現地時間(ハワイ)2020年11月16日にSM-3 IIAがICBM迎撃に成功しました。日米共同開発のSM-3はBMDでどんな役割を期待されるのでしょうか。Defense Newsが伝えています。
米海軍がスタンダードミサイル-3ブロックIIA迎撃弾で大陸間弾道弾迎撃に成功した。米国および同盟国向けのミサイル防衛の実効性が向上しそうだ。
ミサイル防衛庁によれば「脅威対象」のICBMはマーシャル諸島ケジェリン環礁から発射されハワイに向かった。「ハワイ防衛」シナリオをシミュレートし、海軍は駆逐艦USSジョン・フィンのイージス弾道ミサイル防衛システムでSM-3IIA迎撃ミサイル一発を発射し、ICBMを撃破した。
米議会は北朝鮮のミサイル脅威の高まりを意識し2018年度国防予算認可法でMDAに2020年末までにミサイル迎撃実験の実施で、SM-3 IIAでICBM迎撃が可能か検証させることにしていた。
結果として議会は正しかったことになる。
北朝鮮は長距離弾道ミサイルの発射テストを一時停止中だが、陸上配備・海中配備ミサイルの開発は続けている。最近の軍事パレードに北朝鮮は最新鋭かつ最大のICBMを参加させた。このミサイルの飛翔テストは未実施だが、既知のKN-08、KN-14、火星-14、火星-15の四種類はICBMに分類される。
ここに火星-16が加わり北朝鮮はICBM5型式をそろえたことになる。
イランでも同様の脅威が増えており、同国が北朝鮮とミサイル分野で協力していることを米政府は把握し、代償を払わせている。
今年4月にイスラム革命防衛隊の航空宇宙軍が固体燃料二段式ロケットで初の軍事衛星打ち上げを実施した。
現時点でイランはICBMは保有しておらず、ミサイルに2千キロの射程上限を自ら課している。だがイラン関係者が豪語しているように現在の自己規制も終焉を迎える時が来る。すでにイランは短距離中距離弾道ミサイルでは中東最大の規模の装備をそろえている。2019年度ミサイル防衛レビューではイランが「米国に対する戦略手段取得に熱意を示しているなか、ICBM配備が実現する可能性があり、宇宙計画の進展でICBM実現も早まる」と述べていた。
そもそもSM-3 IIAは中距離ミサイル迎撃用に開発され、今回の迎撃成功はMDAが同ミサイルを使い、米国を不良国家のICBMから防衛しようとしていることを意味する。米国の現在の本土防衛体制では地上配備迎撃ミサイルが44基カリフォーニア、アラスカにあり、ICBMを中間飛翔段階で撃破する。つぎに最終段階高高度地域防衛システム(THAAD)は強力なレーダーで弾道ミサイルを追尾し、ICBMが自国内に落下する寸前で撃破を狙う。
SM-3 IIA迎撃ミサイルでICBMを撃破する可能性が出てきたわけで、国防総省発表の図式はこれも含めたミサイル防衛体制を示している。
(U.S. Defense Department)
ミサイル防衛手段が増えることはいいことだが、他方でミサイル防衛能力の整備が逆にロシア、中国との関係を不安定にすると心配する向きもある。
だがその根拠は疑わしい。米本土のミサイル防衛体制は比較的軽微の攻撃が北朝鮮あるいはイランから飛来する前提で構築されている。SM-3 IIAを追加しても米国のミサイル防衛体制はロシアや中国の大規模攻撃には対応できない。
中ロいずれかからの大規模攻撃で米ミサイル防衛は簡単に圧倒されてしまう。両国が開発中の極超音速ミサイルや巡航ミサイルを想定すればこの危惧は現実のものだ。
そこで米国は核の三本柱で中国ロシアからの攻撃を抑止している。
ロシア、中国も米国のミサイル防衛体制が能力向上されてもSM-3 IIAでは大規模ミサイル攻撃を防げないと承知している。それでも両国は米国の動きを非難しつつ、裏で自国のミサイル防衛体制を整備しており、ロシアが配備中の本土防衛迎撃ミサイル数は米国を上回る。
今週のテスト成功で議会はミサイル防衛体制関連の支出に十分な予算を付けるだろう。今回は米国のミサイル防衛の整備で好機であり見逃すべきではない。■
この記事は以下を再構成したものです。なるほど、BMDも重要ですが、もっと重要なのが抑止力の維持ということですね。
Successful SM-3 weapons test offers missile defense opportunity
By: Bradley Bowman and Behnam Ben Taleblu 13 hours ago
Bradly Bowman is senior director of the Center on Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies, where Behnam Ben Taleblu is a senior fellow.
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