2020年11月28日土曜日

イラン核開発のトップ科学者を路上で暗殺。イスラエル、米国の狙いは何か。背景にイラン核開発が依然停止していない事情がある。

 



VIA TWITTER

 


イラン核開発の中心人物がテヘラン近郊で暗殺された。

 

セン・ファクリザデMohsen Fakhrizadehはイランのトップ核科学者で「イラク核兵器の父」とまで呼ばれていたが、2020年11月27日暗殺され、乗用車で移動中のファクリザデをイスラエル情報機関モサドが襲撃したとのニュースが出ている。この記事の前にトランプ政権が次期大統領ジョー・バイデンの就任前にイラン核施設攻撃を検討しているとの報道があった。バイデン陣営はイラン核開発をめぐる国際体制へ復帰すると表明している。

 

襲撃場所はテヘランから50マイル東のアブサードAbsard市内で、発砲後に爆発音が聞こえたとの目撃談をてイラン革命防衛隊(IRGC)とつながる準国営ファルス通信が伝えている。

 

ソーシャルメディアには黒色の日産車の画像映像が流布しており、ファクリザデが乗っていた車両のようだ。銃弾が命中しており、地面には血だまりが見える。その他写真でも爆発の影響を受けた別の車両が視認され、当初の目撃談と合致しており、襲撃犯はまず日産車を無理やり停車させてから射撃したようだ。爆発に使われた車両に特殊爆薬が仕掛けられていたのか、別の爆発装置が道路わきにあったのかは不明だ。

 

ファルス通信は襲撃で死亡者は三名ないし四名と伝えいており、襲撃犯にも死亡者がいたとするうが、身元や死亡者数の確定は困難だ。当初報道でァクリザデ本人は襲撃後も生存とあったのはこの混乱の反映だ。イラン当局は死亡を確認した。今のところ犯行声明を出した集団はない。

 

米イスラエル両国の情報機関はファクリザデをイラン核開発のトップ人物ととらえ、1989年に始まったアーマッドプロジェクトと呼ばれる核兵器開発は2003年より公式に一時中止されたという。

 

ファクリザデ自身もIRGC幹部であり、イランが平和目的と自称する民生分野への応用にあたってきた。米イスラエル両国政府はこうした活動は核兵器開発継続の隠れ蓑と断定している。

 

ファクリザデは国防技術革新研究機関のトップを務めているといわれ、SPNDと呼ばれる同機関は米国の制裁措置対象になっている。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は2018年にイスラエル情報工作員がイランから押収した大量の核関連資料を公表した際に本人を核開発責任者として名指していた。

 

国際原子力エナジー機関(IAEA)はネタニヤフ記者会見はイランが核兵器開発をその後も継続していた証拠にならないと断定。

 

イラン政府はIAEAによる核施設立ち入りを拒否しており、そのひとつがパルチンParchinで国連査察は2015年以来実現していない。査察時にウラニウム粒子がみつりIAEAは重要な証拠ではないとしたがバラク・オバマ政権は同地で原爆開発が継続していた証拠と断定したといわ。パルチンでの研究開発がいつ始まっていたかは不明だ。

 

ニューヨークタイムズ記事はイスラエル情報機関モサドがファクリザデ襲撃の実行犯と断定した。2010年から2012年にかけイラン核科学者を相次いで暗殺した事件でもモサドがとりざたされていた。2007年にも別の核科学者をモサドが暗殺していた可能性がある。イランは2015年の暗殺は未遂にできたと主張しているが標的人物は明らかにしていない。米イスラエル共同作戦のスタクスネットコンピュータウィルスでイラン核開発が大きく停滞したのは2010年のことだった。

 

またアルカイダ幹部アブ・ムハマド・アルマサリAbu Muhammad Al Masriがイラン国内で8月に暗殺された事案でもモサドが関与していた。アルマサリはケニア、タンザニアの米大使館襲撃事件(1998年)の立案に関与した嫌疑があり、イラン政府の保護でイラン国内に潜伏していたが、実は軟禁状態でイランは国際テロ組織へ影響力を行使していた。

 

