スキップしてメイン コンテンツに移動

中国軍の侵攻を食い止められるか。通常兵器アクセス戦略、海洋プレッシャー戦略提言に見る新しい米軍作戦構想

 

米シンクタンクの構想を米軍は実現することが多く、実際に米海兵隊の最近の動向をみるとすでに今回の提言内容は現実になっている感があります。テニアン島など再整備が行われていますが、問題は記事が指摘するように残存性であり補修能力の確保でしょう。日本も宮古島にやっと駐屯部隊が生まれましたが、同様に残存性を確保して中国を悩ませる存在にできるかが問題でしょうね。



珠湾を上回る効果の奇襲攻撃で勝利を収める可能性ありと見て北京は台湾制圧に踏み切るだろうか。既成事実づくりを米政策立案部門は最も嫌う。


非核兵器で中国が奇襲攻撃してくるのを打破する方法を米軍は模索すべきとアナリスト、サム・ゴールドスミスSam Goldsmith が海軍大学校研究誌に寄稿している。


「中国は米国が相手の高じん度対戦の場合に核兵器投入を自ら制限する可能性が高い。中国は長距離通常兵器による戦域レベル攻撃の手段を保有している」とゴールドスミスは「米国の通常兵器アクセス戦略で中国の通常兵器先制攻撃能力を打ち消す」“U.S. Conventional Access Strategy: Denying China a Conventional First-Strike Capability”で記している。


「こうした戦略通常兵器による先制攻撃の選択肢に中国が進むのを米国は効果のある通常兵器アクセス戦略でも阻止すべきである」



太平洋での領土をめぐり米国と開戦になった場合、中国軍は日本、グアムのほか洋上の米前方配備部隊を無力化する可能性が高い。次に人民解放軍は西太平洋に向かう米増派部隊を攻撃するはず、とゴールドスミスは見る。


この戦略でPLAは傘下の四軍、陸軍、海軍(PLAN)、空軍(PLAAF)、ロケット軍(PLARF)を投入する。PLAN潜水艦部隊は米艦船、潜水艦を洋上あるいは港湾内で雷撃し、陸上目標を巡航ミサイルで攻撃する。


PLAAFは地上待機中の米軍機、洋上あるいは港湾内の米艦船潜水艦を攻撃する。PLAAF機材が空中発射する長距離ミサイルあるいは中国本土から発射する通常弾頭弾道ミサイルで米軍基地が攻撃を受ける。


「米軍は通常兵器アクセス戦略を導入し、PLAによる介入対抗戦略counterintervention strategyとバランスを取るべきだ」というのがゴールドスミスの提言だ。「目的は中国による通常兵器先制攻撃への抑止効果を米軍に与え、必要に応じPLA長距離攻撃能力を低下させ、米軍増派部隊の到着を容易にすることにある」


米軍による通常兵器アクセス戦略は四種類の戦力が必要だ。①戦域レベルの受動的防衛で前方配備米軍部隊にPLA先制攻撃に対し残存性を高める。


②通常兵器アクセス戦略により米軍は開戦直後からPLA戦力を低下させ、空中給油機や航空施設を使えなくする。


③戦域レベルの補修能力でPLAによる通常兵器攻撃で損傷を受けた滑走路を再度使用可能にする。


④迅速対応能力で米軍の長距離爆撃機、戦闘機を西太平洋各地の基地に迅速展開し、補修作業を完了したばかりの滑走路で事前配備した航空燃料や対地貫通通常型兵器を利用する。


ゴールドスミス提言と関連するものとして2019年5月発表の戦略予算評価センター(CSBA)による構想がある。


CSBAは中国の優位性否定につながる「海洋プレッシャー軍事戦略による内部からの防衛作戦構想 inside-out defense operational concept」をペンタゴンに提言していた。


「海洋プレッシャー戦略では中国指導部に対し西太平洋での軍事侵攻は失敗に終わると理解させ、結果として実施を踏みとどまらせる」とCSBAが説明していた。


米陸軍、海兵隊部隊に移動式ロケット発射装置を配備し、若干の米艦船や小規模空軍派遣部隊が支援し中国付近の島嶼部から中国軍の移動線内を攻撃する。


こうした「内部配備」部隊により中国の防衛線に穴が生まれる。


「内部からかく乱する防衛構想の実施のためには中国ミサイル射程内で米軍部隊は残存性を確保する必要がある」のでリスクもあるとCSBAは認めている。


ゴールドスミス提言ではこうした部隊は中国軍の攻撃を生き残り、増派部隊の到着を待つ前提だ。陸上装備ロケット弾、迅速補修、補給物資投下で米軍部隊は立ち直り、中国軍の前進を阻み、奇襲攻撃をかけると見る。■


この記事は以下を再構成したものです。


What If China Launched a Surprise Attack on the U.S. Military?

November 22, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryTechnologyMissilesA2/adWarHistory

by David Axe 


David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad


コメント

  1. 通常兵器アクセス戦略(U.S. CONVENTIONAL ACCESS STRATEGY)、初めて言葉を知りました。
    で、ゴールドスミス氏の同タイトルの論文(ネット上にPDFあり)をちょろっと読みました。
    冷戦時代の核による相互確証破壊を現代及び通常兵器で再現しようとするもので、
    『戦略的には、通常兵器アクセス戦略は中国指導者に対し、PLA通常兵器の先制攻撃を受けた直後であっても米軍がどのようにして中国にコストを課すことができるのか、より明確に理解してもらうことになる。』
    平たく言うと、中国人が机上演習をやった時に「通常兵器でもイケそうやん」と思わせちゃダメってことで、理屈はわかるのですが。
    日本に当てはめて考えると・・・単独じゃあ厳しいなあ。台湾はもっと厳しい。

    返信削除
  2. ぼたんのちから2020年12月7日 18:03

    習が先制奇襲攻撃の誘惑にかられる可能性が、今後、ますます高まるかもしれない。
    戦争の契機は、指導者の現状認識が恣意的になり、戦争の推移が自分に都合の良いように妄想するところから生まれると考えれば、習はそのような罠にはまりつつあるように見える。
    米中冷戦がより深刻さを増し、中国国内の経済・社会的状況が今以上に悪化すれば、毛の悲願である世界覇権の獲得を目指す習が、冒険的で短絡的考えを持ってもおかしくはない。
    PLAの奇襲攻撃は、米太平洋軍と日本軍(自衛隊)、それに台湾軍に大きな損害をもたらすことは間違いない。結果として、短期的にPLAは第1列島線内で優位になるだろうが、それまでだろう。その後は、いずれにせよPLAのミサイル、航空機、艦艇は虱潰しに破壊され、PLAは手も足も出ないようになるだろう。問題は、そのような状況に好転するまでの方法と時間である。
    記事の先制攻撃の対応策は、攻撃を受けた後の拠点の維持に主眼を置き、抑止力にはなるものの消極的に見える。むしろ、残存性と長距離反撃能力を持つ経済的に合理的な兵器を多数整備すべきなのかもしれない。それは、例えばドローンであり、多用途無人潜水艇であるだろう。
    また、九州以南には多くの飛行場、港湾があり、これらを整備し、有事に備えることは、極めて有効な抑止力になると考える。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