今月に入り中国が8月実施した「空母キラー」ミサイル2型式の試射の詳細を公表している。各ミサイルは数千キロを飛翔し、南シナ海パラセル諸島付近の標的に命中したと中国は説明している。
人民解放軍の元大佐で現在は北京の航天大教授Wang Xiangsuiがサウスチャイナモーニングポスト紙にミサイルはともに移動船舶に命中したと語っている。テストではDF-21D、DF-26Bの二種類が投入され、中国の目指す抑止力の中核となる装備だ。
DF-26Bは青海省から、DF-21Bは浙江省からそれぞれ打ち上げられ、目標地帯は中国当局があらかじめ立入り禁止措置にしていた。
DF-26とは
DF-26は移動式二段ミサイルで固体燃料の中距離弾道ミサイル(IRBM)で2015年9月の軍事パレードで初公表された。射程4千キロとされ、核・非核両用で、地上目標、海上目標を狙う。弾頭は1.2トンから1.8トンを搭載可能で、有事には米領グアムを攻撃可能だ。DF-26が空母キラーと呼ばれるのはニミッツ級フォード級の超大型原子力空母が標的とされるためだ。
DF-26は中距離核兵力条約で禁止対象となる兵器である。冷戦終結jに米ソが調印したが、中国は一度も条約交渉に招かれず、米国が昨年に条約から脱退した際に中国が条約から自由に兵器を配備しているためとした。
一方、DF-21Dは
DF-21Dは世界初の対艦弾道ミサイル(ASBM)で、これも「空母キラー」とされる。射程は1,800キロで艦船、とくに紛争地帯で敵勢力の接近を阻止する機能が期待され、東シナ海・南シナ海への投入がありうる。
米海軍の空母以外に日本の新型航空母艦やオーストラリアの強襲揚陸艦も標的になる。
今回のミサイル二型式のテストの前日に中国は人民解放軍海軍の実弾演習を展開中の渤海上空の飛行禁止空域に米国がU-2スパイ機を送り込んだとして非難していた。米海軍もUSSニミッツ、USSロナルド・レーガンの各空母打撃群で「自由で開かれたインド太平洋を支援すべく」戦術防空演習を展開していた。
サウスチャイナモーニングポスト紙は中国政府が米海軍による演習に強い嫌悪を示し、露骨な挑発であるとしたと伝えている。一方で米国は中国のミサイル発射テストを無謀かつ安定を損ねる行為だと対抗した。
今回のミサイルは人民解放軍が保有する地上発射式弾道ミサイル、巡航ミサイル1,250発の一部にすぎないことに注意が必要だ。■
この記事は以下を再構成したものです。
Report: China’s ‘Aircraft-Carrier Killer’ Missiles Hit Target Ship in August
November 15, 2020 Topic: China Blog Brand: The Buzz Tags: ChinaDF-21DDF-26BASDMMilitaryA2/adTechnology
by Peter Suciu
Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.
>中国の言い分をあなたは信じますか
返信削除・・・う~ん、なんとも言えない。
仮に、「対艦弾道弾のニセ脅威」を米軍に知らしめる目的で「中国がウソをつく」としましょう。
この場合、おおまかに以下の条件が必要ではないでしょうか。
1.弾道弾の発射は米軍に探知される(現に探知されてる)
2.弾道弾の詳細な着弾状況(移動艦船命中??)は米軍に探知されない
中国にとっては、上記の1・2を満たして初めて「ウソ成功」となるわけですが、半ば他力本願な1.は
ともかく、2.については絶対の自信・確信が持てますかねえ?隠せるものか?
あるいは、2.に確信がもてるまで、発表を数か月待ったのかもしれませんが。
個人の無責任推測としては、対艦弾道弾が「丸ごとブラフ」の線は薄いが、現時点で中国が喧伝する
ほどの性能を達成しているかは甚だ疑問。
もし移動艦船に命中したなら、A2/AD的には命中の画像なりを露出させたほうが効果的ですもんね。
とはいえ、中国的には、当たろうが外れようが、どう思われようが、どっちでも良かったでしょう。
中国は継続的に対艦弾道弾開発にリソースを投入している。その事実が米軍に伝われば良い。
DF-21DとDF-26に注意は必要であるが、それは固定した目標に対してであって、移動する目標でないと推測する。
返信削除今回の情報漏洩は、情報源が無責任な発言ができる元大佐であり、移動する艦船に対する攻撃が成功していれば、PLAは早速プロパガンダに使うだろう。
8月の試射は、南シナ海でも中国本土に近く、PLAとしては十分サポートできる環境下で行われただろう。すなわち、完全に誘導できる環境であった。また、演習海域は事前に予告され、米軍の重監視下にあっただろう。
発射は、DF-21D/DF-26それぞれ2発づつであり、各1発は中国本土に落下したようだ。その上残り2発が実験海域に到達しても、命中しないとなれば完全な失敗であり、その後のPLAの沈黙の理由となる。
また、途中落下した2発の失敗の原因は、もちろんミサイル本体の不具合かもしれないが、何らかの外部からの「妨害」によるのかもしれない。「妨害」の可能性があるならば、PLAのミサイル運用に深刻な問題を引き起こし、これもPLAの沈黙の理由かもしれない。
いずれにしても、米海軍は、ミサイル試射の前後に南シナ海で空母打撃群の演習を実施しており、そのうち7月の演習では2個空母打撃群であったことから推測すると、中国の対艦弾道ミサイルに対する防衛に自信があると推測する。