イラン各地で今年初めから謎の爆発発表事件が連続発生しており、ナタンツNatanzでは濃縮ウラニウム遠心分離機施設が爆破された。こうした事件はイスラエル工作員の仕業との報道が出ており、背後に米情報機関の支援を疑っていた。

 

イランは中東の代理勢力とともに暗殺や襲撃事件の標的となっており、多くでイスラエルの関与がとりざたされている。中でも米無人機によるカセム・ソレイマニIRGCクッズ部隊司令の暗殺事例が著名だ。クッズ部隊はイラン国外の活動の中心組織で本人は1月にバグダッド国際空港付近で標的になった。

 

ファクリザデ暗殺でイランは最も経験豊かな専門家を失ったものの核兵器開発が止まるわけではない。ただし、イランでは最上位の核関連専門家でさえ安全でいられないとメッセージを突き付けられた。

 

またファクリザデ暗殺でバイデン政権によるイランとの交渉に暗雲がふさがり米国の核合意復帰が困難になるとの観測が出ている。トランプ政権が合意脱退を2018年に実行するやイランは数々の合意違反に踏み切り、ウラニウム濃縮量は合意水準以上に増えた。トランプ政権はヨーロッパにも合意撤廃を求めてきた。

 

イスラエルが暗殺実行犯なら、それは現在のイスラエル政権が望む秘密工作の実行の一環にすぎず、一方米国はイスラエルの動きを黙認するどころか支援さえしている可能性がある。トランプ政権はとくにイスラエル支援の姿勢が強く、バイデン政権が誕生するとこの姿勢に変化が出てくるのは確実だろう。

今回の暗殺直前にニューヨークタイムズがナタンツ空爆をトランプ政権が検討していたと伝えており、11月21日にB-52の二機が長距離往復飛行ミッションでノースダコタから中東にむけ発進しており、イランが念頭にあったのは確実だ。

 

IRGCは暗殺実行の裏にいるものへの報復を明らかにしており、「同盟国(トランプ政権)は政治日程上最終段階で、シオニスト(イスラエル)と共謀しイランへの圧力を最大化しており全面開戦を狙っている」と最高指導者アリ・ハメネイの顧問をつとめるホセイン・デーガンHossein Dehgha司令官がファクリザデ暗殺直後にツイート投稿している。

 

つまるところイラン原爆の父の殺害でイラン核兵器実現の野望に深刻な影響が生まれ、バイデン政権発足までの8週間余りで襲撃事件が今後も発生するのではないか。

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

Everything We Know So Far About The Assassination Of 'The Father Of Iran's Nuclear Bomb'


Everything We Know So Far About The Assassination Of 'The Father Of Iran's Nuclear Bomb'

BYJOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 27, 2020

 


2020年11月24日火曜日

歴史に残らなかった機体 番外編 あなたの知らない機体

 成功した機材の裏に失敗作、期待通りにいかなかった数々の機体がある。合掌

 

 

1950年代60年代の米国航空機業界は狂ったように戦闘機、爆撃機、偵察機を開発し正式採用を目指していた。中には成功を収めたF-4、F-15やB-52もある。だが、構想は壮大でも失敗作に終わった機体も数々あった。その一部を見てみよう。

 

 

コンベアYB-60

1950年代初期の米空軍はターボジェット方式の長距離核爆撃機の実現をめざしていた。コンベアはピストンエンジンでB-36を製造しており、B-36のエンジンをジェットに換装し、その他一部変更するだけで空軍に採用されると安易に考えた。

 

 

そこから生まれたYB-60は全長171フィートの怪物でJ57ターボジェット8基を搭載した。YB-60は巡航速度467マイル時で2,900マイルを飛び、36トンの爆弾搭載量があった。いかにもすごい数字だが、YB-60の性能は競合相手のボーイングB-52に見劣りした。同じ8発のB-52の巡航速度は525マイル時で35トンの爆弾搭載で4,500マイルを飛んだ。空軍はYB-60テストを1953年1月に中止し、B-52は今日でも米空軍で健在だ。

 

 

 

ベル XF-109

1955年、米海軍と空軍がベル航空機に奇抜な構想を持ちかけた。マッハ2で飛行する垂直離着陸可能な戦闘機で、ベルは真剣に機体を設計し、非公式にXF-109と呼んだ。

