6発発射して二機撃墜していた。巡洋艦に駆逐艦掩護をつけ夜間のうちに接近し早暁から離陸機を打ち落とす構想だった。この案は低リスクながら北朝鮮が予想外の報復措置に踏み切ると作戦立案部門はみていた。

驚愕させられる案がB-52で北朝鮮軍事施設を報復爆撃するものだった。12機から24機のB-52をグアムから飛ばし低度夜間ミッションで北朝鮮を爆撃させる。各機が爆弾108発を搭載し、おそらく500ポンドのMk 82通常大爆発力爆弾だっただろう。沖縄から飛ぶ給油機が燃料補給する。作戦案ではB-52がソ連国境付近まで進出すると「逆効果」が生まれると指摘していた。

またEC-121危機で米軍の核兵器が警戒態勢に入っていた証拠がある。USSプエブロ事件で米軍は核緊急対応構想をフリーダムドロップの暗号名でまとめ戦術核兵器を北朝鮮相手に使おうとした。標準統合作戦手続き(SIOP)としてF-4DファントムIIにB61を搭載し群山米空軍基地から発進させる。さらにF-4D四機が24時間警戒で北朝鮮その他標的への核攻撃拡大に備えていた。

最終的にニクソン政権は報復案を却下したが同政権がハト派だったわけではない。その時の苦悩を国家安全保障会議がまとめている。「米国行動が大きくなればそれだけ北朝鮮が取る対応とエスカレーションのリスクが増える」とある。時あたかも冷戦真っただ中でヴィエトナム戦争も続いており、米国にアジアで別の戦争を始める余裕はなかった。

かわりにニクソンは米軍の偵察飛行を掩護付きで続行させ撃墜されないようにした。米国の決意のほどを示しながら情報収集活動を継続した。危機状態のエスカレーションを防ぐ効果も生れた。31名の米国人の生命が不当に奪われた事例に対するニクソンの反応は危機対応とエスカレーション防止のモデルとなったのである。■

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.

Image: Wikipedia Commons.

2040年目標で新ISR機開発を始めた米空軍(2040年目標でいいのでしょうか)はJSTARSの更新も狙う

将来の戦闘統制監視機はどうあるべきか。これまではA2ADなど無防備な支援機材はことごとく無力なので戦闘最前線には投入できないと見られてきましたが、米空軍は考え方を少し変えてきたようです。ただしそれでも中国ロシアが米国と同様の実力を有する国相手では不安が残るので無人機との組み合わせが安全なようですが。技術の進歩のペースが速く、JSTARSやAWACSと言えば大型機なのですが次期機材は小型化も可能になりそうです。任務ごとに機種を整備するのではなく、共用化コンポーネント化も進むでしょうね。派手な戦闘機だけではなくこうしたISR機材にも注目したいものです。


