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台湾がついに潜水艦国産建造に乗り出した。8隻建造し、2025年に一番艦を就役させる。日本は傍観しているだけでいいのでしょうか。

 

KYODO VIA AP

 

ポイント 台湾は新型潜水艦を8隻国産建造し、老朽化著しい潜水艦部隊を一新し、中国の脅威増大への対応を目指す。

湾が初の国産潜水艦建造に一歩近づいた。専用建造所が完成し、中華民国海軍の近代化が実現する。蔡英文総統が開所式に出席し「台湾の主権を守り通す強い意志を世界に示す」と宣言した。

新設の潜水艦建造を専門とする施設は台湾南部の高雄に2020年11月24日完工し、新型ディーゼル電気推進方式潜水艦8隻の建造を開始する。設計は国家中山科学研究院が米国の支援のもと完成させた。初号艦は2025年に就役予定で、台湾国際造船が建造を担当する。

 

蔡英文総統は「潜水艦は台湾の目指す非対称海軍戦力整備で重要な装備で、台湾に接近を試みる敵に対する抑止効果を実現する」と祝辞で述べた。北京に対し自国防衛の強い意志を示し、潜水艦建造事業は台湾防衛の自己遂行能力を引き上げることにもつながる。

 

 

MINISTRY OF NATIONAL DEFENSE, ROC

蔡英文総統が高雄の新設潜水艦建造施設の完成式に出席した。

 

 

人民解放軍海軍(PLAN)が潜水艦多数を運用中でしかも近代化と性能向上が著しく、台湾海峡で活動も増えている中で、中華民国海軍(ROCN)は一方的に不利な状況だ。台湾の潜水艦部隊は海龍 Hai Lung級2隻、海獅Hai Shih 級2隻のみで高雄の左營區 Tsoying 基地に配備されている。

 

このうち海獅級はオランダで1980年代建造された艦で、オランダ海軍ズヴァールトフィス級を原型とし、最高速力は20ノット魚雷28本搭載といわれる。海獅級の性能改修が2016年に始まり、15年程度の供用期間延長をめざす。なおオランダ海軍はズヴァールトフィス級を1990年代に退役させている。

 

 

AP/CHIANG YING-YING

台湾海軍の海龍級潜水艦海虎はROCNに1988年就役した。

 

海龍級より古いのが海獅級で海獅は米海軍テンチ級、海豹はバラオ級と第二次大戦時の艦で台湾に余剰艦として1973年-74年に譲渡された。海獅は潜航速度が15ノットしか出せず、現代戦に適合しているとはいいがたく、訓練用途で使われているようだ。両艦ともに潜航深度に328フィート制限がついており、圧力艦体にゆがみがつき金属疲労もあるといわれる。ここ数年、両艦を退役させる話が出ているが博物館ものの両艦を見れば当然だろう。


 

CPJ2028/WIKIMEDIA COMMONS

海獅は元USSカットラスでテンチ級潜水艦として1944年進水だが、今もROCNは供用中。

 

 

新造船施設の開所式で台湾国際造船会長Cheng Wen Lungは台湾の国産潜水艦建造は多大な困難を克服してきたと語った。「開発を進めさせたくない外部勢力があった」とし、中国の反対を恐れ、海外国の潜水艦技術移転が進まなかったことを指している。中国は今も台湾を反乱地方と見ており、再統一は必須とする。

 

1990年代のクリントン政権は潜水艦売却を拒んだ。1979年の台湾関係法の想定外としたのだ。台湾はアルゼンチン、ノルウェーいずれかからの原型をもとに建造を目指したが、いずれも失敗した。

 

2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領が台湾向け装備品の大規模売却を認め、ディーゼル電気推進式潜水艦8隻もその一部としたが、その後中国の顔色を見て方針を転換した。だが米海軍の通常型推進潜水艦は終了して相当の年数が経っており、8隻は米国では設計できず、ライセンス生産するしかなかった。ドイツ、オランダの原設計が有望と見られていた。

 

だが両国は台湾への潜水艦技術提供を拒んだ。オランダ政府は武器輸出は台湾、中国本土のいずれにも行わないと述べ、ドイツは「一つの中国」方針を堅持するというものだった。

 

米国内でディーゼル電気推進方式潜水艦建造ができないため、台湾には余剰艦を供与する方針に変わった。2004年に米国は新型ディーゼル電気推進方式潜水艦をミシシッピ州のインガルス造船所で行う案を提示し、海外設計で建造する可能性が多大だったが、これも実現しなかった。ROCNは手持ちの4隻を稼働させるしか手段がなかった。

 

一方で新型潜水艦建造は台湾で政治課題となり、国産建造か完成艦輸入かで意見がわかれた。2005年に工業開発局長Chen Chao Yiは「潜水艦建造は台湾で可能」と述べたものの「潜水艦青写真と兵装システム」で米国の協力が必要と認めていた。

 

ついに台湾は国産潜水艦建造事業の開始を2014年に決定し、2017年に蔡英文総統が潜水艦建造の覚書に署名した。

 

「重層抑止力構想にもとづき、水中戦力は台湾防衛で最大の効果を発揮する」とその際に同総統は「だれでも理解できるがこれまで実現できなかった」と述べた。

 

台湾構想の実現で突破口となったのが2018年の米国務省による方針決定で関連技術の台湾向けライセンスが認められたことで、戦闘統制システムやその他技術提供に道が開いたが、米企業がどこまで関与できるのか詳細は非公表だ。

 

台湾の国産建造ではオランダ建造の海龍級建造で得た知見も参考となり、ROCNはこれまで詳細に研究しているが、その他国のノウハウも必要になるはずだ。すでに耐圧船殻製造で台湾が支援を求めているとの記事が出ている。

 

新型国産潜水艦にはオランダ製の海龍級の影響が現れているが、新型艦の詳細はほぼ不明のままで大気非依存型推進(AIP)が搭載されるかは不明だ。

 

新型潜水艦8隻と海龍級改修艦があってもROCNの潜水艦部隊はPLAN潜水艦部隊に大きく劣勢となる。だが、通常型でも新規建造艦は多国間演習で大きな効果を実証しており、乗員の練度が高ければ予想外の効果を発揮し台湾海峡に防衛緩衝地帯が生まれる。

 

潜水艦戦力の増強で台湾はPLAN艦船・揚陸部隊への防衛力を適正化し、ハープーン対艦ミサイル、ステルス機雷敷設双胴艦と組み合わせた防衛力を発揮する日がやってくる。

 

潜水艦部隊の存在そのものがPLANへの抑止力になる。PLANは対潜能力で大きく後れを取っている。世界の潜水艦部隊の中でここまで近代化が切迫したニーズになっているのは台湾以外になく、潜水艦建造施設を完成させたことはROCNが長年切望していた新造潜水艦の実現への道で大きな一歩となる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Taiwan Is Finally Set To Build The New Diesel-Electric Submarines It Desperately Needs

BY THOMAS NEWDICKNOVEMBER 25, 2020


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