 

全長59フィートのXF-109はJ85エンジン8基をつみ、4基にはアフターバーナーたつき回転式翼端ナセルに2基ずつ搭載し、後部にもアフターバーつき、なしそれぞれ2基を格納した。

 

推力方向を後方、下方に向ける画期的なXF-109の構想はF-35B超音速ジャンプジェット機としてロッキード・マーティンが40年後に実現した。

 

だがXF-109は先走り過ぎた機体だった。海軍、空軍ともに関心を失い、1961年に開発中止となったが、ベルは試作機も製造していない。世界初の実用垂直離着陸戦闘機になったハリヤーは1967年初飛行したが亜音速機だ。

 

Lockheed RB-12

1961年1月、ロッキードの伝説的設計者ケリー・ジョンソンが自主提案を米空軍に届けた。マッハ3のA-12スパイ機(SR-71ブラックバードの前身)を超高速戦略爆撃機に転用するというものだった。ジョンソンは並行してA-12からF-12戦闘機にも取り組んでいた。

 

空軍はRB-12構想が気に入ったものの、改良案RS-12を逆提案した。A-12のそり状のチタン機体とJ58ターボジェットを外して長距離レーダー、核弾頭付対地ミサイルをAIM-47空対空ミサイル(F-12用に開発)を搭載するものだった。

 

RS-12はソ連上空にマッハ3.2で8万フィートから侵入し、射程50マイルでソ連都市を誤差50フィートで攻撃する構想だった。

 

だが国防総省はF-12開発をコストを理由に中止し、RS-12も同様に取り消した。弾道ミサイルが有人爆撃機に代わろうとしていた。だがA-12の偵察機型SR-71は採用し、1990年代まで運用した。

 

 


コンベア Model 49

1960年代の米陸軍は米空軍機材が近接航空支援でまったく期待に応えないことにうんざりしていた。リパブリックF-105など高速だが地上部隊支援では脆弱ぶりを露呈していた。

 

そこで陸軍は独自に垂直離陸可能で広く前線に投入できる機材が必要と痛感した。過酷な近接支援任務に最適化させるには重装甲と兵装が必要だ。ここから高性能航空火力支援装備構想が生まれた。

.

大胆な設計で知られるコンベアが陸軍構想に応えた。同社はその前に尾部を下に直立するXFY-1の知見があり、二人乗りダクテッドファン機案を提示した。フランスのSNECMAの試験機C.540と似ていた。

 

外観は奇抜だったがコンベアはヘリコプターの性能と軍用車の攻撃能力を組み合わせた完璧な姿と自画自賛していた。

 

問題はコックピットに傾斜をつけパイロットが離着陸時に空の方向を見なくてもよくすることだった。このため機体前方は複雑なヒンジ構造となりトランスフォーマーのような外観となった。

 

 

ロッキード CL-1200

1960年代末のロッキードは商機を見つけた。世界規模で7.500機規模の高性能ジェット戦闘機需要があり、1971年に同社が製造した高速ながら悪名高きF-104の操縦性を改良したCL-1200ランサー構想を発表した。

 

高名な設計者ケリー・ジョンソンをかかえるスカンクワークスがF-104の主翼を拡大し水平尾翼を機体本体に近い場所に付け替えた。エンジン空気取り入れ口を改良し、内部燃料搭載量を増やし、F-104のJ79エンジンをTF33に換装した。その結果、CL-1200は理論上はF-104より操縦しやすくなり、機体価格2百万ドルで大量生産できるはずだった。当時のF-4E新造機体価格が2.4百万ドルだった。

 

ロッキードはCL-1200を米軍主催の国際戦闘機競作に持ち込み、同盟国向け輸出仕様戦闘機に採用を狙った。だが、ノースロップF-5Eが採用され、ロッキードはCL-1200構想を取り下げた。結局、モックアップ一機しか製造しなかった。■

 

この記事は以下は再構成したものです。

 

The U.S. Air Force was Happy to Get Rid of These 5 Fighter Jets

 

November 22, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-4F-15MilitaryTechnologyYB-60RB-12

Not every one can be a winner.

by David Axe 

 

 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This first appeared in August 2019.