Air Force Launches New ISR Program for 20402040年目標で新型ISR機能開発を打ち出した米空軍



By Kris Osborn - Managing Editor - Warrior Maven

空軍が新規ISR機整備計画の検討に入った。
地上、空中、宇宙を次世代の監視偵察および指揮統制技術で単一シームレスネットワーク化の実現をめざしている。
この技術は高度戦闘統制監視技術Advanced Battle Management and Surveillance (ABMS)と呼ばれ2040年代の実現を目指す。その概要が空軍の2019年度予算書で紹介されている。
「予算案は戦場指揮統制のマルチドメイン環境下での実施方法を一変させる提案だ」と空軍関係者がWarrior Mavenに語っている。
提案では各種技術革新を短期長期で取り入れる構想で空軍内部で相当議論されているJSTARS共用監視目標攻撃レーダーシステム機の後継機の実現に向かう。大型かつ「ステルス性劣る」有人JSTARSが今後の高度脅威空域でも有効性を維持できるのかがポイントとなる。
ABMSが目指すのは最新ISR技術で既存並びに今後登場する装備に大きな能力向上を実現することで、衛星、無人機、地上センサー、有人監視機材をシームレスかつリアルタイムで結び、変化しつつ範囲が広がる作戦を対象にする。空軍はABMSは機材ベースというより「システム」だという。将来の脅威想定では電子攻撃、サイバー侵入やGPSの「妨害」を行う兵器が広く投入されるため、この技術に大きな意味が生まれる。
長期的に見ればABMS装備とISR技術の高度化で機材を集約できる期待が生れると空軍関係者がWarrior Mavenに語った。
JSTARSのメーカー、ノースロップ・グラマンはこの技術に以前から重点的投資を行っている。
「ノースロップ・グラマンは30年前から高度戦闘統制監視技術分野に研究資金を相当投入しています。USAFの要求内容にかかわらず、当社は各種技術で現在・将来の戦場での意思決定の優越性維持をはかります」とブライアン・リマ(同社有人C2/ISR IPT事業部長)がWarrior Mavenに語っている。
長期的取り組みと別に空軍は短期の「つなぎ」または「暫定的」解決方法としてE-3空中早期警戒指揮統制機の近代化や現行JSTARSの改修を2020年代にかけ行う。
「E-3の7機および現行のE-8CJSTARSを2020年代中頃まで供用させる提案をしており、並行して高性能戦闘状況管理システム装備への移行を目指す」と空軍関係者が述べている。

空軍開発部門は高性能通信ネットワーク機能とセンサー性能を統合してE-3Gに搭載し「2040年代初頭のABMS投入前での作戦遂行上のリスクを緩和する」とWarrior Mavenに紹介があった。
JSTARSのミッション
空軍の有人共用監視標的攻撃レーダーシステム機では高性能技術を導入し戦闘関連情報の収集、共有を実現し、ISR情報を戦闘司令部に提供する。
1990年代初頭の湾岸戦争で初めて戦闘任務に投入されたJSTARSは以後の戦闘作戦で不可欠な存在となり、地理条件を広くカバーし対応が必要な情報収集対象や敵の活動を監視してきた。
JSTARSはデジタルマップ画像を作成・共有でき、敵勢力を追尾し敵活動を把握することに一番大きな意義がある。得られた情報を各種データリンクを介して地上指令所に送信し、付近を飛行中の無人機の作戦に接続し統合する機能がある。
現行のノースロップE-8Cは対象地区で無人機と連携し「ソーダストロー」型センサーで地上の様子を把握する。敵の車列や地上部隊の動きを探知し兵力の集積状態を把握して、詳細なISR活動対象を個別詳細に選択できる。
JSTARSは戦域航空管制システムを空に拡大する重要な機能で地上移動標的指示器のデータをISR機材に提供するのが大きな役目だ。
その地上移動標的指示器GMTIがJSTARS搭載の技術でもう一つの重要要素でその目的は地上の敵の動きを把握することにある。
空軍関係者はJSTARS後継機をめぐる各社の競合と並行してABMSが中心になっていくと見ている。そこでこの構想からまだくすぶっている疑問への道しるべがわかる。すなわち空軍は今後実現すると思われる高度技術を駆使した脅威環境でも十分機能できる機材に置き換えるのか、それとも現行機材を使いまわすのか。
空軍開発部門はJSTARS後継機は民生機材を母体に急速な技術進歩に対応できライフサイクルコストも低減できると強調している。
JSTARSでは合成開口レーダーを使い電磁「ピン」音を地上に向け発射し帰ってくる信号を分析して下界の様子を画像化する。電子信号は光速発信されるため移動時間を考慮したアルゴリズムで移動物の距離、大きさ、形状、移動状態を探知し特に敵兵力の把握に役だつ。
JSTARSは9/11事件以降130千時間にわたり戦闘ミッションに投入され、アフガニスタン等で作戦支援にあたっている。
冷戦時はソ連戦車部隊の移動状況をヨーロッパ東部で行う目的で構想されたJSTARSだが北朝鮮近辺、イラク、アフガニスタンで効果を実証している。また海上交通の監視にも太平洋他で効果を実証しておりを高性能陸上海上モード切替レーダーで海上交通の監視ISRの実情にも答えた。

