米海兵隊が火力を迅速展開する新方式で訓練中だ。HIMARSミサイル攻撃を展開すれば海兵隊に実用的かつ残存性の高い対艦攻撃能力が実現する。
海兵隊の迅速展開訓練から西太平洋における米軍の軍事戦略が垣間見える。
2018年12月7日に第352海兵燃料補給輸送隊がM142高度機動ロケット発射機(HIMARS)をカリフォーニアのキャンプペンドルトンからユタのダグウェイ試射場まで移動させ、演習を展開した。
HIMARSは車輪つきだが自重12トンあり、各種対地攻撃ロケット弾を発射できる。KC-130J輸送機から展開し、訓練弾を発射し、またKC-130Jで原隊に戻った。
航空機による迅速展開演習は米陸軍が先行し陸軍では「HIMAR迅速展開」(HIRAIN)と呼んでいる。
新型装備、新型戦術と組み合わせHIRAINにより米軍部隊は長距離砲兵部隊を迅速移動させ敵軍を混乱させるのが目的だ。この手法で米軍は西太平洋で中国の動きを封じようとする。
中国は日本列島からフィリピンへ伸びる「第一列島線」を中国の影響圏ととらえ、中国共産党は貿易、外交、軍事脅威を使い影響力を行使している。有事になればこの列島線で多数地点を占拠するだろう。
ペンタゴンはこの動きを困難にしたいとする。航空・海軍戦力が米戦略の中心であることにかわりはないが、地上部隊へも固有の役割が期待される。H.R.マクマスター米陸軍大将(退役)は短期間ながらトランプ大統領の安全保障担当補佐官を務め、陸軍に「陸地からの兵力投射」を期待している。オバマ政権で海軍次官だったジャニーン・デイヴィッドソンも「陸軍に艦船を攻撃させる」よう動いたと発言。海兵隊には陸軍と同程度の装備品が多数あり、敵艦攻撃も可能だ。
近い将来の戦闘で中国艦艇が日本あるいはフィリピン近隣の諸島へ向け移動中としよう。海兵隊のロケット中隊が輸送機で諸島の一つに迅速移動し、中国艦へ数発発射する。その間輸送部隊が待機する。「発射するたびに部隊は別の場所に隠れ、次の発射命令を待つ」とRANDコーポレーションが2017年に構想を発表していた。
「遠隔島しょ部分の防御を強化し、隣接水域に海軍部隊が展開すれば低コストで戦略上の優位性が大きく確保できる」と海軍大学校のジェイムズ・ホームズ教授も2014年に提案していた。
陸軍は構想の一部を現実的な条件で訓練している。2018年のリムパック演習では陸軍HIMARS部隊が除籍した海軍強襲揚陸艦ラシーンをロケット弾5発で沈めた。発射地点は50マイル先で無人機が射撃を調整した。
とはいえ、無誘導227ミリロケット弾(弾頭200ポンド)を40マイル先から運用するHIMARSは理想的な対艦兵器とはいえない。
そこでHIMARSで誘導式610ミリ陸軍戦術ミサイルATACMS(弾頭500ポンド)を190マイル地点から発射させればよい。2016年に陸軍はシーカーの改良で艦船攻撃の効果を増大する作業を開始した。
海兵隊はHIMARS発射機に専用対艦ミサイルの導入を検討中だ。2018年にアリゾナでの試射では、F-35ステルス戦闘機から標的情報をロケット部隊に送信し、命中精度を引き上げようとした。海兵隊のF-35Bは地上のコンテナを探知し、データリンクでGPS座標をHIMARS要員へ送った。
HIMARSにより海兵隊に実用に耐えつつ残存性が高い対艦攻撃能力が実現する。そこにF-35を加え、ロケット攻撃の命中精度が向上する。また発射部隊は迅速空輸により敵の反撃を逃れ、敵は所在をつきとめようと懸命になる、という目論見だ。■
この記事は以下を再構成したものです。
How Would U.S. Marines Fight China in a War? This Photo Is a Hint.
November 7, 2020 Topic: Security Blog Brand: The Reboot Tags: MarinesArmyF-35MilitaryTechnologyHIMARS
by David Axe
David Axe is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.
>「発射するたびに部隊は別の場所に隠れ、次の発射命令を待つ」
返信削除対艦ミサイルを発射された中国軍が、空母含む航空支援なしに艦を動かしますかねえ?
状況が発火してしまった後に、C-130が自由に移動し展開できるのでしょうか?
ま、中国空母はまだまだあてにはならないし、他の地上拠点も別途対処するってことですかね。