Image: Wikipedia.


2020年11月23日月曜日

中国軍の侵攻を食い止められるか。通常兵器アクセス戦略、海洋プレッシャー戦略提言に見る新しい米軍作戦構想

 

米シンクタンクの構想を米軍は実現することが多く、実際に米海兵隊の最近の動向をみるとすでに今回の提言内容は現実になっている感があります。テニアン島など再整備が行われていますが、問題は記事が指摘するように残存性であり補修能力の確保でしょう。日本も宮古島にやっと駐屯部隊が生まれましたが、同様に残存性を確保して中国を悩ませる存在にできるかが問題でしょうね。



珠湾を上回る効果の奇襲攻撃で勝利を収める可能性ありと見て北京は台湾制圧に踏み切るだろうか。既成事実づくりを米政策立案部門は最も嫌う。


非核兵器で中国が奇襲攻撃してくるのを打破する方法を米軍は模索すべきとアナリスト、サム・ゴールドスミスSam Goldsmith が海軍大学校研究誌に寄稿している。


「中国は米国が相手の高じん度対戦の場合に核兵器投入を自ら制限する可能性が高い。中国は長距離通常兵器による戦域レベル攻撃の手段を保有している」とゴールドスミスは「米国の通常兵器アクセス戦略で中国の通常兵器先制攻撃能力を打ち消す」“U.S. Conventional Access Strategy: Denying China a Conventional First-Strike Capability”で記している。


「こうした戦略通常兵器による先制攻撃の選択肢に中国が進むのを米国は効果のある通常兵器アクセス戦略でも阻止すべきである」



太平洋での領土をめぐり米国と開戦になった場合、中国軍は日本、グアムのほか洋上の米前方配備部隊を無力化する可能性が高い。次に人民解放軍は西太平洋に向かう米増派部隊を攻撃するはず、とゴールドスミスは見る。


この戦略でPLAは傘下の四軍、陸軍、海軍(PLAN)、空軍(PLAAF)、ロケット軍(PLARF)を投入する。PLAN潜水艦部隊は米艦船、潜水艦を洋上あるいは港湾内で雷撃し、陸上目標を巡航ミサイルで攻撃する。


PLAAFは地上待機中の米軍機、洋上あるいは港湾内の米艦船潜水艦を攻撃する。PLAAF機材が空中発射する長距離ミサイルあるいは中国本土から発射する通常弾頭弾道ミサイルで米軍基地が攻撃を受ける。


「米軍は通常兵器アクセス戦略を導入し、PLAによる介入対抗戦略counterintervention strategyとバランスを取るべきだ」というのがゴールドスミスの提言だ。「目的は中国による通常兵器先制攻撃への抑止効果を米軍に与え、必要に応じPLA長距離攻撃能力を低下させ、米軍増派部隊の到着を容易にすることにある」


米軍による通常兵器アクセス戦略は四種類の戦力が必要だ。①戦域レベルの受動的防衛で前方配備米軍部隊にPLA先制攻撃に対し残存性を高める。


②通常兵器アクセス戦略により米軍は開戦直後からPLA戦力を低下させ、空中給油機や航空施設を使えなくする。


③戦域レベルの補修能力でPLAによる通常兵器攻撃で損傷を受けた滑走路を再度使用可能にする。


④迅速対応能力で米軍の長距離爆撃機、戦闘機を西太平洋各地の基地に迅速展開し、補修作業を完了したばかりの滑走路で事前配備した航空燃料や対地貫通通常型兵器を利用する。


ゴールドスミス提言と関連するものとして2019年5月発表の戦略予算評価センター(CSBA)による構想がある。


CSBAは中国の優位性否定につながる「海洋プレッシャー軍事戦略による内部からの防衛作戦構想 inside-out defense operational concept」をペンタゴンに提言していた。