強力な脅威に空軍はどう対応するつもりなのか
空軍関係者は今後想定される脅威の内容を詳しく述べなかったが、今よりも厳しい空域に監視偵察機を投入する必要を認識しているのは確かだ。そのような環境では現行JSTARSのような大型機は容易に探知され敵の高性能装備の前に無力になる。
このためJSTARSは米国が航空優勢を維持できたアフガニスタンのような低脅威環境で最大限の機能を発揮するが、機体外寸、仕様、レーダー特性が敵防空網の前に弱体化する。​
同時にこの機体は戦闘シナリオでは他に比類のない貢献で知られている。また機体防御技術、対抗措置、電子戦やセンサー技術の進歩がありJSTARSも敵の高度防空体制でも運用可能になる見込みが出てきた。同機は戦場上空を無防備で飛ぶ想定ではないが、同機のミッション範囲を広げつつ厳しい空域で運用させるには何が必要か。
高度の電磁戦環境の脅威に対応する能力がJSTARSのような大型センサー機材の決定で大きな要素になりそうだ。こうした技術の詳細は当然ながら不明のままだがJSTARSにEW対抗手段あるいは電子的な「指紋」を最小限にする装備を搭載することが互角の戦力を有する国相手の交戦シナリオで前提となる。
高性能対抗措置や機体防御策が出現する可能性もあり、近辺を飛ぶ無人機を防御にあてる等の手段でJSTARTが高度戦力を有する敵を前に実力を発揮しそうだ。
今後投入する現行JSTARSの改修機材では高度戦力を有する敵の前でも任務を成功裏に行うために配慮も必要だ。攻撃機やステルス爆撃機で敵防空網を撃破してからJSTARSを高度脅威空域に投入させ最大限の効力を発揮させる。電子ジャミング機のEA-18グラウラーはハイテク次世代ジャマーを搭載し、敵レーダー位置を割り出し妨害を与えることが可能だ。また半自律運用型の無人機をJSTARSから運用して敵防空網の実効性を試させ接近させながら母機は安全な距離を保つことも考えられる。
今後登場する機材では当の実力を有する敵国相手にもっと効率よくこうした任務を実施する可能性がある。新しいEW技術・センサー技術の進展には目を見張るものがあり、小型機材で防御力を高くした機体がより長距離で広い範囲でレーダー探知されにくく活躍する事態が想定される。コンピューター処理の高速化で新型小型機でも戦闘関連情報をリアルタイムで収集、分類、分析、共有できるようになりそうだ。
E-8C JSTARS機内で搭乗員が戦闘機、爆撃機に情報を配信する演習を朝鮮半島で昨年7月29日に行った。(U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Rey Ramon)

指揮統制技術の変化は早く米空軍は現在は旧型機材のJSARSで行っている監視機能、指揮統制機能を今後登場する新技術で継続実施し強化させるとする。
今後登場する無人機での偵察機能で戦闘区域を広く状況把握できるようになるのか。ステルス機に高性能センサー技術を組み合わせれば広域で指揮統制ミッションを現行のJSTARS同様に行えるようになるだろう。新型JSTARSが他装備と同時に高リスク環境でのミッションを支援するようになるだろう。こうした分野横断型の接続がABMSのめざす方向性の核心部分のようだ。
現行JSTARSは四発のボーイング707が原型で、米空軍にはJSTARSが16機在籍しているが、うち11機が投入可能に維持されている。JSTARは指揮統制とISRを同時に行える唯一の機体だ。

現行JSTARSには最大21名が搭乗しており、航法士、戦闘システム操作員、情報士官、技術員、戦闘管理員と役割分担している。ただし、技術進歩でもっと少ない搭乗員で現在以上の効果を上げることが可能となり、ハードウェアも縮小化できるはずだ。高性能コンピュータの処理速度や部品の小型化で以前の技術と比べてより多くのミッションをより少ないハードウェアで実行可能になっている。■