「海洋プレッシャー戦略では中国指導部に対し西太平洋での軍事侵攻は失敗に終わると理解させ、結果として実施を踏みとどまらせる」とCSBAが説明していた。


米陸軍、海兵隊部隊に移動式ロケット発射装置を配備し、若干の米艦船や小規模空軍派遣部隊が支援し中国付近の島嶼部から中国軍の移動線内を攻撃する。


こうした「内部配備」部隊により中国の防衛線に穴が生まれる。


「内部からかく乱する防衛構想の実施のためには中国ミサイル射程内で米軍部隊は残存性を確保する必要がある」のでリスクもあるとCSBAは認めている。


ゴールドスミス提言ではこうした部隊は中国軍の攻撃を生き残り、増派部隊の到着を待つ前提だ。陸上装備ロケット弾、迅速補修、補給物資投下で米軍部隊は立ち直り、中国軍の前進を阻み、奇襲攻撃をかけると見る。■


この記事は以下を再構成したものです。


What If China Launched a Surprise Attack on the U.S. Military?

November 22, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryTechnologyMissilesA2/adWarHistory

by David Axe 


David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad


日米共同開発のSM-3がICBM迎撃に成功。ミサイル防衛体制整備にどんな影響が出る?

 現地時間(ハワイ)2020年11月16日にSM-3 IIAがICBM迎撃に成功しました。日米共同開発のSM-3はBMDでどんな役割を期待されるのでしょうか。Defense Newsが伝えています。

海軍がスタンダードミサイル-3ブロックIIA迎撃弾で大陸間弾道弾迎撃に成功した。米国および同盟国向けのミサイル防衛の実効性が向上しそうだ。

ミサイル防衛庁によれば「脅威対象」のICBMはマーシャル諸島ケジェリン環礁から発射されハワイに向かった。「ハワイ防衛」シナリオをシミュレートし、海軍は駆逐艦USSジョン・フィンのイージス弾道ミサイル防衛システムでSM-3IIA迎撃ミサイル一発を発射し、ICBMを撃破した。

米議会は北朝鮮のミサイル脅威の高まりを意識し2018年度国防予算認可法でMDAに2020年末までにミサイル迎撃実験の実施で、SM-3 IIAでICBM迎撃が可能か検証させることにしていた。

結果として議会は正しかったことになる。

北朝鮮は長距離弾道ミサイルの発射テストを一時停止中だが、陸上配備・海中配備ミサイルの開発は続けている。最近の軍事パレードに北朝鮮は最新鋭かつ最大のICBMを参加させた。このミサイルの飛翔テストは未実施だが、既知のKN-08、KN-14、火星-14、火星-15の四種類はICBMに分類される。

ここに火星-16が加わり北朝鮮はICBM5型式をそろえたことになる。

イランでも同様の脅威が増えており、同国が北朝鮮とミサイル分野で協力していることを米政府は把握し、代償を払わせている。

今年4月にイスラム革命防衛隊の航空宇宙軍が固体燃料二段式ロケットで初の軍事衛星打ち上げを実施した。

現時点でイランはICBMは保有しておらず、ミサイルに2千キロの射程上限を自ら課している。だがイラン関係者が豪語しているように現在の自己規制も終焉を迎える時が来る。すでにイランは短距離中距離弾道ミサイルでは中東最大の規模の装備をそろえている。2019年度ミサイル防衛レビューではイランが「米国に対する戦略手段取得に熱意を示しているなか、ICBM配備が実現する可能性があり、宇宙計画の進展でICBM実現も早まる」と述べていた。

そもそもSM-3 IIAは中距離ミサイル迎撃用に開発され、今回の迎撃成功はMDAが同ミサイルを使い、米国を不良国家のICBMから防衛しようとしていることを意味する。米国の現在の本土防衛体制では地上配備迎撃ミサイルが44基カリフォーニア、アラスカにあり、ICBMを中間飛翔段階で撃破する。つぎに最終段階高高度地域防衛システム(THAAD)は強力なレーダーで弾道ミサイルを追尾し、ICBMが自国内に落下する寸前で撃破を狙う。

SM-3 IIA迎撃ミサイルでICBMを撃破する可能性が出てきたわけで、国防総省発表の図式はこれも含めたミサイル防衛体制を示している。

(U.S. Defense Department)

ミサイル防衛手段が増えることはいいことだが、他方でミサイル防衛能力の整備が逆にロシア、中国との関係を不安定にすると心配する向きもある。

だがその根拠は疑わしい。米本土のミサイル防衛体制は比較的軽微の攻撃が北朝鮮あるいはイランから飛来する前提で構築されている。SM-3 IIAを追加しても米国のミサイル防衛体制はロシアや中国の大規模攻撃には対応できない。

中ロいずれかからの大規模攻撃で米ミサイル防衛は簡単に圧倒されてしまう。両国が開発中の極超音速ミサイルや巡航ミサイルを想定すればこの危惧は現実のものだ。

そこで米国は核の三本柱で中国ロシアからの攻撃を抑止している。

ロシア、中国も米国のミサイル防衛体制が能力向上されてもSM-3 IIAでは大規模ミサイル攻撃を防げないと承知している。それでも両国は米国の動きを非難しつつ、裏で自国のミサイル防衛体制を整備しており、ロシアが配備中の本土防衛迎撃ミサイル数は米国を上回る。

今週のテスト成功で議会はミサイル防衛体制関連の支出に十分な予算を付けるだろう。今回は米国のミサイル防衛の整備で好機であり見逃すべきではない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。なるほど、BMDも重要ですが、もっと重要なのが抑止力の維持ということですね。

 

Successful SM-3 weapons test offers missile defense opportunity

By: Bradley Bowman and Behnam Ben Taleblu    13 hours ago

 

Bradly Bowman is senior director of the Center on Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies, where Behnam Ben Taleblu is a senior fellow.

 

 

 

 


2020年11月22日日曜日

北朝鮮経済が深刻な状況。ジャガイモ生産の奨励は米作が期待できないため。北朝鮮崩壊のカウントダウンか。

 


 

朝鮮経済で主要作物といえば米だが、同国メディアは米よりもジャガイモに焦点を当てている。

 

これは北朝鮮には不吉な兆候とNK Newsが伝えている。

 

「食料供給はDPRKでは政治的な意味があり、白米を思い切り頬張る光景のかわりにジャガイモが表に出てきた」(NK News)

 

北朝鮮で料理番組やニュースがジャガイモ調理を強調している。背景にここ数年同国を襲った危機的状況の連続があり、コロナウィルス、経済制裁、立て続けに上陸した台風もその一部だ。


 

Daily NKは今月初めに北朝鮮が「自家製」アルコール製造を摘発し、「今年の北部でのジャガイモ収穫は昨年より少ない」と報道している。

 

北朝鮮のGDPは25%が軍事費といわれ、国民の大部分は満足に食事できない。一方でコロナウィルスが全国流行しており、学校の再開もままならない。また豚熱の流行で豚肉供給が不足との報道もあり、経済消費が大きく減っている。

 

Daily NKの昨年10月報道では両江道内住民にジャガイモ収穫が優先課題と伝えられたとある。同地区は国内最大のジャガイモ生産拠点である。またAFPの2018年7月記事では金正恩が同じ両江道の三池淵市でのジャガイモ農園訪問を同時期に北朝鮮訪問したポンペイオ国務長官との会見より優先したとある。

 

北朝鮮には「ジャガイモの誇り」と呼ぶ宣伝歌があり、「村の高齢者が政府のジャガイモ配給を受け、村人に分け与える。YouTubeには思い切り笑みを浮かべて歌う様子がわざとらしいが、実は北朝鮮の貧困状況が実に深刻であり、政府への忠誠を強いる実情を示している」と AllAroundthisworld.comが解説している。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

North Korea Is Emphasizing Potato Production. That Might Be a Bad Sign

November 10, 2020  Topic: Economics  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaPotatoesRiceFamineCrop Failure

How bad is the food situation getting in the Hermit Kingdom?

by Stephen Silver

 

 

Stephen Silver, a technology writer for The National Interest, is a journalist, essayist and film critic, who is also a contributor to Philly Voice, Philadelphia Weekly, the Jewish Telegraphic Agency, Living Life Fearless, Backstage magazine, Broad Street Review and Splice Today. The co-founder of the Philadelphia Film Critics Circle, Stephen lives in suburban Philadelphia with his wife and two sons. Follow him on Twitter at @StephenSilver.

Image: Reuters